【発明の詳細な説明】
CoA−非依存性トランスアシラーゼの阻害およびアポトーシス
発明の分野
本発明は動物における細胞増殖および癌の新規な治療法の知見に関する。
発明の背景
細胞増殖および癌に対するアルキル−リゾ−リン脂質の効果について膨大な量
の文献がある。他のアルキル−リゾ−リン脂質と共に、1-O-オクタデシル-2-
O-メチル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(ET-18-O-CH3)が白血病、癌
腫および肉腫細胞系の細胞増殖を減少させることが示されている(Andreesenら
、Blood54:519−523(1979);Modolellら、Can.Res.39:4681−4686(1979)
;Berdelら、1981;Hoffimanら、Blood63:545−552(1984);Morris-Natsc
hkeら、J.Med.Chem.29:2114−2117(1986);Brachwitzら、Lipids 22:8
97−903(1987);Luら、Can.Res.52:2806−2812(1992))。この増殖に対する
効果は、これらの化合物が、正常な骨髄細胞、好中球および皮膚線維芽細胞など
の、非癌細胞の増殖を遮断しないことで選択的であることは明らかである(Hoff
manら、Blood63:545−552(1984);Vedonckら、Can.Res.50:4020−4025(199
0);Langenら、Anticancer Res.12:2109−2112(1992))。最近の研究は、E
T-18-O-CH3が特定の細胞型にてアポトーシスを誘発すると示唆している(Mo
llinedoら、Biochem.Biophys.Res.Commun.192:603−609(1993))。しか
し、アポトーシスに至る生化学的工程は明らかにされていない。
インビトロにおける癌細胞増殖の遮断に加えて、ET-18-O-CH3および他の
アルキル−リソ−リン脂質を用いての動物の治療が腫瘍の大きさを減少させると
する証拠がある。Hilgardら、Eur.J.Cancer Clin.Oncol.24:1457−1461(
1988);Bergerら、Lipids 22:935−942(1987);およびScherfら、Lipids22
:927−929(1987)を参照のこと。加えて、ET-18-O-CH3は、白血病および
癌種に罹患している患者の治療にて効能を示す(Berdelら、Cancer 50:2011−
2015
(1982);Andreesenら、J.Natl.Can.Inst.70:623−627(1983);Andreesen
、Prog.Biochem.Pharmacol.22:118−131(1988))。
これらの抗増殖性アルキル−リゾ−リン脂質の作用機構は理解できないままで
ある。ET-18-O-CH3の細胞性代謝はほとんど観察されないため、ET-18-O
-CH3による作用は親化合物それ自体によるものであると考えられる(Wilcoxら
、Lipids22:800−807(1987);Luら、Biochem.Cell Biol.71:122−126(19
93))。血小板活性化因子(PAF)に構造上類似するが、血小板活性化因子のレ
セプターの拮抗剤はアルキル−リゾ−リン脂質の抗増殖作用を遮断しないため、
これらの化合物が該レセプターを介して作用するかは明らかでない(Workmanら
、Biochem.Pharmacol.41:319−322(1991))。アルキル−リゾ−リン脂質の抗増
殖作用について可能性のある他の機構が記載されている:イノシトール−リン酸
形成の減少を伴うホスファチジルイノシトール−ホスホリパーゼCの阻害(IC50
〜40μM)(Powisら、Cancer and Metastasis Rev.13:91−103(1994)
);タンパク質キナーゼCおよびNa、K−ATPaseなどの膜結合酵素の変化(Z
hengら、Can.Res.50:3025−3031(1990);Hoffmanら、Acta LipidsLipid
Metab.1127:74−80(1992));アシル−CoAアシルトランスフェラーゼ活性の
減少(IC50〜80μM)(Herrmannら、J.Biol.Chem.17:7742−7747(1986
));およびリン脂質代謝の低下(Modolellら、Cancer Res.39:4681−4686(19
79);Herrmann,D.J.、Natl.Can.Inst.75:423−430(1985))。しかし、
これらの予想機構はアルキル−リゾ−リン脂質のすべての作用を説明するのには
十分ではなく、前記した細胞事象を阻害するのに必要なアルキル−リゾ−リン脂
質の濃度はその抗増殖作用で要する濃度(3−10μM)よりも高い。加えて、
これらの酵素を阻害する他の化合物は、その物が抗増殖剤ではない(Danielら、
Lipids 22:851−855(1987))。最後に、リン脂質代謝の低下と増殖の遮断に対
する種々の細胞系の感受性の間に相関関係はないという報告がある(Luら、Can
.Res.52:2813−2817(1992);Luら、Can.Res.52:2806−2812(1992))。
補酵素A−非依存性トランスアシラーゼ(CoA-IT)はアラキドン酸が炎症
細胞
のリン脂質分子種の間を移動するのに関与する酵素である。CoA-ITは1−ア
シル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(1
−アシル−2−アラキドノイル−GPC)などの1−アシル含有のリン脂質のsn
−2位からアラキドン酸を除去する。ついで、CoA-ITは、そのアラキドン酸
を1−アルキル-2−リゾ−GPCおよび1−アルケニル−2−リソ−sn−グ
リセロ−3−ホスホエタノールアミンなどの適当なリソ−リン脂質アクセプター
に移す(Sugiuraら、J.Biol.Chem.262:1199−1205(1987);Kramerおよ
びDeykin、Biol.Chem.258:13806−13811(1983);Chiltonら、J.Biol.Ch
em.258:7268−7271(1983))。この活性は炭素数20の脂肪アシル基について選
択的であり、炎症細胞がその放出前にアラキドン酸を特異的リン脂質プールに移
動させる機構である(WinklerおよびChilton、Drug News Perspec.6:133−
138(1993);Suyderら、J.Lipid Mediat.10:25−31(1994))。
動物にて用いるための非毒性薬理学的および毒物学的特性を有する化学療法剤
を見出す必要性がある。これらの化合物は疾患細胞の細胞増殖を遮断し、白血病
などの癌および乾癬などの他の増殖性疾患および症状を治療する可能性を提供す
るものである。
発明の要約
本発明は、酵素CoA-ITを阻害することで、哺乳動物における細胞増殖を減
少、阻害または低下させ、哺乳動物、好ましくはヒトにてアポトーシスを誘発す
る方法に関する。このCoA-ITの阻害により誘発される作用は構造上異なる化
合物により得ることができる。したがって、本発明は、細胞増殖の治療を必要と
する、哺乳動物、好ましくはヒトにて、そのヒトに有効量のCoA-IT阻害剤の
化合物またはその医薬上許容される塩を投与することによる、細胞増殖を治療す
るためのCoA-IT阻害剤を使用するものである。細胞増殖に付随する、本明細
書での治療に好ましい病状は、乾癬、慢性関節リウマチまたはアテローム性動脈
硬化症である。
本発明の別の態様は、癌細胞増殖の治療を必要とする哺乳動物、好ましくはヒ
トにて該増殖を治療する方法であって、有効量のCoA−非依存性トランスアシ
ラーゼ(CoA-IT)阻害剤またはその医薬上許容される塩を該哺乳動物に投与
することからなる方法にある;ただし、その阻害剤は。1−O−オクタデシル−
2−O−メチル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(ET-18-O-CH3)また
はアルキルリゾリン脂質類似体以外の化合物である。また、CoA-IT阻害剤は
有効量のET-18-O-CH3またはアルキルリゾリン脂質類似体と共同して投与し
てもよい。癌細胞増殖に伴う、本明細書での治療に好ましい病状は、白血病であ
る。
本発明の別の態様は、アポトーシスの誘発を必要とする哺乳動物にてそれを誘
発する方法であって、有効量のCoA−非依存性トランスアシラーゼ(CoA-I
T)阻害剤またはその医薬上許容される塩をヒトまたは哺乳動物に投与すること
からなる方法にある;ただし、その阻害剤は。1−O−オクタデシル−2−O−
メチル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(ET-18-O-CH3)またはアルキ
ルリゾリン脂質類似体以外の化合物である。また、CoA-IT阻害剤は有効量の
ET-18-O-CH3またはアルキルリゾリン脂質類似体と共同して投与してもよい
。
図面の簡単な説明
図1はCoA-IT活性に対するET-18-O-CH3の効果を示す。U937細胞か
らのミクロソームを指示濃度のET-18-O-CH3と一緒に10分間インキュベー
トし、ついでCoA-IT活性を本明細書の方法欄の記載に従って測定した。デー
タは3回測定した平均±SDであり、3回の試験の代表値である。
図2はCoA-IT活性についてのET-18-O-CH3阻害の速度を示す。U937
ミクロソームを本明細書の方法欄に記載されているように指示濃度のET-18-O
-CH3および1−アルキル−2−リゾ−GPCと一緒にインキュベートした。そ
の反応にて得られた生成物の量を測定した。1/速度対1/[生成物]の二重逆
数プロットを示す。
図3はHL-60細胞増殖に対するET-18-O-CH3(A)、7−(3,4,5−
トリフェニル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−イミダゾール−1−イル)ヘプ
タン−リン酸ジエチル(B、化合物III)および2−[2−[3−(4−クロロ
−3−トリフルオロメチルフェニル)ウレイド]−4−トリフルオロメチルフェ
ノキシ]−4,5−ジクロロベンゼンスルホン酸(C、化合物I)の作用を示す
。
HL-60細胞を時間0で指示濃度の化合物で処理し、24時間および48時間後
にトリパンブルー色素排除により生存細胞数を測定した。
図4はHL-60細胞におけるDNA合成に対するET-18-O-CH3の作用を示
す。HL-60細胞を種々の濃度の化合物またはビヒクルで処理する。細胞を収穫
する24時間前に、細胞に[3H]チミジンのパルスを照射した。指示時点で、
細胞を収穫し、洗浄し、溶菌させ、DNAに取り込まれた[3H]の量を、本明
細書の方法欄の記載に従って測定した。結果は3回測定した平均±SDであり、
3回の試験の代表値である。
図5はHL−60細胞におけるDNAフラグメント化に対するET-18-O-C
H3、2−[2−[3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)ウレ
イド]−4−トリフルオロメチルフェノキシ]−4,5−ジクロロベンゼンスル
ホン酸(化合物I)および7−(3,4,5−トリフェニル−2−オキソ−2,
3−ジヒドロ−イミダゾール−1−イル)ヘプタン−リン酸ジエチル(化合物II
I)の作用を示す。HL−60細胞を指示濃度の化合物で処理し、24時間後に
方法欄の記載に従ってDNAフラグメント化を測定する。対照はビヒクル処理で
あり、矢印は内部標準断片を示す。
図6はHL-60細胞のホスファチジルエタノールアミン亜種におけるアラキド
ン酸の含量に対するET-18-O-CH3、2−[2−[3−(4−クロロ−3−ト
リフルオロメチルフェニル)ウレイド]−4−トリフルオロメチルフェノキシ]
−4,5−ジクロロベンゼンスルホン酸(化合物I)および7−(3,4,5−
トリフェニル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−イミダゾール−1−イル)ヘプ
タン−リン酸ジエチル(化合物III)の作用を示す。HL-60細胞をET-18-O-
CH3(25μM)、化合物I(50μM)、化合物III(25μM)またはビヒクル
で48時間処理し、AA含量を方法欄の記載に従って測定した。
図7は阻害剤と一緒に20時間インキュベーションした後の慢性骨髄性白血病
細胞による[3H]チミジンの取込みを示す。
発明の詳細な説明
CoA-ITが「ガン」細胞増殖の調節、特に、アポトーシスにおいて重大な事
象
を表していることが判明した。したがって、CoA-ITの抑制は、増殖性疾患お
よびその処置に対する重要な治療効果を有する。
1−[3H]アルキル−2−リゾ−GPCのアシル化による生成物[3H]1−
アルキル−2−アラキドノイル−GPCの生成を測定することにより、ET−1
8−O−CH3のU937ミクロソームにおけるCoA−IT活性に対する影響
を試験した。その結果(図1)は、ET−18−O−CH3が、0.5μMのI
C50を有するCoA−IT活性の強力な抑制剤であり、3μMで完全抑制が観察
されたことを示している。ET−18−O−CH3とCoA−ITとの相互反応
をさらに調査するため、動力学的分析実験を行った。それらのデータ(図2)は
、ET−18−O−CH3が、競合競争モデルに最も適合する様式でCoA−I
T活性を抑制することを示した。この物質の見掛けのKmは、0.013+0.
005μMで、ET−18−O−CH3のKisは1.9±0.9μMであった。
これらの結果は、ET−18−O−CH3がCoA−IT抑制剤で、特異的な、
予測できる様式でCoA−ITと相互反応し、CoA−ITの抑制は、ミクロソ
ーム膜上での洗剤作用のように非特異的効果ではなかったことを示している。
上記のごとく、ET−18−O−CH3は、ガン細胞の増殖を阻止することが
証明された。したがって、本発明の、もう1つ別の態様は、ET−18−O−C
H3が、酵素CoA−ITの強力な抑制剤であり、それ故、治療の必要な哺乳動
物におけるCoA−IT介在疾患または疾病の処置に有用であるという知見であ
る。この方法は、そのような哺乳動物に、CoA−IT抑制剤として、1−O−
オクタデシル−2−O−メチル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(ET−1
8−O−CH3)の有効量を投与することからなり、ただし、疾患または疾病は
、細胞増殖の抑制またはアポトーシス以外のものである。
ET−18−O−CH3がCoA−ITの強力な抑制剤であるとの知見は、他
の構造的に異なるCoA−IT抑制剤がET−18−O−CH3に匹敵する様式
で増殖に影響するかという疑問を生じさせる。図3に、ET−18−O−CH3
と、2つの別々の群のCoA−IT抑制剤である化合物のHL−60細胞の増殖
に対する影響を示す。ET−18−O−CH3は、用量および時間依存的に培養
物におけるHL−60細胞の下図を減少させた(図3)。また、2つの他の構造
の異なるCoA−IT抑制剤は、ET−18−O−CH3に匹敵する様式で細胞
数の増加を阻止した(図3)。3つの抑制剤全てが、24〜48時間の間に観察さ
れる細胞生存率の減少を起こさせた。
CoA−IT抑制剤の抗増殖作用を確認するため、新しいDNAの合成を[3
H]チミジン取り込みによってモニターした。図4に示す結果は、ET−18−
O−CH3がDNA合成において時間および濃度依存性の減少を起こしたことを
示している。同様な結果は、2−[2−[3−(4−クロロ−3−トリフルオロ
メチルフェニル)ウレイド]−4−トリフルオロメチルフェノキシ]−4,5−
ジクロロベンゼンスルホン酸および7−(3,4,5−トリフェニル−2−オキ
ソ−2,3−ジヒドロイミダゾール−1−イル)ヘプタンホスホン酸ジエチルエ
ステルでも見られた。同時に、これらのデータは、酵素CoA−ITを阻止する
能力を共有することに加え、ET−18−O−CH3、2−[2−[3−(4−
クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)ウレイド]−4−トリフルオロメチ
ルフェノキシ]−4,5−ジクロロベンゼンスルホン酸および7−(3,4,5
−トリフェニル−2−オキソ−2,3−ジヒドロイミダゾール−1−イル)ヘプ
タンホスホン酸ジエチルエステルは、全て、HL−60細胞の増殖および生存率
を減じることを示している。
細胞数の減少に示された主なメカニズムは、プログラムされた細胞死またはア
ポトーシスの誘発である(Bergamaschi et al.,Haematologica 79:86-93(1994)
)。アポトーシスの誘発は、ET−18−O−CH3での処理後に見られるHL−
60細胞数の抑制に多いに関係していることが提唱されている(Mollinedo et a
l.,Biochem.Biophys/Res.Commun.192: 603-609(1993))。他のCoA−IT
抑制剤もアポトーシスを起こさせ得るか、否かを決定するため、つぎの群の実験
を行った。これらの研究では、アポトーシスは、CoA−IT抑制剤での処理前
後のヌクレオソーム間のDNAフラグメンテーション・パターンを検査すること
により決定された。ET−18−O−CH3(6μM)、7−(3,4,5−トリ
フェニル−2−オキソ−2,3−ジヒドロイミダゾール−1−イル)ヘプタンホ
スホン酸ジエチルエステル(50μM)および2−[2−[3−(4−クロロ−
3−トリフルオロメチルフェニル)ウレイド]−4−トリフルオロメチルフェノ
キシ]−4,5−ジクロロベンゼンスルホン酸(50μM)で24時間処理した
HL−60細胞は、全て、DNA「はしご(ladder)」フラグメンテーションのパ
ターンを示した(図5)。HL−60細胞におけるDNAはしご形成は、CoA−
IT抑制剤の用量に依存し、3時間以内に起こり、CoA−IT抑制剤での処理
後、24時間で最大となった。
CoA−IT抑制剤での好中球の処理は、アラキドン酸の可動化およびエイコ
サノイドの形成を間接的に阻止することができる。他の、より直接的なアラキド
ン酸代謝の抑制剤がHL−60細胞でアポトーシスを誘発するか否かの1群の実
験を行った。2つのホスホリパーゼA2イソタイプならびに5−リポキシゲナー
ゼおよびシクロオキシゲナーゼの抑制剤を試験して、アポトーシスを、DNA「
はしご」の存在で決定した。これらの実験の結果を表1に示す。表1において、
HL−60細胞を、誘発濃度の化合物で24時間処理し、本明細書の「方法」の
セクションの記載に従ってDNAフラグメンテーションを測定した。また、ジリ
ュウトン(Zileuton)(Carter et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.256:929-937(
1991));インドメタシン(Shen,T.Y,K.D.RainfordおよびM.R.C.Path編
,抗炎症および抗リウマチ薬,149-159頁,CRC Press,Inc.,Boca Raton,
FL(1985));AA−CF3−ケトン(Street et al.,Biochemistry 32:5935.59
40(1993))参照。
これらの実験から2つの重要な知見が誘導された。それらは、1)アポトーシ
スが、5−リポキシゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ、14kDaホスホリパー
ゼA2または85kDaホスホリパーゼA2の抑制剤によって起こらないこと、お
よび2)広範に分岐構造を有するCoA−IT抑制剤(ET−18−O−CH3
、2−[2−[3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)ウレイド
]−4−トリフルオロメチルフェノキシ]−4,5−ジクロロベンゼンスルホン
酸、7−(3,4,5−トリフェニル−2−オキソ−2,3−ジヒドロイミダゾ
ール−1−イル)ヘプタンホスホン酸ジエチルエステルおよび7−(1,4,5
−トリフェニルイミダゾール−2
−イルオキシ)ヘプタンホスホン酸ジエチルエステル)がアポトーシスを誘発す
ることである。
本発明の1つの態様は、CoA−ITの抑制がアポトーシスにおいて1つの役
割を有し、ET−18−O−CH3、2−[2−[3−(4−クロロ−3−トリ
フルオロメチルフェニル)ウレイド]−4−トリフルオロメチルフェノキシ]−
4,5−ジクロロベンゼンスルホン酸および7−(3,4,5−トリフェニル−
2−オキソ−2,3−ジヒドロイミダゾール−1−イル)ヘプタンホスホン酸ジ
エチルエステルのようなCoA−IT抑制剤が、全て、HL−60細胞のアポト
ーシスを起こしたことを証明することである。2−[2−[3−(4−クロロ−
3−トリフルオロメチルフェニル)ウレイド]−4−トリフルオロメチルフェノ
キシ]−4,5−ジクロロベンゼンスルホン酸および7−(3,4,5−トリフ
ェニル−2−オキソ−2,3−ジヒドロイミダゾール−1−イル)ヘプタンホス
ホン酸ジエチルエステルの、CoA−ITを抑制する能力以外の何らかの化学的
構造がアポトーシスを起こさせないことを確かめるため、近い構造を有するアナ
ログ(CoA−IT抑制剤活性は有しない)を試験した。後者の化合物(化合物
II、VおよびVI;2−[2−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニ
ル]ウレイド−4−トリフルオロメチルフェノキシ]−5−(1,1−ジメチル
プロピル)ベンゼンスルホンアミド;5−(3,4,5−トリフェニル−2−オ
キソ−2,3−ジヒドロイミダゾール−1−イル)吉草酸;および6−(1,4
,5−トリフェニルイミダゾール−1−イルオキシ)ヘキサン酸エチル)は、ア
ポトーシスを誘発せず、CoA−ITにより調節されるキイ過程の1つが、細胞
アポトーシスであることが示唆された。
アラキドネート改造自体がアポトーシスに影響しているようである。この推定
を確認するため、本発明者らは、CoA−IT抑制剤処理の24および48時間
後のホスファチジルエタノールアミンおよび1−エーテル結合ホスファチジルコ
リンにおけるアラキドネートの量を測定した。酵素CoA−ITは、アラキドネ
ートのこれらのリン脂質への移動を統合する(Chilton et al.,Biochemistry 34
:5403-5410(1995))。ホスファチジルエタノールアミンからアラキドネートの
時
間依存的ロスがあり、HL−60細胞におけるアポトーシスと相関した(図6)。
ホスファチジルエタノールアミンからのロスに加えて、CoA−IT抑制剤もア
ラキドネートの1−エーテル結合ホスファチジルコリンへの取り込みを阻止した
。
長い間、多くの「ガン」細胞が高レベルの1−エーテル結合リン脂質、特に、
1−アルケニルホスファチジルエタノールアミンを含有していると認識されてい
る(Snyder et al.,Can.Res.28:972-978(1968);およびSnyder et al.,
Can.Res.29:251-257(1969))。さらに、Chabot et al.(Cancer Res.49:44
41-4445(1989))は、ET−18−O−CH3に対する感受性が白血病セルライン
のエーテルリピド含量と相関することを証明した。これらの研究をヒト白血病患
者へ拡大することにより、彼らは、治療に対する応答と、白血病細胞における1
−エーテル結合リン脂質・プールのサイズとの間に相関があることを示した(Cha
bot et al.,Can.Res.50:7174-7178(1990))。CoA−ITの阻害がAAの
1−エーテル結合リン脂質・プールへの「充填(loading)」を予防している可能
性がある。CoA−IT抑制剤が1−エーテル結合ホスファチジルエタノールア
ミンおよびホスファチジルコリンにおけるアラキドネート含量を劇的に減少させ
ることを示す図6の証拠は、この主張を強力に指示している。
つぎの図は、これらの点を説明するものである。アラキドネートの1−エーテ
ル結合リン脂質への取り込みの正常な経路は、アラキドネート−CoAへ変換さ
れ、ついで1−アシル−2−アラキドネート−ホスホコリンのような1−アシル
結合リン脂質へ取り込まれるアラキドン酸に関するものである。ついで、酵素C
oA−ITは、アラキドネート部分を1−アシル結合リン脂質から1−エーテル
結合リン脂質へ移動させる。これらの1−エーテル結合リン脂質は、ガン細胞に
おいて高い。CoA−IT抑制剤は、アラキドネートの1−エーテル結合リン脂
質への移動を阻止し、ガン細胞から、それらが生存するためのキイ成分を奪い取
る。このように、CoA−ITの抑制は、ガン細胞にアポトーシスを誘発し、そ
れらの生育および増殖に劇的に影響する。
総じて、このデータは、ここに記載する、CoA−IT活性の抑制がアポトー
シスの誘発における細胞の生育と増殖の減少をもたらし、増殖性、ガン性疾病の
治療に有用であるという知見を支持している。したがって、本発明は、増殖性、
ガン性疾病の治療のためのCoA−IT抑制方法を提供するものである。
ここで用いる「アルキルリゾリン脂質」(ALP)、「アルキルリゾリン脂質・
アナログ」および「エーテル結合脂質およびそのアナログ」なる用語は、当業者
によく知られた用語であり、とくに定義を付加する必要はない。一般に、これら
の用語は、グリセロール骨格のsn−1位にアルキル鎖を有するエーテル結合リ
ン脂質である化合物を包含する。これらの化合物は、1−O−アルキル−2−O
−メチル−rac−グリセロ−3−ホスホコリンの誘導体、1−O−ヘキサデシ
ル−2−アセタール−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(PAF)の誘導体、
エステル−2−リゾリン脂質(2−PLC)の誘導体またはリソホスファチジル
コリン(2−LPC)の誘導体であってよい。エーテル−リゾリン脂質はまた、
アルキルリソPCまたはALPとも称され、アルキルホスホコリンはまたAPC
とも称され、ヘキサデシルホスホコリンはHPCと称される。この用語に包含さ
れる適当な化合物には、限定するものではないが、Schick et al.,Lipids,2
2(11)904-910(1987)、Morris-Natschke et al.,J.Med.Chem.,29(10)21
14-2117(1986)、Goto et al.,Anticancer Research,14: 357-362(1994)、L
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-322(1991)、Kohler et al.,Inflammation,17(3),245-261(1993)、Brachw
iz et al.,Lipids,22(11)897-903(1987)、Berdel,W.,Lipids,22(11997
0-973(1987)、Danhauser et al.,Lipids,22(11)911-915(1987)、Danhauser
-Riedl et al.,J.Lipid Metabolism,2,271-280(1990)、Lonmeyer et a
l.,Biochem.Pharm.,45(1)77086(1993)、Ries,et al.,Chemistry and
Physics of Lipids,61225-234(1992)に記載の化合物ならびにGuivisdalsky
et al.,J.Med.Chem.,33(9),2614-2621(1990)およびPignol et al.,Anti
-Cancer Drugs,3,599-608(1992)に記載される硫黄および窒素結合を有する
誘導体が包含され、これらの記載を引用して、ここに組み込む。
本明細書の合成化学のセクションで挙げた化合物に加え、本発明に有用なCo
A−IT抑制剤は、米国特許出願番号08/252717、08/252712
、08/252714、08/252715、08/252716、08/25
2718、08/252851、08/102877、08/254564およ
びその発行されたPCT出願WO/93/16674に見られ、それらの記載も
引用して、ここに組み込む。
a:2−[2−[3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)ウレイ
ド]−4−トリフルオロメチルフェノキシ]−4,5−ジクロロベンゼンスルホ
ン酸
b:2−[2−[3,5−ビス(トリフルオロメチルフェニル)ウレイド]−4
−トリフルオロメチルフェノキシ]−5−(1,1−ジメチルプロピル)ベンゼ
ンスルホンアミド
c:7−(3,4,5−トリフェニル−2−オキソ−2,3−ジヒドロイミダゾ
ール−1−イル)ヘプタンホスホン酸ジエチル
d:7−(1,4,5−トリフェニルイミダゾール−2−イルオキシ)ヘプタン
ホスホン酸ジエチル
e:5−(3,4,5−トリフェニル−2−オキソ−2,3−ジヒドロイミダゾ
ール−1−イル)吉草酸
f:6−(1,4,5−トリフェニルイミダゾール−1−イルオキシ)ヘキサン
酸エチル
g:2−[2−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルスルホンアミド
ール]−4−トリフルオロメチルフェノキシ]安息香酸
材料および方法
材料
1−[3H]アルキル−2−リソ−GPC(30−60Ci/ミリモル)をNe
w England Neuclear(Boston、MA)より購入した。通常の実験化合物をSigm
a Chemical Co.(St.Louis、MO)より購入した。1−アルキル−2−リソ
−GPCをBiomol(Plymouth Meeting、PA)より購入した。シリカゲルG
プレートはAnaltech Inc.(Newark、DE)からのものであった。特に脂肪酸
不含ウシ血清アルブミンをCalbiochem(SanDiego、CA)より入手した。
化合物
ET-18-O-CH3をBiomolより入手し、CHCl3中の100mMストックと
して製造し、ついで細胞懸濁液に添加する前にRPMI-1640(1:>16000
)に希釈した。以下の化合物を本明細書に記載の合成操作に従って製造した:本
明細書の記載の、7−(3,4,5−トリフェニル−2−オキソ−2,3−ジヒ
ドロイミダゾール−1−イル)ヘプタンホスホン酸ジエチル;7−(1,4,5
−トリフェニルイミダゾール−2−イルオキシ)ヘプタンホスホン酸ジエチル、
5−(3,4,5−トリフェニル−2−オキソ−2,3−ジヒドロイミダゾール
−1−イル)吉草酸、6−(1,4,5−トリフェニルイミダゾール−1−イル
オキシ)ヘキサン酸エチル、2−[2−[3,5−ビス(トリフルオロメチルフ
ェニ
ル)ウレイド]−4−トリフルオロメチルフェノキシ]−5−(1,1−ジメチ
ルプロピル)ベンゼンスルホンアミド、2−[2−[3,5−ビス(トリフルオ
ロメチル)フェニルスルホンアミドール]−4−トリフルオロメチルフェノキシ
]安息香酸ナトリウム塩およびジロイトン(Zileuton)。2−[2−[3−(4
−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)ウレイド]−4−トリフルオロメ
チルフェノキシ]−4,5−ジクロロベンゼンスルホン酸をBader Chemical
Co.より入手した。インドメタシンをSigma Chemicalsより入手した。アラキ
ドニルートリフルオロメチルケトンをCayman Chemicals(Ann Arbo、MI)
より購入した。これらの化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)中のストッ
ク(5−100mM)として製造、DMSO中に希釈し、DMSO濃度を用いて
0.1−1%の範囲にある最終濃度を得た。TNF(Sigma)を蒸留水中のスト
ックとして製造し、希釈して所望の濃度を得た。
細胞の調製
HL-60細胞をAmerican Type Culture Collectionより入手し、10%胎
児ウシ血清を補足したRPMI-1640中、37℃、5%CO2で増殖させた。細胞
を0.03〜0.08x106細胞/mlでT-フラスコに接種し、0.5〜0.6x
106細胞/mlで実験に用いた。薬物を照射する時点での細胞濃度が重要なパ
ラメーターであることがわかった(Fujiwaraら、1994)。
増殖およびアポトーシス
細胞の機能状態を3種類の方法で測定した。第1の細胞生存力を図3に示され
るように細胞のトリパンブルー色素排除能により評価した。
第2のより感受的かつ定量的な方法は、合成の指標として、[3H]チミジン
の新たに形成されたDNAへの取り込みを用いてDNA合成を測定することであ
った。これらのアッセイにおいて、HL-60細胞を種々の濃度の化合物またはビ
ヒクルで処理し、異なる期間(1〜3日)、細胞培養中に保持した。ついで、細
胞に[3H]チミジン(1μCi)のパルスを与え、24時間後に培養物より取り出
し、PBSで2回洗浄し、0.2N NaOHで30分間処理し、つづいて15%ト
リクロロ酢酸を2時間にわたって添加した。各細胞の全試料を、真空下でGF/
C
Watmanガラスマイクロフィルターを介して濾過し、5%トリクロロ酢酸で3回
洗浄した。[3H]チミジンのフィルターに結合したDNAへの取り込み量を液体
シンチレーション分光器を用いて定量した;本明細書の図4を参照のこと。
DNAフラグメント化を測定する最後の方法で、細胞死の量が測定されるだけ
でなく、機構に対する理解が得られる。細胞が壊死ではなく、プログラムされた
細胞死またはアポトーシスを受けると、細胞性DNAはオリゴーヌクレオソーム
フラグメントに分解され、それはゲル上で見分けることができる(Kerrら、Can
cer 73:2013−2026(1994))。細胞を異なる濃度の化合物またはビヒクルで種々
の時間(3−24時間)処理した。洗浄した細胞を200μLの冷滅菌性デタージ
ェント緩衝液(10mM Tris-HCl、pH7.5、1mM EDTA、0.2%T
ritonX-100)に再び懸濁させることで該細胞を溶解させ、氷上で30分間インキ
ュベーションした。細胞性タンパク質およびRNAを75μg/mL RNAse
と37℃で1時間、ついで200μg/mLプロテイナーゼKおよび0.5%S
DS(最終的)と37℃で1時間インキュベーションすることにより酵素的に分
解させた。DNAの内標準を細胞溶解の間に加え、その回収率を細胞性DNAフ
ラグメントの抽出の効率を確認するのに用いた。試料を等容量の冷緩衝液飽和フ
ェノールで2回、フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:2
4:1、v/v)で1回、およびクロロホルムで1回洗浄した。NaCl(300
mM最終的)および冷エタノールを加え、その溶液を攪拌し、一夜放置した。エ
タノールを除去し、その試料およびDNAb p標体(Sigma)を臭化エチジウム
を有するTBE緩衝液(45mM Tris.pH8.0、45mMホウ酸、1mME
DTA)の1%アガロースゲル上に流した。DNAをUV光(UVP Gel Doc
umentationシステム)の下に可視化し、DNAフラグメントの大きさを分子量標
体と比較する;本明細書の図5を参照のこと。
CoA-IT活性
CoA-IT活性を、以前に記載されているように(Winklerら、Biophys.Act
a Lipids Metab.1081:339-346(1991))、100μlの全容量にて測定した。
100000xg、60分の遠心分離に付した後のミクロソーム(5−20μg
タンパク質)(Winklerら、前掲)を1mM EDTAを含むPBS中に所望のタ
ンパク質濃度にまで希釈した。0.25mg/mlの脂肪酸に乏しいウシ血清ア
ルブミンを含むアッセイ緩衝液の1−[3H]アルキル−2−リソ−GPC(0.
1μCi/試験管)および1μMの最終濃度の冷1−アルキル−2−リソ−GP
Cを添加することにより反応を開始させた。反応を37℃で10分間行った。反
応系を止め、脂質を抽出し(BhghおよびDyer、Can.J.Biochem.Physiol.37:9
11−917(1959))、クロロホルム/メタノール/酢酸/水(50:25:8:4、
v/v)のTLCでクロロホルム抽出物のアリコート由来の物質を分離し、放射
線走査(Bioscan)により可視化した。ついで、生成物の1−[3H]アルキル
−2−アシル−GPCを削ぎ落とし、液体シンチレーション分光器により定量し
た;本明細書の図1を参照のこと。
CoA-IT反応の動力学におけるET-18-O-CH3の作用を試験した。種々の
濃度のET-18-O-CH3(0−15μM)を可変濃度の基質1−アルキル−2−
リソ−GPC(0.01−3μM)と混合した。CoA-IT活性を有するU93
7ミクロソームを加え、反応を37℃で3分間進行させた。形成された生成物の
量を前記のように測定し、いずれの濃度でも添加した基質の5%以下であった。
Cleland,W.、Methods Enzymol.63:103-138(1979)の方法を用いて、結果
分析を行った;本明細書の図2を参照のこと。
リン脂質種、亜種の分離およびアラキドン酸含量の測定
HL-60細胞を化合物またはビヒクルに暴露し、48時間インキュベーションし
た。その時点で、抽出によりインキュベーションを終え(BlighおよびDyer、Ca
n.J.Biochem.Physiol.37:911.917(1959))、有機相中のリン脂質種を分離し
、順相HPLC(Chilton、Methods Enzymol.187:157-166(1990))で収集し
た。100mM Tris HCl緩衝液(pH7.4)中の20−80単位のバシラス・
セレウス(Bacillus cereus)ホスホリパーゼC(Sigma Type XIII)を2.5
−6時間添加することによりリン脂質をジラジルグリセロール(diradylglycero
l)に変え、ついで無水酢酸およびピリジンと一緒にインキュベーションするこ
とにより1,2−ジラジル−3−アセチルグリセロールに変えた(Chilton、Me
thods Enzymol.
187:157-166(1990))。そのリン脂質亜種をベンゼン/ヘキサン/エチルエーテ
ル(50:45:4、v/v)のTLCで分離した。アラキドン酸のリン脂質亜
種中含量を、75%エタノール中2M水酸化カリウムを用いて行った塩基加水分
解(30分、60℃)後に測定した。等量の水を加えることで反応を止め、その
反応混合物をHClでpH3に調整した。遊離脂肪酸をエチルエーテルで抽出し
、溶媒を窒素下で除去し、遊離脂肪酸をペンタフルオロベンジルエステルに変え
、GC/MSにより分析した(Hubbardら、Prostaglandins 22:349−355(1986
))。オクタ重水素アラキドン酸を内標準として用い、既知量のアラキドン酸を用
いて得られた標準曲線を用いてモル量を測定した;本明細書の図6を参照のこと
。
タンパク質分析
Bradford.M.、Anal.Biochem.72:248−254(1976)の方法を用い、Bio-Rad
(Hercules、CA)より購入した試薬を用いてタンパク質濃度を測定した。
ヒト白血病細胞系
問題として重要なことは、ヒト白血病細胞系HL-60のCoA-ITの阻害が実
際のヒト白血病細胞に移行していることがわかるかどうかである。本発明は、種
々の構造上関連しない化合物によるCoA-ITの阻害が、ヒト患者より直接取り
出した癌細胞にてアポトーシス応答を誘起しうることを明らかにしている。
方法:
骨髄性白血病の患者より血液を得た。これらの患者からの白血病細胞をCoA-
ITの阻害剤で処理し、[3H]チミジンの新たに合成されたDNAへの取り込み
をモニターすることにより増殖を測定した。図7から明らかなように、慢性骨髄
性白血病細胞による[3H]チミジンの取り込みが、標記した阻害剤と20時間一
緒にインキュベーションした後に示されている。ヒト患者からの白血球細胞を、
指示濃度のビヒクル(DMSO)、7−(3,4,5−トリフェニル−2−オキソ
−2,3−ジヒドロ−イミダゾール−1−イル)ヘプタン−リン酸ジエチル(化
合物III)または2−[2−[3−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェ
ニル)ウレイド]−4−トリフルオロメチルフェノキシ]−4,5−ジクロロベ
ンゼンスルホン酸(化合物I)とインキュベーションした。20時間処理した後、
[3H]チミジンのDNAへの取り込みを本明細書の方法欄の記載に従って測定
した。
この増殖の阻害機構を定義するために、これら細胞の形態学試験を電子顕微鏡
を用いて行った。ヒト白血病細胞をビヒクル(DMSO)または7−(3,4,
5−トリフェニル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−イミダゾール−1−イル)
ヘプタン−リン酸ジエチル(化合物III)(25μM)で24時間処理させて、ヒ
ト白血病細胞の電子顕微鏡分析を行った。この処理の後、標準法に従って電子顕
微鏡分析用に細胞を調製した。ビヒクル(DMSO)で処理した細胞は、細胞プ
ロセス、代謝顆粒および多小裂片の非凝縮細胞核で表されるような活性な生存細
胞である。反対に、CoA-IT阻害剤で処理した細胞は、細胞核の凝縮、細胞プ
ロセスの低下およびアポトーシス体の出現を含め、アポトーシスの典型的な形態
学的変化を示す。図7ないし11を、以下にてさらに詳細に記載する:
さらに、アポトーシス工程がCoA-IT阻害剤での処理により開始することを
確認するために、アポトーシスの特徴である、DNAフラグメントの存在につい
て細胞を試験した。この試験はDNAの鎖破壊体をターミナルトランスフェラー
ゼを用いてフルオレセインdTUPで標識することでなされた。DNAフラグメ
ント化の蛍光分析を、ビヒクル(DMSO)または7−(3,4,5−トリフェ
ニル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−イミダゾール−1−イル)ヘプタン−リ
ン酸ジエチル(化合物III)(25μM)で24時間処理したヒト白血病細胞に対
して行った。Boehringer Mannheimからのキット(カタログ番号168479
5)を製造者の指示に従って用い、細胞をDNA鎖破壊体について染色した。ビ
ヒクル(DMSO)で処理した細胞はほとんどないし全く蛍光染色作用がなされ
ず、それに対してCoA-IT阻害剤で処理した細胞はヒト癌細胞のCoA-IT阻
害がこれら細胞にてアポトーシスを誘発したことを示す著しい染色作用があった
。
治療の方法
治療的に用いる場合、本発明の化合物は、一般に、意図する投与経路および標
準的な製薬慣習に基づいて選択された医薬担体と混合することにより得られる標
準的医薬組成物にて投与される。例えば、該医薬組成物は澱粉またはラクトース
のような賦形剤を含有する錠剤形、または単独もしくは賦形剤と混合したカプセ
ル、卵形物(ovule)またはロゼンジにて、あるいはフレーバー剤または着色剤
を含有するエリキシルまたは懸濁液の形態にて経口投与することができる。その
医薬組成物は、例えば、静脈内、筋肉内または皮下的に非経口注射することがで
きる。非経口投与の場合、その組成物を、他の物質、例えば、血液と等張な溶液
を形成するのに十分な塩またはグルコースを含有していてもよい、滅菌水溶液の
形態で用いるのが最適である。選択される投与形ならびに有効量は、とりわけ、
治療される病状に応じて変化するであろう。投与方法および投与量の選択は当業
者の範囲内にある。
経口投与した場合に活性である本発明の化合物、特に本明細書に記載の化合物
またはその医薬上許容される塩は、液体、例えばシロップ、懸濁液またはエマル
ジョン、錠剤、カプセルおよびロゼンジとして処方できる。
液体処方は、一般に、本発明の化合物または医薬上許容される塩の、適当な液
体担体(複数でも可)、例えば、エタノール、グリセリン、非水性溶媒、例えば
ポリエチレングリコール、油、または沈殿防止剤、保存剤、フレーバー剤もしく
は着色剤を含む水中懸濁液または溶液からなるであろう。
錠剤形の組成物は、固体処方を製造するのに慣用的に用いられているいずれか
適当な医薬担体(複数でも可)を用いて製造できる。そのような担体として、ス
テアリン酸マグネシウム、澱粉、ラクトース、シュークロースおよびセルロース
が挙げられる。
錠剤形の組成物は慣用的カプセル化操作を用いて製造することができる。例え
ば、活性成分を含有するペレットを、標準担体を用いて製造し、ついでハードゼ
ラチンカプセルに充填することができる;別法として、いずれか適当な医薬担体
(複数でも可)、例えば、水性ガム、セルロース、ケイ酸塩または油を用いて分
散液または懸濁液を調製し、ついでその分散液または懸濁液をソフトゼラチンカ
プセルに充填することもできる。好ましくは、組成物は錠剤またはカプセルなど
の単位投与形である。
典型的な非経口組成物は、化合物または医薬上許容される塩の滅菌水性担体ま
たは非経口的に許容される油、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピ
ロリドン、レクチン、落花生油またはゴマ油中溶液または懸濁液からなる。また
、該溶液を凍結乾燥し、ついで投与の直前に適当な溶媒で復元することもできる
。
適当な坐剤処方は、この経路で投与した場合に活性である化合物またはその医
薬上許容される塩と、ポリマー性グリコール、ゼラチンまたはカカオバターなど
の結合および/または滑沢剤あるいは低融点植物または合成油脂とからなる。
本明細書に記載の化合物の場合、経口投与用の投与単位は、各々、約1ないし
250mg(非経口投与の場合、好ましくは0.1ないし25mgを含有する)
の化合物、または遊離塩基として換算したその医薬上許容される塩を含有する。
本発明の医薬上許容される化合物は、正常には、一日の投与方法にて対象に投
与される。成人患者の場合、これは、例えば、1mgと500mgの間、好まし
くは1mgと250mgの間の経口用量、または0.1mgと100mgの間、
好ましくは0.1mgと25mgの間の静脈内、皮下または筋肉内用量の化合物
あるいは遊離塩基として換算したその医薬上許容される塩である;該化合物を一
日に1ないし4回投与する。
細胞増殖を阻害することで利益を受ける病状は、慢性リウマチ関節炎、乾癬、
アテローム性動脈硬化症および白血病または充実性腫瘍などの癌を包含するが、
これに限定されるものではない。
合成化学
さらに詳述せずに、当業者は、前記説明を用いて、本発明を最も充分に本発明
を利用することができると思われる。以下の実施例は、本発明化合物の合成をさ
らに説明する。したがって、以下の実施例は、単に説明するものであり、如何な
る場合も本発明を限定しようとするものではない。
温度は、特記しない限り、摂氏で示す。実施例1
2−[2−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルスルホンアミド]−4− トリフルオロメチルフェノキシ]安息香酸の製造
a)2−(2−ニトロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)安息香酸メチル
アルゴン下、サリチル酸メチル(15.2g、0.1モル)、4−クロロ−3−ニ
トロベンゾトリフルオリド(22.6g、0.1モル)、および炭酸カリウム(8.3
g、0.06モル)のジメチルホルムアミド(100mL)中混合物を攪拌し、油
浴中で70分間、150℃に加熱した。該反応混合物を酢酸エチル(300mL
)で希釈し、濾過し、残留物を酢酸エチルで洗浄した。合わせた濾液を蒸発させ
、粗製生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキ
サン)に付すことにより精製して、薄黄色固体として標記化合物を得た;融点6
9−70℃。
b)2−(2−アミノ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)安息香酸メチル
2−(2−ニトロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)安息香酸メチル(26
g、0.076モル)および10%パラジウム−炭(1g)の酢酸エチル(400m
L)中混合物をパーボトル中55psi で2時間水素添加した。該反応混合物をア
ルゴンでフラッシュし、セライト(Celite(登録商標))を介して濾過し、蒸発
させた。粗製生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル
/ヘキサン)に付すことにより精製して、白色固体として標記化合物を得た。1
H NMR(250MHz,CDCl3)d7.91(dd,1H),7.45−7.5
3(m,1H),7.17−7.24(m,1H),6.88−7.03(m,3H),6
.78(d,1H),4.25(br s,2H),3.84(s,3H)。
c)2−(2−アミノ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)安息香酸
2−(2−アミノ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)安息香酸メチル(19.
2g、0.062モル)および2N水酸化ナトリウム(65mL、0.13モル)の
テトラヒドロフラン(100mL)中混合物をアルゴン下で3時間攪拌しつつ5
0℃に加温した。テトラヒドロフランを蒸発させ、水溶液を希HClで酸性化し
、酢酸エチルで抽出し、無水MgSO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。粗製生
成物をEtOAc/ヘキサンから再結晶して、白色結晶固体として標記化合物を得
た。1H NMR(250MHz,CD3OD)d7.91(d,1H),7.50(d
d,1H),7.22(dd,1H),7.11(d,1H),6.97(d,1H),
6.86(d,1H),6.78(d,1H)。
d)2−(2−アミノ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)安息香酸ベンズヒ
ドロール
アルゴン下、50℃で、2−(2−アミノ−4−トリフルオロメチルフェノキ
シ)安息香酸(5g、0.017モル)のEtOAc(50mL)中混合物を攪拌した
。トルエン(50mL)に溶解したジフェニルジアゾメタン(3.3g、0.017
モル)の溶液を滴下した。溶媒を蒸発させ、残留物をフラッシュクロマトグラフ
ィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン)に付すことにより精製して、粘性の
ある油状物として標記化合物を得た。1H NMR(250MHz,CDCl3)_
8.02(dd,1H),7.45−7.52(m,1H),7.20−7.33(m,1
H),7.07(s,1H),6.96−7.07(m,2H),6.86−6.91(m
,1H),6.73(d,1H),4.00(br s,2H)。
e)2−[2−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルスルホンアミトセ]
−4−トリフルオロメチルフェノキシ]安息香酸ベンズヒドロール
2−(2−アミノ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)安息香酸ベンズヒドロ
ール(4g、8.6ミリモル)をピリジン(25mL)に溶解させ、アルゴン下、
室温で攪拌した。3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホニルクロリ
ド(4.05g、12.9ミリモル)を滴下し、該混合物を16時間攪拌した。溶
媒を蒸発させ、残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチ
ル/ヘキサン)に付すことにより精製して、白色固体として標記化合物を得た。1
H NMR(250MHz,CDCl3)d8.25(br s,1H),8.15(s
,2H),7.99(dd,1H),7.85−7.92(m,2H),7.1−7.5(
m,13H),7.01(s,1H),6.72(d,1H),6.45(dd,1H)。
f)2−[2−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルスルホンアミド]−
4−トリフルオロメチルフェノキシ]安息香酸
2−[2−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルスルホンアミド]−4−
トリフルオロメチルフェノキシ]安息香酸ベンズヒドロール(3.7g、5ミリモ
ル)を酢酸エチル(125mL)に溶解させ、10%パラジウム−炭(0.5g)
上、50psi で0.75時間水素添加した。触媒を濾去し、溶媒を蒸発させて、
粗製生成物を得、これをフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチ
ル/ヘキサン/ギ酸)に付すことにより精製した。酢酸エチル/ヘキサンからの
再結晶により、白色結晶固体として標記化合物を得た;融点133−134℃。
同様の方法で、2−[2−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルスルホ
ンアミド]−4−トリフルオロメチルフェノキシ]安息香酸のナトリウム塩を製造
することもできる。実施例2
2−[2−[3−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ウレイド] −4−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−4,5−ジクロロベンゼンスルホン酸 のナトリウム塩
a)2−(2−ニトロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)−4,5−ジクロ
ロベンゼン
アルゴン下、120℃で24時間、3,4−ジクロロフェノール(25グラム(
以下、gと記す)、0.153モル)、4−クロロ−3−ニトロベンゾ−トリフルオ
リド(52g、0.23モル)および炭酸カリウム(63g、0.459モル)のジ
メチルホルムアミド(450mL)中混合物を攪拌した。該反応混合物を濾過し
、濾液を蒸発させた。残留物を酢酸エチルに溶解させ、水、食塩水で洗浄し、無
水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残留物をフラッシュクロ
マトグラフィー(シリカゲル、塩化メチレン/ヘキサン)に付して、黄色油状物
として標記化合物を得た。
b)2−82−ニトロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)−4,5−ジクロ
ロベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩
発煙硫酸(8ミリリットル(以下、mLと記す))を−20℃に冷却し、該溶液
に塩化メチレン(8mL)中の2−(2−ニトロ−4−トリフルオロメチル−フェ
ノキシ)−4,5−ジクロロベンゼン(8g、22.8ミリモル)を添加した。該混
合物を15分間攪拌し、次いで、氷中で急冷した。酢酸エチルで抽出し、次いで
、
フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、塩化メチレン/イソプロパノール
/水酸化アンモニウム)に付して、標記化合物を得た。1H NMR(400M
Hz,CD3OD)d8.31(d,1H),8.11(s,1H),7.87(dd,1
H),7.4(s,1H),7.16(d,1H)。
c)2−(2−アミノ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)−4,5−ジクロ
ロベンゼンスルホン酸
2−(2−ニトロ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)−4,5−ジクロロベ
ンゼンスルホン酸のアンモニウム焔(5g、11.2ミリモル)を酢酸(75mL
)に溶解させた。該混合物を水(75mL)で希釈し、三塩化チタンの20%水
溶液(65mL)を添加した。水性処理後、粗製生成物をフラッシュクロマトグ
ラフィー(シリカゲル、塩化メチレン/エタノール/水酸化アンモニウム)に付
して、標記化合物を得た。1H NMR(400MHz,CD3OD)d8.02(s
,1H),7.17(d,1H),7.12(d,1H),6.94(dd,1H),6.
87(s,1H)。
d)2−[2−[3−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ウレイ
ド]−4−(トリフルオロメチル9フェノキシ]−4,5−ジクロロベンゼンスルホ
ン酸のアンモニウム塩
アルゴン下、2−(2−アミノ−4−トリフルオロメチルフェノキシ)−4,5
−ジクロロベンゼンスルホン酸(2g、4.8ミリモル)および4−クロロ−3−
トリフルオロメチルフェニルイソシアナート(1.11g、5ミリモル)のピリジ
ン(20mL)中溶液を72時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残留物をフラッシ
ュクロマトグラフィー(シリカゲル、塩化メチレン/エタノール/水酸化アンモ
ニウム)に付して、標記化合物を得た。1H NMR(400MHz,CD3OD)
d8.61(d,1H),8.08(s,1H),7.95(d,1H),7.60(dd,
1H),7.43(d,1H),7.30−7.36(m,2H),7.10(s,1H)
。
e)2−[2−[3−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ウレイ
ド]−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−4,5−ジクロロベンゼンスルホ
ン酸のナトリウム塩
アルゴン下、2−[2−[3−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニ
ル]ウレイド]−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−4,5−ジクロロベンゼ
ンスルホン酸のアンモニウム塩(2.1g、3.28ミリモル)および重炭酸ナト
リウム(0.331g、3.94ミリモル)のメタノール(20mL)および水(2
mL)中混合物を30分間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残留物をフラッシュクロ
マトグラフィー(C18逆相、MeOH/H2O)に付し、凍結乾燥後、標記化合物
を得た。MS(ES)m/e643.8[M+H]+。実施例3
7−(3,4,5−トリフェニル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−イミダゾール −1−イル)ヘプタン−ホスホン酸ジエチル
1,4,5−トリフェニル-3−(7−ブロモヘプチル)イミダゾール−2−オン
(1.0g)およびトリエチルホスファイト(1.66g)のキシレン(5ml)中溶
液を還流温度で40時間加熱した。該溶液を油状物に蒸発させ、シリカゲル上で
クロマトグラフィー(酢酸エチル/エタノール)に付した。
得られた油状物をジエチルエーテル中に取り、濾過し、蒸発させて、透明な油
状物として7−(3,4,5−トリフェニル−2−オキソ−2,3−ジヒドロイミダ
ゾール-1−イル)ヘプタンホスホン酸ジエチルを得た(0.84g、75%)。測定
値:C,70.11;H,7.37;N,4.94%;C32H39N2O4P;理論値
:C,70.31;H,7.19;N,5.12%。実施例4
7−(1,4,5−トリフェニルイミダゾール−2−イルオキシ)ヘプタンホスホ ン酸ジエチル
1,4,5−トリフェニル−3−(7−ブロモヘプチル)−イミダゾール−2−オ
ン(1.0g)および亜リン酸トリエチル(1.66g)のキシレン(5ml)中混合
物を還流温度で40時間加熱した。該溶液を油状物に蒸発させ、エタノールから
再蒸発させた。該油状物をエーテルおよび水に分配させ、エーテル溶液を分離し
、硫酸マグネシウムで乾燥させ、油状物に蒸発させ、これをシリカゲル上でクロ
マ
トグラフィー(酢酸エチル)に付して、油状物として7−(1,4,5−トリフェ
ニルイミダゾール−2−イル−オキシ)ヘプタンホスホン酸ジエチルを得、これ
を静置して白色固体に固化した(0.83g、75%)。融点76−7℃。測定値:
C,70.49;H,7.40;N,4.94%;C32H39N2O4P;理論値:C
,70.31;H,7.19;N,5.12%。実施例5
6−(1,4,5−トリフェニルイミダゾール−2−オキシ)ヘキサン酸エチル
アルゴン下、6−ブロモヘキサン酸エチル(13.38g)、1,4,5−トリフェ
ニルイミダゾール(6.24g)、炭酸カリウム(13.82g)およびブタン−2−
オン(250ml)の混合物を還流させながら24時間撹拌した。該混合物を濾過
し、濾液を蒸発させた。残留物をシリカゲル上でクロマトグラフィーに付して1
0%酢酸エチルで溶離して、6−(1,4,5−トリフェニルイミダゾール−2−
オン-3−イル)ヘキサン酸エチル(5.61g)および標記化合物(2.21g)を
得た。融点102−103.5℃。測定値:C,76.73;H,6.73;N,
6.11%;C29H30N2O3;理論値:C,76.63;H,6.65;N,6.1
6%。
該化合物は、DE 3,228,271 A1(引用して本明細書の記載とする)に開示さ
れている方法に従って合成することもできる。実施例6
5−(1,4,5−トリフェニルイミダゾール−2−オン−3−イル)吉草酸
a)5−(1,4,5−トリフェニルイミダゾール−2−イルオキシ)吉草酸エチ
ル
1,4,5−トリフェニルイミダゾール−2−オンをブタノン中の5−ブロモ吉
草酸エチルおよび炭酸カリウムで処理し、クロマトグラフィー処理に付した後、
5−(1,4,5−トリフェニルイミダゾール−2−イルオキシ)吉草酸エチルを得
た。融点95−96℃。測定値:C,76.5;H,6.5;N,6.3%;C28
H28N2O3);理論値:C,76.3;H,6.4;N,6.4%。
b)5−(1,4,5−トリフェニルイミダゾール−2−オン−3−イル)吉草酸
(1.25g)、10%水酸化ナトリウム水溶液およびエタノール(50ml)の混合
物を1時間撹拌した。該溶液を酸性化し、沈殿物を回収した。エタノールからの
再結晶により、標記化合物(0.66g)を得た。融点130−132℃。測定値
:C,75.80;H,5.91;N,6.67%;C26H24N2O3;理論値:C
,75.71;H,5.86;N,6.79%。実施例7
2−[2−[3−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ウレイド]−4− トリフルオロメチルフェノキシ]−5−(1,1−ジメチルプロピル)ベンゼンスル ホンアミドの製造
a)2−(ニトロ)−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ−4−(1,1−ジメ
チルプロピル)ベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩
ジメチルホルムアミド(25ml)中、5(1,1−ジメチルプロピル)−2−(ヒ
ドロキシル)ベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩(1.0g、0.00383モル)
、4−ブロモ−3−ニトロベンゾトリフルリド(1.5g、0.00557モル)
およびK2CO3(1.0g、0.00766モル)を150℃で16時間混合した
。該反応をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、塩化メチレン/イソプ
ロパノール/水酸化アンモニウム)に付すことにより精製して、標記化合物(1
.0g、58%)を得た。1H NMR(250MHz,CD3OD)d8.22(d,
1H),8.05(d,1H),7.70−7.60(dd,1H),7.55−7.45
(dd,1H),7.10−7.00(m,2H),1.78−1.65(q,2H),1
.42(s,6H),0.78−0.64(t,3H)。
b)2−ニトロ−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ−4−(1,1−ジメチ
ルプロピル)ベンゼンスルホニルクロリド
2−ニトロ−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ−4−(1,1−ジメチルプ
ロピル)ベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩(500mg、0.0011モル)お
よび塩化チオニル(5.0ml、0.0688モル)を30分間混合した。ジメチル
ホルムアミド5滴を添加すると、5分以内に色変化が示された(紫色から黄色へ)
。反応を1時間混合した。TLCによって決定した。塩化チオニルを蒸発させ、
標
記化合物をさらに精製したり特徴付けしたりせずに用いた。
c)2−ニトロ−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ−4−(1,1−ジチメ
ルプロピル)ベンゼンスルホンアミド
水酸化アンモニウム(20ml)中、2−ニトロ−4−8トリフルオロメメチル
)フェノキシ−4−(1,1−ジメチルプロピル)ベンゼンスルホニルクロリドを0
℃で1時間混合した。該反応を酢酸エチルで抽出し、有機層をMgSO4で乾燥さ
せ、濾過し、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサ
ン)に付して、標記化合物(300mg、61%)を得た。1H NMR(250
MHz,CD3OD)d8.35(s,1H),8.00(s,1H),7.85(d,1
H),7.65(dd,1H),7.19(t,2h),1.73(q,2H),1.38(
s,6h),0.76(t,3H)。
d)2−アミノ−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ−4−(1,1−ジメチ
ルプロピル)ベンゼンスルホンアミド
酢酸エチル(25ml)中、2−ニトロ−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ
−4−(1,1−ジメチルプロピル)ベンゼンスルホンアミド(300mg、0.00
07モル)を混合し、アルゴン下、パラジウム−炭(100mg)を添加した。該
混合物を58psi で5時間水素添加し、メタノールおよびクロロホルムと一緒に
濾過し、蒸発させた。標記化合物をさらに精製したり特徴付けしたりせずに用い
た。
e)2−[2−[3−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ウレイド]−
4−トリフルオロメチルフェノキシ]−5−(1,1−ジメチルプロピル)ベンゼン
スルホンアミド
ピリジン(10ml)中、2−アミノ−4−8 トリフルオロメチル)フェノキシ
−4−(1,1−ジメチルプロピル)ベンゼンスルホンアミド(360mg、0.00
09モル)および3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニルイソシアナートを1
6時間混合した。ピリジンを蒸発させ、該反応をフラッシュクロマトグラフィー
(シリカゲル、25%酢酸エチル/ヘキサン)に付した。生成物をさらにフラッ
シュクロマトグラフィー(シリカゲル、塩化メチレン/ヘキサン/酢酸エチル)
に付すことにより精製して、標記化合物(130mg、22%)を得た。1H N
MR(250MHz,CD3OD)δ8.60(s,1H),8.00(s,3H),7.
55(s,2H),7.35(m,1H),7.15(d,1H),6.95(d,1H)
,1.70(q,2H),1.30(s,6H),0.70(t,3H)。
略語:本明細書で用いた略語は、以下のとおりである:AA、アラキドン酸、
5−8−11−14エイコサテトラエン酸;1−アルキル、1−O−アルキル;
1−アルケニル、1−O−アルク−1'−エニル;BSA、ウシ血清アルブミン
;CoA−IT、補酵素A−非依存性トランスアシラーゼ;COX、シクロオキ
シゲナーゼ;ET−18−O−CH31−O−オクタデシル−2−O−メチル−
sn−グリセロ−3−ホスホコリン;GPC、sn−グリセロ−3−ホスホコリ
ン;5LO、5−リポキシゲナーゼ;PLA2、ホスホリパーゼA2;PBS、
リン酸緩衝生理食塩水;TLC、薄層クロマトグラフィー;TNF、腫瘍壊死因
子α。
前記説明は、本発明をその好ましい具体例を含んで記載している。本明細書に
詳細に記載された具体例の修飾および改良は、以下の請求の範囲の範囲内である
。さらに説明せずとも、当業者は、前記説明を用いて、本発明を最も充分に利用
することができると思われる。したがって、本明細書の実施例は、単に説明とし
てのものであり、如何なる場合も本発明の範囲を限定しようとするものではない
。排他的な権利を請求する本発明の具体例を以下に定義する。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
A61K 31/18 A61K 31/18
31/185 31/185
31/195 31/195
31/675 31/675
31/685 602 31/685 602
(72)発明者 ウィンクラー,ジェイムズ・デイビッド
アメリカ合衆国19034ペンシルベニア州
フォート・ワシントン、ハートランフト・
アベニュー 701番
(72)発明者 チルトン,フロイド・ザ・サード
アメリカ合衆国27041ノースカロライナ州
パイロット・マウンテン、ニーダム・ス
トリート 106番