JPH1164333A - 腎症の早期診断用キット - Google Patents

腎症の早期診断用キット

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JPH1164333A
JPH1164333A JP24041997A JP24041997A JPH1164333A JP H1164333 A JPH1164333 A JP H1164333A JP 24041997 A JP24041997 A JP 24041997A JP 24041997 A JP24041997 A JP 24041997A JP H1164333 A JPH1164333 A JP H1164333A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 より確実に腎症の早期診断が可能なキットを
提供する。 【解決手段】 免疫学的測定法を用いて、尿中のシスタ
チンC(Cys-C) を測定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は腎症の診断キット
に関し、特に尿中におけるシスタチンCを測定すること
によって、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、IgA 腎症などの
腎症が診断できる腎症の早期診断用キットに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、腎症は持続性蛋白尿(試験紙法で
陽性あるいは500mg/日以上の蛋白尿が持続)が出現
した時点で診断されていた。しかし、この時期には既に
非可逆性の糸球体病変が進行していることも知られてい
た。近年、尿中に微量に排泄される種々の蛋白の測定が
可能となり、特に尿中アルブミンやトランスフェリン排
泄量の増加すなわち、微量アルブミンや微量トランスフ
ェリン尿が持続性蛋白尿に先行することが明らかとなっ
た。そこで現時点では、微量アルブミンやトランスフェ
リン尿の出現をもって腎症を診断することが一般化して
いるが、さらに最近の状況は、糖尿病性腎症およびそれ
以外の腎症の病期分類としては、第1期(腎症前期)、
第2期(早期腎症期)、第3期(顕性腎症期)、第4期
(腎不全期)、第5期(透析療法期)が一般的となり、
微量アルブミンやトランスフェリン尿を呈する時期を早
期腎症期とよんでおり、病理学的には、この時期には既
に軽度から中等度のびらん性病変が存在し、結節性病変
の存在も知られている。したがって、必ずしも初期腎症
とは限らず、あくまで現在の臨床検査で診断可能な時期
と解されている。したがって、微量アルブミンやトラン
スフェリン尿より早期(第1期のステージ)に生ずる異
常を検出し得る検査法の開発が期待されている。
【0003】そこで、本発明者は、糖尿病性腎症をはじ
め他の糸球体腎炎において、糸球体に白血球(特に好中
球や単球/マクロファージ)が浸潤することが蛋白尿発
現の出発点になることを発見し、糸球体に好中球が浸潤
したことを察知する方法として、尿中のラクトフェリン
とミエロペルオキシダーゼを測定することを既に出願し
ている(特願平7−251939)。更なる研究の結
果、本発明者は、糸球体への好中球の浸潤を検知するこ
とが糸球体腎炎の早期診断に有用であることも見出し
て、既に出願している(特願平8−110375)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】尿中のラクトフェリン
とミエロペルオキシダーゼを同時に測定し、その差(Lf-
MPO)を糸球体由来ラクトフェリンとして求め、これを腎
症の早期診断指標とする方法(図1)の問題点として、
2成分を同時に測定する必要があることに加え、特に尿
中のラクトフェリン値が、腎症以外の要因によって影響
を受けることが明らかとなった。即ち、男子では精漿中
にラクトフェリンが高濃度存在することから、生殖年齢
層(小学5年生以上)では、尿中に精液が混入した場合
に偽陽性を呈することが明らかとなった(図2)。この
発明は、これらの問題点に着目してなされたものであっ
て、即ち、糸球体に炎症細胞(好中球、単球/マクロフ
ァージ)が浸潤したことの察知および、腎症の早期診断
に有用な方法としての尿中のラクトフェリンとミエロペ
ルオキシダーゼを測定することと同様な意味を持つ関連
事象を見出すことにより、新しい測定対象を探索すべく
詳細に検討し、より確実に腎症の早期診断が可能なキッ
トを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、後述する研
究の成果として、腎糸球体への炎症細胞の浸潤と直接関
連して尿中に排泄される物質ではなく、間接的に関連し
て尿中へ排泄される物質、典型的にはシスタチンCを測
定することにより、腎症を早期に診断できることを見出
した。即ち、糸球体への炎症細胞の浸潤の有無を尿中シ
スタチンC濃度の測定によって、糸球体由来ラクトフェ
リン法に比べ確実に分別できることを見出した。以上の
通り、本発明の診断キットでは、糸球体への炎症細胞の
浸潤の有無を尿中シスタチンC濃度を測定することによ
って判断するとともに腎症を早期に診断する。シスタチ
ンC濃度の測定方法は適宜であるが、酵素免疫法による
場合には、抗ヒトシスタチンC抗体と、酵素標識抗ヒト
シスタチンC抗体と、前記酵素測定用の試薬とを備えた
診断用キットを用いれば良い。同様に、ラテックス凝集
法を用いる場合には、抗ヒトシスタチンC抗体感作ラテ
ックス粒子を備える診断用キットを用いれば良い。免疫
比濁法を用いる場合には、抗ヒトシスタチンC抗体反応
試液を備える診断キットを用いれば良い。免疫クロマト
法を用いる場合には、抗ヒトシスタチンC抗体と、金コ
ロイド粒子感作抗ヒトシスタチンC抗体を備える診断キ
ットを用いれば良い。免疫発光法を用いる場合には、ル
ミノール誘導体などの発光物質を感作した抗ヒトシスタ
チンC抗体を備える診断キットを用いれば良い。
【0006】以下、本発明に至るまでの経緯を詳細に説
明する。本発明者は、糸球体に炎症細胞が浸潤(前記の
糸球体由来ラクトフェリン法での判定)した場合に、尿
中にクレアチニンの排泄増が生ずる現象を見出した。現
在のところ、糸球体に炎症細胞が浸潤することと糸球体
内血圧が上昇し、尿中にクレアチニンの排泄増が生じる
因果関係は証明されていない。尿中クレアチニン排泄量
は図3に示すごとく、年齢の影響が大きく(クレアチニ
ンは筋肉に由来するため)、幼児と成人では約3倍の差
がある。このため尿中クレアチニンを測定することによ
り、糸球体への炎症細胞の浸潤を知り、かつ、腎症の早
期診断への応用は不可能と判断された。そこで本発明者
は、血漿蛋白成分の中で、糸球体からの排泄が安易な低
分子量の蛋白に着目し、多数例の健常者(n=320)
について尿中へ排泄されたクレアチニン濃度と低分子蛋
白の相関性を見て、相関性の最も良いものが、最適な測
定対象と考え詳細に検討した。その結果図4のごとく、
尿中クレアチニンと最も良好な相関性を示す低分子蛋白
としてシスタチンC(有核細胞がコンスタントに産生す
るシステインプロテナーゼインヒビター,分子量130
00)を見出した。図4において、Cr:クレアチニ
ン、β2 M:β2-マイクログロブリン、AT:α1-アン
チトリプシン、Cys−C:シスタチンC、RBP:レ
チノール結合蛋白、AG:α1-アシドグリコプロテイ
ン、UTI:ウリナスタチンである。
【0007】次いで、シスタチンCの尿中への排泄特性
を知るために、幼児から高校生の健常な男女について調
べた結果、図5に示すごとく、クレアチニンとは異な
り、年齢・性による排泄量に大きな差が無いことが分か
った。さらに、糸球体への炎症細胞の浸潤の有無と尿中
へのシスタチンC排泄量の関係についても調べた。図6
〜図8に示すごとく、幼児から高校生までの健常者(n
=1056)を対象に、まず前記の尿中ラクトフェリン
濃度を用いて糸球体への非浸潤群を設定し(非浸潤群は
ラクトフェリン値で確実に分別可能)、この非浸潤群の
シスタチンC濃度の分布を求めたところ、対象総数(n
=1056)のシスタチンC濃度の分布(図7の白抜き
部分)と一致していた(図7の黒色部分)。Lf濃度で浸
潤か否かが判別困難であった350例(図6の白抜き部
分)の大半が非浸潤であることも分かった(図7)。し
たがって、尿中シスタチンC濃度を測定して、シスタチ
ンC濃度が所定範囲内(例えば、Lf濃度で非浸潤と判断
される集団が示す上限値図7のカットオフ値)の値であ
る場合には、糸球体への炎症細胞の浸潤を認めない、即
ち、腎症の可能性は非常に少なく、それ以上の値である
場合には、糸球体への炎症細胞の浸潤があり、即ち、腎
症の疑いがあると診断できることを見出した(図8の白
抜き部分)。なお所定範囲の設定は、Lf法で非浸潤群を
特定することなく健常者多数例のシスタチンC濃度を測
定し、ノンパラメトリック法など日常的な手法で求めれ
ば良い。
【0008】また、尿中ラクトフェリンまたはシスタチ
ンC濃度による糸球体への炎症細胞湿潤の有無の分別法
間の有効性を尿中クレアチニン排泄量(図9)および、
尿中へのアルブミン排泄量の比較(図10)で見たとこ
ろ、いずれもシスタチンC濃度による分別能が優れてい
ることが分かった。今回、本発明者が見出した、尿中シ
スタチンC濃度測定による早期腎症の診断と従来の微量
蛋白法のそれとの比較は表1に示すごとく、明らかに、
シスタチンC法が優れていることが分かった。以上のご
とく、尿中シスタチンCを測定することにより腎症の早
期診断ができる。
【0009】
【表1】
【0010】
【発明の実施の形態】
(A)ELISA によるシスタチンCの測定 (マイクロプレートへの抗体の固相化)マイクロプレー
ト(SUMILON) の各wellに抗ヒトシスタチンC抗体(DAKOP
ATTS)5μg/mlを含む0.1M Tris 緩衝液を100μl
ずつ分注し、一夜4℃放置して物理吸着させて表面に
固相化する。 (酵素標識抗体の調整)別途、過ヨウ素酸法により、ア
ルカリホスファターゼ(Beehringer-Mannheim)を抗ヒト
シスタチンC抗体に酵素標識して調整する。 (尿中シスタチンC測定)各wellに100μl の1%B
SA(Beehringer-Mannheim) を含むTris緩衝液(0.1
mol/l pH8.0)を分注し(1well当たり25μg の抗
ヒトシスタチンC抗体を含む)、次いで50μl の尿試
料を加え、混和した後、37℃で1時間反応させる。
【0011】次に、Tween 20を0.05%含む脱イオ
ン水で3回洗浄する。その後、アルカリホスファターゼ
標識抗ヒトシスタチンC抗体溶液(1%BSAを含むト
リス緩衝液)を各wellに100μl ずつ加え混和した
後、37℃で1時間反応させ、先と同様に3回洗浄す
る。さらに、Kind-King 法の基質緩衝液100μl を各
wellに加え、37℃で30分間反応させる。ここで基質
緩衝液は、Disodium Phenyl-phoshate(WAKO)0.
09gを、炭酸緩衝液(0.05mol/l pH10.15)
100mlに溶解したものである。次いで、100μl の
呈色液を各wellに加えて呈色させる。ここで呈色液は、
200mlの脱イオン水2.6gのホウ酸(WAKO)を
溶解させた後、0.38gのPotassium ferricyanide
(WAKO)を溶解させたものである。最後に、各well
の呈色をマイクロプレート用比色計(三光純薬)を用い
て510/630nmの波長で比色し、検量線から尿中の
シスタチンC濃度を算出する。
【0012】
【発明の効果】以上説明したように、この発明では尿中
シスタチンC濃度を測定することで、糸球体への炎症細
胞の浸潤の有無を察知し、腎症の早期診断が可能であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】尿中のラクトフェリン(Lf)およびミエロペルオ
キシダーゼ(MPO) を測定し、その差を糸球体由来ラクト
フェリン(G-Lf)として求め、そのカットオフ値(病態識
別値)以上を腎症の疑いと判断する従来方法を説明する
図面である。
【図2】尿中Lf濃度、MPO濃度の性・年齢別推移を
図示したものである。
【図3】尿中クレアチニン排泄量の性・年齢別推移を図
示したものである。
【図4】健常者における尿中クレアチニンおよび各種低
分子蛋白排泄量の関係を図示したものである。
【図5】尿中シスタチンC排泄量の性・年齢別推移を図
示したものである。
【図6】糸球体への炎症細胞の浸潤の有無と尿中シスタ
チンC濃度の関係、および、尿中シスタチンC濃度によ
る浸潤、非浸潤の分別能を説明する図面である。
【図7】糸球体への炎症細胞の浸潤の有無と尿中シスタ
チンC濃度の関係、および、尿中シスタチンC濃度によ
る浸潤、非浸潤の分別能を説明する図面である。
【図8】糸球体への炎症細胞の浸潤の有無と尿中シスタ
チンC濃度の関係、および、尿中シスタチンC濃度によ
る浸潤、非浸潤の分別能を説明する図面である。
【図9】LfまたはCys−C値による非浸潤、それ以
外群の分割と両群間の尿中CrおよびCys−C濃度の
比較を図示したものである。
【図10】LfまたはCys−C値による非浸潤、それ
以外群の分割と両群間の尿中アルブミン排泄量の比較を
図示したものである。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 腎糸球体への炎症細胞(好中球、単球/
    マクロファージなど)の浸潤と間接的に関連して尿中へ
    排泄される物質を測定し、腎症を早期に診断するように
    したことを特徴とする診断キット。
  2. 【請求項2】 尿中のシスタチンC(Cys-C) を測定する
    ことにより、腎症を早期に診断するようにしたことを特
    徴とする請求項1に記載の診断キット。
  3. 【請求項3】 酵素免疫法やラテックス凝集法、免疫比
    濁法、免疫クロマト法、免疫発光法などの免疫学的測定
    法を用いることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1
    項に記載の診断キット。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003031967A1 (fr) * 2001-10-02 2003-04-17 Ikagaku Co., Ltd. Kits de diagnostic de maladies renales
US9046517B2 (en) 2008-08-22 2015-06-02 Denka Seiken Co., Ltd. Cystatin C adsorption inhibitor

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