JPH1151291A - 摺動装置 - Google Patents

摺動装置

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JPH1151291A
JPH1151291A JP21308197A JP21308197A JPH1151291A JP H1151291 A JPH1151291 A JP H1151291A JP 21308197 A JP21308197 A JP 21308197A JP 21308197 A JP21308197 A JP 21308197A JP H1151291 A JPH1151291 A JP H1151291A
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JP
Japan
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friction
sliding
open pores
sliding device
lubricating liquid
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Application number
JP21308197A
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English (en)
Inventor
Masamitsu Taguchi
真実 田口
Shoichi Nakajima
昌一 中島
Tadashi Iizuka
董 飯塚
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Publication date
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Publication of JPH1151291A publication Critical patent/JPH1151291A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】摩擦部材の摩擦面間の潤滑状態を制御する。 【解決手段】可動電極14には、順次、絶縁体層15、
摺動体層16が積層されている。一方、固定電極12に
は、順次、絶縁体層13、可動電極14の摺動体層16
と摺動する多孔質焼結体層11が積層されている。多孔
質焼結体層11は、摺動面11aから他の面に抜ける開
放気孔11cを含んでいる。この開放気孔11cには、
多孔質焼結体層11との界面に電気二重層を形成するこ
とができる潤滑油が含油されている。対向する固定電極
12と可動電極14との間に電場が印加されると、開放
気孔11cの内部の潤滑油が、電気浸透によって、ζ電
位(潤滑油の内部とすべり面の間の電位差)に応じて定ま
る方向に向かって移動する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気浸透を利用し
た摩擦部材の摩擦面間の潤滑技術に関する。
【0002】
【従来の技術】摺動材の摺動面の摩耗や焼付きを防止す
るためには、適正量の潤滑油を摺動面間に介在させるこ
とが必要とされる。
【0003】そこで、多くの摺動材には、耐摩耗性に優
れ、且つ、潤滑油を浸透保持(含油)させるための開放気
孔を有する多孔質焼結体が利用されている。例えば、特
開昭62−27382号公報に開示されている多孔質炭
化珪素焼結体も、その内の一つである。このような多孔
質焼結体によって形成された軸受は、焼結含油軸受と呼
ばれ、摺動面の境界潤滑状態を維持するという特性か
ら、自動車部品、家電機器等の軸受として多く利用され
ている。
【0004】ところで、自動車燃費規制法案の成立等、
燃費向上に対する要求が高まりつつあるAT車において
は、湿式クラッチを僅かにスリップさせてエンジンのト
ルク変動に起因する振動を吸収することによって低速域
におけるロックアップを実現するスリップ制御ロックア
ップ機構の搭載が有望視されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記多孔質
焼結体によって形成された摺動材(以下、従来の摺動材
と呼ぶ)には、摺動材の摺動面間に介在する潤滑油量を
制御することができないという欠点があった。
【0006】従って、何らかの要因によって摺動材の摺
動面間が無潤滑となった場合に、摺動材の摺動面に摩耗
や焼付きの発生を阻止することが困難であった。例え
ば、焼結含油軸受等において、雰囲気中から摺動材の開
放気孔の内部に潤滑油がスムーズに浸透してゆかない場
合等には、摺動材の摺動面間が無潤滑となるため、摺動
材の摺動面に摩耗や焼付きが発生する可能性が高い。ま
た、潤滑油に対して洗浄作用を有する冷媒(特に、塩素
を含有しない代替冷媒)が使用されている冷媒圧縮機(冷
蔵庫、空調機等)においては、停止中に、互いに摺動し
合う摺動材(ベーン、ロータ)の摺動面間に介在していた
潤滑油が冷媒によって除去され、摺動材の摺動面間が無
潤滑となっているため、このままの状態で再起動させる
と、摺動材の開放気孔に保持された潤滑油が摺動面に新
たに染み出してくる迄に摺動材の摺動面に摩耗や焼付き
が発生することが可能性が高い。
【0007】一方、従来のAT車のスリップ制御ロック
アップ機構は、その構造が複雑であるため、製造コスト
等の観点からの問題が提起されている。
【0008】そこで、本発明は、摺動材の摺動面間の潤
滑状態を制御することができる摺動装置を提供すること
を目的とする。そして、こうした摺動装置を使用するこ
とによって、冷媒圧縮機その他の装置の摺動機構の信頼
性の向上、AT車のスリップ制御ロックアップ機構の複
雑な構造の簡略化を図らんとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明は、特定の部材に接触させるための摩擦面か
ら当該摩擦面以外の面に抜ける開放気孔を含んだ摩擦部
材を備えた摺動装置であって、前記摩擦部材の開放気孔
の内部に当該開放気孔の内壁との界面に電気二重層を形
成する潤滑液が含浸された状態において、当該潤滑液の
電気浸透を生じさせる方向の電場を形成する電場形成手
段とを備えることを特徴とする摺動装置を提供する。
【0010】本摺動装置によれば、電気浸透による潤滑
液の移動を利用することによって、部材の摩擦面上の潤
滑液量の制御することができる。即ち、摩擦部材の摩擦
面の潤滑状態を制御することができる。従って、本摺動
装置の摩擦部材を、例えば冷媒圧縮機のベーンとして使
用すれば、ロータとベーンとの間に潤滑液を積極的に供
給することができるようになるため、始動時等における
ロータ及びベーンの焼付き等の発生率を低減させること
ができる。同様な理由から、本摩擦装置を、例えば軸受
として利用しても、軸受及びシャフトの焼付け等の発生
率を低減させることができる。
【0011】また、前記摩擦部材の開放気孔の平均径
を、当該摩擦部材の内部領域において大きく、当該摩擦
部材の摩擦面側の表層領域において小さくすれば、開放
気孔の内部に潤滑液をより多く含浸させておくことがで
き、且つ、摩擦面からの潤滑液の除去(例えば、冷媒等
による)を防止することができる。
【0012】ところで、摩擦部材の摩擦面の潤滑状態の
制御が可能であるということは、摩擦部材の摩擦面の摩
擦係数の制御が可能ということでもある。従って、本摩
擦装置の摩擦部材を湿式クラッチ板として使用すれば、
複雑な機構によらずとも湿式クラッチ板の摩擦係数を制
御することができるようになるため、AT車のスリップ
制御ロックアップ機構の構造を簡略化することができ
る。
【0013】また、本摩擦装置に、前記潤滑液を溜める
ための潤滑液溜めを付加し、前記摩擦部材の摩擦面以外
の面側の前記開放気孔の端部を前記潤滑液溜め内部の潤
滑液に浸漬させておけば、摩擦部材に含まれる潤滑液量
を維持することができる。
【0014】また、本摩擦装置が前記開放気孔を複数含
んだ摩擦部材を備えている場合に、前記複数の開放気孔
の内部に前記潤滑液が含浸された状態において、前記複
数の開放気孔の内の一部の開放気孔の内部には正のζ電
位が発生し、残りの開放気孔の内部には負のζ電位が発
生するようにすれば、強制的に潤滑液を循環させること
ができるので、摩擦部材の摩擦面の冷却効果、摩擦部材
の摩擦面からの異物の除去効果等も期待できる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、添付の図面を参照しなが
ら、本発明に係る実施の一形態について説明する。
【0016】最初に、図1及び図2により、本実施の形
態に係る摺動装置の基本構造について説明する。
【0017】外部から及ぼされる力の方向Fに移動する
可動電極14には、順次、絶縁体15(以下、絶縁体層
15と呼ぶ)、耐摩耗性に優れた材料(例えば、焼結体、
金属等)で形成された摩擦部材16(以下、摺動層16と
呼ぶ)が積層してある。
【0018】一方、固定電極12には、順次、絶縁体1
3(以下、絶縁体層13と呼ぶ)、可動電極14の摺動体
層16との接触により摩擦(滑り摩擦、転がり摩擦)を生
じさせる摩擦部材である多孔質焼結体11(以下、多孔
質焼結体層11と呼ぶ)が積層してある。この多孔質焼
結体層11は、可動電極14の摺動体層16と接触する
面11a(以下、摩擦面11aと呼ぶ)から摩擦面11a
以外の何れかの面(例えば、11b等)に抜ける開放気孔
11cを含んでいる。但し、本実施の形態では、この開
放気孔11cの径Dを図2に示すように変化させてあ
る。多孔質焼結体層11の内部領域11B側において開
放気孔11cの平均径Dを大きくしておけば、より多く
の潤滑液を含浸させておくことができ、その一方で、多
孔質焼結体層11の表層領域11A側において開放気孔
11cの平均径Dを微細にしておけば、冷媒等によって
潤滑液が除去されにくくなるからである。尚、多孔質焼
結体層11の表層領域11A側における開放気孔11c
の平均径Dは、1.5μm以上5μm未満であることが
望ましい。多孔質焼結体層11の表層領域11A側にお
ける開放気孔11cの平均径Dが5μm以上である場合
には、電気浸透による潤滑液の移動が殆ど起こらず、
1.5μm未満である場合には、開放気孔11cの内部
から潤滑液が染み出す速度が遅過ぎるからである。
【0019】このような2層構造を有する多孔質焼結体
は、酸化珪素粉末(平均粒径1μm以下)とタングステン
粉末(平均粒径50μm程度)を重量比3:97の割合で
予め混合しておき、この混合物をタングステン粉末(平
均粒径50μm程度)上に層状に積み重ねて作成した圧
粉体を、80kgf/cm2程度の圧力で圧縮しながら
1350℃程度の温度で焼成することによって形成する
ことができる。尚、この多孔質焼結体は、潤滑液の一種
であるエステル油との接触によって負のζ電位を発生す
るものである。
【0020】或るいは、酸化アルミニウム(平均粒径1
μm以下)とチタン粉末(平均粒径50μm程度)を重量
比1:9の割合で予め混合しておき、この混合物をチタ
ン粉末(平均粒径50μm程度)上に層状に積み重ねて作
成した圧粉体を、約80kgf/cm2の圧力で圧縮し
ながら1500℃程度の温度で焼成することによっても
形成することが出来る。但し、この場合は、潤滑液の一
種であるエステル油との接触によって正のζ電位を発生
する多孔質焼結体となる。
【0021】或るいは、酸化アルミニウム(平均粒径1
μm以下)とクロム粉末(平均粒径50μm程度)を重量
比1:9の割合で予め混合しておき、この混合物をクロ
ム粉末(平均粒径50μm程度)上に層状に積み重ねて作
成した圧粉体を、約80kgf/cm2の圧力で圧縮し
ながら1600℃程度の温度で焼成することによっても
形成することが出来る。但し、この場合は、潤滑液の一
種であるエステル油との接触によって正のζ電位を発生
する多孔質焼結体となる。
【0022】尚、ここで例示した3つの多孔質焼結体の
表層領域、即ち、酸化珪素或るいは酸化アルミニウムを
含む表層領域は、絶縁性を有している。従って、これら
の内の何れかの多孔質焼結体を多孔質焼結体層11とし
て使用する場合には、可動電極14と摺動層16との間
に介在させてある絶縁層15、及び、固定電極12と多
孔質焼結体層11との間に介在させてある絶縁層13は
不要となる。
【0023】そして、この開放気孔11cの内部に潤滑
液が含浸されている状態において、電源17により、対
向する2枚の電極12,14の間に電場が印加される
と、開放気孔11cの内部の潤滑液が、電気浸透によっ
て、ζ電位(潤滑液の内部とすべり面の間の電位差)に応
じて定まる方向に向かって移動する。但し、ここで使用
する潤滑液は、多孔質焼結体層11との界面に電気二重
層を形成することができる特性を有しているものでなけ
ればならない。そのような潤滑液としては、エステル油
の他、例えば、カーボネート油、ポリエーテル油等、極
性が強い分子を含む油を挙げることができる。尚、こう
した潤滑液の特性は、多孔質焼結体層11の材料との関
係で定まるものであるため、事前の実験によって確認し
ておくことが望ましい。
【0024】こうした電気浸透による潤滑液の移動を利
用すれば、固定電極12の多孔質焼結体層11の摩擦面
11aの潤滑状態を制御することができる。例えば、潤
滑液との接触により負のζ電位が発生している場合に
は、電源17によって可動電極14から固定電極12に
向かう方向Aの電場を印加すれば、開放気孔11cの内
部から摩擦面11a上に潤滑液が染み出してくる。従っ
て、固定電極12の多孔質焼結体層11の摩擦面11a
を境界潤滑状態とすることができる。電源17によっ
て、これと逆方向Bの電場を印加すれば、摩擦面11a
上に染み出していた潤滑液が開放気孔11cの内部へと
戻ってゆく。従って、固定電極12の多孔質焼結体層1
1の摩擦面11aを無潤滑状態とすることができる。
【0025】ここで、このような効果を実験により確認
しておく。但し、ここでは、多孔質焼結体層11とし
て、酸化珪素とタングステンとを含む多孔質焼結体1,
2,3(以下、試料1,2,3と呼ぶ)を使用し、潤滑液と
して、エステル油を使用することとした。尚、試料1,
2,3に関する具体的な条件は、図3の通りである。
【0026】まず、アセトン洗浄直後の試料1,2に対
して、それぞれ、往復動摩擦摩耗試験機による摩擦試験
を実行した。具体的には、10cm/sec程度の速度
で往復運動する試料1,2の表面に、軸受鋼SUJ2製
のピンの先端(球形状)を押し当てた。その結果、図4に
示すように、潤滑液が含浸されていない試料1の摩擦面
の摩擦係数μが0.5程度であるのに対し、真空中で予
め潤滑液を含浸させておいた試料2の摩擦面の摩擦係数
は0.1〜0.2程度であることが確認された。
【0027】また、アセトン洗浄直後の試料3に対して
も、同様に、往復動摩擦摩耗試験機による摩擦試験を実
行した。但し、この場合、摩擦試験の開始当初には、固
定電極12から可動電極14に向かう方向Bの一定強度
の電場を印加しておき、適当なタイミングT(試料往復
50回目)で電場の方向を切り替えて、その後、試料往
復回数の増加と共に電場の強度を徐々に強めてゆくこと
とした。その結果、図4に示すように、試料3の摩擦面
の摩擦係数μは、摩擦試験の開始当初には、潤滑液が含
浸されていない試料1の摩擦面の摩擦係数μと同程度の
値(0.5程度)であるが、電場の方向を切り替えた時点
Tから急激に減少し始め、最終的には、潤滑液が含浸さ
れている試料2の摩擦面の摩擦係数μよりも小さな値
(0.05程度)に収束することが確認された。即ち、本
摺動装置の多孔質焼結体層11の摩擦面11aの潤滑状
態は、可動電極14と固定電極12との間に印加される
電場に応じて、無潤滑状態から境界潤滑状態まで変化す
ることが確認された。
【0028】更に、試料3の摩擦面の潤滑状態の制御可
能性を確認するため、アセトン洗浄直後の試料3に対し
て、再度、往復動摩擦摩耗試験機による摩擦試験を実行
した。但し、今度は、摩擦試験中の任意のタイミング
で、可動電極14から固定電極12に向かう方向Aの電
場の強度を切り替えることとした。その結果、図5に示
すように、試料3の摩擦面の摩擦係数μは、可動電極1
4と固定電極12との間に印加される電場の強度とほぼ
1対1の関係にあることが確認された。即ち、可動電極
14と固定電極12との間に印加される電場の強度を制
御することによって、多孔質焼結体層11の摩擦面11
aの潤滑状態の制御が可能となることが確認された。
【0029】また、更に、本摺動装置の多孔質焼結体層
11の起動時における耐摩耗性を確認するため、アセト
ン洗浄直後の試料1,2,3に対して、ピンオンディスク
摩擦摩耗試験機による摩耗試験を実行した。具体的に
は、軸受鋼SUJ2製のピンの先端をディスク型の試料
1,2,3の表面に荷重1kgf程度で押し当てた状態
で、ディスク型の試料1,2,3の回転の開始と停止を1
00回繰り返した。尚、ディスク型の試料1,2,3の回
転を停止させるタイミングは、ディスク型の試料1,2,
3の表面と軸受鋼SUJ2製のピンの先端との摺動速度
が3.0m/secに達した時点(ディスク型の試料1,
2,3の回転数が目標値に達した時点)から1分間が経過
した後である。但し、摩擦試験中、ピンと試料3との間
には、試料3の摩擦面上に潤滑液を染み出させるような
電場が印加されている。
【0030】その結果、図6に示すように、潤滑液が含
浸されていない試料1の摩擦面の表面粗さRaが、摩擦
試験の前後において0.04μmから2.5μmまで劣化
していたのに対し、真空中で予め潤滑液を含浸させてお
いた試料2の摩擦面の表面粗さRaは、摩擦試験の前後
において、せいぜい0.02μmから1.5μmまでしか
劣化していなかった。また、試料1の摩擦面における平
均摩耗量が5.6μmであったのに対し、試料2の摩擦
面における平均摩耗量は、せいぜい2.8μm程度であ
った。
【0031】一方、摩擦面上に潤滑液を染み出させてい
た試料3の摩擦面の表面粗さRaは、摩擦試験の前後に
おいて殆ど劣化していなかった。また、試料3の摩擦面
における平均摩耗量は、せいぜい0.2μm程度であっ
た。
【0032】これらの結果を比較すれば、同様な負加を
与えたにもかかわらず、試料3の摩擦面だけが、飛び抜
けて良好な状態を維持していることが確認された。即
ち、可動電極14と固定電極12との間に印加される電
場の強度を制御することによって、多孔質焼結体層11
の摩擦面11aの耐摩耗性が一層向上することが確認さ
れた。
【0033】ところで、多孔質焼結体層11の摩擦面1
1cにおける異物発生が問題視されるような場合には、
図7に示したような装置構成を採用することを推奨す
る。この摺動装置の固定電極12の多孔質焼結体層11
は、互いに材料組成の異なる多孔質焼結体11D,11
Eを組み合わせたものである。一方の多孔質焼結体11
Dは、所定の潤滑液との接触によって正のζ電位を発生
するものであり、他方の多孔質焼結体11Eは、所定の
潤滑液との接触によって負のζ電位を発生するものであ
る。従って、多孔質焼結体層11の開放気孔(不図示)に
適当な潤滑液を含浸させた状態で、例えば可動電極14
から固定電極12に向かう方向Aの電場を印加すると、
多孔質焼結体層11の開放気孔に含浸させた潤滑液は、
一部11Eの摩擦面から染み出した後、他の一部11D
の摩擦面から内部に戻るという循環運動を行う。
【0034】このように潤滑液を循環させれば、固定電
極12の多孔質焼結体層11と可動電極14の摺動層1
6との摩擦によって発生する摩擦熱を搬出する冷却効
果、及び、固定電極12の多孔質焼結体層11と可動電
極14の摺動層16との摺動によって発生する摩耗粉等
の異物を除去する浄化効果という有益な効果を達成する
ことができる。
【0035】最後に、本摺動装置の適用が有用な具体例
をいくつか挙げておく。但し、ここで例示した装置以外
にも、本摺動装置の適用により有用な装置があることは
言うまでもない。
【0036】本摺動装置は、図8に示すように、冷媒
(例えば、HFC-134a)を使用するロータリー型圧縮機のロ
ータ80及びベーン81として用いることができる。そ
れにより、始動時におけるロータ80及びベーン81の
焼付き等の発生率を低減させることができる。
【0037】具体的には、ベーン81の内壁部81aが
図1の固定電極12に相当し、ロータ80の端面部80
a及び本体部80bが図1の可動電極14及び多孔質焼
結体層11に相当する。ここで、ベーン81側とロータ
80側とに、図1の絶縁層13,15に相当する絶縁層
を設けていないのは、ベーン81の先端部分が絶縁性を
有しているためである。
【0038】そして、ロータ80の本体80bの一部分
は、タンク83内部の潤滑液(例えば、ポリオールエス
テル油)に浸漬されている。
【0039】また、ベーン81が出入りするシリンダ8
4の溝84aの内壁には、ロータ80の端面部80aと
シリンダとの間を絶縁する絶縁層85が形成してある。
【0040】このような構成によれば、ロータ80を偏
心回転させるシャフト82が停止している間に、ロータ
80の外周面80bとベーン81の先端との間に介在し
ている潤滑液が冷媒によって洗浄されても、始動の際
に、まず、ベーン81の内壁部81aとロータ80の端
面部80aとの間に所定の方向の電場を印加するように
しておけば、タンク83内部の潤滑液をロータ80の外
周面80bとベーン81の先端との間に供給することが
できる。従って、前述したように、本摺動装置によれ
ば、始動時におけるロータ及びベーンの焼付き等の発生
率の低減を達成することができる。
【0041】本摺動装置は、図9に示すように、AT車
の湿式クラッチとして用いることができる。それによ
り、スリップ制御ロックアップ機構の複雑な構造を簡略
化することができる。
【0042】具体的には、可動側クラッチ板90が、図
1の多孔質焼結体層11に相当し、可動側クラッチ板9
0に動力Wを伝達する可動側クラッチシャフト91及び
基台92が、図1の固定電極12に相当する。そして、
固定側クラッチ板92は、スチール材で形成されてお
り、固定側クラッチシャフト94及び基台95と共に、
図1の可動電極14に相当する。
【0043】そして、可動側クラッチ板90の開放気孔
には、予め、適当な潤滑液が含浸してある。
【0044】このような構成によれば、可動側クラッチ
シャフト91と固定側クラッチ板92との間に印加され
る電場の方向及び強度を制御するだけで、図8に示すよ
うに、エンジンの低速領域(100rpm未満)において
は、可動側クラッチ板90の摩擦面の摩擦係数が0.0
5程度にまで小さく、エンジンの高速領域(100rp
m以上)においては、可動側クラッチ板90の摩擦面の
摩擦係数が0.58程度にまで大きくなるようにするこ
とができる。従って、前述したように、本摺動装置によ
れば、スリップ制御ロックアップ機構の複雑な構造の簡
略化を達成することができる。
【0045】更に、本摺動装置は、図11に示すよう
に、軸受に適用することもできる。それにより、軸受部
材111a,111bの摩擦面の焼付き等の発生率を低
減させることができる。
【0046】具体的には、軸受ハウジング110が、図
7の固定電極12に相当し、その内側の軸受部材111
a,111bが、図7の多孔質焼結体層11E,11Dに
相当する。そして、この軸受によって支持されるS45
C製のシャフト112が、図7の可動電極14に相当す
る。ここで、軸受ハウジング110側とシャフト112
側とに、図7の絶縁層13,15に相当する絶縁層を設
けていないのは、軸受部材111a,111bの内周面
側が絶縁性を有しているためである。
【0047】そして、軸受部材111a,111bは、
タンク113内部の潤滑液に浸漬されている。
【0048】このような構成によれば、シャフト112
と軸受ハウジング110との間に所定の方向の電場を印
加し続けることにより、タンク113内部から軸受部材
111a,111bとシャフト112との間に潤滑液を
積極的に供給することができる。従って、前述したよう
に、本摺動装置によれば、軸受部材111a,111b
の摩擦面の焼付き等の発生率の低減を達成することがで
きる。また、シャフト112と軸受ハウジング110と
の間には新しい潤滑液が絶えず循環するため、シャフト
112と軸受部材111a,111bとの摩擦によって
発生する摩擦熱を搬出する冷却効果、及び、シャフト1
12と軸受部材111a,111bとの摺動によって発
生する摩耗粉等の異物を除去する浄化効果という有益な
効果を達成することもできる。
【0049】以上、摩擦部材として多孔質焼結体を使用
した場合について説明したが、多孔質焼結体以外の材料
でも、これと同様な効果を達成する摩擦部材を形成する
ことができる。例えば、多孔性を有する鉄材、多孔性を
有する銅材、多孔性を有するアルミ材、多孔性を有する
クロム材、多孔性を有するチタン材等に、スチーム処理
等を施せば、エステル油等の潤滑液との接触によって電
気二重層を形成する酸化膜が開放気孔の内壁に形成する
ことができる。即ち、各材料に適した処理を施すことに
よって、多孔質焼結体と同様な効果を達成する摩擦部材
を形成することが可能である。
【0050】
【発明の効果】本発明に係る摺動装置によれば、摩擦部
材の摩擦面の潤滑状態を制御することができる。
【0051】従って、例えば、この摺動装置を冷媒圧縮
機(冷蔵庫、空調機等)の摺動部等に適用すれば、起動に
際して発生しがちであった摩擦面の焼付き等を未然に防
止することができる。また、この摺動装置を軸受に適用
しても、摩擦面の焼付き等の発生率を低減させることが
できる。
【0052】また、この摺動装置をAT車の湿式クラッ
チに適用すれば、複雑な機構によらずとも湿式クラッチ
板の摩擦係数を制御できるようになるため、AT車のス
リップ制御ロックアップ機構の構造を簡略化することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態に係る摺動装置の基本構
成を説明するための図である。
【図2】図1の多孔質焼結体層の部分断面Eの拡大図で
ある。
【図3】摩擦試験用に準備した試料1,2,3の特性を示
した図である。
【図4】往復動摩擦摩耗試験機による試料1,2,3の摩
擦試験結果を示した図である。
【図5】往復動摩擦摩耗試験機による試料3の摩擦試験
結果を示した図である。
【図6】ピンオンディスク摩擦摩耗試験による摩擦試験
前後における試料1,2,3の摺動面の状態を示した図で
ある。
【図7】本発明の実施の一形態に係る摺動装置の基本構
成を説明するための図である。
【図8】本発明の実施の一形態に係る摺動装置を適用し
たロータリー圧縮機の基本構成を説明するための図であ
る。
【図9】本発明の実施の一形態に係る摺動装置を適用し
た湿式クラッチの基本構成を説明するための図である。
【図10】図9の湿式クラッチのジャダー特性の試験結
果を示した図である。
【図11】本発明の実施の一形態に係る摺動装置を適用
した軸受の基本構成を説明するための図である。
【符号の説明】
11…多孔質焼結体層 11a…多孔質焼結体層の摩擦面 11b…多孔質焼結体層の摩擦面以外の面 11c…多孔質焼結体層の開放気孔 12…固定電極 13…絶縁体層 14…可動電極 15…絶縁体層 16…摺動体層 17…電源

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】特定の部材に接触させるための摩擦面を有
    し、且つ、前記摩擦面から当該摩擦面以外の面に抜ける
    開放気孔を含んだ摩擦部材を備えた摺動装置であって、 前記摩擦部材の開放気孔の内部に当該開放気孔の内壁と
    の界面に電気二重層を形成する潤滑液が含浸された状態
    において、当該潤滑液の電気浸透を生じさせる方向の電
    場を形成する電場形成手段とを備えることを特徴とする
    摺動装置。
  2. 【請求項2】請求項1記載の摺動装置であって、 前記摩擦部材の開放気孔の平均径が、当該摩擦部材の内
    部領域において大きく、当該摩擦部材の摩擦面側の表層
    領域において小さくなることを特徴とする摺動装置。
  3. 【請求項3】請求項1または2記載の摺動装置であっ
    て、 前記潤滑液を溜めるための潤滑液溜めを備え、 前記摩擦部材の摩擦面以外の面側の前記開放気孔の端部
    は、前記潤滑液溜め内部の潤滑液に浸漬されることを特
    徴とする摺動装置。
  4. 【請求項4】請求項1、2及び3の内の何れか1項記載
    の摺動装置であって、 前記摩擦部材として、前記開放気孔を複数含んだ摩擦部
    材を備え、 前記複数の開放気孔の内部に前記潤滑液が含浸された状
    態において、前記複数の開放気孔の内の一部の開放気孔
    の内部には正のζ電位が発生し、残りの開放気孔の内部
    には負のζ電位が発生することを特徴とする摺動装置。
  5. 【請求項5】摩擦部材の摩擦面に、特定の部材を摺動さ
    せる摺動機構を有する圧縮機であって、 前記摺動機構として、請求項1、2、3及び4の何れか
    1項記載の摺動装置を備えることを特徴とする圧縮機。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009144786A (ja) * 2007-12-12 2009-07-02 National Institute For Materials Science 接触摩擦力調整方法とこの方法を利用したクラッチ構造とブレーキ構造

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