JPH116724A - X線反射率測定における試料の前処理方法、測定データの解析方法、その解析装置、及びその解析用のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体 - Google Patents

X線反射率測定における試料の前処理方法、測定データの解析方法、その解析装置、及びその解析用のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体

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JPH116724A
JPH116724A JP9161106A JP16110697A JPH116724A JP H116724 A JPH116724 A JP H116724A JP 9161106 A JP9161106 A JP 9161106A JP 16110697 A JP16110697 A JP 16110697A JP H116724 A JPH116724 A JP H116724A
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Kosuke Ryu
光佑 劉
Yoshihiro Kudo
喜弘 工藤
Seiji Kawato
清爾 川戸
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Sony Corp
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  • Analysing Materials By The Use Of Radiation (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 薄膜に所定の角度範囲でX線を入射して反射
X線の強度(強度振動成分)から膜の物性を求めるX線
反射率法において、測定精度を高くするための試料の前
処理方法、その解析方法、その解析装置、及びその解析
用の記録媒体を提供すること。 【解決手段】 基体13上に設けられた第1の薄膜12
に所定の角度範囲で電磁波を入射して反射X線の強度を
測定するに際し、反射X線の強度を変調させて試料物性
を反映するデータを強調して取り出すように、第1の薄
膜12上に第2の薄膜11を形成する前処理方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、X線反射率法によ
り試料の物性評価を行う際に物性情報を強調して取り出
すための試料の前処理方法、この前処理方法を用いた場
合の測定データの解析方法、測定データの解析装置、及
びその解析に用いるプログラムを記録したコンピュータ
読み取り可能な記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体材料など、基板上に層構造や膜構
造を持つ試料の物性を評価するための手法の一つとし
て、X線反射率法が用いられている。X線反射率法は、
表面が平坦な試料の表面に、一定の範囲で角度を少しず
つ変えながらX線を入射し、反射X線の強度変化を測定
し、得られたデータから試料の物性を調べる方法であ
る。
【0003】例えば、電子線を使う手法のような他の物
性評価の中には、測定を真空条件下で行わねばならない
ものもあるが、X線反射率法は大気中で測定可能であ
る。また、基本的に試料を非破壊で測定できる等の利点
もある。
【0004】まず、X線反射率法に関連する公知技術と
して、特開平3−146846号公報では、X線反射率
測定を用い、パラメータフィッティングにより薄膜の密
度を求める方法が開示されている。また、特開平6−2
21841号公報では、X線反射率データから振動成分
を抽出し、膜厚その他の物性値を求める評価方法、及び
その装置が示されており、そこに記述された実施例には
金属膜とカーボン膜からなる多層膜構造の解析や、非晶
質Siからなる単層膜の解析が挙げられている。
【0005】また、X線反射率法を特にシリコン酸化膜
の評価に使った例としては、 論文:”N.Awaji et al. Jpn. J. Appl. Phys. 34. L10
13(1995)”,”N.Awaji et al. Jpn. J. Appl. Phys. 3
5. L67(1996)”,”Y.Sugita et al. Jpn. J. Appl. Ph
ys. 35. L5437(1996) ”, などの報告例があり、酸化膜形成処理の違いによる密度
の差が求められることが示されている。
【0006】このように、X線反射率法は、半導体材料
等の様々な分野の層状試料、膜試料の解析に利用されは
じめているが、中でも特に、次世代のシリコンデバイス
におけるゲート酸化膜のような、膜厚1〜4nm程度の
特に薄いシリコン酸化膜の品質などを評価する手法とし
ての実用化も期待されている。
【0007】実用化に向けて、測定データの精度を向上
させるため、精密に駆動できる測定機器を用いたり、平
行性が良く、高輝度のシンクロトロン放射光をX線源と
して利用することなどの方法が実施されている。
【0008】また、データの解析においては、前述した
ようにパラメータフィッティングの手法が一般的に行わ
れるようになっている。
【0009】一般に、試料の一部のみの物性を調べよう
とする方法は、試料内における測定対象の領域が、その
他の領域と比べて小さいほど測定、解析作業は困難にな
る。また、測定対象の領域と周囲の領域との差が明瞭で
ない場合も、やはり同様の困難が生じる。
【0010】X線反射率法の場合も、測定対象の膜が薄
くなるほど、また、この薄膜と基板との屈折率が近いほ
ど、その測定データから薄膜の物性情報が求めにくく、
測定及び解析が難しくなる。シリコンの極薄酸化膜のよ
うな試料では、膜が特に薄い上、膜と基板の屈折率も近
いので、条件は格段に厳しい。
【0011】X線反射率法で、上記のように膜が薄く、
また基板との屈折率が近い試料について物性情報が求め
にくくなる理由を以下、反射率法に則して説明する。
【0012】まず、上述のX線反射率法では、試料の表
面と層・膜の界面からの反射X線の干渉により生じる反
射率の、X線視斜角に対する強度振動成分から物性情報
を求めている。
【0013】この強度振動成分は、膜と基板の屈折率が
近いと振幅が小さくなる。また、この強度振動成分は、
入射X線視斜角の変化に対して急激に変化する反射率曲
線に重なっているので、振幅が小さいと、この強度振動
はX線反射率曲線において明瞭に現れない。以上のこと
が、基板との屈折率が近い試料について物性情報が求め
にくくなる理由の一つである。
【0014】この問題点については従来法でも、ベース
ラインデータを用いて測定データを補正し、強度振動成
分のみを抽出するという方法により対処している。先に
挙げた特開平6−221841号公報では、このベース
ラインデータを、計測点の均等平均を繰り返すことによ
り求めている。また、Awaji らのシリコン酸化膜の解析
例では、このベースラインデータをシリコン基板に対す
るX線反射率から求めている。この基板に対するX線反
射率は、実際に測定を行わずに理論計算のデータを用い
ることもある。
【0015】このようにベースラインデータを用いて補
正(規格化)した反射率を本明細書では以後、「規格化
反射率」と呼ぶ。こうした規格化処理を行うことによ
り、試料の情報を反映する反射率の強度振動成分を抽出
することができ、反射率の急激な変化の影響を除くこと
ができるため、データ解析手段として使用されている。
特開平6−221841号公報では、こうした方法につ
いて「ベースラインにより補正する」という表現で示し
ている。また、Awaji らは、DXR (differenceX-ray
reflectivity)method 、もしくは「X線反射率差分法」
(”N. Awaji etal. Jpn. J. Appl. Phys. 35. L67(199
6) ”,及び「淡路他:第43回応用物理学関係連合講
演会講演予稿集P.68(1996)」)と呼んでいる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】以上のように従来法で
は、膜厚が薄く、膜の屈折率(又は密度)が基板と近い
試料など、測定の難しい試料についても、ベースライン
補正した規格化反射率を用いるなどの解析上の工夫によ
り、試料物性の評価が試みられている。しかし、それで
もなお、さらに膜が薄くなると、測定・解析が困難にな
るという問題点があった。
【0017】ここで、基板上に単層膜が形成されている
構造を持つ試料について、測定で得られる規格化反射率
曲線と、試料物性の対応を説明する。簡単には、規格化
反射率曲線において、測定対象膜の膜厚に対応するのは
強度振動の周期である。また、測定対象膜の密度に対応
するのは強度振動の振幅である。この他、表面や界面の
粗さなどの影響は、振動の振幅の減衰などの規格化反射
率曲線の形状に現れてくる。
【0018】測定対象の膜が薄くなると、それに対応し
て、得られる強度振動の周期は長くなる。従って、測定
するX線視斜角範囲について含まれる振動の波数は減
る。波数が減ると、その強度振動データの持つ情報量も
減少してしまうため、膜厚のみならず、その他の物性値
についても解析が困難になってしまうと言える。これ
が、膜が薄くなるときに測定データから膜の物性情報が
求めにくく、解析が難しくなる理由の一つである。
【0019】これは以下のように考えれば明らかであ
る。同じ角度範囲で測定した場合、振動の周期が長くな
れば、振動の山、及び谷の位置の精度は下がり、これに
よって、周期の精度も下がる。しかも、振動の振幅も不
明瞭になるので、膜密度のデータも精度が低下するか
ら、結果としてその測定データの持つ情報量が減少する
ことになる。
【0020】以上のような理由で、測定対象の膜が薄い
試料については、測定・解析、さらには膜の物性評価が
困難になるという問題点があった。
【0021】本発明は、X線反射率法を用いて膜試料の
評価を行う際、特に膜が薄い場合には、上述の理由で膜
物性の測定、解析が困難になってしまうことに鑑み、そ
の解決策として発明したものである。即ち、同様のX線
反射率測定を行った場合に、試料に前処理を行うことに
より、処理を行わない場合に比べ、膜の物性情報に対す
る感度の高いデータが得られるようにするための前処理
方法を提供することを目的としている。
【0022】さらに本発明は、この方法で得たデータを
解析し、試料の物性値を算出する方法、特に本手法によ
り得たデータを解析するために計算効率を向上させた解
析方法と、この方法を用いて解析を行うに最適な解析装
置、また、本目的を達成するのに最適な、解析用のプロ
グラムを記述したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
を提供することを目的としている。
【0023】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明においては、前処理として試料表面に一定条
件の膜を形成する処理を行い、その上で、X線反射率測
定を行う。
【0024】X線反射率測定を行う際、この前処理によ
り形成された膜があるために、当該試料に対してX線反
射率測定を行うと、規格化反射率曲線には、短周期の強
度振動成分が生じる。
【0025】このような前処理により、測定対象の試料
の情報が適切に測定データに反映されるようにするに
は、以下の条件に従った膜が形成されるのが望ましい。
【0026】即ち、 1.試料の測定対象領域(第1の膜)よりも厚い第2の
膜を形成するものであること。 2.第1の膜の予想される屈折率と、第2の膜の屈折率
との差の絶対値が、第1の膜の予想される屈折率と、こ
の膜が形成されている基板の屈折率との差の絶対値より
も大きいこと。 3.第2の膜の屈折率と第1の膜の予想される屈折率と
の差の絶対値と;前記基板の屈折率と第1の膜の予想さ
れる屈折率との差と;の比が、反射X線の測定時の、強
度検出器のカウントレートによって定まる基準値よりも
小さいこと。
【0027】上記の2、3の条件を満足するために、前
処理で形成する膜として、基板と同じ材質からなる膜を
形成する方法を採ることができる。また、本手法が特に
効果的なシリコンの極薄酸化膜を解析する場合の実施態
様としては、例えば、ポリシリコン膜を利用することが
できる。ここで形成する膜はなるべく均質であり、かつ
界面又は表面は平坦となるのが好ましい。従って、膜を
形成した後に、可能であれば表面の平滑化処理を行うの
が望ましい。
【0028】次に、以上の前処理を行った上で得たX線
反射率測定データの解析手段について述べる。
【0029】前述の前処理を行ったことによって測定デ
ータに現れる強度振動成分の包絡線は、特に形成した第
2の膜の下部の物性、即ち、その膜を形成する前の試料
表面の物性を敏感に反映する一方、形成した第2の膜の
膜厚や膜密度の影響はあまり受けない。従って、第2の
膜の下にある、本来の測定対象膜の物性情報を得るに
は、データ解析で、この包絡線成分を抽出し、その上で
抽出した成分について解析処理を行うという手段を用い
ると良い。
【0030】ここで、包絡線成分の抽出を行わず、膜形
成後の測定で得られた反射率強度振動曲線に対し、既知
のパラメータフィッティング手法を用いて、試料の物性
値を全て一度に決定しようとすることも不可能ではな
い。このような方法によっても、X線反射率法による測
定データは、前述の前処理を実施したことにより、試料
の物性に敏感になっているため、前処理をしない場合よ
りも、膜の物性情報に対する感度は高いといえる。
【0031】しかしながら、既知のパラメータフィッテ
ィングアルゴリズム、例えば修正マルカート法や修正パ
ウエル法などのアルゴリズムにおいては、フィッティン
グにかかるパラメータには適切な初期値を与えることが
重要である。また、多数のパラメータに対して一度にフ
ィッティングを行おうとする場合には、パラメータは正
しい値に収束しなかったり、収束の速度が特に遅くなっ
たりする場合がある。
【0032】従って、本発明の方法で得られたデータに
関しては、まず包絡線成分を抽出し、少数のパラメータ
(例えば測定対象の膜の膜厚、密度など)に対してまず
フィティングを行って、これらのパラメータの値を得る
方が良い。
【0033】しかしながら、包絡線抽出の処理により誤
差が入る恐れがあるから、精密な解析が必要な場合に
は、ここで得たパラメータを初期値としてから、包絡線
を抽出する前の反射率強度振動曲線を用いて、必要なパ
ラメータに対してフィッティングを行う手順を採ると良
い。
【0034】前記の解析方法を適切に実行するために、
反射率強度振動成分の測定データから、包絡線成分を抽
出する機能を持つ解析装置を用いることができる。
【0035】また、この解析装置の代わりに、同様の包
絡線抽出の機能を含む一連のデータ解析をコンピュータ
に行わせるための解析プログラムを記録したコンピュー
タ読み取り可能な記録媒体を用いることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】以下、図面等を参照して説明する
ように、本発明を以下のように実施することにより上記
課題が解決される。
【0037】図1(B)のように、均質な基板13’上
に薄膜12’が形成されている形態の試料が、本発明に
よる物性評価の主たる対象となるものである。
【0038】これをまず、従来のX線反射率法により測
定した場合の例を挙げる。
【0039】図7のような測定装置を用い、試料51、
及び検出器53をゴニオメータ50で一定の視斜角範囲
で少しずつ動かす。この時、検出器53を試料51のX
線視斜角θに応じた反射X線の方向(2θの方向)で反
射X線を受けるようにする、いわゆるθ−2θ駆動とす
る。このようにして、X線視斜角θに対応する反射X線
強度変化(反射率曲線)のデータを得る。
【0040】このデータを、薄膜12’が無いときの反
射率曲線をベースラインデータに用いて規格化する。な
お、このベースラインデータは、測定を行わず、理論計
算から求めてもよい。仮定する表面のラフネスの値を測
定データに応じて選び、適切なベースラインデータを求
めることができるので、これを用いて規格化する。
【0041】こうして得られた規格化反射率曲線は、例
えば図9の如きものとなる。同図を見てわかるように、
規格化処理を行うことにより、反射率曲線の急激な減少
の影響は排除できているが、測定した角度範囲におい
て、物性情報を持つ強度振動が(この例では)2周期し
かない。このように強度振動の波数が少なくなるのは、
図1(B)の、測定対象の膜12’の膜厚d2 が薄いこ
とが原因である。波数が少ないため、周期や振幅の精度
は下がる。従って、求める物性情報の精度も下がる。
【0042】そこで、反射率測定データが持つ試料物性
情報の感度を変えるために、試料上に膜を形成する前処
理を施す。これにより、得られる規格化反射率曲線に変
調を生じさせる。
【0043】さらに、得られる反射率強度振動の周期を
短くして明瞭にするために、形成する第2の膜は測定対
象の膜よりも厚いものとする。また、得られる反射率強
度振動の振幅を大きくして明瞭にするために、形成する
第2の膜と、その下の第1の膜との屈折率差を、第1の
膜とその下の基板の屈折率の差よりも大きくする。
【0044】このようにすると、得られる振動の包絡線
が、図9の周期の長い強度振動に対応するようになり、
第1の膜の物性を反映する。但し振幅があまりに大き
く、それに比して包絡線の変動が小さすぎると、統計的
に有意な包絡線の変動が抽出できないので、測定系の条
件、特に検出器のカウントレートによって定まる上限値
よりは小さくし、振動の振幅と包絡線の変動の比を、適
切な範囲内にとどめる。
【0045】これによって、以上の条件の、前処理を終
わった試料の形態は、図1(A)の如くになり、試料表
面には、第2の膜11が形成されている。測定について
は、前述の従来法と同様に、θ−2θ駆動の測定を行
い、測定データはベースラインデータを用いて規格化す
る。こうして得られた規格化反射率曲線は、例えば図1
0や図11の如きものとなる。
【0046】図9と図10、図11とを比較すると分か
るように、図9では、周期が長いために、周期長や振幅
の信頼性が低いのに対し、図10、図11では、振幅の
変動が明瞭に現れていることがわかる。
【0047】先に述べたように、酸化膜密度は、振動の
振幅に反映されるが、図9に示すように特に振動の谷の
位置で差異が顕著である。図10、図11を見ると、図
9の振動の谷に相当する付近では、振動の極大値、極小
値とも敏感に膜密度を反映している。振幅の変動で比較
すると、膜の形成の前処理を行った方が、前処理を行わ
ない図9の場合よりも約2倍敏感となることが分かる。
【0048】以上の条件を満たす第2の膜の材質とし
て、既知の物性データを参照して適切な物質を選択して
もよいが、簡単には基板の材質と同じ材料からなる膜を
第2の膜として使えば、上記のいずれの条件も満たして
いるので適している。
【0049】また、特にシリコン酸化膜の解析において
は、第2の膜としてポリシリコン膜を選んでもよい。ポ
リシリコン膜はプロセスで普通に利用されているので、
膜を形成するための専用装置等を用意せずとも、本発明
の前処理を実施できる利点がある。
【0050】以上に記したような前処理を実施すること
によって、図9のように現れていた反射率強度振動が図
10、図11のようになり、反射率測定で得られるデー
タが表面の物性情報に敏感になる。
【0051】次に、こうして得た反射率強度振動を、本
手法の特徴を活かす形で解析する、解析方法の実施形態
を示す。
【0052】まず、得られたデータから測定対象の試料
の物性値を求めるには、先に述べたようにパラメータフ
ィッティングの手法が用いられる。ここでも同様の手法
を用いるが、一般論として、パラメータフィッティング
のアルゴリズムは、フィッティングしたいパラメータに
適切な初期値を与えないと、最適なパラメータが求まら
なかったり、非常に時間がかかったりする場合がある。
特に、フィッティングするべきパラメータ数が多くなる
と、この問題点が重要になる。
【0053】前述のように、前処理を行った試料につい
て得た反射率強度振動のデータの形態は、図10、図1
1のようになっている。図12は、図9から図11に示
した密度が2.28g/cm3 となる酸化膜についての
グラフを抽出して重ね、比較したものであるが、このグ
ラフから、形成した膜厚に差があっても、包絡線はほぼ
一致していることが分かる。
【0054】従って、前処理で第2の膜を形成したと
き、包絡線に注目するならば、変調による感度向上の効
果は利用しつつも、第2の膜の膜厚条件は考慮しなくて
よいことになる。図示しないが、包絡線の振幅について
も、第2の膜の屈折率が前記の諸条件を満たしている限
り、殆ど影響されない。即ち、特に包絡線を抽出すると
いう操作を行うことで、フィッティングするべきパラメ
ータから、第2の膜の物性に相当するパラメータを減ら
すことになる。
【0055】このように膜を形成した試料についての反
射率強度振動データの特性を活かすため、第2の膜に影
響されにくい包絡線成分に注目し、包絡線成分を抽出し
てパラメータを減らした上でフィッティングを行う。先
に述べたように、パラメータ数が多いとフィッティング
アルゴリズム上の問題が大きいので、包絡線を抽出する
処理を実施することで、この問題点が改善する。
【0056】このような方法で、前述の前処理を行って
得た測定データを解析する装置として、包絡線を抽出す
るアルゴリズムを備えた解析プログラムを記憶させた記
憶装置を備えたことを特徴とするデータ解析装置を用い
ることができる。また、汎用のコンピュータにこの解析
方法による解析を実行させるためのプログラムをコンピ
ュータ読み取り可能な形態で記録媒体に記録したものを
提供することもできる。
【0057】以上が、本発明の実施形態についての概要
であるが、各事項について詳しく説明する。
【0058】ここではまず、X線反射率の理論式に基づ
いて、本発明の実施形態における作用を説明する。
【0059】多層膜に関するX線の反射率の理論は、Pa
rratt (L. G. Parratt : Phys. Rev95(1954)359)によっ
て、図1(C)のような一般の多層膜に対する理論とし
て与えられている。ここでは、本発明の前処理法により
感度が向上する作用の要点を述べるため、まず界面の粗
さ(ラフネス)のパラメータを省略して記述する。ま
た、偏光はσ偏光の場合を示す。ラフネスの効果をどの
ように扱うかについては、後述する解析プログラムの実
施形態の説明において示す。
【0060】図1(C)の多層膜で、表面からj番目の
層である第j層60の複素屈折率をnj 、膜厚をdj
し、また、第j層60から第j+1層61に入射するX
線の、界面に対する視斜角をθj とする。複素屈折率は
j =1−δj +iβj のようにδ及びβで表現する
と、第j層60と、第j+1層61との界面27’での
反射(反射X線7)のフレネル係数(振幅反射率)F
j,j+1 は、次のように与えられる。
【数1】 で与えられる。
【0061】また、多層膜で下側の層からの反射の影響
を含めた反射率は、このフレネル係数を用いて、次の漸
化式で与えられる。
【数2】 但し、γj =2πgj j /λである(λは真空中での
X線の波長)。
【0062】以上が多層膜一般に対する反射率の理論式
である。実際の計算を行う場合には、各層の物性パラメ
ータを求め、(式1)を計算し、結果を(式2)に代入
して各界面でのフレネル係数を求め、さらに、(式3)
の漸化式を解くことにより、理論計算値が得られる。反
射率強度曲線は|R0,2 2 を、θに対して計算するこ
とで求まる。
【0063】次に、この反射率計算の理論式を用いて、
本発明を適用していない図1(B)に示すような薄膜試
料に対する反射率曲線と、本発明を適用し、図1(A)
のように、第2の膜11を形成した場合の反射率曲線と
を比較する。
【0064】図1(B)に示すように、基体13’とし
てのシリコン基板上の測定対象である第1の薄膜12’
として酸化膜が形成されている試料の場合についてまず
説明する。
【0065】基体13’が十分厚いとすると、この基体
の底面からの反射は無視できるので、R3,4 =0とみな
すことができる。これより、(式2)及び(式3)に基
づいてR2,3 、R0,2 が順番に求まるが、それは次のよ
うになる。
【数3】 なお、exp(2iγ0)=1である。
【0066】次に、図1(A)に示すように、図1
(B)に相当する試料上に、本発明に基づいて膜を形成
した場合を示す。
【0067】
【数4】
【0068】ここで、図9〜図12は、振動成分を見や
すくするため、反射率データを膜を除去した基体の反射
率をベースラインとして規格化した値で示しており、こ
のベースラインとなる基体の反射率は R0,3 =F0,3 …(式9) となる。
【0069】以下、近似式を用いて式を変形する。
【0070】図9〜図12に見られるように、X線反射
率法で振動構造が見られるのは、X線視斜角θが全反射
臨界角よりも大きい範囲である。X線視斜角θが全反射
臨界角よりも十分大きいときには
【数1】、
【数2】の式からフレネル係数は Fj,j+1 <<1 …(式10) と、みなすことができる。このとき、(式5)の本発明
を適用しない場合のX線反射率の式は
【0071】
【数5】 となる。
【0072】(式8)の、本発明に基づく処理を行った
場合のX線反射率の式は、
【数6】 のように近似できる。
【0073】ここで、フレネル係数Fは、(式1)及び
(式2)で与えられるように、虚数成分を持つ複素数で
あるが、X線視斜角が全反射臨界角よりも十分大きい範
囲では、
【数1】で、θ2 −2δj >>2βj であるから、実数
とみなせ、
【数2】より
【数7】 となる。
【0074】従って、以下、フレネル係数は(式15)
の値を持つ実数として近似する。(式12)は、
【数8】 と表すことができる。
【0075】また、(式14)は、
【数9】 となる。
【0076】ここで、視斜角が全反射臨界角より十分大
きい範囲では、(式1)より、gj=θとおけて、γj
=2πgj j /λより、
【数10】 となる。
【0077】また、(式9)及び(式15)より、
【数11】 であり、また(式17)の振動成分を同様にベースライ
ンデータで規格化すると
【数12】 となる。
【0078】ここで、 λ:X線波長、re :古典電子半径、vc :単位格子体
積、Zk :単位格子のk番目の原子の原子番号 fk ' :k番目の原子の異常分散項の実数成分 とすると、δ(複素屈折率の実数部を1−δとしたとき
のδ)は、
【数13】 と表すことができる。
【0079】用いるX線の波長が、試料の各層の構成元
素の吸収端から離れている場合には、異常分散項の実数
成分fk ' の値は原子番号に比べて十分小さい。このと
き、アボガドロ定数NA とし、原子量が原子番号のほぼ
2倍に等しいとみなすと(式21)は、次のように書け
る。
【数14】
【0080】この近似が成り立つときは、δはほとんど
膜の組成によらず、X線の波長が決まれば、密度に比例
することがわかる。
【0081】また、δ3 −δ2 、δ2 −δ1 はδ1 −δ
0 に比較して十分小さいので、(式21)において第1
項は、第2項、第3項に比べて無視でき、振動成分は、
【数15】 のように近似できる。
【0082】この2つのコサイン関数の和は、d1 >>
2 のとき、いわば「うなり」に相当する強度変動を生
じるが、それは良く知られたように2波の周波数の差を
周波数とする波で、周期は
【数16】 までであることがわかる。
【0083】従って、上述したように、|δ2 −δ1
>|δ3 −δ2 |を条件とすれば、「うなり」の強度変
動の振幅は (2δ1 /δ3 2 )|δ3 −δ2 | …(式25) のようになることがわかる。
【0084】また、この「うなり」の強度振動を(式1
9)の振動成分と比較すると、振動周期はどちらもλ/
2d2 であり等しく、振幅は (2δ1 /δ3 2 )|δ3 −δ2 | と (2δ2 /δ3 2 )|δ3 −δ2 | であり、前処理で形成する膜と測定対象の膜との密度が
近ければ、両者を等しいものと見なすことができる。
【0085】従って、この「うなり」の強度変動は(式
20)の振動成分と、振幅及び周期が同じになると見な
せ、よって、この「うなり」の強度変動、即ち包絡線か
ら測定対象薄膜の物性を推定することができる。即ち、
本発明に基づく前処理により、試料の情報が、適切に測
定データに反映されていることが、数式上からもわかる
(但し、この変動の曲線(包絡線)は、周期及び振幅が
同じではあるが、正確には(式20)のような、正弦曲
線ではない。正確な包絡線の式は、この後、解析プログ
ラムのフローの説明で記す)。
【0086】一方で、
【数17】 までの強度変動が検出できなければならないので、この
強度変動成分は、測定するX線視斜角の範囲で、最も反
射率が小さくなる角度での、実際の測定時間当たりに、
X線強度検出器に入る信号強度カウントC1 としたと
き、例えば標準偏差の3倍を目安にするならば、3σ=
3√CI であるから、3√CI /CI よりも|δ3 −δ
2 |/|δ2 −δ1 |の方を大きくすることが望まし
い。
【0087】測定条件として最適なのは、|δ2 −δ1
|>|δ3 −δ2 |の条件の範囲で|δ3 −δ2 |/|
δ2 −δ1 |が最も大きくなる|δ3 −δ2 |/|δ2
−δ1 |≒1のときであるが、実際にはδ2 は測定前に
は正確にはわかっていないので、おおよその推定値につ
いて、条件を満足できそうな膜を形成する。
【0088】しかし、もし、基板と同じ材質、密度のも
のを膜として形成できるならば、得られる反射率曲線
は、100%変調に相当するデータが得られるので、そ
れが最適である。
【0089】以上、本発明の前処理を実施することによ
り感度が向上する原理、及び形成する膜の条件をX線反
射率の理論式に基づいて説明した。
【0090】なお、ここまでに述べた計算は、本発明に
よる作用を説明するために、ごく粗い近似を用いてい
る。また、膜面の粗さ、膜厚のばらつき、相互拡散など
を計算には含めていない。実際にデータ解析を行う際
は、近似式を用いず、(式3)の漸化式を直接計算し
て、最終的にパラメータフィッティングから値を求めて
いる。また、膜面の粗さ、膜厚のばらつき、相互拡散に
ついては、界面のラフネスのパラメータσを導入して、
(式2)のフレネル係数を求める式を次のように書き換
えて用いる。
【数18】
【0091】次に、このようにして得られたデータを解
析する方法について詳しく説明する。
【0092】データ解析は、パラメータフィッティング
の手法を用いる。即ち、決定したパラメータを少しずつ
変化させながら理論式より数値計算し、実際の測定デー
タと比較を繰り返す。また、この比較でパラメータセッ
トが適切か否かを判定するために、評価関数を与える。
評価関数は実験値と計算値の差の二乗和や、実験値と計
算値のそれぞれ対数を取った値の差の二乗和など、目的
に応じて様々な形式をとることができる。そして、この
ような評価関数を最小にするようにパラメータセットの
最尤値を求める。ここで修正Marquardt 法や修正Powell
法をはじめ、様々な既知のパラメータフィッティングア
ルゴリズムを用いることができる。
【0093】膜の物性値として、膜厚、密度、及び膜の
表面、及び界面の粗さ(ラフネス)を求める。ラフネス
の計算をするために、データ解析では、前記の(式2
6)を、(式2)の代わりに用い、(式3)の漸化式を
用いて計算する。
【0094】図2は本発明に基づく前処理を行った後の
試料のモデル図であり、図1(A)に対応する。但し、
前述のように(式26)を用いることで、表面、及び界
面のラフネスも、評価するパラメータに含めているた
め、ラフネスについても表記している。
【0095】ここで、測定の目的は、測定対象膜12の
屈折率(もしくはδ2 )、膜厚d2、及び界面のラフネ
スσ1,2 及びσ2,3 を求めることである。感度を向上さ
せるために、測定対象膜の上に膜厚d1 の第2の膜11
が設けられている。ここでは、試料の外部を層0と表記
する。このような試料に対してX線1aを入射し、視斜
角を変えながら測定を行う。
【0096】また、ここで基体13は十分に厚いものと
みなし、裏面からの反射はないものとする。
【0097】ここで、計算式に関わる物性パラメータは
以下の通りである。
【0098】(1)膜厚に関するパラメータ 第2の薄膜 d1 (未知、但し、おおよその値、若しく
は取りうる値の範囲は既知とする) 第1の薄膜 d2 (未知) (基体の膜厚は、裏面からの反射がないものと見なすこ
とにより無視できる。) (2)屈折率に関するパラメータ (但し、複素屈折率n=1−δ+iβと記述したときの
δを用いる。) βは1−δに比べ) 層0 (δ=0であり既知、層0は真空部に相
当するため) 第2の薄膜 δ1 (未知、但し、おおよその値、若しく
は取りうる値の範囲は既知とする) 第1の薄膜 δ2 (未知) 基体 δ3 (既知、固定) (3)ラフネスに関するパラメータ 層0−第2の薄膜間のラフネス、即ち試料の表面ラフネ
スσ0,1(未知) 第2の薄膜−第1の薄膜間のラフネスσ1,2 (未知) 第1の薄膜−基体間のラフネスσ2,3 (未知)
【0099】最終的には、d1 、d2 、δ1 、δ2 、σ
0,1 、σ1,2 、σ2,3 の7つのパラメータを決める必要
がある。この7つのパラメータを既知のパラメータフィ
ッティングアルゴリズムを用いて一度に決定ようとする
ことも不可能ではない。これらの7パラメータに仮の値
を与えたとき、(式26)及び(式3)により、理論計
算の結果は一意に決まるため、評価関数を与えれば、パ
ラメータフィッティングは実行できるし、この場合で
も、測定対象の膜の物性情報に対する感度は、本発明に
よる前処理を行わない場合に比べて高い。
【0100】しかし、前述のように、パラメータフィッ
ティングアルゴリズムにおいては、パラメータに適切な
初期値を与える必要があり、また、同時にフィッティン
グすべきパラメータは少ない方が良い。そこで、本発明
のような前処理を行って得られた測定データの場合に
は、包絡線成分を抽出する方法を用いると良い。包絡線
成分は本発明の方法により形成した膜の膜厚や、屈折率
の影響をあまり受けないので、包絡線を使うことで、よ
り少数のパラメータについてのみのフィッティングを行
うことができる。
【0101】そこで、抽出する包絡線成分がどのように
なるかを、数式で示す。得られる反射率強度振動のデー
タは(式23)に示した二つのコサイン関数の和であ
る。
【数19】
【0102】簡単には、前述のように包絡線の振動周期
と振動振幅は、本発明の前処理を行わない場合に得られ
る反射率強度振動成分の周期と振幅にほぼ一致すること
から、パラメータフィッティングを用いて包絡線の周期
と振幅を求めれば、第1の膜の膜厚dと、δの値を推定
できる。但し、(式23)からも分かるように、周期の
異なる二つのコサイン関数の和なので、うなりに相当す
る包絡線は正弦曲線の絶対値に相当する形となる。
【0103】具体的には、振動成分は、δ2 −δ1 と、
δ3 −δ2 が同符号のときは、(式23)中の
【数20】 の成分によりもたらされ、和積の公式より
【0104】
【数21】 となるため、この包絡線は、
【0105】
【数22】 の成分を持つ。係数も含め、半角公式を使ってこれらを
まとめると次のようになる。
【0106】
【数23】 のようになる。
【0107】このように得られた包絡線についての
【数23】の両式から次のことがわかる。即ち、振動の
周期を与えるのは、 4πd2 /λ であり、第1の膜の膜厚d2 に依存するが、第2の膜の
膜厚d1 には依存しない。
【0108】また、包絡線の振幅は (4δ1 /δ3 2)|δ3 −δ2 | であり、δ1 が要素に入っているが、δ1 、δ2 、δ3
の値が近接しており、δ1 /δ3 がほぼ1として近似で
きることを考え、またδ3 が既知であることから、包絡
線の振幅を与えるのであり、δ1 にはほとんど影響され
ないと言える。従って、このように包絡線をとった場合
には「第2の膜」の物性パラメータがほとんど影響を与
えないことがわかる。
【0109】最終的には、前述の7パラメータのフィッ
ティングを行うが、上記の処理によりまず、d2 及びδ
2 にパラメータを絞って値を求めることができるので、
包絡線をとる本発明の手法は、パラメータフィッティン
グ処理を行う上で都合がよい。
【0110】以下、図4に示した解析プログラムフロー
チャート(A)〜(H)に基づいたパラメータフィッテ
ィングの処理操作の手順を説明する。
【0111】本発明の反射率の解析方法に基づく解析フ
ローとして、まず、図4に示すように、まず、測定デー
タ(規格化反射率)の読み込みを行う(A)。ここで
は、得られた強度振動成分を抽出するために、基板に対
する反射率で規格化したデータを記録媒体上に読み込
む。
【0112】得られるデータの構造は、X線視斜角と、
これに対する規格化反射率データの組が測定データの点
数分だけあって、この測定データは、例えば、図3
(A)に示すような形状のグラフとなる(測定データの
点の集合)。
【0113】次いで、極大、極小の抽出を行う(B)。
ここでは、図3(B)に示すように、得られた前述の測
定データ(測定点の集合)から、極大点及び極小点を抽
出する。
【0114】次いで、極大抽出点の補間で上側包絡線デ
ータの計算を行う(C)。ここでは、図3(C)に示す
ように、抽出した極大点の集合である上側包絡線のデー
タ計算を行い、上側包絡線(得られた上側包絡線の式を
式とする)を求める。求めた上側包絡線の補間データ
は、外部記録媒体上に記録させる。
【0115】次いで、極小抽出点の補間で下側包絡線デ
ータの計算を行う(D)。ここでは、図3(D)に示す
ように、抽出した極小点の集合である下側包絡線のデー
タ計算を行い、下側包絡線(得られた下側包絡線の式を
式とする)を求める。求めた下側包絡線の補間データ
は、外部記録媒体上に記録させる。
【0116】次いで、振幅変動データの計算を行う
(E)。ここでは、図3(E)に示すように、前段の処
理操作(C)及び(D)で求めた上側包絡線のデータと
下側包絡線のデータとの差をとって〔(式−式)/
2〕、振幅変動に関する集合を得る。
【0117】次いで、膜厚及び密度に関してパラメータ
フィッティング(即ち、第1のパラメータフィッティン
グ)を行う(F)。ここで、この膜厚及び密度とは、例
えば上記のd2 、δ1 及びδ2 であって、この値は次段
で初期値として利用される。ここで、この処理操作
(F)についての詳細な処理操作の手順については、図
5と共に後述する。
【0118】次いで、膜厚及び密度のフィッティング値
を初期値としてパラメータフィッティング(即ち、第2
のパラメータフィッティング)を行う(G)。ここで
は、詳しくは後述するが、密度の大小関係などの情報が
あれば、前段(F)で得られた値のうち、不適当なもの
(即ち、ズレの大きいもの)を棄却する。そして、前段
(F)で得られた前記d2 、δ1 及びδ2 を初期値とし
てパラメータフィッティングを行い、前記d1
σ0,1 、σ1,2 及びσ2,3 を含めた全パラメータについ
てその値を求める。ここでは、近似を行わずに、後述の
漸化式(式26)を計算し、パラメータフィッティング
を行う。
【0119】次いで、フィッティング結果の出力を行う
(H)。前段(F)で得られるパラメータフィッティン
グ値を表示装置、印刷装置、記録媒体などに出力する。
【0120】このように、本発明の反射率の解析方法に
おいては、前記反射電磁波の前記強度振動成分に対し
て、まず、その包絡線を導き出し、この包絡線によって
形成される振動振幅データに対して、パラメータフィッ
ティングにより第1の薄膜(及び第2の薄膜)に関する
パラメータ値を求め、このパラメータ値を初期値とし
て、さらに初期の前記強度振動成分のパラメータフィッ
ティングを行う(即ち、前記パラメータフィッティング
により求められた前記第1の薄膜に関するパラメータを
含む全パラメータについてパラメータフィッティングを
行う)ので、前記強度振動成分から得られるパラメータ
値が真の最尤値から離れた値に収束してしまう可能性を
低くし、更に、パラメータフィッティングにおける収束
速度を大きくする。
【0121】ここで、上述の本発明の測定・解析装置に
用いる前記第2の記録媒体、及び本発明の記録媒体は、
上述した解析プログラムを記録している記録媒体であ
る。
【0122】また、この記録媒体は、上述したしよう
に、例えばフロッピーディスク(フレキシブルディス
ク)や光磁気ディスクなどの外部記録媒体であるが、こ
れらのプログラムを演算装置そのものに組み込んで(例
えば、コンピュータのハードディスク内に予め上記のプ
ログラムを組み込んで)、反射率解析専用の演算装置を
構成してもよい。即ち、反射率測定データの解析プログ
ラムについては、測定データを記録媒体に記録して別途
解析する方法が一般的であるが、測定装置と一体化する
ことも可能である。
【0123】この本発明に基づく解析プログラムは、公
知の方法と同様に、別途記録されたX線反射率の測定デ
ータを読み出し、その強度変動とあるパラメータセット
とを与えた時の理論計算による強度変動とを比較する機
能を有し、修正マルカート法や修正パウエル法などの既
知の非線形パラメータフィッティングアルゴリズムを用
いてパラメータセットを最適化しながら、理論計算結果
と実際の測定データとの比較を繰り返すことで、最尤パ
ラメータセットを推定する。
【0124】即ち、薄膜試料の密度、厚さ、界面粗さ
(ラフネス)などのパラメータセットをa(ここで、a
はベクトルである。)とすると、このパラメータaをあ
る特定の値と仮定した場合、X線反射率が視斜角θに対
してどのような変動を示すかは、理論式に基づく計算に
よって求める。
【0125】従って、仮定する薄膜の密度に関するパラ
メータ値を増やしたり、膜厚に関するパラメータ値を減
らしたりするなどの操作を繰り返し、効率よくパラメー
タセットaを探していくアルゴリズムを修正マルカート
法や修正パウエル法で行う。
【0126】ここで、パラメータフィッティングを試行
する初期データとして不適当な値を設定すると、本来求
めようとしていたパラメータ値とは離れたところで極小
(即ち、解)になってしまう可能性がある。
【0127】従って、本発明に基づく解析プログラムに
おいては、前記強度振動成分の包絡線を求めて、この包
絡線より得られる振動振幅データからある特定のパラメ
ータを導き出し、このパラメータを初期値として初期の
強度振動成分に対してパラメータフィッティングを行う
(即ち、全パラメータ成分についてパラメータフィッテ
ィングを行う)。
【0128】この手順で適切な初期値を与えることによ
って、得られるパラメータ値が真の最尤値から離れた値
に収束してしまう可能性を低くし、更に、パラメータフ
ィッティングにおける収束速度を大きくする。
【0129】ここで、前記振動振幅データに対して、
【数24】 として、式のA、B、α、βの4つのパラメータに対
して、図4の(E)に示した振幅変動データを用いてパ
ラメータフィッティングを行う(図5のF1に対応)。
【0130】求まったパラメータAに対して、 (4δ1 /δ3 2 )|δ3 −δ2 |=A であるが、近似して、 (4/δ3 )|δ3 −δ2 |=A とする。
【0131】ここで、δ3 は既知なので、 δ2 =δ2 (1±A/4) (但し、複号は、δ3 >δ2 で−、δ3 <δ2 で+)と
し、この2値とも記録する。
【0132】更に、求まったパラメータαに対し、 2/δ3 〔(|δ2 −δ1 |)−(Aδ3 /4)〕=α を解いて、 δ1 =δ2 ±〔(α/2)+(A/4)〕δ3 (但し、複合は、δ2 >δ1 で−、δ2 <δ1 で+)が
得られる。
【0133】但し、ここで、フィッティングパラメータ
βについて、β=0のときは、(δ2 >δ1 かつδ3
δ2 )又は(δ2 <δ1 かつδ3 <δ2 )であり、β=
πのときは、(δ2 >δ1 かつδ3 <δ2 )又は(δ2
<δ1 かつδ3 >δ2 )となる。
【0134】考えられる解は、β≒0であれば(図5の
F3に対応)、
【数25】 のいずれかとなる。この2つのケースをいずれも記憶す
る。
【0135】次に、求まったB値に対して、 4πd2 /λ=B より d2 =λB/4π …式 が求まる(図5のF5に対応)。
【0136】以上のようにして、δ1 、δ2 及びd2
値を求めることができる。
【0137】次に、前述の各式をパラメータフィッティ
ングに用いる際の理論式の変形方法について更に詳細に
説明する。
【0138】上述の式及び式は、周期がλ/2d2
になっている振動を、θに対する関数の形で表したもの
である。即ち、式及び式は(式23)からの変形で
ある。(式23)は、
【数26】 である。
【0139】このあと、周期の僅かにずれた2つの正弦
関数を足し合わせると、前述の「うなり」に相当する強
度振動成分が得られることを示す。まず、「うなり」に
相当する振動成分がどのように導出されるかを示す。
【0140】まず、δ2 −δ1 とδ3 −δ2 とが同符号
のときは、(式23)が2つの正の係数のコサイン関数
の和、若しくは2つの負の係数のコサイン関数の和とし
て表すことができる。
【0141】従って、係数をつけずに振動成分(うなり
成分)が出現する様子を調べてみると、三角関数の和積
の公式より、
【数27】 (但し、d1 >>d2 を用いて近似している。)である
から、この振動は、
【数28】 の振動で変調されていることになる。
【0142】従って、この強度振動成分の上側包絡線は
【数29】 と表すことができる。
【0143】三角関数の半角公式
【数30】 となる。ここで、(式28)は、θ=0のときにはゼロ
ではなく最大値を取ることになる。
【0144】次に、δ2 −δ1 とδ3 −δ2 とが異符号
の場合を調べる。
【0145】(式23)は次のように変形できる。
【数31】
【0146】従って、半角公式
【数32】 となる。
【0147】ここで、(式23)
【数33】 に係数をつけ、場合分けして考える。
【0148】まず、本発明によれば、|δ2 −δ1 |>
|δ3 −δ2 |であることが望ましく、この条件下では
考えられる場合分けは次の4つとなる。 ケース1:δ2 −δ1 >0、かつδ3 −δ2 >0 ケース2:δ2 −δ1 <0、かつδ3 −δ2 <0 ケース3:δ2 −δ1 <0、かつδ3 −δ2 >0 ケース4:δ2 −δ1 >0、かつδ3 −δ2 <0
【0149】これらをそれぞれ(式27)及び(式2
9)の変形を用いることを考慮して式変形する。
【0150】ケース1:δ2 −δ1 >0、かつδ3 −δ
2 >0の場合 (式23)は以下のように変形できる。
【数34】
【0151】従って、δの大小関係から上側包絡線は
【数35】 となる。
【0152】ケース2:δ2 −δ1 <0、かつδ3 −δ
2 <0 ケース1と同様に(式31)を使用できるが、δの大小
関係から上側包絡線は、
【数36】 となる。
【0153】従って、ケース1とケース2とをまとめる
と、上述した式のようになることがわかる。
【0154】ケース3:δ2 −δ1 <0、かつδ3 −δ
2 >0の場合、(式23)は
【数37】 となる。
【0155】従って、δの大小関係から、上側包絡線
は、
【数38】 となる。
【0156】ケース4:δ2 −δ1 >0、かつδ3 −δ
2 <0の場合 ケース3と同様に(式32)を使用することができる
が、δの大小関係から上側包絡線は、
【数39】 となる。
【0157】従って、ケース3とケース4とをまとめて
書くと、上述した式のようになることがわかる。
【0158】上述したように、ケース1及びケース2の
場合と、ケース3及びケース4の場合の違いは、振動項
の表記が、
【数40】 かの違いである。従って、フィッティングパラメータβ
において、βが0、或いは0に近いときは前者に相当
し、ケース1若しくはケース2になる。また、βがπ、
或いはπに近いときは前者に相当し、ケース3若しくは
ケース4になる。従って、上述の式及び式の場合分
けの結果が導かれる。
【0159】次に、本発明に基づく反射率の測定系を図
6及び図7を参照しながら説明する。
【0160】図6は、本発明に使用できる測定系の一例
のブロック図である。この測定系自体は公知の構成から
なっている。
【0161】図6に示すように、X線源31から出射さ
れたX線(a)が単色器32で単色化され、単色化され
たX線(b)が測定試料33に入射する。そして、反射
X線(c)が検出器34に入射するが、上述したよう
に、この反射X線(c)の強度の視斜角に対するプロフ
ァイルは変調された強度振動成分を有する。
【0162】検出されたX線強度のデータ(g)は測定
制御装置(例えばコンピュータ)36に送られ、さら
に、この測定制御装置36で所定の処理(例えば、反射
率のベースラインデータによる規格化など)が施され
て、測定データ表示(h)のために表示装置(CRT)
37、また、測定データ印刷(i)のために印刷装置
(プリンタ)38などで表される。また、この所定の処
理が施されたデータは、測定データの記録(j)のため
に前記第1の記録部としての記録媒体39にデータとし
て記録される。
【0163】また、この測定制御装置36から、X線視
斜角の変更のために、光学系の配置指定(f)の指示が
試料及び検出器の位置駆動装置35に出され、この位置
駆動装置35によって、試料33の位置駆動(d)及び
検出器34の位置駆動(e)がなされるように構成され
ている。
【0164】次に、図7は、上述のX線源と単色器と試
料と検出器と試料及び検出器の位置駆動装置とからなる
測定装置の概略図である。ここでは、X線としてシンク
ロトロン放射光(SR)を用いている。
【0165】この測定装置においては、まず、X線源と
してのSR:X線源(シンクロトロン放射X線源)45
からのX線を単色器(分光器)としての二結晶モノクロ
メータ46で単色化(即ち、波長選択)し、4象限スリ
ット47でそのX線の広がりを制限してPb遮蔽板48
で散乱X線を防いでいる。更に、このX線はイオンチェ
ンバ(電離箱)49で入射X線強度がモニターされてい
る。
【0166】次いで、このX線が、試料及び検出器の位
置駆動装置としてのゴニオメータ50に配されている測
定対象の薄膜試料51に入射し、試料51で反射されて
強度変調された反射X線を、ゴニオメータ50に取り付
けられている検出器(例えばシンチレーションカウンタ
ー)53で検出する。ここで、反射X線とは無関係な散
乱X線が検出器に入射しないように、2象限スリット5
2が取り付けられている。
【0167】図示しないが、測定制御装置としてのパー
ソナルコンピュータ等によりゴニオメータ50の動作を
制御し、X線の薄膜試料の視斜角を変更すると共に、検
出器を反射X線の方向に移動させる。このようにして、
薄膜試料に入射するX線の視斜角を徐々に変化させなが
ら、検出器により検出した反射X線の強度測定データを
コンピュータのメモリ上に取り込み、また、記録媒体3
9に保存する。
【0168】ここで、上記のシンクロトロン放射光は、
強力で平行性が高く、大変質の良いX線であるので、X
線を利用する先端技術に利用されており、例えば、一般
のX線源では反射X線が弱すぎて測定不可能であるよう
な高い視斜角まで測定することができる。また、得られ
るX線の平行性が高いので、測定データの精度も向上す
る。
【0169】また、X線源としてシンクロトロン放射光
を利用するほか、測定を精密化する方法として、上記ゴ
ニオメータを細かい角度まで制御できるようにして、細
かい角度ステップで測定データを採取することや、空気
による散乱を避けるために真空中で測定し、バックグラ
ウンドノイズの少ないデータを採ることなどが挙げられ
る。
【0170】次に、本発明に基づく反射率データの解析
系を説明する。図8は、本発明に使用できる測定データ
の解析系の一例を示すブロック図である。
【0171】データ処理演算装置(コンピュータ)3
6’によって、前記第1の記録部としての記録媒体39
に記録されている測定データが読み出され、このデー
タ処理演算装置36’で解析される。この解析は、入力
装置40’で処理条件の指定を行い、また、上述の解
析プログラム(処理プログラム)が記録されている前記
第2の記録部としての記録媒体41から測定データ処理
プログラムの読み出しを行って、前記データ処理演算
装置36’上で行われる。
【0172】また、前記データ処理演算装置36’で得
られた解析データは、表示装置(CRT)37’で解析
データ表示したり、印刷装置(プリンタ)38’で解
析データ印刷したりすることができ、更に、これらの
データは解析データ記録のためにデータ保存用の記録
媒体39に記録する。
【0173】以上、本発明に基づく測定方法及び測定・
解析装置などについて説明したが、これらの方法や装置
の応用用途として、例えば、半導体素子などの積層体を
作成する上で、シリコン酸化膜(ゲート酸化膜や絶縁膜
など)を前記第1の薄膜とし、このシリコン酸化膜上に
設けられるポリシリコン膜(多層配線の導電材料やMO
Sデバイスの電極材料など)を前記第2の薄膜とするよ
うに、第2の薄膜が前記所定の処理以外の機能を有する
膜であってよい。
【0174】
【実施例】以下、本発明を具体的な実施例について説明
するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではな
い。
【0175】本実施例は、測定対象として、図1(A)
及び図1(B)に示した積層構造を有する積層体のX線
反射率測定法に基づくものである。
【0176】図1(A)に示した積層体において、基体
13としてシリコン基板、第1の薄膜12としてシリコ
ン酸化膜、第2の薄膜11としてポリシリコン膜を形成
した積層体のX線反射率を上述の図6及び図7に示した
測定系を用いて測定し、得られた測定データを上述の図
8に示した解析系、及び図3、図4、図5に示した解析
プログラム及び解析フローを用いて解析する。但し、後
述のデータはいずれも理論値である。
【0177】シリコン基板の表面に厚さ約4nmのシリ
コン酸化膜を形成した積層体を試料とし、上述のX線反
射率法に基づいて測定した場合のデータ(比較例)を図
9に示し、この積層体上に更に厚さ約20nmのポリシ
リコン膜を形成して、上述のX線反射率法に基づいて測
定した場合のデータ(実施例1)を図10に示す。但
し、測定時のX線の波長は1.54Å(CuKα線に相
当する波長を使用)である。
【0178】図9は、上記比較例の測定データに基づい
て規格化を行った際の、X線視斜角による規格化反射率
の変化を示すグラフ、即ち、強度振動成分のグラフ(比
較例)である。但し、振動成分を明瞭に取り出すため
に、表面のシリコン酸化膜を除去した裸のシリコン基板
に対する測定データによって規格化したものである(以
下、同様)。また、シリコン酸化膜の表面のラフネス及
びシリコン基板表面のラフネスを0.5nmとし、シリ
コン酸化膜とシリコン基板との界面のラフネスは0.3
nmである。
【0179】また、図中、実線はシリコン酸化膜の密度
ρを2.28g/cm3 としたものであり、同様に、一
点鎖線はρ=2.30g/cm3 、点線はρ=2.32
g/cm3 の場合のデータである。
【0180】図10は、上記の比較例に示した積層体上
に厚さ約20nmで、密度2.40g/cm3 のポリシ
リコン膜を積層したもののX線反射率の測定データに基
づいて規格化を行った際の、X線視斜角による規格化反
射率の変化を示すグラフ、即ち、強度振動成分のグラフ
である(実施例1)。但し、ポリシリコン膜表面のラフ
ネスは0.5nmとし、各層間の界面のラフネスは0.
3nmである。
【0181】また、図中、太線はシリコン酸化膜の密度
ρを2.28g/cm3 としたものであり、同様に、中
細線はρ=2.30g/cm3 、細線はρ=2.32g
/cm3 の場合のデータである。
【0182】図11は、ポリシリコン膜の厚みを約30
nmとした以外は、上記実施例1と同様のグラフである
(実施例2)。
【0183】図12は、密度2.28g/cm3 のシリ
コン酸化膜としたときの、実施例1の強度振動成分と、
実施例2の強度振動成分と、比較例の強度振動成分とを
比べたグラフである。
【0184】次に、本実施例による測定データの解析方
法を説明する。
【0185】本実施例においては、上述の解析プログラ
ムを記録した記録媒体から、コンピューターのメモリ上
にこの解析プログラムを読み出して稼働させた。
【0186】このプログラムは、別途記録されたX線反
射率の測定データを読み出し、その強度変動とあるパラ
メータセットとを与えた時の理論計算による強度変動と
を比較する機能を有し、修正マルカート法や修正パウエ
ル法などの既知の非線形パラメータフィッティングアル
ゴリズムを用いてパラメータセットを最適化しながら、
理論計算結果と実際の測定データとの比較を繰り返すこ
とで、最尤パラメータセットを推定することができる。
【0187】ところが、フィッティングを行うべきパラ
メータが多い場合、予めある程度適切な初期値を与えな
いと、真の最小値ではなく局所的な極小値に収束してし
まう可能性がある。
【0188】このため、本実施例では、適切な初期値を
求めるために、予め測定データの強度振動成分から上側
及び下側の包絡線を求め、この2つの包絡線のデータを
第2の薄膜を形成する前の測定対象である第1の薄膜に
対するX線反射率データと比較し、パラメータフィッテ
ィングを行うことによって、この強度振動を与えうる薄
膜の物性値のパラメータセットを求める。
【0189】この際、上側の包絡線を使用するべきか、
下側の包絡線を使用するべきかについては、薄膜の複素
屈折率や密度の大小により、どちらも可能性があるの
で、密度の大小が既知でない限り、両方を試すことにな
る。
【0190】こうして求めたパラメータセットを薄膜物
性のパラメータの初期値とした上で、形成した第2の薄
膜を含めた薄膜試料全体へのX線反射率パラメータフィ
ッティングを行い、最終的に適切な方のパラメータセッ
トを採用する。
【0191】以下、本実施例及び比較例の評価を行う。
【0192】第2の薄膜としてのポリシリコン膜を使用
しない比較例に基づくX線反射率測定法では、図9に示
したような周期の長い強度振動成分が得られる。このよ
うな場合、膜厚に敏感な情報である振動周期を求めるに
しても、どこが振動の頂点か、どこが谷かを判断するの
は難しい。また、頂点が判断できたとしても、密度に敏
感な情報である振動振幅を求めようとしても、振動の中
心がどこか、振幅の大きさはどれくらいかを判定するこ
とが困難となり、このような薄い薄膜の解析は非常に困
難であった。
【0193】これに対して、本実施例のように、測定対
象である第1の薄膜の表面にこの第1の薄膜よりも厚い
第2の薄膜を新たに形成してから、X線反射率測定法を
用いることによって、これらの薄膜の情報は、図10及
び図11に見られるように、第2の薄膜による短い周期
の振動の変調構造として読み取ることができる。
【0194】具体的には、振動の包絡線を用いれば、上
述の振動周期や振動振幅などを求めることができる。こ
の包絡線は図12に見られるように、第2の薄膜の膜厚
が厚い方がより振動成分が明瞭に現れるが、積層する膜
の厚みが異なっていてもほぼ同一の包絡線データを与え
ることができ、上部に形成する第2の薄膜の膜厚につい
ては、特に高い精度を必要とするわけではないが、第2
の薄膜の表面は平坦であることが望ましい。
【0195】また、図9と図10及び図11とを比較し
て分かるように、比較例(図9)では、この測定対象で
ある第1の薄膜の密度ρは2.28〜2.32g/cm
3 であり、この密度幅である0.04g/cm3 に対応
するのは、縦軸の目盛りにして0.1程度であるが、本
実施例(図10及び図11)では、変調を受けた振動の
振幅が最も大きい所では、その縦軸の目盛りで0.2程
度となっており、比較例よりも振れ幅(振幅)が約2倍
になっていることがわかる。
【0196】これは、本実施例の強度振動成分の包絡線
は、図9の強度振動成分と対応して振動の振幅、周期が
ほぼ同じであるが、上側包絡線と下側包絡線とは逆相に
なっているためである。従って、この振幅に対応する物
性(密度)に対する感度は比較例よりも高いということ
がわかる。
【0197】また、視斜角に対して、振動の振幅の増加
及び減少をたどれば、図9の比較例で浅い振動の頂点と
谷とを探すよりも正確に頂点を求めることができる。従
って、振動の周期に対応する物性(膜厚)に対する感度
も比較例より高いということがわかる。
【0198】このように、本実施例のX線反射率測定方
法によれば、この操作を行わない場合と比べて、膜厚、
密度のいずれの物性値についても、より精密にかつ高精
度に測定することができる。
【0199】また、上述のようにして求められた測定デ
ータ(反射率データ)から、パラメータフィッティング
により各物性値を求めようとする場合、本実施例のよう
な積層体を用いると、上述したように、フィッティング
(当てはめ)を行うべきパラメータ数が増えてフィッテ
ィングの収束が困難になってしまう。
【0200】これに対して、本実施例のように、得られ
た測定データの包絡線から上述した手順で、まず、測定
対象の第1の薄膜の膜厚や密度などの予想値を求め、次
にこれを初期値として、他のパラメータを含めた全デー
タのパラメータフィッティングを行うことにより、いき
なり全パラメータについてフィッティングを行うよりも
収束速度を大きくすることができる。また、このような
手順を用いると、真の最尤値から離れたパラメータ値に
収束してしまう可能性を大きく減らすことができる。
【0201】
【発明の作用効果】本発明の反射率測定における前処理
方法によれば、被測定対象である第1の膜に所定の角度
範囲でX線を入射して反射X線の強度を測定するに際
し、前記第1の膜上に第2の膜を形成した状態で前記X
線の入射を行い、これによって前記反射電磁波の強度を
変調させ、その強度振動成分から被測定対象の物性を反
映するデータを強調して取り出しているので、前記第1
の膜が例えば1〜4nmと非常に薄くても、このような
薄膜の物性の評価を高精度に実行することができる。
【0202】また、本発明の反射率データの解析方法に
よれば、前記反射X線の前記強度変調による強度振動成
分から包絡線に相当する成分を抽出しているので、パラ
メータフィッティングにより前記試料に関するパラメー
タを求め、このパラメータ値を初期値として、初期の前
記強度振動成分のパラメータフィッティングを行え(即
ち、前記パラメータフィッティングにより求められた前
記第1の薄膜に関するパラメータ以外のパラメータにつ
いてパラメータフィッティングを行え)、前記強度振動
成分から得られるパラメータ値が真の最尤値から離れた
値に収束してしまう可能性を低くし、更に、パラメータ
フィッティングの収束を速くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の反射率測定方法に基づく測定対象の薄
膜を含む積層体例(A)、測定対象の薄膜と基体のみの
積層体例(B)、本発明の反射率測定方法に基づく測定
対象の薄膜を含む他の積層体例(C)である。
【図2】本発明の反射率測定方法に基づく測定対象の薄
膜を含む積層体のモデル図である。
【図3】本発明の解析方法、本発明の測定・解析装置及
び本発明の記録媒体に基づく解析プログラムの動作フロ
ーチャートを説明するためのモデル図である。
【図4】同、解析プログラムの動作フローチャートを示
すフロー図である。
【図5】同、解析プログラムの動作フローチャートを示
す他のフロー図である。
【図6】本発明に基づく測定系のブロック図である。
【図7】同、測定装置の要部概略図である。
【図8】同、解析系のブロック図である。
【図9】測定対象の薄膜と基体のみの積層体から得られ
る強度振動成分を表すグラフである。
【図10】本発明に基づく方法で得られる強度振動成分
を表すグラフである。
【図11】同、他の強度振動成分を表すグラフである。
【図12】同、強度振動成分と測定対象の薄膜と基体の
みの積層体から得られる強度振動成分とを表すグラフで
ある。
【符号の説明】
1、2、3、4、5、6、7、8、9、1’、2’、
3’、4’、5’、1a、2a、3a、4a、5a…X
線 10…真空状態部、11、11’…第2の薄膜、12、
12’…第1の薄膜、13…基体、25、28…面、2
6、26’27、27’…界面、31…X線源、32…
単色器、33、51…試料、34…検出器、35…駆動
装置、36…制御装置、37、37’…表示装置、3
8、38’…印刷装置、39、41…記録媒体、40、
40’…入力装置、45…シンクロトロンX線源、46
…2結晶モノクロメータ、47…4象限スリット、48
…Pb遮蔽板、49…イオンチェンバ、50…ゴニオメ
ータ、52…2象限スリット、53…検出器、55、5
6、57、58…積層体、60…第j層、61…第j+
1層、62…第j+2層
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成9年12月12日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0073
【補正方法】変更
【補正内容】
【0073】ここで、フレネル係数Fは、(式1)及び
(式2)で与えられるように、虚数成分を持つ複素数で
あるが、X線視斜角が全反射臨界角よりも十分大きい範
囲では、
【数1】で、θ−2δ>2βであるから、実数と
みなせ、
【数1】の(式2) より
【数7】 となる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0098
【補正方法】変更
【補正内容】
【0098】(1)膜厚に関するパラメータ 第2の薄膜 d(未知、但し、おおよその値、若しく
は取りうる値の範囲は既知とする) 第1の薄膜 d(未知) (基体の膜厚は、裏面からの反射がないものと見なすこ
とにより無視できる。) (2)屈折率に関するパラメータ (但し、複素屈折率n=1−δ+iβと記述したときの
δを用いる。 βは1−δに比べはるかに小さいので無視できる。) 層0 (δ=0であり既知、層0は真空部に相
当するため) 第2の薄膜 δ(未知、但し、おおよその値、若しく
は取りうる値の範囲は既知とする) 第1の薄膜 δ(未知) 基体 δ (既知、固定) (3)ラフネスに関するパラメータ 層0−第2の薄膜間のラフネス、即ち試料の表面ラフネ
スσ0,1(未知) 第2の薄膜−第1の薄膜間のラフネスσ1,2(未知) 第1の薄膜−基体間のラフネスσ2,3 (未知)
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0108
【補正方法】変更
【補正内容】
【0108】また、包絡線の振幅は (4δ/δ )|δ−δ| であり、δが要素に入っているが、δ、δ、δ
の値が近接しており、δ/δがほぼ1として近似で
きることを考え、またδが既知であることから、包絡
線の振幅を与えるのはδ であり、δにはほとんど影
響されないと言える。従って、このように包絡線をとっ
た場合には「第2の膜」の物性パラメータがほとんど影
響を与えないことがわかる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0121
【補正方法】変更
【補正内容】
【0121】ここで、上述の本発明の測定・解析装置に
用いる記録媒体、及び本発明の記録媒体は、上述した解
析プログラムを記録している記録媒体である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0122
【補正方法】変更
【補正内容】
【0122】また、この記録媒体は、例えばフロッピー
ディスク(フレキシブルディスク)や光磁気ディスクな
どの外部記録媒体であるが、これらのプログラムを演算
装置そのものに組み込んで(例えば、コンピュータのハ
ードディスク内に予め上記のプログラムを組み込ん
で)、反射率解析専用の演算装置を構成してもよい。即
ち、反射率測定データの解析プログラムについては、測
定データを記録媒体に記録して別途解析する方法が一般
的であるが、測定装置と一体化することも可能である。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 試料の表面に特定の波長のX線を入射
    し、所定の角度範囲で視斜角を変え、前記試料からの反
    射X線の強度を検出して前記試料の物性を評価するX線
    反射率法を用いるに際し、表面に膜構造を有する試料
    (この膜構造を以下、「第1の膜」と称する。)を評価
    対象とするときに、反射X線強度を変調させ、試料物性
    を反映するデータを強調して取り出すために、前記試料
    の表面上に別の膜(以下、「第2の膜」と称する。)を
    形成することを特徴とする、X線反射率測定における試
    料の前処理方法。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記第1の膜の予想
    される膜厚よりも前記第2の膜を厚くする、請求項1に
    記載した試料の前処理方法。
  3. 【請求項3】 請求項2において、前記第1の膜の予想
    される屈折率と、前記第2の膜の屈折率との差の絶対値
    が、前記第1の膜の予想される屈折率と、この第1の膜
    が形成されている基板の屈折率との差の絶対値よりも大
    きくなるような条件の前記第2の膜を選択する、請求項
    2に記載した試料の前処理方法。
  4. 【請求項4】 請求項3において、前記第2の膜の屈折
    率と前記第1の膜の予想される屈折率との差と;前記基
    板の屈折率と前記第1の膜の予想される屈折率との差
    と;の比が、反射X線の測定時の、強度検出器のカウン
    トレートによって定まる基準値よりも小さくなるような
    条件の前記第2の膜を選択する、請求項3に記載した試
    料の前処理方法。
  5. 【請求項5】 請求項1において、前記第1の膜が形成
    されている基板の材質と同じ材質からなる膜を前記第2
    の膜として選択する、請求項1に記載した試料の前処理
    方法。
  6. 【請求項6】 請求項2において、シリコン基板上に前
    記第1の膜としてシリコン酸化膜が形成されているとき
    に、前記第2の膜としてポリシリコン膜を選ぶ、請求項
    2に記載した試料の前処理方法。
  7. 【請求項7】 請求項1に記載した前処理方法を行った
    試料をX線反射率法により測定し、得られたデータを解
    析する場合に、測定データより抽出したX線反射率の強
    度振動成分から、包絡線に相当する成分を抽出する手順
    を含むことを特徴とする測定データの解析方法。
  8. 【請求項8】 請求項7に記載した解析方法を用いた解
    析プログラムを記憶した記憶装置を有することを特徴と
    する測定データの解析装置。
  9. 【請求項9】 請求項7に記載した解析方法を用いた解
    析プログラムが記録されていることを特徴とするコンピ
    ュータ読み取り可能な記録媒体。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010131665A1 (ja) * 2009-05-15 2010-11-18 Fujii Yoshikazu X線反射率法を用いた積層体の層構造解析方法及び装置
JP2017003464A (ja) * 2015-06-11 2017-01-05 国立大学法人神戸大学 X線反射率法による表面粗さ・界面粗さの2次元情報評価方法及び評価プログラム

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