JPH1163845A - 溶湯注入式ルツボ炉におけるルツボ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 （１）ルツボ内の溶湯表面からの熱損失を低
減すること、及び（２）溶湯の注入に伴うルツボ内溶湯
の撹乱による汲出し溶湯への夾雑物の混入を回避するこ
を課題とする。 【解決手段】 溶湯注入式ルツボ炉におけるルツボにお
いて、ルツボ７内に設置された底がルツボ内に開く開口
になっている内部溶湯を上端の開口から汲出される筒体
１１と、筒体１１とルツボ７の間の上面開口を遮蔽する
遮蔽板１０とを具有し、筒体１１は、ラドルによる溶湯
の汲出しに対応する深さに亘ってルツボ内の溶湯中を上
下に延在する長さを有する。また、筒体１１の底の開口
に溶湯フィルター１５を設けるとともに、溶湯を注入す
るためのノズル１４を設ける。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、溶湯注入式ルツボ
炉におけるルツボ、より具体的には、ダイカスト法に使
用される溶湯注入式ルツボ炉（当業者において「手許
炉」と称される。）におけるルツボに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種のルツボ炉は、炉内に設置
したルツボに他の溶解炉からのアルミニウム溶湯（以
下、単に「溶湯」という。）を注入し、これをルツボ外
周からバーナーなどで加熱して所定温度に維持し、炉外
へ汲出すダイカストの手許炉として古くから使用されて
いる。

【０００３】この種のルツボ炉は、長年に亘る使用の歴
史の中で、ルツボ炉の性能を判断する重要な事項として
生産性や溶湯品質と共に熱効率の向上が追求されてき
た。

【０００４】ルツボ炉の熱損失には、主として、炉壁熱
損失、排ガス熱損失、溶湯の対流及び放射による溶湯表
面からの熱損失がある。このうち炉壁熱損失については
ライニング材を耐火材からセラミックファイバーに変更
することにより、排ガス熱損失については使用するバー
ナーを熱交換式バーナーや蓄熱燃焼システムバーナーを
採用することにより、改善されている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ルツボ
炉は、溶湯の汲出しを不可欠とし、従来溶湯の汲出し
は、ルツボ上面の汲出し口から行われ、その汲出し口
は、ラドルによる溶湯の汲み出しと溶湯注入が頻繁に行
われるため、それらの作業の都合上、開放状態とされて
いる。即ち、ルツボ内の溶湯表面からの熱損失の低減に
ついては何ら解決されていない実状にある。ルツボ内の
溶湯表面が大気中に解放された状態では、湯面から放散
される熱は全放出熱の約１８％に達するとの報告もあっ
た。

【０００６】また、溶湯注入式ルツボ炉では、溶融材料
をルツボ内に注入するとルツボ内の溶湯が撹乱して、ル
ツボ底部に沈殿している夾雑物を溶湯内に巻き込む。こ
の溶湯の撹乱は、インゴット（冷材）の装入による撹乱
よりも激しい。このような夾雑物の混入した溶湯を汲出
して鋳込むと、ハードスポットを生じる。これは、ダイ
カストの切削に際して工作機械の刃を欠損させる原因と
なり、製品品質を低下させるという問題もあった。

【０００７】他方、ルツボ炉は、設置スペースが少なく
て済む、保守が簡単且つ設備費が安くて済む、生産性が
良いなど多くの優れた特性を持っている。

【０００８】従って、本発明の課題は、ルツボ炉が備え
る前示特性を維持しつつ、（１）ルツボ内の溶湯表面か
らの熱損失を低減し、熱経済性を更に向上することので
きる溶湯注入式ルツボ炉におけるルツボを提供すること
にある。

【０００９】また、本発明の他の課題は、（２）溶湯の
注入に伴うルツボ内溶湯の撹乱による汲出し溶湯への夾
雑物の混入を回避することのできる溶湯注入式ルツボ炉
におけるルツボを提供することにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記課題（１）を達成す
るため、本発明では、溶湯注入式ルツボ炉におけるルツ
ボにおいて、ルツボ内に設置された底がルツボ内に開く
開口になっている内部溶湯を上端の開口から汲出される
筒体と、該筒体とルツボの間の上面開口を遮蔽する遮蔽
板とを具有しており、前記筒体は、ラドルによる溶湯の
汲出しに対応する深さに亘ってルツボ内の溶湯中を上下
に延在する長さを有する（この構成を（Ａ）と呼ぶ）。

【００１１】ルツボ内の湯面からの放熱は対流によるも
のと放射によるものとからなり、簡単には次式により与
えられる。 Ｑ＝（ｈｃ＋ｈｒ）・Ａ・（ｔｓ−ｔａ） 上式において、Ｑ ・・・湯面よりの放散熱量 ｈｃ・・・対流による伝熱係数 ｈｒ・・・放射による伝熱係数 Ａ ・・・湯面面積 ｔｓ・・・湯面温度 ｔａ・・・大気温度 上式から明らかな如く湯面からの放散熱量は湯面面積に
比例し、湯面の露出面積が小さい程、放散熱量が少な
い。従って、上記構成（Ａ）を採用すれば溶湯の大気へ
の露出面積を縮小でき、上式中の湯面面積Ａが減少し湯
面からの放散熱量Ｑも減少する。

【００１２】上記のように湯面の露出面積を縮小した場
合、筒体の溶湯汲出し口から単位時間当たりに放射され
る熱量ｑｒ（Ｋｃａｌ／ｈ）は、開口面積をａ、湯面温
度をｔｓ、大気温度をｔａとすると次式により求められ
る。

【００１３】

【数１】

【００１４】上式においてｋは開口部放熱係数と呼ばれ
るもので、汲出し口の平面形状によって変わり、ほぼ
０．３〜０．８の範囲内にある。従って、湯面からの放
散熱量を最小限に低減するように、筒体の形状と寸法を
設定することができる。

【００１５】上記課題（２）を達成するため、本発明で
は、前記筒体の底の開口に溶湯フィルターを設け、前記
遮蔽板に、該板を貫通し下端がルツボ内溶湯に達する溶
湯注入ノズルを備えている（この構成を（Ｂ）と呼
ぶ）。

【００１６】この構成（Ｂ）によると、溶湯注入で夾雑
物が巻き上がったルツボ内の溶湯が溶湯フィルターによ
り濾過されて筒体に入り、品質を向上し得る。

【００１７】

【発明の実施の形態】本発明に係る溶湯注入式ルツボ炉
におけるルツボの実施形態につき、以下に図面を参照し
つつ説明する。

【００１８】図１は本発明の第１実施形態を示す縦断面
図である。

【００１９】ルツボ炉１は、鉄製ケース２を耐火材でラ
イニングした炉３、炉３の蓋４、炉３内の台６上に設置
されたルツボ７及び燃焼室５に火炎を噴射するバーナー
１６を備えている。

【００２０】ルツボ７内には底がルツボ内に開く開口に
なっている筒体１１が設置され、筒体１１は内部の溶湯
を上端の開口による汲出し口９から汲出すようになって
いる。筒体１１とルツボ７間の上面開口は遮蔽板１０に
より遮蔽されている。筒体１１は、ラドルによる内部溶
湯の汲出しに対応する深さに亘ってルツボ７内の溶湯中
を上下に延在する長さを有する。遮蔽板１０は、筒体１
１上面にフランジを形成し、これを充てることができ
る。遮蔽板１０と筒体１１は、強度の点からは図に示す
如く一体構造であることが望ましいが、別体でもよい。
別体の場合、遮蔽板１０及び筒体１１は筒体１１上端の
遮蔽板１０でルツボ７に懸吊してもよく、或いはボル
ト、ナット等の部材で相互に結合してもよい。

【００２１】ルツボ７は、市販のルツボを充てることが
でき、筒体１１はルツボと同材質か相当品若しくはコー
ジェライト質など熱伝導の低い材質で作られる。

【００２２】筒体１１内の溶湯はダイカストのためラド
ルにより汲出される。汲出し口９の寸法は、ラドルの操
作に適した大きさとされる。

【００２３】この汲出し口９の寸法は、口９が方形の場
合で凡そ縦横３００ｍｍ〜４５０ｍｍである。更に筒の
断面形状は一般的には正方形又は長方形が望ましいが、
楕円等の他の形状でもよい。

【００２４】筒体１１は、一般的には、ラドルによる溶
湯の汲出しに適した深さ、即ち標準湯面１３から３００
〜４００ｍｍを必要とするが、実作業上での安全性の面
を考慮すれば数回の汲出しによる湯面の低下に対応する
深さ、例えば、標準湯面１３から３５０〜４５０ｍｍが
可である。

【００２５】筒体１１の汲出し口９より注入された溶湯
は、所定の湯面高さ１３に達した後バーナー１６により
ルツボ７の外周から加熱されて所定温度に保持され、ダ
イカストのため汲出し口９からラドルにより炉外へ汲出
される。

【００２６】本発明では、ルツボ内の溶湯中に所定深さ
に亘って浸漬する筒体をルツボ内に設置し、該筒体とル
ツボの間の上面開口を遮蔽板により遮蔽している。

【００２７】これによると、筒体の上端が溶湯汲出し口
になっているにも拘わらず、ルツボ炉における溶湯表面
からの放散熱量は、従来の約１／３に減少することが認
められた。こうして、湯面からの熱放散を減少させ、例
えば燃料消費量で換算して約２０パーセントの省エネル
ギーを達成することができる。

【００２８】また、筒体がルツボ内の溶湯中に浸漬して
いることは、筒体とルツボの間の上面開口が遮蔽板で遮
蔽されていることと共に、ルツボの溶湯上面の空間部が
密閉状態となり、外気の浸入が防止される。このため、
ルツボ内の溶湯は、湯面の約２／３が酸素の希薄な雰囲
気下に置かれ、酸化を低減でき、ルツボへの酸化物の付
着が減少し、ルツボの寿命が延びる。

【００２９】更に、一般に市販されているルツボにルツ
ボ蓋を設置するという簡単な方法で目的を達することが
でき、設備投資として必要な費用は極めて僅かであり、
ルツボ本来の特性を最大限に発揮することができる。

【００３０】次に本発明の第２実施形態について図２及
び図３を参照しつつ以下に説明する。図２は縦断面図、
図３は平面図である。尚、上記第１実施形態と同様の構
成部分については、同符号を付してその説明を省略す
る。

【００３１】遮蔽板１０には、溶湯注入ノズル１４が取
り付けられている。ノズル１４は、遮蔽板１０を密に貫
通して、ルツボ７内の溶湯湯面に達している。ノズル１
４は、ルツボ７内の溶湯深くまで浸漬されることが好ま
しい。深く浸漬されると、ノズル１４が貫通する部分の
ルツボ７内の溶湯も、その湯面の空間部が密閉状態とな
り、酸素の希薄な雰囲気下に置かれることが保証され、
酸化を低減される。ノズル１４の上部は溶湯を受ける樋
状の形状となっている。ノズル１４の材質はルツボと同
材質か相当品若しくはコージェライト質で製作される。

【００３２】他の溶解炉からの溶湯はノズル１４からル
ツボ７に注入される。筒体１１底の開口に、溶湯フィル
ター１５が設けられている。このフィルター１５は、ル
ツボ７への溶湯注入に伴うルツボ７内の溶湯の撹乱によ
り巻き上げられた夾雑物が筒体１１に入るのを防止する
働きをする。このようにして汲出し溶湯への夾雑物の混
入を防止できるので、ダイカストの歩留まりが向上す
る。

【００３３】フィルター１５には、セラミックフォーム
フィルター（株式会社ブリジストン製の商品名）と呼ば
れているものを充てることができる。これは、直径１イ
ンチ内に微細な連続気泡が６〜１３個あり、厚さ約５０
ｍｍの高アルミナ質、炭化珪素又はコージェライト質の
骨格からなる。

【００３４】

【発明の効果】以上の説明から明らかなように、請求項
１に係る発明（上記構成（Ａ））によれば、湯面からの
熱放散を減少させることができ、また、請求項２に係る
発明（上記構成（Ｂ））によれば、汲出し溶湯中への夾
雑物の混入を防止することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施形態を示す縦断面図である。

【図２】本発明の第２実施形態を示す縦断面図である。

【図３】図２に示すルツボの平面図である。

【符号の説明】

１ 溶湯注入式ルツボ炉 ２ 鉄皮ケース ３ 炉 ４ 蓋 ５ 燃焼室 ６ 台 ７ ルツボ ９ 汲出し口 １０ 遮蔽板 １１ 筒体 １２ 溶湯 １３ 湯面高さ １４ 溶湯注入ノズル １５ 溶湯フィルター １６ バーナー

フロントページの続き (72)発明者 村上 博司 大阪府東大阪市稲田新町３丁目11番32号 日本坩堝株式会社内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 溶湯注入式ルツボ炉のルツボにおいて、
   ルツボ内に設置され底がルツボ内に開く開口になってい
   る内部溶湯を上端の開口から汲出される筒体と、該筒体
   とルツボの間の上面開口を遮蔽する遮蔽板とを具有し、
   前記筒体はラドルによる溶湯の汲出しに対応する深さに
   亘ってルツボ内の溶湯中を上下に延在する長さを有する
   ことを特徴とする溶湯注入式ルツボ炉におけるルツボ。
2. 【請求項２】 前記筒体の底の開口に溶湯フィルターを
   設け、前記遮蔽板に、該板を貫通し下端がルツボ内溶湯
   に達する溶湯注入ノズルを備えたことを特徴とする請求
   項１に記載の溶湯注入式ルツボ炉におけるルツボ。