【発明の詳細な説明】
ポリケトンポリマー組成物
本発明は、ポリケトンポリマー組成物に関するものである。より詳細には本発
明は、UV光による劣化に対し作用する安定化剤を含有したポリケトンポリマー
組成物に関するものである。
一酸化炭素とオレフィンとのポリマー(一般にポリケトンもしくはポリケトン
ポリマーと称する)は当業界で周知されている。一酸化炭素と少なくとも1種の
エチレン系不飽和化合物との線状交互ポリマーの種類はポリケトンポリマーのう
ち特に興味が持たれる。この種類のポリマーは、US−A−4880865号お
よびUS−A−4818811号を例とする多くの特許公報に開示されている。
ポリケトンポリマーの性質は、これらを多くの用途に適せしめる。しかしなが
ら殆どのポリマーの場合のように、これらは紫外(UV)光に露出すると物理的
性質の劣化を示しうる。ポリケトンにおいて、この種の劣化はたとえば延性、強
度および靭性のような物理的性質の喪失をもたらしうる。
UV線の悪作用に対しポリマーを安定化させることにより、ポリマー特性の劣
化を防止もしくは抑制することが望ましい。多くの市販入手しうるUV安定化剤
が存在し、これらは種々の組合せにて種々のレベルの効果を以て用いることがで
きる。この種の安定化剤は、たとえばヒンダードアミン光安定化剤(HALS)
およびヒンダードフェノール、励起状態のクエンチャー、過酸化物分解剤、金属
失活剤およびUV吸収性添加剤のようなラジカル抑制剤を包含する。多くの場合
、紫外線安定化はこの種の安定化剤の組合せにより達成される。
ポリケトンポリマーにつき従来開発された安定化方式はUS−A−49545
48号に提案された対策を包含する。その場合、カーボンブラックとジフェニル
アミン安定化剤との組合せ物の使用が好適であった。US−A−5149733
号は、カーボンブラックと立体障害チオビスフェノール安定化剤との組合せ物の
使用を提案している。しかしながらUV吸収性カーボンブラックによるポリケト
ンポリマーの安定化は、固定部分着色を含め諸欠点を有する。必要とされる高充
填量もポリマーの物理的性質に悪影響を及ぼし、溶融処理安定性も低下しうる。
したがって、一層効率的にポリケトンポリマーを安定化するには、代案物質また
は新規な物質を探索することが望ましい。
非着色性のUV吸収性添加剤が当業界で知られている。これら添加剤は、有害
なUVエネルギーを吸収すると共にエネルギーを熱として効率的に放散させる官
能基を有することによりポリマーを保護する。US−A−5019614号は、
たとえばヒドロキシベンゾトリアゾールのようなUV吸収剤をポリケトンポリマ
ーのための安定化剤として使用することを提案している。たとえばヒドロキシベ
ンゾトリアゾール安定化剤の場合、添加剤により吸収されたエネルギーはヒドロ
キシル基と隣接トリアゾール基との互変異性によって容易に放散される。この場
合、分子間のヒドロキシル基とトリアゾール基とが互いに相乗的に機能して、安
定化を与えると共に「官能基」を構成する。従来技術におけるUV吸収性添加剤
によるポリケトンポリマーの安定化は、これら官能基を1個しか含まない。
UV吸収性添加剤を含有するポリケトンポリマー組成物を用いてさらに開発研
究する際、たとえば押出および射出成形のような溶融処理技術が用いられて、こ
れら組成物を製造物品まで処理した。残念ながら、溶融処理に際し或る程度のポ
リケトンの劣化が生じて、たとえば延性および靭性のような機械的性質の喪失が
生ずることが経験された。したがって、組成物の溶融安定性における改善をもた
らすようなUV吸収性添加剤を見出すことが望ましい。
今回、ポリケトンポリマー組成物の改善された溶融安定性を、UV吸収性添加
剤としてその分子構造内に1個より多いUV吸収性−放散性官能基を含む化合物
を使用すれば達成しうることが予想外に突き止められた。さらに、これら組成物
は向上したレベルのUV安定性と向上した着色性能とを有することも判明した。
さらに、ここに提案する安定化剤は低レベルの揮発性を有して、溶融処理に際し
蒸発による安定化剤の喪失が存在したとしても最小化される。
したがって本発明は、ポリケトンポリマーを含むと共にこれと分子構造内に少
なくとも2個の紫外線吸収性−放散性官能基を有する安定化量の安定化剤とを緊
密混合してなるポリマー組成物に関するものである。
さらに本発明は、ポリケトンポリマーを分子構造内に少なくとも2個の紫外線
吸収性−放散性官能基を有する安定化量の安定化剤と緊密混合することからなる
方法にも関するものである。
向上した溶融安定性および向上したUV安定性を有するポリケトンポリマー組
成物は、たとえば自動車構造部品および部材のような広範囲のエンジニアリング
・サーモプラスチック用途に有用である。他方、日光への露出に直面する殆ど全
てのポリケトンポリマー物品はUV安定化により利点を得ることができる。本発
明を実施する際に有用な材料はポリケトンポリマーおよび1個より多いUV吸収
性−放散性官能基を有するUV安定化剤を含む。さらに当業界で周知された他の
ポリマー添加剤を、作成されたポリケトン組成物と一緒に使用することもできる
。たとえば充填剤、増量剤、潤滑剤、顔料、可塑化剤および他のポリマー材料を
、組成物の諸性質を向上もしくは変化させるべく安定化されるポリケトン組成物
に添加することができる。
本発明に使用するポリケトンは典型的には一酸化炭素と少なくとも1種のエチ
レン系不飽和化合物との線状交互コポリマーである。すなわちポリケトンポリマ
ーは、典型的にはエチレン系不飽和化合物の各分子につき1分子の一酸化炭素を
含有することを意味する線状交互構造を有する。エチレン系不飽和化合物は典型
的には20個までの炭素原子を含み、専ら炭素と水素とで構成される化合物およ
びさらに異原子をも含む化合物、たとえば不飽和エステル、エーテルおよびアミ
ドを包含する。不飽和炭化水素が好適である。適するエチレン系モノマーの例は
脂肪族α−オレフィン(たとえばエテン、プロペンおよびブテン−1)、環式オ
レフィン(たとえばシクロペンテン)、芳香族化合物(たとえばスチレンおよび
α−メチルスチレン)、並びにビニルエステル(たとえば酢酸ビニルおよびプロ
ピオン酸ビニル)である。好適ポリケトンポリマーは一酸化炭素とエテンとの線
状交互ポリマーまたは一酸化炭素とエテンと少なくとも3個の炭素原子を有する
他のエチレン系不飽和化合物(特にたとえばプロペンもしくはブテン−1のよう
なα−オレフィン)との線状交互ポリマーである。
一酸化炭素とエテンと他のエチレン系不飽和化合物との好適ポリケトンポリマ
ーを用いる場合、典型的にはポリマー内に他のエチレン系不飽和化合物の成分を
組込んだ各単位につきエテンの成分を組込んだ少なくとも2個の単位が存在する
。好ましくは他のエチレン系不飽和化合物の成分を組込んだ各単位につきエテン
の成分を組込んだ10〜100単位が存在する。したがって好適ポリケトンポリ
マーのポリマー鎖は、反復式
[式中、Gはエチレン系不飽和を介し重合した少なくとも3個の炭素原子を有す
るエチレン系不飽和化合物の成分であり、y:xの比は典型的には0.5以下で
ある]
により示される。一酸化炭素とエテンとの線状交互ポリマーを本発明の組成物に
使用する場合は、第2のエチレン系不飽和化合物が存在せず、ポリマーはyが0
は0.01〜0.1である。末端基の正確な性質はポリマーの諸性質に大して影
響を与えないと思われ、ポリマーは上記ポリマー鎖のための式により良好に示さ
れる。
1000〜200,000の数平均分子量を有するポリケトンポリマー、特に
20,000〜90,000の数平均分子量(数平均分子量はゲル透過クロマト
グラフィーにより測定される)を有するものが特に興味を引く。ポリマーの物理
的性質は部分的に分子量、ポリマーが単一もしくは複数のエチレン系不飽和化合
物のいずれに基づくか、並びにエチレン系不飽和化合物の性質および比率に依存
する。ポリマーの典型的融点は示差走査熱量法により測定して175〜300℃
、より典型的には210〜270℃である。ポリマーは典型的には標準細管粘度
測定装置にて60℃でm−クレゾール中で測定して0.5〜10dl/g、より
典型的には0.8〜4dl/gの極限粘度数(LVN)を有する。
ポリケトンポリマーの好適製造方法はUS−A−4808699号およびUS
−A−4868282号から公知である。US−A−4808699号は、エテ
ンと一酸化炭素とを第VII族金属化合物と6未満のpKaを有する非ヒドロハ
ロゲン酸のアニオンと二座燐、砒素もしくはアンチモン配位子とからなる触媒の
存在下に接触させることによるポリケトンポリマーの製造を教示している。US
−A−4868282号は、一酸化炭素およびエテンをエチレン系不飽和基を有
する1種もしくはそれ以上の炭化水素の存在下に同様な触媒と接触させることに
よるポリケトンポリマーの製造を教示している。
ポリケトンポリマーは、1個より多いUV吸収性−放散性官能基を有するUV
安定化剤との緊密混合物を形成することにより、UV線への露出によって生ずる
劣化に対し安定化される。上記したようにUV吸収性−放散性官能基は、他の官
能基もしくはその部分と協働して280〜380nmの範囲を含む広範囲の周波
数にわたりUVエネルギーを吸収すると共にUVエネルギーを放散して添加剤が
反復してUVエネルギーを吸収すると共に熱として放散するような官能基を含む
。より詳細には290〜320nmの範囲におけるUV吸収が、地球上の日光の
悪作用に対しポリケトンを安定化するのに最も重要であると考えられる。同じ添
加剤分子における基の任意の組合せも有用であが、好適なUV吸収性−放散性官
能基はヒドロキシベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾフェノン、修酸アニリ
ド、シアノアクリレート、ヒドロキシフェニルトリアジンおよびフェニルサリチ
レートを包含する。ヒドロキシベンゾトリアゾールが好適な基である。最も好適
な基は1−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシアレーン、特に
1−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシベンゼンの構造を含む
。ビス[2−ヒドロキシ−5−メチル−3−(ベンゾトリアゾー2−イル)フェ
ニル]メタンが、最も好適な基を含む安定化剤である。
本発明のUV安定化剤は少なくとも2個のUV吸収性−放散性官能基を含む。
この種の物質は構造式:
G1−R1−G2−(Rx−Gy)n
[式中、nは0、1、2、3もしくは4であり、G1、G2およびGyはそれぞれ
独立してUV吸収性−放散性官能基であり、R1およびRxは架橋基もしくは化学
結合とすることもできる]
により示すことができる。2個の官能基(G)を含む分子であるダイマーが好適
である。これら物質は次の構造式:
G1−R1−G2
を有する。
存在する場合、架橋基(R)は専ら炭素原子と水素原子とを含みうるが、これ
らはたとえば窒素、塩素もしくは酸素のような異原子を有することもできる。こ
れらは典型的には20個まで、より典型的には10個までの炭素原子を含む。好
適架橋基はたとえばエチレン、1,3−プロピレン、1,4−および2,3−ブ
チレン基のようなアルキレン基である。代案として、架橋基はたとえば−CH2
−φ−CH2−[ここでφは1,4−フェニレン基を示す]におけるようなフェ
ニレン基を含むこともできる。好適架橋基はメチレン(−CH2−)基である。
UV吸収性−放散性基を含む前記の基以外の官能基も、安定化剤の全体的な物
理的および/または化学的性質を調整すべく存在させることができる。たとえば
ペンダント有機もしくは無機基を必要に応じ存在させて、たとえばスペクトル吸
収最大値、揮発性または適合性のような諸性質を改変することができる。水素、
並びにC1〜C9アルキルおよびアルコキシ基が、本発明の残余の安定化剤分子に
固定される典型的な追加要素もしくは基である。
最も好適な安定化剤は一般式:
[式中、R1は上記の意味を有し、基R2は独立してヒドロカルビル基、特にアル
キル基、より詳細にはC1-20アルキル基、特にC1-8アルキル基である]
のヒドロキシベンゾトリアゾールダイマーである。
置換1,3,5−トリアジンのダイマーおよびトライマーが本発明の範囲内に
おける他のダイマーおよびトライマー安定化剤の例である。
さらに、同様な構造を有する他の安定化剤もこの点に関し有用であることに注
目すべきである。この種の安定化剤は、安定化剤内のUV吸収性−放散性官能基
がたとえばヒドロキシベンゾトリアゾールとヒドロキシベンゾフェノンとの混合
物のような異なる成分となるよう処理することができる。
たとえば、この種の安定化剤は一般式
[式中、R1は上記の意味を有し、R3はC1-10脂肪族、脂環式もしくはアリール
基である]
を有することができる。
広義に言えば本発明の方法は、安定化量のUV安定化剤をポリケトンポリマー
中へ分散させて混合物を形成することを含む。安定化剤の安定化量は、ポリケト
ンのUV劣化を防止するのに充分な量である。この量は一般に0.1〜10重量
%(ポリケトンの重量に対し)である。好ましくは0.2〜5重量%を添加する
。0.4〜2重量%を添加するのが最も好適である。
安定化剤は処理の任意の段階で、好ましくは高められた温度にかける前に、ポ
リケトンポリマー中へ混入することができる。ポリマーと添加剤との緊密混合物
を形成させるのに適する任意慣用の方法を用いて混合物を形成させることができ
、ただしこの方法は組成物の各成分の実質的に均一な配合物をもたらすものとす
る。この種の方法は一般に溶融処理法であり、微細型におけるポリマーと安定化
剤との乾式配合を包含し、次いで混合物を溶融押出しする。たとえば溶剤付着の
ような技術、並びに当業者に知られた他の方法を用いることもできる。
このように形成された安定化ポリケトンは、たとえば溶融紡糸、押出、射出成
形および熱成形のような常法により生成される確立された用途を有する繊維、シ
ート、フィルム、ラミネート、容器、ワイヤおよびケーブルの製造に有用である
。これら組成物は、仕上製品が紫外線に直接露呈される、たとえば外装自動車用
途につき製造される構造部品のような種々の用途に特に有用である。
限定はしないが、以下の例および表により本発明をさらに説明する。各例にお
いて重量%は特記しない限りポリマーの重量に基づく。例1〜3
(例3は比較例である)
220℃の融点と1.8dl/gの極限粘度数とを有する一酸化炭素とエテン
と少量のプロペンとの線状交互ポリマーの試料を1重量%のUV安定化剤と混合
した。例1において、試験したUV安定化剤はビス[2−ヒドロキシ−5−メチ
ル−3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]メタン(フェアマウント
・ケミカル・カンパニーから商標MIXXIM BB 200として市販入手し
うる)とし;例2において、試験したUV安定化剤はビス[2−ヒドロキシ−5
−オクチル−3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]メタン(フェア
マウント・ケミカル・カンパニーから商標MIXXIM BB 100として市
販入手しうる)とし;例3において、比較のため試験したUV安定化剤は2−(
ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1,1−ジメチルプロピル)
フェノール](チバ・ガイギー社から商標チヌビン 328として市販入手しう
る)とした。これら混合物をそれぞれ、25mm二軸スクリュー押出機で255
℃の溶融温度を用いてペレット中に溶融配合した。試験試料を厚さ1.55mm
(1/16インチ)の型V、ASTM D638引張試験片として射出成形した
。これら試験試料を次いで加速UV老化にかけた。加速老化は、試験試料をウェ
ザロメーターにおける蛍光源に露出して行った。これら試験に用いたQUV加速
風化試験器にはUV−340A蛍光灯を装着した。加速老化試験の条件は、何ら
の水凝縮期間なしの連続UV露出を用いた。試験の際の黒色パネルの温度は50
℃とした。この加速老化手法をここではQUV老化と称する。
光劣化は破断点伸び率の損失をもたらす。常温延伸の能力がポリマーの延性お
よび衝撃性能に関する重要なパラメータである。ここで用いた試験条件下で、ポ
リケトンはこの性質を50%もしくはそれ以上の伸び率にて示す。50%もしく
はそれ以下の数値まで破断歪みの減少を受ける各試料は、典型的にはネックもし
くはコールド−泥の不能を示す。したがって、50%もしくはそれ以下の破断歪
みを有する試料は、この試験に失格であると思われた。
試験試料の破断歪みを、市販の引張試験器を用いると共に25.5mm(1.
00インチ)のグリップ対グリップの間隔と16.5mm(0.65インチ)の
ゲージ長さと12.7mm/min(0.5インチ/min)のクロスヘッド速
度とを用いて測定した。表1は合格/失格基準にて各試料の性能を要約し、破断
点伸び率の数値を括弧内に示す。この例は、ダイマーのヒドロキシベンゾトリア
ゾール添加剤(例1および例2)がモノマーのヒドロキシベンゾトリアゾール添
加剤(例3)よりも優秀であったことを示す。
例4および5(例4は比較例である)
この例においては、200℃の融点と1.8dl/gの極限粘度数(LVN)
とを有する一酸化炭素とエテンと少量のプロペンとの線状交互ポリマーを1.0
重量%のビス[2−ヒドロキシ−5−メチル−3−(ベンゾトリアゾール−2−
イル)フェニル]メタンと合した(例5)。混合物をペレットまで溶融押出し、
次いで試験試料まで射出成形した。UV安定化剤を含まない同一のポリケトンポ
リマーを比較として用いた(例4)。使用した試験試料は3.18mm(1/8
インチ)の型I、ASTM D638引張試験片とした。試験試料をサウス・フ
ロリダ老化にかけた。全ての引張試料片の引張試験は、50.8mm/min(
2.00インチ/min)のクロスヘッド速度と114mm(4.50インチ)
のゲージ長さとを使用し、これはグリップ対グリップの間隔でもある。表2は、
地球上の日光に露出する前後における各試料の初期ゲージ長さの%としての破断
点伸び率を示す。この例は、ダイマーのベンゾトリアゾール添加剤がポリケトン
ポリマーにおける破断点伸び率を維持する劇的な安定化作用を示す。
例6および7(例7は比較例である)
これら例においては、1.8dl/gの極限粘度数(LVN)と220℃の融
点とを有する一酸化炭素とエテンと少量のプロペンとの線状交互ポリマーの粉末
を1重量%のUV安定化剤と合した。例6において、試験したUV安定化剤はビ
ス[2−ヒドロキシ−5−オクチル−3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)フ
ェニル]メタンとし;例7において、比較につき試験したUV安定化剤は2−(
ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1,1−ジメチルプロピル)
フェノールとした。これら混合物を30mm二軸スクリュー押出機により溶融配
合し、次いで厚さ0.76mm(0.030インチ)の円盤まで溶融レオロジー
試験につき圧縮成形した。溶融粘度測定を275℃および1ラド/秒の剪断速度
で操作される平行プレート粘度計を用いて行った。
275℃にて28分間後の組成物の複合粘度を例6にては10,000 Pa
.sまで上昇させ、例7においては14,000 Pa.sまで上昇させた。こ
れは、溶融処理条件下で本発明による組成物が従来技術による組成物と比較して
優秀な安定性を有することを示す。例8および9
(例9は比較例である)
これら例においては、1.8dl/gの極限粘度数と220℃の融点とを有す
る一酸化炭素とエテンと少量のプロペンとの線状交互ポリマーを1重量%のUV
安定化剤と合した。例8において、試験したUV安定化剤はビス[2−ヒドロキ
シ−5−オクチル−3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]メタンと
し;例9において、比較につき試験したUV安定化剤は2−(5−クロル−ベン
ゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(1,1−ジメチルエチル)フ
ェノール(チバ・ガイギーから商標チヌジン326として市販入手しうる)とし
た。これら混合物を溶融配合し、試験試料まで射出成形し、QUV老化にかけ、
さらに例1〜3に記載したように試験した。結果を表3に示す。
押出後のペレットの黄色指数を、ASTM D−1925によりガードナー・
カラーガード・システム2000(商標)を用いて測定した。より低い黄色指数
はポリマーの低い変色を意味する。測定された数値は例8のペレットにつき27
.2であり、例2のペレットにつき39.4であった。
さらにペレットの各試料を厚さ1mmのシートまで圧縮成形し、これには25
0℃にて0.4 MPaで0.5分間および4 MPaの圧力にて1.5分間プ
レスして行った。各シートから切除した円形ディスクを動的レオロジー試験(す
なわち動的剪断モジュラスの測定)に272℃の温度でかけ、これには1ラド/
sの角振動数を用いると共に各試料を0.9mmの間隔でアルミニウム円盤の間
に保った。交叉時間は、動的損失率(すなわち損失弾性率と貯蔵弾性と比率)が
1に等しくなるまで測定の際に経過した時間として規定される。より高い交叉時
間はより良好な溶融処理安定性を意味する。例8において交叉時間は23分間で
あり、例9において交叉時間は15分間未満であった。
上記から明らかなように、本発明による組成物はUV老化性能、色形成および
溶融処理安定性において、従来技術による組成物と比較し優秀である。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】1997年5月1日
【補正内容】
補正明細書
として放散するような官能基を含む。より詳細には290〜320nmの範囲に
おけるUV吸収が、地球上の日光の悪作用に対しポリケトンを安定化するのに最
も重要であると考えられる。同じ添加剤分子における基の任意の組合せも有用で
ある。本発明によるUV吸収性−放散性官能基はヒドロキシベンゾトリアゾール
、ヒドロキシベンゾフェノン、修酸アニリド、シアノアクリレート、ヒドロキシ
フェニルトリアジンおよびフェニルサリチレートよりなる群から選択される。ヒ
ドロキシベンゾトリアゾールが好適な基である。最も好適な基は1−(ベンゾト
リアゾール−2−イル)−2−ヒドロキシアレーン、特に1−(ベンゾトリアゾ
ール−2−イル)−2−ヒドロキシベンゼンの構造を含む。ビス[2−ヒドロキ
シ−5−メチル−3−(ベンゾトリアゾー2−イル)フェニル]メタンが、最も
好適な基を含む安定化剤である。
本発明のUV安定化剤は少なくとも2個のUV吸収性−放散性官能基を含む。
この種の物質は構造式:
G1−R1−G2−(Rx−Gy)n
[式中、nは0、1、2、3もしくは4であり、G1、G2およびGyはそれぞれ
独立してUV吸収性−放散性官能基であり、R1およびRxは架橋基もしくは化学
結合とすることもできる]
により示すことができる。2個の官能基(G)を含む分子であるダイマーが好適
である。これら物質は次の構造式:
G1−R1−G2
を有する。
存在する場合、架橋基(R)は専ら炭素原子と水素原子とを含みうるが、これ
らはたとえば窒素、塩素もしくは酸素のような異原子を有することもできる。こ
れらは典型的には20個まで、より典型的には10個までの炭素原子を含む。好
適架橋基はたとえばエチレン、1,3−プロピレン、1,4−および2,3−ブ
チレン基のようなアルキレン基である。代案として、架橋基はたとえば−CH2
−φ−CH2−[ここでφは1,4−フェニレン基を示す]におけるようなフェ
ニレン基を含むこともできる。好適架橋基はメチレン(−CH2−)基である。
UV吸収性−放散性基を含む前記の基以外の官能基も、安定化剤の全体的な物
理的および/または化学的性質を調整すべく存在させることができる。たとえば
ペンダント有機もしくは無機基を必要に応じ存在させて、たとえばスペクトル吸
収最大値、揮発性または適合性のような諸性質を改変することができる。水素、
並びにC1〜C9アルキルおよびアルコキシ基が、本発明の残余の安定化剤分子に
固定される典型的な追加要素もしくは基である。
補正請求の範囲
1. ポリケトンポリマーを含むと共に、これと少なくとも2個の紫外線吸収性
−放散性官能基をその分子構造内に有する安定化量の安定化剤とを緊密混合して
なり、安定化剤がヒドロキシベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾフェノン、
オキサアニリド、ジフェニルシアノアクリレート、フェニルサリチレート、ヒド
ロキシフェニルトリアジンおよびその組合せ物よりなる群から選択される組成物
からなることを特徴とするポリマー組成物。
2. 前記紫外線吸収性−放散性官能基のそれぞれが同一である請求の範囲第1
項に記載の組成物。
3. 前記安定化剤が2個の紫外線吸収性−放散性官能基を含む請求の範囲第1
項または第2項に記載の組成物。
4. 前記安定化剤が式
[式中、R1はアルキレン架橋基であり、基R2はアルキル基である]
を有する組成物からなる請求の範囲第1〜3項のいずれか一項に記載の組成物。
5. ポリケトンポリマーが、一酸化炭素とエテンおよび必要に応じ他のエチレ
ン系不飽和化合物、特にプロペンもしくはブテン−1との線状交互ポリマーであ
る請求の範囲第1〜4項のいずれか一項に記載の組成物。
6. 前記安定化剤がポリケトンポリマーの重量に対し0.2〜5重量%、特に
0.4〜2重量%の量にて存在する請求の範囲第1〜5項のいずれか一項に記載
の組成物。
7. ポリケトンポリマーを安定化量の請求の範囲第1項に記載の安定化剤と緊
密混合することを特徴とする方法。
【手続補正書】
【提出日】1997年10月24日
【補正内容】
請求の範囲
1. ポリケトンポリマーを含むと共に、これと少なくとも2個の紫外線吸収性
−放散性官能基をその分子構造内に有する安定化量の安定化剤とを緊密混合して
なり、安定化剤がヒドロキシベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾフェノン、
オキサアニリド、ジフェニルシアノアクリレート、フェニルサリチレート、ヒド
ロキシフェニルトリアジンおよびその組合せ物よりなる群から選択される組成物
からなることを特徴とするポリマー組成物。
2. 前記紫外線吸収性−放散性官能基のそれぞれが同一である請求の範囲第1
項に記載の組成物。
3. 前記安定化剤が2個の紫外線吸収性−放散性官能基を含む請求の範囲第1
項または第2項に記載の組成物。
4. 前記安定化剤が式
[式中、R1はアルキレン架橋基であり、基R2はアルキル基である]
を有する組成物からなる請求の範囲第1〜3項のいずれか一項に記載の組成物。
5. ポリケトンポリマーが、一酸化炭素とエテンおよび必要に応じ他のエチレ
ン系不飽和化合物、特にプロペンもしくはブテン−1との線状交互ポリマーであ
る請求の範囲第1〜4項のいずれか一項に記載の組成物。
6. 前記安定化剤がポリケトンポリマーの重量に対し0.2〜5重量%、特に
0.4〜2重量%の量にて存在する請求の範囲第1〜5項のいずれか一項に記載
の組成物。
7. ポリケトンポリマーを安定化量の請求の範囲第1項に記載の安定化剤と緊
密混合することを特徴とする方法。8. 少なくとも2個の紫外線放散性官能基を分子構造内に有する安定化剤であ って、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾフェノン、オキサアニ リド、ジフェニルシアノアクリレート、フェニルサリチレート、ヒドロキシフェ ニルトリアジンおよびその組合せ物よりなる群から選択される組成物からなる該 安定化剤のポリケトンのUV安定性を改良するための使用。
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(72)発明者 ウエインカウフ,ドナルド,ヒル
アメリカ合衆国テキサス州77007、ヒユー
ストン、イースト7・1/2ストリート
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