JPH11501825A - 組織修復方法 - Google Patents

組織修復方法

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JPH11501825A
JPH11501825A JP8521922A JP52192296A JPH11501825A JP H11501825 A JPH11501825 A JP H11501825A JP 8521922 A JP8521922 A JP 8521922A JP 52192296 A JP52192296 A JP 52192296A JP H11501825 A JPH11501825 A JP H11501825A
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ロナルド オーウェン,アール
イアン トゥリケット,ロドニー
ラウト,アントニオ
マーガレット ダウズ,ジュディス
オースティン パイパー,ジェイムズ
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ザ マイクロサーチ ファウンデーション オブ オーストラリア
マッカリー リサーチ リミテッド
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Abstract

(57)【要約】 接合される組織の端縁を一列に並べて当接させ、生物分解性の生物学的接合剤またはその類似体を該端縁を横切って塗布し、次いでエネルギーをエネルギー源から接合剤に送り、接合剤を、端縁に隣接する組織面に結合させて端縁をともに保持する溶接部分を設けることからなる組織接合方法。

Description

【発明の詳細な説明】 組織修復方法 発明の技術分野 本発明は、静脈、動脈、微細血管、管状臓器、神経、臓器組織を含む生体組織 、および腹膜、網(もう)、筋膜、皮膚、人工組織のような生体面を接合する方 法、ならびにこれら組織を接合するのに有用な医薬製品に関する。 背景の技術 静脈、動脈、微細血管、管状臓器、神経、組織のような組織類、ならびに腹膜 および皮膚のような生体面の接合は、従来、主として、縫合および顕微縫合によ って臨床処理が行われている。 顕微縫合はかなりの熟練が必要であり時間がかかる方法である。顕微縫合によ って接合された組織はかなりの傷跡が残った組織になることが多い。顕微縫合の 際に遭遇するいくつかの難題は、損傷した末梢神経の組織を再接合する実施例を 検討することによって一層十分に理解することができる。末梢神経 身体の臓器を制御しかつ情報を中枢神経系(CNS)のいたるところに伝達す る電気信号は、末梢神経にそって運ばれる。これら末梢神経の構造は電話ケーブ ルに類似している。電話ケーブルには、内部要素全体を保護する強力な外部保護 コーティングがある。各種のシステムにつながっている銅線は別個の絶縁管で区 分されていることが多い。内部の銅線は各々、両方向に電気を送ることができる 単一の線路であり、まわりに絶縁コーティングを備え、隣接する線路に干渉しな い。 末梢神経(図1)は、コラーゲンのような結合組織からなる外膜を備えている 。この膜(神経上膜)は、別個の神経束を保護しかつ保持している。この膜の内 側に位置する神経束は神経線維束(fascicle)と呼ばれている。これら神経線維 束もまわりを囲むコラーゲンベースの膜を備え、その膜は身体の類似の領域に通 じる神経軸索を区分する役割を果している。神経線維束の膜の内側で、軸索は粗 い結合組織に囲まれている。これら軸索は、脊髄または脳のCNSに含まれてい る細胞体から長く延びている。感覚軸索はCNSに送信し、運動軸索はCNSか ら送信される。神経代謝は、神経の外側の血管系および神経の中心にそった血管 系によって維持されている。 末梢神経は直径が非常に小さい。例えば、手首の成熟正中神経は、直径が約1 cmで平均40個の神経線維束を有し、その神経線維束は各々4500個までの 軸索を有している。末梢神経が切断されると、軸索の流れが細胞体から遮断され るので、創傷に対し遠位の軸索はすべてその特性が変化する。その神経は再び接 続されてもこれら軸索の遠位部分の機能は低下し続ける。シュワン細胞は、通常 、軸索を再生する隔離ガイド(insulation guide)として軸索のまわりにまきつ いている。対応する神経線維束を一列に並べることによってできるだけ正確に神 経を接合すると、その軸索が一層効果的に再生する。 神経の手術は、拡大装置と特別の顕微外科装置を使用することによって容易に 行えるようになっている。正確な修復は、神経線維束のレベルで行い、正しい神 経束にそって、提供される軸索を元の領域に導いて再生を確実に実施することが 必要である。現在の末梢神経修復法は顕微縫合法を利用している(図2)。この 方法は、多数の神経線維束のうちの1本について3回以上、顕微縫合を行い(例 えば直径が70ミクロンの針と直径が30ミクロンの縫合糸を使って)専任の訓 練された外科医が必要であり手術時間が非常に長くなる。 顕微縫合は、現在、熟練者を利用できるとき、診療に利用されている。あいに く、高倍率下で手術するのに必要な操作技量を有する外科医は比較的少数しかい ない。合理的な顕微縫合法でさえも、手術時間が長くなり、その上、薄い隔離神 経周鞘を縫合糸が貫通するため内部の軸索に損傷を与える。縫合糸を使用すると 、異物反応のため修復部分にある種の傷跡が生じる。長時間かかって傷跡組織が 生成し傷跡が成熟すると、接合された神経を損うことを示す証拠がある。 神経の接合を行うのにレーザーだけを使用する手術が行われている。レーザー による溶接の問題点の一つは、軸索の無傷のゲル様神経組織が、神経線維束内で 実際に圧力を受けることである。神経線維束が切断されるとこの物質は突出する 。そのため、レーザーによる直接溶接部分は、神経線維束の周膜ではなくて神経 組織に形成されて神経が損傷することになる。現在、溶接は、一般に、エネルギ ー移動を水の吸収で行うCO2レーザーのような赤外レーザーを用いてなされて いる。溶接を行う前に、神経膜の一部分を重ねあわせて、組織の準備を行う。こ れは、ゲル様軸索が突出しているので困難であるから、神経軸索の物質を変性さ せることがある。疾患組織は傷跡を残す傾向があり、その結果、増殖する線維組 織は神経組織より劣った導電体である。従来技術として説明したような、レーザ ー溶接を用いて、現在、形成されている結合は一般に強度が不足している。これ らレーザー接合だけでは失敗しがちなので、これらの接合を強化するため、溶接 に加えて顕微縫合が用いられている。 レーザー溶接の欠陥の少なくともいくつかに対処するため、溶接部を形成する 際に、各種の接着剤が用いられている。これら流体の接着剤はタンパク質濃度が 低いため、接合されている神経の両端間を流れる傾向があり、その結果、神経線 維束の軸索形質に損傷を与えて再生を妨げることがある。接着剤は接合部のまわ りに塗布され、次に円周部を溶接する。これらの接合部は、その後、厚い傷跡を 示しこの傷跡は神経の狭窄を起こす。さらにその接合部は弱くなる傾向がある。 また従来利用できた溶接法は精密さが不足しがちである。この方法の精密さに 対し不利に影響する因子としては以下のものがある。すなわち、使用される接着 剤のコンシステンシー、接着剤を塗布するのに使用される針などの器具による開 口および接着剤を塗布する際に加えられる圧力の相違である。 発明の説明 本発明は、 接合すべき組織の端縁を一列に並べて当接させ; 上記一列に並べて当接させた端縁を横切って接合剤を塗布し;次いで 上記接合剤にエネルギー源からエネルギーを送り、接合剤を、端縁に隣接する 組織の面に結合させて、両端縁をともに保持する溶接部を提供する条件下、接合 剤をエネルギー源に露出する; ことからなる組織接合法を提供するものである。 接合剤を、基礎組織のタンパク質と結合させるのに加えて、エネルギー移動に よって、接合剤自体の構造に作用して接合剤内に結合をもたらして接合剤の強度 を高めしたがって接合部の強度を高めることができる。 接合剤が流体接合剤の場合、一般に数滴の接合剤が使用され、端縁を横切って “塗布される”。 その接合剤は、予め形成された固体の帯状体として提供してもよい。 エネルギー源は一般にレーザーである。 本発明の方法を用いて、各種の組織を接合することができる。本発明の方法は 、腎臓、肝臓または脾臓のような生体臓器または腹膜や皮膚のような生体面の切 開部また裂傷部の修復のみならず静脈、動脈、リンパ管、神経、輸出管、ファロ ーピース管、胆管、胃腸管、尿道、涙管、気管支および他のかような身体管状臓 器を含む生体管状臓器の吻合に利用できる。したがって、本発明の方法は、円筒 形物の吻合および切開部分のような線状欠陥部の閉鎖を含む各種の接合を行う際 に利用できることは分かるであろう。 組織の修復が神経組織または他の組織管の修復であり、その管の内容物が損傷 しないよう保護する必要がある場合、溶接が接合される端縁に集中して突出して いる組織を損傷させてはならないことが特に重要である。むしろ、溶接部分を平 坦面または管状面を横切って分布させて不連続部分があるべきである。 修復すべき組織が特に血管のような中空の身体管の場合、修復にはさらに、壁 厚が薄い中空円筒形の接合剤を修復中の管状臓器の内側に挿入して、その円筒形 接合剤を管状臓器の切断された部分に架けることが含まれる。一般に、その切断 された管状臓器と円筒形接合剤の組立体をともに保持しながら、エネルギー源か らエネルギーを管状臓器の壁を通じて導き、円筒形接合剤を管状臓器の末端に結 合させる。円筒形接合剤には、以下に説明するように染料を混合し、エネルギー を円筒形接合剤に引きつけてより効果的な溶接を行うことができる。少なくとも 一つの帯状または滴状の接合剤を端縁を横切って外面に塗布し、その塗布された 接合剤を上記のように処理することによって、修復は完了する。 修復が腹膜のような組織面の修復の場合、溶接が端縁に集中するのを避けるこ とは余り重要でないことが分かるであろう。 また本発明の方法は、事故または外科手術によって生じた孔のような組織面の 他の不連続部分を修復するため改変することができる。この形態の本発明では、 接合剤は、修復部位の形に合わせて、広げておくかまたは予め切断し、そして修 復部位の端縁は、修復を実施するために一列に並べたりまたは当接させる必要は ない。 本発明の方法を用いる代表的な神経修復は、端縁が、ともに接合すべき切断さ れた末梢神経の神経線維束の末端か、または神経線維束の末端と代替神経移植体 の神経線維束の場合の修復である。後者の修復は、神経の修復を必要とするが、 修復中の神経の一部が切断されて損傷を受けているかまたは利用できないため、 神経線維束の利用可能な末端が互いに離れすぎて直接接合できない場合に特に適 している。神経が保持している損傷の実際の性質と、修復が一次修復か二次修復 かが回復に関与する因子であるが、いずれにしろ接合すべき神経線維束の端縁は 、接合する前に、正確に直角に切断される。 表面自体を自然に接合させるため間隔をおいて単一もしくは複数の帯状体とし て接合剤を塗布すると、修復中の神経に脈管を再生させることができる。円周溶 接は、比較すると、身体の自然治癒の過程を阻害して、その領域を修復するのに 必要な毛細血管のアクセスが遅れる。レーザーによる接合法と縫合法は、結局、 接合剤または縫合糸の接続部分が分解して治癒プロセスにおきかえられた後、神 経を結合させる結合組織を身体が再生することに依存している。本発明の発明者 らは、手術の後の周囲の組織の移動を制限せずに本発明の方法で再生に成功でき ることを生体内の試験で示した。ヒトの患者に神経修復手術を行う場合、手術さ れる四肢の関節の移動を最初に制限して、修復部位にかかる張力を減らすのを助 けることは日常的に行われている。 本発明の方法に有用である代表的な生物分解性の生物学的接合剤はタンパク質 の接合剤である。 他の天然に存在する生体分子も代替物として使用できると考えられる。生物分 解性の生物学的ポリペプチド類の他の類似体も使用できる。本発明に有用な生物 分解性の生物学的ポリペプチドの類似体としては、修復を受ける組織内で不利に 反応しない粘稠な“接着剤”を生成することができる合成ポリペプチドなどの分 子がある。 本発明のタンパク質接合剤は固体または流動体の接合剤でもよい。 帯状溶接の場合に有用な流動体のタンパク質接合剤組成物は、一般に、水に対 して100〜120重量%のタンパク質を含有している。流動体のタンパク質接 合剤は水に対して100〜110重量%のタンパク質を含有していることが好ま しい。 上記流動体接合剤の帯状物は一般に厚みが50〜200μmである。その長さ は、形成すべき接合部に適合するよう選択されるが一般に2〜3mmのオーダー の長さである。この接合剤は一般に接合部を横切って塗布される。 帯状溶接に有用な固体のタンパク質接合剤組成物は一般に、水に対して120 〜130重量%のタンパク質を含有している。その帯状体は、タンパク質を、好 ましくは170〜230重量%含有し、一層好ましくは約210重量%含有して いる。 異なるタンパク質は、水に対する溶解度、または異なるタンパク質接合剤用組 成物のタンパク質の最適濃度に変化をもたらす適切な溶液に対する溶解度が異な っていることは理解できるであろう。固体接合剤と流動体接合剤の両者中の特定 のタンパク質の適切な範囲は、それらタンパク質の公知の特性に基づいて決定す ることができる。 一般に、固体のタンパク質接合剤組成物は、予め成形された帯状体として提供 される。固体の接合剤帯状体は流動体の接合剤より取り扱いやすい。外科手術に 固有の湿潤条件下で、流動体接合剤は広がって、広がってしまう前に接合剤をレ ーザーで変性することが困難になる場合がある。固体の接合剤帯状体は、ペース ト状またはより固いコンシステンシーであってもよい。これらの帯状体は、接合 部を横切って微小鉗子で配置される。本発明の一形態で、固体の接合剤帯状体は 実質的に長方形であると考えられる。しかし異なる形態の帯状体が異なる修復の 場合に必要になることがある。また、大きいかまたはかなりの数の修復部位を効 果的に修復するため複数の帯状体を組み合わせて設けることが望ましい。 上記タンパク質接合剤は、単一のタンパク質(アルブミンが代表的な例である )か、あるいは1種以上のタンパク質を含有していてもよい。 アルブミンは、固体の接合剤帯状体に剛性を付与するβシート構造体を高比率 で含有しているので、固体の接合剤帯状体を形成するのに望ましい性質をもって いる。フィブリンは顕著なβシート構造を有するタンパク質の別の例である。接 合剤にαらせんタンパク質を入れると、帯状体を一層展延可能にするのに役立ち 、その結果、神経の末端を接合するのに特によく適合している一層平坦な形態を 保持することができる。αらせんタンパク質の適切な比率の一例は、使用される タンパク質の1〜10重量%である。約5%が好ましい量である。コラーゲン、 トロポエラスチンおよびエラスチンが適切なαらせんタンパク質の例である。 接合剤に用いられるタンパク質は、有害な宿主反応が起こる危険性を最少にす るよう選択されるので、好ましくは、宿主に対して自己由来のタンパク質かまた は低抗原性の外来タンパク質にすべきである。 これらのタンパク質は適切な起源から得ることができる。天然に存在するタン パク質を精製したもののみならず、組換え法または合成法で製造したタンパク質 を用いることができる。 接合剤を、適切な波長のエネルギーを生成するレーザーとともに使いたい場合 、接合剤組成物は、接合剤がともに用いられるレーザーが生成する波長のエネル ギーを吸収する染料のような物質を含有していることが好ましい。染料などの物 質はレーザーが運ぶエネルギーを効果的に吸収するが、接合される基礎組織は運 ばれるエネルギーを余り吸収しないように組合わせを選択することが好ましい。 この染料などの物質は、溶接を、使用される接合剤に対し特異的にして、基礎組 織に対して事故により組織を加熱して与える損傷を最小にするのに役立つ。 タンパク質の接合剤が使用される場合、結合のプロセスは、架橋させて利用で きるタンパク質分子に依存している。この架橋はそのタンパク質分子を広げたと きに起こる。例えば、アルブミンとインドシアニングリーンを含有する接合剤に 神経組織の接合部でレーザーを照射すると、アルブミン分子がインドシアニング リーン分子からのエネルギー移行によって加熱されて、アルブミン分子は広げら れ、それら分子間の結合および神経線維束膜のような隣接する組織面との結合が 起こる。 修復される組織を対照的に目立たさせる染料も、接合剤を見やすくするのに有 用である。この特性を有する染料の一例はインドシアニングリーンである。 使用されるレーザーがCO2レーザーの場合、そのエネルギー移行は水の吸収 によって行われるので、染料はそのエネルギー移行には役立たない。 エネルギー源が提供するエネルギーは、基礎組織に対する損傷を最小にしなが ら、接合剤を結合させて溶接部を形成するのに十分でなければならない。タンパ ク質接合剤を変性させるのに必要な温度は、一般に少なくとも50℃で100℃ を超えることもある。好ましい温度範囲は50℃〜90℃である。特に好ましい 温度範囲は80℃〜90℃である。 各接合部の処理時間は、周囲の条件、高さ、および勿論、接合される組織の性 質のような因子に応じて変えることができる。処理時間は一般に短い。0.4m gの帯状体をレーザーで処理する30秒間の期間は、必要な時間の一例であるが 、これより短いかまたは長い処理時間が必要なことがあることは分かるであろう 。固体接合剤は変性するのに流動体接合剤より長時間かかることは分かるであろ う。 第二の態様で、本発明は、タンパク質とそのタンパク質の適切な溶媒を含んで なるタンパク質接合剤組成物を提供するものである。水は一般に、水溶性タンパ ク質の溶媒として使用される。 第三の態様で、本発明は、好ましくは滅菌パック中に入った、複数の、タンパ ク質接合剤の帯状体および/または本発明の第二の態様の成形体を含んでなる、 組織を接合するのに用いるキットを提供するものである。滅菌パック中には、種 々の長さの帯状体および/または種々の大きさの成形体が入っていることが好ま しい。 本発明のキットは、帯状体を滅菌処理する手段が入っている方が好ましい。ま た本発明のキットは、帯状体を計測する手段が入っていることが好ましい。 また本発明のキットには、光ファイバーを連結したレーザーシステムのような エネルギー源が入っていてもよい。 図面の簡単な説明 図1は末梢神経の構造を示す概略図である。 図2は従来技術の顕微縫合法による末梢神経の接合を示す。 図3a)と図3b)は、a)流動体接合剤でおよびb)固体帯状体で神経線維 束を接合するのを示す概略図である。 図4は、a)ダイオードレーザー帯状体溶接およびb)顕微縫合を行った直後 の直径0.3mmの脛骨神経の修復部位を示す。 図5aは本発明のレーザー接合剤法で溶接したラットの脛骨神経を示す。接合 剤と膜は変性されているが、軸索には有意な変化が全く起こっていない(×10 0Giemsa)。 図5bは10.0ナイロンを使用して顕微縫合を行うことによって接合したラ ットの座骨神経を示す。神経周膜と軸索の限局性損傷が起こっている。 図6は内側の生物分解性の固体接合剤円筒体と外側の固体接合剤帯状体を用い て血管を接合する概略形態を示す。 図7は修復された神経線維束の断面の概略形態を示す。 図8は修復された神経の引張り強さを測定するのに用いる方法を示す。 図9はレーザー溶接を行う直前に、切断されたラットの脛骨神経上に配置され た固体接合剤帯状体を示す。 図10aは、レーザーで神経を修復し、3ケ月間再生させた場合の、ミエリン 化軸索の再生を示す。 図10bは、3ケ月間再生させた縫合神経の縫合糸のまわりの線維組織を示す 。 図11は修復された神経の筋肉活動電位の測定結果を示す。 本発明を実施する最良の方法 組織の修復は、接合すべき組織端縁を横切って塗布されたタンパク質接合剤を 、レーザーを使って活性化して実施する。この接合剤は、レーザーを照射すると 変性して、それ自体と隣接する膜を結合して接合部を形成する。神経線維束を修 復する場合のこの方法を、図3と図7に概略を示す。接合剤は接合部を横切って 縦方向に帯状に塗布される。神経の修復 切断された神経組織の修復は、上記のように、切断された端縁を横切って接合 剤を配置し次にその接合剤をレーザーに暴露させることによって行われる。神経 の内容物を損傷することなく神経組織を修復するには、突出した神経内容物が損 傷することがあるので、溶接を両端縁に集中することは回避することが望ましい 。むしろ、溶接場所は、不連続部分がある平坦なまたは管状の面を横切って分布 しているべきである。中空の身体管状臓器の修復 中空の身体管状臓器を修復する場合、内側の円筒形接合剤を管状臓器に挿入し て不連続部分の間に配置することが好ましい。管状臓器の切断された末端は、円 筒形接合剤の両末端上に配置する。その配置を図6に示す。次に、レーザーを照 射して、配置を正しく保持しながら、接合剤円筒体を、接合される管状臓器に結 合させることができる。管状臓器と円筒形接合剤の嵌合が良好であればこのレー ザー照射ステップは不要である。その接合は、神経の修復の場合と同様に外部接 合剤を付加することによって完了する。組織表面の修復 腹膜のような組織の面は組織の平面であり、縫合糸なしの接合が、接合すべき 不連続部分を横切って接合剤を塗布し次いで上記のように溶接することによって 達成できる。この場合、溶接が端縁に集中するのを避けることは余り重要でない 。神経線維束を修復するのに適したレーザーと接合剤のシステム タンパク質接合剤を変性させるため、公称出力が250mWのGaAs/GaAlAsレ ーザーダイオード(米国カリフォルニア州サンホセ所在のSpectra Diode Labs 社)を使用する。そのレーザー光は、ファイバーチャック(fibre chuck)を用 い手で保持されている直径100μmのコアの光ファイバーに接続される。その ダイオードは、レーザー接合中、75mWで連続モードで作動する。このレーザ ーはクラス3bのレーザーなので眼にとって安全ではない。したがってこのレー ザーを使用するときは常に保護眼鏡を着用しなければならない。 適切なタンパク質接合剤は、水、アルブミンおよびインドシアニングリーン( ICG)染料(米国ミズーリ州所在のBecton Dickinson 社)の混合物である。 インドシアニングリーンは、805nmの波長光の最大吸収係数が2×105- 1 cm-1である。流動体接合剤の場合、水に対するアルブミンと染料の百分率は それぞれ110%と0.6%であった。接合剤帯状体を製造する場合は210% のアルブミンを使用した。ICG染料はアルブミンと優先的に結合して、熱を効 果的に伝達してタンパク質接合剤を確実に変性させると考えられることは注目す べきである。レーザー接合法 外科手術を実施する場合、手術顕微鏡またはある種の拡大装置を使用すること が好ましい。管状接合部をレーザーと接合剤で修復する場合、薄いガーゼ材の一 片を接合部の下側に置いて回転し易くする。組織の端縁を、組織の種類と修復の 形態に対する標準の方法にしたがって準備する。 微小鉗子を用いて、組織の端縁を一列に並べて当接させる。新たに接合剤でコ ートした30ゲージの針を用いて、流動体接合剤の長さ2mmの帯状物を、端縁 の接合部を横切って縦方向に“塗布する”。あるいは、帯状接合剤を、微小鉗子 を用い接合部を横切って配置する。固体帯状体による修復法は一層簡単である。 固体の帯状体を特定の微小鉗子で把持し、次に接合すべき構造体の縦方向に平行 に接合部を横切って配置する。次にレーザー出力を固体帯状体に向けると、固体 接合剤が変色し、変性して基礎組織の膜に接合剤が接着したことを知らせる。こ の工程を別の帯状体で繰り返して表面が強力に結合したことを保証する。 そのとき、100μm光ファイバーからのダイオードレーザー出力を、30秒 間連続してパスさせ、固体接合剤を変性させて帯状溶接部にする。75mWのダ イオード出力電力で、固体接合剤の帯状物は、一回のパスで表面が褐色に変色し 下側が不透明になり変性したことを知らせる。流動体接合剤を用いると、変性は 一層迅速に起こる。流動体接合剤を変性させるのに、2秒間のレーザーパスで十 分である。溶接部分の強度を増大するため、一般に、流動体接合剤の第二層を上 記変性帯状体に塗布し次に2秒間のレーザーパスを繰り返す。微小鉗子で接合部 の下方にガーゼを置いて、接合部を回転させ、他の帯状体を塗布することができ る。流動体タンパク質接合剤の調製 組成:アルブミン(米国ミズーリ州セントルイス所在のSigma 社由来のフラクシ ョンV粉末)、水に対し少なくとも100〜110重量%; インドシアニングリーン(米国ミズーリ州所在のBecton Dickinson 社) 水に対し約0.6重量%; 水(注射用グレード) 手順:ICGの水溶液をミニ試験管中に調製した。その試験管にアルブミンを添 加した。そのアルブミンと溶液をボルテックスミキサを用いて混合した。このよ うにして、水分子との結合ではなくてタンパク質分子を互いに結合させて、タン パク質の構造を変化させた。固体タンパク質接合剤の調製 組成:アルブミン(米国ミズーリ州セントルイス所在のSigma 社由来のフラクシ ョンV粉末)、水に対し210重量%; インドシアニングリーン(米国ミズーリ州所在のBecton Dickinson社)、 水に対し約0.6重量%; 水(注射用グレード) 手順:ICGを水に溶解し、ミニ試験管中のこの溶液にアルブミンを添加した。 この混合物をボルテックスミキサと針を用いて混合した。得られた混合物を、均 一で展性の緑色ペーストになるまで混合した(約3分間)。この混合物の相は、 この混合法で変化して、タンパク質−水の結合ではなくて主としてタンパク質− タンパク質の結合によるほとんど固体の組成物が得られた。この系は、この段階 でもはや溶液ではない。そのタンパク質ペーストは展性を有し、混合後、約30 分間まで、切断して帯状体にすることができた。この時点の後、そのペーストは 水和のために硬化し、非常に固くなって切断できなくなった。 得られた帯状体は、厚みが50〜100μmであり、幅が約0.6mmで長さ が1.5〜3.5mmであった。これらの帯状体を神経線維束を修復するのに用 いる場合、所望の幅と長さは神経線維束の寸法によって指定されることはわかる であろう。上記の幅、厚みおよび長さは、直径が0.2〜0.8mmのラット脛 骨神経に対して用いるのに適した寸法である。帯状体の幅:神経の円周の比率は 一般に下記のとおりである。 幅1/5円周 実施例1 800nmの波長で作動する75mWダイオードレーザーに接続した100μ mコアの光ファイバーを、タンパク質接合剤とともに用いて、切断されたラット の脛骨神経をストライプ溶接し、顕微外科による神経修復に要する長い手術時間 を短縮した。溶接部は、染料のインドシアニングリーンを含有するタンパク質ベ ースの接合剤を選択的にレーザーで変性することによって作製する。レーザー接 合剤法の作動時間は、顕微縫合法の場合23±9分(n=13)であったのと比 べて10±5分(n=24)であった。顕微縫合を行った神経は引張り強さが4 0±10gであったが、レーザー接合剤法によって引張り強さが15±5gの独 特の溶接部が得られた。レーザー接合剤法で接合された神経の組織病理学的検査 を、手術後ただちに行ったが、外側の膜に接合剤が接着し、神経の内部軸索の損 傷は最小であった。合計57頭の成熟した雄のウイスターラットで生体内試験を 行い、レーザー接合剤法で修復した脛骨神経を従来の顕微縫合修復と比較した。 24個のレーザー接合剤法によって接合した神経と13個の縫合神経を、3ケ月 の時点で特性を解析した結果、再生に成功したことを示し、コンパウンド筋肉活 動電位[Compound Muscle Action Potential(CMAP)]はそれぞれ2.4± 0.7mVと2.7±0.8mVであった。生体内の組織病理学的検査によって 、レーザーおよび縫合で手術した神経中の軸索が同等に再生していることが確認 された。迅速に行われ、損傷が少なくかつ長期間の耐久性を有するレーザーベー スの吻合法が提供される。 材料と方法 1.実験動物 この試験では、最初の体重が400〜550gの合計57頭の若い成熟した雄 のウイスターラットを使用した。以下に詳細に述べるように、34頭のラットは レーザー・接合剤修復法を受け、残りの23頭は標準の顕微縫合法を受けた。各 修復法を受けたラット5頭ずつは手術後ただちに引張り強さの測定と光学顕微鏡 による検査を行い、残りの37頭のラットは、電気生理学と組織病理学を利用し て機能回復の試験を行った。 2.レーザー・接合剤法のシステム タンパク質接合剤を変性させるため、呼称出力が250mWのGaAs/GaAlAsレ ーザーダイオード(米国カリフォルニア州サンホセ所在のSpectra Diode Labs 社)を使用した。そのレーザー光を、ファイバーチャックに手で保持された直径 100μmのコアの光ファイバーに接続した。そのタイオードレーザーをヒート シンクに取り付け、そしてダイオードの電流と温度をSDL −800ダイオードド ライバーで制御した。そのダイオードは、レーザー・接合剤法で接合している間 、組織における最大出力密度955w/cmに対応して、75mWにて連続モー ドで作動させた。レーザーの出力電力は、Scientech(米国コロラド州所在のBou lder 社)電力計で測定した。このレーザーはクラス3bに属しているから眼に とって安全でないので、このレーザーを使用するときは常に保護眼鏡を着用した 。 この試験で使用した接合剤は、インドシアニングリーン(ICG)染料(米国 ミズーリ州所在のBecton Dickinson 社)も含有するアルブミンベースのタンパ ク質混合物であった。インドシアニングリーンは、805nmの波長光に対し2 ×105-1cm-1という最大吸収係数を有している。この染料は、上記タンパ ク質と優先的に結合して熱が効果的に伝達されてタンパク質接合剤を変性すると 考えられることは注目すべきである。 3.外科手術2中にFluothane を含有する混合物(誘発時4%、その後2%)を用いて( 1L/min)、手術中、麻酔を維持した。OPMI 7の手術用顕微鏡(西独所在 のZeiss 社)を用いて、左足の座骨神経を、座骨切痕において露出させてその神 経分枝を区分けした。座骨切痕の真下の脛骨神経分枝(1cmの長さ)を周囲の 皮下組織から露出させた。レーザー接合剤による修復を行っている間、薄いガー ゼ剤の一片を脛骨神経の下に置いて該神経を回転し易くし、縫合修復の場合は、 一片のプラスチックを脛骨神経の下に置いて縫合し易くした。次にその脛骨神経 をのこぎり歯状の微小はさみで切断して3分間放置して、軸索形質の通常の突出 を起こさせた。次にこの突出部を、のこぎり歯状の微小はさみで要求どおりにト リムした後、その神経を4個のレーザー接合体の帯状体または4本の10−0神 経周膜縫合糸で修復した。 レーザー・接合剤法では、切断された神経の両方の断端を一列に並べ、次に長 さ2mmの接合剤帯状体を、接合剤で新たにコートされた30ゲージの針を用い て、断端の接合部を横切って縦方向に“塗布した”(図3a)。次に、100μ mの光ファイバーからのダイオードレーザーの出力を、連続2秒間のパスで使用 して接合剤を変性させて帯状溶接部を形成させた。75mWのダイオード出力電 力にて、一回パスを行って観察したところ、表面が褐色に変色し底部が不透明に なっていたがこれは変性したことを知らせている。第二層の接合剤を上記帯状溶 接部に塗布し、次に2秒間のレーザーパスを繰り返した。神経の下のガーゼを微 小鉗子とともに用いて、神経を回転させて、残り3個の2層帯状接合剤を塗布で きた。これら帯状接合剤は各々約90°の間隔で配置されている。 7頭のラットは、より進歩した形態の有機接合剤を用いて手術した。その有機 接合剤はやはりアルブミンベースのタンパク質混合物であるが、脱水されて固体 の長方形帯状体に切断されているという利点がある(図9)。その接合剤帯状体 の平均表面積は、1.5±0.5mm2で、厚みは0.15±0.01mmであ った。4個の帯状体を、解剖脛骨神経にそって配置し、次いで流動体接合剤の場 合に採用したのと同じ方法で照射を行った。固体の帯状体は、レーザーの照射に よって、脛骨神経の周膜と融合して、切断された神経の両端を接合した。 すべての手術について、その後の参考にするため、吻合時間を記録し、写真の 記録をとった。実験動物は、3ケ月間、運動を制限せずにかごに入れておいた。 4.引張り強力の測定と組織病理学的検査の即時実施 手術を行ったラットのうちの10頭の、レーザーおよび縫合糸で修復した神経 の長さ1cmずつを直ちに採取して引張り強さを測定した。細い絹糸を脛骨神経 の各末端に結びつけた。一方の末端を、較正された力変換器(FT30C、米国 マサチューセッツ州クインシー所在のGrass Instruments社)に取り付け、他方 の末端をスクリュー駆動のトランスレーターに取り付けた(図8)。そのスクリ ューを回転させると、トランスレーターがゆっくりとした定常方式で神経を引張 る。加えられた張力を、力変換器の出力に接続したオシロスコープで観察した。 張力は、神経が切断するまで加え、引張り強さを記録した。乾燥すると、引張り 強さが増大するので神経は湿潤を保持させた。 光学顕微鏡で検査するため、脛骨神経の吻合部位を、5%ホルマリンで固定し 、アルコールで脱水し、パラフィンで埋包し、縦方向に切断して、マソンのトリ クローム(Masson's trichrome)またはGiemsaで染色した。 5.機能の評価:組織病理学的方法と電気生理学的方法 3ケ月後、ラットを3章に記載した方法を用いて再び麻酔をかけて手術した。 脛骨神経の吻合部位を露出させてその吻合状体を観察した。次に、座骨神経、腓 骨神経および腓腹神経の二つの他の分枝を切断し、座骨神経の脛骨神経分枝だけ が、後足の筋肉に座骨神経の電気刺激を伝えることができるようにした。2日後 、これらラットを、横むきに横たわらせ、折畳んだ外科手術用被布によってテー ブルから絶縁した。ラットの直腸温度を36℃を超えて維持するため赤外電灯を 使用した。 臨床筋電計(Cadwell Sierra EMG/EP)を使用して刺激と記録を行った。2 本の25ゲージ刺激電極を、大腿骨の近傍の、座骨切痕の上方の座骨神経の各サ イドに10mmの間隔をおいて配置した。座骨神経を方形パルス(0.1〜0. 3ms;0〜30mA;1Hz)を用いて活性化した。座骨神経の最大上刺激に 応答する足の足底筋から、コンパウンド筋肉活動電位(CMAP)を記録した。3本 の記録電極のセットを使用した。25ゲージの接地電極を、刺激電極と記録電極 の間の皮下に挿入した(引用文献1と2参照)。30ゲージの参照電極をかかと の肉趾中に挿入しかつ30ゲージの記録電極を足の足底筋中に挿入した。CMAPの 測定値を記録し処理して、その負のウエーブピーク値を求めた。 縫合神経とレーザー・接合剤で接合した神経の組織病理学的検査は、第4章で 採用したのと同じ方法で電気生理学的検査を行った後に実施した。 試験結果 手術を完了した時点で、すべての吻合が成功した。手術の手順は、レーザー接 合剤法の方が顕微縫合法より容易であることが分かった。その結果、手術時間は 、レーザー接合剤修復法[10±5分(n=24)]が顕微縫合修復法[23± 9分(n=13)]より短かった。レーザー接合法で修復した5本の神経の手術 直後の引張り強さは15±5gであり、顕微縫合を行った神経の引張り強さは4 0±10gであった。 手術直後の吻合部位の組織病理学的検査の結果は、アルブミンとICG染料ベ ースのレーザー接合剤が、神経の外側膜すなわち神経周膜とよく結合し、一方、 内部の軸索は加熱されないままであることを示した。図10aに、ダイオードレ ーザーとアルブミン/ICG染料接合剤によって生成した脛骨神経の神経線維束 の溶接部の断面図を示す。タンパク質接合剤と神経周膜の両者は変性して結合を 生成した。その結合の下側の軸索形質はその正常な波形構造を有している。加熱 は染料に集中するので接合剤および隣接する神経周膜の変性だけが起こることに 注目すべきである。 レーザー吻合の有望な一つの態様は、縫合糸を不要にすることによって、軸索 形質の損傷を減少させることができることである。10/0ナイロン糸を用いて 神経線維束を顕微縫合する効果を示す断面図を図5bに示す。Giemsaで染色した この断面図は、縫合糸による神経周膜と軸索の局部的損傷のみならず接合部にお ける軸索の突出を示している。 3ケ月の時点での組織病理学的検査の結果は、レーザーによる神経修復部にミ エリン化された軸索の再生を示し(図10a)、その線維と鞘または線維上神経 周膜に不連続部分は全くない。炎症およびミエリンの捕食現象の証拠は全く見ら れない。光学顕微鏡で評価したとき、脛骨神経の組織学的統合性が、レーザー溶 接によって十分回復していた。 また縫合された神経も吻合が成功したことを示し、ミエリン化された軸索が再 生しているが、ナイロン糸が線維組織で囲まれていることは明らかであり、この 線維組織は再生した軸索の指向性に対する障害となる(図10b)。 生体内試験の電気生理学的測定は、3ケ月間の回復期間をとった後、24頭の レーザー・接合剤で修復したラットと13頭の顕微縫合で修復したラットで実施 した。このグループのうち、24頭のレーザー接合剤による吻合は、13頭の顕 微縫合による吻合と同様に独特のものであった。修復部位の上方の神経の最大上 刺激からもたらされる筋肉活動電位の平均の大きさは、24個のレーザー・接合 剤で接合した脛骨神経の場合、2.4±0.7mVであり、13個の顕微縫合神 経の場合、2.7±0.8mVであった。脛骨神経の最大上刺激によって生じる 正常な筋肉活動電位は、10頭のラットについて8.7±3mVと記録された( 図11)。 考察 主要な末梢神経が切断されると、臨床上、40以上の神経線維束を個々に再接 合する必要がある。縫合は、一つの神経線維束当り3本または4本の微細縫合糸 を用いて、細部まで綿密に行わねばならぬので、時間が長くなる傾向がある。神 経移植の場合、2回の吻合が必要なので縫合時間は2倍になる。我々は、少なく とも最終結果を再現できるが、現在の手作業によって縫合する顕微縫合法より著 しく速い適切な神経吻合法を探してきた。先に説明したレーザー接合剤法の思い がけない利点は、手術した直後に見られる変性神経周膜層の下側の軸索内容物に 変化は全く認められなかったことである。電気生理学的な神経伝導の研究によっ て、3ケ月後に同等に再生していることが確認されたのである。 産業上の適用性 本発明は外科の技術分野で用いられ、組織の端縁を、末端と末端、面と末端、 および面と面とで接合するのに用いる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG ,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN, TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,SZ,U G),UA(AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM ),AL,AM,AT,AU,AZ,BB,BG,BR ,BY,CA,CH,CN,CZ,DE,DK,EE, ES,FI,GB,GE,HU,IS,JP,KE,K G,KP,KR,KZ,LK,LR,LS,LT,LU ,LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO, NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,S I,SK,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US ,UZ,VN (72)発明者 オーウェン,アール ロナルド オーストラリア,2066 ニューサウスウェ ールズ,レーン コーヴ,シリウス ロー ド 11 (72)発明者 トゥリケット,ロドニー イアン オーストラリア,2088 ニューサウスウェ ールズ,モスマン,ラグラン ストリート 2/90 (72)発明者 ラウト,アントニオ オーストラリア,2095 ニューサウスウェ ールズ,マンリー,シドニー ロード 409/48 (72)発明者 ダウズ,ジュディス マーガレット オーストラリア,2121 ニューサウスウェ ールズ,エッピング,ハイ ストリート 6 (72)発明者 パイパー,ジェイムズ オースティン オーストラリア,2120 ニューサウスウェ ールズ,ペナント ヒルズ,グリーンヘイ ヴン ドライヴ 32

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.接合すべき組織の端縁を一列に並べて当接させ; 本明細書に定義した、生物分解性の生物学的接合剤またはその類似体を、一つ 以上の横切る帯状体として上記端縁を横切って塗布し;次いで 上記接合剤にエネルギー源からエネルギーを送って、接合剤を、該端縁に隣接 する組織の面に結合させて、該端縁をともに保持する溶接部を付与する条件下、 接合剤をエネルギー源に対し暴露する;ことを含み、 一つ以上の帯状体を塗布するとき、これら帯状体は間隔をおいて配置されて、 接合部を自然に接着できる、組織接合方法。 2.組織が神経組織であり、端縁が末梢神経の線維束または神経の線維束およ び神経の移植材料の末端であり、そして神経組織が損傷しないよう保護するため 溶接を不連続線にそって行わない請求の範囲1記載の方法。 3.組織が、静脈、動脈、リンパ管、輸出管、ファローピース管、胆管、胃腸 管、尿道、涙管または気管支を含む生体管状臓器の吻合部であり、中空円筒体の 接合剤を、管状臓器中の不連続末端間に挿入した後、接合される管状臓器の外面 に接合剤を塗布する請求の範囲1記載の方法。 4.不連続末端が適正位置に保持され、一方、エネルギーが、管状臓器内の接 合剤円筒体に加えられ、接合剤円筒体を管状臓器の内面と結合させる請求の範囲 3記載の方法。 5.組織が、腎臓、肝臓もしくは脾臓を含む生体器官または神経周膜もしくは 皮膚のような生体面の切開部もしくは裂傷部の修復部分である請求の範囲1記載 の方法。 6.本明細書に定義されているような生物分解性の生物学的接合剤またはその 類似体を不連続部に塗布し;次いで エネルギーをエネルギー源から接合剤に送って、接合剤を、それ自体内でおよ び組織表面に結合させて、不連続部分を囲む結合剤と組織をともに保持する溶接 部を提供する条件下、結合剤をエネルギー源に暴露させる; ことを含んでなる組織面の不連続部を修復する方法。 7.接合剤の第一帯状物を塗付し次にエネルギー源に暴露させ、次いで第二帯 状物を第一帯状物の近くに塗布しエネルギー源に暴露させ、次いでこのプロセス を繰返して複数の帯状溶接部を提供する請求の範囲1または2に記載の方法。 8.生物分解性の生物学的接合剤がタンパク質接合剤である請求の範囲1〜7 のいずれか一つに記載の方法。 9.タンパク質接合剤が固体または流動体の接合剤である請求の範囲8記載の 方法。 10.エネルギー源がレーザーである請求の範囲1〜9のいずれか一つに記載の 方法。 11.接合剤が組織と比べて高度に、エネルギーをエネルギー源から吸収する物 質を含有している請求の範囲1〜10のいずれか一つに記載の方法。 12.前記物質が染料である請求の範囲11記載の方法。 13.混合する前の出発量として水に対して100〜120重量%のタンパク質 、およびそのタンパク質の適切な溶媒を含有してなる流動体タンパク質接合剤組 成物。 14.混合する前の出発量として水に対して100〜110重量%のタンパク質 、およびそのタンパク質の適切な溶媒を含有してなる請求の範囲13記載の流動 体タンパク質接合剤組成物。 15.混合する前の出発量として水に対して120〜230重量%のタンパク質 、およびそのタンパク質の適切な溶媒を含有してなる実質的に固体のタンパク質 接合剤。 16.混合する前の出発量として水に対して170〜230重量%のタンパク質 、およびそのタンパク質の適切な溶媒を含有してなる実質的に固体のタンパク質 接合剤。 17.混合する前の出発量として水に対して210重量%のタンパク質、および そのタンパク質の適切な溶媒を含有してなる実質的に固体のタンパク質接合剤。 18.好ましくは滅菌パックに入れた、請求の範囲15〜17のいずれか一つに 記載のタンパク質接合剤の複数の帯状体および/または成形体を含んでなる組織 接合用キット。 19.請求の範囲1〜10のいずれか一つに記載の方法で使用されるとき、混合 する前の出発量として水に対して100〜120重量%のタンパク質、およびそ のタンパク質の適切な溶媒を含有してなる流動体タンパク質接合剤組成物。 20.さらに、組織と比べて高度に、エネルギーをエネルギー源から吸収する物 質を含有してなる請求の範囲19記載の流動体タンパク質接合剤組成物。 21.前記物質が染料である請求の範囲20記載の流動体タンパク質接合剤組成 物。 22.請求の範囲1〜10のいずれか一つに記載の方法で使用されるとき、混合 する前の出発量として水に対して120〜210重量%のタンパク質、およびそ のタンパク質の適切な溶媒を含有してなる実質的に固体のタンパク質接合剤。 23.さらに、組織と比べて高度に、エネルギーをエネルギー源から吸収する物 質を含有してなる請求の範囲22記載の実質的に固体のタンパク質接合剤。 24.前記物質が染料である請求の範囲23記載の実質的に固体のタンパク質接 合剤。 25.タンパク質がアルブミンである請求の範囲15記載の実質的に固体のタン パク質接合剤。 26.タンパク質がアルブミンである請求の範囲13記載の流動体タンパク質接 合剤組成物。 27.タンパク質が、βシート構造を高比率で有しているタンパク質である請求 の範囲15記載の実質的に固体のタンパク質接合剤。 28.タンパク質が、約10重量%より少ないαらせん成分を有する請求の範囲 27記載の実質的に固体のタンパク質接合剤。 29.組成物が、70.3重量%のコラーゲン、16.9重量%の可塑剤および 9重量%の水からなる組成物ではないという条件下の請求の範囲15記載の実質 的に固体のタンパク質接合剤。
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