JPH11171791A - 蛋白質分解酵素を含むヘリコバクター属細菌の除菌剤及び/又は殺菌剤、並びに該細菌に起因する疾患の治療剤及び/又は発症抑制剤 - Google Patents

蛋白質分解酵素を含むヘリコバクター属細菌の除菌剤及び/又は殺菌剤、並びに該細菌に起因する疾患の治療剤及び/又は発症抑制剤

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JPH11171791A
JPH11171791A JP10040514A JP4051498A JPH11171791A JP H11171791 A JPH11171791 A JP H11171791A JP 10040514 A JP10040514 A JP 10040514A JP 4051498 A JP4051498 A JP 4051498A JP H11171791 A JPH11171791 A JP H11171791A
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helicobacter
bacteria
disinfectant
agent
protease
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JP10040514A
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English (en)
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Toru Sumiya
徹 角谷
Yuji Okubo
雄二 大窪
Kenji Fujii
健志 藤井
Takanao Nakai
孝尚 中井
Kiyoto Ishii
清人 石井
Tomonori Hosoda
友則 細田
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Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 消化器疾患の原因となるヘリコバクター属細
菌の新規な除菌剤及び/又は殺菌剤、上記疾患の治療剤
及び/又は発症抑制剤、並びに胃癌の発症抑制剤を提供
すること。 【解決手段】 ヘリコバクター属細菌を溶菌する蛋白質
分解酵素を含有することを特徴とするヘリコバクター属
細菌の除菌剤及び/又は殺菌剤並びにヘリコバクター属
細菌を溶菌することを特徴とするヘリコバクター属細菌
に起因する疾患の治療剤及び/又は発症抑制剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、口腔内および消化
管内に生息するヘリコバクター属細菌の除菌剤及び/又
は殺菌剤、ヘリコバクター属細菌の除菌法及び/又は殺
菌法、ヘリコバクター属細菌に起因する疾患の治療剤及
び/又は発症抑制剤に関する。
【0002】
【従来の技術】今日では、ヒトの胃上皮へのヘリコバク
ター属細菌であるヘリコバクター・ピロリの感染は、胃
炎、胃潰瘍および十二指腸潰瘍を進行させる重要な要因
であり、さらに、胃癌発症の原因の可能性が指摘されて
いる。消化器に感染したヘリコバクター・ピロリを除菌
することにより、胃潰瘍および十二指腸潰瘍の再発が著
しく抑制されることが明らかにされている。また、動物
およびボランティアによるヘリコバクター・ピロリの感
染実験では胃炎の発症がみられ、ヘリコバクター・ピロ
リが胃炎の起炎菌であることが証明されている。
【0003】消化器に感染したヘリコバクター・ピロリ
の除菌のために、抗生物質あるいは合成抗菌剤を中心と
して様々な薬剤が試みられている。例えば、コロイダル
次クエン酸ビスマス、次サルチル酸ビスマスなどのビス
マス製剤、アモキシシリン、アンピシリン、クラリスロ
マイシン、オフロキサシン、テトラサイクリンなどの抗
菌剤、チニダゾール、メトロニダゾールなどの抗原虫
剤、オメプラゾール、ランソプラゾールなどのプロトン
ポンプ阻害剤を単独であるいは2ないし3剤を組み合わ
せて投与することが試みられている。しかしながら、こ
れらの薬剤を単独で用いたのでは除菌効果は十分ではな
く、高い除菌効果を得るためには複数の薬剤を組み合わ
せて用いることが必須とされている。さらに、臨床試料
から分離されたヘリコバクター・ピロリには上記の薬剤
に対して耐性を示す株が存在することが明らかにされて
おり、除菌療法の治療効果を高め、除菌療法をより多く
の患者に適応するために、新しい薬剤の開発が望まれて
いる。
【0004】一般にヘリコバクター・ピロリの除菌には
上述のように複数の薬剤の組み合わせが試みられている
が、現状では必ずしも十分でなく、薬剤による副作用に
より投薬の中止をせざるをえない場合があり、副作用の
軽減された薬剤の開発が望まれている。また、除菌に失
敗した場合には使用した薬剤に対する耐性菌の出現が確
認されており、薬剤耐性菌の出現しにくい薬剤の開発が
望まれている。
【0005】また、一度除菌に成功した場合でもヘリコ
バクター・ピロリによる再感染が問題となっており、適
切な維持療法あるいは再発を抑制する薬剤の開発も望ま
れている。さらに、ヘリコバクター・ピロリの感染者で
は胃癌発生の危険率が有意に高いことが既に指摘されて
おり、ヘリコバクター・ピロリの除菌あるいは感染の防
止に効果のある薬剤は胃癌の発症を抑制する可能性があ
り、そのような薬剤の開発が期待されている。
【0006】微生物は細胞壁により保護されているが、
何らかの手段で細胞壁を損傷させると、微生物は溶菌す
る。細胞壁に作用し細菌を溶菌させる酵素が溶菌酵素で
ある。細菌に作用する溶菌酵素としては古くから卵白リ
ゾチームが知られている。また、酵母に対する溶菌酵素
としてはカタツムリの消化管酵素などが知られている。
【0007】細菌の細胞壁はペプチドグリカンから構成
されているが、溶菌酵素はペプチドグリカンの作用部位
の違いによりグリカン部分に作用するグリコシダーゼ、
グリカンとペプチドの間に作用するアミダーゼ、ペプチ
ド部分に作用するエンドペプチダーゼなどに分類されて
いる。また、ある種の糸状菌、例えばアスペルギルス
(Aspergillus)の細胞壁は主にキチンとグルカンより
構成されており、キチナーゼ単独では殆ど溶解されない
が、キチナーゼとβ−グルカナーゼを併用することによ
り溶解されることが知られている。すなわち、溶菌現象
は単独の酵素で見られることもあるが複数の酵素の作用
により起こり得る現象とも理解される。
【0008】溶菌酵素として卵白リゾチームやカタツム
リの消化管酵素以外にも種々の生物に由来する溶菌酵素
が知られているが、酵素の作用点あるいは作用を受ける
細菌の細胞壁の構造・性質の違い、あるいは酵素作用を
受け難くする物質(きょう膜成分)の存在の有無などに
より、それぞれの酵素の溶菌スペクトルは異なる。ま
た、細菌によっては非常に溶菌酵素に感受性の細菌もあ
れば、極めて高い抵抗性を示す細菌も存在する。グラム
陰性菌は一般に細胞壁の外側にリポタンパク、リポ多糖
からなる外膜を有しており、一般的に溶菌酵素によって
溶菌され難いことが知られている。グラム陰性菌である
大腸菌は、卵白リゾチーム単独では見かけ上溶菌現象が
認められない。
【0009】ヘリコバクター属細菌はグラム陰性菌であ
り、その表層構造は通常のグラム陰性菌と同様に脂質二
重層からなる内膜と外膜およびペプチドグリカン層から
構成されると言われている。しかしながら、ヘリコバク
ター属細菌の細胞壁の構造は完全には理解されておら
ず、またヘリコバクター属細菌、例えばヘリコバクター
・ピロリのリポ多糖のリピッドAの構造、細胞膜の脂肪
酸組成、燐脂質組成、糖脂質成分、外膜蛋白質などは通
常のグラム陰性菌の構造あるいは成分と異なっており、
そのような表層構造を有するヘリコバクター属細菌、特
にヘリコバクター・ピロリに対する溶菌酵素の存在は知
られていなかった。また、ある種の蛋白質分解酵素がヘ
リコバクター・ピロリを溶菌/殺菌することは知られて
いなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来技
術に鑑みてなされたものであり、消化器疾患の原因とな
るヘリコバクター属細菌の新規な除菌剤及び/又は殺菌
剤、ヘリコバクター属細菌の新規な除菌法及び/又は殺
菌法、上記疾患の治療剤及び/又は発症抑制剤、並びに
胃癌の発症抑制剤を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決すべくヘリコバクター属細菌に対する種々の溶菌酵
素の溶菌活性を鋭意検討した結果、ある種の溶菌酵素が
ヘリコバクター属細菌を溶菌・殺菌することを見出し
た。更に検討を加えた結果、それらの溶菌酵素が蛋白質
分解酵素活性を有することを見出した。蛋白質分解酵素
がヘリコバクター属細菌を溶菌・殺菌する効果を持つこ
とは初めて見出された知見であり、これにより本発明を
完成するに至った。
【0012】即ち、本発明の第1は、ヘリコバクター属
細菌を溶菌する蛋白質分解酵素を含有することを特徴と
するヘリコバクター属細菌の除菌剤及び/又は殺菌剤に
関するものである。また本発明の第2は、ヘリコバクタ
ー属細菌を溶菌するトリコデルマ由来蛋白質分解酵素、
トリプシン、α−キモトリプシン、エラスターゼのうち
の少なくとも1つを含有し、且つヘリコバクター・ピロ
リに対し抗菌活性を示す抗生物質、プロトンポンプ阻害
剤、ヒスタミンH2レセプター拮抗剤、増粘剤、界面活
性剤、鎮けい剤のうちの少なくとも1つを含有すること
を特徴とするヘリコバクター属細菌の除菌剤及び/又は
殺菌剤に関するものである。
【0013】また本発明の第3は、ヘリコバクター属細
菌を溶菌する蛋白質分解酵素を含有することを特徴とす
るヘリコバクター属細菌の除菌剤及び/又は殺菌剤を用
いたヘリコバクター属細菌の除菌法及び/又は殺菌法に
関するものである。また本発明の第4は、ヘリコバクタ
ー属細菌を溶菌する蛋白質分解酵素を含有することを特
徴とするヘリコバクター属細菌に起因する疾患の治療剤
及び/又は発症抑制剤に関するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳述する。
本発明にいうヘリコバクター属細菌とは、ヒト、動物の
胃炎、腸炎などの消化器疾患などの原因となるヘリコバ
クター属細菌又はその類縁菌であり、例えば、ヘリコバ
クター・ピロリ(Helicobacter pylori)、ヘリコバク
ター・アシノニクス(Helicobacter acinonyx)、ヘリ
コバクター・シネディ(Helicobacter cinaedi)、ヘリ
コバクター・フェリス(Helicobacter felis)、ヘリコ
バクター・フェネリエ(Helicobacter fennelliae)、
ヘリコバクター・ヘイルマニー(Helicobacter heilman
nii)、ヘリコバクター・ムリダラム(Helicobacter mu
ridarum)、ヘリコバクター・ムステレ(Helicobacter
mustelae)あるいはフレキシスピラ・ラッピーニ(Flex
ispira rappini)などが挙げられる。
【0015】本発明に用いるヘリコバクター属細菌を溶
菌する蛋白質分解酵素は、ヘリコバクター属細菌又はそ
の類縁菌、特にヘリコバクター・ピロリを溶菌あるいは
殺菌する酵素であれば、どのようなものでも良い。すな
わち、適切な溶液、例えば等張リン酸緩衝液又はヘリコ
バクターの培養に用いる液体培地に懸濁されたヘリコバ
クター属細菌を溶菌あるいは殺菌できる酵素であれば、
どのような蛋白質分解酵素でも良い。このような溶菌酵
素としては、例えばトリコデルマ由来蛋白質分解酵素、
ストレプトマイセス由来プロナーゼ、トリプシン、α−
キモトリプシン、エラスターゼなどが挙げられる。
【0016】本発明に用いる蛋白質分解酵素は、自然界
に存在する生物から分離できる。すなわち、細菌、放線
菌、カビ、酵母などの微生物、菌類、コケ、藻類、植
物、原生動物、昆虫あるいは高等動物などの生物から分
離できる。自然界に存在する生物からの本発明に用いる
蛋白質分解酵素の分離は、通常蛋白質の抽出、濃縮、精
製に使用される方法が使われる。好ましくは、当該蛋白
質分解酵素の失活を伴わない抽出、濃縮、精製法が使わ
れる。すなわち、適切な溶液による抽出、塩析、各種担
体を用いたクロマトグラフィー、結晶化などが使われ
る。
【0017】本発明に用いる蛋白質分解酵素を生産する
ために、細菌、放線菌、カビ、酵母などの微生物、菌
類、原生動物などを培養するには、当該生物を増殖可能
な培地を用い、当該生物が増殖可能な条件下で培養を行
うことができる。好ましくは、当該溶菌酵素の生産性の
高い培地を用い、当該生物の増殖と当該酵素の生産性の
高い培養条件下で培養を行うことができる。
【0018】本発明に用いる蛋白質分解酵素は遺伝子組
換え技術により生産をすることが可能である。遺伝子組
換え技術の宿主としては、細菌、酵母、放線菌、動物培
養細胞などが使用できる。好ましくは生産する当該酵素
により溶解されない宿主が使用できる。また遺伝子組換
え技術により本発明に用いる蛋白質分解酵素の誘導体を
生産することが可能である。遺伝子組換え技術により、
当該溶菌酵素のアミノ酸配列に1つ以上のアミノ酸の置
換、欠失、挿入を持つ誘導体あるいは他の蛋白質と融合
した誘導体を生産することが可能である。好ましい誘導
体としては、溶菌酵素活性、安定性あるいは溶菌スペク
トルの向上した誘導体などがある。さらに本発明に用い
る蛋白質分解酵素の化学的な修飾により誘導体を合成す
ることが可能である。好ましい誘導体としては、溶菌酵
素活性、安定性あるいは溶菌スペクトルの向上した誘導
体などがある。
【0019】本発明に用いる蛋白質分解酵素は、単独よ
りも更に1つ以上の他の溶菌酵素を加えた時に、当該酵
素の溶菌活性あるいは殺菌活性に向上がみられることが
ある。そのような溶菌酵素は混合して使用することが可
能である。本発明に用いる蛋白質分解酵素は、単独より
も、当該酵素の安定化剤、効果増強剤あるいは活性化剤
を加えた時に、当該酵素の溶菌活性あるいは殺菌活性に
向上がみられることがある。そのような当該酵素の安定
化剤、効果増強剤あるいは活性化剤は混合して使用する
ことが可能である。
【0020】本発明に用いる蛋白質分解酵素はヘリコバ
クターの除菌に単独で用いられるばかりでなく、一般的
にヘリコバクターの除菌/殺菌に用いられている抗生物
質、プロトンポンプ阻害剤、ヒスタミンH2レセプター
拮抗剤、胃での薬剤の滞留性を改良するための増粘剤や
粘着剤、蛋白質分解酵素製剤の溶菌活性を高める界面活
性剤及び/又は鎮けい剤と同時に併用することが可能で
ある。抗生物質としては、例えば、コロイダル次クエン
酸ビスマス、次サルチル酸ビスマスなどのビスマス製
剤、アモキシシリン、アンピシリン、クラリスロマイシ
ン、オフロキサシン、エリスロマイシン、テトラサイク
リン、チニダゾール、メトロニダゾールなどが挙げられ
る。プロトンポンプ阻害剤としてはオメプラゾール、ラ
ンソプラゾールなどのが挙げられる。ヒスタミンH2レ
セプター拮抗剤としてはシメチジン、ラニチジン、ファ
モチジンなどが挙げられる。増粘剤としては、例えばキ
サンタンガム、メチルセルロース、ヒアルロン酸などが
挙げられる。界面活性剤としては、例えば、蔗糖脂肪酸
エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレング
リコール、ポリソルベートなどが挙げられる。鎮けい剤
としては臭化ブチルスコポラミン、臭化エチルピペタナ
ートなどが挙げられる。
【0021】本発明によるヘリコバクターの除菌法とし
ては、ヘリコバクター・ピロリを溶菌する蛋白質分解酵
素を単独で投与することができるが、ヘリコバクター・
ピロリを溶菌する蛋白質分解酵素に加えて抗生物質、プ
ロトンポンプ阻害剤、ヒスタミンH2レセプター拮抗
剤、増粘剤や粘着剤、界面活性剤及び/又は鎮けい剤を
同時に又は別々に投与することもできる。
【0022】また、そのような除菌法/殺菌法に使用可
能な除菌剤/殺菌剤として、ヘリコバクター・ピロリを
溶菌する蛋白質分解酵素単独でも良いが、これに加えて
抗生物質、プロトンポンプ阻害剤、ヒスタミンH2レセ
プター拮抗剤、界面活性剤、増粘剤や粘着剤及び/又は
鎮けい剤を加えて合剤、配合剤とすることもできる。
【0023】本発明に用いる蛋白質分解酵素の溶菌活性
は、適切な溶液、例えば等張リン酸緩衝液あるいはヘリ
コバクターの培養に用いる液体培地に懸濁されたヘリコ
バクター属細菌と酵素を混合し、適切な温度、例えば室
温あるいは37℃に放置し、該細菌の溶菌に伴う濁度の
低下を濁度計あるいは肉眼的に観察することにより測定
できる。なお、ヘリコバクター属細菌が薬剤耐性菌の場
合も同様に測定できる。
【0024】本発明に用いる蛋白質分解酵素の殺菌活性
は、適切な溶液、例えば等張リン酸緩衝液あるいはヘリ
コバクターの培養に用いる液体培地に懸濁されたヘリコ
バクター属細菌と酵素を混合し、適切な温度、例えば室
温あるいは37℃に放置し、経時的に該細菌の生存率を
検定することにより測定できる。なお、ヘリコバクター
属細菌が薬剤耐性菌の場合も同様に測定できる。
【0025】本発明に用いる蛋白質分解酵素のヘリコバ
クター属細菌に対する抗菌力試験は、例えばヘリコバク
ター・ピロリを用いて寒天平板希釈法による最小発育阻
止濃度を求めることにより実施できる。適切な培地、例
えば5%馬血清添加ブルセラ(Brucella)寒天
培地に被検酵素を種々の濃度となるように加え、被検菌
接種後適切な温度、例えば35℃で、適切な環境下、例
えば炭酸ガス濃度10%で培養し、被検酵素を含まない
ものを対照として抗菌力を判定できる。なお、ヘリコバ
クター属細菌が薬剤耐性菌の場合も同様に測定できる。
【0026】本発明による蛋白質分解酵素は、通常ヒト
が食品として常食する生物、発酵食品あるいは発酵飲料
などを生産する過程で使用する微生物からも生産でき
る。従って当該酵素は副作用のない極めて安全なヘリコ
バクター属細菌およびその類縁菌の除菌剤及び/又は殺
菌剤、並びにヘリコバクター属細菌およびその類縁菌に
起因する疾患の治療剤及び/又は発症抑制剤に使用でき
る。また細胞壁は細菌内部の高い浸透圧を保持してお
り、蛋白質分解酵素は細菌の細胞壁を破壊し細菌を死に
至らしめる。さらに蛋白質分解酵素は見かけ上の溶菌現
象を伴わずとも細菌の増殖活性を欠落あるいは低下させ
る。従って、蛋白質分解酵素の除菌・殺菌剤としての効
果は溶菌現象に付随した効果として限定されるものでは
ない。
【0027】本発明のヘリコバクター属細菌を溶菌する
蛋白質分解酵素を含有するヘリコバクター属細菌の除菌
剤とは、ヘリコバクター属細菌に起因する疾患の治療及
び/又は発症の抑制のために、ヘリコバクター属細菌の
棲息巣より該細菌を除菌する目的で使用される薬剤をい
う。本発明のヘリコバクター属細菌を溶菌する蛋白質分
解酵素を含有するヘリコバクター属細菌の殺菌剤とは、
ヘリコバクター属細菌に起因する疾患の治療及び/又は
発症の抑制のために、ヘリコバクター属細菌の棲息巣よ
り該細菌を殺菌する目的で使用される薬剤をいう。
【0028】本発明のヘリコバクター属細菌に起因する
疾患とは、口腔内および消化管内に関する疾患、例えば
胃炎、胃十二指腸炎、びらん性胃炎、胃びらん、びらん
性十二指腸潰瘍、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、又はNUD
(ノン・ウルサー・ディスペプシア)、胃癌等が挙げら
れ、本発明にいうこれらの疾患の治療剤及び/又は発症
抑制剤とは、これらの疾患の治療及び/又は発症を抑制
する目的で使用される薬剤をいう。
【0029】本発明によるヘリコバクター属細菌を溶菌
する蛋白質分解酵素を含有するヘリコバクター属細菌の
除菌剤及び/又は殺菌剤並びにヘリコバクター属細菌を
溶菌する蛋白質分解酵素を含有することを特徴とするヘ
リコバクター属細菌に起因する疾患の治療剤及び/又は
発症抑制剤のヘリコバクター属細菌胃感染動物に対する
除菌剤、殺菌剤、治療剤、発症抑制剤としての効果は、
例えばヘリコバクター・ピロリおよび試験動物としてス
ナネズミを選び、確認することができる。すなわち、ス
ナネズミにヘリコバクター・ピロリの生菌菌液を経口投
与し、ヘリコバクター・ピロリ胃感染動物を作製する。
治療群のスナネズミは、感染後被検酵素を含む薬剤を適
切な溶液あるいは餌への混合剤として経口投与する。対
照群である非感染群および無治療群と比較することによ
り、被検酵素のヘリコバクター・ピロリ胃感染動物に対
する除菌・治療効果を評価する。除菌の評価は、被検酵
素投与終了後にスナネズミの胃を摘出し、生理食塩水に
てホモジネートとし、ホモジネートを適切な培地、例え
ばスキロー培地にバンコマイシン 10mg/L、ポリ
ミキシンB 2500国際単位/L、トリメトプリム
2.5mg/L、ナリジクス酸 15mg/Lおよびア
ンホテリシンB 3mg/Lを加えた培地に塗布し、培
養することにより胃内のヘリコバクター・ピロリの生菌
数を測定することにより確認することができる。
【0030】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳しく説
明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定され
るものではない。 実施例1 ヘリコバクター・ピロリの培養 ヘリコバクター・ピロリATCC43504を10%馬
血清を含むブルセラ・ブロス培地(Difco社製)に
植菌し、10%炭酸ガス存在下37℃で4日間培養し
た。 実施例2 トリコデルマ由来溶菌酵素の精製 トリコデルマ由来溶菌酵素粉末(Sigma社製)3g
を20mMの20mMトリス塩酸バッファー(pH7.
5)100mlに溶解させ、同バッファーで平衡化した
DEAE−セファロースカラム(150ml)を通過させ
た。通過画分を20mM酢酸ナトリウムバッファー(pH
5.5)に透析し、次に同バッファーで平衡化したCM
−セファロースカラムにチャージし、同バッファーで洗
浄後、食塩0〜1Mの濃度勾配で溶出させ、溶出画分を
フラクションコレクターにて分取(20画分、1画分4
0ml)した。実施例1で得たヘリコバクター・ピロリ
の培養液0.5mlに各フラクションの50μlを加え
室温で1時間放置し、溶菌活性を調べた。溶菌活性を示
した画分(画分4、40ml)に終濃度1.8Mになる
ように硫安を加え、TSKgel Phenyl−5P
W Glass(東ソー株式会社製)にチャージした。
1.8M硫安を含む20mMリン酸バッファー(pH
7.0)で洗浄後、1.8Mから0M硫安の直線濃度勾
配で溶出させ溶出画分を得た。溶出画分の溶菌活性を確
認後、溶菌活性を示した画分を2倍濃度の等張リン酸緩
衝液で平衡化させたHiLoad26/60 Supe
rdex 75 pg(ファルマシア社製)で分子量分
画を行い精製溶菌酵素3.8mgを得た。
【0031】精製された溶菌酵素はSDS−ポリアクリ
ルアミドゲル電気泳動で単一のバンドを示し、分子量は
約30,000であった。 実施例3 トリコデルマ由来溶菌酵素の蛋白質分解活性
の測定 厚さ1.3mmの3%ゼラチンゲルプレートを作製し
た。プレートの上に実施例2で調製したトリコデルマ由
来溶菌酵素(1mgを2倍濃度の等張リン酸緩衝液に溶
解)を20μl乗せ、15℃に2時間放置した。その結
果、精製トリコデルマ由来溶菌酵素を乗せた部分のゼラ
チンゲルは溶解し、トリコデルマ由来溶菌酵素が蛋白質
分解酵素活性を有することが判明した。また、トリコデ
ルマ由来溶菌酵素をあらかじめプロテアーゼ阻害剤であ
るPMSF(Phenylmethylsulfonyl Fluoride)で処理
する(1mM、室温10分)ことにより、その溶菌活性
と蛋白質分解活性が失われた。 実施例4 各種蛋白質分解酵素の培養液中でのヘリコバ
クター・ピロリに対する溶菌活性 ヘリコバクター・ピロリATCC43504を実施例1
に示すように培養した。ヘリコバクター・ピロリを含む
培養液0.5mlに生理的食塩水に溶解したプロナーゼ
MS(科研製薬株式会社製、Streptomyces griseus由
来)、プロナーゼE(Sigma社製、Streptomyces g
riseus由来)、トリプシン(Sigma社製、ウシ膵臓
由来)、α−キモトリプシン(Sigma社製、ウシ膵
臓由来)、エラスターゼ(Sigma社製、ブタ膵臓由
来)、カテプシンB(Sigma社製、ウシ脾臓由
来)、カテプシンC(Serva社製、ウシ脾臓由来)
を表1に記載した終濃度になるように0.1ml各々加
え、37℃に放置し、0.5、1及び2時間後に溶菌状
態を観察した。その結果、ヘリコバクター・ピロリ菌体
は表1に示すようにプロナーゼMS、プロナーゼE、ト
リプシン、α−キモトリプシン、エラスターゼにより溶
菌することが確認された。
【0032】
【表1】
【0033】なお、表1において、溶菌活性が見られた
酵素に(+)又は(++)を示した。(+)は透明度の
増加が観察されたものを示し、(++)は透明度の増加
が著しいものを示す。 実施例5 各種蛋白質分解酵素の生理食塩水中でのヘリ
コバクター・ピロリに対する溶菌活性 ヘリコバクター・ピロリATCC43504を実施例1
に示すように培養した。培養液25mlを1、500回
転、20分遠心し、菌体を15mlの生理食塩水に懸濁し
た。ヘリコバクター・ピロリの懸濁液0.5mlに、生
理食塩水に溶解したプロナーゼMS(科研製薬株式会社
製、Streptomyces griseus由来)、プロナーゼE(Si
gma社製、Streptomyces griseus由来)、トリプシン
(Sigma社製、ウシ膵臓由来)、α−キモトリプシ
ン(Sigma社製、ウシ膵臓由来)、エラスターゼ
(Sigma社製、ブタ膵臓由来)、カテプシンB(S
igma社製、ウシ脾臓由来)、カテプシンC(Ser
va社製、ウシ脾臓由来)、2倍濃度の等張リン酸緩衝
液に溶解させた精製トリコデルマ由来溶菌酵素(実施例
2で精製したもの)を表2に記載した終濃度になるよう
に各々0.1ml加え、37℃に2時間放置した。な
お、コントロールとして酵素液の代わりに生理食塩水を
0.1ml加えた。溶菌活性は分光光度計で550nm
での吸光度を測定した。また、肉眼的に溶菌状態を観察
した。その結果、精製トリコデルマ由来蛋白質分解酵
素、プロナーゼMS、プロナーゼE、トリプシン、α−
キモトリプシン、エラスターゼにおいて、明らかに溶菌
による吸光度の低下が観察された。結果を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】なお、表2において、溶菌活性が見られた
酵素に(+)又は(++)を示した。(+)は透明度の
増加が観察されたものを示し、(++)は透明度の増加
が著しいものを示す。 実施例6 抗生物質、プロトンポンプ阻害剤、ヒスタミ
ンH2レセプタ ー拮抗剤、界面活性剤あるいは鎮けい剤存在下での各種
蛋白質分解酵素の溶菌活性の測定 ヘリコバクター・ピ
ロリATCC43504を実施例1に示すように培養し
た。培養液25mlを1、500回転、20分遠心し、
菌体を15mlの生理食塩水に懸濁した。ヘリコバクター
・ピロリの懸濁液0.5mlに、生理食塩水に溶解した
トリプシン(Sigma社製、ウシ膵臓由来)あるいは
2倍濃度の等張リン酸緩衝液に溶解させた精製トリコデ
ルマ由来溶菌酵素(実施例2で精製したもの)を表3に
記載した終濃度になるように各々0.03ml、生理食
塩水に溶解した種々の薬剤を表3に記載した終濃度にな
るように各々0.07ml加え、37℃に45分間放置
した。なお、コントロールとして酵素液の代わりに生理
食塩水を0.03ml加えた。溶菌活性は分光光度計で
550nmでの吸光度を測定し、溶菌によって低下した
A550の吸光度の値(△A550)を示した。その結果、精
製トリコデルマ由来蛋白質分解酵素及びトリプシンが種
々の薬剤の存在下でもヘリコバクター・ピロリを溶菌す
ることが確認された。結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
【0037】
【発明の効果】本発明により、溶菌酵素の活性に基づく
ヘリコバクター属細菌、特にヘリコバクター・ピロリに
対する除菌剤及び/又は殺菌剤、およびヘリコバクター
属細菌、特にヘリコバクター・ピロリに起因する疾患の
治療剤、発症抑制剤を提供することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI A61K 45/00 A61K 37/547 ADB (72)発明者 細田 友則 滋賀県大津市南郷1−3−9

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヘリコバクター属細菌を溶菌する蛋白質
    分解酵素を含有することを特徴とするヘリコバクター属
    細菌の除菌剤及び/又は殺菌剤。
  2. 【請求項2】 ヘリコバクター属細菌がヘリコバクター
    ・ピロリである請求項1記載の除菌剤及び/又は殺菌
    剤。
  3. 【請求項3】 蛋白質分解酵素が微生物、植物又は動物
    由来である請求項1または2記載の除菌剤及び/又は殺
    菌剤。
  4. 【請求項4】 蛋白質分解酵素がプロナーゼ、トリコデ
    ルマ由来蛋白質分解酵素、トリプシン、α−キモトリプ
    シン、エラスターゼのうちの少なくとも1つである請求
    項3記載の除菌剤及び/又は殺菌剤。
  5. 【請求項5】 ヘリコバクター属細菌を溶菌するトリコ
    デルマ由来蛋白質分解酵素、トリプシン、α−キモトリ
    プシン、エラスターゼのうちの少なくとも1つを含有
    し、且つヘリコバクター・ピロリに対し抗菌活性を示す
    抗生物質、プロトンポンプ阻害剤、ヒスタミンH2レセ
    プター拮抗剤、増粘剤、界面活性剤、鎮けい剤のうちの
    少なくとも1つを含有することを特徴とするヘリコバク
    ター属細菌の除菌剤及び/又は殺菌剤。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5記載の除菌剤及び/又は殺
    菌剤を用いるヘリコバクター・ピロリの除菌法及び/又
    は殺菌法。
  7. 【請求項7】 ヘリコバクター属細菌を溶菌するトリコ
    デルマ由来蛋白質分解酵素、トリプシン、α−キモトリ
    プシン、エラスターゼのうちの少なくとも1つを含有す
    る除菌剤及び/又は殺菌剤と、ヘリコバクター・ピロリ
    に対し抗菌活性を示す抗生物質、プロトンポンプ阻害
    剤、ヒスタミンH2レセプター拮抗剤、増粘剤、界面活
    性剤、鎮けい剤のうちの少なくとも1つとを、同時に投
    与することを特徴とするヘリコバクター・ピロリの除菌
    法及び/又は殺菌法。
  8. 【請求項8】 ヘリコバクター属細菌を溶菌する蛋白質
    分解酵素を含有することを特徴とするヘリコバクター属
    細菌に起因する疾患の治療剤及び/又は発症抑制剤。
  9. 【請求項9】 ヘリコバクター属細菌がヘリコバクター
    ・ピロリである請求項8記載の治療剤及び/又は発症抑
    制剤。
  10. 【請求項10】 蛋白質分解酵素が微生物由来である請
    求項8又は9記載の治療剤及び/又は発症抑制剤。
  11. 【請求項11】 ヘリコバクター属細菌に起因する疾患
    が胃炎、胃十二指腸炎、びらん性胃炎、胃びらん、びら
    ん性十二指腸潰瘍、胃潰瘍、十二指腸潰瘍又はNUDで
    ある請求項8〜10記載の治療剤及び/又は発症抑制
    剤。
  12. 【請求項12】 ヘリコバクター属細菌を溶菌するトリ
    コデルマ由来蛋白質分解酵素、トリプシン、α−キモト
    リプシン、エラスターゼのうちの少なくとも1つを含有
    し、且つヘリコバクター・ピロリに対し抗菌活性を示す
    抗生物質、プロトンポンプ阻害剤、ヒスタミンH2レセ
    プター拮抗剤、増粘剤、界面活性剤、鎮けい剤のうちの
    少なくとも1つを含有する請求項8〜11記載の治療剤
    及び/又は発症抑制剤。
  13. 【請求項13】 ヘリコバクター属細菌に起因する疾患
    が胃癌である請求項8〜12記載の発症抑制剤。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP1258251A4 (en) * 2000-02-24 2003-04-09 Fuso Pharmaceutical Ind COMPOSITIONS FOR PREVENTING AND TREATING DIGESTIVE DISEASES
WO2004012659A3 (en) * 2002-08-01 2004-10-07 Nitromed Inc Nitrosated proton pump inhibitors, compositions and methods of use

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