JPH11508129A - ヒト由来キチナーゼ及び組換え技術によるその産生、並びにそれを用いたキチン分解、並びに感染症に対する治療及び予防におけるその用途 - Google Patents

ヒト由来キチナーゼ及び組換え技術によるその産生、並びにそれを用いたキチン分解、並びに感染症に対する治療及び予防におけるその用途

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JPH11508129A JP9500324A JP50032497A JPH11508129A JP H11508129 A JPH11508129 A JP H11508129A JP 9500324 A JP9500324 A JP 9500324A JP 50032497 A JP50032497 A JP 50032497A JP H11508129 A JPH11508129 A JP H11508129A
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Abstract

(57)【要約】 図1または図2に示されるアミノ酸配列を有する新規なヒト由来キチナーゼ、これと同様のキチン加水分解活性を有するその改変体、並びにその一つのエピトープに相当する、抗原性を有するペプチド、遺伝子工学的に処理した宿主あるいは宿主細胞を用いる、組換え技術によるヒト由来キチナーゼの産生、ヒト由来キチナーゼをコードする組換え核酸、並びにヒト由来キチナーゼ特異的なオリゴペプチドが開示される。また、ヒトのキチン含有病原体感染に対する治療または予防における用途、あるいはキチン分解における用途、例えばキチンを母体とする製造物からのキチン分解における用途が開示される。更に、ヒト由来キチナーゼ、抗原性を有するそのペプチド、抗ヒト由来キチナーゼ抗体、組換え核酸、あるいはオリゴヌクレオチドを含んでなる診断試験用キットが開示される。

Description

【発明の詳細な説明】 ヒト由来キチナーゼ及び組換え技術によるその産生、並びにそれを用いたキチン 分解、並びに感染症に対する治療及び予防におけるその用途 技術分野 本発明は、ヒトの感染症、特にキチン含有生物による感染症に対する治療及び 予防の分野、並びに上記の治療及び予防に有用な物質を製造するための組換えD NA技術の分野における発明である。更に本発明は、他の分野、例えば診断薬、 遺伝子治療、キチン含有薬物担体あるいは植込剤からのコントロールされた薬物 の放出、化粧品、歯科用品、食品の分野にも関連する。 従来技術感染症と自然防御 ヒトは常に、種々の病因、例えばウィルス、細菌、真菌、原生動物、多細胞性 寄生虫などによる慢性的な感染の危険にさらされている。ある種の複合感染症に おいては、通常の生活が著しく困難となり、また生命が脅かされることもあり得 る。これらの病原体によってもたらされる脅威に対抗するため、哺乳類において は種々の防御機構、いわゆる免疫反応系 が発達している。免疫反応系に関する概説としては、参考文献1の第1、2、1 5及び16章に優れた記載がある。 免疫反応は、先天性(または非後天性)免疫反応と後天性免疫反応に分けられ る。後者の免疫反応は特定の病原体に対して極めて特異的であり、感染性の病因 に継続的に遭遇する度に改善される。後天性免疫反応は種々のリンパ球によって 仲介されている。 先天性免疫反応は、初めは食細胞によって起こる。これはより原始的な反応で あって、病因の高度な認識に基づくものではないが、感染に対する防御の第一線 として機能する。 食細胞のうちで重要な一群は、単核食細胞系に属する長命細胞(単球/マクロ ファージ)である。単球は骨髄幹細胞から形成され、血流中に入る。この細胞は 組織中に移行することができ、その組織内で種々の組織マクロファージとなる。 組織マクロファージの例としては、脳の小グリア細胞、肺の肺胞マクロファージ 、肝臓のクッパー(Kupffer)細胞、腎臓のメサンギウム食細胞(mesangial pha gocytes)、脾臓マクロファージ、リンパ節滞留性(lymph node resident)及び 再循環性(recirculating)マクロファージ並びに滑膜細胞(synovial cell)な どがある。 食細胞の第二のカテゴリーは、短命細胞であって血中の白血球の大部分を占め る多形核好中球からなる。防御における食細胞の役割 細菌感染に対する免疫において食細胞が果たす重要な役割については良く知ら れている。食細胞は細菌感染に対し走化的に誘引される。食細胞の細菌への付着 は、様々な相互作用、例えば補体による伝達、抗体による伝達、マンノース結合 タンパクによる伝達、あるいはレクチン−オリゴ糖相互作用を通じて起こりうる 。次いで、細菌は食胞及びリソソームにおける一連の殺菌機構に付される。特に 、スーパーオキサイドアニオン、次いでその他の有毒な反応性酸素中間体を発生 させる酸素依存性殺菌機構が重要である。また最近、好中球における一酸化窒素 経路による殺菌の重要性が明らかになった。酸素依存性殺菌は、デフェンシン、 カチオン性小ポリペプチド、リソソーム性酵素、リゾチーム及びラクトフェリン によって仲介される。 真菌及び寄生虫感染に対する免疫における食細胞の正確な役割はあまり良くわ かっていないが、細菌感染に対する抵抗において果たす役割に類似していると考 えられている。 生物を殺す際の直接的な役割とは別に、マクロファージは外来生物に対する免 疫において重要な役割を担っている。第一に、マクロファージはTリンパ球に抗 原を効果的に提供し、これに引き続いてその後の免疫系が反応する。第二に、微 生物の産生する物質に接触したマクロファージは、免疫系における他の成分に作 用するサイトカインを放出する。第三に、 マクロファージはTリンパ球が放出したサイトカインに反応する。例えば、ある 種の寄生虫に感染した場合、人体は寄生虫を炎症細胞からなる被嚢の後ろ側へ追 い出すことにより寄生虫による人体の損傷を減らす。このようなTリンパ球依存 性過程により、マクロファージは局所的に蓄積する。このマクロファージが繊維 形成誘導因子を放出し、その刺激によって肉芽腫組織が形成され、最終的には繊 維症が起こる。感染症への介入 病原体に対する自然防御機構は、臨床的な合併症の予防に対しては常に十分効 果的というわけではなく、従って(予防のための)介入が必要となる。 予防のためのアプローチの一つは予防注射である。すなわち、宿主に対し予め 病原体(の成分)を用いて予防接種を行い、防御機構を刺激しておくという方法 である。これを効果的に行うには、ワクチンによって適切なTリンパ球の反応が 長期間にわたって誘起され、これによって強い細胞媒介性免疫が生じるようにし なければならない。しかし、予防接種はある種の病原体に対しては有効であるこ とが立証されているが、このアプローチには多くの本質的な問題がある。最も重 要なことは、予防接種に用いた抗原によって、不適切な免疫反応、例えば免疫機 構の抑制、更には自己免疫が誘起されることは避けなければならないということ である。またある種 の感染においては、局所的、あるいは経口的な予防接種によってのみ得られる、 人体における特定の部位の免疫が必要である。更に、免疫系の複雑さ、病原体が 不均質(heterogeneity)であること、ある種の病原体がその病原体に特異的な 免疫反応を回避する能力を有することが原因となり、病原体に対する効果的な免 疫を行うための一般的なアプローチの方法は得られていない。また、ある特定の 感染症に関しては、今だ試行錯誤により様々な戦略を研究している段階にある。 感染症への介入における別のアプローチは、病原体の現状以上の増殖あるいは 生存自体を抑制する薬物を用いることである。これについては、病原体に対して 有効な濃度では病原体に対してのみ特異的に効果を示し、宿主に対しては影響が 無いような薬物を用いることが望ましい。このような特異性は、哺乳類の細胞及 び病原性の侵入者の細胞のそれぞれの組成、及びそれらの細胞が必要とする成分 の違いに基づくものである。具体的な例としては以下のような薬剤が挙げられる 。ペニシリン類及びセファロスポリン類は、細菌細胞壁生合成の特異的な阻害剤 である。アミノグリコシド類、クロラムフェニコール、テトラサイクリン類、マ クロライド類は、細菌におけるタンパク質生合成の阻害剤である。リファンピシ ンや4−キノロン類は、細菌におけるDNA複製の特異的な阻害剤である。アム ホテリシンBやナイスタチンは、真菌細胞壁中の特定のステロールに結合し、細 胞成分を漏出させるこ とにより殺真菌性を示す抗生物質である。 薬理学的アプローチとして、宿主細胞には存在しない病原体中の特定の成分を 標的として介入を行うという方法は、自然界でも用いられている。その好適な例 は、脊椎動物と多くの無脊椎動物に存在する加水分解酵素リゾチームである。多 くの細菌の細胞壁には、ムラミン酸とN−アセチルグルコサミンからなる重合体 が架橋されたものが含まれている。加水分解酵素リゾチームは、ムラミン酸とN −アセチルグルコサミン部分の間のグリコシド結合を開裂する作用があり、その 結果、本来の細胞壁の形状が破壊される。細菌以外の細胞には上述のような構造 が無いので、リゾチームの存在は宿主にとって害にはならない。キチン キチンは、哺乳類細胞中には存在しないが、人間に感染症を引き起こす様々な 生物の体内に存在する多糖類(glycopolymer)である。従って、キチンは、これ らの病原体を選択的に攻撃するための有望な標的物質である。 キチンは、β(1−4)結合したN−アセチル−D−グルコサミン単位からな る重合体であるが、種々の比率でグルコサミン単位を含有することもある。脱ア セチル化度の高いキチンは、キトサンと呼ばれる。キチンに関する概説について は、文献2〜5を参照することができる。 キチン及びその誘導体は、地球上で最も豊富な生物学的巨大分子産物の一つで ある。キチンの年間の推定生成量は、100億トンから1000億トンに及ぶ。 キチンは真菌類の細胞壁や、ほとんど全ての無脊椎動物(海綿動物や、大半の花 虫類、鉢虫類、棘皮動物を除く)の外骨格の構造成分であるが、脊椎動物や無機 栄養生物には存在しない。キチンは重要な機能を有している。即ち、キチンは、 環境の機械的及び化学的ストレスから細胞や生物を守り、また、細胞や生物の形 状を維持する。N−アセチルグルコサミン単位から成る重合体鎖の長さは100 から8000単位である。この重合体が横方向に集合・配列してマイクロフィブ リルを形成し、このマイクロフィブリルは、隣合う重合体鎖の糖のアミノ基とカ ルボニル基との間で強力な水素結合が形成されて安定化される。キチンには結晶 学的な3つの形状が知られている。真菌類と節足動物に最も多く存在するα−キ チンでは、隣合う重合体鎖が逆平行に配向している。β−キチンでは、重合体鎖 が平行に配向しており、γ−キチンでは、2本の重合体鎖が平行に配向している ところに3番目の重合体鎖が逆平行に配向している構造になっている。甲殻類や 真菌類におけるキチンのマイクロフィブリルの直径は20〜25nmである。多 くの場合、キチンを含む構造体中で、キチンは他の物質と会合している。真菌類 の細胞壁では、キチンはβ−グルカンと会合している。動物の外骨格では、キチ ンとタンパク質の会 合体が主体になっている。具体的には、甲殼類の外骨格などでは、キチンのマト リックスが、炭酸カルシウムとリン酸カルシウムの沈着によって硬化しており、 昆虫の外骨格などでは、キチンのマトリックスが、フェノール誘導体によって鞣 された状態になって硬化している。 キチンとその関連化合物には用途が多い。キトサンは糸や繊維、フィルム、ゲ ルなどの成分として用いられ、農業では、種子を真菌類から保護するために、キ チン誘導体を含むカプセルを用いている。食品産業では、フルーツジュースやイ ンスタントコーヒーの製造に、キトサンを用いている。化粧品産業では、キトサ ンを含有するシャンプー、ゲル、クリーム、スポンジなどが製造されている。製 薬産業や医療関係の産業では、コンタクトレンズ、医薬品用賦形剤、火傷治療用 包帯剤などの製造にキトサンが用いられる。キチンの生合成とキチナーゼによる分解 キチンの生合成は、真菌類に関するものが、最も良く知られている。キチン生 合成に必須な前駆体は、グルコースから生合成されるUDP−N−アセチルグル コサミンである。キチンシンセターゼは細胞膜まで運ばれ膜貫通タンパク質とな る。細胞膜へ運ばれたキチンシンセターゼは、N−アセチルグルコサミン単位の 供与体であるUDP−N−アセチルグルコサミンからN−アセチルグルコサミン を切り離して細胞膜 を通過させ、成長しつつある多糖類鎖であるキチン鎖にそれを付加する。真菌類 のキチン生合成は、ポリオキシン類(Streptomyces cacaoiにより産生)やニコ マイシン類(nikkomycins)(Streptomyces tentaeにより産生)によって競合的 に阻害される(尚、ポリオキシン類とニコマイシン類はともにUDP−N−アセ チルグルコサミンのアナログである)。 他の生物種におけるキチン生合成は、あまりよく解明されていない。昆虫や甲 殼類のキチン生合成については、まず小胞体でタンパク質がグリコシル化されて から、ゴルジ体でそれにキチン鎖が付加され、形成されたキトタンパク質が細胞 表面に運搬されるものと推定される。節足動物のキチン生合成については、脂質 の結合した中間体が関与する2段階プロセスであると考えられる。節足動物のキ チン生合成は、ベンゾイルフェニル尿素系の殺虫剤で特異的に阻害されるが、そ の正確な作用機序はまだ不明である。また、節足動物のキチン生合成は、タンパ ク質生合成阻害剤やN−グリコシル化(N−linked glycosylation)阻害剤〔ツ ニカマイシン(tunicamycin)〕によっても阻害される。原生動物については、 これまでの知見によると、キチン生合成は細胞表面で起き、真菌類でのキチン生 合成プロセスに最も類似している。 キチンを含んでいる全ての生物は、形態形成(即ち、本質的な形態改変)を行 なうためにキチンという重合体を分解するための酵素系を有していると考えられ る。また、多くの高 等植物や、魚類、食虫動物(脊椎動物を含む)は、キチンを分解可能な酵素を産 生することができる。キチンを分解するための酵素系は、以下のように、i)〜 iv)に分類できる。即ち、i)β−ヘキソサミニダーゼ類は、多糖類であるキ チンの非還元末端から末端N−アセチルグルコサミンを除去することができ; i i)幅広い特異性を有するある種のリゾチーム(例えば、卵白リゾチーム)は、 キチン鎖の末端部以外の部位でも切断することができ; iii)いわゆるエキソキ チナーゼは、キチン鎖の非還元末端からジアセチルキトビオース単位を切断し; そして、iv)特定のエンドキチナーゼは、キチン鎖中のグリコシド結合をラン ダムに切断し、主としてジアセチルキトビオースを生産するとともに、若干のト リアセチルキトトリオースも生産する。「エキソキチナーゼ」と「エンドキチナ ーゼ」は、確立された意味でしばしば用いられる用語であり、本明細書において も、この命名法を用いる。 キチナーゼは自然界に広く分布し、ある種のウイルス、細菌、真菌、植物、無 脊椎動物、脊椎動物において見出されている。キチナーゼはグリコシル加水分解 酵素の18族と19族に相当する。ヘンリサット(Henrissat)によって提案さ れたこの分類は、アミノ酸配列の相同性に基づいている(文献6)。上記の19 族に含まれるのは、植物キチナーゼのみであり、例えば、三次元構造の解明され ている、Hordeum vu lgare のキチナーゼが含まれる。グリコシル加水分解酵素の18族に含まれるの は、いわゆるIII型植物キチナーゼのみである。グリコシル加水分解酵素の18 族に含まれるキチナーゼの間には、活性部位と推定される領域の相同性が高い。 触媒活性ドメインの構造としては、8重鎖α/βバレル(8−strandedα/β bar rel)(TIMバレル)が提案されている(文献7、8)。反応のメカニズムは 、リゾチームや他の大半のグリコシル加水分解酵素、即ち、一般の酸−塩基触媒 に類似すると思われる(文献8)。キチン含有病原体によるヒトへの感染症 キチン含有生物によるヒトへの様々な感染症がある。最も主要な感染症を表1 に示す。病原体の種類により、以下の3種類に分類できる。i)真菌類による感 染症; ii)原生動物による感染症; iii)蠕虫による感染症。これらの感染症 に関する概説については、文献2〜5を参照することができる。 表1 〔キチン含有病原体によるヒトへの感染症の例〕 I.真菌類による感染症 皮膚真菌症 皮下真菌症 肺真菌症 カンジダ症 II. 原生動物による感染症 トキソプラズマ症 マラリア(プラスモディウム属) リーシュマニア症(リーシュマニア属) シャーガス病、睡眠病(トリパノソーマ属) III.蠕虫による感染症 住血吸虫症 旋毛虫症 フィラリア症 オンコセルカ症真菌類による感染 現在入手可能な抗真菌剤の数は限られており、一般にその薬効は優れていると は言えない。通常真菌類による感染は免疫不全者にみられ、近年では、真菌によ る感染の頻度が最も高いのは、後天性免疫不全症候群(AIDS)の患者である 。皮膚の真菌感染は殆どの場合、局所用製剤で治療する。内臓感染及び上皮内感 染の場合は全身的な治療を長期間行わなければならない。 真菌感染は多くの場合Candida albicansによるものである。Candida albicans は一般的に、口腔粘膜及び膣粘膜の両方に存在する菌だが、損傷した皮膚、重病 患者、特定の免疫不全症患者、幅広いスペクトルの抗生物質の投与を受けている ため、局所的に微生物生態系が破壊されている患者にとって病原体となりうる。 極端な場合、カンジダ感染は、肺炎、心内膜炎、敗血症等を引き起こし、死に至 る場合もある。唯一有効な治療方法はアムホテリシンBを静脈投与することであ る。この薬剤の投与は低血圧や虚脱を伴う重い副作用を引き起こすことがある。 このような理由で、初期試験投与により患者の薬剤に対する許容度を測定する。 フルシトシンは合成フッ化ピリミジンであり、この化合物は真菌細胞内に侵入し 、DNA,RNA合成を妨害することにより真菌細胞の代謝を阻害する。この化 合物は通常アムホテリシンBと組み合わせて、全身性の真菌感染の治療に用いら れる。この化合物を単独で 投与すると、真菌のフルシトシンに対する耐性が速やかに生ずる。 ヒトへの重度の感染病を誘発するその他の真菌としては、Aspergillus属、Cry ptococcus 属、Coccidioides属、Paracoccidioides属、Blastomyces属、Sporothr ix 属の真菌及びHistoplasma capsulatumが挙げられる。 より一般的に発生するヒストプラスマ症の臨床上の特徴は様々である。Histop lasma capsulatumはマクロファージに感染するが、その病原は結核に類似してい る面がある。通常の宿主における急性肺感染は、しばしば咳、胸部の痛み、筋痛 及び体重の減量を伴う。肺に構造的な欠陥のあるヒトにおいては、結核同様、肺 尖部に慢性的且つ破壊的な疾患を生じる。免疫力の低下した宿主においては、散 在性ヒストプラスマ症が発症し、発熱、貧血、白血球減少症、血小板減少症およ び肺炎を伴う。治療法としてはアムホテリシンBの投与が一般的であるが、毒性 の点から、他の薬物による様々な真菌感染の治療方法が研究されている。原生動物及び蠕虫による感染 原生動物は、ヒトにとって重大な数多くの感染症を引き起こす単細胞生物であ る(表1参照)。幸運なことに、これらの病原体の大部分に対して、薬剤を用い た有効な治療が可能である。Trypanosoma cruziによって引き起こされるシャー ガス病(Chagas disease)に関しては、現在のところ十分な治療法は確立されて いない。上記感染症の慢性化によって、心臓と消化官が重度の影響を受ける。ま た、Toxoplasma gondiiの嚢子(tissue cysts)に対する有効な治療法も、今ま でのところ確立されてはいない。この感染症は、細胞性免疫の低下によって再発 する。 蠕虫による感染症は、一般的に特定の薬剤を用いてかなり効果的に治療するこ とができる。しかしながら、Wucheria bancrofti及びBrugia属によって発病する リンパ性のフィラリア症(filariasis)は健康上深刻な問題を伴う。病状が進行 した段階において薬剤ジエチルカルバマジン(DEC)の投与によりミクロフィ ラリア(microfilariae)の殺菌を行なった場合、蠕虫の大量死に反応して、合 併症が誘発される可能性がある。キチンに関連する相互作用を利用したキチン含有病原体に対する抵抗性の改善 生物によって含有するキチンの分布が異なることから、キチン代謝系はキチン 含有生物による感染を抑制する際の有望な標的と考えられる。以下に性質の異な る2つの実験的手法について述べる。 1.キチン生合成の阻害(文献2を参照) 植物用殺真菌剤としての真菌細胞壁合成阻害剤の有用性は 大々的に研究されてきた。ポリオキシン類は、優れた農業用殺真菌剤として広く 用いられている。ポリオキシン類はUDP―N―アセチルグルコサミンと構造的 類似性を有することにより、キチンシンセターゼ反応の競合的阻害剤となる、構 造的に関連のある一連の化合物群である。最近では、同様の作用機構に基づく強 力な阻害剤としてニコマイシンが見出されている。 また、殺虫剤として市販されているベンゾイルアリル尿素類は、昆虫のキチン 生合成を非常に効果的に阻害するが、真菌類に対しては無効である。 上記の化合物が、医薬品としてヒトに投与されたという記録はない。 2.ワクチンとしてのキチナーゼ 原生動物の生活環におけるキチナーゼ活性の重要性から、多くの研究者は、原 生動物のキチナーゼは予防接種に用いる抗原として有望であると考えた(文献1 0〜13)。それは更に、従来、ヒト体内にはキチナーゼに類似したタンパク質 は存在しないと(誤って)考えられてきたためでもある(例えば、文献13参照 )。 しかしながら、上記の実験的アプローチは、キチン含有生物との戦いにおいて 、推定されるほど有利であるとは限らない。 第一に、上記の合成化合物によるキチン合成阻害が、望ん でいるほど特異的かつ効果的であるとは限らない。即ち、阻害剤が、哺乳類細胞 の内因性の反応に干渉し、その結果、副作用が生じる可能性も無視できない。上 記合成化合物が生体内で有毒物質に転換され、毒性を生じる可能性もある。さら には、上記の化合物は尿から排出されてしまうため、多量の化合物を長期間に渡 って投与することが必要とも考えられる。さらにまた、病原生物体内に薬物で阻 害される経路とは別のキチナーゼ生合成経路が存在するか、または、新たに生じ た場合には、上記合成化合物によりキチン生合成を完全に阻害することは困難と なる。 第二に、病原性生物由来のキチナーゼをワクチンとして利用した際には、予測 できない有害な副作用を生じる可能性がある。即ち、キチナーゼの断片がヒトの 内因性タンパク質と相同性を有し、その結果望ましくない免疫応答が誘発される 可能性を無視することはできない。実際、ヒトキチナーゼとその他の生物種のキ チナーゼの間の相同性は高いので、これは単に理論上の問題だけではない(後述 を参照)。植物及び魚類のキチン含有病原体に対する抵抗性におけるキチナーゼの役割 多くの植物由来キチナーゼは病原に関連したタンパク質{pathogenesis-relate d(PR)proteins}と考えられている。この酵素は病原体(の抽出物)の存在下、 もしくはその他の 形態のストレスの存在下に生産される。何種類かの植物由来キチナーゼにおいて は、試験管内での抗真菌作用が報告されている。最も著しい例としては、Ecol i によって発現されたSerratia marcescens由来の細菌由来キチナーゼ(ChiA )を植物に散布すると、真菌類に対する防御が得られた(文献15)。しかしなが ら、大部分の真菌類をさらに効果的に阻害するためには、キチナーゼとβ―1、 3―グルカナーゼの両酵素が共存することが必要である。植物においては、後者 の酵素もまたストレスに応答して生産される。 魚類の白血球は高いキチナーゼ活性を有し、防御機構における役割を果たして いると報告されている(文献16)。その証拠として、カレイ(turbot)から精製 したキチナーゼはキチン含有真菌Mucor mucedoに対して阻害作用を示すことが知 られている。 現在のところ、ヒトはヒト自身の食細胞中に上記の生物に匹敵するような量の キチナーゼを含んではいないと信じられている。しかしながら、下記に詳述する ように、本発明者らは、近年、培養したヒトマクロファージにおける類似した酵 素の存在を発見した。発明の概要 キチン含有病原体に対処するためには、既存のアプローチでは限界がある。よ って、本発明では、人の健康を大きく脅 かすキチン含有病原体に関する問題を解決するための新規なアプローチを提案す る。本願のアプローチは、最近見出されたヒト由来キチナーゼ[これは組換えD NA技術(バイオテクノロジー)によって製造することができる]のキチン含有 病原体に対する安全かつ有効な薬剤、即ち、キチン含有病原体による感染症への 介入のための薬剤としての用途に基づくものである。本アプローチの概念および その更なる開発に関して、以下に記載する。 本発明は、図1または図2のアミノ酸配列に本質的に対応するアミノ酸配列か らなるヒト由来キチナーゼ、または該ヒト由来キチナーゼと実質的に同様のキチ ン加水分解活性を有する該ヒト由来キチナーゼの改変体であることを特徴とする 、実質的に単離または精製されたキチナーゼを提供するものである。この新規な ヒト由来キチナーゼは、遺伝子工学的に処理された宿主細胞によって産生され、 該宿主細胞または該宿主細胞の培養に用いた培地から単離される、図1または図 2のヌクレオチド配列に本質的に対応するヌクレオチド配列によってコードされ るアミノ酸配列からなることが好ましい。特に、本発明は、本質的に図1のアミ ノ酸配列に対応するアミノ酸配列からなり、分子量が約50kDaであるキチナ ーゼ、及び、本質的に図2のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列からなり、分 子量が約39kDaであるキチナーゼを包含する。 本願において「実質的に単離または精製された」とは、キチナーゼが天然に存 在する環境、組換えDNA技術の使用によって製造又は分泌される環境、又は化 学合成によって製造される環境からキチナーゼが取り出されていることを示す。 本発明は、実質的に該環境に存在する他の成分から分離された又は他の成分を含 まない、「実質的に単離された」形でキチナーゼを包含することを意図する。ま た、キチナーゼは「実質的に精製され」ていることが好ましく、これは充分に精 製され薬剤としての用途に有効、即ち、薬学的に許容されるものであることを意 味する。 本発明は、適切な活性化を受けたヒトマクロファージなどの天然に得られる材 料からキチナーゼを単離することを包含するが、キチナーゼを組換えDNA技術 又は化学合成によって製造することが好ましく、特に、キチナーゼを遺伝子工学 的に処理された宿主又は宿主細胞によって発現させ、該宿主又は宿主細胞あるい はその培養に用いた培地から単離することが好ましい。 本願において「本質的に対応する」とは、配列中のわずかな変異、例えば、キ チナーゼの酵素活性にほとんど影響しない自然界で発生する少数のアミノ酸にお ける変異の存在を包含することを意味する。ヒトキチナーゼのアミノ酸配列にお いて、酵素の機能、活性及び免疫寛容性(tolerability)に大きな影響を与える ことなく、いくつかのアミノ酸を他の アミノ酸で置換又は削除することが可能であり、ときには、酵素の特性の一つ又 は全般を改善することさえできる。一般に許容されるこのような配列上の変異は ごく限られており、全アミノ酸の約30%未満、屡々20%未満又は10%未満 とも言われている。具体的には、図1及び2の配列と比較して、変異体は、一般 には約70%、屡々約80%又は約90%の高い相同性を有する。全ての変異体 は、共通して、4-メチルウンベリフェリル−キトトリオシド(4-methylumbellif eryl-chitotrioside)などの典型的なキチナーゼの基質の用いて測定することが できるキチナーゼ活性の機能的特性を有する。 本願において「実質的に同様のキチン加水分解活性を有する該ヒト由来キチナ ーゼの改変体」とは、図1及び2のアミノ酸配列とは明らかに異なるアミノ酸配 列からなるが、同様のキチナーゼ活性を有する変異体を包含する。同様の又は改 良された特性を有するこのような改変体は、ヒトキチナーゼのモジュール又はド メイン構造を基に設計することができ、酵素活性を発揮するには不用または不利 なドメインを排除した構成や、複数個存在することが望ましいドメインを2つ以 上含む構成などの採用により得ることができる。 本願において「実質的に同様のキチン加水分解活性」とは、図1及び図2のア ミノ酸配列からなるヒト由来キチナーゼと少なくとも同等のキチナーゼ活性を有 するという最小限の要 件を満たすことを意味する。上記「同等の」という記載は、基質の種類において 同等、即ち定性的に同等、そして活性値について同等、即ち定量的に同等という 意味に言及される。 更に、本発明は、本発明による新規なヒト由来キチナーゼ及び薬学的に許容さ れる担体または希釈剤を包含する医薬組成物、特に、キチン含有病原体による感 染に対するヒトの治療または予防用の医薬組成物であって、治療または予防に有 効な量の新規なキチナーゼ及び薬学的に許容される担体または希釈剤を包含して なる医薬組成物を提供するものである。該医薬組成物は、治療または予防に有効 な量のヒト由来β−1,3−グルカナーゼを更に含有することが好ましい。 本発明は、また、新規なヒト由来キチナーゼ及び担体または希釈剤を包含して なる医薬品以外の組成物も提供するものである。このような組成物は、細胞培養 用の培地、特にヒト由来細胞の培養用の培地、又は化粧用品(例:ボディローシ ョン)、歯科用品(例:練り歯磨き、含嗽剤)または食品(例:牛乳、チーズ等 の乳製品)である。 更に、本発明は、新規なヒト由来キチナーゼを、キチンを加水分解するのに十 分な量含有する、キチンを母材とする製造物を提供するものである。キチンを母 材とする製造物の例としては、薬物放出の制御を目的とする、薬物を含有する担 体あるいは植込剤、又は、過渡的な機能性植込剤などが挙げられる。 本発明は、また、治療または予防に有効な量の新規なヒト由来キチナーゼを包 含する医薬組成物をヒトに投与することを含む、キチン含有病原体による感染に 対するヒトの治療方法または予防方法を提供するものである。 本発明は、また、図1または図2のアミノ酸配列に本質的に対応するアミノ酸 配列からなるヒト由来キチナーゼ、または該ヒト由来キチナーゼと実質的に同様 のキチン加水分解活性を有する該ヒト由来キチナーゼの改変体の製造方法であっ て、該ヒト由来キチナーゼまたは該改変体の産生能を有する、遺伝子工学的に処 理された宿主あるいは宿主細胞を増殖し、該宿主、該宿主細胞またはその培養に 用いた培地より、産生されたキチナーゼを単離することを含む製造方法を提供す るものである。この製造方法において、該キチナーゼのアミノ酸配列が、図1ま たは図2のヌクレオチド配列に本質的に対応するヌクレオチド配列によってコー ドされていることが好ましい。 本発明は、また、図1または図2のアミノ酸配列に本質的に対応するアミノ酸 配列からなるヒト由来キチナーゼ、または該ヒト由来キチナーゼと実質的に同様 のキチン加水分解活性を有する該ヒト由来キチナーゼの改変体を産生しうる、遺 伝子工学的に処理された宿主細胞を提供するものである。本発明は、また、図1 または図2のアミノ酸配列に本質的に対応するアミノ酸配列をコードするヌクレ オチド配列、また はそれに相補的なヌクレオチド配列を包含してなる組換え核酸を提供するもので ある。該組換え核酸は、図1または図2のヌクレオチド配列に本質的に対応する ヌクレオチド配列、またはそれに相補的なヌクレオチド配列を包含してなること が好ましい。 「本質的に相補的な」とは、特に完全に近い相補性を要するハイブリダイゼー ション条件下(以降、「厳しいハイブリダイゼーション条件下」と称する)にお いてハイブリダイゼーションより図1及び図2の塩基配列に結合し得るすべての 変異体を包含する目的で用いられる。「本質的に対応する」とは、同一又は同等の (キチナーゼ活性を有する)アミノ酸配列をコードし、宿主又は宿主細胞が発現 するすべての変異体を包含する目的で用いられる。 更に本発明は、図1または図2のヌクレオチド配列に対応するか、もしくは相 補的なヌクレオチド配列である、少なくとも約8塩基からなるオリゴヌクレオチ ドであって、厳しいハイブリダイゼーション条件下において、新規のヒト由来キ チナーゼをコードする核酸とハイブリダイゼーションにより結合し得ることを特 徴とするオリゴヌクレオチドを包含する。このようなオリゴヌクレオチドは、例 えば、PCR、NASBA等の核酸増幅法に用いられるプライマー、または、ハ イブリダイゼーション用のプローブとして多目的に使用される。オリゴヌクレオ チドの長さは、通常用途によって異なる。プ ライマーとして用いる場合、通常12塩基以上、好ましくは15塩基以上であり 、また25塩基以下、好ましくは20塩基以下のオリゴヌクレオチドを用いる。 プローブとして用いる場合、オリゴヌクレオチドの長さは、通常、プライマーよ りもやや長くなり、約15または20塩基から、約40または50塩基、更には 、アミノ酸をコードする配列の全長を用いる場合もある。 同様に、更に本発明は、図1または図2のアミノ酸配列より得られるアミノ酸 配列を有する少なくとも8アミノ酸残基からなるペプチドであって、新規のヒト 由来キチナーゼのエピトープ、あるいは模擬エピトープであることを特徴とする ペプチド、特に、図1または図2のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列からな り、抗原性を有するペプチドを包含する。通常、このようなペプチドは、少なく とも約10アミノ酸残基、更には少なくとも15アミノ酸残基からなり、また多 くとも約40アミノ酸残基より好ましくは、多くとも約30アミノ酸残基からな る。該ペプチドは、診断目的や、ヒト由来キチナーゼに特異的な抗体の産生を増 大させために行われる免疫法において使用される。 本発明は、新規のヒト由来キチナーゼに結合し得る抗体、特に、モノクローナ ル抗体を包含する。このような抗体は、例えば、ヒト由来キチナーゼの分離及び /又は精製(例: アフィニティークロマトグラフィーによる)や診断目的等、多 目的に使用することができる。 更に本発明は、上記のヒト由来キチナーゼに結合しうる抗体、上記のヒト由来 キチナーゼペプチド、あるいは、本願で定義される新規のヒト由来キチナーゼ自 体、並びに抗原または抗体検出用の診断用キットに含まれる従来の成分を含んで なる診断用キット;並びに本願で定義されるヒト由来キチナーゼをコードする組 み換え核酸並びに核酸検出用の診断用キットに含まれる従来の成分を含んでなる 診断用キットを提供する。 更に本発明は、キチンの加水分解条件下で既述のキチンと新規のヒト由来キチ ナーゼに該キチンを接触させることを包含するキチンの分解方法を提供する。 図面の簡単な説明 図1 chi.50 cDNAクローンのヌクレオチド配列及び対応するタンパク質の予 測されるアミノ酸配列。 図2 chi.39 cDNAクローンのヌクレオチド配列及び対応するタンパク質の予 測されるアミノ酸配列。 図3 マクロファージで生成される種々のキトトリオシダーゼ イソ酵素につ いての概観。 図4 キチナーゼタンパク質ファミリーに属する数種のタンパク質の活性中心 と推定される領域のアミノ酸配列。 図5 脾臓より精製した39及び50kDaキトトリオシダ ーゼ並びに形質導入されたCOS細胞より生成される39及び50kDa酵素の免 疫沈降実験。 発明の詳細な説明 ヒトが継続的にキチン(又は、キチンを含有する生物)に接触しているという事 実は、ヒトがこの物質を分解する能力を有することを強く示唆している。そうで なければ、存名中に、例えば、キチン含有生物と継続的に接触している肺胞マク ロファージにおいて、おそらくはリソソームに少しずつではあるがキチンが蓄積 されるはずである。しかしながら、そのようなキチンの蓄積は見出されていない 。これにより本発明者らは、ヒトマクロファージ中のキチナーゼ活性の存在につ いて鋭意研究を行った。そして実際、下記に説明するように、本発明者らは、既 存の通念に反して、マクロファージが他の哺乳類以外の生物由来の酵素に類似し た特性を有するキチナーゼを産生することを立証することができた(文献17、 18)。この酵素は非常に高いキチン加水分解能力を有し、その他のキチナーゼ 類に共通する特徴をも示す。新規の酵素の同定に最初に用いられた基質である4- methylumbelliferyl-chitotriosideにちなんで、このヒト由来キチナーゼはキト トリオシダーゼと命名された。(文献 17) 以下、本発明者らによって見出されたキトトリオシダーゼに関する近年の研究 結果について多数説明する。これらの情 報は、近年発見されたこの酵素の特質の理解を高めるものである。 好中球のリソソームや特定の顆粒(granule)からは、中間的な濃度のキトトリ オシダーゼが検出できる。赤血球、血小板、リンパ球、単球においては、キトト リオシダーゼ活性を確認することはできない。リポ多糖類(LPS)に接触すると、 好中球がキトトリオシダーゼを放出することが観察された。健康な志願者にGM −CSFを投与すると、血漿キトトリオシダーゼ濃度が一時的に上昇するが、こ れは好中球が酵素を分泌するためであると推定される。キトトリオシダーゼの放 出はラクトフェリンのそれに酷似している。分離した血中好中球(blood neutrop hils)においては、キトトリオシダーゼmRNAは検出できなかった。この結果 は、骨髄に存在するこれら細胞の前駆体によって酵素が生成されることを示唆し ている。 キトトリオシダーゼはマクロファージによって大量に生成、分泌される。培養 単球がマクロファージに分化する過程において、キトトリオシダーゼの生成は後 期に起こる事象である:酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(tartrate resistant acid phosphatase)等のマクロファージマーカー(Macrophage markers)は分化過 程において、かなり早期に誘導されるが、キトトリオシダーゼmRNA及び対応 する酵素活性は細胞培養開始後一週間たって初めて検出される。このことから、 末梢 血液(peripheral blood)由来の細胞の長期培養時に自然に発生する、マクロファ ージに対するある特定の活性化作用が、キトトリオシダーゼを誘導する際に必要 であることがわかる。ラット腹膜より分離したマクロファージは、培養期間を延 長した際にもキトトリオシダーゼを生成しない。ある種の分化した組織のマクロ ファージには、もはやキトトリオシダーゼの産生能力がないと考えられる。また 、マクロファージの活性化させる物質のすべてがキトトリオシダーゼの誘導をも 引き起こすわけではない。実際、本発明者らは、単核より得たマクロファージを リポ多糖(LPS)によって活性化した際には、キトトリオシダーゼの分泌が減 少することを見出した。 マクロファージによるキトトリオシダーゼ生成の強力な誘因原の一つはリソソ ームにおける(糖)脂質の蓄積である。ゴーシェ病(Gaucher disease)の場合ほ ど顕著ではないが、ニーマン−ピック病(Niemann-Pick desease)、クラッベ病(K rabbe disease)、GM1 ガングリオシドーシス(gangliosidosis)、ウォルマン 病(Wolmann Disease)といった多様なリソソームのリピドーシスにおいて血漿キ トトリオシダーゼ活性が上昇することを見出した。興味深いことに、特定のオリ ゴ糖、またはムコ多糖の蓄積を特徴とするリソソームの蓄積障害はキトトリオシ ダーゼ活性の増加を伴わない。ゴーシェ病患者の細胞におけるグルコセレブロシ ダーゼの欠乏自体は過度なキトトリオシダーゼ産生の原因にはならないことが明 白 となった。発症前の、あるいは無症状のゴーシェ病患者はキトトリオシダーゼ濃 度の異常を示さない。酵素濃度の異常は、ゴーシェ病の臨床上の兆候、即ち、組 織や骨髄における、脂質を過剰に有するマクロファージの発生に対応する。 現在、血漿中のキトトリオシダーゼ濃度の著しい上昇は、特別な活性化状態の マクロファージが存在することの反映であると考えられている。酵素濃度の上昇 は、リソソームにおける遺伝性のリピドーシス(糖脂質症)の患者、内臓のリー シュマニア症(visceral Leishmaniasis)の患者、及び類肉腫(Sarcoidosis)の患 者に認められる。リーシュマニア症の原因となる寄生虫はマクロファージのリソ ソームにも寄生し、糖脂質様の構造体を産生しているという可能性は、興味深い 事である。類肉腫の病因はこれまで知られていない。この病気は、マクロファー ジの特徴を持つ多核巨細胞を含む免疫性の肉芽腫の形成を伴うもので、マイコバ クテリウムのような伝染性の病因によるものである可能性もある。 キトトリオシダーゼは、マクロファージの病変を伴うような別の病気の状態を 示す有用なマーカーとなり得る。例えば、多量のコレステロールを含有するマク ロファージの存在が特徴であるアテローム性動脈硬化症は、キトトリオシダーゼ が病態マーカーとして有望な疾患の一つである。また、発明者らは、X−連鎖性 副腎白質異栄養症及び多発性硬化症患者の脳脊髄液中のキトトリオシダーゼ濃度 が上昇していること見出した。これらの症病においては、活性化された脳マクロ ファージ(小グリア細胞)の出現が、病理発生において必須の特徴である。 明らかに、キトトリオシダーゼは、ゴーシェ病発症の診断 用マーカーとして用いることができ、また、その他のリソソームにおけるリピド ーシスの診断用マーカーとしても用いることが可能であると考えられる。更に、 血漿酵素濃度の上昇の検出は、類肉腫の診断に有用であり、また神経変性を伴う 病状(neurodegenenrative disorder)の診断には、脳脊髄液中の酵素濃度の上 昇の検出が有用であると考えられる。さらに、治療の過程における酵素濃度の正 常化は、治療の効果をモニターする重要な道具となり、また療法の最適化のガイ ドラインとして役立つものである。 キチン含有生物に対する(医薬目的の)薬剤として、ヒトキチナーゼ(キトトリ オシダーゼ)を生体内で用いるためには、多くの条件を満たさなければならない 。 重要な問題の一つは、人体のキトトリオシダーゼに対する耐性である。前述の ように、人体は内因性のキチンを含有するとは考えられていない。従って、リゾ チームと同様、キチナーゼ活性は人体に無害であるはずである。キトトリオシダ ーゼは循環器系に生じる内因性のタンパク質であるため、ヒトにその酵素を追加 的に投与する事によって免疫応答が引き起こされるとは考えにくい。種々の組織 中にグルコシルセラミドを過剰に含有するマクロファージが大量に発生すること を特徴とする劣性遺伝性リソソーム蓄積異常(文献17)であるゴーシェ病の患者 の循環器系において、高濃度のキトトリオシダーゼが見出される。ゴーシェ病患 者の血漿中の過剰 なキトトリオシダーゼ濃度は、明らかに有害な結果を伴う事はない。この知見は 、循環器系における過剰量のキトトリオシダーゼに対し、ヒトは十分な耐性を有 する事を示唆する。このことはキチン含有病原体を除去するためにキトトリオシ ダーゼを用いようとする際の重要な必要条件である。 キトトリオシダーゼをキチン含有病原体に対する薬剤として有用なものとする ためには、一定状態のキトトリオシダーゼを多量に入手できるようにする必要が ある。ヒト キチナーゼを単離するための遍在する天然の原料は存在しない。尿 及び胎盤に存在する酵素量は低い。そのため、本発明者らはキトトリオシダーゼ をコードするcDNAを単離するため鋭意研究を行なった。キトトリオシダーゼ 遺伝子はマクロファージにおいて特異的に発現するので、試験に用いた他の細胞 種のcDNAにはキトトリオシダーゼcDNAは見出されなかった。しかし、多 量にキトトリオシダーゼ活性を分泌する長期間培養したマクロファージのmRN Aから構築されたcDNAライブラリーは、キトトリオシダーゼをコードするc DNAを非常に豊富に含有することが証明された(全cDNAに対して0.1%) 。このような方法で2種のcDNAを同定し、クローン化した。 2種の異なるcDNAの存在は、選択的なRNAスプライシングによるもので あり、その結果、いずれも機能を有する2種の異なったmRNAが生じる。CO S細胞により2種の cDNAを発現させたところ、2つの異なるキトトリオキシダーゼタンパク質が 産生及び分泌された。これらのタンパク質はそれぞれSDS存在下のポリアクリ ルアミド電気泳動によって測定される分子量が39kDa及び50kDaである 。これらの組換えDNA技術によって製造されたキトトリオシダーゼ イソ酵素 はそれぞれキトザイム50及びキトザイム39と命名され、共に酵素活性を有し ていた。更に、組換えキトトリオシダーゼ イソ酵素の特性を研究したところ、 その比活性、即ち、一定の抗原量に対する酵素活性は、組織から単離されたキト トリオシダーゼ及び血漿中のキトトリオシダーゼと同等だった。 ‘実験データ’の項で詳しく述べるように、2つのキトトリオシダーゼタンパ ク質の類似性は非常に高く、C末端の部分に違いが存在するのみである。イソ酵 素は、クラス18のグリコシル加水分解酵素に属するキチナーゼ間で高度に保存 されている、活性中心と推定される領域を含有する(文献19)。クローン化され たcDNAの塩基配列から、いずれの酵素もN−グリカンを欠如していると考え られる。実際、39kDa酵素にはグリカン類は見出されなかった。しかし、5 0kDa酵素におけるO−グリコシル化の存在を除外することはできない。 上記の発見は、いずれの形態のヒト キトトリオシダーゼも従来の方法を用い た組換えDNA技術によって大量に製造 することが容易であることを示唆している。更に、真核生物の細胞によるヒト由 来酵素の産生のみならず、原核生物による産生の可能性も考えられる。その証拠 に、高い相補性を有する酵素が、いくつかの原核生物、例えばSerratia marcesc ens によって内因的に産生されている。キトトリオシダーゼの精製方法は開発さ れている(文献18及び下記を参照)。従って、いずれの組換えヒトキトトリオシ ダーゼも、ヒトへの投与が可能な純粋で均一なものを大量に得ることが可能とな る。 39kDaキトザイムは、グリコシル化されたタンパク質ではない。従って、 このタンパク質を原核細胞に産生させることは有望である。原則的には、適切な リーダー配列を用いることにより、(キトトリオシダーゼとの)相同性の高いキ チナーゼを産生・分泌する細菌に、正確に折り畳まれたヒト由来キトトリオシダ ーゼを細胞外の空間に分泌させることができる。あるいは、少なくとも39kD aキトザイムについては、酵母(の細胞)を用いて組換えキトトリオシダーゼを 産生させることも考えられる。しかしこれまでのところ、高等真核生物のみなら ず、下等真核生物ないしは原核生物においても50kDaキトザイムは産生され 得るという可能性は否定できない。従来の技術を用いて、昆虫、植物、あるいは 脊椎動物の細胞によりキトザイムを産生させることは可能と思われる。最終的に は、上記のような目的のために、大量の キトザイムを含有する乳汁を産生するトランスジェニック動物をも想定し得る。 牛乳中に添加したキトザイムは、37℃において数時間は完全に安定であることが 観察されている。 この他、酵素を医薬品として用いる場合に必要なことは、その酵素が生体内に おいて(分解、排泄されずに)残存し、その機能を発揮し得ることである。そこ で、キトトリオシダーゼの種々の性質に注目してみる。 いずれの組換えキトトリオシダーゼ(キトザイム39及び50)も、種々のプ ロテアーゼ消化に対し安定であることが判明している。キトトリオシダーゼは、 例えばドデシル硫酸ナトリウムの共存下で加熱するなどの方法により変性させた 後でなければプロテアーゼにより開裂させることができない。血清又は血漿を37 ℃で長時間インキュベートしても、酵素活性の低下は見られない。これは、キト トリオシダーゼは血清中のプロテアーゼにより分解されないことを示唆している 。同様に、マクロファージの培養に用いた倍地中でも、他の分泌性の分解酵素類 が多量に含まれているにもかかわらず、37℃においてキトトリオシダーゼは安定 である。 更なる分析によって、キトトリオシダーゼ イソ酵素はpH3〜8の範囲内で 比較的安定で、酵素活性を示すことが明らかとなった。更に、酵素は、50℃に おいても完全に安定であり、酵素溶液を濾紙に滴下し、室温で数日間貯蔵した後 でも貯蔵前と同様の活性を再現した。−20℃もしくは−70℃で貯蔵し、凍結 及び溶解を繰り返しても、酵素活性の減少が生じることもなかった。 これら全ての観察結果は、キトトリオシダーゼ イソ酵素が真に安定な酵素で あり、変性に対して本質的に高い耐性を有するため、様々な環境において機能す る可能性を示唆している。 キチナーゼを静脈投与によって使用するためには、そのクリアランスを認識す る必要がある。血流中に存在する主なイソ酵素は50kDa蛋白質である。組織 中では、主要な酵素として39kDa イソ酵素が見出されるが、これは、細胞 中に50kDa蛋白質が取り込まれ、タンパク分解酵素によって開裂されること により、リソソームの存在下でも非常に安定な39kDaタンパク質が生じるた めである。ラットにおける実験結果は、循環器系における組換え50kDaキト トリオシダーゼの半減期が、39kDa酵素のそれよりも幾分長いことを示唆し ている。血中からのキチナーゼの除去行程がそれほど速くないので、キチナーゼ のクリアランスは、ヒト キトトリオシダーゼを静脈注射したラットの血流中の 酵素活性の消失をモニターすることによって求めることができ、半減期は約1時 間である。キトトリオシダーゼの一日当りの尿中排泄量はごくわずかである。腎 臓には‘リソソームによってプロセシングされた’39kDa酵素が極めて豊富 であることから、一部の酵素は近位尿細管上皮細胞によって効率よく回収されて いると考えられている。これまでの観察結果は、静脈内投与により循環器系中の ヒト キチナーゼの濃度は長時間にわたり高濃度に保たれるため、酵素が様々な 組織に到達しうることを示唆している。 精製キトトリオシターゼは、キチン並びに人工キチン様基質、例えばPNP− キトトリオシド、PNP−キトビオシド、4MU−キトトリオシド及び4MU− キトビオシドなどを効果的に加水分解することができる。更に、キトトリオシタ ーゼを真菌(Mucol 属の種)に添加することにより真菌の成長を抑制することが 知見された。これらの発見は、キトトリオシターゼと他種のキチナーゼとの間に 見られる高い相同性に基づく予測に合致している。 要約すれば、いずれのキトトリオシターゼも治療薬としての用途において有効 な性質を有している。いずれの酵素も従来の組換え技術を経て比較的容易に得る ことができる。この酵素は非常に安定であり、様々な条件下で酵素活性を発揮す る。組換えキトザイム39及びキトザイム50並びに組織由来のキトトリオシダ ーゼは、少なくともラットのモデルにお いては循環器系から速やかに消失することはなく、原則として様々な組織に分布 しうる。 キトトリオシターゼに関する上記の発見に基づき、発明者らは天然あるいは組 換えキトトリオシターゼ(キトザイム)が、これらの酵素による加水分解が可能 なキチン又はキチンに関連した構造体を含有する生物による感染症に対する介入 における用途に関して有望な物質であることをここに主張するに至った。 二つの組換えキトトリオシターゼであるキトザイム50及びキトザイム39は 、酵素としての性質、即ち、比活性、pH依存性及び安定性において同一である と考えられてきた。どちらのキトザイムもキチンを含有する様々な病原体(表1 参照)に対する薬品として用いることができる。キチンを含有する病原体による 感染は、人体の様々な部位で起こる。キトザイムは内因性の物質であるので、人 体の様々な部位において適用可能であると考えられる。 皮膚に起こる表在性真菌感染に対する処置として、キチナーゼの局所的投与が 考慮される。キチン含有生物による眼内感染、生殖管感染及び腸管感染もまたキ チナーゼの局所的投与で対処することができる。上記と同様の原因による肺系器 官の感染症は、酵素を含有する噴霧剤を用いることにより対処することができる 。口内及び胃腸管内におけるキチン含有生物による感染に対しては、経口投与が 考えられる。そして、 前説で述べたように、血流中、組織内、細胞間或いは細胞内に存在する病原体に 対しては静脈投与の使用が考えられる。更に研究を進めることによって、キトザ イムの特定のイソ酵素を用いた、標的組織をより特定した治療が可能となるであ ろう。 本発明は、更にいくつかの変法及び改良法、特に以下のような、将来実現可能 と思われる方法を包含する。 A. 組換えヒト キチナーゼとβ−1,3−グルカナーゼの混合物の使用 植物及び魚類において、キチナーゼは真菌感染に対抗するために重要な役割を 担っていることが広く知られている。真菌類の細胞壁はキチンとβ−グルカン小 繊維の混合物から成るので、植物では、キチナーゼとβ−1,3−グルカナーゼ が相乗的に作用する(文献15)。これまでヒトは、キチナーゼもβ−グルカナ ーゼも生成する能力は有していないと信じられていたが、長期間培養されたマク ロファージはキチン分解酵素を分泌するのみならず、色素標識されたβ−グルカ ンに対して活性を示す酵素をも分泌することが知見された。そこで本発明者らは 、植物における感染防御機構と同様に、ヒトキチナーゼ及びβ−グルカナーゼの 混合物は、それぞれの酵素単独に比べより強力な抗真菌剤となり得ることを提案 する。長期間培養したマクロファージからβ−グルカナーゼを単離し、続いてβ −グルカナーゼに対応するcDNAを クローニングすることによって、組換えヒト β−グルカナーゼをこのような目 的に利用できるようになると考えられる。 B. 改変された組換えヒトキチナーゼの使用 キトトリオシダーゼの三次元構造及びその中のいくつかのドメインの機能に関 する知識が増加することにより、特定の使用目的に応じて酵素を改変することが 可能となると思われる。例えば、触媒活性及びその特異性の維持に必要とされな いドメインを欠いた組換え酵素を産生させると、より小形であるコアタンパク質 が生じると考えられる。このようなタンパク質は元の酸素活性が保持されている 上、体内の特定の位置に容易に浸透することが可能である。現在知られており、 急速に研究の進んでいるグリコシル加水分解酵素18族及び19族に関する知見 は、改良型キチナーゼの作成は現実的な選択肢であることを示している。 キチナーゼの治療目的の用途に加えて、本発明は予防目的の用途も包含する。 本発明者らは、ヒト血漿キトトリオシダーゼ活性が年齢を増すごとに増加し、 60歳以上のヒトの血漿キトトリオシダーゼ活性は小児に比べ平均して数倍高い ことを知見した。更に、本発明者らは、約15人に1人の割合で活性キトトリオ シダーゼ産生能を欠くヒトがいることを発見した(文献17参照)。このような ヒトの場合、血漿及び尿、白血球、更に は末梢血単球由来の長期間培養されたマクロファージの酵素活性が欠如している 。キトトリオシダーゼ欠乏症の発生の頻度は、健常者及びゴーシェ病患者の間で 同様である。ゴーシェ病の臨床的な経過は、血漿キトトリオシダーゼ活性が欠如 した患者においても、血漿キトトリオシダーゼ活性が通常の数千倍に上昇した患 者においても全く同じである。これは、キトトリオシダーゼ濃度の急激な上昇は 、ゴーシェ病と診断するに足る臨床上の顕著な特徴ではあるが、必ず見られる症 状ではないことを示している。 本発明者らは、キトトリオシダーゼの欠乏は遺伝的な特徴であることを見出し た。キトトリオシダーゼが欠乏したヒトの末梢血単球より得られたマクロファー ジを長期間培養したところ、キトトリオシダーゼmRNA量の極度な減少が、タ ンパク量の減少と共に観察された。残存キトトリオシダーゼタンパク質が正常な 分子量を有するにもかかわらず酵素活性を有さないという事実は、少なくともこ の場合、根本的な欠陥はキトトリオシダーゼ遺伝子の突然変異によるものである ことを示唆している。代謝標識実験(metabolic labeling)及びノザンブロッティ ングによる分析結果は、この突然変異が触媒能を欠失したキトトリオシダーゼタ ンパク質の合成を減じるということを示唆している。 キトトリオシダーゼの欠乏により障害が生じる可能性を見逃すことはできない 。例えば、キチンを含む病原体に対する 抵抗力の減退や、食細胞中のリソソームによるキチン分解能の損失の結果生じる 細胞機能の異常が挙げられる。キトトリオシダーゼの欠乏が実際に何らかの生命 を脅かす危険性を伴うということを立証するには、更なる研究が必要である。上 記の想定が正しければ、キトトリオシダーゼの欠乏したヒトへのヒトキトトリオ シダーゼの予防的投与が考えられる。 キトトリオシダーゼの機能欠陥を誘発する他の原因として免疫不全が挙げられ る。例えば、HIV感染による後天性免疫不全症の患者の血漿中のキトトリオシ ダーゼの濃度は概して減少している。また、類肉腫(sarcoidosis)を患う患者に コルチコステロイド(corticosteriod)療法を施した際にキトトリオシダーゼ活 性は急激に低下した。活性化マクロファージの存在が、血液中の正常なキトトリ オシダーゼ濃度の維持に重要な要因であることは明らかである。キチンを含有す る病原体に感染する危険性の高い免疫不全症の患者には、組換えキトトリオシダ ーゼを用いたキトトリオシダーゼの補給が考えられる。 外傷の場合も、真菌類感染の危険性を減少させるために組換えキトトリオシダ ーゼの局部的塗布が考えられる。 ヒトキチナーゼもまた、人体に注入、または植え込まれるキチンを基材とする 構造体の分解手段として医薬目的に研究され得る。 例えば、キチンを基材とするカプセル(‘キトソーム’)に 薬物を封入することができる。規定量のヒト キチナーゼを薬物と共にカプセル に封入すると、薬物の放出を確実に制御することができる。特に薬物がキチン基 質(chitin matrix)に詰まった場合、薬物の放出は遅く、緩慢になると想定され る。このような系におけるヒト酵素の使用は、キチンを基材とするカプセルを完 全に破壊する結果となり、免疫学的な反応の誘発を防止する。上記の系に用いら れる薬物は、低分子の化合物から、酵素療法や遺伝子治療を目的とするタンパク 質やDNA断片と多様である。キチン(又は、そのアナログ)は、既に薬物の担 体として使用されている(文献20)。 上記に関連するその他の利用法として、キチンを構成成分とした植込剤を迅速 に分解するための組換えキトトリオシダーゼの使用が挙げられる。これは、一時 的な機能を果たすだけの植込剤を使用する際に有益であり、組換えキトトリオシ ダーゼの投与により容易に植込剤を溶解することができる。 組換えキトトリオシダーゼは、殺真菌化合物として生体外でも使用することが できる。例えば、人体中に戻さねばならないヒト培養細胞は、好ましくは坑生物 質の非存在下で培養する必要があるが、組換えキトトリオシダーゼ(又は、β− 1,3−グルカナーゼとの混合物)は、そのようなヒト培養細胞の培地に真菌の 混入の予防のために付加することができる。関連する例としては、遺伝子治療を 目的とする細胞の生体外培養や、外傷治癒に関連して使用される表皮ケラチン細 胞の生体外培養が挙げられる。 最後に、組換えヒト キトトリオシダーゼ(又は、β−1,3−グルカナーゼ との混合物)は、真菌感染の予防を目的として、練り歯磨きやボディローション の添加物として使用することができる。 次に本発明を下記の実施例により詳細に説明するが、これらの実施例は本発明 の範囲を限定するものではない。 実施例1ヒト キトトリオシダーゼをコードするcDNAのクローニング及びcDNAの 解析 ヒト キトトリオシダーゼ(human chitotriosidase)をコードするcDNAのク ローニングを以下の方法で行なった。非常に高いキトトリオシダーゼ活性を有す る1型ゴーシェ病患者の脾臓(文献18)からキトトリオシダーゼを精製した。 キトトリオシダーゼのN末端のアミノ酸配列を決定し、得られた配列情報を用い てキトトリオシダーゼcDNAのクローニングを行なった。始めに、決定された キトトリオシダーゼのN末端アミノ酸配列をもとに、縮重を含むオリゴヌクレオ チドよりなるセンス鎖 5’−TGYTAYTTYACNAAYTGGGC−3’を設計した。次に、 活性中心において必須であると考えられる、各種キチナーゼ間で高度に保存され ている配列をもとに、縮重を含むアンチセンス鎖5’−CCARTCIARRTYIACICCRTCR AA−3’を設計した。 これらのオリゴヌクレオチドを用い、RT−PCR法によりDNA断片を増幅した。DN A断片の増幅を行なうために、多量のキトトリオシダーゼを分泌する長期間培養 したマクロファージの全RNAを単離した。一本鎖cDNAの合成をSuperScrip t(商標)RNase H,逆転写酵素及びオリゴdTを用いて行なった。アルカリ加水 分解後、エタノールで沈殿したcDNAをテンプレートとして用い、通常の条件 下でPCRを行なった。RT−PCR法により得られたDNA断片のサイズは予測(キチナ ーゼファミリー間のホモロジーに基づく)と一致した。得られたDNA断片を精製 し、T4 DNAポリメラーゼで処理後、プラスミドベクターpUC19のHindIIサイト に挿入した。ジデオキシチェーンターミネーション(dideoxy nucleotide chain termination)法により決定した塩基配列は、ヒト キトトリオシダーゼのN末端 アミノ酸配列より求めた塩基配列と完全に一致し、全長キトトリオシダーゼcD NAを単離する際に用いるプローブとして有用であることを示した。 培養したマクロファージより調製した全RNAを用いcDNAライブラリーを 作成した。2本鎖マクロファージcDNAはGIBCO−BRL社製のSuperScript Choi ce System cDNA Synthesis Kit を用いて調製した。2本鎖cDNAを、cDN Aに対して十分な量のBstX1リンカー(パリンドローム構造を有さない)に連結 し、その後、低融点アガロースゲルを用いサイズ分画を行なった。500bpを 超える分子量のcDNAを精製し、pcDNA1ベクター(InVitrogen社製)のBstX1 サイトに挿入した。cDNA挿入後のベクターをエレクトロポーレーション法を 用い大腸菌 MC106/p3に導入して形質転換し、マクロファージcDNAライブラ リーとした。 ランダムプライミング(randam priming)法により放射線標識したキトトリオ シダーゼ部分cDNAをプローブとし、上記のcDNAライブラリーのコロニー ハイブリダイゼイションを行なった。プローブによるハイブリダイゼイションは 、1mM EDTA及び7%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate ; 以下、屡々、SDSと略す)を含む 0.5M リン酸緩衝液 (pH7.2)中で65 ℃、4時間行なった。次に150mMの塩化ナトリウム溶液及び0.1%(w/v) SDSを含む15mM クエン酸ナトリウム溶液(pH7.0)を用いてフィルターを2回 洗浄し、オートラジオグラフィーを行なった。全コロニー中、約0.1%のコロ ニーは キトトリオシダーゼ部分cDNAを用いたハイブリダイゼイションに対 して陽性を示した。前記した方法で約20クローンの塩基配列を決定し、2つの 異なる全長キトトリオシダーゼcDNAを単離した。これらのクローンをchi.50 及びchi.39と命名した。 cDNAクローンchi.50の塩基配列には、ATGで開始されTGAで終了する、13 〜1410番の塩基に相当するオープンリーディングフレーム(Open Reading F rame)が存在する(図1参照)。このオープンリーディングフレームは、特徴的な ERシグナルペプチドをN末端にコードし、すぐその後にキトトリオシダーゼタン パクより決定したN末端の配列と同一の配列をコードしている。cDNAの塩基 配列には、N−グ リコシル結合を有すると考えられる部位(potential N−linked glycosylation site)が存在せず、この結果は、単離されたキトトリオシダーゼにN−グリカン (N−linked glycan)が存在しない点と一致する。シグナル配列除去後の予想さ れるタンパク質の大きさは445個のアミノ酸であり、計算により得られる分子 量は49kDaである。培養したマクロファージを用いた代謝標識実験から、こ れらの細胞は顕著なキトトリオシダーゼタンパク質の合成及び分泌を行なうこと が明らかとなり、SDS存在下、還元条件下のポリアクリルアミド電気泳動法によ り概算されるキトトリオシダーゼの分子量は50kDaである。50kDaヒト キトトリオシダーゼのC末端のアミノ酸配列はセリン残基を豊富に有し、論理 的な推測から、その一部はO−グリコシル化(O−glycosylation)されていると 予想される。50kDaヒト キトトリオシダーゼにおけるこのようなグリカン の存在は未だ否定も確認もされていない。 cDNAクローンchi.39は、キトトリオシダーゼタンパク質とほぼ同一である 、387個のアミノ酸からなるタンパク質をコードするオープンリーディングフ レームを有する(図2参照)。疎水性のリーダー配列の除去後に得られると予想 されるchi.39 cDNAがコードしているタンパク質は366個のアミノ酸から なり、分子量は39kDaと考えられる。シグナルペプチド及びそれを含む初め の384アミノ酸残基 はchi.50 cDNAによりコードされるタンパク質と同一である。予想される3 9kDa キトトリオシダーゼのアミノ酸配列のうち、C末端に位置する3個の アミノ酸のみがchi.50 cDNAがコードすると考えられるタンパク質と異なる 。 両cDNAの塩基配列の比較から、chi.50 cDNAは、chi.39 cDNAに塩 基配列が挿入された結果であることが示唆される。 又、chi.39 cDNAがコードするキトトリオシダーゼにもN−グリコシル化 部位の存在は考えられない。 様々な形のキトトリオシダーゼ間の関係を図3に示す。 2つのクローン化されたキトトリオシダーゼcDNAの構成は、選択的なスプ ライシングが行われたために2種の異なるmRNAが生じたことを強く示唆して いる。実験的に証明されたように、Chi.39 cDNAはchi.50 cDNAよりも一 つ多くキトトリオシダーゼ遺伝子のエクソンを有する。ゲノムキトトリオシダー ゼDNAをクローン化し、部分配列を決定したところ、決定された配列にはイン トロンからエクソンへの転移位置が見出され、この結果は、2種の異なるcDN Aクローン(2種の異なるmRNAを表す)の存在は、キトトリオシダーゼRN Aの選択的スプライシングの結果であるという予測と一致している。 培養したマクロファージを用いた代謝標識実験から、本来、 多量の50kDaキトトリオシダーゼに付随して少量の39kDaキトトリオシ ダーゼが合成されることが見出された。この発見に基づくRNAse保護実験より、 マクロファージ中にchi.50 RNAと少量のchi.39 RNAが同時に存在すること が明らかとなった。更に、分泌された50kDaのキトトリオシダーゼはマクロ ファージに取り込まれ、タンパク分解酵素によるプロセシングによって38〜3 9kDaのタンパク質を生じることが見出された。新たに産生されたキトトリオ シダーゼのうちのいくらかは分泌されず、直接リソソーム系細胞小器官によって タンパク分解酵素によるプロセシングを受けるとも考えられる。 ゴーシェ病患者の脾臓からは、少なくとも2種のキトトリオシダーゼのイソ酵 素を単離することが可能である。SDS存在下で行なうポリアクリルアミドゲル電 気泳動により決定されるそれぞれの酵素の分子量は50及び39kDaである。 組織より単離された39kDaのキトトリオシダーゼの厳密な分子質量を電子ス プレー質量分析法(electron spray mass spectrometry)で決定した。この測定 結果から、組織由来の39kDaの酵素(通常のN末端を有する)はC末端のタン パク分解酵素によるプロセシングを経たことが明らかとなった。39kDa前駆 体タンパク質のプロセシング(C末端の4アミノ酸残基の除去)及び50kDa 前駆体タンパク質のプロセシング(C末端の83アミノ酸残基の除去)は共に組 織由来の酵素を生じる点に注目されたい。 EMBL及びGenBankのデータベースを検索した結果、2種のヒト キトトリオシダ ーゼと他の種に存在するキチナーゼ及び関連タンパク質のグループ間には顕著な 相同性が見出された。相同性を有するすべてのタンパク質はいわゆる‘キチナー ゼタンパク質ファミリー’(文献18と19)に属する。 キチナーゼの活性中心に必須であると考えられる領域は最も相同性が高い(図 4参照)。キチナーゼファミリーに属する他のタンパクとの相同性を有するその 他の領域も特定された。39kDaキトトリオシダーゼのアミノ酸配列において 、キチナーゼタンパク質ファミリーのメンバーである9種のタンパク質のうち少 なくとも6種のタンパク質と同一のアミノ酸残基を図1に太字で示した。 50kDaヒト キトトリオシダーゼの予想されるC末端部分の配列は、Mandu ca sexta及びBrugia malayiのそれぞれに由来のキチナーゼとのみ相同性を有し ていた。後者の酵素においては、O−グリコシル化された部位の存在が報告され ている(文献12)。 実施例2ヒト キトトリオシダーゼの組換え技術による産生 COS-1細胞を2種のcDNAのいずれか一方を用いて公知のDEAE-Dextran法( 文献21)に従って形質導入を行なった。 キトトリオシダーゼの生成は、細胞によって分泌される酵素活性を測定すること により追跡した。培地中のキトトリオシダーゼ活性の測定は、蛍光発光性の基質 である4-methylumbelliferyl-chitotriosideを用いて公知の方法に従って行なっ た。 chi.50 cDNA又はchi.39 cDNAのいずれかで形質導入されたCOS-1細胞 の形質導入後7日目の培地は、高いキトトリオシダーゼ活性(5〜20mU/m l)を有していた。cDNAを用いずに形質導入を行なったCOS細胞、又は形質 導入に用いたものと同一のcDNAを用いるが、アンチセンスの方向に挿入した ベクター用いた形質導入体からは酵素活性は測定されなかった。 COS細胞により産生されたキトトリオシダーゼを、ウサギの抗ヒトキトトリオ シダーゼ抗血清を用いた免疫沈降法により分析した。この抗血清は、ヒト キト トリオシダーゼの酵素活性を阻害しうる。図5は、脾臓より単離されたキトトリ オシダーゼと同様に、組換えキトトリオキシダーゼも抗血清によって不活性化さ れうることを示す。この知見は、抗原として一定量のタンパク質の有する酵素活 性は、2種の組換えキトトリオシダーゼ及び脾臓由来キトトリオシダーゼのいず れの場合も同様の活性であることを示唆している。 組換えキトトリオシダーゼ(‘50及び39キトザイム’)と脾臓由来キトトリオ シダーゼとの間には、各pHにおける酵 素活性、酵素の安定性、並びに4-methylumbelliferyl-chitotrioside及び4-meth ylumbelliferyl-chitobiosideを基質として用いた際のKm値のいずれにおいて も、差は見出されなかった。 代謝標識実験から、それぞれchi.50 cDNA又はchi.39cDNAで形質導入 されたCOS細胞は、予想された分子量である、それぞれ50又は39kDaのキ トトリオシダーゼを生成することが判明した。 実施例3キトトリオシダーゼの精製 本発明者らは、既にゴーシェ病患者の脾臓から39kDa及び50kDaキト トリオシダーゼタンパク質を精製する方法を開発している。この方法を用いるこ とにより、精製された39kDaキトトリオシダーゼタンパク質と部分的に精製 された50kDaの酵素を得ることができる。 簡単に説明すると、界面活性剤を含まない脾臓抽出液を25mMトリス緩衝液 (pH 8.5)で平衡化させたポリバッファー交換カラム(polybuffer exchange colum n; PBE 94,Pharmacia Biotech Inc.社製)に添加し、カラムの平衡化に用いたも のと同じ緩衝液で溶出した。タンパク質の溶出開始後、最も高いキトトリオシダ ーゼ活性を有する画分をプールし、限外ろ過により濃縮した。得られたプール後 の粗タンパク質をSe phadex C-1000のカラムに添加し、25mMトリス緩衝液(pH 8.0)で溶出した。 酵素活性のピークに相当する画分をプールし、濃縮後、0.5%(v/v)Triton X-100 及び0.1%(w/v)の両性電解質(Servalyte 4-9、Serva社製)を含む Ul trodex(Pharmacia社製)を用いて等電点電気泳動を行なった。10℃、400 Vの条件下で一晩等電点電気泳動を行なった後、ゲルを分画し、タンパク質を水 で抽出した。pI値が8.0の画分は、SDS存在下で行なうポリアクリルアミド電 気泳動によって決定される分子量が39kDaの精製されたキトトリオシダーゼ を含み、pI値が7.2付近の画分は、分子量が50kDaのキトトリオシダー ゼと共にその他のタンパク質を含んでいる。 50kDaキトトリオシダーゼの完全な精製は、クエン酸/リン酸緩衝液(pH 5.2)中で、不純物を含む酵素組成物とキチン粒子を共に4℃でインキュベート し、室温で4M塩化ナトリウムを含む上記の緩衝液を用いて溶出することにより 達成した。不純物はキチン粒子に結合しないか、又は、0.1M塩化ナトリウム 及び0.5%(v/v)Triton X-100を含む氷冷したクエン酸緩衝液でキチン粒子 を洗浄することによって完全に除去される。 同様の単離方法は、キトトリオシダーゼcDNAで形質導入された細胞の培地 から組換えキトトリオシダーゼ(キトザイム)の単離を行なう際にも用いること ができる。 精製された39及び50kDaの組換えキトトリオシダーゼは、精製された組 織由来のキトトリオシダーゼと同一の比活性を示した。これらの酵素の比活性、 即ち、前記の条件下でこれらの酵素1mgによって加水分解される合成基質4-methy lumbelliferyl-chitotriosideの量は、1時間当り6〜6.5mmol/mgである。 実施例4キチンの分解 精製された50kDa及び39kDaの組織由来キトトリオシダーゼ、並びに 組換えDNA技術により得られた50kDa及び39kDaのキトザイムは、い ずれも4-methylumbelliferyl-chitotrioside及び4-methylumbelliferyl-chitobi osideを加水分解することができ、chitotrioside加水分解能に対するchitobiosi de加水分解能の比は約0.7である。更に、これらの酵素は、p-nitrophenyl-ch itotrioside及びp-nitrophenyl-chitobiosideの加水分解も効果的に行なう。 キチンアズール(Chitin azure、Sigma社製)をクエン酸/リン酸緩衝液(pH 5.2)に最終濃度10mg/mlとなるように懸濁し、この懸濁液をキチナーゼ活性 の追跡に用いた。キチンの分解は、可溶性アズールの放出を550nmの波長に対す る吸光度を測定することにより定量した。Serratia marcescens由来のキチナー ゼ(Sigma社製)をコントロールとして用 いた。4-methylumbelliferyl-chitotriosideを基質とした場合、ヒト キトトリ オシダーゼのキチナーゼ活性は、微生物由来のキチナーゼと同レベルの活性を示 した。例として、文献18を参照されたい。 Micrococcus lysodeikticusの細胞壁懸濁液に対するヒト キトトリオシダーゼ の顕著な酵素活性は測定されず、この結果は、キトトリオシダーゼはリゾチーム 活性を有していないことを示唆している。 実施例5殺真菌効果 ヒト キトトリオシダーゼの殺真菌作用の有無を試験するために、キチンを含 む真菌(Mucor mucedo)をプレート培地上(モルトエキス、ペプトン、ブドウ糖 及び寒天を含有)に培養したが、この時、寒天培地表面に対して菌糸が平らにな るようにセロファン膜を重層した(文献16参照)。菌糸の生えた培地の各セクタ ーを切り出し、顕微鏡観察用のスライドガラス上にマウントした。精製したキト ザイム50及びキトザイム39は、それぞれ0.15M塩化ナトリウム溶液に対して 透析を行なった後、以下の試験に用いた。酵素を含む試料及び0.15M塩化ナ トリウム溶液をそれぞれ菌糸の先にピペッティングし、顕微鏡下で観察した。酵 素の添加直後に菌糸の生長は停止し、その後、菌の形態は変形した。食塩水の添 加は全く効果がなかった。菌糸生長への負の影響は0.005 mg/mlのキトザイム溶 液においても確認された。 図面の説明 図1 chi.50 cDNAクローンの塩基配列と、対応するタンパク質の予想される アミノ酸配列。 疎水性のリーダー配列(1〜21番目のアミノ酸)は、アンダーラインで示し てある。キトトリオシダーゼのアミノ酸のうち、キチナーゼ ファミリーに属す る9種の酵素のうち少なくとも6種に共通して存在するアミノ酸は、太字で記入 してある。キチナーゼ ファミリーに属する9種の酵素は、Autographa californ iaNicotiana tabacum由来のキチナーゼ以外は、図4の説明中に列挙されてい る。 図2 chi.19 cDNAクローンの塩基配列と、対応するタンパク質の予想される アミノ酸配列。 疎水性のリーダー配列(1〜21番目のアミノ酸)は、アンダーラインで示し てある。 図3 マクロファージで産生される種々のキトトリオキシダーゼ イソ酵素に ついての概観。 選択的なスプライシングが行われるために、2種類のmRNAが産生され、それぞ れ分子量が39と50 kDaと測定される2種類のキトトリオキシダーゼタンパク質に 翻訳される。両者とも大半はこの形態のまま分泌されるが、一部の酵素は直接リ ソソームに到達し、又、分泌された酵素の一部はエンドサイトーシス作用を受け てこの小胞に到達する場合もある。リソソームでは、C末端が更にタンパク分解 酵素によるプロセシングを受け、約38〜39 kDaの分子量になる。いずれの前駆体 (39及び50kDa)も上記の方法で同一のリソソーム型酵素となる。50kDa キトトリオシダーゼのC末端にO−結合グリカンが存在することを見落とせない 。39kDa前駆体及びリソソームにおいてプロセシングを受けたキトトリオシ ダーゼはグリカン類を含まない。 図4 キチナーゼタンパクファミリーに属する数種のタンパク質の活性中心と 考えられる領域のアミノ酸配列。 図中のタンパク質は: ヒト キトトリオシダーゼ;ウイルス(Autographa cali fornica )由来キチナーゼ(GenBank L22858); タバコに付く毛虫(Manduca sexta )由来キチナーゼ(GenBank U02270); 線虫(Brugia malayi)由来エンドキチナ ーゼ(GenBank M73689);ヒト卵管糖タンパク質(GenBank U09550);ヒト軟骨細胞 及び滑膜細胞由来糖タンパク質HCgp-39(GenBank M80927);活性化マウスマクロ ファージの分泌タンパク質YM-1(Pir S27879);真菌(Aphanocladium album)由 来キチナーゼ(SwissProt P32470);糸状菌(Trichoderma hazianum)由来キチナ ーゼ(GenBank L14614);原核生物(Bacillus circulans)由来キチナーゼA1(S wissProt P20533);及び植物(Nicotiana tabacum)由来クラスVキチナ ーゼ(GenBank X77110)。キトトリオシダーゼと同一のアミノ酸残基を白抜きで示 した。HCgp-39及びYM-1の両タンパク質はキチン分解能を有さないと思われる。 図5 脾臓より精製された39及び50kDaキトトリオシダーゼ並びに形質 導入されたCOS細胞により産生される39及び50kDaキトトリオシダーゼの 免疫沈降実験。 39kDa脾臓由来精製キトトリオシダーゼ( )、chi.50 cDNAにより形 質導入されたCOS細胞により産生された50kDaキトザイム( )及びchi.3 9 cDNAにより形質導入されたCOS細胞により産生された50kDaキトト リオシダーゼのいずれか一つを含む試料をリン酸緩衝液を含む食塩水中で、それ ぞれ異なる量のウサギ(抗ヒト脾臓由来キトトリオシダーゼ)抗血清と共に室温 にて1時間インキュベートした。 抗体の結合により、キトトリオシダーゼ活性は消失する。キトトリオシダーゼ を抗血清と共にインキュベートした際の残存酵素活性は4-methylumbelliferyl− chitotriosideを基質として用いて測定した(文献18)。異なる酵素間において 類似した免疫沈降曲線が得られることは、一定抗原量に対する酵素活性量が同一 であることを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI A61K 38/46 ADW C07K 7/06 C07K 7/06 16/40 16/40 C12N 9/42 C12N 5/10 C12P 19/26 9/42 21/08 C12P 19/26 C12Q 1/68 A 21/08 G01N 33/50 T C12Q 1/68 33/53 D G01N 33/50 33/577 B 33/53 C12N 5/00 B 33/577 A61K 37/54 ADW (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S Z,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD ,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ ,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CZ, DE,DK,EE,ES,FI,GB,GE,HU,I L,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LK ,LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK, MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,R U,SD,SE,SG,SI,SK,TJ,TM,TR ,TT,UA,UG,US,UZ,VN

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.図1または図2のアミノ酸配列に本質的に対応するアミノ酸配列からなるヒ ト由来キチナーゼ、または該ヒト由来キチナーゼと実質的に同様のキチン加水分 解活性を有する該ヒト由来キチナーゼの改変体であることを特徴とする、実質的 に単離または精製されたキチナーゼ。 2.遺伝子工学的に処理された宿主細胞によって産生される、該宿主細胞または 該宿主細胞の培養に用いた培地から単離される、図1または図2のヌクレオチド 配列に本質的に対応するヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列か らなることを特徴とする、請求項1に記載のキチナーゼ。 3.本質的に図1のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列からなり、分子量が約 50kDaであることを特徴とする、請求項1に記載のキチナーゼ。 4.本質的に図2のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列からなり、分子量が約 39kDaであることを特徴とする、請求項1に記載のキチナーゼ。 5.請求項1〜4のいずれかに記載のキチナーゼ及び薬学的 に許容される担体または希釈剤を包含してなる医薬組成物。 6.キチン含有病原体による感染に対するヒトの治療または予防用の医薬組成物 であって、治療または予防に有効な量の請求項1〜4のいずれかに記載のキチナ ーゼ及び薬学的に許容される担体または希釈剤を包含してなる医薬組成物。 7.更に治療または予防に有効な量のヒト由来β−1,3−グルカナーゼを含有 することを特徴とする、請求項6に記載の医薬組成物。 8.請求項1〜4のいずれかに記載のキチナーゼ及び担体または希釈剤を包含し てなる医薬品以外の組成物。 9.細胞培養用の培地である、請求項8に記載の組成物。 10.ヒト由来細胞の培養用の培地である、請求項8に記載の組成物。 11.化粧用品(例:ボディローション)、歯科用品(例:練り歯磨き、含嗽剤 )または食品(例:牛乳、チーズ等の乳製品)である、請求項8に記載の組成物 。 12.請求項1〜4のいずれかに記載のキチナーゼを、キチンを加水分解するの に十分な量含有することを特徴とする、キチンを母材とする製造物。 13.薬物放出の制御を目的とする、薬物を含有する担体あるいは植込剤である 、請求項12に記載のキチンを母材とする製造物。 14.過渡的な機能性植込剤である、請求項12に記載のキチンを母体とする製 造物。 15.請求項5〜7のいずれかに記載の医薬組成物をヒトに投与することを含む 、キチン含有病原体による感染に対するヒトの治療方法または予防方法。 16.図1または図2のアミノ酸配列に本質的に対応するアミノ酸配列からなる ヒト由来キチナーゼ、または該ヒト由来キチナーゼと実質的に同様のキチン加水 分解活性を有する該ヒト由来キチナーゼの改変体の製造方法であって、 該ヒト由来キチナーゼまたは該改変体の産生能を有する、遺伝子工学的に処理 された宿主あるいは宿主細胞を増殖し、 該宿主、該宿主細胞またはその培養に用いた培地より、産生されたキチナーゼ を単離することを含む製造方法。 17.該キチナーゼのアミノ酸配列が、図1または図2のヌクレオチド配列に本 質的に対応するヌクレオチド配列によってコードされていることを特徴とする、 請求項16に記載の製造方法。 18.図1または図2のアミノ酸配列に本質的に対応するアミノ酸配列からなる ヒト由来キチナーゼ、または該ヒト由来キチナーゼと実質的に同様のキチン加水 分解活性を有する該ヒト由来キチナーゼの改変体を産生しうる、遺伝子工学的に 処理された宿主細胞。 19.図1または図2のアミノ酸配列に本質的に対応するアミノ酸配列をコード するヌクレオチド配列、またはそれに相補的なヌクレオチド配列を包含してなる 組換え核酸。 20.図1または図2のヌクレオチド配列に本質的に対応するヌクレオチド配列 、またはそれに相補的なヌクレオチド配列を包含してなることを特徴とする、請 求項19に記載の組換え核酸。 21.図1または図2のヌクレオチド配列に対応するか、もしくは相補的なヌク レオチド配列である、少なくとも約8塩 基からなるオリゴヌクレオチドであって、完全に近い相補性を要するハイブリダ イゼーション条件下において、請求項1〜4のいずれかに記載のヒト由来キチナ ーゼをコードする核酸とハイブリダイゼーションにより結合し得ることを特徴と するオリゴヌクレオチド。 22.図1または図2のアミノ酸配列より得られるアミノ酸配列を有する少なく とも8アミノ酸残基からなるペプチドであって、 請求項1〜4のいずれかに記載のヒト由来キチナーゼのエピトープ、あるいは 模擬エピトープであることを特徴とするペプチド。 23.図1または図2のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列からなり、抗原性 を有することを特徴とする、請求項22に記載のペプチド。 24.請求項1〜4のいずれかに記載のヒト由来キチナーゼに結合し得ることを 特徴とする抗体。 25.モノクローナル抗体であることを特徴とする、請求項24に記載の抗体。 26.請求項24または25に記載の抗体、並びに抗原または抗体検出用の診断 用キットに含まれる従来の成分を含んでなる診断用キット。 27.請求項22または23に記載のペプチド、並びに抗原または抗体検出用の 診断用キットに含まれる従来の成分を含んでなる診断用キット。 28.請求項21に記載のオリゴヌクレオチド、並びに核酸検出用の診断用キッ トに含まれる従来の成分を含んでなる診断用キット。 29.請求項19または20に記載の組換え核酸、ならびに核酸検出用の診断用 キットに含まれる従来の成分を含んでなる診断用キット。 30.請求項1〜4のいずれかに記載のヒト由来キチナーゼ、ならびに抗原また は抗体検出用の診断用キットに含まれる従来の成分を含んでなる診断用キット。 31.キチンの加水分解条件下において、請求項1〜4のいずれかに記載のヒト 由来キチナーゼにキチンを接触させることを包含する、キチンの分解方法。
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