【発明の詳細な説明】
発明の名称
新規ブロックコポリマー及びホスホニウムカチオンの存在下金属フリーのアニ
オン重合による狭い分子量分布を有する(コ)ポリマーの新規調製方法
発明の属する技術分野
本発明は新規ブロックコポリマー及びホスホニウムカチオンの存在下金属フリ
ーのアニオン重合による狭い分子量分布を有する(コ)ポリマーの新規調製方法
に関するものである。
従来の技術
この十年間、通常の条件の下で(メタ)アクリル、特にメタクリル酸メチル(
MMA)の重合が大きく注目された。最近では、いくつかの新重合システムが報
告され、常温でのMMAの重合について多数の文献が発表されている。1
例えば、1980年に、グループ・トランスファ重合(GTP)のプロセスが
紹介され、ポリ(メチルメタクリル)(PMMA)が作れるようになり、常温の
下で分子量分布(MWD)、分子量、及び分子の構造のコントロールができるように
なった2。まず、配位子(μ-typeリガンド)がメタル化したアルコキシド3
、塩化リチウムがMMAのアニオン重合に利用された。しかし、MWDは温度が−
40℃以上になると、コントロールできなくなる。従って、リガンドの配位の存
在下でアニオン重合は−40℃より低い温度に限られる。
その他の重合システムとして、触媒的な連鎖移動重合システム1、“リビング
”フリーラジカル重合1,5、“金属フリー”6、配位7、遮蔽型8、高速固定型9及
びクラウンエーテル促進型4a,10、常温の下で多様な条件で狭い分子量分布を有
するPMMAアニオン重合に成功した。典型的に、MMAアニオン重合は低温(
例えば、
−78℃)の下で巨大な非局在化したカルボニオン重合開始剤、テトラヒドロフ
ラン(THF)のような極性溶媒を使い、モノマーまたはポリマーのエステル基
におけるカルボニル基の炭素原子への求核攻撃を避ける。
その他の有機のカチオン、例えば、トリスジメチルアミノスルフォニウム(T
AS)有効である関連する重合システムができた。2,119−メチルフルオレニル
・アニオンn−Bu4N+塩が室温でTHFの中に狭い分子量分布(2.0)を有
するPMMAが合成されるが、収率が低い(14%)。12
Reetz et alは以下のような見解を示した。n−ブチルアクリル酸塩の常温で
のアニオン重合は、テトラブチルアンモニウム・カウンタカチオンを用いると、
分子内のクライゼン・タイプの停止反応が起こり、重合が衰える。その理由は、
アルコキシドと巨大なn−Bu4N+カチオンとの間の静電気力が弱くなることに
より、熱動力学、動力学的に好ましくない末端産物テトラブチルアンモニウム・
アルコキシドが形成されたからである6。これは、前末端から2番目のエステル
カーボニルグループに分子内のカチオンの配位が行われ、アルカリ金属イオンの
触媒的作用によりクライゼン反応によるものであると考えられる13。
しかしながら、アンモニウム・カウンターカチオンによるアニオン重合は収率
が悪いという欠点がある。これは、おそらくHoffmann脱離とアンモニウムカチオ
ンに起因したβ−水素と重合との競合による結果である。
従って、狭い分子量分布(「単分散」ポリマーという)を有するポリ(メタ)
アクリルポリマー及びコポリマーを生産する方法が要望される。つまり、常温の
下かつ高い収率で、(コ)ポリマーの分子量、分子量分布及び立体的構造が安定
した(コ)ポリマーを有効にコントロールできる方法が要望される。
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発明の目的
従って、本発明の目的は、ポリ(メタ)アクリラート(コ)ポリマーを生産す
る新規な方法を提供し、狭い分子量分布を有する(コ)ポリマーを提供すること
にある。
本発明の更なる目的は、アニオン的な重合によりポリ(メタ)アクリラート(
コ)ポリマーを生産する新規な方法を提供し、(コ)ポリマーの分子量を有効に
コントロールする方法を提供することにある。
本発明の更なる目的は、アニオン的な重合によりポリ(メタ)アクリラート(
コ)ポリマーを生産する新規な方法を提供し、立体的に安定した(例えば、アイ
ソタクチックまたはシンチオタクチック)(コ)ポリマーの分子量を有効にコン
トロールする方法を提供することにある。
本発明の更なる目的は、アニオン的な重合によりポリ(メタ)アクリラート(
コ)ポリマーを高い収率で生産する新規な方法を提供することにある。
本発明の更なる目的は、上述の目的を達成し、アニオン的な重合によりポリ(
メタ)アクリラート(コ)ポリマーを常温の下で生産する新規な方法を提供する
ことにある。
これらの目的は、下記の好ましい実施態様を詳細に記載した(メタ)アクリラ
ート(コ)ポリマーを生産する方法により達成できることを明らかにする。その
方法は下記の通りである。
下記式で表されるモノマーを:
下記式:
(PR6R7R8R9)+(R10R11R12C)-
または下記式:
[(PR6R7R8R9)+]2[(R10R11CCH2)2]2-
で表される開始剤と、−78℃から40℃までの温度の下、少なくとも反応開始
剤が部分的に溶解し、かつ、反応を停止(不活性化)しない溶媒中で、モノマー
の重合に十分な時間反応させて、反応混合物を形成する。
ここで、R1は、H、CN、CF3、1から6の炭素原子を持つアルキル、及
びアリールからなる群から選択され、
R2は、個々に、CN、C(=X)R3、C(=X)NR4R5及びα−アニオン
を安定化できるヘテロ環からなる群から選択され、ただし、XはNR(RはC1
−C20アルキル)、O又はSであり、R3は1から20の炭素原子を持つアルキ
ル、1から20の炭素原子を持つアルコキシ、又は1から20の炭素原子を持つ
アルキルチオであり、R4とR5は、個々に、1から20の炭素原子を持つアルキ
ルでもよく、または互いに結合して2から5の炭素原子を持つアルキレン基を形
成し、3−から6−員環を形成してもよく;
R6、R7、R8及びR9は、個々に、1から20炭素原子を持つアルキル、アリ
ール、またはアラルキル(ただし、R6、R7、R8及びR9の任意の対は結合して
環を形成してもよく、R6−R9の両方の対が結合して環[好ましくは3−から8
−員環]を形成していてもよい)であり;
R10及びR11は、個々に、1から20の炭素原子を持つアルキル、アリール基
、CN、上記の定義のC(=X)R3、上記の定義のC(=X)NR4R5、R10
とR11は、互いに結合して環を形成してもよく、R10とR11は、ともに1から2
0の炭素原子を持つアルキルとはならない;
R12は、個々に、H、1から20の炭素原子を持つアルキル、アリールまたは
(コ)ポリマーラジカルであり;
反応混合物を、アシルハライド、酸無水物、または活性水素原子を含有する物
質で失活させて(コ)ポリマーを生成し;
生成した(コ)ポリマーを単離する。
好ましい実施態様の詳細な説明
本方法を用いて、幅広く多様のモノマーからポリマー及びコポリマー(以下(
コ)ポリマー)をつくることができる。本方法に適合したビニールモノマーには
、少なくとも電気吸引性、及び/または、形式的な負電荷を安定化させる置換基
を一つ有する。すなわち、エステル基、ケト基、スルホン基、ホスホン基、ヘテ
ロ環、フェニル基、一つまたは複数の電気吸引性及び/または、形式的な負電荷
を安定化させる置換基等である。反応開始剤は任意の安定したカルバニオンを用
いることができるが、カルボン酸のpKa値12から37までのものが好ましい
、もっと好ましいのはPKaが18から35までのものである。ビニルモノマー
のアニオン、金属フリーの重合を含む本方法の鍵は、ホスホニウム・カウンタカ
チオンを用いることにある。
発明者は次のことを発見した。メチルメタクリル(MMA)のアニオン重合は
テトラブチルアンモニウムカチオン(n−Bu4N+)の存在下、THFを用い、
常温の下で、トリフェニールメチルアニオン(Ph3C-)を反応開始剤として用
い、狭い分子量分布を有し高い分子量(Mn=322,500)を有するPMMA
をつくった。しかし、この系は生成物の収率が低く(約5%)、反応開始剤の効
率が悪い(<1%)という問題がある。その他のカルバニオンとして、低い塩基
度(例えば、9−フェニルフルオレニル、9−エチルフルオレニル)が研究され
ているが、これらの反応開始剤を用いた反応開始速度がカルボニオンの低核親和
性により成長速度より低いため、分子量分布が広くなったわけである。テトラア
ルキルアンモニウム系の低い開始剤効率はn−Bu4N+による反応開始剤または
エノールイオンのHoffmann脱離反応によるものである。
本発明は常温の下で、狭い分子量分布を有する(コ)ポリマー及び特に、ポリ
(メタ)アクリラートの定量的生産方法を提供するものである。本方法によって
生産された(コ)ポリマーの分子量は、重量平均または数量平均の分子量であり
、反応開始剤のモル比をコントロールすることによりモノマーをコントロールし
、500g/molから300,000g/molまでであるが、1,000g
/molから200,000g/molまでが好ましい、2,000g/mol
から60,000g/molまでが最も好ましい。室温(25℃)で単分散(コ
)ポリマーは(Mw/Mn≦1.3)であるが、0℃になると、(コ)ポリマーの
生産は単分散がさらに広がって(例えば、(PPh4)+、(CPh3)-でPMM
Aを生産する場合、Mw/Mnは1.06、分子量は30,000になる)。本発
明で、「単分散」という語は重量平均の分子量(Mw)/数量平均分子量(Mn)
が≦2.0、好ましいのは≦1.5以下、最も好ましいのは≦1.1をいう。
本方法の重合工程は、重合が速く、終了するまでの所要時間は通常10分また
はさらに短い。場合によっては、重合の所要時間が5分またはさらに短い、さら
に、1分またはそれより短い場合もある。但し、重合の速度をもっと速くするに
は、加熱で重合の温度を高くすることで、反応温度を高くする必要がある。典型
的なモノマー反応は完全である(例えば、少なくとも90%、好ましいのは95
%、最も好ましいのは98%のモノマーが重合反応によって消耗される)。
本発明における反応工程は“リビング”重合であり、本方法はブロックまたは
マルチブロックコポリマーの調製に適用される。巨大なホスホニウムカチオンが
末端から2番目のエステルカルボニール基の分子内のカチオンの配位を防止する
。
本方法を用いるポリマーの生産は多種多様の用途を有する。例えば、PMMA
はポリマーとしてPLEXIGLASをつくるのに用いられる。また、本方法によって生
産
されたものは十分な単分散性を有するPMMAを提供することができ、その他の
サイズ排除クロマトグラフィーの標準ポリマーとして使うことができる。
本発明の方法における重合に好適なモノマー類は、下記式で表されるものを含
む:
ここで、R1は、H、CN、CF3、1から6の炭素原子を持つアルキル、及びア
リールからなる群から選択され、
R2は、個々に、CN、C(=X)R3、C(=X)NR4R5及びα−アニオンを
安定化できるヘテロ環からなる群から選択され、ただし、XはNR(RはC1−
C20アルキル)、O又はSであり、R3は1から20の炭素原子を持つアルキル
、1から20の炭素原子を持つアルコキシ、又は1から20の炭素原子を持つア
ルキルチオであり、R4とR5は、個々に、1から20の炭素原子を持つアルキル
でもよく、または互いに結合して2から5の炭素原子を持つアルキレン基を形成
し、3−から6−員環を形成してもよい;
本明細書において、「アリール」は、フェニル及びナフチルであって、(フェ
ニルの場合は)1から5個、(ナフチルの場合は)1から7個置換されていても
よく、好ましくは(いずれの場合も)1から3個置換されていてもよいものを意
味する。この置換基は、1から20の炭素原子を持つアルキル、各水素原子が個
々にハライド(好ましくはフッ素又は塩素)で置換されていても良い炭素数1か
ら6のアルキル、2から20の炭素原子を持つアルケニル、1から20の炭素原
子を持つアルキニル、1から6の炭素原子を持ちアルコキシ、1から6の炭素原
子を持つアルキルチオ、ハロゲン、C1−C6−ジアルキルアミノ、及び1から5
のハロゲン原子及び/またはC1−C4−アルキル基で置換されていてもよいフェ
ニルなどである。本願において、「アリール」は、ピリジル、好ましくは2−ピ
リジルも含む。より好ましくは、「アリール」は、フェニル、フッ素又は
塩素で1から5個置換されたフェニル、1から6の炭素原子を持つアルキル、1
から4の炭素原子を持つアルコキシ、及びフェニルからなる群から選択される置
換基で1から3個置換されたフェニルを意味する。最も好ましくは、「アリール
」はフェニルを意味する。
本明細書において、「α−アニオンを安定化できるヘテロ環」は、「リビング
」ポリマーに仮定されるような、ヘテロ環に共有結合した炭素原子における形式
的負電荷を安定化できるヘテロ環類を意味する。よって、重合を受けているビニ
ル基は、ヘテロ環の1又はそれ以上のヘテロ原子が、「リビング」ポリマー中間
体の負電荷を安定するように、ヘテロ環に結合していなければならない。従って
、好ましいビニルヘテロ環は、2−ビニルピリジン、6−ビニルピリジン、2−
ビニルピロール、5−ビニルピロール、2−ビニルオキサゾール、5−ビニルオ
キサゾール、2−ビニルチアゾール、5−ビニルチアゾール、2−ビニルイミダ
ゾール、5−ビニルイミダゾール、3−ビニルピラゾール、5−ビニルピラゾー
ル、3−ビニルピリダジン、6−ビニルピリダジン、3−ビニルイソオキサゾー
ル、3−ビニルイソチアゾール、2−ビニルピリミジン、4−ビニルピリミジン
、6−ビニルピリミジン、及び、任意のビニルピラジンである。上記のビニルヘ
テロ環は、1又はそれ以上の(好ましくは1又は2の)C1−C6アルキルまたは
アルコキシ基、シアノ基、エステル基、又はハロゲン基を有していてもよい。さ
らに、N−H基を持つようなビニルヘテロ環は、置換されていない場合、その位
置において、C1−C6アルキル基、トリス−C1−C6アルキルシリル基、R18C
Oの式(定義は後述)のアシル基等の従来のブロック基又は保護基で保護されて
いる。
より詳細には、好ましいモノマー類は、C1−C20アルコールの(メタ)アク
リル酸エステル、アクリロニトリル、C1−C20アルコールのシアノアクリル酸
エステル、C1−C6アルコールの次デヒドロマロン酸エステル、ビニルN−アル
キルピロール、ビニルオキサゾール、ビニルチアゾール、ビニルピリミジン及び
ビニルイミダゾール、アルキル基のα−炭素が水素原子を持たないビニルケトン
(例えば、両方のα−水素がC1−C4アルキル、ハロゲン等で置換されたビニル
C1−C6−アルキルケトン、または、フェニルが1−5のC1−C6アルキル基で
置換されたビニルフェニルケトン)、及び、フェニル環上に電子供与又は電子吸
引基を
有するスチレン(例えば、い又はそれ以上のハロゲン、ニトロ基、C1−C6エス
テル基又はシアノ基)を有するスチレンである。最も好ましいモノマーは、メタ
クリル酸メチル(MMA)である。
好ましい開始剤は、下記式:
(PR6R7R8R9)+(R10R11R12C)-
または下記式:
[(PR6R7R8R9)+]2[(R10R11CCH2)2]2-
で表されるものを含む。
ここで、R6、R7、R8及びR9は、個々に、1から20炭素原子を持つアルキル
、(上記で定義した)アリール、またはアラルキルであり、
R10及びR11は、個々に、1から20の炭素原子を持つアルキル、アリール基
、CN、上記の定義のC(=X)R3、上記の定義のC(=X)NR4R5であり
、R10とR11は、互いに結合して環を形成してもよく、R10とR11は、ともに1
から20の炭素原子を持つアルキルとはならなず、
R12は、個々に、H、1から20の炭素原子を持つアルキル、アリールまたは
(コ)ポリマーラジカルである。
本明細書において、「アラルキル」は、アリール置換アルキルを意味する。好
ましくは、「アラルキル」は、アリール置換されたC1−C20−アルキル基、よ
り好ましくは、アリール置換されたC1−C6−アルキル基である。
好ましくは、R6、R7、R8及びR9が、アリール又はアラルキルであるとき、
アリール部分はフェニル、ナフチル、1から5の置換基を持つフェニル、又は1
から7の置換基を持つナフチルであり、これらの置換基は、個々に、1から6の
炭素原子を持つアルキル、1から6の炭素原子を持つアルコキシ、1から6の炭
素原子を持つアルキルチオ、及びNR13R14からなる群から選択され、R13及び
R14は、ここに、1から6の炭素原子を持つアルキルである。最も好ましくは、
R6、R7、R8及びR9各々がフェニルである。
ある好ましい開始剤はカリウムイソブチラートである。しかし、好ましくは、
R10及びR11は個々にフェニル、又は、炭素原子数1から6のアルキル、炭素原
子数1から4のアルコキシからなる群から選択された1から3の置換基を持つフ
ェニルであり、R12は、好ましくはH、炭素原子数1から6のアルキル、フェニ
ル、又は、炭素原子数1から6のアルキル、炭素原子数1から4のアルコキシ、
フェニル及びハロゲンからなる群から選択された1から3の置換基を持つフェニ
ルである。最も好ましくは、R10、R11及びR12各々がフェニルである。
R10とR11とが結合して形成する環の例は、フルオレニル(fluorenyl)及びイ
ンデニル(indenyl)環系である。
これらの開始剤は、対応するアルカリ金属カルバニオン及びホスホニウムハラ
イド塩から−78℃におけるカチオン交換(複分解)により従来通り調製される
。アルカリ金属カルバニオン塩は、周知の方法(例えば、式R10R11R12CHの
化合物のアルカリ金属ハロゲン化物による処理、式R10R11R12CHの化合物の
アルカリ金属での直接処理、または、式R10R11R12CXの化合物のアルカリ金
属とハライド原子の間の金属−ハライド交換、ここで、Xはクロライド、ブロマ
イド又はヨーダイド、好ましくはクロライドである)によって調製できる。アル
カリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムを含
むが、好ましくはカリウム、ルビジウム及びセシウム、最も好ましくはカリウム
である。
多くのホスホニウムハライド試薬は商業的に入手しうる。その他は、ホスフィ
ン(式PR6R7R8の化合物)を、式R9Xのアルキル又はアリールハライドで、
周知の方法に従って反応させることによって製造される。
カチオンの結果生成されたアルカリ金属ハライド塩は、重合開始剤として用い
る前に濾過してもよいが、重合を好結果にするためには濾過は常に必要というわ
けではない。
従来の報告14と同様に、カチオンメタセシス反応は、−78℃でも極めて速
く起こり(例えば、数秒以内)定量的である。複分解の最中に、最大吸収波長(
λmax)における深色シフトが起こる。例えば、典型的な赤色のPh3C-K+の
THF溶液(2.0×10-3M,λmax=492 nm,ε=26,420 L/mol・cm)は、THFに
溶解しないPh4P+Cl-を添加すると、ホスホニウム塩溶液の特徴(Ph3C-
Ph4P+、λmax=506)に相当する深い栗色に変化した。吸収スペクトルのピー
ク形状は、カチオン交換後も同じ形状を保ち、カルバニオンの構造は変化しない
ことを示した。
ジアリールカルバニオンも、好適な開始剤である。このような開始剤は、ポリ
マーのリビング重合、またはブロックコポリマーの調製に用いることができる。
例えば、アニオン的に重合可能なモノマー(例えばスチレン)有機金属試薬−開
始(例えば、C1−C4−アルキルリチウム−開始)重合は、「リビング重合性ア
ニオン」を与え、次のコモノマーの重合を開始するために用いられる周知の方法
に従って行うことができる。このような「リビング」共重合性アニオンの調製に
好適なモノマーは、スチレン、α−メチルスチレン、スチレンまたはα−メチル
スチレンであって、フェニル環上に1から5(好ましくは1から3、最も好まし
くは1)のC1−C4−アルキル及び/またはC1−C4−アルコキシ置換基を有す
るもの、ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン、又はそれらの混合物を
含む。共重合性アニオンは、次いで1,1−ジアリールエチレン(例えば、1,
1−ジフェニルエチレン)と反応して(コ)ポリマー−ジアリールメチルアニオ
ンを形成することができ、それは4置換ホスホニウムハライドで複分解し、下記
式の開始剤を提供する。
(コ)ポリマー−(CAr2)-(PR6R7R8R9)+
ここで、Arは上記で定義したアリール基である。この開始剤は、第1のポリス
チレンブロックと第2のコポリマー(例えば、ポリ(メタ)アクリラートまたは
ポリアクリロニトリル)を有するブロック(コ)ポリマーを製造する本発明の方
法において使用できる。
即ち、本発明は、(コ)ポリマーの調製方法も包含し、この方法は以下の工程
からなる。
1またはそれ以上の第1のモノマーをアニオン重合して(コ)ポリマーアニオ
ンを生成し;
該(コ)ポリマーアニオンを1,1−ジアリールエチレンと反応させて(コ)
ポリマー−ジアリールメチルアニオンを生成し;
該(コ)ポリマー−ジアリールメチルアニオンを下記式のホスホニウム塩と反
応させて開始剤を提供し:
(PR6R7R8R9)+X-
ここで、Xは無機アニオン(好ましくは、ハライド、硝酸塩、亜硝酸塩、臭化物
、四フェニルボレート[Ph4B-]、トシレート[p−H3CC6H4SO3 -]、
1/2当量の亜硫酸塩[即ち(SO3)0.5]、トリフルオロメタンスルホネート
、1/2当量の硫酸塩[即ち(SO4)0.5]、1/3当量の硫酸塩[即ち(SO4
)0.33]、及び1/2当量の炭酸塩[即ち(CO3)0.5]からなる群から選択
され、R6、R7、R8及びR9は、個々に、1から20炭素原子を持つアルキル、
アリール、またはアラルキル(ただし、R6、R7、R8及びR9の任意の対は結合
して環を形成してもよく、R6−R9の両方の対が結合して環[好ましくは3−か
ら8−員環]を形成していてもよい);
該開始剤を下記式のモノマーの1またはそれ以上と、−78℃から40℃の温
度で、開始剤が少なくとも部分的に溶解し、反応を停止させない溶媒中で、第1
のモノマーが重合するのに十分な時間反応させて反応混合物を生成し:
ここで、R1は、H、CN、CF3、1から6の炭素原子を持つアルキル、及び
アリールからなる群から選択され、R2は、個々に、CN、C(=X)R3、C(
=X)NR4R5及びα−アニオンを安定化できるヘテロ環からなる群から選択さ
れ、ただし、XはNR(RはC1−C20アルキル)、O又はSであり、R3は1か
ら2
0の炭素原子を持つアルキル、1から20の炭素原子を持つアルコキシ、又は1
から20の炭素原子を持つアルキルチオであり、R4とR5は、個々に、1から2
0の炭素原子を持つアルキルでもよく、または互いに結合して2から5の炭素原
子を持つアルキレン基を形成し、3−から6−員環を形成してもよい;
前記反応混合物を、アシルハライド、酸無水物、または活性水素原子を含有す
る物質で失活させ;そして、
生成したブロック(コ)ポリマーを単離する。
本発明は、下記式のブロックコポリマーにも関する。
A−(CH2CAr2)−B
ここで、Aは、(好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、フェニル環上に1
から5のC1−C4−アルキル及び/またはC1−C4−アルコキシ置換基を有
するスチレンまたはα−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、ジメチルブ
タジエン、又はそれらの混合物の)アニオン重合によって生成された(コ)ポリ
マーであり、Arは(上記で定義した)アリール基であり、Bは下記式で表され
るモノマーの1又はそれ以上の(コ)ポリマーである:
ここで、R1及びR2は上記の定義に従う。
ブロックAの重量又は数平均分子量は、300から500,000 g/mol、よ
り好ましくは500から300,000 g/mol、最も好ましくは1,000から
100,000 g/molの範囲である。上記の単分散(コ)ポリマーと同様に、ブ
ロックBの重量又は数平均分子量は、500から300,000 g/mol、好まし
くは1,000から200,000 g/mol、より好ましくは2,000から60
,000 g/molの範囲である。本発明のブロックコポリマーは、Mw/Mn値が
≦
2.0、好ましくは≦1.5、最も好ましくは≦1.1である「単分散」である
のも好ましい。好適なブロックコポリマーは、ブロックAがポリスチレン、ポリ
(α−メチルスチレン)またはコポリ(スチレン−αメチルスチレン)であり、
ブロックBがポリアクリロニトリルである。
さらに、(Ar2C-CH2)2(PR6R7R8R9)+ 2の式で表されるダイマー開
始剤(ただし、Arはアリール)は、1,1−ジアリールエチレン(好ましくは
1,1−ジフェニルエチレン)をTHF中でアルカリ金属と反応させ、次いで、
2当量の(PR6R7R8R9)+X-の式で表されるホスホニウムハライドで複分解
することによって調製される。このダイマー開始剤は、−20℃以下(好ましく
は−40℃、より好ましくは−78℃)で安定であり、典型的には25℃で約3
0分の寿命を持つ。[(PR6R7R8R9)+]2[(R10R11CCH2)2]2-(た
だし、R10及びR11はAr以外)の式で表される他のダイマー開始剤は、この方
法、または、R10及びR11までもが反応条件下で還元されない限り、(例えば、
アルカリ金属を用いた、カソード上での電気化学的還元などの)電子移動による
1,1−二置換エチレンの還元のための周知の反応との組み合わせによって製造
できる。
ダイマー開始剤は、それを第1のモノマーと反応させて「リビング」アニオン
第1ブロックを生成し、次いで該「リビング」アニオン第1ブロックを第2のモ
ノマーと反応させて前記「リビング」第1ブロックの各末端に末端ブロックを生
成させることにより、トリブロックコポリマーを調製するためにも用いることが
できる。よって本発明は、トリブロックコポリマーの調製方法にも関し、この方
法は以下の工程からなる:
下記式の第1のモノマーを、
下記式の開始剤と、
[(R10R11CCH2)2]2-(P+R6R7R8R9)2
−78℃から40℃の温度で、開始剤が少なくとも部分的に溶解し、反応を停止
させない溶媒中で、第1のモノマーが重合するのに十分な時間反応させ:
ここで、R1は、H、CN、CF3、1から6の炭素原子を持つアルキル、及
びアリールからなる群から選択され、
R2は、個々に、CN、C(=X)R3、C(=X)NR4R5及びα−アニオン
を安定化できるヘテロ環からなる群から選択され、ただし、XはNR(RはC1
−C20アルキル)、O又はSであり、R3は1から20の炭素原子を持つアルキ
ル、1から20の炭素原子を持つアルコキシ、又は1から20の炭素原子を持つ
アルキルチオであり、R4とR5は、個々に、1から20の炭素原子を持つアルキ
ルでもよく、または互いに結合して2から5の炭素原子を持つアルキレン基を形
成し、3−から6−員環を形成してもよく;
R6、R7、R6及びR9は、個々に、1から20炭素原子を持つアルキル、アリ
ール、またはアラルキル(ただし、R6、R7、R8及びR9の任意の対は結合して
環を形成してもよく、R6−R9の両方の対が結合して環[好ましくは3−から8
−員環]を形成していてもよい)であり;
R10及びR11は、個々に、1から20の炭素原子を持つアルキル、アリール基
、CN、上記の定義のC(=X)R3、上記の定義のC(=X)NR4R5、R10
とR11は、互いに結合して環を形成してもよく、R10とR11は、ともに1から2
0の炭素原子を持つアルキルとはならない;
下記式の第2のモノマー:
(ただし、R1及びR2は上記の定義に従い、該第2のモノマーは前記第1のモノ
マーとは異なる)を添加して、−78℃から40℃の温度で、トリブロック(コ
)ポリマー中間体が生成されるのに十分な時間反応させ;
前記トリブロック(コ)ポリマーを、アシルハライド、酸無水物、または活性
水素原子を含有する物質で失活させてトリブロック(コ)ポリマーを生成し;
生成したトリブロック(コ)ポリマーを単離する。
よって本発明は、下記式で表されるトリブロックコポリマーにも関する。
B’−A’−(R10R11CCH2CH2CR10R11)−A’ーB’
ここで、A’は第1の(コ)ポリマーブロック、B’は第2の(コ)ポリマーブ
ロックであり、(コ)ポリマーの各A’及びB’は、個々に、下記式のモノマー
類の1又はそれ以上である。
ここで、R1は、H、CN、CF3、1から6の炭素原子を持つアルキル、及
びアリールからなる群から選択され、
R2は、個々に、CN、C(=X)R3、C(=X)NR4R5及びα−アニオン
を安定化できるヘテロ環からなる群から選択され、ただし、XはNR(RはC1
−C20アルキル)、O又はSであり、R3は1から20の炭素原子を持つアルキ
ル、1から20の炭素原子を持つアルコキシ、又は1から20の炭素原子を持つ
アルキルチオであり、R4とR5は、個々に、1から20の炭素原子を持つアルキ
ルでもよく、または互いに結合して2から5の炭素原子を持つアルキレン基を形
成し、3−から6−員環を形成してもよく;
R10及びR11は、個々に独立して、(上記の定義の)アリール基であり;そし
て、第1の(コ)ポリマーと第2の(コ)ポリマーとは異なる。
さらなる実施態様では、トリブロックコポリマーは、例えば、芳香族ビニルモ
ノマーをナトリウム又はリチウムナフタリドと(周知の方法で)反応させて生成
される、スチレン又はα−メチルスチレンなどの芳香族ビニルモノマーのダイマ
ージアニオンから調製される。芳香族ビニルモノマーのダイマージアニオンは、
引き続き、スチレン、α−メチルスチレン、フェニル環上に1から5のC1−C4
−アルキル及び/またはC1−C4−アルコキシ置換基を有するスチレンまたはα
−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン及びそれらの
混合物からなる群から選択されるモノマーと反応し、第1のポリマーブロックの
ジアニオンを生成する。この第1のポリマーブロックジアニオンは、次いで上記
の方法に従って1,1−ジアリールエチレンと反応させることができ、次に前記
方法の残りの工程(ホスホニウム塩での複分解、CH2=CR1CR2の式で表さ
れる1以上のモノマーとの反応、不活性化及び単離)を実施して、内側のブロッ
クがスチレン、α−メチルスチレン、フェニル環上に1から5のC1−C4−アル
キル及び/またはC1−C4−アルコキシ置換基を有するスチレンまたはα−メチ
ルスチレン、ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン及びそれらの混合物
の(コ)ポリマーであり、外側のブロックがCH2=CR1CR2の式で表される
1以上のモノマーからなるトリブロックコポリマーを調製することができる。
ブロックA’及びB’各々の重量又は数平均分子量は、500から300,0
00 g/mol、好ましくは1,000から200,000 g/mol、より好ましくは
2,000から60,000 g/molの範囲である。このトリブロックコポリマー
も、Mw/Mn値が≦2.0、好ましくは≦1.5、最も好ましくは≦1.1で
ある「単分散」であるのが好ましい。
本発明で有効な他のカルバニオンは、好ましくは1から8(より好ましくは1
から4)の1から6個の炭素原子を持つアルキル置換基を有するフルオレニルア
ニオン類、マロン酸の2位においてC1−C20のアルキル化されていてもよいC1
−C20マロン酸エステル類、及び、式(AR−CR14−Me)−で表されるカル
バニオンを含み、ここで、Arは(上記で定義した)アリールであり、R14はC
N、CO2R、C(=O)R15、及びPhからなる群から選択され、R15はカル
ボニル基に隣接した炭素原子上には水素原子を持たない。
反応又は重合工程に好適な溶媒は、エーテル、環状エーテル、芳香族炭化水素
溶媒、及びそれらの混合物を含む。好ましいエーテルは、R16OR17の式で表さ
れる化合物を含み、R16及びR17は、個々に、1から6の炭素原子を持つアルキ
ル基であって、C1−C4アルコキシ基でさらに置換されていてもよい。例として
は、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、メチル
t−ブチルエーテル、ジ−t−ブチルエーテル、glyme(ジメトキシエタン
)、diglyme(ジエチレングリコール、ジメチルエーテル)、等である。
好ましい環状エーテルは、THF及びジオキサンを含む。好ましい芳香族炭化
水素溶媒は、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン
、及びクメンの異性体又は異性体類の混合物を含む。
開始剤は、少なくとも部分的に溶媒に溶解しなければならない。よって、芳香
族溶媒を用いるとき、反応は、開始剤の親油性を高めること(例えば、イオン性
成分の一方または両方に[好ましくは少なくともホスホニウムカチオン]におけ
るC6−C20−アルキル置換基の含有)によって促進される。例えば、開始剤が
AR4P+Ar’3C-の式で表され、Ar及びAr’が個々にアリール基である場
合、Ar及びAr’の一方又は両方が、1から20の炭素原子を持つ、好ましく
は4から20の炭素原子を持つ、より好ましくは6から20の炭素原子を持つア
ルキル置換基の1以上を有しているべきである。分子量分布が広くなるのを防止
するために、ポリマーも選択した溶媒に可溶であるべきである。
重合は、下記の機構1に従って、モノマーの溶液(例えば、THF中、0.01-5
.0 M、好ましくは 0.1-2.0 M、さらに好ましくは 1.0 M)を開始剤のTHF溶液
(例えば、モノマーのモル数に対して10-5から10-1、好ましくは10-4から10-2、
最も好ましくは約2×10-3モル当量)に滴下することによって行われる。
開始速度は極めて速く、重合溶液に特徴的な深い栗色から赤煉瓦色への即時の
変化によって観察され、典型的には秒単位で完了する。赤サビ色の重合溶液の観
察は、通常は、停止反応が生じていることを示し、しばしば結果的に得られるポ
リマーのMWDの広がり及びポリマー収率の低下(例えば、50−65%)を伴
う。
本発明の反応は、−78℃から40℃の温度で行うことができるが、好ましい
範囲は−20℃から30℃であり、より好ましくは0℃から25℃である。
有機ホスホニウムカチオンは、成長速度に比較して(例えば分子間クライゼン
縮合反応により)停止速度を低下させることにより、室温において狭いMWDの
(コ)ポリマーを生成することを促進すると考えられている。
適当な不活性化試薬を用いた重合の停止は、即座に薄黄色の溶液を与える。本
方法で好適な不活性化試薬は、アシルハライド、酸無水物、活性水素原子含有物
質を含む。
好ましいアシルハライドは、カルボン酸、スルホン酸、リン酸などを含む有機
酸のハライド、好ましくはクロライドを含む。このような酸は、R18COX、R18
SO2X、R18P(=O)(R19)Xの式で表されるのが好ましく、R19は、
1から20の炭素原子を持つアルキル、ただし、各水素原子は個々にハライド(
好ましくはフルオライド又はクロライド)で置換されていてもよい、2から20
の炭素原子を持つアルケニル、1から10の炭素原子を持つアルキニル、1から
5のハロゲン原子又は1から4の炭素原子を持つアルキル基で置換されていても
よいフェニル、またはアリール基がフェニル又は置換フェニルでありアルキル基
が1から6の炭素原子を持つアラルキルであり;Xは、フッ素、塩素、臭素又は
ヨウ素原子であり;R19は1から4の炭素原子を持つアルキルである。好ましい
アシルハライドは、塩化ベンゼンスルホン酸、塩化トルエンスルホン酸、及びR20
COXの式で表されるものを含み、R20は1から4の炭素原子を持つアルキル
、ビニル、2−プロペニル、又はフェニルであり、Xは塩素(例えば、塩化アセ
チル、塩化プロピオニル、塩化(メタ)アクリロイル、及び塩化ベンゾイル)で
ある。最も好ましいアシルハライドは、塩化メタアクリロイルである。
好ましい酸無水物は、式(R18CO)2Oで表されるものを含み、R18は上記
の
定義に従う。好ましい酸無水物は、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水(メタ)
アクリル酸を含む。
活性水素原子含有物質は、水素原子がヘテロ原子に結合し、約18以下のpK
aを有する物質を含む。このような化合物は、水、1から6の炭素原子を持つア
ルコール、アンモニウム塩の水性溶液(例えば、アンモニウムハライド又はアン
モニウムカーボナート)を含み、最も好ましい不活性化試薬はメタノールである
。
(例えば、ビニルピリジンの重合のような)場合には、重合の不活性化には1
0当量以上のアルコール又は水が必要となることがある。よって、本方法では少
量のプロトン性溶媒は許容されると考えられる。従って、出発材料を使用前に厳
密に精製し乾燥する必要はない。
本方法の単離工程は、(コ)ポリマーを沈降させ、沈降した(コ)ポリマーを
濾過するといった周知の方法を用いて行うことができる。沈降は、好適な、C5
−C8アルカン又はシクロアルカン溶媒、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロ
ヘキサン、ペンタン、石油スピリット、又は、メタノール、エタノール又はイソ
プロパノールといったC1−C6アルコール、及びこれら好適な溶媒の混合物など
を用いて行うことができる。好ましくは、沈降用溶媒は、ヘキサン、ヘキサン類
混合物、又はメタノール、またはメタノールである。
沈降した(コ)ポリマーは、(例えばブッフナー漏斗とアスピレーターを用い
た)周知の方法に従い、重力又は真空濾過によって濾過される。次いで、ポリマ
ーは、必要に応じて、ポリマーの沈降に使用される溶媒で洗浄される。沈降、濾
過、及び洗浄の工程は、必要に応じて繰り返される。
単離された後、(コ)ポリマーに空気を通したり、真空にしたり等の周知の方
法に従って(好ましくは真空で)(コ)ポリマーは乾燥される。この(コ)ポリ
マーは、周知の方法に従って、サイズ排除クロマトグラフィーによって分析及び
/または特性化される。
本方法に従って25℃で調製されたPMMAのシンジオタクティック含有量は
比較的高い(50−70%)。シンジオタクシチティは、反応を低温で行うこと
により増大させることができる。本方法で製造されたPMMAの立体化学は、同
様の温度でGTP15及び他のMMA重合16によって得られたPMMAのものに類
似している。
下記の表1は、THF中、0℃及び20℃でのMMAの重合について得られた
結果のまとめである。生成されたポリマーは、一般的に比較的狭いMWD(1.
04から1.79)を有し、、定量的収率で得られ、室温においても連鎖停止が
殆どなく進行することを示している。アルカリカチオン存在下での高温(例えば
>20℃)でのMMAのアニオン重合で通常見られる分子間クライゼン型の停止
反応は、生成されたポリマーの狭いMWDからわかるように、本発明の方法にお
いては顕著に低減された。
開始剤は芳香族環の炭素原子に結合したプロトンを有するが、モノマーは有さ
ないとき、ポリマーの1H NMRは、開始剤に基づく芳香族共鳴を示すので、
数平均分子量(Mn)を決定する手段となる。(下記の表1においてMnの結果
を与える1H NMR分析は、Bruker AM-250 MHz Ft-NMR を用いて実施され、実
験に用いたPMMA溶液の濃度は、CDCl3中10−15重量%であった。)
Mn,NMRは、1H NMRシグナルにおけるメチレン(骨格)共鳴シグナル及び芳
香族共鳴シグナルの面積の積分に基づいて計算された。ポリマーの立体化学は、
既に挙げた17メチル基の1H NMR共鳴吸収の積分を通して決定した。NMR
で決定したMn(9300)は、SECで決定したMn(8500)に良好に相
関した。
カチオン交換または複分解の前の最初の在処離金属カルバニオン濃度に基づく
開始剤効率(f)は、3から70%である(表1参照)。これらの定量的に満た
ない開始剤効率は、重合に先立つ開始剤の分解の結果と思われる。室温でのUV
−VISスペクトルを介して観察すると、Ph3C-Ph4P+の分解は、Ph3C-
濃度に一次依存することが示された(T1/2=211.3秒)。
分子量の制御が可能であり、重合がホスホニウム含有開始剤の形成直後に実施
されるときに最適となる。分子量の最適な制御は、フローチューブ反応器18を用
いることにより最も良好となる。しかし、分子量制御は、与えられた開始剤と開
始剤対モノマー比率から導かれる幾分経験的なものである。
(この分野で知られた従来の連続フロー反応器のような)連続フロー反応器シ
ステムも、例えばかなりの量の熱の発生を含むバルク重合が有する潜在的な問題
を解消する助けとなる。連続フローシステムでは、反応混合物の一部が熱交換表
面から比較的遠くに離間してしまうバルクシステムに比較して、反応熱が効率的
に放散される。
本方法で製造されたポリマーは、「単分散」、即ち、ポリマーが 狭い分子量
分布を有している。最も広くても、「単分散」ポリマーは数平均分子量に対する
重量平均分子量の比率(Mw/Mn)が2.0以下、より好ましくは1.5以下、
最も好ましくは1.1以下である。
本方法で生成されるポリマーの数平均分子量は、転換に一次従属性である。
本発明で用いるのに好適なさらなる開始剤は、イソブチルエステルエノラート
のホスホニウム塩である。この開始剤の利点は、相当するメタクリラートポリマ
ーのモノマー単位と同じ構造を有していることである。
本発明を一般的に説明してきたが、以下の特別な実施例を参照することにより
更なる理解が得られる。ここに提供される実施例は、例示のみを目的としており
、本発明を何ら限定するものではない。
実施例
試薬及び溶媒:
高真空シール破壊法が実験で用いられた。溶媒(テトラヒドロフラン(THF
)とトルエン)は、使用前にナトリウム-カリウム合金(2X)から蒸留によっ
て精製された。メチルメタクリラート(MMA)とn-ブチルアクリラート(n-
BuA)がCaH2(2X)とトリエチルアルミニウム(Et3Al)から蒸留さ
れ、熱重合を防止するためにアンプル形態で−78℃で貯蔵された。2-ビニル
ピリジン(2-VP)の精製がカリウム(K)ミラー(2X)からモノマーの蒸
留によって行われ、次いでモノマーはアンプル形態で−78℃で貯蔵された。テ
トラブチルアンモニウムクロリド(NBu4Cl)とテトラフェニルホスホニウ
ムクロリド(Ph4PCl)が使用前に高真空下で塩を加熱(80℃)すること
により乾燥さ
れた。およそ百の重合が行われ、その操作のおよそ60回がPh4P+の存在下で
行われた。
開始剤として用いられるカルボアニオンは以下の機構2−4に示されるように
して調製された。
比較実験:THF中におけるNBu4+の存在下でのMMAのアニオン重合
9-フェニルフルオレニル(9-PF、黄色)、9-エチルフルオレニル(9-E
F、赤−オレンジ色)、トリフェニルメチル(Ph3C、赤)及びカルバゾリル
(CB、褐色)アニオンのNBu4 +塩が、NBu4 +Cl-を持つカルボアニオン
の各カリウム(K+)塩のカチオン交換によって調製された。Ph3Cについては
、カチオン交換は、開始剤の分解を低減するために、−78℃で重合の前にin s
itu で実施された。典型的な重合では、開始剤(2x10-4モル)が、〜50
mLのTHFに加えられ、所望の温度(−78ないし30℃)にされた。従って
、(重合温度が<0℃のとき)MMA(〜1−3g)が重合フラスコ内に蒸留に
よって添加され、もしくは(>0℃の温度で)滴下しながら重合溶液に添加され
た。恒温槽を用いて重合温度が維持された。モノマーの添加は〜20ないし30
分で完了し、その後、メタノールで重合が終了させられた。重合溶液はおおよそ
オレンジ色であり、この色は、低温での遅い開始による残存開始剤のためか、N
Bu4+の存在下での成長鎖の色のせいである。終了した溶液は無色であった。
重合の結果は表2に纏められている。
実施例1:THF中におけるPh4P+の存在下でのMMAのアニオン重合
典型的な重合は3つの主要な工程:メタセシス、重合、及び停止を含むもので
あった。Ph3C(赤−オレンジ色)もしくはジフェニル-2-ピリジルメチル(
2-PyrPh2C、赤)のK+塩(2.0x10-4モル、THF中に0.20M
)が、〜5mLのTHFを含むフラスコに加えられ、フラスコは−78℃に冷却
された。次に、開始剤溶液へのPh4PCl(白色固形、2.2x10-4モル)
の添加によってカチオン交換が行われ、Ph3C−Ph4(深い栗色)が生成され
た。ついで、THF(〜50mL、−78ないし30℃の所望温度で)が開始剤
溶液に添加された。恒温槽を用いて重合温度が維持された。MMA−THF溶液
(〜10−30mL、1.0M)が定常流れで開始剤溶液に添加された(〜2分
の添加時間)。栗−赤色(低開始剤濃度ではオレンジ色)の重合溶液が瞬時に生
成された。モノマーの添加速度は、結果として生じるポリマーのMWDを決定す
る際に重要である。モノマーの均質混合が狭い分布のPMMAを得るには必要で
ある。重合の停止は、メタノールの添加によって行われ、青みがかった黄色の溶
液が急速に生成された。表3と4は、種々の温度におけるPh4P+の存在下にお
けるPh3C及び2-PyrPh2Cを用いての重合の結果をリストにしたもので
ある。
実施例2:トルエン-THFとトルエン中における0℃でのPh4P+の存在下で
のMMAのアニオン重合
上述したもの(実施例1)と同じ手順を用いたが、唯一の差異は重合に用いた
溶媒である。トルエンを溶媒として用いたときは、Ph3C−Ph4P+をトルエ
ンに導入したときに、いくらかの沈殿物(黒色)が観察され、開始剤溶液は青紫
色であった。MMA-トルエンを添加すると(〜3分かけて〜10mL、1.0
M)、不溶性の黒色沈殿物を持つ黒色溶液が生成された。メタノールでの停止に
より清澄な溶液が生成された。PMMAは、収率10%で得られ、Mn=308
00(Mn(計算)=640、f=0.21)、Mw=68700、Mp=741
00、及びMWD=2.23であった。
重合はまたTHF-トルエン混合物(容積で5:1)中で実施された。THF
中における開始剤へのトルエンの添加時に、いくらか黒色沈殿物を有する栗色の
溶液が観察された。MMA-THF-トルエンの添加(〜3分かけて〜10mL、
1.0M)で、褐色の重合溶液が生成され、これはメタノールの添加で青みがか
った黄色になった。PMMAは5%の収率で生成され、2つの異なったサイズの
ポリマーを有していた。ポリマーの一つは、Mn=2700(Mn(計算)=80
0、f=.29)、Mw=3100、Mp=3400、及びMWD=1.13で、
他方は、Mn=62600(Mn(計算)=800、f=.01)、Mw=624
00、Mp=64400、及びMWD=1.05であった。
実施例3:THF中におけるPh4P+の存在下でのn-BuAのアニオン重合
上述したもの(実施例1)と同じ手順を用いた。重合溶液はオレンジ色で、重
合の停止時に青みがかった黄色に急速に変化した。得られたPBuAに対するデ
ータを表5に示す。
実施例4:THF中における0℃でのPh4P+の存在下でのMMAとn-BuA
のアニオンブロック共重合
上述したもの(実施例1)と同じ手順を用いた。加えられた初期モノマーはM
MA(〜1−5mL、THF中に.80M)で、次にn-BuA(〜1−10m
L、THF中に1.8M)であった。MMAとn-BuAのブロック共重合の結
果は表6に纏められている。一つの実験ではPMMA前駆体が分離され、分析さ
れた。
実施例5:THF中における0℃での(p−メトキシフェニル)4P+の存在下に
おけるMMAのアニオン重合
カチオン交換の間、Ph4PClの代わりに(p−メトキシフェニル)4PBr
を添加した点を除いて上述のもの(実施例1)と同じ手順を用いた。(p−メト
キシフェニル)4PBrの合成は、既に報告されているようにしてなされた。19
0℃での重合により比較的狭いMWD(2.33)で、Mn=25200(Mn(
計算)=320、f=.01)、Mw=58700、Mp=70500のPMMA
が27%収率で生成された。ほんの僅かな量が生成されただけなので、塩の精製
は難しかった。合成を最適化し、得られた塩を精製すると、より良いMWDとポ
リマー収率が得られるものと予想される。
実施例6:THF中における0℃でのPh4P+の存在下における2-VPのアニ
オン重合
MMAを2-VPに代えた点を除いて上述のもの(実施例1)と同じ手順を用
いた。重合溶液は赤色で、赤色がメタノールの添加後も残ったので、100当量
のメタノールでの重合停止が0℃で起こらなかった。ついで反応温度を室温にま
で上げると、赤色の消失に裏付けられているように、重合が停止した。ポリ-2-
VPは66%の収率で得られ、Mn=9300(Mn(計算)=3800、f=.
41)、Mw=17500、Mp=17100、及びMWD=1.88であった。
実施例7:22℃でTHF中において触媒としてPh3C-Ph4P+を用いてメト
キシトリメチルシリルジメチルケテンアセタール(MTS)によって開始される
MMAのアニオン重合
開始剤系に主要な差異がある他は上述のもの(実施例1)と同じ手順を用いた
。Ph3C-K+(3x10-6モル)をMTS(2.5x10-3モル)に添加する
と桃色の溶液が生成され、これはPh4PClの添加によりオレンジ色の溶液に
変わった。MMA(5x10-2モル)を6分以内に添加して、オレンジ色の重合
溶液を生成し、メタノールでの停止で青みがかった黄色溶液を得た。Mn=15
300、Mw=27500、Mp=24500、及びMWD=1.8のPMMAが
低収率(1%)で得られた。関連した系で先に報告されているように20、モノマ
ー添加時間と反応時間を(〜60分まで)増加させると、ポリマー収率、分子量
制御及びMWDが改善され得る。
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実施例8:
試薬及び溶媒
窒素下でグローブボックス中で作業を行った。THFは、トリチルカリウム/
THF溶液で強い赤色に滴定して、減圧下で再凝縮させた。
トリフェニルメタンが8時間の間減圧下で乾燥させられ、ついでNa-K合金
とTHF中で混合された。4時間の撹拌後に、残りの金属を濾過して除き、PH3
CK/THF溶液の濃度をアセトアニリドの滴定によって0.146モル/1
と決定した。
9-エチルフルオレンがアルミナビード上で予乾燥され、THFで希釈され、
nBuLiもしくはカリウムと反応させられて、9-EFluKもしくは9-EF
Liを形成した。
メチルメタクリラートを窒素の導入及びアルミナ上での貯蔵によって精製し、
ついでCaH2上で撹拌し、減圧下で再凝縮させた。
Ph4PClを先ず高真空下で約100℃で約8時間の間乾燥させた。このよ
う
にして予乾燥されたPh4PClは、THF中でスラリー化され、−15℃でト
リチルカリウム/THF溶液で滴定され、赤色になった。ついで白色のPh4P
Clを濾過し、更に減圧下で乾燥させた。
重合
30mlのTHF中において過剰のPh4PClの懸濁液にTHFに各カチオ
ンを溶かした溶液を in situ で加えて開始剤を調製した。−15℃で10分撹
拌した後、約0.8mlのMMA(約2.7容量%のモノマー)を深赤色の開始
剤溶液に添加した。2、3秒で温度が約−8℃に上がり、2、3分で恒温槽に戻
した。メタノール/酢酸で重合を停止させると、深赤色が消失した。ポリマーを
メタノールもしくは石油エーテルで沈澱させ、濾過し、減圧乾燥させた。PMM
A基準について、GPC測定を実施した。
結果を次の表に示す。
ブロック共重合MMA/nBA及びMMA/tBA
実施例9
最初に、上述のようにしてメチルメタクリラートを重合した。5分後に0.8
mlのnBAを添加し、ついで混合物を20分間撹拌した。次に、10%酢酸を
0.5ml含むメタノールを添加して重合反応を停止させ、溶媒を除去し、トル
エンに溶解させて水で抽出して、生成物を精製した。PMMA基準に対するGP
C測定の結果は次の通りであった。
MMAブロック P(MMA-b-nBA)
Mn=5100g/モル Mn=8400g/モル
Mw/Mn=1.15 Mw/Mn=1.47
実施例10
−30℃の重合温度でn-BAを10分後に添加して、実施例9を繰り返した
。PMMA基準に対するGPC測定の結果は次の通りであった。
MMAブロック P(MMA-b-nBA)
Mn=4600g/モル Mn=7500g/モル
Mw/Mn:1.6 Mw/Mn=1.6
〈使用触媒: Ph3C-Ph4pt〉
実施例11
3倍のモノマー濃度(2.4mlのMMA)と2分後の2.4mlのn-BA
の添加で、実施例10を繰り返した。PMMA基準に対するGPC測定の結果は
次の通りであった。
MMAブロック P(MMA-b-nBA)
Mn=12600g/モル Mn=17400g/モル
Mw/Mn=1.4 Mw/Mn=1.6
実施例12
t-BAを用いて実施例9を繰り返した。PMMA基準に対するGPC測定の
結
果は次の通りであった。
MMAブロック P(MMA-b-nBA)
Mn=5300g/モル Mn=6600g/モル
Mw/Mn=1.14 Mw/Mn=1.19
上記の教唆に従って多くの変更と変形をなすことができることは、明らかであ
る。従って、特許請求の範囲内である限り、今まで説明したものと異なる態様で
も本発明を実施することができることを理解すべきである。
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(72)発明者 ホーゲン−エッシュ,スィーオ
アメリカ合衆国 カリフォルニア 90089
−1661 ロサンゼルス ユニヴァーシティ
ー パーク (番地なし) デパートメン
ト オブ ケミストリ ローカー ハイド
ロカーボン リサーチ インスティトゥー
ト ユニヴァーシティー オブ サザン
カリフォルニア
(72)発明者 サガラ,アンジェラ
アメリカ合衆国 カリフォルニア 90089
−1661 ロサンゼルス ユニヴァーシティ
ー パーク (番地なし) デパートメン
ト オブ ケミストリ ローカー ハイド
ロカーボン リサーチ インスティトゥー
ト ユニヴァーシティー オブ サザン
カリフォルニア