JPH116040A - 耐摩耗性鉄基焼結合金 - Google Patents

耐摩耗性鉄基焼結合金

Info

Publication number
JPH116040A
JPH116040A JP15538797A JP15538797A JPH116040A JP H116040 A JPH116040 A JP H116040A JP 15538797 A JP15538797 A JP 15538797A JP 15538797 A JP15538797 A JP 15538797A JP H116040 A JPH116040 A JP H116040A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hard particles
sintered alloy
alloy
wear
iron
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP15538797A
Other languages
English (en)
Inventor
Yoshihiko Ito
与志彦 伊藤
Hiroyuki Murase
博之 村瀬
Naomichi Akimoto
直道 秋元
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP15538797A priority Critical patent/JPH116040A/ja
Publication of JPH116040A publication Critical patent/JPH116040A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Powder Metallurgy (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】相手攻撃性を抑えつつ自身の耐摩耗性の向上を
図り得る耐摩耗性鉄基焼結合金を提供すること。 【解決手段】Co:2〜15%、Mo:2〜10%、残
部が実質的に鉄からなるFe−Co−Mo系合金粉末
に、重量比率でCr:1.5〜3.5%、Mo:0.2
〜0.5%、V:0.15〜0.45%、Mn:0.3
%以下、残部が実質的に鉄の圧縮成形性に劣るFe−C
r系合金粉末を、基地材料全体における重量比率で10
〜30%混合した基地材料を焼結して形成した基地を備
えている。Ni基硬質粒子、FeMo等の金属間化合物
の硬質粒子を添加できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は耐摩耗性鉄基焼結合
金に関する。本発明は、耐摩耗性が要請される鉄基組成
をもつ材料、例えば内燃機関に使用するバルブシート材
などに適用できる。
【0002】
【従来の技術】耐摩耗性鉄基焼結合金の従来技術につい
て、車両の内燃機関のバルブシート材に用いられる焼結
合金を例にとって説明する。特開平7−138714号
公報には、Co:2〜15%、Mo:2〜10%、残部
が実質的にFeからなるFe−Co−Mo系粉末と、M
o:5〜20%、Cr:20〜40%、W:10〜20
%、Fe:10〜30%、残部が実質的にNiのNi基
硬質合金粉末とを用い、双方の粉末を混合した混合粉末
を圧縮成形した圧粉体を焼結して形成した焼結合金が開
示されている。なお本明細書では特に体積比率と断らな
いかぎり、重量比率を意味する。
【0003】特開昭60−224762号公報には、F
e−C系粉末から形成したパ−ライト組織を主体とする
基地に、Cr、Mo、V等の炭化物を析出したHv30
0〜700の硬質粒子を分散させた焼結合金が開示され
ている。特開平3−13546号公報には、オ−ステナ
イト相とパ−ライト相との混合組織からなるFe−C−
Co系基地に、Cr、Mo、V等の炭化物を析出した粒
径40〜150μmであり且つHv300〜850の硬
質粒子を分散させた焼結合金が開示されている。
【0004】特開平6−33201号公報には、Co、
Ni、Mn、Vの少なくとも1種を3〜30%、Cを
0.3〜1.5%含む鉄系基地に、FeMoやFeWか
らなる金属間化合物の硬質粒子が分散し、更にCa
2 、MoS2 、MnSからなる潤滑剤が分散した焼結
合金が開示されている。特開平8−291376号公報
には、Co:1〜2%、Mo:1〜2%、C:0.2〜
2%を含むFe系粉末から形成した基地を備えたバルブ
シート材となる焼結合金が開示されている。
【0005】特開昭62−202058号公報には、F
e−Co−Ni系の基地にフェロモリブデン等の硬質粒
子を分散させ、更にPb合金等を含浸させて耐摩耗性を
改善した焼結合金が開示されている。上記した公報技術
に係る焼結合金では、硬質粒子にCrが含まれているこ
とがあるものの、焼結合金の基地を構成する鉄系合金粉
末には、Crが積極的には含有されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】最近、焼結合金におい
ては、従来にも増して耐摩耗性の向上、長寿命化が要請
されている。特に内燃機関のバルブシート等に使用され
る焼結合金においては、内燃機関の高出力化、更には排
気ガスの浄化対策あるいは燃費向上等の要請に鑑み、耐
摩耗性の向上の他に、様々な改善要求が高まっている。
同時に低価格化の要求も強く、性能を向上しつつも高価
格とならない材料開発が一層望まれている。このため焼
結合金においても、従来にも増して厳しい使用環境に耐
え得る特性が要請されつつある。一方では、性能に大き
な変更のないままに低価格化のみを要求される場合も多
く、各使用環境に適した低価格な焼結合金の開発が必要
となっている。
【0007】また、有鉛燃料を使用する内燃機関、高排
気温となる内燃機関等においては、バルブフェース等の
相手材の低摩耗化を図るため、高価な盛金を相手材に形
成している場合が多い。従って低価格化を考慮すれば、
盛金の廃止が有効であるが、廃止するためには、バルブ
シート等に使用される焼結合金による相手攻撃性の一層
の低減が要請される。
【0008】本発明は上記した実情に鑑みなされたもの
であり、相手攻撃性の低減を図りつつ自身の耐摩耗性の
向上を図るのに有利な耐摩耗性鉄基焼結合金を提供する
ことを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】 上記した課題に鑑み、本発明者は、自身の耐摩耗性を
向上させると共に相手攻撃性を小さくし得る焼結合金を
開発するにあたり、まず従来タイプの焼結合金におい
て、過大摩耗したサンプルの表面摩耗面および表面下断
面組織を詳しく観察調査した。その結果、焼結合金の基
地表面の酸化皮膜の形成が不十分であると、凝着、相手
材への移着、あるいは脱落を繰り返し、これにより焼結
合金の摩耗が進行し、特に相手材が何ら特別の表面処理
を施していない耐熱鋼である場合には、焼結合金や相手
材の摩耗の進行が顕著であった。
【0010】そこで本発明者は、重量比率でCo:2〜
15%、Mo:2〜10%、残部が不可避不純物と鉄か
ら成るFe−Co−Mo系合金粉末と、重量比率でC
r:1.5〜3.5%、Mo:0.2〜0.5%、V:
0.15〜0.45%、Mn:0.3%以下、残部が不
可避不純物と鉄から成るFe−Cr系合金粉末とを、基
地材料として用いれば、耐摩耗性の向上を図り得る基地
を備えた焼結合金を製造するのに有利であることを知見
した(本出願時に未公知)。
【0011】耐摩耗性の向上に有利である理由は、基地
の表面にCr酸化膜が生成し易くなり、相手材との直接
接触をCr酸化膜が抑制するため、基地の凝着等を抑制
するのに有利であるためと推察される。しかしながら、
基地材料として添加するCrを含むFe−Cr系合金粉
末は、場合によっては、圧縮成形性が極めて悪い。その
ため、Fe−Cr系合金粉末を利用して形成した基地を
備えた焼結合金を形成する技術においては、上記したよ
うにCr酸化皮膜による利点を期待できるものの、高密
度の鉄基の基地を備えた焼結合金を得るには限界があ
る。
【0012】そこで本発明者は、Fe−Co−Mo系合
金粉末とFe−Cr系合金粉末とを基地材料として用い
つつも、Fe−Cr系合金粉末を基地材料全体における
重量比率で10〜30%に規定すれば、相手攻撃性を抑
制しつつ焼結合金自身の耐摩耗性を向上させ得るのに一
層有利であることを知見し、試験で確認し、本発明に係
る耐摩耗性鉄基焼結合金を完成した。
【0013】耐摩耗性の向上に有利である理由は、圧縮
成形性に影響が少ないMo、Coを多量に含む上記組成
のFe−Co−Mo系合金粉末に、Fe、Moと合金化
した場合において圧縮性を低下させるCrを含む上記組
成のFe−Cr系合金粉末を、基地材料全体における重
量比率で上記したように10〜30%混合すれば、Fe
−Cr系合金粉末の粒子間の隙間に、Fe−Co−Mo
系合金粉末の粒子が効果的に入り込み、その隙間が効率
よく埋められ、Crを含む圧縮成形性が劣るFe−Cr
系合金粉末で焼結合金の基地を形成するにもかかわら
ず、基地の高密度化を図り得るためである。
【0014】即ち、請求項1に係る耐摩耗性鉄基焼結
合金は、重量比率でCo:2〜15%、Mo:2〜10
%、残部が不可避不純物と鉄から成る圧縮成形性に影響
が少ないFe−Co−Mo系合金粉末に、重量比率でC
r:1.5〜3.5%、Mo:0.2〜0.5%、V:
0.15〜0.45%、Mn:0.3%以下、残部が不
可避不純物と鉄から成る圧縮成形性を低下させるFe−
Cr系合金粉末を、基地材料全体における重量比率で1
0〜30%混合した基地材料を焼結して形成した鉄基の
基地を備えることを特徴とするものである。
【0015】請求項2に係る耐摩耗性鉄基焼結合金は、
請求項1において、Mo:5〜20%、Cr:20〜4
0%、W:10〜20%、C:0.5〜5%、Fe:5
〜30%、残部が不可避不純物とNiから成るNi基硬
質粒子を、焼結合金材料全体における重量比率で2〜3
0%含む焼結合金材料を焼結して形成したことを特徴と
するものである。
【0016】請求項3に係る耐摩耗性鉄基焼結合金は、
請求項2において、FeMo、FeW、FeCrなどの
高硬度の金属間化合物の硬質粒子を焼結合金材料全体に
おける重量比率で2〜4%含み、Ni基硬質粒子及び金
属間化合物の硬質粒子の関係が焼結合金材料全体におけ
る重量比率で下式 4%≦(〔金属間化合物の硬質粒子〕%+〔Ni基硬質
粒子〕%)≦28% を満たすことを特徴とするものである。
【0017】
【発明の実施の形態】各請求項に係る耐摩耗性鉄基焼結
合金では、更に再加熱を実行し、再加熱後に鍛造を実行
し、空孔密度を0%狙いとし、最終密度を7.7〜8.
0gf/cm 3 と一層の高密度化を図ることができる。
最終密度を例えば7.8あるいは7.9あるいは8.0
gf/cm3 にできる。
【0018】焼結合金に係る組成の限定理由について説
明を加える。基地材料は、焼結合金の鉄基の基地を構成
する材料であり、鉄基成分である。本発明でいう基地材
料は、後述するNi基硬質粒子、金属間化合物の硬質粒
子、黒鉛粉末を含まない。基地材料は、一般に、Fe−
Co−Mo系合金粉末とFe−Cr系合金粉末とから形
成される。
【0019】(Fe−Co−Mo系合金粉末)Fe−C
o−Mo系合金粉末は、重量比率でCo:2〜15%、
Mo:2〜10%、残部が不可避不純物と鉄から成る組
成をもち、圧粉体等の粉末成形体を成形する際における
圧縮成形性が良好である。〔CoとMo〕CoとMoの
いずれも焼結合金の基地中に固溶して、これを強化す
る。更にCoは基地の耐熱性と耐摩耗性を向上させる
が、これらの効果は合金中の含有量が2%未満では不十
分で、一方15%を越えて含有させると効果の向上は認
められるものの経済性に欠ける。
【0020】またMoは高温域における強度改善効果と
ともに、炭素を含む焼結合金においては一部が炭化物を
生成し、耐摩耗性の一層の改善に効果を示すが、これら
の効果は含有量が2%未満では不十分で、一方10%を
越えて含有させると効果の向上は認められるものの、合
金粉末の圧縮成形性の低下を招く。以上の理由からFe
−Co−Mo系合金粉末におけるCo含有量は2〜15
%が適当であり特に4〜6%にでき、Mo含有量は2〜
10%が適当であり特に4〜6%にできる。なおFe−
Co−Mo系合金粉末の平均粒径は10〜177μm程
度、特に10〜149μm程度にできるが、これに限定
されるものではない。
【0021】(Fe−Cr系合金粉末)Fe−Cr系合
金粉末は、重量比率でCr:1.5〜3.5%、Mo:
0.2〜0.5%、V:0.15〜0.45%、Mn:
0.3%以下、残部が不可避不純物と鉄から成る組成を
もち、Crを含むため、圧粉体等の粉末成形体を成形す
る際における圧縮成形性が低下している。
【0022】〔Cr〕Crは焼結合金の基地中に固溶し
て、これを強化する。更に本発明に係る焼結合金では、
炭素が別途添加されることが一般的であるが、この場合
には、Crは炭素と結合し均一に分散した微細な炭化物
(Cr7 3 、Cr236 など)を基地に形成し、焼結
合金の基地の耐摩耗性を向上する。またCrは鉄と共存
すると選択酸化されやすい元素であり、酸素が少ない環
境であっても、焼結合金の表面、特に焼結合金の基地の
表面に安定した緻密な酸化膜を形成し易い(本明細書に
おけるCr含有量では、スピネル型複酸化物FeCr2
4 が生成すると推察される)。更にCr酸化皮膜は、
腐食性あるいは酸化性雰囲気から焼結合金の基地を相手
材に対して遮断し易く、特に高温での耐食性を大きく向
上させ易い。
【0023】これらの効果は、Fe−Cr系合金粉末中
のCr含有量が1.5%未満では不十分で、一方3.5
%を越えて含有させると、効果の向上が認められるが、
合金化に伴う固溶硬化でFe−Cr系合金粉末の圧縮成
形性が大きく低下し、高密度状態が得られない。以上の
理由から基地材料であるFe−Cr系合金粉末中のCr
含有量は、1.5〜3.5%が適当であり、特に2〜3
%にできる。Fe−Cr系合金粉末の平均粒径は10〜
177μm程度、特に10〜149μm程度にできる
が、これに限定されるものではない。
【0024】(Ni基硬質粒子)請求項2〜3に係る耐
摩耗性鉄基焼結合金ではNi基硬質粒子が含まれてい
る。Ni基硬質粒子は、硬度が基地よりも高いものであ
り、基地中に分散されるが、焼結後の状態においては、
一般的には、Cr236 、C6 Fe21Mo2 、Fe 6
6 C、(Mn,Mo)2 CおよびNi−Cr固溶体など
から形成されると考えられる。また、焼結前の状態にお
いてNi基硬質粒子中の鉄に固溶していたNiは、焼結
によりその大部分が周囲の基地に拡散し、Niリッチの
オ−ステナイト相を形成する。そのため焼結合金の基地
の耐酸化性を向上させ、更に硬質粒子の基地中への保持
力向上にも作用する。
【0025】このNi基硬質粒子中には、前述の各炭化
物を形成するのに必要な成分としてMo、Cr、W、F
eが添加されており、この中に予め含有されているC、
および、上記したFe−Cr系合金粉末、Fe−Co−
Mo系合金粉末と同時に黒鉛粉末が混合される場合に
は、黒鉛からのCと反応して炭化物が形成される。〔N
i基硬質粒子におけるMo、Cr、W、Fe〕これら元
素のNi基硬質粒子への添加量はMo5%未満、Cr2
0%未満、W10%未満、Fe5%未満の場合には、そ
れぞれ形成される炭化物量が少なく、耐摩耗性改善効果
が不十分である。一方、Mo20%、Cr40%、W2
0%、Fe30%を越えると、形成される炭化物量が過
多となり、相手材(例えばバルブフェース材)に対する
攻撃性が強くなる。以上の理由からNi基硬質粒子中の
Mo含有量は5〜20%が適当であり特に8〜12%に
でき、Cr含有量は20〜40%が適当であり特に32
〜36%にでき、W含有量は10〜20%が適当であり
特に12〜16%にでき、Fe含有量は5〜30%が適
当であり特に16〜20%にできる。
【0026】また、Ni基硬質粒子は、焼結合金材料全
体における重量比率で2〜30%とされている。焼結合
金材料全体とは、焼結合金を構成する材料を意味し、基
地材料の他にNi基硬質粒子を含み、金属間化合物の硬
質粒子、黒鉛粉末が添加される場合にはこれらをも含
む。Ni基硬質粒子は、2%未満では耐摩耗性向上が不
十分である。一方、30%を越えて添加しても効果の向
上が小さく、更に圧縮成形性の低下をもたらすため、N
i基硬質粒子の添加量は2〜30%特に5〜15%が適
当である。
【0027】(FeMo、FeW、FeCrなどの高硬
度の金属間化合物の硬質粒子)請求項3に係る耐摩耗性
鉄基焼結合金では、FeMo、FeW、FeCrなどの
高硬度の金属間化合物の硬質粒子が含まれている。これ
らは少なくとも1種添加できる。これらの金属間化合物
の硬質粒子の硬度は基地の硬度よりも高い。更に、これ
らの金属間化合物の硬質粒子の硬度は、Ni基硬質粒子
の硬度よりも高いのが一般的である。上記したFeM
o、FeW、FeCr等は一般的に硬度がHv1300
〜1400程度と高く、基地中に成分元素が拡散するこ
とが実質的にないか、少ないと考えられるため、焼結合
金の強度を大きく向上させ、耐摩耗性の向上効果が大き
い。しかし、これらの焼結合金全体における添加量が2
%未満では効果の向上が小さい。一方、4%を越えて添
加すると、相手材(例えばバルブフェース材)に対する
攻撃性が強くなり、焼結合金自身の切削性も悪化するた
め、焼結合金材料全体における添加量は2〜4%が適当
であり特に2.5〜3.5%にできる。
【0028】Ni基硬質粒子と金属間化合物の硬質粒子
との双方を添加している場合には、次式を満足すること
が好ましい。 4%≦(〔金属間化合物の硬質粒子〕%+〔Ni基硬質
粒子〕%)≦28% 前述したようにFeMo等の金属間化合物の硬質粒子
は、一般的には、Ni基硬質粒子より硬度が高いため、
上記した範囲で添加することが好ましい。焼結合金の使
用条件が厳しく、焼結合金の塑性流動をNi基硬質粒子
が支えきれないような場合であっても、高硬度の金属間
化合物の硬質粒子が塑性流動を抑えることを期待でき
る。なお混合前におけるNi基硬質粒子の平均粒径は1
0〜177μm程度、特に10〜149μm程度にでき
るが、これに限定されるものではない。混合前における
金属間化合物の硬質粒子の平均粒径は10〜75μm程
度、特に10〜45μm程度にできるが、これに限定さ
れるものではない。
【0029】(黒鉛)本発明に係る焼結合金では、焼結
合金材料として黒鉛が添加されることが多い。黒鉛のC
は、焼結合金の基地中に固溶して、これを強化するとと
もに、一部はNi基硬質粒子中にも拡散し、Ni基硬質
粒子の内部のCr、Mo、Wと結合して、それぞれと炭
化物を生成し易いため、Ni基硬質粒子の硬度を高め、
焼結合金の耐摩耗性を向上させる。
【0030】Cは、焼結合金材料全体における添加量が
重量比率で0.2%未満では、前述の効果があまり期待
できない。一方、2%を越えて添加すると、粗大化した
セメンタイトが生成したり、遊離黒鉛が多くなり、焼結
合金を脆化させるため好ましくない。以上の理由から焼
結合金材料全体におけるCの量は、0.2〜2%が適当
である。
【0031】以上の構成に係る焼結合金では、各合金元
素が基地に固溶される固溶均質度が高くなる。従って各
種の要素粉末を混合した混合粉末で焼結合金を形成する
技術に比べて、少ない合金添加量で優れた耐摩耗性更に
は耐食性を得るのに有利である。本発明に係る耐摩耗性
鉄基焼結合金では、Fe−Co−Mo系合金粉末に由来
するベイナイト相あるいはパ−ライト相を主体とする組
織と、Fe−Cr系合金粉末に由来するマルテンサイト
相を主体とする組織とが生成し易い。上記した硬質粒子
を含む場合には、Ni基硬質粒子が基地に分散すると共
に、FeMo、FeW等の金属間化合物で形成された高
硬度の硬質粒子が基地に分散している。更に、Ni基硬
質粒子の周囲の基地には、Niリッチのオ−ステナイト
相が形成された組織となる。本発明に係る基地は、上記
した組織に基づく硬度をもつ。
【0032】
【実施例】本発明に係る焼結合金を内燃機関のバルブシ
ート材に適用した各実施例を、比較例と対比して説明
し、本発明に係る焼結合金の特徴を明らかにする。 実施例1〜4、比較例1〜3…請求項1に対応(表
1) 表1に実施例1〜4および比較例1〜3の組成、密度を
示した。
【0033】上記した各実施例では、合金粉末中の重量
比でCoが5%、Moが5%で残部が実質的に鉄および
不可避不純物であるFe−Co−Mo系の鉄基噴霧合金
粉末A(平均粒径:80μm)と、合金粉末中の重量比
でCrが3%、Moが0.4%、Vが0.3%、Mnが
0.3%以下で残部が鉄および不可避不純物であるFe
−Cr系の鉄基噴霧合金粉末B(平均粒径:80μm)
との2種類の合金粉末を、基地材料として準備した。
【0034】更に、合金粉末中の重量比でCrが35
%、鉄が18%、Wが13%、Moが10%、Cが3%
で、残部がNiおよび不可避不純物であるNi基噴霧合
金粉末Cを、Ni基硬質粒子(平均粒径:60μm)と
して準備した。上記した鉄基噴霧合金粉末A、BとNi
基噴霧合金粉末と黒鉛粉末とを、表1に示す配合組成に
なるように秤量した。その後、秤量した粉末全体に対し
て潤滑剤として機能するステアリン酸亜鉛0.8%を添
加し、V型混合機を用いて30分間混合を行ない、混合
粉末を得た。
【0035】なお、表1の値〔但しB/(A+B)の値
を除く〕は、焼結合金材料全体(=鉄基噴霧合金粉末
A、BとNi基噴霧合金粉末と黒鉛粉末との混合粉末と
の合計。この場合には、焼結に伴い蒸発する上記潤滑剤
は焼結合金材料全体に含まない)を重量比で100%と
したときの各成分の割合を示す。次に、上記の混合粉末
を型のキャビティに投入した後に、成形圧力7tonf
/cm2 (≒690MPa)にて型中で圧縮し、圧粉体
を成形した。
【0036】得られた圧粉体を分解アンモニアガス雰囲
気中1393Kの温度で30分間焼結した。これにより
表1に示す各例に係る配合組成のバルブシート用焼結合
金で形成した試験片を作成した。
【0037】
【表1】 なお表1において『〃』は上値と同じ値であることを意
味する。他の表についても同様である。
【0038】実施例1〜3に係る試験片では、図1にそ
の金属組織の模式図を示したように、CoとMoリッチ
のベイナイトあるいはパ−ライトを主体とする相
(1)、およびCrリッチのマルテンサイトを主体とし
た相(2)が混在した基地組織が得られた。そして、内
部に各種炭化物が生成したNi基硬質粒子(3)がその
基地組織の中に分散しており、そのNi基硬質粒子
(3)の周囲の基地部分にNiリッチのオ−ステナイト
相(4)が形成された構成となる。なお図1中の(5)
は空孔部を示す。
【0039】また実施例4は、以上の様な工程で作成し
た実施例2と同種の試験片を、更に分解アンモニアガス
雰囲気において再加熱(温度:1173K)した後に熱
間状態で鍛造を行ない、焼結合金の密度を7.9gf/
cm3 まで高めたものである。この場合には、図1中の
空孔部(5)がほぼ削減した構成となる。比較例1〜3
についても、表1に示す成分割合にて実施例1〜3と同
一条件でバルブシート用焼結合金を作成した。
【0040】以上の各実施例1〜4および比較例1〜3
に係る試験片に対して、相手材であるバルブフェース材
としてオ−ステナイト系耐熱鋼(JIS−SUH35)
または耐摩耗盛金合金(ステライト合金)を組合せた。
そして、図2に模式図を示す大越式摩耗試験を実施し、
摩耗評価を実施した。大越式摩耗試験においては、図2
から理解できるように、リング材(b)を矢印方向に回
転させつつ、ブロック材(a)に摺動させる。大越式摩
耗試験においては、表2に示したように、バルブシート
材の耐摩耗性の調査を目的とする第1形態では、バルブ
シート材を固定式のブロック材(a)として作製すると
共に、バルブフェース材をリング材(b)として作製し
た。
【0041】また、バルブフェース材の耐摩耗性の調査
を目的とする、つまり、バルブシート材が相手材である
バルブフェース材を攻撃する相手攻撃性を調査する第2
形態では、材料を入れ換えて、バルブフェース材をブロ
ック材(a)として作製し、バルブシート材をリング材
(b)として作製した。
【0042】
【表2】 第1形態及び第2形態のいずれの場合も、試験時のすべ
り速度は0.25m/s、最終押し付け荷重は21.5
Nとした。但し、すべり距離はバルブシート材の耐摩耗
性の調査時には100m、バルブフェース材への攻撃性
の調査時には400mとした。
【0043】また第1形態では、試験開始における試験
片の温度は、バルブシート材側が350℃、バルブフェ
ース材側が490℃である。第2形態では、試験開始に
おける試験片の温度は、バルブシート材側が350℃、
バルブフェース材側が530℃である。測定項目は、第
1形態及び第2形態のいずれの場合もブロック材の摩耗
体積であり、実施例1〜4および比較例1〜3は、比較
例1を100としたときの相対表示、つまり摩耗比で整
理した。
【0044】図3は、相手材であるバルブフェース材に
オーステナイト系耐熱鋼(SUH35)を用いた場合に
おけるバルブシート材の摩耗比を示す。ここで図3の横
軸は、基地材料を構成する鉄基噴霧合金粉末AとBとの
合計における鉄基噴霧合金粉末Bの混合割合、つまり
{〔B/(A+B)〕×100%}を示す。換言すれ
ば、図3の横軸は、基地材料全体におけるFe−Cr系
合金粉末の混合割合を示す。図3のうち上グラフの縦軸
は、バルブシート材の摩耗比を示す。図3のうち下グラ
フの縦軸は、相手材であるバルブフェース材の摩耗比を
示す。図3の上グラフの縦軸においては、上側に向かう
につれてバルブシート材の耐摩性が低下し、下側に向か
うにつれてバルブシート材自身の耐摩性が『優』となる
ことを意味する。また図3の下グラフの縦軸において
は、下側に向かうにつれて相手材であるバルブフェース
材の摩耗量が増加しており、従って、バルブシート材が
バルブフェース材に与える相手攻撃性が大きくなり、バ
ルブシート材による相手攻撃性が『劣』となることを意
味する。図3においては、実施例1に係るデ−タを『実
1』と略する。他の実施例や比較例についても同様であ
る。
【0045】図3の特性線A1から理解できるように、
バルブシート材におけるFe−Cr系合金粉末の混合割
合が10〜30%の領域においてバルブシート材の摩耗
比が最小域となる。更に混合割合が30%を越えると、
バルブシート材の摩耗比が増加する。一方、図3の特性
線B1から理解できるように、Fe−Cr系合金粉末の
混合割合が増加していくと、相手材であるバルブフェー
ス材の摩耗比は徐々に増加する。即ち、バルブシート材
による相手攻撃性が徐々に大きくなる。
【0046】殊に混合割合が40%以上になると、相手
材であるバルブフェース材の摩耗比はかなり大きくな
り、バルブシート材による相手攻撃性が大きくなる。図
4は、相手材であるバルブフェース材として耐摩耗盛金
合金(ステライト合金)を用いた場合における試験結果
を示す。図4における横軸及び縦軸は、図3における横
軸及び縦軸にそれぞれ対応する。図4において実施例1
に係るデ−タを『実1』と略する。他の実施例や比較例
についても同様である。
【0047】図4の特性線A2から理解できるように、
バルブシート材の基地材料全体におけるFe−Cr系合
金粉末の割合が増加していくと、徐々にではあるがバル
ブシート材の摩耗比が低下する傾向となり、混合割合1
0〜30%付近でバルブシート材の摩耗比が最小領域と
なる。更に図4の特性線A2から理解できるように、混
合割合が40%以上になると、『比3』のデータから理
解できるように、バルブシート材の摩耗比はかなり大き
く増加する。
【0048】一方、図4の特性線B2から理解できるよ
うに、バルブシート材中のFe−Cr系合金粉末の割合
が増加していくと、相手材であるバルブフェース材の摩
耗比、つまりバルブシート材がバルブフェース材を攻撃
する相手攻撃性は、ほんの僅かであるが増加する傾向が
みられた。図4の特性線B2から理解できるように、混
合割合を40%以上にしても、相手材であるバルブフェ
ース材の摩耗比には大きな変化がみられない。つまり、
バルブシート材がバルブフェース材を攻撃する相手攻撃
性には、大きな変化がみられない。
【0049】以上の説明から理解できるように、相手材
であるバルブフェース材に耐熱鋼(SUH35)を用い
た場合および耐摩耗盛金合金(ステライト合金)を用い
た場合のいずれにおいても、バルブシート材の耐摩耗性
およびバルブフェース材への攻撃性ともに良好となるの
は、基地材料におけるFe−Cr系合金粉末の混合割合
が10〜30%である実施例1〜3である。
【0050】なお、相手材であるバルブフェース材に耐
摩耗盛金合金(ステライト合金)を盛金するのは、有鉛
燃料を使用した内燃機関や、高排気温となる内燃機関の
場合等がほとんどであり、Fe−Cr系合金粉末の添加
は、バルブシート材の耐食性向上にも大きく寄与するこ
とが予想される。ところで、相手材であるバルブフェー
ス材に耐熱鋼を用いた場合においては、図3の『実2』
『実4』のデ−タの比較から理解できるように、実施例
2を高密度化した実施例4では、実施例2よりも、バル
ブシート材の摩耗比は減少していた。これにより焼結合
金の高密度化は、耐摩耗性の向上に有効であることがわ
かる。
【0051】同様に、相手材であるバルブフェース材に
耐摩耗盛金合金を用いた場合においても、図4の『実
2』『実4』のデ−タの比較から理解できるように、実
施例2を高密度化した実施例4では、バルブシート材の
摩耗比は減少していた。従って相手材が変更された場合
であっても、バルブシート材の耐摩耗性に大幅な上昇が
みられる。
【0052】なお、バルブフェース材への攻撃性に若干
の増加がみられたが、実用上問題のないレベルである。 実施例5〜8、比較例4〜7…請求項2、3に対応
(表3) 次に実施例5〜8について比較例4〜7と共に説明す
る。表3に各実施例および比較例の組成、密度を示し
た。
【0053】実施例5〜8に係るバルブシート材の基地
材料は、前述の実施例1〜4と同じく、前記した2種類
の鉄基噴霧合金粉末A、Bを用いた。更に、硬質粒子と
して前記したNi基噴霧合金粉末Cの他に、鉄系の金属
間化合物の硬質粒子として高硬度のFeMoの粉末(平
均粒径:40μm)も混合した。焼結合金の作成条件は
実施例1〜4と実質的に同一である。実施例8は実施例
4の場合と同様に、試験片を加熱した後に熱間状態にお
いて鍛造工程を実行し、焼結合金の密度を7.9gf/
cm3 まで高めたものである。
【0054】比較例4〜7についても、表3に示す成分
割合にて実施例5〜7と同一条件でバルブシート用の焼
結合金を作成した。
【0055】
【表3】 上記した実施例5〜8および比較例4〜7についても、
相手材であるバルブフェース材として耐摩耗盛金合金
(ステライト合金)を用い、実施例1〜4、比較例1〜
3と同一条件で大越式摩耗試験を実施した。
【0056】その試験結果を図5に示す。図5の横軸は
FeMoの添加割合を示す。図5のうち上のグラフの縦
軸は、比較例4を100とした相対表示で、バルブシー
ト材の摩耗比を示す。図5のうち下のグラフの縦軸は、
比較例4を100とした相対表示で、相手材であるバル
ブフェース材の摩耗比を示す。図5において実施例5に
係るデ−タを『実5』と省略する。他の実施例及び比較
例についても同様にした。
【0057】Ni基硬質粒子を添加していない比較例
4、5の試験結果では、図5の特性線A4に示すよう
に、FeMoの添加によりバルブシート材の摩耗比が次
第に小さくなる。即ちバルブシート材の耐摩耗性が向上
する。しかしながら図5の特性線B4に示すように、N
i基硬質粒子を添加していない比較例4、5では、Fe
Moの添加により、相手材であるバルブフェース材への
攻撃性が大きく増加する傾向がある。
【0058】一方、Ni基硬質粒子を添加(10%)し
た実施例5、6および比較例6、7の試験結果では、図
5の特性線A3に示すように、FeMoの添加によりバ
ルブシート材の摩耗比が低減し、バルブシート材の耐摩
耗性が大きく向上するばかりか、図5の特性線B3に示
すように、バルブフェース材への攻撃性の増加率は、F
eMo2〜4%の範囲においては、Ni基硬質粒子を添
加していない特性線B4の場合に比べて、少なめとなる
ことがわかる。
【0059】しかし、FeMoを6%と過剰に添加した
比較例7では、図5の特性線A3から理解できるよう
に、バルブシート材の耐摩耗性が向上しているものの、
図5の特性線B3から理解できるように、相手攻撃性の
増加率が大きなる。従って、バルブシート材の自身の耐
摩耗性と、バルブシート材によるバルブフェース材への
相手攻撃性との双方ともに良好とするためには、焼結合
金材料全体においてFeMoを2〜4%添加した実施例
5、6である。
【0060】また、表3に示すように実施例5では基地
中のFe−Cr系合金粉末の混合割合を0.1つまり1
0%としている。基地中のFe−Cr系合金粉末の混合
割合を0.3つまり30%とした実施例7では、図5か
ら理解できるように、実施例5よりも相手攻撃性に若干
の増加がみられるが、バルブシート材自身の耐摩耗性が
向上する。
【0061】次にFeMoを3%添加すると共に鍛造工
程により高密度化を図った実施例8についても、バルブ
シート材による相手攻撃性が若干増加するものの、バル
ブシート材自身の耐摩耗性が大きく向上する。以上の説
明から理解できるように、Fe−Co−Mo系合金粉末
とFe−Cr系合金粉末を基地材料として用いると共
に、Ni基硬質粒子、FeMoの硬質粒子を最適量添加
すれば、FeMo添加による相手攻撃性増加を抑えつ
つ、バルブシート材自身の耐摩耗性を向上させることが
可能となる。すなわち、Ni基硬質粒子とFeMoの同
時添加は交互作用があることを示している。
【0062】その理由は以下のように考えられる。即
ち、Ni基硬質粒子はその内部に各種炭化物が形成さ
れ、更に、Ni基硬質粒子の周囲の基地にNiを拡散さ
せることで基地のオ−ステナイト化を進め、これにより
焼結合金の耐摩耗性、耐食性を向上させる。しかし、N
i基硬質粒子はそれ自体の硬度が一般的にはHv102
0程度であり、必ずしも高硬度とはいえない。
【0063】故に、使用環境条件が過酷であり、バルブ
シート材が相手材としてのバルブフェース材と強く摺動
する場合には、バルブシート材の表面において発生する
焼結組織の塑性流動を充分には支えきれず、ある限界を
越えるとNi基硬質粒子自体も破壊され、塑性流動部が
剥離してバルブシート材の摩耗増加を誘発するおそれが
ある。そこでNi基硬質粒子の他に、高硬度(Hv14
00〜1500)のFeMo等の鉄系の金属間化合物の
硬質粒子を添加すると、それらの硬質粒子は高強度で破
壊されにくいため、金属間化合物の硬質粒子の部分で、
上記した塑性流動をある程度せき止めることを期待でき
る。そのため、バルブシート材における塑性流動の抑制
に貢献でき、バルブシート材における耐摩耗性を大きく
向上させることを期待できる。
【0064】しかしながら、FeMo等の金属間化合物
の硬質粒子は、その周囲の基地組織が摩耗や腐食等を受
けた場合においては、FeMo等の金属間化合物の硬質
粒子のみを添加している場合には、FeMo等の金属間
化合物の硬質粒子が突き出した状態となり、相手材であ
るバルブフェース材への攻撃性が大きく増加してしまう
おそれがある。
【0065】そこで、FeMo等の金属間化合物の硬質
粒子と共にNi基硬質粒子が添加されていると、Ni基
硬質粒子が緩衝作用を奏し、焼結合金による相手攻撃性
を大きく増加させることなく、焼結合金自身の耐摩耗性
を向上させることができるものと考えられる。以上の効
果は、FeMo等の金属間化合物の硬質粒子の添加量と
Ni基硬質粒子の添加量の種々の組合せで多少相違する
ことがある。即ち、図6の特性線C1から理解できるよ
うに、FeMoが4%の場合には、焼結合金材料全体に
おけるNi基硬質粒子の添加割合が30%となると、相
手材であるバルブフェース材の摩耗比が増大する。換言
すれば、相手材であるバルブフェース材への攻撃性が大
きく増加する。そのため、FeMoとNi基硬質粒子と
を同時添加する場合には、同時添加しない場合に比較し
て、Ni基硬質粒子の割合を少なめ、つまり24%以下
とし、これによりFeMoとNi基硬質粒子の添加量の
合計を28%以下に規定することが好ましい。なお、F
eMo等の金属間化合物の硬質粒子の添加量とNi基硬
質粒子の添加量との合計の下限値は、それぞれの硬質粒
子添加量の下限値の合計である4%に規定した。
【0066】上記した焼結合金でバルブシート材を構成
すれば、各種バルブフェース材との組合せにおける耐摩
耗性と相手攻撃性の最適なバランスを確保するのに有利
である。従って、バルブフェース材あるいはバルブシー
ト材いずれか一方が過大摩耗したときに生じる内燃機関
の燃焼室の燃焼ガスの吹き抜けを効果的に防止できる。
よって、内燃機関の信頼性を大きく向上するのに有利で
ある。更にバルブフェース材とバルブシート材とが適度
なバランスを保ちながら摩耗が進行する。即ち、両摺動
面が最適な接触状態を確保しつつ、馴染みが付くため、
バルブフェース材からバルブシート材への熱の伝熱面積
が常に適正に保たれ易くなる。特に排気側において排気
バルブの温度上昇を防止することを期待できるため、こ
の点からも内燃機関の耐久性の一層向上に有利である。
【0067】(適用例)図7は車両の内燃機関に適用し
た例を示す。内燃機関では吸気ポ−ト10、排気ポ−ト
12にはそれぞれバルブシート20、22が設けられて
いる。更に吸気ポ−ト10を開閉するバルブフェース部
30cをもつ吸気バルブ30が装備され、排気ポ−ト1
2を開閉するバルブフェース部32cをもつ排気バルブ
32が装備されている。上記した各実施例に係る焼結合
金は、排気側のバルブシート22に適用されるが、吸気
側のバルブシート20に適用することもできる。更にバ
ルブシートに限らず、耐摩耗性が要請される、殊に高温
領域における耐摩耗性が要請される他の部材に適用する
こともできる。
【0068】なお、各請求項に係る耐摩耗性鉄基焼結合
金の組成は、各表に記載された数値を上限値、下限値と
して規定して把握することもできる。 (付記)上記した記載から次の技術的思想も把握でき
る。 ○重量比率でCo:2〜15%、Mo:2〜10%、残
部が不可避不純物と鉄から成る圧縮成形性に影響が少な
いFe−Co−Mo系合金粉末に、重量比率でCr:
1.5〜3.5%、Mo:0.2〜0.5%、V:0.
15〜0.45%、Mn:0.3%以下、残部が不可避
不純物と鉄から成る圧縮成形性を低下させるFe−Cr
系合金粉末を、基地材料全体における重量比率で10〜
30%混合した基地材料を得る工程と、基地材料を焼結
し、鉄基の基地を備えた耐摩耗性鉄基焼結合金を製造す
る工程とを順に実施する製造方法。 ○上記した基地材料に請求項2に係るNi基硬質粒子粉
末と請求項3に係る金属間化合物の粉末とを請求項2ま
たは請求項3に係る割合でそれぞれ混合した焼結合金材
料を得る工程と、焼結合金材料を焼結し、鉄基の基地と
基地に分散したNi基硬質粒子及び金属間化合物の硬質
粒子を備えた耐摩耗性鉄基焼結合金を得る工程とを順に
実施する製造方法。
【0069】
【発明の効果】請求項1〜3に係る耐摩耗性鉄基焼結合
金によれば、基地材料が適量のCrを含むため、基地の
耐摩耗性の向上に有利である。基地等に生成したCr酸
化皮膜により、基地と相手材との直接接触が抑えられ、
使用環境条件が厳しい場合であっても、基地の凝着、移
着等を抑制できるためと推察される。
【0070】請求項1〜3に係る耐摩耗性鉄基焼結合金
によれば、圧縮成形性に影響が少ないMo、Coを多量
に含むFe−Co−Mo系合金粉末と、Fe、Moと合
金化した場合において圧縮成形性を低下させるCrを含
むFe−Cr系合金粉末とを所定の比率で混合した基地
材料により形成された基地を備えているため、高密度な
基地を備えた耐摩耗性鉄基焼結合金を得るのに有利であ
る。
【0071】即ち、圧縮成形性が低下しているFe−C
r系合金粉末の粒子の隙間に、圧縮成形性が良好なFe
−Co−Mo系合金粉末の粒子が効果的に入り込むこと
により、その隙間は埋められるため、基地材料がCrを
含んでいるにもかかわらず、基地の高密度化に有利であ
る。このように基地の高密度化に有利であるため、請求
項1〜3に係る耐摩耗性鉄基焼結合金は、耐摩耗性が一
層良好となる。
【0072】更に、Fe−Cr系合金粉末の隙間にFe
−Co−Mo系合金粉末が入り込むことにより、その隙
間は埋められるため、圧粉体等の粉末成形体の高密度化
にも貢献できる。従って、圧粉体等の粉末成形体を焼結
した際において、焼結収縮を少なくするのにも有利であ
る。また、基地材料としてFe−Co−Mo系合金粉末
とFe−Cr系合金粉末とを上記した混合比率で混合し
た基地材料で形成した基地を備えている請求項1〜3に
係る耐摩耗性鉄基焼結合金によれば、前記した試験結果
から理解できるように、相手材が耐熱鋼であっても、或
いは、相手材が耐摩耗盛金合金を溶着したものであって
も、本発明に係る焼結合金の相手攻撃性を低めにするの
に有利である。
【0073】例えば、耐摩耗性鉄基焼結合金がバルブシ
ート材として用いられる場合には、相手材であるバルブ
フェース材が耐熱鋼である場合であっても、或いは、相
手材であるバルブフェース材が耐摩耗盛金合金を溶着し
たものである場合であっても、双方のバルブフェース材
に対して、相手攻撃性の低いバルブシート材を提供する
のに有利である。
【0074】請求項2に係る耐摩耗性鉄基焼結合金によ
れば、Ni基硬質粒子が基地に分散されているため、基
地の耐摩耗性の一層の向上に貢献できる。更にNi基硬
質粒子のNiが基地に拡散することを期待できるため、
基地の耐食性の向上に貢献できる。請求項3に係る耐摩
耗性鉄基焼結合金によれば、Ni基硬質粒子の他に、金
属間化合物の硬質粒子が分散されており、両者の割合が
適量割合に規定されているため、使用環境条件が厳し
く、Ni基硬質粒子の塑性流動が誘発されるような場合
であっても、その塑性流動が金属間化合物の硬質粒子に
よりせき止められ易いため、鉄基焼結合金の耐摩耗性が
一層確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】顕微鏡で観察した試験片の金属組織を模式的に
示す構成図である。
【図2】大越摩耗試験の概略を示す構成図である。
【図3】バルブフェース材がSUH35の場合におい
て、鉄基噴霧合金粉末Bの混合割合とバルブシート材摩
耗比との関係を示すと共に、鉄基噴霧合金粉末Bの混合
割合とバルブフェース材摩耗比との関係を示すグラフで
ある。
【図4】バルブフェース材がステライト盛金の場合にお
いて、鉄基噴霧合金粉末Bの混合割合とバルブシート材
摩耗比との関係を示すと共に、鉄基噴霧合金粉末Bの混
合割合とバルブフェース材摩耗比との関係を示すグラフ
である。
【図5】バルブフェース材がステライト盛金の場合にお
いて、FeMoの混合割合とバルブシート材摩耗比との
関係を示すと共に、FeMoの混合割合とバルブフェー
ス材摩耗比との関係を示すグラフである。
【図6】バルブフェース材がステライト盛金の場合にお
いて、Ni基硬質粒子の混合割合とバルブフェース材摩
耗比との関係を示すグラフである。
【図7】適用例を示す要部の断面図である。
【符号の説明】
図中、10は吸気ポ−ト、12は排気ポ−ト、20、2
2はバルブシート、30は吸気バルブ、30cはバルブ
フェース部、32は排気バルブ、32cはバルブフェー
ス部を示す。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量比率でCo:2〜15%、Mo:2〜
    10%、残部が不可避不純物と鉄から成る圧縮成形性に
    影響が少ないFe−Co−Mo系合金粉末に、重量比率
    でCr:1.5〜3.5%、Mo:0.2〜0.5%、
    V:0.15〜0.45%、Mn:0.3%以下、残部
    が不可避不純物と鉄から成る圧縮成形性を低下させるF
    e−Cr系合金粉末を、基地材料全体における重量比率
    で10〜30%混合した基地材料を焼結して形成した鉄
    基の基地を備えることを特徴とする耐摩耗性鉄基焼結合
    金。
  2. 【請求項2】請求項1において、Mo:5〜20%、C
    r:20〜40%、W:10〜20%、C:0.5〜5
    %、Fe:5〜30%、残部が不可避不純物とNiから
    成るNi基硬質粒子を、焼結合金材料全体における重量
    比率で2〜30%含む焼結合金材料を焼結して形成した
    ことを特徴とする耐摩耗性鉄基焼結合金。
  3. 【請求項3】請求項2において、FeMo、FeW、F
    eCrなどの高硬度の金属間化合物の硬質粒子を焼結合
    金材料全体における重量比率で2〜4%含み、前記Ni
    基硬質粒子及び前記金属間化合物の硬質粒子の関係が焼
    結合金材料全体における重量比率で下式 4%≦(〔金属間化合物の硬質粒子〕%+〔Ni基硬質
    粒子〕%)≦28% を満たすことを特徴とする耐摩耗性鉄基焼結合金。
JP15538797A 1997-06-12 1997-06-12 耐摩耗性鉄基焼結合金 Pending JPH116040A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP15538797A JPH116040A (ja) 1997-06-12 1997-06-12 耐摩耗性鉄基焼結合金

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP15538797A JPH116040A (ja) 1997-06-12 1997-06-12 耐摩耗性鉄基焼結合金

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH116040A true JPH116040A (ja) 1999-01-12

Family

ID=15604848

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP15538797A Pending JPH116040A (ja) 1997-06-12 1997-06-12 耐摩耗性鉄基焼結合金

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH116040A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008105105A (ja) * 2006-10-23 2008-05-08 Mitsubishi Materials Corp シリンダヘッドの製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008105105A (ja) * 2006-10-23 2008-05-08 Mitsubishi Materials Corp シリンダヘッドの製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8733313B2 (en) Iron-based sintered alloy for valve seat, and valve seat for internal combustion engine
JP5551413B2 (ja) 粉末金属弁座インサート
JP4368245B2 (ja) 硬質粒子分散型鉄基焼結合金
JP4127021B2 (ja) 硬質粒子、耐摩耗性鉄基焼結合金、耐摩耗性鉄基焼結合金の製造方法及びバルブシート
JP2001050020A (ja) 内燃機関用の弁装置
JP3596751B2 (ja) 焼結合金配合用硬質粒子、耐摩耗性鉄基焼結合金、耐摩耗性鉄基焼結合金の製造方法及びバルブシート
JP4693170B2 (ja) 耐摩耗性焼結合金およびその製造方法
JP3186816B2 (ja) バルブシート用焼結合金
JP3809944B2 (ja) 硬質粒子分散型焼結合金及びその製造方法
JPH116040A (ja) 耐摩耗性鉄基焼結合金
KR101363024B1 (ko) 고온 내마모용 철계 소결 합금 및 이를 이용한 밸브 시이트의 제조 방법
JPH0313546A (ja) バルブシート用鉄系焼結合金
JP3569166B2 (ja) 耐摩耗性焼結合金及びその製造方法
JPH09256120A (ja) 耐摩耗性に優れた粉末冶金材料
KR101363025B1 (ko) 고온 내마모용 철계 소결 합금 및 이를 이용한 밸브 시이트의 제조 방법
JP3068127B2 (ja) 耐摩耗性鉄基焼結合金およびその製造方法
JP2725430B2 (ja) バルブシート用焼結合金
JPH08291376A (ja) 鉄基焼結合金バルブシート材と耐熱耐摩耗合金バルブフェース材との組合せ
JP3304805B2 (ja) 耐摩耗性に優れた鉄基焼結合金
JP3440008B2 (ja) 焼結部材
JPH0770720A (ja) バルブシート用鉄系焼結合金
JPH0561346B2 (ja)
JP3264092B2 (ja) 耐摩耗性鉄基焼結合金およびその製造方法
JPH05171372A (ja) インテークバルブシート用焼結合金
JPH10280108A (ja) 耐摩耗性鉄基焼結合金