JPH11509227A - d−トレオ−メチルフェニデートの治療的使用 - Google Patents
d−トレオ−メチルフェニデートの治療的使用Info
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Abstract
(57)【要約】
メチルフェニデートを用いる処置の影響を受けやすい症状を有するヒトの患者であって、肝機能障害で患うかまたは該機能障害にかかりやすい患者にd−トレオ−メチルフェニデートを投与することを含む該患者の処置方法。
Description
【発明の詳細な説明】
d−トレオ−メチルフェニデートの治療的使用
発明の分野
この発明はd−トレオ−メチルフェニデート(dtmpと略記する)の新規な治療的
使用に関する。
発明の背景
メチルフェニデートは既知の薬剤であって、主として機能高進性児童の処置に
使用されている。該薬剤は長期間にわたって投与しなければならない規制物質で
ある。
メチルフェニデートはキラル分子である。この薬剤はラセミ体として投与され
ているが、その鏡像体の特性についてはある程度研究されている。一般的には、
dtmpは活性な物質であって、その鏡像体(ltmp)の代謝速度は速いと考えられてい
る。
メチルフェニデートは徐放性製剤として投与することが多い。例えばラセミメ
チルフェニデートを含有する被覆錠剤を投与して該薬剤の濃度を治療的に有効な
濃度に維持することがおこなわれている。この種の製剤が再現性のある効果また
は徐放効果を常にもたらすとは限らない。
ロバーツらは次のことを見出している。即ち、肝臓の形態学的研究に基づき、
ラセミメチルフェニデートはマウスの肝機能障害をもたらすが、このことは肝酵
素濃度および/または凝固性壊死の増加としてあらわれることが示されている[
Life Sci.、第55巻、第269頁〜第281頁(1994年)]。また米国の
国立毒性プログラム(NTP TR439)は、ラセミメチルフェニデートがマウ
スにおいて肝細胞と小葉中心の肥大、傷害細胞の病巣形成および肝腫瘍をもたら
すことを最近(1995年)になって報告している。
メータらは塩酸メチルフェニデートの静脈内投与による濫用によって肝機能障
害がもたらされることを報告している[J.Clin.Gastroenterol.、第6巻、
第149頁〜第151頁(1984年)]。グッドマンは塩酸メチルフェニデート
に起因する肝毒性を報告している[New York State Journal of Medic
ine、第72巻、第2339頁〜第2340頁(1972年9月15日)]。ステサ
イクらは塩酸メチルフェニデートの静脈内投与による濫用による多臓器不全を報
告している[Annals of Emergency Medicine、第14巻、第597/11
3頁〜第599/115頁(1985年6月6日)]。
発明の概要
この発明は、肝機能障害を患うかまたは該機能障害にかかりやすいヒトの患者
の処置またはこの種の症状の発生尤度の低減下においてdtmpが満足すべき効果を
もたらすという知見に基づくものである。dtmpは、ラセミ体の使用によって悪化
しやすい効果をもたらす別の薬剤の使用を含む治療においてラセミ体の代わりに
使用してもよい。この種の効果には肝機能障害が含まれる。患者は、例えば強迫
性ショッピング病(compulsive shopping disorder)またはナルコレプシーで患
う成人であってもよく、あるいは、例えば注意欠陥多動障害(注意欠陥障害を含
む)で患う思春期前の児童であってもよい。
上記の知見は、動物実験においてdtmpがラセミメチルフェニデートに比べて驚
くほど低い肝毒性しか示さないという発見に基づくものである。
発明の説明
本発明において用いるdtmpはltmpを実質上含んでいない[例えば、鏡像体過剰
率(ee)は少なくとも70%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少な
くとも95%である]。dtmpは実質上純粋な鏡像体であってもよく、また、いず
れかの適当な塩、例えば塩酸塩であってもよい。
dtmpはラセミメチルフェニデートの投与の場合と同様にして徐放性の製剤、例
えば被覆錠剤等として投与してもよく、あるいはその他のいずれかの常套の徐放
性の製剤としていずれかの適当な投与経路により投与してもよい。常套の投与量
に関するパラメーター、即ち当業者に既知のパラメーターまたは当業者が実施に
際して適宜選定し得るパラメーターを採用してもよい。例えば、dtmpの1日あた
りの投与量は5〜60mgであるが、該投与量は患者の年令、体重および健康状態
並びに当業者が通常考慮するその他の要因に応じて適宜選定すればよい。
dtmpを使用する別の利点としては次のものが例示される:規制物質の使用量の
低減化、副作用(食欲不振、不眠症、胃痛および頭痛を含む)の低減化、濫用の可
能性の低減化、Cmaxの低減化、かみ砕いたときの活性物質の濃度の低減化、患
者の個人差の低減化、ltmpまたはその他の薬剤との相互作用の低減化、食事をと
った患者と絶食した患者との間の変動性の低減化。
製剤の性状を調節することによって、生体外での溶解性を調節することができ
、これによって塩酸メチルフェニデートに対する米国の固定処方集(NF)の薬剤
放出プロフィールに適合させるかまたはこれを上回るように調節することができ
る。さらに、健康な被験者に投与しても、dtmpの血清中の濃度は少なくとも8時
間、例えば8〜16時間、8〜12時間または8〜10時間にわたってCmaxの
少なくとも50%にすることができる。従って、例えば、血清中の濃度がCmax
の異なる割合よりも低下する前における異なる時間内またはより短い時間内での
放出が好ましいこともある。
血清中の濃度は、朝投与した後、日中は高い値に保持するが、睡眠パターンに
望ましくない効果をもたらす前にタ方には低い値に低下するように調節してもよ
い。
本発明による製剤は単位投与形態、例えば錠剤、カプセルまたは懸濁液であっ
てもよい。徐放性製剤はマトリックス形態、コーティング形態、レザバー形態、
浸透形態、イオン交換形態または密度交換形態であってもよい。該製剤は投与後
に溶解もしくは浸食される可溶性ポリマーコーティングを有していてもよい。あ
るいは該製剤は不溶性コーティング、例えば活性成分がレザバーから浸透するか
、あるいは、例えば多孔性マトリックスを拡散するか、あるいは浸透交換するよ
うなポリマー製コーティングを有していてもよい。さらにまた、徐放性製剤を、
例えば投与によって該製剤が変化する(例えば、微粒子からゲルに変化する)場合
には密度交換形態にすることによって活性成分を拡散または浸透させてもよい。
イオン交換樹脂を利用することによって活性成分をイオン交換によって放出させ
、
その放出速度をカチオン型またはアニオン型の薬剤で調節してもよい。
本発明においては、かみ砕きに対して耐性のある製剤を用いるのが好ましい。
このような製剤としては、個々の粒子が被覆されていてかみ砕き作用によっては
活性成分を直ちに放出させない微粒子形態の製剤または投与を受ける患者がかみ
砕くのを断念するほどの堅さを有する製剤が例示される。本明細書に記載の多く
の効果や利点等は速放性製剤にも適用できる。これらの種々の効果等はdtmpの使
用および/またはltmpの不存在に起因する。
種々の環境因子が肝機能障害を引き起こすか、または患者にこのような問題の
影響を受けやすくする。このような環境因子には副作用として肝機能障害をもた
らす治療剤の投与、または肝機能障害を惹起することが知られている薬物等(例
えば、アルコールや覚醒剤)の濫用が含まれる。
肝機能障害は酵素機能の障害、特定の酵素、例えば、アラニンアミノトランス
フェラーゼ(ALT)の濃度変化または肉眼的病変、例えば肝硬変もしくは肝癌の
証拠ともなることがある。当業者であれば、肝機能障害は該障害に対する感受性
または素因として診断することができる。
マウスにおけるメチルフェニデート誘発肝毒性
肝酵素濃度の増大および肝凝固壊死の発生によって特徴づけられるラセミメチ
ルフェニデートとdtmpの異なる毒性効果を調べるための実験をおこなった。この
実験はロバーツらの前記文献に記載の方法に従っておこなった。
Crl:CD−1(ICR)BR種の雄のマウス21匹に試験化合物を塩溶液に加
えた溶液を腹腔内へ体重1kgあたり10mlの割合で注射した。これらのマウスは
3つのグループごとに分けてスチールメッシュ製の床を備えたポリプロピレン製
ケージ内に入れ、これらのケージを単一の閉鎖室内に収容した(室内の空気は1
時間あたり最低15回交換した)。室内の温度と湿度を調整して照明と暗闇を1
2時間のサイクルでおこなった。
投与から16時間後、全てのマウスから採血し、血清中のアラニンアミノトラ
ンスフェラーゼ(ALT)の活性を測定し、結果を以下の表に示す。
投与から24時間後、肝臓を摘出し、10%自然緩衝ホルマリン固定剤中に保
存して組織病理学試験に供した。肝臓をパラフィンワックス中に包埋し、見掛け
の長さ5μmに切断し、ヘマトキシリンとエオシンを用いて染色した後、光学顕
微鏡を用いて観察し、結果を以下の表に示す。
表に示す結果から明らかなように、ラセミメチルフェニデートを用いる処置に
比べてdtmpを用いる処置によって著しく有利な効果が得られ、肝酵素アラニンア
ミノトランスフェラーゼの血漿中の濃度は増加しなかった。組織病理学的データ
も、dtmpを用いる処置がラセミ化合物を用いる処置に比べて有利な効果をもたら
すことを裏付けた。凝固壊死はラセミメチルフェニデートを投与したグループの
21匹のマウスのうち2匹において観察されたが、dtmpを投与したグループのマ
ウスには全く観察されず、両者間には著しい相違がみられた。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
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T,UA,UG,UZ,VN
(72)発明者 ポープ,ニコラス・ロバート
イギリス、シービー4・4ダブリューイ
ー、ケンブリッジ、ミルトン・ロード、ケ
ンブリッジ・サイエンス・パーク、カイロ
サイエンス・リミテッド内
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1.メチルフェニデートを用いる処置の影響を受けやすい症状を有するヒトの 患者であって、肝機能障害で患うかまたは該機能障害にかかりやすい患者にd− トレオ−メチルフェニデートを投与することを含む該患者の処置方法。 2.メチルフェニデートを用いる処置の影響を受けやすい症状を有するヒトの 患者であって、肝機能障害をもたらすかまたは該機能障害にかかりやすくする環 境におかれているかまたは該環境におかれたことのある患者にd−トレオ−メチ ルフェニデートを投与することを含む該患者の処置方法。 3.患者が、肝可能障害をもたらすかもしれないかまたは該機能障害にかかり やすくするかもしれない治療剤の投与を受けたことがあるかまたは該投与を受け ている患者である請求項1または2記載の方法。 4.治療剤がラセミメチルフェニデートである請求項3記載の方法。 5.患者が肝機能障害または肝傷害をもたらすことが知られている薬物(アル コールおよび覚醒剤を含む)を濫用したことがあるかまたは該薬物を濫用してい る患者である請求項1または2記載の方法。 6.患者が少なくとも1種の肝酵素を異常な濃度で保有している請求項1から 5いずれかに記載の方法。 7.少なくとも1種の肝酵素がCYP2D6または別のP450シトクロム酵素 である請求項6記載の方法。 8.症状がうつ病、強迫性ショッピング病、ナルコレプシー、不眠症または注 意欠陥多動障害である請求項1から7いずれかに記載の方法。 9.d−トレオ−メチルフェニデートおよび請求項3で規定される治療剤を含 有し、請求項1または2記載の症状および該治療剤を用いる処置の影響を受けや すい症状の処置において同時に、別々にまたは逐次的に使用する複合製剤として の組成物。
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