【発明の詳細な説明】
C型肝炎ウイルス第二エンベロープ糖タンパク質
に対する抗体の検出法 発明の分野
本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)に対する抗体の検出法に関し、特に、
HCV感染の別のマーカーであるHCVの第二エンベロープ糖タンパク質(E2
)に対する抗体の検出法に関する。発明の背景
1989 年における第一世代のC型肝炎ウイルス酵素イムノアッセイ(HCV 1.
0EIA)および 1992 年における第二世代のHCV酵素イムノアッセイ(HC
V 2.0EIA)の導入により、これらの試験を使用して供与血液を機械的にスク
リーニングしている国での輸血後HCV(PT−HCV)感染の発生率は劇的に
減少した[Donahue ら、N.Engl.J.Med.327:369-73(1992); Kleinman ら、Tra
nsfusion 32:805-13(1992); Alter,in Viral Hepatitis and Liver Disease 55
1-53(Nishioka ら編,1994)]。第二世代アッセイでは、HCVに対する抗体(抗
−HCV)は、そのウイルスのコア、NS3(ウイルス性プロ
テアーゼ)およびNS4(機能は末知)遺伝子から誘導される組換えタンパク質
を使用して検出される。今日は、NS5領域(ウイルス性ポリメラーゼおよび第
二の未知の機能)由来の別の抗原を含む第三世代のスクリーニングアッセイ(H
CV 3.0EIA)が利用でき、ヨーロッパで使用されつつある[Lavanchyら、J.
Clin.Microbiol.32:2272-75(1994)]。
さらにイムノブロットアッセイまたは小片イムノブロットアッセイ(SIA)
などの認可されていない別のイムノブロットアッセイが、コア、NS3、NS4
およびNS5などの個々のHCVタンパク質に対する抗体の検出に使用できる。
これらのアッセイは、特に、認可されている抗−HCVスクリーニングアッセイ
(例えばHCV 2.0EIA)を使用して繰り返し反応性であることが判明してい
るヒト血清または血漿試験サンプルの別の試験として使用されるものである。こ
れらのアッセイは、HCV 2.0 スクリーニングアッセイにおける反応性を確認
するための手段として使用される。これらのアッセイに対する結果の通常の判定
によれば、HCVゲノムの異なる部分によってコードされる抗原に対応する少な
くとも2つのHCVタンパク質に対して反応性があれば、陽性であると判定され
る。1個の
HCVタンパク質のみに対する反応性は、不確定として判定される。
2個以上のHCV遺伝子産物に対して抗体を示すドナーは、このウイルスによ
る感染の後にHCVに対するセロコンバージョンが得られたとみなすべきである
[Alter,1994;Brestersら、Transfusion 33:634-38(1993);Sayers & Gretch,Tr
ansfusion 33:809-13(1993)]。さらに、HCV感染に関連する高い慢性度のため
に[Di Bisceglieら、Hepatology 14:969-74(1991);Alterら、N.Engl.J.Med.3
27:1899-905(1992)]これらのドナーは、感染している可能性があると考えるべき
である。不確定の試験サンプルに関して、血液バンクは、不確定ケースの取り扱
い方および追跡検査の追加費用に関して重要な問題をかかえている。
Leon らは、RIBA 2.0 不確定/PCR陰性サンプルを評価するための複数
の補足HCV試験を使用して、真のHCV抗体は、コアおよびNS3不確定試料
の各々71.6%および57.1%に存在することを示した[Vox Sanguinus 66: 245-46(
1994)]。PCRを使用した以前の研究では、RIBA 2.0 不確定試料の 75%も
がHCV RNA陽性であると考えられることが示
された[Halfon ら、Journal of Infectious Diseases 166:449(1992); Buffet
ら、J.Med.Virol.43:259-61(1994)]。不確定試料に対するPCR陽性結果は
、HCV暴露の無視できない証拠である。他方、PCR陰性である不確定サンプ
ルは、擬反応性であると結論付けるには十分でない。以前の一つの研究[Tobler
ら、Transfusion 34:130-34(1994)] は、PCR陰性であるRIBA 2.0 不確定
サンプルは恐らくHCVに対して擬反応性を示すことを示唆しているが、不確定
サンプルに対するPCR陰性結果は、低いウイルス濃度[Ulrich ら、J.Clin.Inv
estigation 86:1609-14(1990)]、HCV感染中の間欠性ウイルス血症[Allain ら
、J.Clin.Investigation 88:1672-79(1991); Prince ら、J.Infectious Dise
ases 167:1296-301(1993); Peters ら、J.Med.Virol.42:420-27(1994)]およ
びPCR法の可変性[Zaaijer ら、Lancet 341:722-24(1993)]などの因子によ
り、確定できないとみなす必要がある。
さらに、HCV 3.0スクリーニングアッセイへの変換は、特に不確定なイムノ
ブロット反応性として同定される試料のHCV 2.0 と 3.0 アッセイとの間で得
られる結果の不一致のために、HCV 2.0試験により現在検出される潜在的感染
性の
全単位が、新規HCV 3.0 アッセイによっても検出されることを確実にするた
めの慎重な吟味を保証するものである。従って、1個の遺伝子産物のみに対して
反応性のある抗体を含むHCV 2.0 陽性試料については、その真の性質をさら
に調べて理解することが重要である。
推定上のウイルスエンベロープタンパク質(E1、E2)は、発現および精製
が困難であるために、これらのタンパク質の詳細な研究および血液スクリーニン
グアッセイにおける標的としての混入の可能性が妨げられている。HCVゲノム
の5’端は、推定上の2つのエンベロープタンパク質であるE1およびE2をコ
ードする。両方のタンパク質共、複数の糖化部位を含み[Takeuchi ら、J.Gen.
Virol.71:3027-33(1990)]、ペスチウイルス属のエンベロープタンパク質といく
つかのヌクレオチドおよびアミノ酸配列相同性を共有している[Miller & Purce
ll,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2057-61(1990); Takeuchi ら、前出、1990
; Choo ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:2451-55(1991)]。さらに、E2タ
ンパク質は、ヒト免疫欠損ウイルスのgp120の超可変V3ループに認められ
るものに類似した突然変異性を有する超可変領域を含むことが分かっている
[Kato ら、Molecular and Biological Medicine 7:495-501(1990); Houghton ら
、Hepatology 14:381-388(1991); Weiner ら、Proc.Natl.Aca.Sci.USA 89:3
468-72(1992)]。E1およびE2は、エンベロープタンパク質として、恐らく、
ビリオン粒子の表面に部分的または全体的に位置する。ウイルスの構造表面との
この関係が、これらタンパク質を、HCV感染に対する体液性免疫応答の第一の
標的にしていると考えられる。この証拠として、HCV E2の超可変領域は、
体液性免疫選択圧に応答して突然変異するように見える[Inchauspe ら、Proc.Na
tl.Acad.Sci.USA 88:10292-96(1991); Ogata ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8
8:3392-96(1991); Lesniewski ら、J.Med.Virol.40:150-56(1992)]。
しかし、本発明以前に、何人かの研究者らは、HCV E2組換えタンパク質
とHCV感染した人の抗体との間の反応性が低いことを報告した。Mita ら[Bioc
hemical and Biophysical Research Communications 183:925-30(1992)]および
Hsu ら[Hepatology 17:763-71(1993)]は、各々、E2に対する抗体が、慢性C型
肝炎患者の 17 %および 10 %で検出されたことを報告した。組換えE2タンパク
質のコンホメーションおよび糖
(グリコシル)化度は、その免疫応答性に影響を及ぼすと考えられる。Chien ら
は、E2に対する抗体が、CHO細胞で産生されるカルボキシル−切断E2タン
パク質(アミノ酸[aa]384-661)を使用して、慢性非A非B肝炎(NANBH)
患者の97%で検出されたことを報告した[Lancet 342:933(1993)]。
すなわち、存在する可能性があるが、現在は市販のスクリーニングおよび確認
アッセイでの検出ができない急性感染およびウイルス血症を同定するための別の
アッセイ試薬および方法の開発が必要とされている。これらのアッセイ試薬およ
び方法は、急性および持続性、進行中および/または慢性の感染患者とHCV感
染が消散したと思われる患者とを区別するのを助け、NANB肝炎感染の予後経
過を定義して予防または治療法を開発するために必要である。本発明は、真のH
CV感染を決定するための、今まで知られていない確認マーカーを提供する。発明の要旨
本発明は、試験サンプルに存在し得るHCV抗原に対する抗体の有無を検出す
るための改善された方法であって、該方法が、該サンプルをHCV抗原と接触さ
せ、抗体が該HCV抗原に結合するかどうかを決定することを含む方法において
、該HCV
抗原として、E2切断(E2-truncated)タンパク質をコードするDNA配列、ウ
サギH鎖(heavychain)シグナル配列をコードするDNA配列およびヒトプロウ
ロキナーゼのアミノ末端配列をコードするDNA配列を含む異種(heterologous
)発現ベクターによって形質転換した哺乳類細胞の発現産物である組換えポリペ
プチドを含む少なくとも1つの組換えHCVタンパク質を使用することを含み、
該HCV抗原のDNA配列が、他のDNA配列に対して下流に位置することを特
徴とする方法を提供する。
本発明はさらに、試験サンプルに存在し得るHCV抗原に対する抗体の有無を
検出するための試験キットを提供し、該キットは、E2切断タンパク質をコード
するDNA配列、ウサギH鎖シグナル配列をコードするDNA配列およびヒトプ
ロウロキナーゼのアミノ末端配列をコードするDNA配列を含む異種発現ベクタ
ーによって形質転換した哺乳類細胞の発現産物である組換えポリペプチドを含む
容器を含み、該HCV抗原のDNA配列は、他のDNA配列に対して下流に位置
する。図面の簡単な説明
図1は、(A)ウサギ抗−ペプチド血清(アミノ酸509〜551)
および(B)HCV陽性ヒト血清を使用した、トランスフェクションしたCHO
細胞におけるHCV E2抗原の免疫蛍光染色パターンを示す。
図2は、CHO細胞で産生されたHCV E2抗原のRIPA分析の結果を示
す。35S−標識したE2抗原を、前免疫ウサギ血清(レーン2);合成ペプチド
aa 509 〜 551 で免疫感作したウサギ由来の高免疫血清(レーン3);正常な
ヒト血漿(レーン4);および3種類のHCV抗体陽性ヒト血漿(レーン5〜7
)により免疫沈降させた。レーン1は、放射性分子量マーカーを含む。
図3は、CHO細胞で産生した精製HCV E2抗原のSDS−PAGEゲル
である。レーン1:分子量マーカー;レーン2および3:精製E2抗原。発明の詳細な説明
本発明は、試験サンプルに存在し得るHCV抗原に対する抗体の有無を検出す
るための改善された方法であって、該方法が、該サンプルをHCV抗原と接触さ
せ、抗体が該HCV抗原に結合するかどうかを決定することを含む方法において
、該HCV抗原として、E2切断タンパク質をコードするDNA配列、ウ
サギH鎖シグナル配列をコードするDNA配列およびヒトプロウロキナーゼのア
ミノ末端配列をコードするDNA配列を含む異種発現ベクターによって形質転換
した哺乳類細胞の発現産物である組換えポリペプチドを含む少なくとも1つの組
換えHCVタンパク質を使用することを含み、該HCV抗原のDNA配列が、他
のDNA配列に対して下流に位置することを特徴とする方法を提供する。
本明細書に記載するように、哺乳類の発現系で産生される組換えポリペプチド
は、E2抗原の有無と、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)増幅によ
りウイルス血症であることが判明した患者との間の強い相関関係に基づいて、患
者のウイルス血症を決定するために使用できる診断アッセイのための抗原を提供
する。抗原はまた、セロコンバージジョン初期マーカーとしても有用であり、市
販の確認試験により試験した不確定な試験サンプルにおける真のHCV暴露を決
定するための別の手段を提供する。該抗原はまた、市販の第二世代および第三世
代のHCVスクリーニングアッセイ間の矛盾した結果を解決するための手段も提
供する。
本発明は、従来技術に対していくつかの技術的利点を有する。
例えば、HCV抗体に対してすでに陽性である試料におけるHCV E2に対す
る抗体の存在は、真のHCV感染のさらに別の、従ってより強い証拠を提供する
。さらに、HCV E2に対する抗体の存在は、認可されたHCV 2.0 スクリ
ーニングアッセイでの反応性ならびにイムノブロットアッセイでのHCVコアま
たはNS3タンパク質に対する反応性と一緒にすると、これらの血清学的プロフ
ィールを有する人が以前HCV感染を受けたか、進行中であるという一致した判
定を示す。
産生される組換えポリペプチドは、バイアルまたはビンなどの1個以上の容器
を有し、各容器が組換えポリペプチドなどの別々の試薬を含み、アッセイを行う
のに便利なように試験キットとしてパッケージされたキットの形で提供すること
ができる。本発明の他の発明は、固相に結合したHCV E2エピトープを含む
組換えポリペプチドを含む。
本発明は、本明細書に記載するように産生した組換えタンパク質を種々の形式
で利用するアッセイを提供し、そのいずれも、そのアッセイで測定可能なシグナ
ルを発生するシグナル発生化合物を使用することができる。記載したアッセイは
全て、一般には抗体を検出するものであり、試験サンプルを本明細書で提
供する少なくとも1個のHCV抗原と接触させて少なくとも1個の抗原−抗体複
合体を形成し、そうして形成された複合体の有無を検出することを含む。これら
のアッセイを本明細書で詳述する。
「試験サンプル」とは、関与する抗体源となり得る個々人の体の成分を意味す
る。これらの成分は、当業者には周知である。これらの試験サンプルは、本明細
書に記載する本発明方法によって試験可能な生物学的サンプルを含み、全血、血
清、血漿、脳脊髄液、尿、リンパ液ならびに気道、腸管および尿生殖器官の種々
の外部切片、涙、唾液、乳、白血球、骨髄腫など、細胞培養上清、固定組織試料
および固定細胞試料などの生物学的流体、などのヒトおよび動物の体液が挙げら
れる。
「固相」(「固体支持体」)は、当業者には周知であるが、決定的ではなく、
反応トレイのウェル璧、試験管、ポリスチレンビーズ、磁気または非磁気ビーズ
、ニトロセルロース片、膜、ラテックス粒子などの微粒子、プラスチック管、ガ
ラスまたはシリコンチップおよびヒツジ赤血球などが適する例として挙げられる
。ペプチドを固相に固定するための適する方法としては、イオン性、疎水性、共
有相互作用などが挙げられる。本明細書
で使用する「固相」とは、不溶である、またはその後の反応により不溶にするこ
とができる物質を意味する。固相は、捕獲試薬を引きつけて固定するその固有の
能力に対して選択することができる。あるいは、固相は、捕獲試薬を引きつけて
固定する能力を有する別の受容体を保持することができる。別の受容体としては
、捕獲試薬自体または捕獲試薬と結合した帯電物質に対して反対に帯電した帯電
物質を挙げることができる。あるいは、受容体分子は、固相に結合し、特異的結
合反応によって捕獲試薬を固定する能力を有する特定の結合要素であってもよい
。受容体分子は、アッセイを行う前、またはアッセイを行っている間に、捕獲試
薬の固相物質への間接的結合を可能にする。
また、固相は、抗体の検出による接近を可能にするのに十分な多孔性および抗
原の結合に適する表面親和力を有する適切な多孔性材料を含むことができ、それ
も本発明の範囲内である。ミクロポーラス構造が一般には好ましいが、水和状態
のゲル構造を有する物質も同様に使用できる。そのような有用な固体支持体とし
ては、天然のポリマー炭水化物およびその合成による修飾、架橋または置換誘導
体、例えば、寒天、アガロース、架橋アルギン酸、置換および架橋グアーゴム、
セルロースエステ
ル(特に硝酸およびカルボン酸とのエステル)、混合セルロースエステルおよび
セルロースエーテル;窒素を含む天然ポリマー、例えば、タンパク質および誘導
体(架橋または修飾ゼラチンなど);ラテックスおよびゴムなどの天然炭化水素
ポリマー;適切に多孔性構造を持って合成され得る合成ポリマー、例えば、ポリ
エチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニルお
よびその部分加水分解誘導体、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、上記
重縮合物(ポリエステル、ポリアミドならびにポリウレタンまたはポリエポキシ
ドなどの他のポリマーなど)のコポリマーおよび三元ポリマー、などのビニルポ
リマー;アルカリ土類金属およびマグネシウムの硫酸塩または炭酸塩(硫酸バリ
ウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウムなど)、アルカリおよびアルカリ土類金
属、アルミニウムおよびマグネシウムのケイ酸塩、などの多孔性無機材料;粘土
、アルミナ、タルク、カオリン、ゼオライト、シリカゲルまたはガラスなどの、
アルミニウムまたはケイ素の酸化物または水和物(これらの材料は、上記ポリマ
ー材料とともにフィルターとして使用できる);ならびに上記の混合物またはコ
ポリマー、例えば、すでに存在している天然ポリマー上で合成ポリ
マーの重合を開始することにより得られるグラフトコポリマーなど、が挙げられ
る。これらの材料は全て、フィルム、シートまたはプレートなどの適する形で使
用でき、あるいは、適切な不活性担体(紙、ガラス、プラスチックフィルムまた
は繊維など)上に被覆し、または結合もしくは積層することができる。
ニトロセルロースの多孔性構造は、広範囲の試薬に対して優れた吸収および吸
着性を有する。ナイロンも同様の特徴を有し、これも適する。本明細書で上記し
たそのような多孔性固体支持体は、好ましくは、厚さが約 0.01〜約 0.5 mm、好
ましくは約0.1 mm のシート状であると予想される。孔の大きさは、広範囲にわ
たり得るが、好ましくは、約 0.025〜約 15 ミクロン、特に約 0.15〜約 15 ミ
クロンである。該支持体の表面は、抗原の支持体への共有結合を引き起こす化学
プロセスによって活性化することができる。しかし、一般には、十分理解されて
いない疎水性の力による多孔性材料上への吸着により、抗原の不可逆的結合が得
られる。また、適する固体支持体は、米国特許出願 No.227,272にも記載されて
いる。
「指示薬」は、HCVに対する特異的結合要素に結合した外部手段によって検
出できる測定可能なシグナルを発生する「シ
グナル発生化合物」(標識)を含む。本明細書で使用する「特異的結合要素」と
は、特異的結合対の一要素を意味する。すなわち、2つの異なる分子があって、
該分子の各々は、化学または物理的手段によって他方の分子に特異的に結合する
。免疫応答特異的結合要素は、サンドイッチアッセイでのようなHCV、競合ア
ッセイでのような捕獲試薬、間接アッセイでのような補助特異的結合要素のいず
れかに結合し得る抗体、抗原、または抗体/抗原複合体であり得る。また指示薬
は、HCVに対する特異的結合対の抗体要素であることの他に、他の特異的結合
対の要素であり得る。例えば、ビオチンまたは抗−ビオチンおよびアビジンまた
はビオチンなどのハプテン−抗−ハプテン系、炭水化物またはレクチン、相補的
ヌクレオチド配列、エフェクターまたは受容体分子、酵素補因子または酵素、酵
素阻害剤または酵素などが挙げられる。
意図する種々の「シグナル発生化合物」(標識)としては、色原体、酵素など
の触媒、フルオレセインおよびローダミンなどの発光化合物、EP 公開 No.0273,
115 に対応する、共に審査中の米国出願 No.0_/921,979(所有者は共通であり
、参考として本明細書に組み入れる。)に記載されているようなアクリ
ジニウム、フェナントリジニウムおよびジオキセタン化合物などの化学発光化合
物、放射性元素、ならびに直接的可視標識が挙げられる。酵素の例としては、ア
ルカリ性ホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクト
シダーゼなどが挙げられる。特定の標識の選択は決定的ではないが、それ自体ま
たは1種以上の別の物質と結合してシグナルを生じることができる。
種々の他の固相を利用する他の態様も予想され、本発明の範囲内である。例え
ば、共に審査中の、EP 公開 No.0326,100 に対応する米国特許出願 No.150,278
および EP 公開 No.0406,473に対応する米国特許出願 No.375,029(これらの所
有者は共通であり、参考として本明細書に組み入れる。)に記載された、負に帯
電したポリマーとの固定化反応複合体を分離するためのイオン捕獲法を本発明に
従って使用すると、速い液相免疫化学反応を行うことができる。固定可能な複合
体は、負に帯電したポリ−アニオン/免疫複合体と、前に処理した、正に帯電し
た多孔性マトリックスとの間のイオン相互作用によって反応混合物の残りから分
離され、先に記載した種々のシグナル発生系を使用して検出される。
また、本発明方法は、固相が微粒子を含む自動および半自動系などの、微粒子
技術を利用する系での使用に採用することができる。そのような系としては、審
査中の米国特許出願No.425,651 および 425,643(各々、EP 公開 No.0425,633 お
よび 0424,634 に対応し、共に所有者が共通であり、参考として本明細書に組み
入れる。)に記載のものが挙げられる。
本明細書に記載した組換えタンパク質の調製後は、これらの組換えタンパク質
を使用して、本明細書に記載した、試験サンプル中の抗−HCVの有無を検出す
るためのユニークなアッセイを開発することができる。例えば、試験サンプルを
、E2抗原を含む少なくとも1個の組換えHCVタンパク質が結合した固相と接
触させる。試験サンプルおよび固相を、ある時間、抗原−抗体複合体の形成に十
分な条件下でインキュベートする。インキュベーションの後、抗原−抗体複合体
を検出する。指示薬は、検出を容易にするために、選択したアッセイ系に応じて
使用できる。
別のアッセイ様式では、試験サンプルを、本明細書に記載したように産生した
E2抗原を含む少なくとも1個の組換えHCVタンパク質が結合した固相と接触
させ、好ましくは指示薬で
標識してある、HCVタンパク質に対して特異的なモノクローナルまたはポリク
ローナル抗体とも接触させる。ある時間、抗原−抗体複合体の形成に十分な条件
下でインキュベートした後、固相を遊離相から分離し、標識を、抗−HCVの有
無の指標として、固相または遊離相のいずれかで検出する。
本発明のタンパク質を利用する他のアッセイ様式も予想される。これらには、
試験サンプルを、本明細書に記載したように産生したE2抗原を含む少なくとも
1個の組換えHCVタンパク質が結合した固相と接触させ、固相および試験サン
プルをある時間、抗原−抗体複合体の形成に十分な条件下でインキュベートした
後、固相を標識組換え抗原と接触させて、抗原−抗体−抗原サンドイッチを形成
するものが含まれる。この様式や他の様式などのアッセイは、所有者が共通であ
る米国特許No,5,254,458 に記載されており、参考として本明細書に組み入れる
。
本発明は、固相の使用が好ましいことを開示しているが、本発明のタンパク質
は、非固相アッセイ系で使用できることが予想される。これらのアッセイ系は、
当業者に周知であり、本発明の範囲内であるとする。
次に、本発明を実施例によって説明するが、以下の実施例は説明のためのもの
であって、本発明の精神および範囲を限定するものではない。材料および方法 E2クローニングおよび発現
エンベロープ遺伝子のウイルス源は、HCVのタイプ1a遺伝子型を表すチン
パンジー由来の第二継代HCV−H菌株血漿[Ogata ら、前出、1991]であった[M
ishiro & Bradley,Viral Hepatitis and Liver Disease 283-85(Nishioka ら編
、1994)]。エンベロープ遺伝子cDNAは、RT−PCR増幅により単離した。
切断E2配列は、HCVの大きいオープンリーディングフレームのアミノ酸 388
〜664 をコードする領域のPCR増幅を使用して得た。E2相補DNA(cDN
A)は、プラスミドベクターのウサギH鎖シグナル配列およびヒトプロウロキナ
ーゼアミノ末端配列の両方の下流に挿入して、細胞培養流体でのシグナルプロテ
アーゼプロセシング、効率的な分泌および最終産物の安定性を高めた。発現系は
、本出願と同時に出願した審査中の米国特許出願 No.08/ , [代理人名簿 No.
5763.US.01]に、より完全な説明がある(参考として本明細書に組み入れ
る。)。簡単に述べると、細菌遺伝子β−ラクタマーゼおよびDNA複製起点を
含む pBR322 の 2.3 kb 断片、単純ヘルペスウイルス−1(HSV−1)チミジ
ンキナーゼプロモーターおよびポリ−A付加シグナルの制御下でネオマイシン耐
性遺伝子の発現を行う 1.8 kb カセット、ならびにシミアンウイルス40(SV
40)T−抗原プロモーターおよび転写エンハンサーおよびポリ−A付加シグナ
ル(選択および増幅用)の制御下でマウスジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子の発
現を行う 1.9kbカセット、を含むプラスミド 577 を改変して、SV40 T−
抗原プロモーターおよびエンハンサーの制御下で切断E2遺伝子の発現を行う 3
.5 kb カセット、B型肝炎ウイルス表面抗原エンハンサーI、ならびにポリ−A
付加シグナルを含むHSV−1ゲノムの断片を含むようにした。
3.5 kb のE2発現カセットは、付着末端結合によってカセットの XbaI クロ
ーニング部位に挿入した SpeI および XbaI で消化してある二本鎖合成オリゴヌ
クレオチドを含んでいた。合成オリゴヌクレオチド配列は、プロモーター要素お
よび転写開始部位の下流に挿入された、ウサギ免疫グロブリンγH鎖シグナルペ
プチドから誘導した配列およびクローニングのための制
限部位を作るための他の配列を含んでいた。E2発現カセットは、ウサギ配列の
下流に XbaI 断片として挿入されたPCR−由来E2断片も含んでいた。XbaI
部位のすぐ後ろには、ヒトプロウロキナーゼのアミノ末端配列をコードする配列
−セリン、アスパラギン、グルタミン酸およびロイシン(SNEL)−が続いた
。プロウロキナーゼ配列は、培養流体でのシグナルプロテアーゼプロセシング、
効率的な分泌および産物の安定性を促進した。SNEL配列のすぐ後には、aa 3
38〜aa 664 のHCV推定エンベロープ遺伝子のアミノ酸配列をコードする配列
、重複停止コドンおよびクローニング用の XbaI 部位が続いた。
dhfrの欠けた(dhfr-)チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Dxb-III)を
HCV E2プラスミドでトランスフェクションし、数回のメトトレキセート選
択の後に安定な細胞系を得た。Uriacio ら、Proc.Acad.Sci.,77:4451-4466(19
80)参照。これらの細胞は、ATCC(12301 Parklawn Drive,Rockville,MD 2085
2)で入手可能である(受理番号 CRL 9096)。細胞培養物は、メトトレキセート
水和物、5000nm、実際の濃度が300ug/mlのG418、透析した 10%ウシ胎児血
清および 500ml の培地
につき 8 ml の濃度のHEPES緩衝液(非CO2インキュベーション用)を補
充した Ham'sF12 カスタムマイナス組成物(グリシン、ヒポキサンチンまたはチ
ミジンを含まない)上で増殖させた。Ham's F12 カスタムマイナス培地は、5 %
CO2中、37℃で 12〜24 時間、ちょうど密集する単層上に置いた。次いで、増
殖培地を取り出し、細胞を、Gibco-BRL から入手できるリン酸緩衝食塩水(PB
S)(カルシウムおよびマグネシウムを含む)で3回洗浄して、存在している可
能性のある残りの培地/血清を除去した。次いで、細胞を、50%CO2中、37℃で
1時間、VASカスタム培地(1−グルタミンおよびHEPESを含み、フェノ
ールレッドは含まないVASカスタム組成物、JRH Bioscience 製、製品番号 52
-08678P)とともにインキュベートした。次いで、最終洗浄のときに、VASを捨
てた。これらの手順は、審査中の米国出願 No. (代理人ドケットNo.576
3.US.01)に詳述してあり、参考として本明細書に組み入れる。分泌されたE2
を含む培地を密集する細胞の単層から採取してプールし、精製時まで凍結保存し
た。細胞は、典型的には、6〜7日間隔で採取した。
E2抗原阻害アッセイを使用して細胞をスクリーニングした。
HCV陽性基準物質の値を 100%とし、アッセイでの吸光度の値が 1.0 になる
まで希釈した。基準曲線は、HCV陽性基準物質に既知量のE2抗原を 0.4ug/m
l〜50ug/ml の範囲で加えることにより作った。アッセイでは、 20ul の試験サ
ンプル(すなわち、添加した基準物質または細胞上清)を、40℃で約1時間、基
準となる陽性の対照とともにインキュベートした後、E2ペプチド−被覆ビーズ
(アミノ酸 509〜551 を含むHCV合成ペプチド)とともに40℃で約1時間、イ
ンキュベートした。生成したE2抗原の量を、γグロブリン特異的ヒツジ抗−ヒ
ト−HRPOコンジュゲートを添加し、インキュベートし、OPD基質を添加し
て、反応を1NのH2SO4で停止することにより測定した。未知の細胞培養物上
清を基準曲線から読み取り、E2濃度を求めた。この方法を使用して、1lの培
養流体につきCHO−E2が6〜10mg生成したことが測定された。
E2の発現は、アミノ酸 509〜551 を含むHCV合成ペプチドで免疫感作した
動物由来のポリクローナルウサギ血清(抗−ペプチド 509〜551 血清)を使用し
た免疫蛍光染色により検出した。図1は、(A)ウサギ抗−ペプチド血清(アミ
ノ酸 509〜551)および(B)HCV陽性ヒト血清の使用による、トラ
ンスフェクションしたCHO細胞のHCV E2抗原の免疫蛍光染色パターンを
示す。
E2発現は、35S−標識CHO細胞培養物からの溶解細胞抽出物の放射線免疫
沈降分析(RIPA)によっても検出した。図2は、CHO細胞で産生したHC
V E2抗原のRIPA分析の結果を示す。HCV E2抗原に対して特異的な
ウサギおよびヒト抗血清は共に、異種(heterogeneous)E2タンパク質を沈降
させた。E2精製
E2の精製は、まず細胞の上清を 50倍 に濃縮し、次いでイオン交換およびレ
クチンクロマトグラフィーを行うことにより行った。イオン交換クロマトグラフ
ィーは、2つのカラムのS−セファロースおよびDEAE−セファロースで構成
した。採取したものを 30 分間、1500 x g で浄化し、上清 をAmicon 攪拌細胞
濃縮機により、Amicon YM10 膜(Amicon,Beverly,MA製)を使用して 50 倍に濃縮
した。50x 濃縮物を 0.2u 最終濾過し、次いで、pH6.5、電導度約 2.0mS の 0
.02M リン酸ナトリウム緩衝液(塩は含まない)を含むS−セファロース流動緩
衝液に対して十分透析した。透析後、上清を、平衡にした 200ml の
S−セファロースカラムに 5ml/分の流速で充填した。未結合流体を集めて元の
体積に濃縮し、pH8.5、電導度約 12mSの0.2Mトリス緩衝液、0.1M NaClを
含むDEAE−セファロース流動緩衝液に対して十分透析した。透析後、上清を
、200ml のDEAE−セファロースカラムに 5ml/分の流速で充填した。未結合
流体を集めて元の体積に濃縮し、pH7.0の0.01M リン酸ナトリウム緩衝液、0.1
3M NaClを含むコムギ胚芽凝集素(WGA)−セファロース6MB流出緩衝
液に対して十分透析した。透析後、上清を、10ml のWGA−セファロース6M
Bカラムに 0.5ml/分の流速で充填した。未結合流体を集めて再循環した。カラ
ム流を逆にし、精製したCHO−E2抗原を、WGA−セファロース流動緩衝液
における 10mM のN,N’−ジアセチルキトビオースを使用して溶離した。精製
した抗原を、リン酸緩衝食塩水に対して透析し、−70℃で保存した。
最終純度は、当業者に周知の方法である、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリ
ルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を使用して評価した。図3は、CH
0細胞で産生した精製HCV E2抗原のSDS−PAGEゲルを示す。精製し
たE2抗原は、SDS−PAGE上に約 62〜72 kDa の異種
(heterogeneous)バンドとして現れた。同様の異種バンドは、RIPA分析によ
り、E2であることが確認された(図2)。最終純度は、クーマシーブルーで染
色したSDS−PAGEゲルの走査デンシトメトリーにより、90 %より大きいと
推定された。増殖採取期中、CHO細胞は、タンパク質を含まない培地で増殖し
、この糖タンパク質の精製効率は大いに高められた。
エンドグリコシダーゼH処理による予備実験は、E2タンパク質が、エンドグ
リコシダーゼHによる処理後に大きさが 62〜72 kDa の不均一(heterogeneous)
なバンドから明確な 32 kDaのタンパク質のバンドに減少したことにより証明さ
れるように、グリコシル化されていると思われることを示した。固相イムノアッセイ
HCV抗体のスクリーニングを、Abbott Laboratories(North Chicago,Illino
is)および Ortho Diagnostics Inc.(Raritan,New Jersey) から市販されている
2.0および 3.0HCV EIAを使用して行った。全ての試験は、製造者の指示
に従って行った。抗体の特異的反応性パターンを確立するために、市販のイムノ
ブロットアッセイ(RIBA HCV2.0、Chiron Corporation,Emeryville,C
alifornia; MATRIX HC
V 1.0およびMATRIX HCV 2.0,Abbott Laboratories,North Chicago
,Illinois)を補助的に使用した。RIBA HCV 2.0およびMATRIX
HCV 1.0アッセイは、製造者の指示に従って行った。MATRIX HCV 2
.0は、第二世代のMATRIXイムノブロットアッセイであり、コア、NS3お
よびNS4の他にNS5抗原を含む。アッセイ手順は、先に記載したMATRI
X HCV 1.0の場合と同じである[Vallari ら、J.Clin.Microbiol.30:552-
56(1992)]。試料
慢性および急性のNANBHの試料を、米国の複数の場所で得た。HCV抗原
に対してセロコンバージョンである人から順次集めた試料は、市販の血漿販売者
から得た。HCV RNA陽性の保管サンプル(N=495)は、患者またはドナ
ーと関係なく、米国の大きいウイルス学関連研究所から得た。RNA抽出および
PCR増幅手順は、記載されている[Gretch ら、J.Clin.Microbiol.30:2145-
49(1992)]。別のHCV RNA陽性試料は、日本(N=59)およびオランダ
(N=33)から採取した[Zaaijer ら、J.Med.Virol.44:395-97(1994)]。A
LT値が 100 IU/L より大きい、HCV感染している可能性のある
血液ドナーからの試料(N=304)は、Alfred Prince 博士(ニューヨーク血液
センター)から提供された。MATRIX 1.0上でコア(N=139)およびNS
3(N=149)に対する反応性が不確定であるサンプルは、Abbott Virology Ref
erence Laboratory,North Chicago,Illinois から入手し、HCV 2.0反応性血
液ドナーおよび患者の混合を表した。HCV血清マーカーに関して十分解析され
た、タイターの異なる抗−HCV(PHV203)で構成された市販の抗−HC
Vパネルは、Boston Biomedica,Incorporated(BBI),West Bridgewater,Massachu
setts から得た。HCV 2.0反応性血漿試料は、NorthAmerican Biologicals In
corporated(NABI)から入手し、そのうち、両方のHCV 2.0EIA(Abbot
t および Ortho)において一致して反応性であるサンプルのみをさらに分析した
。実施例 実施例1 抗−E2抗原EIA
上記したように作製した精製HCV E2抗原を、0.1M のホウ酸塩、0.15M
のNaCl緩衝液(pH9.0)における 1.0〜2.0ug/ml の濃度で、ポリスチレン
ビーズ上に被覆した。抗原
被覆緩衝液組成物のpHおよびイオン強度を、アッセイにおける感度および特異
性が最適になるように調整した。
簡単に述べると、使用したアッセイ手順は以下の通りであった。試料を試料希
釈剤で希釈し、混合した。全試料は、アッセイでは 1:41 の希釈度で試験した。
試料希釈剤は、リン酸塩ならびにウシ血清アルブミン、ウシ胎児血清およびヤギ
血清を
緩衝食塩水溶液で構成した。HCV E2抗原−被覆ビーズをトレイの各ウェル
に1つずつ添加し、37℃で約 60 分間、回転モードでインキュベートした。未結
合材料は、ビーズを水で洗浄することにより除去した。ビーズに結合したままで
ある抗−E2は、ビーズを含む各ウェルに、ホースラディッシュペルオキシダー
ゼを標識としてラベルしたヤギ抗−ヒトIgGを含む200 ul のコンジュゲート
を添加することにより検出した[Dawson ら、J.Clin.Microbiol.29:1479-86(19
91)]。ビーズを、37℃で約 30 分間、回転モードでインキュベートした。未結合
材料は、ビーズを水で洗浄することにより除去した。過酸化水素を含むo−フェ
ニレンジアミン(OPD)溶液をビーズに添加することにより発色が得られ、約
30 分間インキュベー
トした後、ビーズに結合した抗−E2の量に比例して黄橙色を呈した。酵素反応
は、1ml の 1N H2SO4を添加することにより停止した。色の強度は、分光光
度計を使用して、492 nm の波長で測定した。実施例2 特異性
実施例1に記載した抗−E2 EIAの特異性は、いくつかの集団の血液ドナ
ーボランティアから得た、合わせて 750 個の血清および血漿試料を試験するこ
とにより確立した。E2抗体アッセイのカットオフ値は、4.0 のシグナル対陰性
の対照吸光度の比(S/N)で確立した。このカットオフは、これらの集団の吸
光度分布の平均からの標準偏差の最小が6(6〜10 の範囲)であることを表し
た。実施例3 抗−E2 EIAと従来のHCVアッセイと間の相関関係
慢性NANBHであると診断された 159人の患者を、Abbott HCV 2.0 試験
および実施例1の抗−E2 EIAを使用して試験した。それらの患者のうち、
147 人(92.5%)の患者は、HCV 2.0 が陽性であり、141 人(88.6%)の患者は、
E2に対
する抗体も有していた。全体として、HCV 2.0 と抗−E2アッセイとの間の
一致は 96.2%であった。この集団は、HCVコアとE2抗体との間にも高い相
関関係(94%)が認められた。
同様の高い一致は、急性NANBH患者のHCV 2.0 と抗−E2アッセイと
の間でも認められた。Abbott HCV 2.0 試験および実施例1の抗−E2 EI
Aを使用して、113 個の試料を試験した。99個(87.6%)の試料で結果が一致し
(陽性51、陰性 48)、10 個の試料はHCV 2.0 とのみ反応し、4個の試料は、
E2抗体アッセイでのみ陽性であった。急性患者でのHCV 2.0 および抗−E
2 EIAに対する全体の反応性の割合は、各々、54%および49%であった。実施例4 セロコンバージョンサンプル
複数のHCV抗原に対してセロコンバージョンである5人の血漿ドナーから順
次集めた試料を、実施例1の抗−E2 EIAを使用して試験した。5人の患者
のうち3人は、抗−E2がセロコンバージョン中に検出可能な最初の抗体であっ
た。最終的には、5人全てにおいて抗−E2が現れた。
表Iの結果は、他のHCVタンパク質に対してセロコンバージョンを示した5
人全員がE2に対してもセロコンバージョンを示したことを示すことにより、抗
−E2 EIAにより検出されるE2に対する抗体は、HCV暴露の良好な指標
であることを示す。5人のうち3人はHCV感染の最初の血清学的マーカーとし
てE2抗体が現れたが、これは、何人かはHCV感染
後の早い時期にE2抗体が産生されることを示す。実施例5 RNA陽性試料
活性HCV感染中にE2抗体がどのくらいの頻度で現れるかを確立するために
、上記「試料」の項と同一の 587 個のHCVRNA陽性血漿試料を、実施例1
の抗−E2 EIAを使用して試験し、同様にMATRIX HCV 2.0 アッ
セイを使用して他の個々のHCV抗体に対する試験を行った。表 II に示すよう
に、これらのRNA陽性試料のうち、日本で採取した59個の試料のうち 56 個(9
4.9%)を含む 571 個(97.3%)は、E2に対する抗体を含むことが分かった(表
II)。E2陽性サンプルは全て、MATRIXによって検出される他のHCV抗
体を含んでいたが、E2抗体より高い頻度で生じた単一抗体はこの集団では認め
られなかった。
E2抗体は、これらの患者の 97.3%で認められ、これは、PCRによって検
出されるE2抗体とHCV RNAとの存在が非常に接近した正の関係であるこ
とを示す。日本の 59 人のHCV患者(遺伝子型1bが優勢である)のうち 94.
9%は、E2抗体に対して反応性であったので、1a型と1b型のウイルス間で
E2エピトープは保存されるにちがいないと思われる。HCV RNAとE2抗
体との間の接近した相関関係は、E2抗体のみの存在では、ウイルスの浄化に十
分でないことを示唆しており、これらの抗体がウイルス中和において果たし得る
役割には疑問がある。実施例6 HCV集団
上記「試料」の項と同一のいくつかのHCV集団を、実施例1の抗−E2 E
TAで試験した。ニューヨーク血液センターのALT値が 100IU/L より大きい
血液ドナー群のうち、48 個(15.8%)は、E2抗体陽性であった。E2抗原に対
して反応性であるサンプルは、他のHCV血清学的マーカーと反応するかどうか
を調べるために確かめた。これらの 48 個のドナーのうち 46(95.8%)は、Abbot
tHCV 2.0EIAにおいて反応性であり、MATRIX HCV 2.0 アッセイ
において陽性であることが確認された(コア抗原−反応性のみを試験した一つの
サンプルを除く)。すなわち、そのデータは、E2抗体試験が陽性であると、H
CV暴露に対してその前兆となる高い正の値を有することを示している。
MATRIX HCV 1.0によって不確定と判定された試料では、コアのみに
反応性である 139 個の試料のうち 59 個(42.4%)がE2抗体を含み、NS3の
みに反応性である 149 個の試料のうち 23 個(15.4%)がE2抗体を含むことが
分かった。そのデータは、実施例1の抗−E2 EIAの高い特異性と予
言性の高い値とを組み合わせると、不確定サンプルの評価に有用であることを示
す。実施例7 HCV 2.0 およびHCV 3.0 アッセイの間に一致しない結果を有するサンプル
BBIパネルPHV203試料を、AbbottHCV 3.0EIAおよび実施例1の
抗−E2 EIAで評価した。市販のアッセイである、AbbottHCV 2.0EIA
、Ortho HCV 2.0EIA、Ortho HCV 3.0EIA、MATRIX HCV 1
.0(Abbott)およびRIVA HCV 2.0 (Chiron)による試験結果は、BBIに
よって提供された。BBIによってHCV陰性であると報告された2つのパネル
要素は、E2抗体陰性でもあった。
23 個のHCV 2.0EIA陽性(Abbott および Ortho の両アッセイ)試料の
うち 18 個(78.3%)を試験すると、抗−E2陽性であった。HCV 2.0 が一致
して陽性であった 23 個の試料のうち、6個(26.1%)のサンプルは、Ortho HC
V 3.0EIAで陰性であったが、AbbottHCV 3.0EIAでは反応性のままであ
った。表 III に、これらのサンプルの各々の血清学的プ
ロフィールを示す。表 III に示すように、6個の試料のうち3個(50%)(パネル
要素-01、-02 および-10)は、複数のHCVタンパク質に対する抗体を含んでお
り、そのうち2個のサンプル(パネル要素-02 および-10)は、E2に対する抗
体を有していた。その2個の抗−E2陽性サンプルは、RIBAおよびMATR
IXの両アッセイにおいて、コアに対しても反応性であった。
すなわち、そのデータは、両製造者によるHCV 2.0EIAで一致して陽性で
あるが、Ortho 3.0 EIAは陰性である、BBIパネルの6個のうちの2個(33.
3%)は、コアおよびE2の両抗体を含んでいたことを示す。
実施例1の抗−E2 EIAを、現在、米国の外でのみ市販されている、認可
されたHCV 2.0EIA試験およびHCV3.0EIA試験の間で反応性が一致し
ないNABI血漿ドナーの試料の評価の補助に使用した。予選択の偏りを除去す
るために、Abbott および Ortho の両方の 2.0EIAが繰り返し反応性であるド
ナー試料のみ(N=104)を、これらの会社の各々のHCV 3.0血液スクリーニ
ングテストを使用して試験した。
12個のユニークなドナーを代表する104個の試料のうちの13
個(12.5%)は、一方または両方のHCV 3.0EIAで非反応性であった。これ
らの 13 個の試料に存在するHCV抗体パターンの完全な分析を、RIBA 2.0
、MATRIX 2.0 および実施例1の抗−E2 EIAを使用して行った。表
IVは、各試料の血清学的プロフィールを示す。試料番号5および8は、一人の
ドナーの継続的な提供を表す。
表IVに示すように、一人のドナーの継続的な提供を表す試料番号5および8
は、コアおよびE2抗体陽性であり、これは、これらのアッセイの再現性および
特異性を示している。RIBA 2.0 およびMATRIX 2.0 の両方でコア抗原
に反応した4個の試料は、E2に対する抗体も含んでいた。これら4個の試料は
、AbbottHCV 3.0 アッセイで反応性であった(S/CO値:1.99〜3.01)が
、Ortho HCV 3.0 アッセイでは陰性であった(S/CO値:0.47〜0.79)。
他の3個の試料は、MATRIXで、E2以外の2つの異な
るHCVタンパク質に対する抗体を有していた(コア/NS3、コア/NS5お
よびNS4/NS5)。これらの試料のうち、コア反応性の2個の試料は、Abbo
ttHCV 3.0EIAで陽性であり(S/CO値:2.24 および 1.97)、Ortho H
CV 3.0EIAでは陰性または境界型陰性であった(S/CO値:0.68および 0
.96)。NS4およびNS5に対する抗体を含む他の試料は、Abbott および Ort
ho の両方のHCV 3.0EIAで陰性であった。
そのデータは、両方の製造者のHCV 2.0EIAで一致して陽性であったが、
Ortho 3.0 EIAでは陰性であった、13 個のサンプルのうちの4個(30.7 %)は
、コアおよびE2の両方に対する抗体を含んでいたことを示す。
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フロントページの続き
(72)発明者 スハー,トーマス・エス
アメリカ合衆国、イリノイ・60046、リン
デンハースト・ベツク・ロード・842
(72)発明者 レスニーウスキイ,リチヤード・アール
アメリカ合衆国、ウイスコンシン・53142、
ケノシヤ、ワンハンドレツドテンス・アベ
ニユー・8706
(72)発明者 シエフエル,ジエームズ・ダブリユ
アメリカ合衆国、イリノイ・60060、マン
デレイン、バンバリイ・ロード・925