JPH1176722A - 空気浄化フィルタ及びその製造方法及び高度清浄装置 - Google Patents

空気浄化フィルタ及びその製造方法及び高度清浄装置

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JPH1176722A
JPH1176722A JP9261057A JP26105797A JPH1176722A JP H1176722 A JPH1176722 A JP H1176722A JP 9261057 A JP9261057 A JP 9261057A JP 26105797 A JP26105797 A JP 26105797A JP H1176722 A JPH1176722 A JP H1176722A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 処理対象空気中に含まれる微量のガス状塩基
性不純物のみならず,ガス状有機不純物も同時に除去し
て,ガス状不純物による基板などの表面汚染を防止でき
る空気浄化フィルタを提供する。 【解決手段】 けいそう土,シリカ,アルミナ,シリカ
とアルミナの混合物,珪酸アルミニウム,活性アルミ
ナ,多孔質ガラス,活性白土,活性ベントナイト又は合
成ゼオライトのうちの少なくとも1種からなる無機物の
粉末に脂肪族系カルボン酸を添着した吸着剤を,無機物
の粉末をバインダとして,ハニカム構造体12の表面に
固着させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,例えばクリーンル
ームやクリーンベンチや保管庫などといった高度清浄装
置において使用される,雰囲気中のガス状塩基性不純物
とガス状有機不純物を除去するための空気浄化フィルタ
に関し,さらにそのような空気浄化フィルタの製造方法
と,該空気浄化フィルタを使用した高度清浄装置に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】今日,半導体やLCDパネル等の製造に
あたっては,高度清浄装置が広く利用されている。例え
ばベアウエハから1MDRAMチップを製造するまでに
至る半導体製造ラインは約200程度の工程を含んでお
り,また,素ガラスから9.4型TFTに至るLCDパ
ネル製造ラインは約80程度の工程を含んでいる。これ
らの製造ラインにおいて,ウエハやガラス基板を各プロ
セスに常に連続的に流すことは困難である。例えば,T
FT−LCDの製造ラインでは,前工程で回路が一通り
形成された半製品基板は,後工程に移送されるまでに数
時間〜数十時間を搬送容器(キャリア)内または保管庫
(ストッカ)内にて,高度清浄装置雰囲気に曝しながら
待機させている。
【0003】このように,半導体基板やLCD基板を通
常の高度清浄装置雰囲気中に長時間放置すると,それら
の表面には高度清浄装置雰囲気に由来するガス状不純物
が付着する。近年,このような高度清浄装置中にガス状
で存在し,半導体製造に使用されるシリコンウエハやL
CDパネル製造に使用されるガラス基板の表面に付着し
て半導体やLCDパネルの特性に影響するものとして,
酸性物質,塩基性物質,有機物,ドーパントが挙げられ
る。
【0004】SEMATECHが1995年5月31日
に発表したTechnology Transfer #95052812A-TR「Fore
cast of Airborne Molecular Contamination Limits fo
r the 0.25 Micron High Performance Logic Process」
によれば,これら酸性物質,塩基性物質,有機物,ドー
パントを化学汚染物質と呼び,それぞれつぎのように定
義している。 「酸性物質」:電子受容体のような化学的反応挙動をす
る腐食性物質(フッ酸HF,硫黄酸化物SOx,窒素酸
化物NOxなど) 「塩基性物質」:電子供給体のような化学的反応挙動を
する腐食性物質(アンモニアNH3,アミンなど) 「有機物」:常圧下で常温以上の沸点を有し,清浄表面
に凝縮する物質(シロキサン,フタレート,HMDS,
BHTなど) 「ドーパント」:半導体デバイスの電気的特性を修飾す
るような化学元素(ボロンB,リンP)
【0005】表1は,米国のSEMATECHが199
5年5月31日に発表したTechnology Transfer #9505
2812A-TR「Forecast of Airborne Molecular Contamina
tionLimits for the 0.25 Micron High Performance Lo
gic Process」に掲載された0.25μmプロセス(1998年以
降)に必要な化学汚染許容濃度(ppt)である。許容濃度(p
pt)の下部に示された%値は各許容濃度の信頼度を表示
したものである。化学汚染の深刻な4つの半導体製造プ
ロセスの清浄空間の化学汚染許容濃度が示されている。
ガス状不純物に対する化学汚染対策がなされていない通
常のクリーンルーム雰囲気中に含まれる化学汚染濃度の
実測例は,酸性物質が100ppt〜1,000ppt,塩基性物質が
1,000ppt〜10,000ppt,有機物が1,000ppt〜10,000ppt,
ドーパントが10ppt〜100ppt程度である。
【0006】
【表1】
【0007】したがって,これらのガス状不純物に対す
る化学汚染対策がなされていない通常のクリーンルーム
雰囲気における化学汚染濃度と,表1の化学汚染許容濃
度を比較すると,許容濃度(ppt)の数字にアンダーライ
ンを記した工程において厳しい制御が必要であることが
わかる。つまり酸性物質では,シリサイド工程で180pp
t,配線工程で5pptという厳しい制御が必要である。ま
た塩基性物質については,フォトリソグラフィ工程で1
ppbという厳しい制御が必要である。ドーパントについ
ては,ゲート酸化膜前工程では0.1pptという極めて厳し
い制御が必要である。有機物については,ゲート酸化膜
前工程では1ppb,配線工程では2ppbという厳しい制御が
必要である。
【0008】半導体基板やガラス基板の製造を行う様々
な高度清浄装置,例えばクリーンルーム,クリーンベン
チ,クリーンチャンバ,清浄な製品を保管するための各
種ストッカなど様々な規模の高度清浄装置や,ミニエン
バイロメントと称する局所的な高度清浄装置において
は,表1に見られるように,種々のガス状の酸性物質,
塩基性物質,有機物,ドーパントなどの不純物が問題と
なる。このうち,ドーパントは水溶性のホウ酸化合物や
リン酸化合物として酸性物質と似た化学的挙動を示し,
ガス状の酸性物質を吸着除去する能力のあるフィルタは
このドーパントも吸着除去できる。表1から明かなよう
に,ゲート酸化膜前工程では有機物とドーパントの一括
除去,配線工程では酸と有機物の一括除去がそれぞれ必
要となる。
【0009】表1には記載されていないが,フォトリソ
グラフィ工程で発生するガス状汚染物質には,アンモニ
ア以外にHMDS(ヘキサメチルジシラザン)およびそ
の分解物がある。HMDSはリソ膜とシリコンウエハの
密着性を良くするためにウエハに塗布する親油性物質
で,表面(ウエハ,レンズ,ガラスetc.)に極めて
付着しやすい。HMDSは2〜3日かけて加水分解し,
アンモニアとトリメチルシラノールに変化(ガス化)す
る。トリメチルシラノールがレンズやミラーに付着して
それらの表面を曇らせると露光障害を起こす。0.25
μmサイズのデバイスではKrFレーザ露光(248n
m)を使用していたが,2000年頃から量産が始まる
と予想されているGbit対応の0.18μmサイズの
デバイスでもKrFレーザ露光は延命利用される。この
場合,波長よりもデザインルール寸法がむしろ小さく,
短波長化によって解像度を向上するという露光技術の基
本概念が一変する(詳細は1997年「日経マイクロデ
バス」5月号に掲載)。この場合,HMDSやトリメチ
ルシラノールによるレンズの曇りは致命的悪影響があ
る。HMDSやトリメチルシラノールは共にイオン化し
ない有機物であり,1997年現在のフォトリソグラフ
ィ工程ではアンモニアほど問題になっていないが,Gb
it対応の0.18μmサイズのデバイス製造のフォト
リソグラフィ工程では,塩基と有機物の一括除去が必要
となる。
【0010】これら4種の化学汚染物質のうちで,酸性
物質,塩基性物質,ドーパントの3種については水溶性
のものが多く,イオン交換反応,中和反応を起こし易
い。したがって,これら3種の化学汚染物質を清浄空間
の空気中から除去する手段としては,従来から湿式洗浄
(スクラバ)による水溶液への溶解除去手段や,イオン
交換繊維や薬品添着活性炭などのいわゆるケミカルフィ
ルタによる化学吸着手段があった。一方,4種の化学汚
染物質のうちで,有機物については水に溶けにくいもの
が多く,清浄空間の空気中から除去する手段としては,
活性炭による物理吸着手段があった。
【0011】ここで,酸性物質,塩基性物質,ドーパン
トのガス状無機不純物は,従来,湿式洗浄,イオン交換
繊維,薬品添着活性炭の3つの方法で除去されてきた。
湿式洗浄では,液滴噴霧により酸性物質,塩基性物質,
ドーパントを溶解除去する。薬品添着活性炭を用いたケ
ミカルフィルタの最も簡素な形式として,所定のケース
などに薬品添着粒状活性炭を詰め込んだ構成の充填筒が
知られている。また,その他の形式として,薬品を添着
した繊維状活性炭を低融点ポリエステルやポリエステル
不織布の有機系バインダと複合してフェルト形状にした
構成のケミカルフィルタや,薬品を添着した粒状活性炭
をウレタンフォームや不織布に接着剤で強固に付着させ
たブロック形状およびシート形状のケミカルフィルタも
知られている。イオン交換繊維を用いたケミカルフィル
タは,空気中に含まれる酸性・塩基性の不純物である各
種イオンを,酸性陽イオン交換繊維と塩基性陰イオン交
換繊維を基材とする不織布,抄紙,フェルト等からなる
フィルタでイオン交換,除去するものである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら湿式洗浄
では,噴霧装置のイニシャルコストが大きく,噴霧の高
圧力損失によるランニングコストも無視できない。さら
に,半導体素子(LSI)や液晶ディスプレイ(LC
D)の製造時に利用される高度清浄装置は,温度23〜
25℃,相対湿度40〜55%に保たれているから,高
度清浄装置内の空気を湿式洗浄しながら循環する場合,
液滴噴霧後の温度低下や湿度上昇に対処するため,液滴
噴霧後の空気に対して再度,温湿度制御を行う必要があ
る。また,液滴噴霧後の空気中に残存する液滴除去も噴
霧装置の後段に必要となる(いわゆるキャリーオーバの
問題)。さらに,噴霧装置で循環使用される洗浄液の処
理,例えばバクテリア類の発生防止や溶解汚染物の濃縮
分離といった水処理特有の問題がある。
【0013】また薬品添着活性炭やイオン交換繊維を利
用したいわゆるケミカルフィルタでは,つぎのような問
題がある。まず両者に共通する問題点として,例えば天
井面が清浄空気の吹き出し面となっているクリーンルー
ムの場合についていえば,天井に取り付けられている粒
子除去用フィルタの上流側にケミカルフィルタを配置す
ることが,クリーンルームの空気雰囲気中のガス状不純
物を除去するために極めて有効な手段である。しかしな
がら活性炭は,消防法において指定された可燃物であ
り,イオン交換繊維も極めて着火しやすい素材であり,
火気には厳重な注意が必要である。このため,防災上の
観点から,活性炭やイオン交換繊維を使用したケミカル
フィルタは天井に配置し難い。
【0014】さらに薬品添着活性炭を利用したケミカル
フィルタでは,つぎのような問題がある。充填筒形式の
従来のケミカルフィルタは,不純物の吸着効率は高い
が,圧力損失(通気抵抗)が高いという欠点を有する。
また,フェルト形状やシート形状の従来のケミカルフィ
ルタは優れた通気性があり,吸着効率も充填筒とさほど
劣らないが,構成材料(例えば,不織布,有機系バイン
ダなど)や,活性炭をシートに付着させている接着剤
(例えば,ネオプレン系樹脂,ウレタン系樹脂,エポキ
シ系樹脂,シリコン系樹脂など)や,濾材を周囲のフレ
ームに固着するために用いるシール材(例えばネオプレ
ンゴムやシリコンゴム等)などから発生したガス状有機
不純物がケミカルフィルタ通過後の空気中に含まれてし
まい,半導体の製造に悪影響を与える可能性がある。
【0015】つまり,これらフェルト形状やシート形状
の薬品添着活性炭を使用したケミカルフィルタは,クリ
ーンルーム雰囲気中に含まれるppbオーダの酸性また
は塩基性の極微量不純物や,pptオーダのドーパント
は除去しておきながら,ケミカルフィルタ自身から発生
したガス状有機不純物を通過空気中に混入させてしまう
のである。これらのケミカルフィルタの多くは,元々居
住環境の有害ガスや悪臭を除去するために開発され,そ
のままケミカルフィルタに転用したものである。したが
ってその性能仕様は居住環境の分野に合わせてあるた
め,半導体素子(LSI)や液晶ディスプレイ(LC
D)の製造時の基板表面汚染の原因となる,極微量のガ
ス状無機不純物を除去する空気浄化フィルタとして利用
するためには,性能仕様上の無理があった。
【0016】この種のフィルタとしては,例えば特開昭
61−103518号に示されるものがある。これは粉
末活性炭とエマルジョン型接着剤と固体酸を含む水溶液
をウレタンフォームからなる基材に含浸させた後に乾燥
させたフィルタであるが,エマルジョン型接着剤として
示される合成ゴムラテックスやその他の水分散系の有機
接着剤から,また基材であるウレタンフォーム自体から
もガス状有機物の脱離が生じる。
【0017】しかしながらイオン交換繊維を利用したい
わゆるケミカルフィルタでは,つぎのような問題があ
る。イオン交換繊維を基材とする不織布,抄紙,フェル
ト等を優れた通気性を有するフィルタ濾材に加工するた
めに使用されるバインダや接着剤,および濾材を周囲の
フレームに固着するために用いるシール材などから発生
したガス状有機不純物がケミカルフィルタ通過後の空気
中に含まれてしまい,半導体の製造に悪影響を与える可
能性がある。また,フィルタ濾材からの発塵もある。
【0018】この種のフィルタとしては,特開平6−6
3333号や特開平6−142439に示されるものが
ある。前者の空気浄化システムに用いられるイオン交換
繊維を利用したいわゆるケミカルフィルタでは,ポリア
クリロニトリル系繊維でカルボン酸基を有する陽イオン
交換繊維や,ビニロン系繊維で4級アンモニウム基を有
する陰イオン交換繊維などを,ガラス繊維と熱接着性繊
維状バインダと混合して,ケミカルフィルタの濾材が構
成されている。
【0019】したがって,この構成材料の高分子繊維に
含まれる種々の添加剤からはガス状有機物の脱離が生
じ,またイオン交換基の一部がカルボン酸やアンモニア
として脱離することもある。さらにまた,後者のクリー
ンルーム内の微量汚染空気の浄化方法に用いられるイオ
ン交換繊維を利用したいわゆるケミカルフィルタでは,
ポリエチレンやポリプロピレンの繊維不織布に,陽イオ
ン交換基として,スルホン酸基,カルボン酸基やリン酸
基を導入したり,陰イオン交換基として,強塩基性の4
級アンモニウム基やより低級のアミンを含む弱塩基性基
を導入して作製したイオン交換繊維が利用されている。
したがって,構成材料の高分子繊維不織布に含まれる種
々の添加剤からはガス状有機物の脱離が生じ,またイオ
ン交換基の一部がスルホン酸,カルボン酸,リン酸,ア
ンモニアやアミンとして脱離することもある。
【0020】ケミカルフィルタ濾材からの発塵に対して
は,下流側に粒子状不純物を除去するフィルタを設けな
ければならない。このため,コスト削減がはかれない。
さらに,ケミカルフィルタの下流側に粒子状不純物を除
去するフィルタ(粒子除去用フィルタ)を設ける場合に
おいても,粒子除去用フィルタはガス状有機不純物を発
生する素材を構成要素として含むため,粒子状不純物を
除去するフィルタ自身がガス状有機不純物を発生すると
いう不具合もあった。
【0021】さらに,フォトリソグラフィ工程のよう
に,アンモニアのような塩基性不純物とHMDSやトリ
メチルシラノールのようなガス状有機不純物を同時に含
む空気を処理する場合,塩基性不純物除去用の吸着素材
と有機不純物除去用の吸着素材をそれぞれ別に準備し,
それら2種類の吸着素材を混合したものを一つの吸着層
に形成して使用するか,もしくは2種別々に塩基性不純
物除去用吸着層と有機不純物除去用吸着層を製作して重
ね合わせて使用するという煩雑さがあった。
【0022】また,表1の4つのプロセスのクリーンル
ーム雰囲気が分離されずに混じり合うような場合,例え
ば1つの大部屋クリーンルームに複数のプロセスが存在
する場合には,つぎのような不都合が生じていた。従来
のケミカルフィルタを使用して,無機不純物に敏感なあ
るプロセスにおいて,ガス状無機不純物を除去したこと
で基板の品質が向上した。そのプロセスではケミカルフ
ィルタ自身が発生するガス状有機不純物は基板の品質に
影響を及ぼさなかった。しかし,同ガス状有機不純物が
同じ部屋にある有機不純物に敏感な別のプロセスにおい
て基板の表面汚染を起こし,品質の低下を招いた。
【0023】したがって,複数のプロセスが混在する大
部屋クリーンルームにおいては,ガス状無機不純物を除
去する目的のケミカルフィルタでは,これらのガス状無
機不純物の除去性能が優れているのみならず,ケミカル
フィルタ自身がガス状有機不純物を発生してはならな
い。したがって,ガス状無機不純物を除去するのみなら
ずクリーンルーム雰囲気中の基板表面汚染の原因となる
ガス状有機不純物をも一括除去できるケミカルフィルタ
の開発が強く望まれていた。
【0024】またフォトリソグラフィ工程のように,塩
基性の無機不純物と有機不純物が混在して含まれる空気
を処理する場合,従来,塩基性の無機不純物除去用のケ
ミカルフィルタとは別に活性炭を利用した有機不純物除
去用のケミカルフィルタが必要となる。したがって,こ
の点でも改善が待たれていた。
【0025】ケミカルフィルタを酸・塩基性汚染や有機
物汚染を防止できるクリーンルームやクリーンベンチな
どの高度清浄装置に適用するに当たっての留意点は以下
のとおりである。 (1)ケミカルフィルタ自身がガス状不純物や粒子状不
純物の汚染源(いわゆる2 次汚染源)とならないこ
と。 (2)ケミカルフィルタの圧力損失が低いこと。 (3)ガス状不純物の除去性能が高くかつ寿命が長いこ
と。 である。この点前述したように,従来のケミカルフィル
タはこれらの留意点を満足するものとは言い難い。
【0026】従って本発明の目的は,防災に優れ,かつ
フィルタ自身からのガス状有機不純物やガス状無機不純
物の脱離がなく,しかも特にフォトリソグラフィ工程で
問題となる処理対象空気中に含まれる微量のガス状塩基
性不純物のみならず,ガス状有機不純物も同時に除去し
て,ガス状塩基性不純物とガス状有機不純物による基板
などの表面汚染を防止できる空気浄化フィルタとその空
気浄化フィルタを利用した高度清浄装置を提供すること
にある。後述のように,本発明による空気浄化フィルタ
では,塩基性の無機不純物のみならず,有機不純物まで
をも一括して除去できるので,吸着層体積の低減,圧力
損失の低減,吸着層製造コストの低減等の大きな利点が
生まれる。
【0027】
【課題を解決するための手段】以上の課題を解決するた
めに,請求項1の発明によれば,けいそう土,シリカ,
アルミナ,シリカとアルミナの混合物,珪酸アルミニウ
ム,活性アルミナ,多孔質ガラス,活性白土,活性ベン
トナイト,合成ゼオライトの少なくとも1種からなる無
機物の粉末に有機酸を添着した吸着剤を,無機物の粉末
をバインダとして,支持体の表面に固着させて無機材料
層を形成したことを特徴とする,空気浄化フィルタが提
供される。
【0028】無機材料層内において前記吸着剤の粉末や
無機物バインダの粉末の微粒子が隣接する箇所には通気
孔となる間隙が形成され,処理対象ガスは,無機材料層
の表面から,該通気孔をかいくぐるように,無機材料層
内部に入り込んだり,逆に無機材料層内部から外部に出
て行ったりする。そして,このように無機材料層内を通
過する際に,前記吸着剤により空気中の塩基性のガス状
不純物が吸着・除去されるのである。
【0029】有機酸は無機酸に対するカルボン酸の総括
名称であり,このカルボキシル基(-COOH)のつくもの
の数は数千種とも数万種ともいわれている。有機酸は表
2,表3,表4に示したように,脂肪族系カルボン酸と
芳香族系カルボン酸に大きく分類される。
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】脂肪族系カルボン酸は食品添加物として頻
繁に利用されており,安全性が高く,環境中に廃棄され
ても無機酸のような顕著な水質汚染の原因とならない。
【0034】一方無機酸は,酸性度が大きいと人体に対
する危険物である場合が多い(例えば塩酸,硫酸,硝
酸,etc.)。さらに,無機酸を含んだ空気浄化フィ
ルタが廃棄物として環境中に放出されると,雨水に溶出
した無機酸は水質汚染の原因となる。また酸性度の小さ
く人体への危険性の少ないリン酸がガス状塩基性不純物
除去のために活性炭によく添着されているが,リンがガ
ス状物質として脱離すると,表1に示されたドーパント
の汚染物質になる。したがって,リン酸も高度清浄装置
においては利用しづらいのである。
【0035】請求項2の発明は,前記吸着剤を,タル
ク,カオリン鉱物,ベントナイト,けいそう土,シリ
カ,アルミナ,シリカとアルミナの混合物,珪酸アルミ
ニウム,活性アルミナ,多孔質ガラス,リボン状構造の
含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物,活性白土,活性ベン
トナイト又は合成ゼオライトの少なくとも1種からなる
無機物の粉末をバインダ又は充填材料として,支持体の
表面に固着させて無機材料層を形成したことを特徴とす
る空気浄化フィルタである。シリカとしては例えばシリ
カゲルが使用される。アルミナとしては例えばアルミナ
ゲルが使用される。シリカとアルミナの混合物としては
例えばシリカゲルとアルミナゲルの混合ゲルが使用され
る。この請求項2の空気浄化フィルタにおいても同様
に,無機材料層内を通過する際に,前記吸着剤により空
気中の塩基性のガス状不純物が吸着・除去される。
【0036】ところでゼオライトには、天然ゼオライト
と合成ゼオライトがあるが、工業的には純度の低い天然
ゼオライトよりも合成ゼオライトの使用が一般的であ
る。ゼオライトは3〜10オングストロームの大きさの
細孔を有し、合成ゼオライトでは均一の細孔のものを製
造できる。本発明において、充填材料、すなわち吸着剤
の個々の粒子の間を充填するための材料として合成ゼオ
ライトを用いた場合、無機物の粉末に有機酸を添着した
吸着剤の個々の粒子の間を、個々のゼオライト粒子が充
填し、吸着剤粒子とゼオライト粒子の隣接箇所に通気孔
となる間隙が形成される。この通気孔は、処理対象空気
が吸着剤粒子に添着した有機酸に到達するために機能す
る。
【0037】さらに合成ゼオライトそのものが有する細
孔は、その細孔の大きさよりも小さな分子径のガス状不
純物を、前記通気孔を処理対象空気が透過する際に吸着
・除去する。したがって、処理対象空気中に含まれるガ
ス状有機不純物の種類に応じて、合成ゼオライトの細孔
径を選択すれば、ガス状有機不純物を吸着する性能が良
好な空気浄化フィルタを設計することができる。
【0038】請求項3の発明は,前記吸着剤を無機物の
粉末をバインダとして固着させた第1の無機材料層と,
けいそう土,シリカ,アルミナ,シリカとアルミナの混
合物,珪酸アルミニウム,活性アルミナ,多孔質ガラ
ス,リボン状構造の含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物,
活性白土,活性ベントナイト,合成ゼオライトの少なく
とも1種からなる第2の無機材料層を,それら第1の無
機材料層と第2の無機材料層のいずれか一方が支持体の
表面に接する関係を持って積層したことを特徴とする空
気浄化フィルタである。シリカとしては例えばシリカゲ
ルが使用される。アルミナとしては例えばアルミナゲル
が使用される。シリカとアルミナの混合物としては例え
ばシリカゲルとアルミナゲルの混合ゲルが使用される。
【0039】この請求項3の空気浄化フィルタにおい
て,第1の無機材料層と第2の無機材料層の一方におい
てバインダとして用いられる無機物の粉末が,他方にお
いて用いられる無機物の粉末と同じであってもよく,ま
た異なっていてもよい。例えば,第1の無機材料層に用
いたバインダとしての無機物の粉末はタルク,カオリン
鉱物,ベントナイトのような粘土鉱物であっても構わな
い。また第1の無機材料層が支持体の表面に接する形態
であっても、第1の無機材料層に積層される第2の無機
材料層を構成する無機物粉末の微粒子が、隣接する箇所
には通気孔となる間隙が存在するので,この請求項3の
空気浄化フィルタにおいても同様に,前記吸着剤により
空気中の塩基性のガス状不純物が吸着・除去される。
【0040】請求項4の発明は,前記吸着剤を,タル
ク,カオリン鉱物,ベントナイト,けいそう土,シリ
カ,アルミナ,シリカとアルミナの混合物,珪酸アルミ
ニウム,活性アルミナ,多孔質ガラス,リボン状構造の
含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物,活性白土,活性ベン
トナイト,合成ゼオライトの少なくとも1種からなる無
機物の粉末をバインダ又は充填材料として造粒させたペ
レットを,支持体の表面に固着させたことを特徴とする
空気浄化フィルタである。シリカとしては例えばシリカ
ゲルが使用される。アルミナとしては例えばアルミナゲ
ルが使用される。シリカとアルミナの混合物としては例
えばシリカゲルとアルミナゲルの混合ゲルが使用され
る。
【0041】この請求項4の空気浄化フィルタにおいて
も同様に,前記吸着剤の粉末や無機物バインダの粉末の
微粒子が隣接する箇所には通気孔となる間隙が形成さ
れ,処理対象ガスは,ペレットの表面から,該通気孔を
かいくぐるように,ペレット内部に入り込んだり,逆に
ペレット内部から外部に出て行ったりする。そして,前
記吸着剤により空気中の塩基性のガス状不純物が吸着・
除去される。
【0042】請求項5の発明は,前記吸着剤を,無機物
の粉末をバインダとして造粒させた第1のペレットの周
囲に,けいそう土,シリカ,アルミナ,シリカとアルミ
ナの混合物,珪酸アルミニウム,活性アルミナ,多孔質
ガラス,リボン状構造の含水珪酸マグネシウム質粘土鉱
物,活性白土,活性ベントナイト,合成ゼオライトの少
なくとも1種からなる無機物の粉末をコーティングした
第2のペレットを,支持体の表面に固着させたことを特
徴とする空気浄化フィルタである。シリカとしては例え
ばシリカゲルが使用される。アルミナとしては例えばア
ルミナゲルが使用される。シリカとアルミナの混合物と
しては例えばシリカゲルとアルミナゲルの混合ゲルが使
用される。
【0043】この請求項5の空気浄化フィルタにおい
て,第1のペレットを構成する前記吸着剤の粉末や無機
物バインダの粉末の微粒子が隣接する箇所には通気孔が
形成され、さらに第1のペレットの周囲にコーティング
された無機物の粉末同士が隣接する箇所には通気孔とな
る間隙が存在する。そして,第2のペレットの表面か
ら,コーティング部分の該通気孔をかいくぐるように,
処理空気が第1のペレット内部に入り込んだり,逆に第
1のペレット内部から外部に出て行ったりする。それゆ
え同様に,前記吸着剤により空気中の塩基性のガス状不
純物が吸着・除去されるのである。
【0044】なお,請求項2,4の空気浄化フィルタに
おいては,前記吸着剤で空気中の塩基性のガス状不純物
が吸着・除去でき,バインダとして用いる無機粉末には
ミクロ孔域やメソ孔域の細孔を有する種類を適宜選択す
ることでDOP,DBP,BHT,シロキサン等のガス
状有機物が吸着・除去できるので,基板の表面汚染に関
与する塩基性のガス状不純物とガス状有機物が混在する
雰囲気であってもこれら化学汚染物質のほとんどを捕捉
できる。
【0045】請求項2,4の空気浄化フィルタにおける
以上の作用に加え,請求項3の空気浄化フィルタにおい
て第1の無機材料層を内側にした場合,及び請求項5の
空気浄化フィルタにあっては,外側の無機材料層又は第
2のペレットの外側部分のコーティング層によって,そ
れらの下部にある前記吸着剤の粉末と無機物の粉末のバ
インダからなる無機材料層または第1のペレットからの
発塵を防止することができる。
【0046】またこれら請求項3,5の空気浄化フィル
タは,第2の無機材料層や外側のコーティング層を構成
する無機物の粉末が,基板の表面汚染に関与するDO
P,DBP,BHT,シロキサン等のガス状有機物の物
理吸着に適した細孔を有していれば,これらのガス状有
機物がその細孔によって吸着除去されるという効果もあ
る。
【0047】請求項3の空気浄化フィルタにおいて第1
の無機材料層を外側にした場合には,前述の発塵防止効
果はなくなるが,ガス状不純物の吸着効果はあまり変わ
らず,空気と直接触れあう外側の第1の無機材料層で空
気中の塩基性のガス状不純物の吸着・除去が行われ,内
側の第2の無機材料層で空気中のガス状有機不純物の吸
着・除去が行われる。
【0048】ここで,前記吸着剤について簡単に説明す
る。前記吸着剤は,けいそう土,シリカ,アルミナ,シ
リカとアルミナの混合物,珪酸アルミニウム,活性アル
ミナ,多孔質ガラス,活性白土,活性ベントナイト,合
成ゼオライトの少なくとも1種からなる無機物の粉末に
有機酸を添着したものである。これらの無機物の粉末に
ついて,5〜300オングストロームの範囲に分布する
細孔の総容積と,該無機物の細孔の比表面積を,ガス吸
着法により実測した結果を表5(I)に示す。
【0049】
【表5】
【0050】なお,シリカとしてはシリカゲルを粉体試
料とした。また,アルミナとしてはアルミナゲルを粉体
試料とした。5〜300オングストロームの範囲に分布
する細孔に着目した理由は,この範囲の大きさの細孔が
ガス状不純物の物理吸着を得意とし,処理対象空気中の
ガス状塩基性不純物がこれらの細孔に吸着しやすいから
である。細孔表面には有機酸が添着されているから,物
理吸着したガス状塩基性不純物は直ちに有機酸と中和し
て化学吸着され,再脱離することはない。前記無機物の
粉末の比表面積が大きいほど,有機酸の添着される面積
も大きくなり,ガス状塩基性不純物の吸着容量も大きく
なる。ただし,表5(I)の無機物に有機酸を添着する
と,有機酸が細孔空隙部に入り込んで,添着前の純粋な
無機物と比較して,比表面積や細孔容積がかなり減少す
る。
【0051】また,表5(I)の無機物はいずれも添着
された有機酸と化学反応を起こさないから,有機酸のガ
ス状塩基性不純物に対する化学吸着能力が損なわれるこ
とがない。けいそう土は含水コロイド珪酸であり,酸に
侵されにくい。シリカ,アルミナ,シリカとアルミナの
混合物,珪酸アルミニウム,多孔質ガラスのいずれも酸
に侵されにくい。活性アルミナは水酸化アルミニウムを
加熱脱水(450℃)して得られ,酸に難溶である。活
性白土は酸性白土を硫酸処理して得られ,酸に難溶であ
る。また活性ベントナイトはCa型ベントナイトや酸性
白土を熱硫酸で処理し,モンモリナイトのアルミニウム
やマグネシウムを溶出させ,細孔の多い表面を有する過
剰ケイ酸を作り出して得られ,吸着能・触媒能はより増
加し,酸に侵されにくい。合成ゼオライトも酸に侵され
にくい。
【0052】一方,タルク,カオリン鉱物,ベントナイ
トのようなバインダとしてよく利用される無機物は表5
(II)に示されるように,5〜300オングストロー
ムの範囲に分布する細孔容積や比表面積がいずれも表5
(I)の無機物と比較して極めて小さい。表5(II
I)のリボン状構造の含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物
の一種であるセピオライトは表5(I)の無機物と同様
に5〜300オングストロームの範囲に分布する細孔容
積や比表面積が大きい。しかし,表5(II),(II
I)の無機物に有機酸を添着すると,タルク(Mg3[(OH)2
Si4O10])やカオリン鉱物(Al4[(OH)8Si4O10])やセピオラ
イト(Mg8Si12O30(OH2)4(OH)46〜8H2O)のように水酸基と
有機酸が中和したり,ベントナイトのように陽イオン交
換能によって有機酸と化学反応を起こしたりするから,
有機酸のガス状塩基性不純物に対する化学吸着能力が損
なわれる。
【0053】また,前記吸着剤(けいそう土,シリカ,
アルミナ,シリカとアルミナの混合物,珪酸アルミニウ
ム,活性アルミナ,多孔質ガラス,活性白土,活性ベン
トナイト又は合成ゼオライトの少なくとも1種からなる
無機物の粉末に有機酸を添着した吸着剤)の粉末には自
己結合性がないため,前記吸着剤の粉末をペレットに成
型したり,支持体の表面に層状に固着させるためには,
バインダを添加しなければならない。
【0054】本発明では,前記吸着剤の粉末を,タル
ク,カオリン鉱物,ベントナイト,けいそう土,シリ
カ,アルミナ,シリカとアルミナの混合物,珪酸アルミ
ニウム,活性アルミナ,多孔質ガラス,リボン状構造の
含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物,活性白土,活性ベン
トナイト又は合成ゼオライトのうちの少なくとも1種の
無機物の粉末をバインダ又は充填材料として用いて,支
持体の表面に固着させて無機材料層を形成したり(請求
項1〜3),または造粒してペレットを形成する(請求
項4〜5)。なお,シリカとしては例えばシリカゲルが
使用される。アルミナとしては例えばアルミナゲルが使
用される。シリカとアルミナの混合物としては例えばシ
リカゲルとアルミナゲルの混合ゲルが使用される。
【0055】これら請求項1〜5の空気浄化フィルタに
おいて,請求項6に記載したように,前記支持体が,ハ
ニカム構造体であることが好ましい。また,請求項7に
記載したように,前記ハニカム構造体が,無機繊維を必
須成分とする構造体であることが好ましい。このハニカ
ム構造の吸着層は,セラミック状の硬い表面を有し,薬
品添着活性炭やイオン交換繊維を利用した従来のケミカ
ルフィルタに比べて発塵量が極めて少ない。また,この
支持体のみならず,前記吸着剤において有機酸の担持に
利用する無機物粉末や,それを支持体表面に固着させる
ために用いるバインダも無機物の粉末とすることによ
り,本発明の空気浄化フィルタを構成する材料からは,
ガス状有機物の脱離がほとんどない。
【0056】なお本明細書において,ハニカム構造体と
は,いわゆる蜂の巣構造の他,断面が格子状,波形状な
どであって空気が構造体の要素となるセルを通過し得る
構造をすべて含む。本発明では支持体はハニカム構造体
に特定されない。ロックウールなどの三次元網目構造体
もまた支持体として好適に利用できる。この場合には後
述するように,網目構造の平面方向のみならず奥行き方
向にも本発明の吸着剤の粉末を固着させるのが良い。
【0057】支持体表面への吸着剤の固着の方法には,
無機物の粉末のバインダにより固着する方法や,前記吸
着剤の粉末を無機物の粉末をバインダとして用いて造粒
してペレットにし,このペレットを支持体表面に接着す
る方法がある。
【0058】また,請求項8の発明は,タルク,カオリ
ン鉱物,ベントナイト,けいそう土,シリカ,アルミ
ナ,シリカとアルミナの混合物,珪酸アルミニウム,活
性アルミナ,多孔質ガラス,リボン状構造の含水珪酸マ
グネシウム質粘土鉱物,活性白土,活性ベントナイト又
は合成ゼオライトのうちの少なくとも1種からなる無機
物の粉末をバインダ又は充填材料にして前記吸着剤の粉
末を造粒させたペレット,もしくは,前記吸着剤の粉末
を無機物の粉末をバインダにして造粒させた第1のペレ
ットの周囲に,けいそう土,シリカ,アルミナ,シリカ
とアルミナの混合物,珪酸アルミニウム,活性アルミ
ナ,多孔質ガラス,リボン状構造の含水珪酸マグネシウ
ム質粘土鉱物,活性白土,活性ベントナイト又は合成ゼ
オライトのうちの少なくとも1種からなる無機物の粉末
をコーティングした第2のペレットを,ケーシング内に
充填したことを特徴とする,空気浄化フィルタである。
【0059】この場合も,シリカとしては例えばシリカ
ゲルが使用される。アルミナとしては例えばアルミナゲ
ルが使用される。シリカとアルミナの混合物としては例
えばシリカゲルとアルミナゲルの混合ゲルが使用され
る。この請求項8の空気浄化フィルタにあっては,空気
流路の形状・面積,フィルタの設置条件に応じて,ケー
シングの形状・大きさ,ペレットの充填量を適宜選択し
得るという設計上の融通性が得られる。
【0060】また,請求項9に記載したように,前記無
機物において,5〜300オングストロームの範囲に分
布する細孔の総容積が重量当たり0.2cc/g以上で
あるか,または細孔の比表面積が100m2/g以上で
あることが好ましい。いずれにせよ,前記吸着剤の粉末
のバインダとして用いた無機材料層やペレットに含まれ
る無機物の粉末は,前記吸着剤の粉末を支持体表面に機
械的に固着させておく能力または前記吸着剤の粉末をペ
レットに造粒する際の結合剤としての能力と,前記吸着
剤を構成する無機物粉末の表面に添着された有機酸に処
理対象ガスが容易に到達しうるための多孔性構造を合わ
せ持つ。
【0061】前記吸着剤やバインダとして用いた無機物
の粉末の隣接部に形成される間隙の通気孔を通じて,処
理対象空気は前記吸着剤の粉末表面に添着された有機酸
に容易に到達できてガス状塩基性不純物が除去される。
その際,バインダや充填材料として用いた無機物の粉末
表面に存在する前記範囲の大きさの細孔の表面にガス状
有機不純物が物理吸着されて除去される。本発明の主な
狙いであるガス状塩基性不純物の除去の他に,バインダ
や充填材料として用いた無機物粉末の細孔による副次効
果としてガス状有機不純物の一括除去まで実現できる。
【0062】表5の(I),(III)のグループのバ
インダは(II)のグループのバインダと比較して,比
表面積と細孔容積はいずれも,相当大きい。したがって
ガス状有機不純物の物理吸着能力は,(I),(II
I)のバインダが(II)のバインダよりも相当優れて
いる。(II)のグループのタルク,カオリン鉱物,ベ
ントナイト等のバインダは通気性を重視しており,隣接
したバインダ微粒子同士または隣接したバインダ微粒子
と支持体に担持する吸着剤微粒子の間隙部分に形成され
る通気孔の主要な大きさは500オングストローム以上
になる。つまり,通気孔は通気性は極めて良くても物理
吸着を起こしにくいマクロ孔である。また,タルク,カ
オリン鉱物,ベントナイトといったバインダ微粒子自体
の表面にも物理吸着を起こしやすい細孔はあまり存在し
ない。
【0063】表5の(II)のグループのバインダは,
単に担持対象となる前記吸着剤の粉末を支持体表面に機
械的に担持するために使用し,この場合,ガス状塩基性
不純物の吸着能力を高めるために前記吸着剤の粉末の担
持量を出来得る限り多くし,バインダの前記吸着剤粉末
に対する含有割合は出来得る限り少ない方がよい。しか
し,バインダの含有割合を少なくし過ぎると前記吸着剤
粉末の支持体表面への固着が不完全となって剥がれや発
塵の原因となる。例えば,前記吸着剤粉末にベントナイ
トのバインダとシリカゾルの無機系固着補助剤を混合し
て支持体に固着する場合,支持体表面の無機材料層中の
前記吸着剤の含有割合(重量基準)が75%を上回ると
支持体表面の無機材料層の機械的強度が弱くなって実用
に耐えられなくなった。つまり,(II)のグループの
バインダには,前記吸着剤粉末の担持能力と,担持され
た前記吸着剤粉末の表面に処理対象ガスが到達しやすい
よう優れた通気能力が要求されており,ガス状有機不純
物の吸着能力は要求されていない。
【0064】これに対して,表(I),(III)のグ
ループのバインダを使用する場合には,隣接したバイン
ダ微粒子同士または隣接したバインダ微粒子と前記吸着
剤微粒子の間隙部分に形成される通気孔は(II)のグ
ループのバインダと変わらない。したがって,前記吸着
剤の粉末表面に処理対象ガスが到達しやすいよう優れた
通気性も有るため,前記吸着剤の粉末表面に添着された
有機酸においてガス状塩基性不純物が除去されるという
特性は(II)のグループのバインダの場合と同様に発
揮される。
【0065】ガス状分子の物理吸着のしやすさは,ミク
ロ孔,メソ孔,マクロ孔の順であり,マクロ孔はほとん
ど物理吸着に関与しないといわれている。(I),(I
II)のグループのバインダでは,バインダ微粒子自体
の表面に物理吸着を起こしやすい細孔,つまり孔径が2
0オングストローム以下の大きさの細孔であるミクロ孔
や,孔径が20オングストローム以上500オングスト
ローム以下の大きさの細孔であるメソ孔が存在するた
め,前記吸着剤単独では吸着しにくいDOP,DBP,
BHTやシロキサン等の基板表面の汚染の原因となるガ
ス状有機不純物は,物理吸着によりバインダ微粒子自体
の表面で吸着除去される。
【0066】表5の(I),(III)のグループのバ
インダを使用する場合についても,支持体表面の無機材
料層に占める前記吸着剤粉末の含有割合(重量基準)に
は上限がある。例えば,前記吸着剤粉末をシリカゲルを
バインダとして支持体に固着する場合,支持体表面の無
機材料層中の前記吸着剤の含有割合(重量基準)が72
%を上回ると、該無機材料層の機械的強度が弱くなって
実用に耐えられなくなった。
【0067】さらに,請求項2および4において表5の
(I),(III)のグループの無機物の粉末をバイン
ダとして用いた空気浄化フィルタや,請求項3,5の空
気浄化フィルタにおいては,支持体はガス状有機不純物
を吸着・除去する無機材料層やペレットで被覆されてい
る。したがって,仮に支持体がガス状有機不純物を脱離
するような有機材料を含んでいたとしても,支持体自体
が発生するガス状有機不純物は支持体を被覆する無機材
料層やペレットで吸着・除去されてしまうため,処理対
象空気中にまで出ていくことはない。
【0068】請求項10に記載したように,前記無機材
料層,第1の無機材料層,第2の無機材料層,ペレッ
ト,第1のペレット又は第2のペレットの少なくともい
ずれか一つに無機系固着補助剤を混入してもよい。その
場合,請求項11に記載したように,前記無機系固着補
助剤が珪酸ソーダ,シリカ又はアルミナの少なくとも一
つを含むことが好ましい。なお,シリカとしては例えば
シリカゾルが使用される。アルミナとしては例えばアル
ミナゾルが使用される。
【0069】なお,本発明の空気浄化フィルタは,ガス
状有機不純物を発生しない素材のみで構成し,かつ可燃
物を含まない素材のみで構成することが好ましい。
【0070】以上の各空気浄化フィルタにおいて用いる
有機酸は,請求項12に記載したように,脂肪族系カル
ボン酸であることが好ましい。前掲の表2,表3,表4
に示したように,有機酸は脂肪族系カルボン酸と芳香族
系カルボン酸に大きく分類されるが,脂肪族系カルボン
酸は食品添加物としても頻繁に利用されている程安全性
が高い。また環境中に廃棄されても無機酸のような顕著
な水質汚染の原因とならない。この点,芳香族系カルボ
ン酸は,万一ガス状物質として脱離すると有機物の汚染
物質となるため,高度清浄装置においては利用しづら
い。したがって,本発明における空気浄化フィルタにお
いて用いる有機酸は,脂肪族系カルボン酸であることが
好ましい。
【0071】またイオン交換量が10meq/gを下回
るような物質は,吸着剤として塩基性汚染物の吸着容量
が小さいので,長寿命の空気浄化フィルタを構成する場
合には,イオン交換量が10meq/g以上のものが好
ましい,
【0072】さらに常温で液体であるものは無機物の粉
末に添着することが困難であるから,常温で固体である
脂肪族系カルボン酸が好ましい。
【0073】そして本発明の空気浄化フィルタは室温付
近で使用される場合が多いと考えられるが,例えば半導
体デバイスの製造をクリーンルーム中で行う場合,半導
体デバイス製造装置の中には,拡散炉など,高温でウエ
ハを処理する装置が存在しているので,できれば高い周
囲温度でも使用可能なものを選択することが望ましい。
すなわち,融点や沸点は出来るだけ高い方がよい。従っ
て,安全を考えて,融点が100℃以上,沸点が200
℃以上であることが望ましい。
【0074】以上の各条件を満たす脂肪族系カルボン酸
を,表2,表3中の「適否」欄において○印で示した。
具体的に列挙すると,アジピン酸,アスパラギン酸,ア
セチレン酸、イソクエン酸、イタコン酸,クエン酸、グ
リシン、グルタル酸、コハク酸,シュウ酸,酒石酸、ピ
メリン酸,フマル酸,マレイン酸、マロン酸、メチルフ
マル酸、メチルリンゴ酸、リンゴ酸である。したがっ
て,これらの脂肪族系カルボン酸が,本発明の空気浄化
フィルタに適している。
【0075】請求項13の発明は,空気浄化フィルタの
製造方法を提供するものであって,前記吸着剤の粉末
と,タルク,カオリン鉱物,ベントナイト,けいそう
土,シリカ,アルミナ,シリカとアルミナの混合物,珪
酸アルミニウム,活性アルミナ,多孔質ガラス,リボン
状構造の含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物,活性白土,
活性ベントナイト又は合成ゼオライトのうちの少なくと
も1種の無機物の粉末を分散させた懸濁液に支持体を浸
漬させた後,該支持体を乾燥させて支持体の表面に無機
材料層を固着させることを特徴としている。
【0076】また請求項14の空気浄化フィルタの製造
方法は,まず前記吸着剤の粉末と,バインダとしての無
機物の粉末を分散させた懸濁液に支持体を浸漬させる。
次いで該支持体を乾燥させて支持体の表面に第1の無機
材料層を形成する。このようにして生成された第1の無
機材料層を形成した支持体を,けいそう土,シリカ,ア
ルミナ,シリカとアルミナの混合物,珪酸アルミニウ
ム,活性アルミナ,多孔質ガラス,リボン状構造の含水
珪酸マグネシウム質粘土鉱物,活性白土,活性ベントナ
イト又は合成ゼオライトのうちの少なくとも1種の無機
物の粉末を分散させた懸濁液に浸漬させる。そして乾燥
させて前記第1の無機材料層の表面に第2の無機材料層
を形成する。あるいは支持体の表面に前記第2の無機材
料層を形成した後,さらに該第2の無機材料層の表面に
前記第1の無機材料層を再度形成することを特徴とする
ものである。
【0077】これらの空気浄化フィルタの製造方法にお
いては、請求項15に記載したように、支持体を含浸さ
せる懸濁液に、予め別途有機酸を溶かし込んでおいても
よい。そうすると、浸漬した懸濁液から支持体を引き上
げる際に、懸濁液に溶けた有機酸が前記吸着剤の粉末や
無機物バインダの粉末等の微粒子の隣接する箇所の間隙
部に含浸する。その後支持体を乾燥させると、該間隙部
に含浸された有機酸から水分のみが蒸発して、該間隙部
が無機材料層の通気孔に変化する。すなわち、有機酸の
固形分が通気孔内壁表面に担持された状態になる。その
結果、有機酸の量を増加させてフィルタの寿命を延ばす
ことが可能になるのである。
【0078】これら請求項13,14、15に記載した
空気浄化フィルタの製造方法によれば,製造する空気浄
化フィルタを,ガス状有機不純物を発生しない素材のみ
から構成することができる。また実質的にも,この空気
浄化フィルタは可燃物を含まない素材のみで構成される
ことになる。
【0079】請求項13,14、15に記載した空気浄
化フィルタの製造方法においては,シリカとしては例え
ばシリカゲルが使用できる。またアルミナとしては例え
ばアルミナゲルが使用できる。シリカとアルミナの混合
物としては例えばシリカゲルとアルミナゲルの混合ゲル
が使用できる。前記支持体の表面に無機材料層を形成し
たり,さらに第1の無機材料層と第2の無機材料層の一
方の上に他方を形成する際に,前記懸濁液にゾル状態の
無機系固着補助剤を混入した場合,前記無機材料層や,
前記第1,第2の無機材料層はそれぞれ無機系固着補助
剤を含むことになる。
【0080】これら請求項13,14、15に記載した
空気浄化フィルタの製造方法において使用する有機酸に
ついては,請求項16に記載したように,脂肪族系カル
ボン酸であることが好ましく,そのなかでも,アジピン
酸,アスパラギン酸,アセチレン酸、イソクエン酸、イ
タコン酸,クエン酸、グリシン、グルタル酸、コハク
酸,シュウ酸,酒石酸、ピメリン酸,フマル酸,マレイ
ン酸、マロン酸、メチルフマル酸、メチルリンゴ酸、リ
ンゴ酸が好適である。
【0081】請求項17の発明は,清浄雰囲気が要求さ
れる空間内の空気を循環させる循環経路を備えた高度清
浄装置において,該循環経路に,請求項1,2,3,
4,5,6,7,8,9,10,11又は12のいずれ
かに記載の空気浄化フィルタを配置すると共に,前記空
間より上流側であって空気浄化フィルタの下流側に粒子
状不純物を除去するフィルタを配置したことを特徴とし
ている。
【0082】この請求項17の高度清浄装置によれば,
高度清浄装置内において循環している空気中のガス状塩
基性不純物と,場合によってはガス状有機不純物までも
除去して,この高度清浄装置内の処理空間でハンドリン
グされる基板表面の雰囲気由来の表面汚染を防止するこ
とができる。そしてこの請求項17の高度清浄装置で
は,可燃物である活性炭やイオン交換繊維を使用してい
ないので,防災に優れている。したがって請求項18に
記載したように,前記空気浄化フィルタと粒子状不純物
を除去するフィルタを,前記空間の天井部に配置するこ
とができるようになる。
【0083】
【発明の実施の形態】以下,添付図面を参照しながら本
発明にかかる空気浄化フィルタ及びその製造方法の好ま
しい実施の形態について詳細に説明する。なお,以下の
説明において,単に”フィルタ”と称する場合はガス状
不純物除去を目的としたフィルタを指し,粒子の除去を
目的とした場合は”粒子除去用フィルタ”と呼んで区別
する。
【0084】図1は,本発明の実施の形態にかかるフィ
ルタ1の概略的な分解組立図を示している。図示のよう
に,隣接する波形シート10の間に,凹凸のない薄板シ
ート11を挟んだ構造のハニカム構造体12全体に粉末
状の前記吸着剤をタルク,カオリン鉱物,ベントナイ
ト,けいそう土,シリカ,アルミナ,シリカとアルミナ
の混合物,珪酸アルミニウム,活性アルミナ,多孔質ガ
ラス,リボン状構造の含水珪酸マグネシウム質粘土鉱
物,活性白土,活性ベントナイト又は合成ゼオライトの
うちの少なくとも1種の無機物の粉末をバインダとして
用いてハニカム構造体12の表面に固着させた構成にな
っている。
【0085】シリカとしては例えばシリカゲルが使用さ
れ,アルミナとしては例えばアルミナゲルが使用され
る。シリカとアルミナの混合物としては,例えばシリカ
ゲルとアルミナゲルの混合ゲルが使用される。なお以
下,バインダとして用いたこれら無機物の粉末を,単に
「無機バインダ」と称する。
【0086】即ち,図示のようにフィルタ1は,処理空
気の流通方向(図中,白抜き矢印13で示す方向)に開
口するようにアルミニウム製の外枠15a,15b,1
5c,15dを組み立て,その内部空間に粉末状の前記
吸着剤を無機バインダを用いて表面に固着した波形シー
ト10と薄板シート11を,空気流通方向13に略平行
に交互に積層することにより構成される。フィルタ1の
外形や寸法などは,設置空間に合わせて任意に設計する
ことができる。
【0087】ここで,フィルタ1の製造方法の一例を説
明する。先ず,無機繊維(セラミック繊維,ガラス繊
維,シリカ繊維,アルミナ繊維等)と有機材料(パル
プ,溶融ビニロンの混合物)と珪酸カルシウムの3つの
材料を1:1:1の等重量で配合し,湿式抄紙法により
約0.3mmの厚みに抄造する。なお,珪酸カルシウム
の代わりに,珪酸マグネシウムを主成分とするセピオラ
イト,パリゴルスカイト等の繊維状結晶の粘土鉱物を使
用してもよい。この抄造シートをコルゲータによって波
形加工し,出来上がった波形シート10を,同様の材料
を薄板形状に抄造した薄板シート11に接着剤で接着
し,図1に示すようなハニカム構造体12を得る。
【0088】このハニカム構造体12を,電気炉に入れ
て約400℃で1時間程度の熱処理を行い,有機質成分
が全て除去される。有機質成分が除去された後のハニカ
ム構造体の表面には無数のミクロンサイズの陥没穴が残
って,この陥没穴を孔とする多孔性のハニカム構造体1
2を製造することができる。後にこの陥没穴に吸着剤や
無機バインダの微粒子がはまり込むことになる。次に,
前記吸着剤、すなわち、けいそう土,シリカ,アルミ
ナ,シリカとアルミナの混合物,珪酸アルミニウム,活
性アルミナ,多孔質ガラス,活性白土,活性ベントナイ
ト又は合成ゼオライトのうちの少なくとも1種からなる
無機物の粉末に有機酸を添着した吸着剤の粉末と,無機
バインダを分散させた懸濁液に,このハニカム構造体1
2を数分間浸した後引き上げ,約200℃で1時間程度
の熱処理で乾燥して,図2に示すように,ハニカム構造
体12の表面に前記吸着剤の粉末を無機バインダを用い
て固着させて無機材料層20を形成することにより,フ
ィルタ1を得ることができる。
【0089】前記懸濁液には無機系固着補助剤,例えば
珪酸ソーダ又はシリカ又はアルミナの少なくとも一種を
混入することも可能である。シリカとしては例えばシリ
カゾルが使用される。アルミナとしては例えばアルミナ
ゾルが使用される。シリカゾルやアルミナゾルはハニカ
ム構造体12の表面に固着した後にそれぞれシリカゲ
ル,アルミナゲルに変化する。無機系固着補助剤の役割
は,前記吸着剤の粉末と無機バインダが,ハニカム構造
体12の表面(ハニカム構造体12の要素となるセルの
内表面を含む(以下同様))に強固に固着するための補
助剤として機能する。
【0090】さらに前記懸濁液に有機酸を溶かし込んで
おけば、ハニカム構造体12を該懸濁液から引き上げる
際に、懸濁液に溶けた有機酸が、前記吸着剤の粉末や無
機物バインダの粉末や無機系固着補助剤の微粒子の隣接
する箇所の間隙部に含浸される。引き上げたハニカム構
造体12を熱処理乾燥する際に、該間隙部に含浸された
有機酸から水分のみが蒸発して該間隙部は無機材料層2
0の通気孔に変化する。つまり有機酸の固形分が通気孔
内壁表面に担持された状態になる。無機材料層20を構
成する前記吸着剤に添着された有機酸の量がガス状塩基
性不純物を長時間除去するためには不十分、すなわち本
発明の空気浄化フィルタがガス状塩基性不純物を除去で
きる寿命が短い場合には、このように前記懸濁液に有機
酸を溶かし込んでおくことで、空気浄化フィルタに含ま
れる有機酸の量を追加し、本発明の空気浄化フィルタの
寿命を延ばすことも可能になる。
【0091】また前記懸濁液に有機酸を溶かし込まない
場合であっても、該懸濁液から引き上げて熱処理乾燥し
たハニカム構造体12を、有機酸の溶解液に浸して再度
熱処理乾燥すれば、本発明の空気浄化フィルタに含まれ
る有機酸の量を追加することが可能である。
【0092】こうして得られたフィルタ1は,構成材料
に可燃物を含まないし,フィルタが熱処理される際に構
成材料に含まれていた表面汚染の原因となるガス状有機
不純物成分が全て脱離・除去されるため,フィルタ1自
身からガス状有機不純物を発生することもない。
【0093】前記吸着剤,すなわち,けいそう土,シリ
カ,アルミナ,シリカとアルミナの混合物,珪酸アルミ
ニウム,活性アルミナ,多孔質ガラス,活性白土,活性
ベントナイト又は合成ゼオライトのうちの少なくとも1
種からなる無機物の粉末に,有機酸を添着した吸着剤そ
のものの製造方法の一例を説明する。
【0094】珪酸ソーダからイオン交換樹脂を用いてナ
トリウムを除去し,残ったシリカを分散剤およびpH調
整剤などの安定剤によって粒子化する。これがシリカゾ
ルであり,このシリカゾルに有機酸を混合・溶解する。
有機酸の溶解度が小さい場合には混合液を加熱する場合
もある。シリカゾルと有機酸の混合物を乾燥して水分を
蒸発・除去すれば,有機酸が添着されたシリカゲルの吸
着剤が得られる。
【0095】また,フィルタ1の別の製造方法を説明す
る。ハニカム構造体12を製作するまでは,前述の製造
方法と同じであるので省略する。この製造方法では,ハ
ニカム構造体12の表面に,前記吸着剤の粉末を造粒し
て製造したペレットを接着剤で付着させることを特徴と
する。前記吸着剤の粉末を造粒する際には,前記吸着剤
の粉末と無機バインダを,適量の水と無機系固着補助剤
を混入させた状態で混合すると粘土状の粘性と可塑性を
示すようになり,造粒が可能となる。無機バインダや無
機系固着補助剤の種類は先に説明した製造方法と同様で
ある。また、前記粉末を造粒の際に使用する適量の水に
有機酸を溶解させておけば、ペレットに含まれる有機酸
の量を追加することも可能である。さらに、前記吸着剤
の粉末を造粒して製造したペレットを有機酸の溶解液に
浸して再度熱処理乾燥することによってもペレットに含
まれる有機酸の量を追加することは可能である。
【0096】さらに,フィルタ1の別の製造方法を説明
する。前述の製造法と全く異なる点は,ペレットの表面
の構造である。ペレットの表面には,表2(I),(I
II)に示した無機吸着剤粉末がコーティングされ,ペ
レットの表面にはガス状有機不純物を吸着・除去する無
機材料層が形成されている。
【0097】図3は,無機バインダを用いて前記吸着剤
の粉末を造粒したペレット21をハニカム構造体12の
表面に固着させた構成のフィルタ1の断面部分拡大図で
ある。波形のシート10と薄板シート11の表面全体に
隅なく,前記吸着剤の粉末を無機バインダを用いて造粒
したペレット21を不燃性接着剤で固着する。処理空気
は,この実施の形態では,疑似半月形の断面形状をした
細い筒部17を通過することになる。そして,このよう
にペレット21を固着したハニカム構造体12を,電気
炉に入れて接着剤の耐熱温度以下の約100℃で2時間
程度の熱処理を行い,接着剤に含まれる表面汚染の原因
となるガス状有機不純物成分を全て脱離・除去すること
により,フィルタ1を製造することができる。
【0098】このようにして製造されるフィルタ1は,
構成材料に可燃物を含まないため,フィルタ1を天井面
に取り付けた場合,可燃物である活性炭やイオン交換繊
維をベースとした従来のケミカルフィルタを天井面に取
り付けた場合と比較して,防災上の安全性は著しく高ま
る。なお,処理空気を通過させる空間の断面形状は,以
上のような半月形状に限らず,任意の形状とすることが
できる。
【0099】図4は,本発明における前記吸着剤の粉末
を無機バインダで支持体表面に担持した無機材料層につ
いて示した無機材料層断面の部分拡大図である。処理対
象ガスは,無機材料層の表面(処理対象ガスとの接触
面)から,有機酸を添着した吸着剤の微粒子と無機バイ
ンダの微粒子との間に形成される通気孔をかいくぐるよ
うに,無機材料層内部に入り込んだり,逆に無機材料層
内部から外部に出て行ったりする。その際,前記吸着剤
微粒子ではガス状塩基性不純物が除去され,バインダ微
粒子ではその表面に存在する物理吸着に適した細孔にガ
ス状有機不純物の分子が入り込んで吸着除去される。
【0100】本発明の第1の目的であるガス状塩基性不
純物の除去と共に,第2の目的であるガス状有機不純物
の同時除去を達成するためには,主としてメソ孔領域又
はミクロ孔領域の細孔を有する無機バインダを用いて前
記吸着剤の粉末をハニカム構造体12に無機材料層20
として固着させてフィルタ1を構成したり,同様の前記
無機バインダにより前記吸着剤の粉末をペレット21に
成型してこのペレット21をハニカム構造体12の表面
に固着させてフィルタ1を構成する。
【0101】また,図5にA−A断面,B−B断面を示
すように,主としてメソ孔領域又はミクロ孔領域の細孔
を有する無機バインダにより前記吸着剤の粉末をペレッ
ト21に成型し,このペレット21を側面に多数の通気
口23を有する二重円筒形状のケーシング22内に充填
してフィルタ1’を構成することによっても,本発明の
目的を達成できる。処理空気はケーシング22の内側円
筒から流入し,ケーシング22内のペレット21の充填
層を透過した後,ケーシング22の外側円筒と外筒24
に挟まれた空間を通過して出ていく。処理空気の流通方
向は矢印13で示した。
【0102】表2の(II)のグループのバインダのう
ち,タルクやカオリン鉱物は結晶子サイズが大きく,マ
クロ孔域の容積は大きいが,ミクロ孔域やメソ孔域の内
部表面積や容積は小さく,物理吸着能力も小さい。ま
た,(II)のグループのバインダのうち,ベントナイ
トもマクロ孔域の容積は大きいが,ミクロ孔域やメソ孔
域の内部表面積や容積は小さく,物理吸着能力も小さ
い。
【0103】一方,表2の(I),(III)のグルー
プのバインダのうち,例えば,リボン状構造の含水珪酸
マグネシウム質粘土鉱物であるセピオライトの細孔は1
0オングストロームのミクロ孔と200オングストロー
ムのメソ孔から成り,ミクロ孔域やメソ孔域の内部表面
積や容積は大きく物理吸着能力も大きい。(I),(I
II)のグループのバインダ,つまりけいそう土,シリ
カ(シリカゲル),アルミナ(アルミナゲル),シリカ
とアルミナの混合物(シリカゲルとアルミナゲルの混合
ゲル),珪酸アルミニウム,活性アルミナ,多孔質ガラ
ス,リボン状構造の含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物,
酸処理モンモリナイト(活性白土),活性ベントナイト,
合成ゼオライトの無機物の粉末は物理吸着能力が大き
い。
【0104】表2に示したように,これらの無機質はい
ずれも,5オングストローム〜300オングストローム
の範囲に分布する単位重量当たりの細孔容積が0.2c
c/g以上であるか,または比表面積が100m2/g
以上である。もちろん,これらの無機物の粉末は前記無
機物の粉末を含む第1の無機材料層に重ねて形成する第
2の無機材料層として好適に利用できる。
【0105】メソ孔領域またはミクロ孔領域の有効細孔
径を有する無機バインダを用いて,該吸着剤の粉末を造
粒したペレットを支持体に固着するために用意しておく
態様では,該吸着剤の粉末と該無機物の粉末の両者の粉
末に例えば市水を混ぜて粘土状とし,0.3〜0.8m
m程度のペレットに造粒機にて造粒する。これを予め無
機系かつ不燃性の接着剤を付着させた支持体に高速空気
を利用して吹き付けることで,図3に示したような本発
明のフィルタを製作できる。支持体としては必ずしもハ
ニカム構造に限らず,ロックウール等の三次元網目構造
体を例示できる。後者では被処理空気が網目構造体を横
切って通過するため,空気抵抗は大きいが,該吸着剤の
ペレットとの接触機会はハニカム構造体よりもむしろ多
くなる。
【0106】次に,図6は,本発明の他の実施の形態に
かかるフィルタ31の概略的な分解組立図である。な
お,このフィルタ31において,ハニカム構造体12自
体の構成は、先に図1で説明したフィルタ1の構成と同
様であるため,同じ構成要素については,図6において
図1と同じ符号を付することにより詳細な説明は省略す
る。
【0107】このフィルタ31では,図7に示すよう
に,波形シート10と薄板シート11を積層したハニカ
ム構造体12の表面に,無機バインダを用いて前記吸着
剤の粉末を固着させて第1の吸着層(第1の無機材料
層)25を形成し,さらにその表面にメソ孔領域または
ミクロ孔領域の有効細孔径を有する無機物の粉末を固着
させて第2の吸着層(第2の無機材料層)26を形成し
た構成になっている。以下,メソ孔領域またはミクロ孔
領域の有効細孔径を有する無機物の粉末を「無機吸着粉
末」と称する。フィルタ31の外形や寸法などは,設置
空間に合わせて任意に設計することができる。なお,第
1の吸着層25を形成する際に使用する無機バインダの
細孔径は,第2の吸着層26を形成する際に使用する無
機吸着粉末とは異なり,物理吸着に関与しないマクロ孔
領域であってもよい。
【0108】例えば,表2の(II)のグループのタル
ク,カオリン鉱物,ベントナイトのような粘土鉱物は物
理吸着に関与する細孔をほとんど有さないが,第1の吸
着層25のバインダとして利用できる。また,珪酸ソー
ダ,シリカ,アルミナのような無機系固着補助剤そのも
のであってもかまわない。なお,シリカとしては例えば
シリカゾルが使用される。アルミナとしては例えばアル
ミナゾルが使用される。ただし,シリカゾルやアルミナ
ゾルは単分散のナノメータから数十ナノメータの一次粒
子を含む懸濁液であるが,支持体の表面に固着して乾燥
した状態では,一次粒子が集合した三次元凝集体である
シリカゲルやアルミナゲルに変化し,ガス状有機不純物
を吸着する能力を有するようになる。
【0109】したがって,シリカゾルやアルミナゾルの
無機系固着補助剤はそれら単独で,第1の吸着層25の
ガス状有機不純物を吸着するバインダとして利用するシ
リカゲルやアルミナゲルと全く同様に利用できるし,ま
た,第2の吸着層26のガス状有機不純物を吸着する無
機物として利用するシリカゲルやアルミナゲルと全く同
様に利用できる。つまり,第1の吸着層25は雰囲気中
のガス状塩基性不純物を除去するために機能し,第2の
吸着層26はガス状有機不純物を吸着除去するために機
能できればよい。図8は,本発明における第1の吸着層
(第1の無機材料層)と第2の吸着層(第2の無機材料
層)からなる複合層断面の部分拡大図である。
【0110】図8において,支持体が有機材料を含むこ
とによって,支持体自体からガス状有機不純物を脱離す
る場合であっても,支持体を被覆する第2の吸着層26
によって支持体から脱離したガス状有機不純物は吸着・
除去されるため,支持体から発生するガス状有機不純物
が,第2の吸着層26を突き抜けて処理対象空気中に入
ることはない。
【0111】ここで,フィルタ31の製造方法の一例を
説明する。先ず,多孔性のハニカム構造体12を製造す
る。無機材料層を形成する前までは先に説明した方法と
同様であり省略する。つぎに前記吸着剤の粉末と,タル
ク,カオリン鉱物,ベントナイトのような無機バインダ
を分散させた懸濁液に,ハニカム構造体12を数分間浸
した後,約200℃で1時間程度の熱処理で乾燥して,
第1の吸着層25を形成する。
【0112】つぎにメソ孔領域またはミクロ孔領域の有
効細孔径を有する無機物の粉末(無機吸着粉末),例え
ばけいそう土,シリカ,アルミナ,シリカとアルミナの
混合物,珪酸アルミニウム,活性アルミナ,多孔質ガラ
ス,リボン状構造の含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物,
活性白土,活性ベントナイト,合成ゼオライト等を分散
させた懸濁液に,第1の吸着層(第1の無機材料層)を
形成した後のハニカム構造体12を数分間浸した後,約
200℃で1時間程度の熱処理で乾燥して,第2の吸着
層(第2の無機材料層)26を形成する。なお,シリカ
としては例えばシリカゲルが使用される。アルミナとし
ては例えばアルミナゲルが使用される。シリカとアルミ
ナの混合物としては例えばシリカゲルとアルミナゲルの
混合ゲルが使用される。
【0113】第2の吸着層26の形成に利用する前記リ
ボン状構造の含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物として
は,セピオライトやパリゴルスカイト等がある。こうし
て第1の吸着層25の上に第2の吸着層26をコーティ
ングしたハニカム構造体12を得ることができる。第1
の吸着層25と第2の吸着層26を形成する際に使用さ
れる無機物の粉末には無機系固着補助剤,例えば珪酸ソ
ーダまたはシリカまたはアルミナを少なくとも一つ混入
してもよい。なお,シリカとしては例えばシリカゾルが
使用される。アルミナとしては例えばアルミナゾルが使
用される。
【0114】無機系固着補助剤の役割は,第1の無機材
料層としての第1の吸着層25を形成している前記吸着
剤の粉末や無機バインダが,ハニカム構造体12の孔な
どに強固に固着するための補助剤として機能したり,さ
らに第2の無機材料層としての第2の吸着層26を形成
している無機吸着粉末が,第1の吸着層25に強固に固
着をするための補助剤として機能する。
【0115】なお本発明の空気浄化フィルタ31に含ま
れる有機酸の量を追加する方法は前述した方法と同様で
ある。1つの方法として、第1の無機材料層や第2の無
機材料層を形成するために使用する懸濁液、つまり前記
吸着剤り粉末、無機バインダ、無機吸着粉末、無機系固
着補助剤等を混合した懸濁液に有機酸を溶解させる。別
の方法は、第1の無機材料層や第2の無機材料層を形成
した後に、ハニカム構造体を有機酸の溶解液に浸して再
度熱処理乾燥することである。
【0116】こうして得られたハニカム構造体12は,
構成材料に可燃物を含まないし,ハニカム構造体12が
熱処理される際に構成材料に含まれていた表面汚染の原
因となるガス状有機不純物成分が全て脱離・除去される
ため,ハニカム構造体12自身からガス状有機不純物を
発生することもない。さらに,図6に示された外枠15
の素材にはアルミニウムのようなガス状有機物を発生せ
ずかつ可燃物を含まない素材を使用することが好まし
い。
【0117】また,ハニカム構造体12を外枠15に固
定する目的やハニカム構造体12と外枠15との間隙部
分を塞ぐ目的に使用する接着剤やシール剤も,ガス状有
機物を発生せずかつ可燃物を含まない特性を有するもの
であることが好ましい。この場合例えば,ハニカム構造
体12に外枠15を取り付けて組み立てを完了したフィ
ルタ31全体に熱処理を施して,フィルタ31の構成材
料である不燃性の接着剤やシール剤から表面汚染の原因
となるガス状有機不純物成分を全て脱離・除去してもよ
い。こうして,フィルタ31全体を,可燃物を含まない
素材のみで構成したり,ガス状有機不純物を発生しない
素材のみから構成したりすることができる。
【0118】また,フィルタ31の別の製造方法を説明
する。前述の製造方法で製作されるハニカム構造体やロ
ックウールなどの三次元網目構造体を支持体として利用
する。そしてこの製造方法例では,支持体の表面に,粒
状の前記吸着剤を接着剤で付着させる。粒状の前記吸着
剤については,前記吸着剤の粉末に無機バインダを混合
し,成型してペレット形状とする。
【0119】該ペレットの周囲に,メソ孔領域またはミ
クロ孔領域の有効細孔径を有する無機物の粉末(無機吸
着粉末)をコーティングして被覆層を形成した被覆層付
きペレットを予め準備しておく。このペレットの製作の
仕方は,無機吸着粉末の被覆層を形成するため,コーテ
ィング用の無機吸着粉末を分散した懸濁液にペレット形
状に成型した前記吸着剤を浸した後,引き上げ・乾燥し
て行われる。被覆層の機械的強度を増すため,該懸濁液
にはコーティング用の無機吸着粉末とともにゾル状の無
機系固着補助剤を分散させて,ペレットにコーティング
された該無機吸着粉末に無機系固着補助剤が含まれるよ
うにしてもよい。コーティング用の該無機吸着粉末や無
機系固着補助剤の種類は前述したとおりである。
【0120】次に本発明の実施の形態にかかる高度清浄
装置について説明する。図9は,本発明の実施の形態に
かかる高度清浄装置100の構成を概略的に示す説明図
である。この高度清浄装置100は,具体的には,例え
ばクリーンルームやクリーンベンチとして構成されてい
る。高度清浄装置100は,例えばLSIやLCDなど
の製造を行うための処理空間102と,この処理空間1
02の上下に位置する天井部(サプライプレナム)10
3及び床下部(レターンプレナム)104と,処理空間
102の側方に位置するレタン通路105から構成され
る。
【0121】天井部103には,ファンユニット110
と通気性を有するガス状不純物除去用のフィルタ111
と,粒子除去用のフィルタ112を有するクリーンファ
ンユニット113が配置されている。処理空間102に
は,熱発生源となる例えば半導体製造装置114が設置
されている。床下部104は多数の孔が穿孔されたグレ
ーティング115で仕切られている。また,床下部10
4には,半導体製造装置114の熱負荷を処理するため
の乾き冷却器(結露を生じさせないように構成された冷
却器)116が設置されている。乾き冷却器116は,
熱交換表面に結露を生じさせない条件で空気を冷却する
空気冷却器を意味する。レタン通路105に温度センサ
117が設置されており,この温度センサ117で検出
される温度が所定の設定値となるように,乾き冷却器1
16の冷水流量調整弁118が制御される。
【0122】そして,クリーンファンユニット113の
ファンユニット110が稼働することによって,適宜気
流速度が調整されながら,高度清浄装置100内部の空
気は,天井部103→処理空間102→床下部104→
レタン通路105→天井部103の順に流れて循環する
ように構成されている。またこの循環中に,乾き冷却器
116によって冷却され,クリーンファンユニット11
3内のガス状不純物除去用のフィルタ111と粒子除去
用のフィルタ112によって空気中のガス状不純物と粒
子状不純物が除去されて,適温で清浄な空気が処理空間
102内に供給されるようになっている。
【0123】ガス状不純物除去用のフィルタ111は,
先に説明した本発明による有機酸を添着した吸着剤の粉
末を含む空気浄化フィルタであって,循環空気からガス
状の塩基性不純物と場合によってはガス状の有機不純物
までも除去する。また空気浄化フィルタ111は,可燃
物を含まない素材のみで構成され,かつガス状有機不純
物を発生しない素材のみで構成されている。
【0124】粒子除去用フィルタ112は空気浄化フィ
ルタ111の下流側に配されており,このフィルタ11
2は粒子状不純物を除去することが可能な機能を有して
いる。また粒子除去用フィルタ112は,ガス状有機不
純物を発生しない素材のみで構成されている。
【0125】また,高度清浄装置100の床下部104
内には,取り入れ外気が空気流路120を経て適宜供給
される。この空気流路120にも,取り入れ外気からガ
ス状不純物を除去するための本発明による空気浄化フィ
ルタ121が配されており,空気浄化フィルタ121の
上流側には,取り入れ外気の除塵・調温・調湿を行うユ
ニット型空調機122が設けられている。また,空気流
路120には湿度センサ127が配置されており,この
湿度センサ127で検出される湿度が所定の設定値とな
るように,ユニット型空調機122の調湿部の給水圧調
整弁129が制御される。一方,処理空間102内には
湿度センサ128が設置されており,この湿度センサ1
28で処理空間102内の雰囲気の湿度が検出される。
【0126】空気流路120から高度清浄装置100の
床下部104に供給された取り入れ外気は,レタン通路
105及び天井部103を経由して,処理空間102に
導入される。そして,この取り入れ外気に見合った空気
量が,排気口125から排気ガラリ126を介して室外
に排気される。
【0127】本発明による空気浄化フィルタ111は,
構成材料に可燃物を含まないため,図9のように空気浄
化フィルタ111を天井面に取り付けた場合,可燃物で
ある活性炭やイオン交換繊維をベースとした従来のケミ
カルフィルタを天井面に取り付けた場合と比較して,防
災上の安全性は著しく高まっている。なお,図9に示し
た高度清浄装置100において,取り入れ外気を処理す
る空気浄化フィルタ121も循環空気を処理する空気浄
化フィルタ111と同様の構成とすれば,可燃物である
活性炭やイオン交換繊維をベースとした従来のケミカル
フィルタを外気取り入れ口に取り付けた場合と比較し
て,防災上の安全性はさらに高まる。
【0128】通常の粒子除去用の中性能フィルタ,HE
PAフィルタまたはULPAフィルタは,繊維濾材に揮
発性有機物を含む濾材用バインダを使用したり,繊維濾
材とフィルタ枠材の接着に揮発性有機物を含むシール材
を使用しているので,濾材用バインダや接着剤からの脱
ガスがある。したがって本発明を構成する粒子除去用フ
ィルタ112に関しては,揮発性有機物を含む濾材用バ
インダを使用しない濾材を用い,あるいは揮発性有機物
を含む濾材用バインダを使用していても焼きだしなどの
処理により揮発性有機物を除去した濾材を用い,さらに
濾材をフレームに固定する手段であるシール材にも脱ガ
スの発生のない種類を選択したり,あるいは濾材を脱ガ
スのない素材で物理的に圧着してフレームに固定するこ
とが望ましい。
【0129】つぎに,本発明の他の実施の形態にかかる
高度清浄装置100’を図10に示した。この図10に
示す高度清浄装置100’は,本発明による有機酸を添
着した吸着剤の粉末を含むハニカム構造体の空気浄化フ
ィルタ111を高度清浄装置100’の天井部103全
面に取り付けるのではなく,所々間引いて設置してい
る。本例では,図9と比較して空気浄化フィルタ111
の設置台数を半分にした。その他の点は,先に図9にお
いて説明した高度清浄装置100と同様の構成である。
従って,図10に示す高度清浄装置100’において,
先に図9で説明した高度清浄装置100と同じ構成要素
については同じ符号を付することにより,詳細な説明は
省略する。
【0130】本発明の空気浄化フィルタが除去の対象と
する化学汚染物質は,塩基性物質,有機物である。代表
的な障害事例を説明すると,塩基性ガスはレジストの解
像の障害になる。ガス状の有機物が基板表面に付着する
と,絶縁酸化膜の不良,レジスト膜の密着不良,基板表
面の電気抵抗値が高くなって微粒子の静電吸着が起こり
やすくなる。また,ガス状の有機物は露光装置のレンズ
やミラーの曇りを発生する原因となる。これらガス状不
純物の発生源には,洗浄装置,作業者,クリーンルーム
構成部材などの高度清浄装置内部に存在する発生源と,
外部から高度清浄装置内へ進入する外気由来の汚染物が
ある。
【0131】したがって,空気浄化フィルタ111の役
割は,主として高度清浄装置内部で発生するガス状汚染
物を循環空気中から除去し,高度清浄装置内部のこれら
ガス状汚染物濃度を低減することである。一方,空気流
路120に配設した空気浄化フィルタ121の役割は,
外部から高度清浄装置内へ進入する外気由来の汚染物を
除去し,高度清浄装置内部のこれらガス状汚染物濃度を
低減することである。
【0132】空気浄化フィルタ111および121を備
えた高度清浄装置を稼働すると,稼働初期に高度清浄装
置内部の化学汚染物質の濃度は最も高く,稼働時間の経
過とともに,循環空気中からこれら化学汚染物質が逐一
除去されて,濃度は低下していき,遂には高度清浄装置
内部の発生量と平衡する濃度で安定化する。空気が1回
循環する際に除去される化学汚染物質量は,天井全面に
取り付けた図9の高度清浄装置100と,間引いた図1
0の高度清浄装置100’を比較すると,2:1の関係
がある。
【0133】つまり,稼働初期の最高濃度から,高度清
浄装置内部の発生量と平衡する濃度まで達するまでの時
間は,間引いた図10の高度清浄装置100’の場合は
天井全面に取り付けた図9の高度清浄装置100の場合
よりも相当に長くなる。また,最終的に到達する平衡濃
度も,間引いた場合は天井全面に取り付けた場合よりも
少し高くなる。つまり,間引くと濃度の低減に時間がか
かり,低減後の平衡濃度も間引かない場合よりも少し高
くなるという短所はあるが,空気浄化フィルタ111の
イニシャルコストや定期的交換に伴うランニングコスト
を安くしたいという経済的要望から,この図10に示す
例のように,空気浄化フィルタ111の設置台数を間引
くことも多い。
【0134】
【実施例】次に,以上に説明した本発明の実施の形態に
かかるフィルタの作用効果を,実施例によって説明す
る。
【0135】まず,クリーンルーム中において,ガス状
塩基性不純物を除去するために,薬品を添着した粒状活
性炭と繊維状活性炭をそれぞれ使用した市販のケミカル
フィルタ2種とイオン交換繊維を使用したケミカルフィ
ルタのそれぞれにより処理したクリーンルームエアと,
図6に示した本発明によるフィルタにより処理したクリ
ーンルームエアの計4つの雰囲気中で,酸化膜付きシリ
コンウエハ表面の接触角の経時変化を測定した。その結
果を図11に示した。
【0136】図11に示す接触角は,基板の表面に超純
水を滴下して測定した。この接触角は,基板表面の有機
物汚染の程度を簡便に評価する指標である。洗浄直後の
有機物汚染のない酸化膜付きシリコンウエハやガラスの
表面は水に馴染みやすい性質,つまり親水性であり,接
触角は小さい。ところが,有機物で汚染されたそれらの
表面は水をはじく性質,つまり撥水性であり,接触角は
大きくなる。例えば,クリーンルーム雰囲気中に放置さ
れたガラス基板表面を対象に,超純水滴下による接触角
の測定値と,X線光電子分光法(XPS:X−ray
Photoelectron Spectroscop
y)により測定した有機物表面汚染は,図12に示すよ
うな相関関係があることが知られている。酸化膜付きシ
リコンウエハの表面についても,接触角と有機物表面汚
染の間にはほぼ同様の相関関係がある。このように,基
板表面における水の接触角の大きさと有機物表面汚染の
間には極めて強い相関がある。
【0137】図11の結果からつぎのことが分かる。イ
オン交換繊維は本来水溶性無機不純物を吸着除去するた
めのものであるので,処理対象空気中の有機物は吸着で
きない。それどころか逆に,イオン交換繊維自体が新た
なガス状有機物を発生する。1日放置で約10゜の接触
角の増加が見られる。ガス状無機不純物汚染を防止する
目的の活性炭フィルタ2種も,処理対象空気中の有機物
は吸着できない。それどころか逆に,活性炭フィルタ自
体が新たなガス状有機物を発生するため,1日放置で約
10゜の接触角の増加となった。図6の本発明によるフ
ィルタでは,ウエハ表面を1日放置しても接触角はほと
んど増加せず,処理対象空気中の有機物は吸着除去され
ると共に,フィルタ自体が新たなガス状有機物を発生し
ていないことが明らかになった。
【0138】活性炭フィルタでは構成材料や活性炭をシ
ートに付着させている接着剤や濾材を周囲のフレームに
固着するために用いるシール材などから,またイオン交
換繊維フィルタでは構成材料の高分子繊維に含まれる種
々の添加剤から,発生したガス状有機不純物がケミカル
フィルタ通過後の空気中に含まれてしまう。また,イオ
ン交換繊維フィルタではイオン交換基の一部がスルホン
酸,カルボン酸,リン酸として脱離することもある。
【0139】つまり,これら従来のケミカルフィルタ
は,クリーンルーム雰囲気中に含まれるppbオーダの
塩基性の極微量不純物は除去しておきながら,ケミカル
フィルタ自身から発生したガス状有機不純物を通過空気
中に混入させてしまう。したがって,表1に記載した米
国のSEMATECHによるガス状不純物制御の予測値
に関して,これら従来のガス状塩基性不純物を除去する
ためのケミカルフィルタは,ガス状塩基性不純物の濃度
基準は満足できても,ガス状有機不純物の濃度基準を満
足できない事態が生じていた。それどころか従来のケミ
カルフィルタを使用したことによって,逆にクリーンル
ーム雰囲気中の基板表面汚染の原因となるガス状有機物
濃度を高めてしまうこともあった。
【0140】本発明によるハニカム構造体の2種のフィ
ルタa,bに,NH3,DOP,5量体のシロキサン
(D5)をそれぞれ数百pptから数ppb含むクリー
ンルームエアを通気させた。ハニカム構造体の上流側と
下流側のそれぞれの雰囲気中のNH3の濃度はイオンク
ロマトグラフィ(IC)により測定してそれぞれの除去
効率を測定した。さらに,ハニカム構造体の上流側と下
流側のそれぞれの雰囲気中に設置したシリコンウエハ表
面のDOPとD5による有機物表面汚染量を測定して比
較し,有機物表面汚染の防止効果を評価した。さらに,
ハニカム構造体の下流側のそれぞれの雰囲気中の浮遊微
粒子濃度(1ft3の空間中に含まれる粒径0.1μm以
上の粒子の個数)を測定した。上流側の浮遊微粒子濃度
は10個/ft3であった。その結果を表6に示す。
【0141】
【表6】
【0142】有機物表面汚染量の評価には,4インチの
p型シリコンウエハを用いた。洗浄後のウエハをフィル
タの上流側と下流側でそれぞれ曝露し,表面汚染を測定
した。ウエハ表面に付着した有機物の分析・測定には,
昇温ガス脱離装置とガスクロマトグラフ質量分析装置を
組み合わせて用いた。また,ガスクロマトグラフに基づ
いて次のようにして表面汚染防止率を求めた。 表面汚染防止率 = (1−(B/A))×100 (%) A :上流側のウエハ表面から検出された汚染有機物質
のピークの面積 B :下流側のウエハ表面から検出された汚染有機物質
のピークの面積
【0143】本実施例による2種のフィルタaとbはい
ずれも,図1や図6に示したように,隣接する波形シー
トの間に凹凸のない薄板シートを挟んだ構造を有する。
フィルタの通気方向の厚みは10cm,通気風速は0.
6m/s,フィルタに通気する処理空気が接触するフィ
ルタ単位体積当たりのシート総表面積は3000m2
3であった。
【0144】本発明のフィルタaは,フマル酸を40%
の重量濃度で添着した平均粒径4μmのシリカゲルの粉
末からなる吸着剤を,無機バインダとしてのカオリナイ
トの3μmの粉末と混合し,無機系固着補助剤としての
シリカゾルと共に分散させたスラリーに前述の多孔性ハ
ニカム構造体を浸した後,乾燥して第1の無機材料層を
形成した。
【0145】つぎに,有効細孔径が主として20オング
ストローム〜1000オングストロームに分布した活性
白土の3μmの粉末を,無機系固着補助剤としてのシリ
カゾルと共に分散させたスラリーに,第1の無機材料層
が形成された前述のハニカム構造体を再度浸した後,乾
燥して第2の無機材料層を形成した。前記第1の無機材
料層の厚みは100μm,その重量組成比は,前記吸着
剤:カオリナイト:無機系固着補助剤=67%:30
%:3%,さらに前記第2の無機材料層の厚みは10μ
mで,その重量組成比は,酸処理モンモリナイト:シリ
カ=87%:13%であった。フィルタ全体の密度は2
30g/リットル,そのうち無機材料層が占める密度は
90g/リットル(フィルタ全体の39%)であった。
【0146】本発明のフィルタbは,前述のフマル酸を
添着したシリカゲルの粉末に3μmのカオリナイトの無
機バインダを混合して,シリカゾルを無機系固着補助剤
として共に分散させたスラリーに前述の多孔性ハニカム
構造体を浸した後,乾燥して製作した。フィルタbに使
用したカオリナイトは大きさが1000オングストロー
ム以上である通気孔以外に主要な細孔を有さないから,
物理吸着の能力はほとんどない。一方,フィルタaに使
用した活性白土は有効細孔径が主として20オングスト
ローム〜1000オングストロームに分布しており,物
理吸着能は活性炭と比較して遜色ない。
【0147】本発明のフィルタaとbの異なる点は,フ
ィルタbはフィルタaのように,第2の無機材料層(活
性白土の層)に相当するものを有していないという点で
ある。表6から明かなことは,NH3のガス状塩基性不
純物の除去についてはフマル酸を添着したシリカゲルの
粉末が入った第1の無機材料層のみが有効なため,第2
の無機材料層の有無はそれらの除去効率にさほど影響を
与えない。しかし,高度清浄装置内の基板表面から検出
される有機汚染物のうちで最も量が多い種類のDOPや
5量体のシロキサン(D5)は,物理吸着能力の優れた
第2の無機材料層の有無でそれらの除去効率は大きく異
なる。
【0148】つまり,第2の無機材料層を設けたフィル
タaは,ガス状塩基性不純物のみならずガス状有機不純
物をも一括除去できる。表6の下流側浮遊微粒子濃度の
測定結果で明らかなように、フィルタaは、フマル酸を
添着した吸着剤を含む第1の無機材料層を第2の無機材
料層(活性白土の層)で被覆したため、第1の無機材料
層からの発塵が抑制され、下流側微粒子濃度は上流側と
同じ10個/ft3となった。しかしフィルタbは、第
1の無機材料層が空気中にそのままむき出しになってい
るため、第1の無機材料層からの発塵により、下流側微
粒子濃度は上流側の10倍、100個/ft3となっ
た。
【0149】次に,本発明に従って製造した種々のタイ
プのフィルタの比較を行った。その結果を表7に示す。
【0150】
【表7】
【0151】表7において,本発明Aは,ハニカム構造
体の表面に,フマル酸を添着したシリカゲルの粉末から
なる吸着剤に,バインダとしてのカオリナイトと無機系
固着補助剤であるシリカゾルを混合させて固着し,無機
材料層を形成したことを特徴とする空気浄化フィルタで
ある。無機材料層の厚みは100μm,その重量組成比
は,前記吸着剤:カオリナイト:無機系固着補助剤=6
7%:30%:3%である。
【0152】本発明Bは,ハニカム構造体の表面に,フ
マル酸を添着したシリカゲルの粉末からなる吸着剤を,
無機系固着補助剤であるシリカゾルそのものをバインダ
として固着し,無機材料層を形成したことを特徴とする
空気浄化フィルタである。無機系固着補助剤であるシリ
カゾルは単分散のナノメータから数十ナノメータの一次
粒子を含む懸濁液であるが,支持体の表面に固着して乾
燥した状態では,一次粒子が集合した三次元凝集体であ
るシリカゲルやアルミナゲルに変化し,ガス状有機不純
物を吸着する能力を有するようになる。無機材料層の厚
みは100μm,その重量組成比は,前記吸着剤:無機
系固着補助剤=70%:30%である。
【0153】本発明Cは,本発明Aのフィルタ表面に,
さらにシリカゾルを固着・乾燥して生成したシリカゲル
で構成される第2の無機材料層を形成したフィルタであ
る。第2の無機材料層は10μmで,その重量組成は無
機系固着補助剤つまりシリカゲルが100%である。
【0154】本発明Dは,本発明Bのフィルタ表面に,
シリカゾルを固着・乾燥して生成したシリカゲルで構成
される第2の無機材料層を形成したフィルタである。第
2の無機材料層は10μmで,その重量組成はシリカゲ
ル100%である。
【0155】本発明Eは,ハニカム構造体の表面に,ま
ずシリカゾルを固着・乾燥して生成したシリカゲルで構
成される無機材料層を形成し,さらにその上に重ねて前
記吸着剤の粉末をバインダとしてのカオリナイトと無機
系固着補助剤であるシリカゾルを混合させた無機材料層
を形成したフィルタである。つまり,本発明Cの第1の
無機材料層と第2の無機材料層のハニカム構造体の表面
への固着の順序を入れ換えている。
【0156】本発明Fは,ハニカム構造体の表面に,ま
ずシリカゾルを固着・乾燥して生成したシリカゲルで構
成される無機材料層を形成し,さらにその上に重ねて,
前記吸着剤の粉末に無機系固着補助剤であるシリカゾル
そのものをバインダとして混合させて別の無機材料層を
形成したことを特徴とする空気浄化フィルタである。つ
まり,本発明Dの第1の無機材料層と第2の無機材料層
のハニカム構造体の表面への固着の順序を入れ換えてい
る。
【0157】これら各フィルタの無機材料層の構造を図
13〜18に拡大して断面図として示した。無機材料層
の構造の理解をより容易にするため,図15を例にとり
透視模式図も併せて示した。これらの図は,図4または
図8に示した無機材料層を,無機材料層の厚みを高さと
する円筒状に切り出し,その円筒内に存在する細孔につ
いて,ガス状有機不純物の物理吸着に関与する細孔であ
るミクロ孔やメソ孔の分布の様子を細い空孔で,ガス状
有機不純物の物理吸着にほとんど関与しないマクロ孔の
分布の様子を太い空孔で,概念的に模式図として示した
ものである。
【0158】本発明Aは,図13に示すように,フマル
酸を添着したシリカゲルからなる吸着剤の粉末を含む無
機材料層51は,大きさが1000オングストローム以
上の通気孔以外に主要な細孔を有さないから,ガス状有
機不純物の物理吸着の能力はほとんどない。
【0159】本発明Bは,図14に示すように,前記吸
着剤の粉末を含む無機材料層52を構成するシリカゲル
の内部に5〜300オングストローム程度の細孔が形成
されており,前記物理吸着の能力がある。
【0160】発明Cは,図15に示すように,前記吸着
剤の粉末を含む第1の無機材料層53は,大きさが10
00オングストローム以上の通気孔以外に主要な細孔を
有さないから,前記物理吸着の能力はほとんどないが,
シリカゲルのみで構成される第2の無機材料層54には
5〜300オングストローム程度の細孔が形成されてお
り,前記物理吸着の能力がある。
【0161】本発明Dは,図16に示すように,前記吸
着剤の粉末を含む第1の無機材料層55にシリカゲルが
含まれ,しかも前記吸着剤を含まない第2の無機材料層
56はシリカゲルのみで構成されているから,その両方
の無機材料層に前記物理吸着の能力がある。
【0162】本発明Eは,図17に示すように,前記吸
着剤の粉末を含まない第1の無機材料層57はシリカゲ
ルのみで構成され,前記物理吸着の能力があるが,前記
吸着剤を含む第2の無機材料層58は,大きさが100
0オングストローム以上の通気孔以外に主要な細孔を有
さないから,物理吸着の能力はほとんどない。
【0163】本発明Fは,図18に示すように,前記吸
着剤の粉末を含まない第1の無機材料層59はシリカゲ
ルのみで構成され,前記吸着剤の粉末を含む第2の無機
材料層60にもシリカゲルの5〜300オングストロー
ム程度の細孔が形成されており,その両方の無機材料層
に前記物理吸着の能力がある。
【0164】これら各フィルタについて,先と同様に表
面汚染防止率を調べた結果,本発明のフィルタは,何れ
もNH3のガス状塩基性不純物の吸着に優れていた。し
かし,DOPや5量体のシロキサン(D5)のガス状有
機不純物については,本発明Aのフィルタの吸着性能が
特に劣り,それ以外の本発明のフィルタB〜Fについて
は,吸着性能は優れていた。本発明Aがガス状有機不純
物の吸着性能に劣る理由は,無機材料層51は大きさが
1000オングストローム以上の通気孔以外に主要な細
孔を有さないから,ガス状有機不純物の物理吸着の能力
はほとんどないためである。それ以外のフィルタにはガ
ス状有機不純物の物理吸着に優れた約5〜300オング
ストローム程度の細孔が形成されているため,優れた吸
着性能が得られた。
【0165】本発明のフィルタが処理の対象とするのは
空気のみに限定されず,窒素やアルゴンのような不活性
ガスを処理しても同様に半導体やLCDの製造などに好
適な不活性ガスを作り出すことができるのは言うまでも
ない。
【0166】次に,本発明の実施の形態にかかわる高度
清浄装置の作用効果を,実施例によって説明する。
【0167】先に図6で説明したガス状塩基性不純物の
みならずガス状有機不純物をも一括除去できるフマル酸
を添着したシリカゲルの粉末を固着させたハニカム構造
体の本発明の空気浄化フィルタ31を5000m3/m
inの循環空気を処理するために備えた本発明の実施例
にかかる図9の高度清浄装置100の処理空間102
に、NH3濃度計を設置し,処理空間102内のNH3
濃度を1カ月ごとに測定した。また,図9の高度清浄装
置100の処理空間102内に,洗浄直後の有機物汚染
のない酸化膜付きシリコンウエハ基板を放置し,洗浄直
後と12時間放置後の接触角をそれぞれ測定し,12時
間放置による接触角の増加を求めた。12時間放置によ
る接触角の増加の測定(洗浄→接触角測定→12時間放
置→接触角測定)を同じように1カ月ごとに繰り返し
た。なお,洗浄直後の酸化膜付きシリコンウエハ表面の
接触角は3゜であった。5000m3/minの循環空
気を処理するために使用した本発明における吸着剤であ
るフマル酸を添着したシリカゲルの粉末の使用量は50
0kgとした。つまり,1m3/minの通気量当たり
の吸着剤使用量は0.1kgとした。
【0168】次に,本発明による空気浄化フィルタ11
1を,繊維状活性炭を低融点ポリエステルやポリエステ
ル不織布のバインダと複合してフェルト形状にした従来
の構成のケミカルフィルタ,または粒状活性炭を通気性
のあるウレタンフォームに接着剤で固着したシート形状
の従来の構成のケミカルフィルタ,またはイオン交換繊
維を低融点ポリエステルやポリエステル不織布のバイン
ダと複合してフェルト形状にした従来の構成のケミカル
フィルタに交換した。本発明による空気浄化フィルタ1
11を3種の従来の構成のケミカルフィルタに交換した
それぞれの従来例についても,高度清浄装置内のNH3
の濃度を1カ月ごとに測定した。
【0169】また,それぞれの従来例の高度清浄装置内
に,洗浄直後の有機物汚染のない酸化膜付きシリコンウ
エハ基板を放置し,洗浄直後と12時間放置後の接触角
をそれぞれ測定し,12時間放置による接触角の増加を
求めた。12時間放置による接触角の増加の測定(洗浄
→接触角測定→12時間放置→接触角測定)を同じよう
に1カ月ごとに繰り返した。各従来例で使用した従来の
構成のケミカルフィルタにおける吸着素材,つまり繊維
状活性炭繊維,粒状活性炭,イオン交換繊維の使用量も
前述の本発明実施例と同様,1m3/minの通気量当
たり,0.1kgとした。
【0170】さらに,本発明による空気浄化フィルタ1
11や従来の構成によるケミカルフィルタをいずれも設
けない場合にも同様に高度清浄装置内のNH3の濃度,
および接触角の測定を行った。
【0171】NH3の濃度を測定した結果,本発明によ
る空気浄化フィルタ111や従来の構成によるケミカル
フィルタをいずれも設けない高度清浄装置内のNH3
度は5ppbから10ppbの範囲であった。一方,本
発明による空気浄化フィルタ111または従来の構成に
よるケミカルフィルタのいずれかを設けた高度清浄装置
内のNH3濃度は,稼働後約1年間は0.5ppbから
1.0ppbの範囲にあり,1年経過後は吸着性能の低
下により,1.0ppbを越えた。
【0172】本発明によるフマル酸を添着したシリカゲ
ルの粉末を固着させたハニカム構造体の空気浄化フィル
タ111を設けた高度清浄装置雰囲気と,従来の構成に
よるケミカルフィルタを設けた高度清浄装置雰囲気と,
本発明による空気浄化フィルタ111や従来の構成によ
るケミカルフィルタをいずれも設けない高度清浄装置雰
囲気のそれぞれに曝された酸化膜付きシリコンウエハ表
面の接触角の経時変化を比較した。
【0173】本発明による空気浄化フィルタ111を設
けた高度清浄装置雰囲気に曝された酸化膜付きシリコン
ウエハ表面の接触角は,12時間放置によって接触角は
4゜に変化した。洗浄直後の酸化膜付きシリコンウエハ
表面の接触角は3゜であるから,1゜増加したことにな
る。なお本発明による空気浄化フィルタ111の稼働後
約1年間は、1ヶ月毎に測定した接触角の値は4゜で変
化しなかった。しかし、1撚経過後は吸着性能の低下に
より接触角は増加し始めた。
【0174】一方,従来の構成によるケミカルフィルタ
を設けた高度清浄装置雰囲気に曝された酸化膜付きシリ
コンウエハ表面の接触角は,12時間放置によって10
゜増加した。つまり,従来の構成によるガス状無機不純
物を除去するケミカルフィルタにはガス状有機不純物を
除去する能力がないばかりかケミカルフィルタに含まれ
る濾材(例えば,不織布,バインダなど)や,活性炭を
シートに付着させている接着剤(例えば,ネオプレン系
樹脂,ウレタン系樹脂,エポキシ系樹脂,シリコン系樹
脂など)や,濾材を周囲のフレームに固着するために用
いるシール材(例えばネオプレンゴムやシリコンゴム
等)などから発生したガス状有機不純物がケミカルフィ
ルタ通過後の空気中に含まれてしまい,12時間放置の
ウエハ表面で10゜相当の接触角の増加をもたらした。
なお従来のケミカルフィルタの稼働後約1年間は、1ヶ
月ごとに測定した接触角の値は約10゜で変化しなかっ
た。しかし、1年経過後は吸着性能の低下に接触角は増
加し始めた。本発明の空気浄化フィルタ111では,ガ
ス状塩基性不純物のみならずガス状有機不純物をも一括
除去できるし,前に製造方法の一例を簡単に述べたよう
に,構成材料に有機質を含まないから,構成材料自身か
らガス状有機不純物を発生することはない。したがっ
て,12時間放置のウエハ表面でわずか1゜の増加に留
まった。
【0175】また,本発明による空気浄化フィルタや従
来の構成によるケミカルフィルタをいずれも設けない高
度清浄装置雰囲気に曝された酸化膜付きシリコンウエハ
表面の接触角は,12時間放置によって接触角は7°に
変化した。つまり,4°増加した。この接触角増加の大
きさはガス状有機物が除去されないことによる。
【0176】以上をまとめると,本発明による空気浄化
フィルタと従来の構成によるケミカルフィルタでは,N
3に対する吸着寿命や吸着性能にさほど差はないもの
の,本発明による空気浄化フィルタはガス状塩基性不純
物のみならずガス状有機不純物をも一括除去でき,それ
自身も新たな有機物汚染源とならない。一方,従来の構
成によるケミカルフィルタでは,ガス状塩基性不純物は
除去できるが,ガス状有機不純物は除去できず,しかも
それ自身が新たな有機物汚染源となるという欠点があ
る。また,本発明による空気浄化フィルタは不燃物であ
るのに対して,従来の構成によるケミカルフィルタは可
燃物であるという欠点がある。
【0177】つぎに,本発明の実施例にかかる図9の高
度清浄装置の空気浄化フィルタ111の下流側に,ガス
状有機不純物を発生しない素材のみから構成された粒子
状不純物を除去するフィルタを取り付けた場合と,フィ
ルタ構成材からガス状有機物の発生のある従来の粒子状
不純物を除去するフィルタを取り付けた場合を比較し
た。高度清浄装置100の処理空間内に洗浄直後の有機
物汚染のない酸化膜付きシリコンウエハ基板を放置し
た。そして洗浄直後と12時間放置後の接触角をそれぞ
れ測定し,12時間放置による接触角の増加を求めた。
ガス状有機不純物を発生しない素材のみから構成された
粒子状不純物を除去するフィルタを取り付けた場合は,
12時間放置後のウエハ表面の接触角は1°だけ増加し
た。接触角増加は極めて小さい。
【0178】これは,つぎのような理由による。前述し
たように本発明の空気浄化フィルタにおいては表面汚染
の原因となるガス状有機不純物が除去され,それ自身も
新たな有機物汚染源とならない。しかもその下流側に配
置された粒子状不純物を除去するフィルタもガス状有機
不純物を発生しないことによる。一方,フィルタ構成材
からガス状有機物の発生のある従来の粒子状不純物を除
去するフィルタを取り付けた場合には,フィルタ構成材
からの脱ガスの影響で12時間放置後のウエハ表面の接
触角は3°も増加した。3°の増加のうち,1°の増加
は空気浄化フィルタ111で除去しきれなかったガス状
有機物に由来するが,残りの2°は粒子除去用フィルタ
の構成材からの脱ガスに由来する。
【0179】以上,本発明の好適な実施例について,半
導体やLCDの製造プロセス全般の高度清浄装置(いわ
ゆるクリーンルーム)に関して説明したが,本発明はか
かる実施例に限定されない。ミニエンバイロメントと称
する局所的な高度清浄装置やクリーンベンチやクリーン
チャンバや,清浄な製品を保管するための各種ストッカ
など様々な規模の高度清浄装置,空気浄化フィルタの処
理可能風量,循環風量と外気取り入れ空気量の割合,高
度清浄装置内部からのガス状不純物の発生の有無などの
処理環境に応じて多様な実施例が考えられる。
【0180】例えば,300mm直径シリコンウエハを
使用して256MbitDRAMや1GbitDRAM
の半導体デバイスの製造が1999年頃から始まろうと
している。このような半導体製造装置では,ウエハを該
装置内のチャンバに導入した後,反応プロセスを開始す
るまでの間,不活性ガス供給装置から窒素やアルゴンの
不活性ガスを送気して該チャンバ内に充満させる。この
不活性ガスは極めて高純度の仕様であり,不活性ガス自
体がウエハの表面汚染を起こすことはない。しかし,不
活性ガスの供給をオンオフするために,不活性ガス供給
装置とチャンバの間にはバルブが設けられ,このバルブ
の構成素材からウエハ表面汚染の原因となる種々の化学
汚染物質が発生する。本発明による空気浄化フィルタを
バルブとチャンバの間のガス流路に設けることによっ
て,該空気浄化フィルタは自身からのガス状汚染物を発
生することなく,バルブから発生する種々のガス状塩基
性不純物やガス状有機不純物を除去することで,ウエハ
の表面汚染の防止と品質向上に役立った。
【0181】
【発明の効果】本発明によれば,以下のような効果を奏
する。高度清浄装置で取り扱う基板表面の汚染を防止す
るにあたり,雰囲気中に含まれる基板表面汚染の原因と
なるガス状塩基性不純物とガス状有機不純物の両方を吸
着・除去したことによって,半導体やLCDの製造など
に好適な基板表面の汚染の原因となるガス状不純物が除
去された清浄空気を作り出すことができた。また,半導
体やLCDの製造において,こうして作り出した清浄空
気を,基板表面が暴露される高度清浄装置の雰囲気とし
て利用することで,基板表面の汚染を防止することがで
きた。
【0182】また,ガス状塩基性不純物を吸着・除去す
るための吸着剤として,けいそう土,シリカ,アルミ
ナ,シリカとアルミナの混合物,珪酸アルミニウム,活
性アルミナ,多孔質ガラス,活性白土,活性ベントナイ
ト,合成ゼオライトのうちの少なくとも1種からなる無
機物の粉末に有機酸を添着した吸着剤を用い,ガス状有
機不純物を吸着・除去するための吸着剤として各種無機
物の粉末を適宜に選択して,組み合わせることによっ
て,構成材料に可燃物を含まない空気浄化フィルタを提
供することができる。
【0183】そしてこの空気浄化フィルタを用いて構築
された高度清浄装置は,従来の活性炭吸着剤やイオン交
換繊維の空気浄化フィルタを用いて構築された高度清浄
装置に比べて防災上,優れていた。基板表面汚染の原因
となるガス状有機物を発生しない素材のみから構成され
る空気浄化フィルタを提供することができ,この空気浄
化フィルタを用いて構築された高度清浄装置は,従来の
活性炭吸着剤やイオン交換繊維の空気浄化フィルタを用
いて構築された高度清浄装置に比べて,基板表面の有機
物汚染をより完全に防止することができた。
【0184】本発明の空気浄化フィルタが除去の対象と
する主要な不純物は,ガス状塩基性不純物であるが,本
発明の空気浄化フィルタは,ガス状有機不純物の除去に
ついても効果がある。本発明の空気浄化フィルタでは,
ガス状塩基性不純物のみならず,有機不純物までをも一
括して除去できるので,吸着層体積の低減,圧力損失の
低減,吸着層製造コストの低減等の利点がさらに大きく
なる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかるフィルタの概略的
な分解組立図である。
【図2】ハニカム構造体の表面に有機酸を添着した無機
物粉末を無機バインダを用いて固着させて無機材料層を
形成したフィルタの断面部分拡大図である。
【図3】無機バインダを用いて有機酸を添着した無機物
粉末を造粒したペレットをハニカム構造体の表面に固着
させた構成のフィルタの断面部分拡大図である。
【図4】本発明における有機酸を添着した無機物粉末を
無機バインダで支持体表面に担持した無機材料層につい
て示した無機材料層断面の部分拡大図である。
【図5】有機酸を添着した無機物粉末のペレットを二重
円筒形状のケーシング内に充填した空気浄化フィルタの
横断面図と縦断面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態にかかるフィルタの概
略的な分解組立図である。
【図7】波形シートと薄板シートを積層したハニカム構
造体の表面に,無機バインダを用いて有機酸を添着した
無機物粉末を固着させて第1の無機材料層を形成し,さ
らにその表面に無機吸着粉末を固着させて第2の無機材
料層を形成した構成のフィルタの断面部分拡大図であ
る。
【図8】本発明における第1の吸着層と第2の吸着層か
らなる複合層断面の部分拡大図である。
【図9】本発明の実施の形態にかかる高度清浄装置の構
成を概略的に示す説明図である。
【図10】本発明の他の実施の形態にかかる高度清浄装
置の構成を概略的に示す説明図である。
【図11】市販のケミカルフィルタ2種とイオン交換繊
維を使用したケミカルフィルタのそれぞれにより処理し
たクリーンルームエアと,本発明による空気浄化フィル
タにより処理したクリーンルームエアの計4つの雰囲気
中で,酸化膜付きシリコンウエハ表面の接触角の経時変
化を測定した結果を示すグラフである。
【図12】クリーンルーム雰囲気中に放置されたガラス
基板表面を対象に,超純水滴下による接触角の測定値
と,X線光電子分光法(XPS:X−ray Phot
oelectron Spectroscopy)によ
り測定した有機物表面汚染の相関関係を示すグラフであ
る。
【図13】本発明Aの無機材料層の構造断面図である。
【図14】本発明Bの無機材料層の構造断面図である。
【図15】本発明Cの第1と第2の無機材料層の透視模
式図と構造断面図である。
【図16】本発明Dの第1と第2の無機材料層の構造断
面図である。
【図17】本発明Eの第1と第2の無機材料層の構造断
面図である。
【図18】本発明Fの第1と第2の無機材料層の構造断
面図である。
【符号の説明】
1 フィルタ 12 支持体 25 第1の吸着層 26 第2の吸着層 100 高度清浄装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI B01D 53/72 B01D 53/34 120D

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 けいそう土,シリカ,アルミナ,シリカ
    とアルミナの混合物,珪酸アルミニウム,活性アルミ
    ナ,多孔質ガラス,活性白土,活性ベントナイト又は合
    成ゼオライトのうちの少なくとも1種からなる無機物の
    粉末に有機酸を添着した吸着剤を,無機物の粉末をバイ
    ンダとして支持体の表面に固着させて無機材料層を形成
    したことを特徴とする,空気浄化フィルタ。
  2. 【請求項2】 けいそう土,シリカ,アルミナ,シリカ
    とアルミナの混合物,珪酸アルミニウム,活性アルミ
    ナ,多孔質ガラス,活性白土,活性ベントナイト又は合
    成ゼオライトのうちの少なくとも1種からなる無機物の
    粉末に有機酸を添着した吸着剤を,下記の無機物Aの粉
    末をバインダ又は充填材料として支持体の表面に固着さ
    せて無機材料層を形成したことを特徴とする,空気浄化
    フィルタ。 無機物A:タルク,カオリン鉱物,ベントナイト,けい
    そう土,シリカ,アルミナ,シリカとアルミナの混合
    物,珪酸アルミニウム,活性アルミナ,多孔質ガラス,
    リボン状構造の含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物,活性
    白土,活性ベントナイト又は合成ゼオライトのうちの少
    なくとも1種からなるもの。
  3. 【請求項3】 下記の構成からなる第1の無機材料層と
    第2の無機材料層とのいずれか一方が,支持体の表面に
    接する関係を持って積層されたことを特徴とする,空気
    浄化フィルタ。 第1の無機材料層:けいそう土,シリカ,アルミナ,シ
    リカとアルミナの混合物,珪酸アルミニウム,活性アル
    ミナ,多孔質ガラス,活性白土,活性ベントナイト又は
    合成ゼオライトのうちの少なくとも1種からなる無機物
    の粉末に有機酸を添着した吸着剤を,無機物の粉末をバ
    インダとして固着させたもの。 第2の無機材料層:けいそう土,シリカ,アルミナ,シ
    リカとアルミナの混合物,珪酸アルミニウム,活性アル
    ミナ,多孔質ガラス,リボン状構造の含水珪酸マグネシ
    ウム質粘土鉱物,活性白土,活性ベントナイト又は合成
    ゼオライトのうちの少なくとも1種からなるもの。
  4. 【請求項4】 下記の構成からなる吸着剤を下記の構成
    からなる無機物Aの粉末をバインダ又は充填材料として
    造粒させたペレットを,支持体の表面に固着させたこと
    を特徴とする空気浄化フィルタ。 吸着剤:けいそう土,シリカ,アルミナ,シリカとアル
    ミナの混合物,珪酸アルミニウム,活性アルミナ,多孔
    質ガラス,活性白土,活性ベントナイト又は合成ゼオラ
    イトのうちの少なくとも1種からなる無機物の粉末に有
    機酸を添着したもの。 無機物A:タルク,カオリン鉱物,ベントナイト,けい
    そう土,シリカ,アルミナ,シリカとアルミナの混合
    物,珪酸アルミニウム,活性アルミナ,多孔質ガラス,
    リボン状構造の含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物,活性
    白土,活性ベントナイト又は合成ゼオライトのうちの少
    なくとも1種からなるもの。
  5. 【請求項5】 下記の構成からなる第1のペレットの周
    囲に,下記の構成からなる無機物Bの粉末をコーティン
    グして第2のペレットを形成し,この第2のペレットを
    支持体の表面に固着させたことを特徴とする空気浄化フ
    ィルタ。 第1のペレット:けいそう土,シリカ,アルミナ,シリ
    カとアルミナの混合物,珪酸アルミニウム,活性アルミ
    ナ,多孔質ガラス,活性白土,活性ベントナイト又は合
    成ゼオライトのうちの少なくとも1種からなる無機物の
    粉末に有機酸を添着した吸着剤を,無機物の粉末をバイ
    ンダとして造粒させたもの。 無機物B:けいそう土,シリカ,アルミナ,シリカとア
    ルミナの混合物,珪酸アルミニウム,活性アルミナ,多
    孔質ガラス,リボン状構造の含水珪酸マグネシウム質粘
    土鉱物,活性白土,活性ベントナイト又は合成ゼオライ
    トのうちの少なくとも1種からなるもの。
  6. 【請求項6】 前記支持体が,ハニカム構造体であるこ
    とを特徴とする,請求項1,2,3,4又は5のいずれ
    かに記載の空気浄化フィルタ。
  7. 【請求項7】 前記ハニカム構造体が,無機繊維を必須
    成分とする構造体であることを特徴とする,請求項6に
    記載の空気浄化フィルタ。
  8. 【請求項8】 下記の無機物Aの粉末をバインダ又は充
    填材料として,下記の吸着剤を造粒させたペレット,も
    しくは下記の吸着剤を無機物の粉末をバインダにして造
    粒した第1のペレットの周囲に,下記の無機物Bの粉末
    をコーティングして形成した第2のペレットを,ケーシ
    ング内に充填したことを特徴とする,空気浄化フィル
    タ。 無機物A:タルク,カオリン鉱物,ベントナイト,けい
    そう土,シリカ,アルミナ,シリカとアルミナの混合
    物,珪酸アルミニウム,活性アルミナ,多孔質ガラス,
    リボン状構造の含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物,活性
    白土,活性ベントナイト又は合成ゼオライトのうちの少
    なくとも1種からなるもの。 吸着剤:けいそう土,シリカ,アルミナ,シリカとアル
    ミナの混合物,珪酸アルミニウム,活性アルミナ,多孔
    質ガラス,活性白土,活性ベントナイト又は合成ゼオラ
    イトのうちの少なくとも1種からなる無機物の粉末に有
    機酸を添着したもの。 無機物B:けいそう土,シリカ,アルミナ,シリカとア
    ルミナの混合物,珪酸アルミニウム,活性アルミナ,多
    孔質ガラス,リボン状構造の含水珪酸マグネシウム質粘
    土鉱物,活性白土,活性ベントナイト又は合成ゼオライ
    トのうちの少なくとも1種からなるもの。
  9. 【請求項9】 前記無機物,無機物A又は無機物Bにお
    いて,5〜300オングストロームの範囲に分布する細
    孔の総容積が,重量当たり0.2cc/g以上である
    か,又は細孔の比表面積が100m2/g以上であるこ
    とを特徴とする,請求項1,2,3,4,5,6,7又
    は8のいずれかに記載の空気浄化フィルタ。
  10. 【請求項10】 前記無機材料層,第1の無機材料層,
    第2の無機材料層,ペレット,第1のペレット又は第2
    のペレットのうちの少なくともいずれか一つに無機系固
    着補助剤を混入したことを特徴とする,請求項1,2,
    3,4,5,6,7,8,又は9のいずれかに記載の空
    気浄化フィルタ。
  11. 【請求項11】 前記無機系固着補助剤が珪酸ソーダ,
    シリカ又はアルミナの少なくとも一つを含むことを特徴
    とする,請求項10に記載の空気浄化フィルタ。
  12. 【請求項12】 前記有機酸が,脂肪族系カルボン酸で
    あることを特徴とする,請求項1,2,3,4,5,
    6,7,8,9,10又は11のいずれかに記載の空気
    浄化フィルタ。
  13. 【請求項13】 下記の吸着剤と下記の無機物Aの粉末
    とを分散させた懸濁液に支持体を浸漬させた後,該支持
    体を乾燥させて支持体の表面に無機材料層を固着させる
    ことを特徴とする,空気浄化フィルタの製造方法。 吸着剤:けいそう土,シリカ,アルミナ,シリカとアル
    ミナの混合物,珪酸アルミニウム,活性アルミナ,多孔
    質ガラス,活性白土,活性ベントナイト又は合成ゼオラ
    イトのうちの少なくとも1種からなる無機物の粉末に有
    機酸を添着したもの。 無機物A:タルク,カオリン鉱物,ベントナイト,けい
    そう土,シリカ,アルミナ,シリカとアルミナの混合
    物,珪酸アルミニウム,活性アルミナ,多孔質ガラス,
    リボン状構造の含水珪酸マグネシウム質粘土鉱物,活性
    白土,活性ベントナイト又は合成ゼオライトのうちの少
    なくとも1種からなるもの。
  14. 【請求項14】 下記の吸着剤と,バインダとしての無
    機物の粉末とを分散させた懸濁液に,支持体を浸漬させ
    た後,該支持体を乾燥させて支持体の表面に第1の無機
    材料層を形成し,さらに,該第1の無機材料層を形成し
    た支持体を,下記の無機物Bの粉末を分散させた懸濁液
    に浸漬させた後,乾燥させて第1の無機材料層の表面に
    第2の無機材料層を形成するか,もしくは支持体の表面
    に前記第2の無機材料層を形成した後,さらに該第2の
    無機材料層の表面に前記第1の無機材料層を形成するこ
    とを特徴とする,空気浄化フィルタの製造方法。 吸着剤:けいそう土,シリカ,アルミナ,シリカとアル
    ミナの混合物,珪酸アルミニウム,活性アルミナ,多孔
    質ガラス,活性白土,活性ベントナイト又は合成ゼオラ
    イトのうちの少なくとも1種からなる無機物の粉末に有
    機酸を添着したもの。 無機物B:けいそう土,シリカ,アルミナ,シリカとア
    ルミナの混合物,珪酸アルミニウム,活性アルミナ,多
    孔質ガラス,リボン状構造の含水珪酸マグネシウム質粘
    土鉱物,活性白土,活性ベントナイト又は合成ゼオライ
    トのうちの少なくとも1種からなるもの。
  15. 【請求項15】 支持体を浸漬させる前に、懸濁液には
    予め有機酸を別途溶かし込んでおくことを特徴とする、
    請求項13又は14に記載の空気浄化フィルタの製造方
    法。
  16. 【請求項16】 前記有機酸が,脂肪族系カルボン酸で
    あることを特徴とする,請求項13、14又は15に記
    載の空気浄化フィルタの製造方法。
  17. 【請求項17】 清浄雰囲気が要求される空間内の空気
    を循環させる循環経路を備えた高度清浄装置において,
    該循環経路に,請求項1,2,3,4,5,6,7,
    8,9,10,11又は12のいずれかに記載の空気浄
    化フィルタを配置すると共に,前記空間より上流側であ
    って空気浄化フィルタの下流側に粒子状不純物を除去す
    るフィルタを配置したことを特徴とする,高度清浄装
    置。
  18. 【請求項18】 前記空気浄化フィルタと粒子状不純物
    を除去するフィルタが,前記空間の天井部に配置されて
    いることを特徴とする,請求項17に記載の高度清浄装
    置。
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