【発明の詳細な説明】
周期的マッハ・ツェンダ光学フィルタ
技術分野
本発明は、光通信システムに利用可能な波長選択装置に関するものである。
背景技術
光ファイバ通信システムは、例えば、波長の異なる光ビームを異なる宛先に経
路選択するといったさまざまな目的に、あるいは、所望の波長バンド内における
光は通信チャネルに沿って通し、所望のバンド外の波長の光は除去するか、また
は、減衰させる光学フィルタとして、波長選択装置を利用する。
波長選択装置は、実際の通信システムに用いられる厳しい要件を満たさなけれ
ばならない。該装置は、ほんの数ナノメートルだけ互いに異なる波長を離隔する
ことが可能であるべきである。波長選択装置は、環境に対して安定性、信頼性、
及び、耐久性を有しているべきである。また、波長選択装置は、比較的光学パワ
ーの損失が少なくなるように動作すべきである、すなわち、該装置は、所望の波
長バンド内においてそれに供給される光学パワーをあまり消費すべきではない。
光通信システムでは、マッハ・ツェンダ干渉計が波長選択装置として利用され
てきた。図1に示すように、従来のマッハ・ツェンダ干渉計には、1対のファイ
バF1及びF2が含まれている。該ファイバは、第1の結合器C1と第2の結合
器C2において互いに結合されている。該結合器は、一方のファイバからの光を
もう一方のファイバに伝達するように構成されている。さらに後述するように、
該結合器は、ファイバの細長い部分がマトリックスまたは外側クラッディング内
においてお互いに近接して並置されている、いわゆるテーパ状のオーバ・クラッ
ド結合器とすることが可能である。該結合器は、一方のファイバに供給された光
学パワーのほぼ1/2をもう一方のファイバに伝達するように構成された3dB
結合器とすることが可能である。ファイバF1及びF2は、結合器の間に配置さ
れた光路長の異なる移相領域を備えている。従って、ファイバF1における移相
領域の光路長は、ファイバF2における移相領域の光路長とは異なる。この開示
において用いらる限りにおいて、「光路長」という用語は、所定の波長及び所定
の伝搬モードの光がファイバの一方の端部からもう一方の端部まで通過するのに
必要な時間の測度である。光路長の差は、一方のファイバの移相領域をもう一方
のファイバに比べて物理的に長くすることによって、あるいは、伝搬定数の異な
る2つのファイバF1及びF2を造って、2つのファイバ内における光の位相速
度が異なるようにすることによって、あるいは、その両方によって得られた。屈
折率プロフィールの異なるファイバを造ることによって、ファイバに異なる伝搬
定数を付与することが可能になる。ファイバが、「階段屈折率」ファイバの場合
、比較的屈折率の高いコアと、そのコアの上に重なる比較的屈折率の低いクラッ
ディングを組み込むことによって、2つのファイバは、屈折率が異なるコアか、
コア直径が異なるコアか、クラッディングの屈折率が異なるコアか、あるいは、
これらの何らかの組み合わせによるコアを備えることが可能である。光路長の差
をもたらすために用いられる特定のメカニズムにもかかわらず、図1に示す単一
段マッハ・ツェンダ・フィルタは、光の波長に応じて、入力1を介して供給され
た光を出力3と出力4のいずれかに送る。
典型的な単一段マッハ・ツェンダ・フィルタは、特定の出力ポートに送られた
光の割合とその光の波長を関連づける、ほぼ周期的な伝達関数を備えている。す
なわち、特定の出力ポートに生じる光の量は、光の波長の変化につれて繰り返し
変動する。単一段マッハ・ツェンダ装置の典型的な伝達関数が、図2に例示され
ている。それには、一連の交番する通過バンド5とノッチ6が含まれている。通
過バンド内の波長でポート1を介して供給される光の大部分は、ポート3に生じ
るが、ノッチ6内の波長でポート1を介して供給される光のうち、ポート3に到
達するものはほとんどないか、全くない。通過バンド及びノッチは、波長軸に沿
ってほぼ規則的な間隔で繰り返されるので、周期的である。複数のマッハ・ツェ
ンダ装置を直列に結合することによって、あるいは、それぞれ、3つ以上の光路
長を備える装置を造ることによって、さまざまな特性を得ることができるが、さ
らなる改良が望ましい。
すなわち、一般に「通過バンド」と呼ばれる単一の比較的広い波長バンド内に
おける光のほぼ全てを通過させ、ほんの少しでも通過バンドの範囲から外れる波
長の光は急激に減衰させる光学フィルタが要求されている。この要求は、とりわ
け、光学増幅器に関連して生じる。光学増幅器は、光信号にパワーを加える装置
である。光学増幅器は、主として、光ファイバを延長して伝送する場合に生じる
パワー損失を補償するために用いられる。光学増幅器の1つの形態が、エルビウ
ムをドープしたファイバ増幅器(EDFA)として知られるものである。EDF
Aには、エルビウム元素を含む特殊ガラス材料から形成されたある長さの光ファ
イバが含まれる。信号の伝送に用いられる波長で入力される光信号の光ビームは
、「ポンピング」光と呼ばれる、別のより短い波長の光と共に光ファイバに送り
込まれる。ポンピング光からのエネルギは、光ファイバに吸収され、蓄積される
。信号光ビームが光ファイバを通過する際、このエネルギは、解放され、信号光
ビームに混じる。エルビウムをドープしたファイバ増幅器は、動作バンド内にお
ける波長の中心が約1.55マイクロメートルにくるようにして利用することが
可能である。通常、該増幅器の有効動作バンドは、約30nm(0.03マイク
ロメートル)以上の幅である。従って、該増幅器の有効動作バンドは、約1.5
3マイクロメートル〜約1.56マイクロメートルの波長を包含する可能性があ
る。この動作バンドは、この動作バンドは、わずかに波長の異なる、いくつかの
異なる光ビームの同時増幅を可能にするのに十分な広さである。
あいにく、EDFAは、その有効動作バンドからわずかに外れた波長の光につ
いても多少の増幅を施す。換言すれば、EDFAの利得曲線は、動作バンドのエ
ッジにおけるカット・オフが急激ではない。従って、入力信号に、有効動作バン
ドからわずかに外れた波長のスプリアス成分すなわち「ノイズ」が混じっている
場合、これらのスプリアス成分も、ある程度増幅されることになる。さらに、増
幅器自体が、動作バンドからわずかに外れた波長のノイズを導入する可能性もあ
る。両方の場合とも、増幅されたノイズが、システムの下流に送られ、システム
の性能を劣化させる。さらに、光ファイバから取り出されて、ノイズを増幅させ
るエネルギは、所望の信号の増幅に利用することができない。従って、EDFA
の入力または出力に用いられて、EDFAの所望の動作バンドからわずかに外れ
た信号は抑圧するが、所望の動作バンド内の波長の信号は、全て、ほとんど減衰
を生じることなく通過させることが可能な単純なフィルタが大いに必要とされて
いる。すなわち、約1.549〜約1.565マイクロメートルの波長を通過さ
せる、その一方で、約1.525〜約1.545マイクロメートルの波長を備え
た信号を抑圧することが可能なフィルタが必要とされている。通過バンドは広い
が、所望のバンドからわずかに外れた波長は急激に減衰させる、他のタイプの光
学増幅器及び他の装置にも用いられる光学フィルタも相応じて必要とされている
。また、逆のタイプのフィルタ、すなわち、広いバンド内の波長の光を抑圧する
が、該バンドからわずかに外れた光はほとんど減衰を生じることなく通過させる
フィルタも必要とされている。
発明の目的
発明の開示
本発明は、これらの要求に取り組むものである。
本発明の態様の1つによれば、入力ポート、出力ポート、入力端結合器、及び
、出力端結合器を含むマッハ・ツェンダ干渉装置が得られる。該装置には、さら
に、結合器間に延びる第1と第2の光路が含まれている。入力端結合器は、入力
ポートに加えられる光を第1と第2の光路に送るようになっており、一方、出力
端結合器は、第1と第2の出力光路における光を結合し、結合された光を出力ポ
ートに送るようになっている。該光路は、それぞれ、結合器間の光路長がl1及
びl2である。光路長の少なくとも一方は、この光路を通る光の波長λに対して
非線形に変動する。波長に対する光路長の変動は、動作波長λ0の付近において
、入力ポートを介して供給されて、出力ポートに生じる光の割合を関連づける伝
達関数が、ほぼ周期的になるように、また、その伝達関数に、伝達関数の値がλ0
を含む比較的広い波長範囲にわたってほぼ最小または最大になる、主たる比較
的広い通過バンドまたはノッチが含まれるように選択される。主たる通過バンド
またはノッチは、λ0付近において伝達関数の最も広い通過バンドまたはノッチ
を構成する。主たる通過バンドまたはノッチは、最も近い隣接通過バンドまたは
ノッチの半値幅の少なくとも約2倍の半値幅△λを備えるのが最も望ましい。。
光路長の変動に関して必要な事項については、数学的に次のように表すことがで
きる:
ここで:
△Lは、(l1−l2)であり、
Aは、波長に対する光路長の最大変化率であり、
Bは、波長に対する光路長の最小曲率である。
従って、本発明のこの態様による望ましい装置は、波長に対する光路長の変化率
が低いが、波長に対する光路長の極率は高くなる。おそらく、Aは、約4π/△
λ以下であり、Bは、約5/(△λ)2以上である。ここで、△λは通過バンド
またはノッチである。動作波長におけるAは、ゼロになるのが最も望ましい。光
路は、ファイバまたは他の導波管によって構成することが可能である。特に望ま
しい構成の場合、第1と第2の光路は、第1と第2のファイバによって構成され
、ファイバは、結合器を通って延びている。入力結合器を越えて延びる一方のフ
ァイバの一部は、入力ポートを構成し、同じファイバ、または、もう一方のファ
イバの一部は、出力結合器を越えて延び、出力ポートを構成する。代替案では、
1つ以上の追加ファイバによって、入力ポート及び出力ポートを形成することが
可能であり、これらの追加ファイバは、入力端及び出力端結合器において第1と
第2のファイバに結合することが可能である。結合器は、テーパ状のオーバ・ク
ラッド結合器が最も望ましく、この場合、各ファイバには、テーパ状の結合領域
が含まれており、ファイバのテーパ状結合領域は、互いに並置されている。結合
器には、さらに、ファイバのテーパ状結合領域を包囲するオーバ・クラッドと一
体化したハウジングが含まれる。
例えば、譲渡先が同じである米国特許第5,295,205号に開示のように
、環境に対して安定したモノリシック・マッハ・ツェンダ装置は、ガラス管のボ
アにファイバを通し、ガラス管を加熱して、ファイバに対してガラス管を収縮さ
せ、さらに、2つの間隔をあけた位置でガラス管及びファイバを加熱して、引き
伸ばし、結合器を形成することによって、形成することができる。結合器は、入
力ポートによって給与された光のほぼ等しい部分を2つの光路のそれぞれに送り
込むように構成するのが最も望ましいが、等しくない部分も、以下で述べるよう
に利
用することが可能である。
本発明のもう1つの態様によれば、光学増幅器または他の装置と直列をなす、
上述の急峻な輪郭を示す通過バンドを備えるマッハ・ツェンダ波長選択装置を組
み込んだ光学システムが得られるが、この場合、マッハ・ツェンダ装置の通過バ
ンドは、増幅器または他の装置の動作バンドとほぼ整合する。後述のように、該
フィルタによって、システムのS/N比が向上する。
本発明の他の目的、特徴、及び、利点については、添付の図面に関連して示さ
れる、後述の望ましい実施例に関する詳細な説明を通じて、さらに分かりやすく
なるであろう。
図面の簡単な説明
図1は、従来のマッハ・ツェンダ光学装置の概略図である。
図2は、図1に示す装置における光伝送と波長を関連づける伝達関数の周期的
変動を示すグラフである。
図3は、本発明の実施例の1つによるマッハ・ツェンダ装置の概略図である。
図4は、図3の装置の伝達関数を示すグラフである。
図5は、本発明のもう1つの実施例による増幅システムの概略図である。
図6は、図5のシステムに関連した所定の伝達関数を示すグラフである。
図7は、図3と同様であるが、本発明のさらにもう1つの実施例による装置を
表した図である。
図8は、本発明のもう1つの実施例によるシステムに関する伝達関数を示すグ
ラフである。
発明を実施するための最良の形態
本発明によるマッハ・ツェンダ干渉装置には、第1のファイバ10と第2のフ
ァイバ12が含まれている。ファイバ10及び12は、階段屈折率ファイバであ
る。従って、ファイバ10には、図3に破線で示されたコア10a及びコアの上
に重なるクラッド10bが含まれている。ファイバ12には、同様のコアとクラ
ッドが含まれている。ファイバ10及び12は、コア及びクラッドの屈折率を所
望の値に調整するため、ゲルマニウム及びフッ素のようなドーパントまたは添加
剤を用いて、石英ガラスのような従来の材料から形成することが可能である。フ
ァイバは、一体化されたガラスの管状ハウジング14内に配置される。
ハウジング14及びファイバ10及び12は、伸ばされ、細められて、第1の
オーバ・クラッド結合器16及び第2のオーバ・クラッド結合器18が形成され
る。第1のオーバ・クラッド結合器には、ファイバ12の細められたテーパ状の
結合領域22と並んで延びる、ファイバ10の細められたテーパ状の結合領域2
0が含まれている。これらの結合領域は、ハウジング14と一体化されたオーバ
・クラッド24内に納められている。第2のオーバ・クラッド結合器18には、
同様のテーパ状結合領域26及び28と、オーバ・クラッド30が含まれている
。結合器及びハウジングは、参考までにその開示が本書に組み込まれている、米
国特許第5,295,205号に開示のプロセスによって製作することが可能で
ある。要するに、’205特許に開示のように、こうした構造は、ハウジングを
構成する管14内部に2つのファイバを並べて配置し、管を加熱して、軟化させ
、ファイバに対して管を収縮させることによって形成することができる。該プロ
セスには、結合器を形成すべき位置においてファイバを軟化させるのに十分な程
度まで管及びファイバに加熱することが含まれている。管及びファイバは、各結
合器位置において単一体として引き伸ばされるので、管及びファイバが同時に伸
ばされ、細められることになる。2つのファイバ10及び12は、結合器16及
び18の間に同じ物理的距離zを有することができる。従って、ファイバ10は
、2つの結合器間に第1の光路を形成する中央部32を備えており、一方、ファ
イバ12は、2つの結合器間に光路を形成する中央部34を備えているが、両方
の光路とも物理的長さは同じである。ファイバは、両方とも、結合器を通り、結
合器の向こうに配置された端部領域まで延びている。第1のファイバ10の第1
の端部領域は、第1の入力ポート36を形成し、同じファイバの第2の端部領域
は、装置のもう一方の端部に出力ポートを形成する。ポート36及び38を形成
するファイバ端部領域は、光学システム内におけるさらに別のファイバとの結合
に適した端部が得られるように、従来のやり方で切断される。第2のファイバの
端部領域40及び42は、付加ポートを形成する。ただし、これらの付加ポート
は、ファイバ先端を溶解させて、反射防止端部を形成することによって端末処理
されている。例えば、参考までにその開示も本書組み込まれている、米国特許第
4,
979,972号に開示のように、反射防止端末は、ファイバ端部を加熱して、
引っ張ることで、それを切断し、さらに、ファイバ端部を加熱して、ガラスに、
ファイバ・クラッドのもとの外径に等しいか、あるいは、わずかにそれより小さ
い直径を備えた球状の丸い端面を形成させることによって、形成することが可能
である。
2つのファイバは、異なる光学特性を備えている。すなわち、波長に対する2
つのファイバの伝搬定数の変化パターンは、入力ポート36を介して供給されて
、出力ポート38に生じる光の割合が、非周期的伝達関数に従って、給与される
光の波長に応じて変動するように選択される。すなわち、出力ポート38に生じ
る光と波長を関連づける伝達関数には、選択された波長範囲における広い通過バ
ンドまたはノッチのような上述の特徴が含まれている。
一般に、光が2つの光路間において均等に分配されるマッハ・ツェンダ干渉装
置の場合、入力ポートの1つから給与されて、出力ポートに生じる光の割合Iは
、波長の関数である:
ここで、△1は、2つの光路間における光路長の差である。Iとλの関係は、本
書において「伝達関数」と呼ばれる。両方の光路とも、結合器間の物理的長さz
が同じである、図3の装置の場合:
ここで:
Iは、入力ポート36で給与されて、出力38に生じる光の割合である。
△βは、結合器間における第1の光路32の伝搬定数β1と結合器間における
第2の光路34の伝搬定数β2との差である。「伝搬定数」は、光路に沿った光
の位相速度の測度である。ファイバによって形成される光路に沿って伝搬する光
の場合、伝搬定数は、光の波長λに応じて変動する。λに対するβの変動は、一
般に、時間遅延と呼ばれる。ある条件下では、単一波長の光が、いくつかの異な
る伝送モードで、単一ファイバを伝搬することが可能であり、βの値が異なるこ
とにな
る。しかし、本発明の望ましい実施例では、光が単一モードでしか伝搬すること
ができないように、比較的コアの直径が小さいファイバを利用するので、どの波
長の光も、伝搬定数βは1つだけである。任意のλの値におけるβの値は、ファ
イバのコア直径とλの関係、及び、ファイバにおけるコアとクラッドの屈折率n1
及びn2といった要素によって決まる。屈折率自体は、ある程度、λによって決
まる可能性がある。
△βがλに対して線形に変動する場合、伝達関数Iは、図2に示す周期的特性
を有している。図2において明らかなように、伝達関数の周期は、一定であり、
その各ピークは、ほぼ同じ幅である。対照的に、本発明の望ましい実施例による
装置は、波長がかなり非周期的な伝達関数を備えている。図4に示す非周期的伝
達関数は、主たるバンド50の中心が動作波長λ0に位置している。バンド50
は、入力ポートで給与される光の比較的多くの部分が出力ポートに生じることに
なる(I>0.5)、波長のグループを表しており、従って、バンド50は「通
過バンド」と呼ばれる。隣接するバンド52及び54は、入力ポートで給与され
る光のうち、出力ポートに達するのがわずかな部分である(I<0.5)、波長
のグループであり、従って、これらの隣接バンドは、「ノッチ」と呼ばれる。バ
ンド56及び58は、別の通過バンドを表している。λ0の付近では、バンド幅
が、波長によって大幅に変化する。主たる通過バンド50は、他のバンドの幅よ
りかなり広い幅W50を備えている。通過バンドまたはノッチに関して本開示で用
いられる限りにおいて、「幅」という用語は、全幅半値すなわち「FWHM」幅
を表している。バンドの限界波長は、Iが問題となるバンドにおいて得られる最
小値または最大値とすぐ隣接するバンドにおける最小値または最大値の中間であ
る、バンド中心の両側における波長とみなされる。例えば、主たるバンド50は
、下限波長λ1及び上限波長λ2を有しており、ノッチ52は、限界波長λ52及び
λ1を有している。バンド幅は、その限界波長の差である。従って、主たる通過
バンド50の幅△λは、(λ2−λ1)である。伝達関数の非周期度は、主たるバ
ンドの幅とすぐ隣接するバンドの幅の最大幅の比として表すことが可能である。
この比は、少なくとも約2が望ましい。
広いパス・バンドまたはノッチの中心がλ0にくる、かなり非周期的な伝達関
数
を得るため、
は、できるだけ小さく、波長に対する光路長の最大変化率を表す値A未満である
ことが望ましい。一方、
は、大きく、波長に対する光路の最小二次導関数すなわち「曲率」を表した値B
を超えることが望ましい。通過バンドまたはノッチの幅が△λで、λに対する1
の変動を放物線として近似するのが妥当な典型的なファイバの場合、Aは、約6
π/△λ以下、できれば、約4π/△λ以下にすべきであり、一方、Bは、約3
/(△λ)2以上にすべきであり、望ましいのは、約5/(△λ)2以上である。
図3に示す装置の場合、両光路とも、等しい長さzを備えており、また、両光
路とも、結合器間の全光路長zにわたってほぼ均一な伝搬定数を備えている(△
1=△βz)。一般的なファイバの時間遅延特性(β対λ)は、既知のところで
あり、従って、
の値は、任意のファイバ対に関して容易に計算することが可能である。
両光路とも等しい長さzを備える場合にファイバ特性を選択する原則について
別様に述べると、次のようになる。まず、幅△λの主たる通過バンドまたはノッ
チを得るためには、
zに関するこの値を式(2)に代入すると、
伝達関数の周期の最大変動を得るためには、式d[...]/dλを最大にすべ
きであるが、ここで、[...]は、式(4)における余弦の括弧でくくった引
数を表している。微分すると、次のようになる:
式5を検分することによって、この式は、所望の通過バンドまたはノッチの付近
の波長に関して△βと△βの二次導関数の積を最大化することよって、また、所
望の通過バンドまたはノッチの付近の波長に関して△βの一次導関数を最小化す
ることによって最大化することが可能である。
等しい光路長または等しくない光路長z1及びz2(ここで、z1は、一方の光
路長であり、z2はもう一方の光路長である)の場合に対する一般化は、次の通
りである:
d(△1)/dλ=z1d(β1)/dλ−z2d(β2)/dλ (6)
この式は、できるだけ小さくすべきであり、一方、
d2(△1)/dλ2=z1d2(β1)/dλ2−z2d2(β2)/dλ2 (7)
は、できるだけ大きくすべきである。項d2(β1)/dλ2及びd2(β2)/d
λ2は、光路を構成するファイバ内における拡散に比例する。換言すれば、光路
長z1及びz2によって重み付けが施される光路内の拡散は、最大非周期性にとっ
てできるだけ異なることが望ましい。
上述の干渉装置は、光学増幅器に関連して利用することが可能である。本発明
のもう1つの実施例による光増幅システムには、エルビウムをドープしたファイ
バの長いセクション60、及び、ファイバ60の一方の端部に接続された光学結
合器またはコンバイナ62を備えたファイバ増幅器が含まれている。コンバイナ
62は、入力光信号を受信するための入力ポート61を備えている。コンバイナ
62は、波長が約1.48μmのポンピング放射線源、例えば、こうした波長で
動作するダイオード・レーザに接続されたポートも備えている。ファイバ60の
もう一方の端部は、ポンピング放射線を阻止するが、1.55μmの付近の、増
幅器の動作バンド内の波長の放射線を通過させるようになっている標準的な周期
的マッハ・ツェンダ・フィルタのような従来のフィルタまたは波長選択装置に接
続されている。このフィルタの出力65は、増幅器の出力接続を構成する。こう
したファイバ増幅器は、当該技術において周知のところである。それらについて
は、例えば、その開示が参考までに本書に組み込まれている、Palais,F
iber Optic Communications,third edit
ion,pp.162−163(Prentice−Hall,Inc.199
2)に記載がある。該増幅器によって、約1.55μmに中心がくる比較的広い
波長範囲にわたって1を大幅に超える、入力61における入力パワーに対する出
力65における出力パワーの利得または比が生じる。図6には、光学増幅器の利
得と波長を関連づける典型的な伝達関数曲線70が示されている。図示のように
、利得曲線は、Waの半値幅を備えている。最大利得は、何桁にもなる、すなわ
ち、約40dBにも及ぶ可能性がある。
図5に示すように、それぞれ、幅W50の主通過バンドを有する上述の1つ以上
のフィルタが、増幅器と直列に接続される。従って、上述のタイプの第1のフィ
ルタは、入力ポートと直列に接続することができるので、該フィルタの出力ポー
ト38は、増幅器の入力ポートに接続され、一方、上述のような第2のフィルタ
の入力ポート361は、フィルタの出力ポート65に直接接続することができる
。該複合装置は、フィルタの伝達関数Iと増幅器の利得伝達関数の積である利得
曲線72の幅が狭く、急峻に形成される。該複合装置によれば、フィルタの通過
バンドW50内の周波数については、増幅器自体によって得られる利得のほぼ全て
が得られるが、この範囲外の周波数については急激なカット・オフが生じる。従
って、入力信号に、フィルタの通過バンドW50からわずかに外れた周波数のノイ
ズまたは望ましくない信号が混じっている場合、フィルタによって望ましくない
信号はほぼ除去される。また、フィルタがフィルタの入力ポートの前に配置され
ている場合、望ましくない信号は、増幅器におけるパワーを吸収可能になる前に
、除去される。従って、複合化されたフィルタ及び増幅器は、フィルタ通過バン
ドW50内の波長を用いる光通信システムに用いられる場合、優れた性能を発揮す
る。さらに、フィルタW50の通過バンドには、いくつかの波長分割多重化振幅変
調信号または波長変調信号に適応するのに十分な広さの波長範囲が含まれている
。エルビウムをドープしたファイバ増幅器に役立てる場合、主通過バンドは、中
心波長が約1.55マイクロメートルで、幅が少なくとも約10マイクロメート
ル、できれば、約10〜約40マイクロメートルが望ましい。
フィルタ伝達関数(図4)に増幅器の利得伝達関数70を掛けることによって
得られる合成利得関数(図6A)は、主通過バンドの中心波長λ0から遠い波長
では急激に降下する。フィルタが光学増幅器に直列に接続されている場合、増幅
器の利得バンド幅Waからかなり外れた波長におけるフィルタの特性は、ほとん
ど重要ではない。従って、フィルタだけの非周期的伝達関数(図4)には、伝達
関数が、波長の関数として急激な揺動を示す、主通過バンドの中心周波数から遠
い波長の領域57及び59が含まれている。このフィルタ伝達関数の領域は、増
幅器の利得特性によってほぼ除去される。換言すれば、フィルタの伝達関数は、
増幅器の利得伝達関数における中心ピークのカット・オフを急峻化することだけ
に依存している。より一般的には、本発明の望ましい実施例による非周期的マッ
ハ・ツェンダ・フィルタは、比較的通過バンドの広い別の装置と組み合わせるこ
とが可能であり、この場合、他の装置は、フィルタの伝達関数曲線の急激な揺動
領域における波長の除去に有効であるが、非周期マッハ・ツェンダ・フィルタの
主通過バンドを包含する比較的広い通過バンドを備えている。従って、該非周期
的フィルタによって、他の装置の通過バンドに対するカット・オフがより急峻に
なる。
本発明を逸脱することなく、上述の特徴に多様な変更及び組み合わせを施すこ
とが可能である。例えば、図3のフィルタの場合、第2のファイバによって形成
されるポート42は、出力ポート38の代わりの、または、出力ポート38以外
の出力ポートとして構成することが可能である。出力ポート42に関する伝送の
伝達関数は、ポート38に関する伝送の伝達関数の逆数である。従って、ポート
42における伝達関数の主バンドは、通過バンドではなくノッチである。
光路を形成するファイバが、結合器を越えて延びること、あるいは、入力ポー
ト及び出力ポートが、結合器間の光路を形成するファイバによって構成されるこ
とは、不可欠なものではない。例えば、図7に示す装置は、入力ポート136及
び出力ポート138を形成するファイバ111を備えている。2つの他のファイ
バ110及び112は、入力結合器116及び出力結合器118においてファイ
バ111に結合されている。結合器は、入力ポート136を介してファイバ11
1で供給される光が、ほぼ等しい割合でファイバ110及び112に結合され、
これらのファイバからの光が、再結合されて、ファイバ111に送り込まれるよ
うに構成されている。この構成の場合、ファイバ111の結合器間に延びる部分
は、光をそれと感知できるほど伝送しないので、省略することも可能である。マ
ルチファイバ結合器は、当該技術において既知のところであり、例えば、その開
示が参考までに本書に組み込まれている、譲渡先が同じ米国特許第5,351,
325号に記載がある。
図7にも示されているように、ファイバは一様な組成である必要はない。従っ
て、ファイバ110は一様な組成とし、一方、ファイバ112には、ファイバ1
10と同じ組成及び構造によるセクション113及び115と、光学特性の異な
るもう1つのセクション117を含むことが可能である。部分113及び115
は、△Lに影響しないので、伝達関数の計算を行う場合には、セクション117
の長さ、及び、ファイバ110の対応する長さだけしか考慮する必要がない。図
3に示す2ファイバ装置には、複合ファイバを用いることも可能である。例えば
、その開示が参考までに本書に組み込まれている、本件と同じ日付で提出された
、譲渡先が同じである、「Mach−Zehnder Interferome
tric Devices with Composite Fibers」と
題するWilliam J.Millerの米国特許出願には、マッハ・ツェン
ダ干渉装置における複合ファイバの利用が開示されている。
該フィルタは、光ファイバ導波管によって形成された光路に基づいて解説され
ているが、他の導波管を利用することも可能である。例えば、フィルタは、モノ
リシック平面導波管を用いて形成することも可能である。さらに、結合器は、テ
ーパ状オーバ・クラッド結合器である必要はなく、光路間において一様でないパ
ワー配分をもたらす結合器を利用することが可能である。このアプローチを利用
することによって、伝送される信号のサイズの縮小または変調深度の低減を行う
ことが可能である。
フィルタの伝達関数には、2つ以上の広い通過バンドまたはノッチを含むこと
が可能である。図8に示すように、伝達関数には、主波長λ150に中心がくる主
通過バンド以外に、中心波長λ140に中心がくる広いノッチ140を含むことこ
とが可能である。こうした伝達関数は、d(△l)/dλが、両波長λ140及び
λ150においてゼロか、または、ゼロに近い場合、及び、d2(△l)/dλ2が
、前記
両波長において比較的大きい場合に実現することができる。同様に、該装置は、
これらの条件が3つ以上の波長において満たされる、3つ以上の比較的広いバン
ドを有することが可能である。こうした構成の場合、広いバンドのうち最も広い
ものは、上述の主バンドとみなすことが可能である。主通過バンドの両側に比較
的広いノッチを備えたフィルタは、波長分割多重化システムの場合のような波長
選択フィルタとして利用することが可能であり、上述の光学増幅器のような装置
に関連して用いることも可能である。例1
ほぼ図3によるマッハ・ツェンダ・フィルタは、コア半径が3.80マイクロ
メートルで、(△ n)が0.35%の第1の階段ファイバから形成されている
。このフィルタに用いられている第2のファイバ、コア半径が0.82マイクロ
メートルで、(デルタ n)=1.80%である。本書で用いられる限りにおい
て、「デルタ n」という用語は、(n1−n2)を表しており、ここで、n1は
コアの屈折率であり、n2はクラッドの屈折率である。入力結合器と出力結合器
の間の物理的光路長は、23cmである。伝送スペクトルは、図4に示すとおり
である。λ1は約1.53μmであり、λ2は約1.57μmである。λ0は約1
.55μmである。
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フロントページの続き
(72)発明者 モダヴィス,ロバート エイ
アメリカ合衆国 ニューヨーク州 14870
ペインテッドポスト テイラー ストリ
ート 14
(72)発明者 ノーラン,ダニエル エイ
アメリカ合衆国 ニューヨーク州 14830
コーニング スカイライン ドライヴ
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