【発明の詳細な説明】
対捻れ補剛材を有するスポーツ靴
本発明は、装着者の足に台わせる調節区域の箇所に柔軟な部分を、また、装着
者からの衝撃と支承を伝達する区域の箇所に硬質部分を含む、プラスチック材料
の鋳造成形によって得られるシェルを含むスポーツ靴に関する。
この種の公知のスポーツ靴(例えば、スキー靴)の多くは、プラスチック材料
をベースとする単一材料を鋳造成形として得られる靴胴部とシェル低部などの構
成部分とを含む。これらの靴においては、一方では、靴の着脱時に足の出し入れ
が自由にでき、また足の保持を確実にするよう足に適合させるための諸区域(多
くの場合、互いに重なり合う横断方向フラップからなる諸区域)の箇所に薄い壁
部を設けること、また他方では、靴底や、靴胴部とシェル低部の側面部や背面区
域のように殆どまたは全く変形してはならない区域の箇所に分厚い材料の壁部ま
たはブリッジを設けることが予め考えられる。実際、これらの区域は、一方では
、スキー板の締め具から受ける応力に屈しないため、また他方では、スキーヤー
の支承または支承の反作用を、その力を減衰させることなく、かつほぼ瞬間的、
にスキー板に伝達するため比較的剛直でなければならない。このように製作され
る公知
の靴は、就中、その全体の剛直性とその異なる区域における柔軟性/剛直性の調
和を特徴としており、この調和は壁部の厚さを変えることによって得られる。こ
の解決策はスキーヤーの利用(着脱、足の保持、支承の質、など)にとって比較
的満足のいくものであることは明らかであるが、若干の欠点を有する。すなわち
、このようにして案出される靴は、剛直な区域の箇所に要求される材料の厚さが
増加するので比較的重く、鋳造成形をするためおよび構造を均一にするための製
作上の問題を提起する。これら諸問題は、主としてシェル低部および/または靴
胴部の壁部の厚さの変化、ならびに靴の該区域上における位置の変化による。そ
の理由は、鋳造成形した材料の収縮および該区域全体に影響を及ぼすとともに該
区域を変形させようとする張力を局部的に誘発するからである。最も頻繁な変形
は、シェル低部および/または靴胴部の捻れに関するもので、互いに上下関係で
(とりわけ、足の挿入口を閉鎖するフラップの箇所に)位置する閉鎖部材の良好
な位置決めを妨げる。この種の変形を緩和するために、向かい合うフラップの案
内兼相互保持手段の使用に関するドイツ国特許出願第 8413016号および日本国特
許出願第3−19761号各明細書に記載されている解決策を引用できる。
さらに、鋳造成形された単一材料で作られるこれらの靴は全体が剛直であると
いう欠点を有し、製造時に決定されるこれらの靴の剛直性は、競技用スキーある
いはレ
ジャー用スキーなど、与えられる機会にスポーツマンが目指すスポーツの実施に
応じて調整することが最早できなくなる。ところで、速力が最も重要であるスキ
ー実施の第一の場合、スキーヤーは攻撃的な姿勢を採り、また、例えこの剛直性
が快適性を妨げるとしても、力を失うことなしに、できるだけ短時間に衝撃の伝
達を確実にするため全体として非常に剛直な靴を必要とする。事実、この剛直性
はスキーヤーの側から最大限の動作の正確さと支承(とりわけ、関節の自由度の
ない側方支承における支承)の効果を得ることができるようにする。
穏やかな速度でスキーを実施する第二の場合において、剛直性が比較的低い靴
(すなわち、受ける衝動の作用で比較的変形が容易な靴)は、変形することによ
って衝動の一部を緩和するとともにスキー板に対して反作用を加えたり、および
/または調節を行ったりするための十分な時間をスキーヤーに残すので、より良
く目的に適う。とりわけ、エッジの食い込みに際して靴底に近接し、かつ横断方
向にある部分について緩和される側方支承の場合がそうである。その結果、スキ
ーヤーは応力を受けることが比較的少なく、いわゆる「レジャー用」スキーに典
型的な寛いだ(すなわち、リラックスした)姿勢を採ることができる。
スポーツ靴のうちのスキー靴について上記した諸欠点(すなわち、靴の柔軟性
と剛直性の間に最良の調和を得るための困難さとか、剛直な箇所における厚さの
増加に
よる靴の重量の増加とか、厚さに大きな変化を付けて鋳造成形される区域の収縮
と変形の恐れとか、使用に際して調節不可能な靴の全体的な剛直性とか)を緩和
するために、ドイツ国特許第 2310719号、アメリカ合衆国特許第4,026,045号、
欧州特許第 645101号およびフランス国特許第 2714800号各明細書に教示されて
いる解決策のような部分的解決策だけが知られており、先に言及した欠点全体に
応えるものは何一つない。
ドイツ国特許第 2310719号明細書は、ゴム製の靴底内に、その靴底内で長手方
向に伸びる細長い補剛材を任意に、かつ外側から取り付けることのできる横断方
向挿入部材を備えた登山用の柔軟な靴について述べている。したがって、補剛材
ぬきの靴は歩行に適する柔軟な靴底を有する柔軟な靴の諸特徴を有し、補剛材を
備える靴は登山に適する剛直な靴底を有する柔軟靴の諸特徴を有する。この特許
文献で教示される剛直性に関する解決策は靴底に局限され、このことにより、補
剛材が使用されるとき、靴底からの変形を相対的に阻止できるとしても、靴胴部
はその固有の柔軟性を保つ。その結果、またとりわけ、アルペンスキーを実施す
るための使用にあたっては、この種の靴の柔軟な胴部は、スキーヤーの支承また
は支承の反作用をほぼ瞬間的に、また力を失うことなしに、スキー板に伝達する
ことができない。
アメリカ合衆国特許第 4,026,045号明細書も同じく靴底の調節可能な剛直性に
ついての解決策を述べており、
踵部と先端部間の靴底の土踏まず内に嵌め込まれる金具セットの使用を提案して
いる。金具セットの固定手段は、靴底の側方のいずれか一方に取り付けられるか
、または両方に取り付けられるかにより、長手方向および/または横断方向にお
ける1の方向または複数の方向に靴底の剛直性を調節できるようにする。このア
メリカ合衆国特許明細書の記載によれば、該靴の土踏まずの下に位置するスキー
靴の締め具と共働するための適宜な固定用部分を靴に使用して、普通の用途の靴
をスケートや、登山や、登攀や、スキー滑走など、特別の目的に適合させること
ができる。事実、この解決策は、前例と同じく、靴胴部の固有の柔軟性に関与す
ることなく、靴底に局在する剛直性の調節を可能にする。ところが、とりわけス
キーを実施するために普通の用途の靴を適合させることに関して、靴胴部は、こ
こでも真に適合しているのではない。実際、剛直性の問題の解決策は、壁部の厚
さの変化と該壁部による重量の変化という公知の問題とともに、スキー靴の特徴
的な柔軟性と剛直性の間に最良の調和を探し求める必要性を排除するものではな
い。
フランス国特許第 2714800号明細書の方は、シェル低部を形成する部分に、射
出成形によって形成でき、かつ剛直な部材が連設される、柔軟なジャケットを含
む靴を教示しており、この剛直な部材は靴の側面の一方(とりわけ、足の形状に
実質的に影響を及ぼす足の内側に)配設され、かつ靴底の箇所まで配設される。
このようにし
て、シェル低部の一側面の壁部の強化が保証される。この解決策は、一方では、
靴の側面の幾つかの箇所に望まれる柔軟性と剛直性を最適にするとともに、鋳造
成形で得られる部分の変形の恐れを減少させ、また他方では、靴胴部の側面の本
来の剛直性と靴底の本来の剛直性とを同時に変化可能にする。そのためには、垂
直壁部を有するT定規型の剛直な内部補強材とスキーヤーの足部の座の働きをす
る水平部分とが、足部を外方靴底に固定する連結手段により靴のシェル低部に固
定される。この配置構成は、シェル低部の壁部のために、該壁部に延在する、柔
軟で比較的一定の厚さを有する材料を利用可能にする。なぜなら、通常、構成材
料の著しい厚み代によって得られる、靴底と側面のような区域に要求される剛直
性が補強材により得られるからである。なお、教示されるように、補強材は、例
えば、競技スキーあるいはレジャースキーを実施するためのものであるか、それ
にまた、スキーヤーの技能レベルに関するものであるかによって、同一シェル低
部と同一靴胴部から成る靴に付与する技術的特徴を変化させるために、取り外し
および交換ができるように設けられる。しかしながら、この配置は、靴に望まれ
る諸特性に応じて複数種類の補強材を準備すること、および靴の内側を分解する
ことを必要とするが、これは種々異なる補強材および適切な道具を使用しない限
り、普通一般の靴利用者に可能なことではない。そのうえ、補強材が延在する側
面と反対の側面は、
その固有の柔軟性を保ち続け、かつ補強材を含まないので、必然的に通常の方法
に従って(すなわち、調節区域の箇所における薄い壁部および靴底と踵部に近接
する区域において明らかにもっと厚い壁部を有するように)製作される。したが
って、靴のこの側面には、壁部の厚さが大きな変化を呈する鋳造成形区域がある
。
欧州特許第645101号明細書は鋳造成形法によって弾性材料から得られるスキー
靴などのスポーツ靴を教示し、ここでは、シェル低部を形成する部分がこの部分
にはほぼ足の形状を帯びる、足の内側の側面の少なくとも一方に配設される剛直
な部材が連設される。この剛直な部材は、対応する壁部と靴底の補強を保証する
。
この特許文献で提案される解決策は、靴のシェルの特定箇所に求められる剛直
性の要求に最適の材料で作られる剛直な部材を該シェルに連設することからなる
。上述した構造の場合、剛直な部材はV字形に製作され、かつ足の内側に位置す
るのが好ましく、この箇所では、該剛直な部材は踵区域、第一と第四の中足骨、
ならびに踝区域の形状を実質的にとる。説明にあるように、剛直な部材は、この
ようにして装着者の脚部からスポーツ用具(すなわち、スキー板)に大きな効果
をもって応力を伝達できるようにする。なぜなら、この剛直な部材は、それが受
ける応力の主要な準線に平行だからである。補足的に、連結用ブリッジ(すなわ
ち、バー)が靴底内で長手方向に取り付けられ、かつ剛直な部材からなる逆V字
形の自由端部同士を連結する。この連結用ブリッジは、靴底に対して、また剛直
な部材が位置する側に、より大きな捻れ剛性を付与する。また、シェルと靴胴部
を形成する部分が射出成形法により形成される柔軟な部材で構成されるか、ある
いは、剛直な部材に連設されることも記載してあり、この剛直な部材は、剛直な
横断方向のブリッジでシェル低部の2の側面と靴底とに1の部材から延在する単
一の枠の形で製作することができる。
この特許文献は、実際、とりわけ適合のためおよび/または対応する側面に望
まれる剛性の度合いのために、シェル低部の1の側面に一時的に連設される側方
補強用の剛直な部材による解決策を教示するか、あるいはまた、単一の枠を形成
する(したがって、シェルに組み込んだ後の可能な適合を要しない)剛直な部材
による解決策を教示する。したがって、靴の壁部の柔軟性と剛直性の最適な調和
と、靴の総重量の制限と、鋳造成形後の変形の恐れの減少とを達成するという問
題が解決されるように思われる。それに反して、使用時に(すなわち、剛直な部
材を靴の壁部に組み込んだ後に)靴全体の剛直性を変えたり、調節したりできる
ようにするものは何もない。実際、逆V字形の剛直な部材は、靴底の一側におい
て長手方向のバーに連結できるよう設けてあるだけで、このことにより、該剛直
な部材と靴底との連結は、バーが挿入される靴の側面の補強のみを生ずる。剛直
な部材が単一枠を形成する構造の場合、既に指摘したように、
靴のシェルおよび/または靴胴部を形成する柔軟な部材内に一旦挿入されると、
その剛直性を変化させることができない。
本発明は、上で指摘した欠点を除去することを提案する。とりわけ:
− 嵌め込み区域の箇所に柔軟な部分を配設し、かつ靴装着者からの衝撃と支承
を伝達する区域の箇所に剛直な部分を配設することにより、靴の柔軟性と剛直性
に最適の調和を得ること;
− プラスチック材料の鋳造成形法によって得られる靴に比して重量を著しく減
少させること;
− 靴の鋳造成形部分の安定した保持を阻害する恐れのある材料の厚さの増加を
生じさせないこと;
− 靴全体の剛性を変更可能にする手段(特に、該靴の長手方向軸を横断する方
向に剛直を変えることができる手段)を提供すること。このような手段の提供は
、靴の構造をより均質にする、靴の各側面に別々の補剛材または補強部材を組み
込んだ後に行う。
本発明によれば、スポーツ靴は、プラスチック材料の鋳造成形法で得られるシ
ェルで構成される型式のもので、かつ靴装着者の足を通す区域および/または足
を嵌め込む箇所に柔軟な部分を、また靴装着者の脚下部および/または足部から
の衝撃と支承を伝達する区域の箇所に剛直な部分を含む。より詳しく述べると、
靴は射出成形によって形成できるとともに、剛直な部材が連設され
る柔軟な包囲体をシェル低部の形成部分に含み、この剛直な部材は靴の両側面の
一方(とりわけ足の内側)に配設され、この箇所で該剛直な部材は靴底の所まで
ほぼ足の形状をとる。このようにして、該剛直な部材はシェル低部の側面の対応
する壁部の補強を確実にする。
このスポーツ靴の特徴は、まず、足の内側に位置する剛直な部材とは別の他の
剛直な部材を靴のシェル低部の他側面に配設し、かつ連設することにある。
この特徴により、靴の各側面は、靴装着者の支承と衝撃を伝達する区域に求め
られる剛性が補強材によって与えられるので、柔軟なプラスチック材料を基にし
て鋳造成形法によって得られ、かつ比較的一定の壁厚で設計される。
さらに、各補強材がシェル低部の対応する側面とは別に製作され、かつ高い剛
性が求められる区域内に延在するようになっているので、事実上、わずかな量の
構成材料しか必要としない比較的華奢な骨組みとなる。したがって、各補強材は
、費用を法外に掛けることなく、高度の技術による非常に軽量な複合材料から得
ることができ、かつ、該補強材が配置される箇所(それも靴の両側面)では、通
常製作される材料の厚さの増加が避けられるので、靴の総重量を制限可能にする
。
別の一特徴によれば、靴の長手方向軸を横切る剛直な連結用ブリッジは、靴底
およびシェルの側面を補強するための剛直な部材に、両側で多少ともしっかりと
該ブ
リッジを連結するのに適した調節可能な連結手段を介して、靴底に組み込むこと
ができる。したがって、該剛直な部材は調節可能に側面から側面に組み付けるこ
とができ、それにより、特に、靴の各側面の柔軟性と剛直性の調和を保つととも
に、靴の長手方向軸を横切る方向に靴全体の剛直性を変化させるという効果が得
られる。
一実施態様によれば、剛直な連結用ブリッジは取り外し可能であるか、さらに
は異なる剛直性を有する少なくとも1の別の連結用ブリッジまたは靴の長手方向
軸を横断する方向に並置される別個の2の部材と交換可能に設けられ、各部材は
対応して位置する接続手段と共働する。この配置構成はまた、接続手段と共働し
てシェル低部の横断方向の抵抗および/または捻れ抵抗を変更できるようにし、
したがって靴全体の剛性を変更できるようにする。
本発明がどのようにして実現され得るかを非限定的な例として示す添付の概略
図を参照して以下の説明を読むことにより、本発明はさらに良く理解され、また
本発明のその他の特徴も明らかとなろう。
− 第1図は、靴の両側面を補強するための剛直な部材を、あるいは靴の側面間
のブリッジを構成する横断方向連結用の剛直なブリッジと、あるいは靴底の箇所
で他の側面に対する1の側面を補強するための部材から独立性を保つ2の別個の
部材とで連結するために、靴底の箇所で使用する接続手段を概略的に示す、スキ
ー
靴の分解斜視図である。
− 第2図は、接続手段を用いて剛直な部材に連結される連結用ブリッジを示す
、第1図の靴のII−II線に沿って見た横断面図である。
− 第3図は、靴底内に連結用ブリッジを組み込んで固定した状態を表す、第1
図の靴のIII−III線に沿って見た長手方向の部分断面図である。
− 第4図は、横断方向連結用ブリッジに代わる別個の部材に補強用部材を連結
する態様を示す、第1図の靴のIII−III線に沿って見た横断面図であり、該部材
は、一方の側面の補強用部材を他方の側面から独立して保護する。
− 第5図と第6図は、横断方向連結用ブリッジを有する補強用部材の別の連結
態様を示す横断面図である。
− 第7図から第10図までは、側方補強用部材の各種実施態様と、靴の長手方向
軸に対するその横断方向連結の可能な状態を概略的に示す分解斜視図であり、ま
た第9図と第10図は、踵区域における連結用ブリッジの組み立てを示す分解斜視
図である。
第1図は、靴底2を備えたシェル低部1と、靴装着者の踝(くるぶし)に対応
する区域内に位置する連結用枢軸4を用いてシェル低部1上に枢動可能に取り付
けられるのが好ましい靴胴部3とを有する、スキー靴のようなスポーツ靴を示す
。とりわけ第2図においてみられる剛直な部材5、5’がシェル低部1の側面13、
13’に連設・
固定され、かつ靴装着者からの衝撃と支承の伝達によって影響を受けない区域の
箇所にあるくり抜き部6により軽くされた構造を有する。これら剛直な部材5、
5’は、高い剛性が要求される区域だけをカバーするので、比較的華奢な骨組み
になる。例として、図示のこの場合、各部材5、5’は、分岐部7、7’が靴胴
部3の連結用枢軸4の箇所において接近し、かつ基部8が踵部11と靴底の端部12
との間で靴底2の箇所に延在するU字形の骨格になる。分岐部7、7’を伸び出
させ、かつ靴底2の側で折り曲げられた固定用脚部17、17’は、各部材5、5’を
靴底に係留できるようにするためのものである。補強材5、5’の骨組みのこの
実施例において、靴底2の端部12へ向けて斜めに方向づけられる分岐部7’は、
連結用枢軸4を取り付けるための孔44、44’を含み、かつ靴装着者の踝部の屈曲
方向に働く応力に特に関係する。該分岐部7自体は踵部11の方向に該枢軸4にほ
ぼ垂直に方向づけられ、かつ垂直方向および側方向、ならびに靴装着者の踝の伸
長方向(すなわち、「後方支承」)において靴胴部3とシェル低部1との間で後
方へ働く応力に特に関係する。補強材5、5’の基部8自体は、この基部が靴底
2の長手方向の剛直性を強める、靴底2の箇所で靴の長手方向に該分岐部7、7
’間でブリッジを実現し、その結果靴底を撓曲させようとする応力に関係する。
このように設計された靴は、靴装着者からの衝撃と支
承を伝達する区域に要求される剛性が補強材5、5’によって与えられるので、
比較的一定の壁厚で、シェル低部1と靴胴部3の主要部分を構成する柔軟なプラ
スチック材料を用いて、鋳造成形法により得ることができる。このことは、シェ
ル低部1の側面の壁部13、13’が補強材5、5’に対して一定で、かつ横断方向
フラップ24を形成する開閉区域の箇所まで徐々に薄くなる或る程度の厚さをもっ
て図示されている第2図と第4図から特に明らかである。靴底の箇所における厚
さの増加がないので、靴底2とフラップ24間の側面の壁部13、13’の厚さの変化
は、単一プラスチック材料で得られる従来型のスキー靴に比して著しく減少する
。
この靴の一特徴は、少なくとも補強部材5、5’の分岐部7の脚部17が靴の長
手方向軸9を横断する剛直な連結用ブリッジ20と、細長い円筒形の孔41を有する
該脚部17を靴底2および該ブリッジ20に確実に組み付けるねじのような結合手段
10とを介して、互いに連結できることにある。孔41は、側面13、13’に対し補強
部材5、5’を完全に嵌合できるように、好ましくは結合手段の直径よりも大き
な直径か、あるいは細長い形とする。第1図において靴の外方に表示してある剛
直なブリッジ20は、靴の内側から靴底2内に挿入でき、かつ靴装着者の足の土台
となる表面の一部分を構成するのが好ましい。
この目的のため、第3図に示すように、靴底2は、格納部22と靴底端部12の側
に嵌合用の溝23を有して製作さ
れ、連結用ブリッジ20はその両者内に位置決めされ、次いで結合手段10により固
定される。格納部22は、この構造の場合、連結用ブリッジ20が該格納部22内に平
らに挿入でき、次いで嵌合用の溝23内で並進移動できるように、その長さ方向に
該連結用ブリッジ20よりも大きくしてある。
このような配置構成にすると、第2図と第3図に示すように、その箇所で、一
方では、靴底2が固定用脚部17と連結用ブリッジ20間に挟み込まれるので、「層
状」型の横断構造が得られ、また他方では、側面13と側面13’の補強用部材5、
5’のブリッジが得られる。ねじ10は調節可能なので、このようにして製作した
組立体の堅固さを加減でき、その結果、靴底の横断方向の剛性(したがって、と
りわけこの横断方向に靴の全体的な剛直性)を加減できるとともに、補強部材5
、5’の軽減構造によって得られる各側面13、13’の柔軟性と剛直性の調和を保
存することができる。結合手段10から隔たっている溝23内に連結用ブリッジ20を
嵌め込むと、靴底2の端部12にさらに大きな長手方向の剛直性を付与することは
明らかである。
固定用脚部17の取り付けに匹敵する取り付けを靴底2の踵区域11における固定
用脚部17’について考えることができるが、このような取り付けは、単に連結用
の剛直なブリッジなしで靴底2と固定用脚部17’同士の組み付けからなるもので
あってもよい。例として、第1図に示
す構造態様では、固定用脚部17’は、互いに重なり合うようにして靴底2の方向
に伸び出ている。この脚部17’は、靴の長手方向軸9を横断する方向に向けられ
た細長いスロット16を備え、かつねじのような結合手段10を受けるために靴底2
に設けた固定用の孔15に対応して位置付けられる。この取り付けは、一方では、
補強部材5、5’が取り付けられる側面13、13’にできるだけ密接させること、
また他方では、固定用脚部17’の箇所において靴底2の横断方向の剛直性を補強
可能にする。
一実施態様によれば、連結用ブリッジ20は取り外し可能に設けられ、かつ異な
る剛直性を有する少なくとも1の別の連結用ブリッジと交換可能に設けられる。
また、この連結用ブリッジは、靴の長手方向軸9に対して横断方向に並置される
別個の2の部材21によって置き換え可能に設けられており、各部材21は、結合手
段を構成する、対応位置のねじ10と共働する。連結用ブリッジ20が位置していた
箇所における靴装着者の足の土台を変えないために、別個の部材21を、該2の部
材の箇所で連結用ブリッジ20とほぼ同一面を覆うようにする。これら別個の部材
はまた、嵌合用溝23と共働することもできる点で有利である。
この配置構成により、第4図に示すように、該連結用ブリッジ20を用いて先に
得られた、補強部材5、5’間の多少とも剛直なブリッジは切断される。このた
め、靴の横断方向の剛直性は大きく減少し、靴の全体的な剛直
性はこの減少箇所から変わる。連結用ブリッジ20の交換可能性、あるいは該ブリ
ッジを別個の2の部材21に置き換えることおよび/または結合手段10を用いて実
現する組み立ての堅固さの調節に関するこのような措置は、該補強部材5、5’
を靴の側面13、13’に組み込んだのち、靴全体の剛直性を変化可能にする。ねじ
10のような結合手段への接近と使用を容易にし、および/またはこの結合手段を
保護するための或る種の設備を設けると有利であり、例えば次のことから成る。
− 操作部材を構成する頭部10’が切り欠き内に格納され(したがって、保護さ
れ)るように、ねじ10に接近するための固定用孔15に対応して、靴底2の踵当て
部31内に切り欠き30を製作すること(第1図参照)。
− ねじ頭部10’(すなわち、操作部材)が該靴底2の歩行面から離間するよう
に、この靴底2の端部12に付け加えられる歩行用エンドピース32の後方に後退し
て存在する固定用脚部17を配設すること(第1図参照)。
例えばシェル低部1の内側に結合手段10を操作するための部材10’を配設する
ような別の解決策を考えることもできる。この場合にはもちろん、結合手段10は
、図示されていない快適性付与用の靴底および/または内靴(インナーブーツ)
を靴から取り出した後で操作することができる。
第5図に示すようなある種の適応例によれば、連結用ブリッジ20は、靴底2を
教示することなしに該連結用ブ
リッジ20と共に補強部材5、5’の横断方向連結を単に保証する結合手段40を用
いて、該補強部材5、5’の固定用脚部17に接続することができる。この結合手
段40は、例えば、連結用ブリッジ20内にねじ止めされ、かつ対応する固定用脚部
17の通し孔41内に自由に嵌入する、頭部のないねじで構成することができる。こ
の取り付けの場合、補強部材5’のみが、そのとき頭部10’を有するねじから成
る結合手段10を用いて連結用ブリッジ20に対しどの方向にも堅固に連結されてい
る。このようにして、頭部のないねじ40に代わって頭部10’を有するねじ10を付
け直すことにより、容易に変更できるシェル低部1の非対称な横断方向の剛直性
が得られる。
第6図に示す別の適応例によれば、連結用ブリッジ20と補強部材5、5’との
連結は、例えば、一側面13’においては、恒久的で剛性の調節が不可能な組み立
てを保証する、リベットのような結合手段50を用いて行うことができ、また、他
側面13においては、取り外しおよび/または交換可能な結合手段10を用いて行う
ことができる。
例として引用した結合手段とは別の結合手段を利用することが可能である。と
りわけ、くさび式、さし込み式、止めピン式などの組立方式が可能である。
さらに、第1図を参照して記載した靴の補強部材5、5’は、種々の形状をと
ることができ、一側面13と他側面13’とでは異なっていてもよい。例として第7
図に示
す形状によれば、補強部材35、35’は、細線で表されるシェル低部1の背面区域
まで伸び出ている脚部36、36’を含み、この区域において該脚部は端部同士が互
いに重ね合わさって、この重ね合わせ方向に並進滑動するほぞ・Uリンク連結(l
iaison tenon-chape)を構成する。このようにして、補強部材35、35’は、靴の
側面に非常に接近して取り付けることができ、この側面上で該補強部材が靴底2
の箇所ならびに靴胴部3と図示の孔44、44’の箇所に位置する連結用枢軸4との
箇所において密着する。
第8図において、補強部材45、45’は、図示の孔44、44’の箇所に位置する胴
部3の連結用枢軸4の箇所まで延在する部分が、踵部11の対応する区域に位置す
るほぼ垂直な分岐部46、46’である点で補強部材5、5’および35、35’と特に
異なる。
第9図は、補強部材55、55’の別の実施態様を示す。この実施態様によれば補
強部材55、55’は、踵部11に対応する区域において剛直な連結用ブリッジ19によ
り、また、靴の前端部12の区域において靴装着者の足の前端が通過する区域に対
応するトンネルを形成する2のアーチ形をした脚部47、47’により連結される。
この構造において、各補強部材55、55’は逆V字状を呈し、その頂部は、ほぼ靴
胴部の連結用枢軸の箇所において、孔44、44'を含み、かつ前方12へ向けて方向付
けられるその分岐部48、48’は、水平方向の第一の直線部分49、49’および
アーチ形脚部47、47’を形成する第二の垂直部分を介して伸び出ている。第10図
は、第1図の補強部材5、5’に類似する型の補強部材65、65’を示すが、この
変形実施態様においては、靴の踵部11に対応する区域内で連結用の剛直なブリッ
ジ20により互いに連結される。そのとき、固定用脚部17は後方に位置するのに対
して、固定用脚部17’は前方12に位置する。前述のように、連結用の剛直なブリ
ッジ20は交換可能および/または靴の長手方向軸9を横断する方向に並置される
別個の2の部材21と置き換えることができる。
第8図に示すように、剛直な連結用ブリッジ20は種々の形状を帯びることがで
き、かつ該ブリッジを靴底2および補強部材45、45’の固定用脚部17および/ま
たは17'と組み立てるための2以上(例えば4)の固定用孔を含むことができる
のはもちろんである。
他方、靴全体の剛性および横断方向の剛性を変えるためにこの連結用ブリッジ
を2の別個の部材21と交換することは、種々の可能性の中の一つに過ぎない。実
際、第7図の例におけるように、該固定用ブリッジを結合手段10との同一結合箇
所で、別個の2の小型部材21の代わりに、靴底2上に靴装着者の足の土台の表面
の一部分を再構成するための充填用部材51により、自由状態のまま残されている
空間を満たすことを妨げるものは何もない。
さらに、剛直な連結用ブリッジ20は、靴底2の外方から取り付けて接続される
ように、また靴底に比して広い
か、または狭い面積に亙って拡がるようにすることができる。本発明の範囲を出
ることなく、対称的なまたは非対称的ないろいろな形状を呈することもできる。
最後に、靴の側面の補強部材5−5'、35−35'、45−45’、55−55’、65−65
’は、追加成形(デュプリケートモールド)、接着、鋲着、錨着点、等何らか公
知の手段で靴の側面に連設することができるであろうし、また、例えば、該補強
部材が延在する壁部の厚み内に少なくとも部分的に挿入されることによって、靴
のシェル低部の内側および/または外側に付け加えて固定することもできよう。