【発明の詳細な説明】
空気又は酸素でオレフィンを酸化することによって製造されるエポキシド
本発明は、大気酸素によるオレフィンのエポキシ化を選択的に触媒する化合物
、それらの調製方法、及び空気又は酸素でオレフィンを接触酸化することによっ
てエポキシドを調製する方法に関するものである。
例えば酸化エチレン、酸化プロピレン、1,2−酸化ブテンのようなエポキシ
ド(オキシラン)又は同様なエポキシドは、極めて多数の生成物を調製するため
の慣習的な中間物である。前記化合物におけるオキシラン官能基は、非常に容易
に反応し、求核反応体と開環反応を起こす。したがって、エポキシドは、グリコ
ールへと加水分解することができ、前記グリコールは防氷剤として、又は縮合ポ
リマーを調製するための反応性モノマーとして用いられる。
エポキシドの開環重合によって調製されるポリエーテルポリオールは、ポリウ
レタンのフォーム、エラストマー、被覆、封止用組成物又は同様の製品を調製す
るための中間生成物として慣習的なものである。
エポキシドをアルコールと反応させると、例えば極性溶媒として用いられるグ
リコールエーテルが得られる。
アルケンのエポキシ化を選択的に触媒すると言われている多数の異なる方法が
、エポキシドを調製するために開発されて来た。
したがって、例えば Huybrecht(J.Mol.Catal.71,129(1992);欧州特許
出願公開第311 983号)では、触媒としての珪酸チタンの存在下で、オレ
フィンを過酸化水素でエポキシ化することが開示されている。しかしながら、珪
酸チタン触媒によるアルケンの酸化中に得られる生成物の範囲は、不十分にしか
調節することができないので、反応条件又は用いられる反応物における最小限の
変化でも、最終生成物の割合が劇的に変化してしまう。
タングステン含有又はモリブデニウム含有触媒の存在下で大気酸素によるプロ
ピレンの酸化は、独国特許第22 35 229号で開示されている。エポキシ化
反応は、酸素で酸化されてヒドロペルオキシドを生成することができる溶媒中で
行われる。しかしながら、二次反応においては、生成されるヒドロペルオキシド
は、反応のカップリング生成物として得られる概してアルコールのような酸素含
有副産物となる。
触媒としてのモリブデン錯体の存在下で、t−ブチルヒドロペルオキシド(T
BHP)でエチレンをエポキシ化する方法が、Kelly らによって開示されている
(Polyhedron,Volume 5,271〜275(1986))。記載されている高活性触媒の化
合物は、例えばMoO2(8−ヒドロキシキノリン)2、MoO2(フェニレン−ビ
ス−サリシリマイン)(=MoO2(サルフェン))、MoO2(サリシルアルドキ
シム)2及びMoO2(5−ニトロソ−8−ヒドロキシキノリン)2のような錯体で
ある。実際に活性である触媒は、TBHP及び1当量のエポキシドに関して既に
加えられたモリブデン錯体である。
該方法は、高い選択率で進行するが、高価な酸化剤が用いられる。更に、該方
法の工業における使用を妨げる再現性に関する問題もある。
ある種のルテニウム錯体は、分子酸素とオレフィンとを反応させて対応するエ
ポキシドを与えることができることが更に知られている。
ルテニウム錯体トランス−(Ru(VI)(L)O2)2+[式中、リガンドL=N,
N−(ジメチル−N,N−)ビス(2−ピリジルメチル)プロピレンジアミンで
ある]はオレフィンをエポキシ化するが、化学量論的にのみである。ノルボルネ
ンは、収率85%で、2,3−エポキシノルボルナンへと転化される。スチレン
は、56%程度までエポキシ化され、収率39%で、ベンズアルデヒドへと転化
される。一方、シクロヘキサンは、エポキシドを生成せずに、対応するケトンへ
と転化される(J.Chem.Soc.Dalton Trans.1990,3735)。
対応するエポキシドへのノルボルネンの転化は、錯体シス−ジオキソールテニ
ウム(VI)−ビス(ジメチル−フェナントロリン)−ヘキサフルオロホスフェ
ートによる触媒作用によって達成される。24時間の誘導時間の後、37の触媒
サイクルが更に24時間後に見出される(J.Chem.Soc.Dalton Trans.1987,
179)。
Catal.org.Reaction(47(1992),p.245〜248)によると、二種類のルテニ
ウム錯体、すなわちトランス−ジオキソ(5,10,20−テトラキス(2,4
,6,トリメチルフェニル))−ポルフィリネート)ルテニウム(VI)は、酸
素によって、アルケンを接触的にエポキシ化することができる。これらの錯体の
最初のものは、米国特許出願公開第4,822,899号において開示されてい
る。ノルボルネンは、24時間以内の45.6以下の触媒サイクルで、この触媒
によって酸化される。例えばシクロオクテン及び2−メチルスチレンのような用
いられた他のオレフィンの反応性は、著しく低い。
アルケンのエポキシ化のための公知の従来技術及びこれらのどちらかにおいて
用いられる触媒によって説明される方法では、反応を不十分にしか制御すること
ができない。それは、所望のエポキシド最終生成物に加えて、数多くの望ましく
ない副産物も生成してしまうことを意味している。更に、記載された化合物の多
くは、触媒として作用しないか、又は非常にゆっくりとしか作用せず、またいく
つかの場合では、非常に長い誘導時間を必要とする。用いた触媒に加えて、酸素
以外の他の酸化剤(一般的に、ヒドロペルオキシド)を用いることがしばしば必
要であり、その反応生成物は、反応が行われた後、廃棄しなければならないので
、酸素に比べて、より一層高いコストがかかる。また、再現性の点でも問題があ
るため、この方法を工業的に用いることができない。
酸化剤として空気又は酸素でオレフィンを酸化することは、工業的に大きな利
点がある。その理由は、前記の酸化剤は、安価で利用でき、その反応は、還元さ
れた副産物を生成せずに進行することができるからである。
分子酸素又は空気によるオレフィンの接触液相酸化によってエポキシドを調製
する方法は、DD−B−159 075において開示されている。用いた触媒は
、モリブデンのエポキシ化活性遷移金属の塩又は錯体、例えば塩素錯体、カルボ
ニル錯体又はクロロニトロシル錯体であり、それらは、例えばヘキサメチルリン
酸トリアミド(HMPT)、トリフェニルホスファィト又はアセトニトリルのよ
うな供与体リガンドも含む。ここで、もっとも活性な化合物は、供与体リガンド
としてHMPTを含む化合物であり、HMPTは発癌性物質として知られている
。
モリブデン触媒を用いるオクト−1−エンのエポキシ化は、J.Prakt.Chem.
(1992,334,165〜175)において研究の対象であった。1,2−エポキシオク
タンについて見出された選択率は、モリブデニルアセチルアセトネートの存在下
では34%であり、三酸化モリブデンの存在下では28%である。周期表におけ
る遷移金属の位置及びその酸化状態は、触媒活性及びほんの小さな役割しか果た
さない触媒錯体自体の構造に関して最も大きな影響を及ぼすことも確認されてい
る。
今までのところ最も良いエポキシド選択率43.8%は、MoCl2(NO)2(
HMPT)2錯体について記載されている[J.prakt.Chemie.1984,326,1025
〜1026]。これらの触媒のすべては、エポキシド選択率がほんの45%未満(モ
リブデン(VI)でさえもわずか≦35%)であり、したがって副産物は55%
を超えて発生するという短所を有する。
学術雑誌[scientific journal of TH Leuna-Merseburg](1985,27,282〜2
94)では、オクト−1−エンの液相酸化における触媒の影響を測定するための指
数を紹介している。それは、触媒反応及び非触媒反応から得られたエポキシド選
択率の割合である。1を超える数は、触媒効果を示している。MoO2(acac)2に
ついて今日までに得られた最も良い値は、1.91であることは、前記雑誌に掲
げてある表から理解することができる。
本発明の目的は、オレフィンのエポキシ化を選択的に良い収率で触媒し、酸化
剤として大気酸素のみが用いられる化合物を提供することである。また、酸素又
は空気でオレフィンを高い選択率で酸化して、対応するエポキシドを与えること
のできる方法に関するものでもある。
用いられる触媒を未支持触媒として用いる必要がない場合、更に大きな利点が
ある。すなわち、前記の場合、高価な金属錯体は、比較的多くの量で未希釈の形
態で用いられる。したがって、本発明の別の目的は、選択的に且つ申し分のない
収率で、また、高価な金属の割合が支持材に対する施用によって低下する、オレ
フィンのエポキシ化を触媒する触媒を提供することである。
したがって、本発明は、オレフィンのエポキシ化を選択的に触媒する下式(1
)
MxOy(L)z (1)
で表される化合物に関するものである。上記式中、Mはモリブデン、ルテニウム
又はバナジウムであり、LはN,O又はS供与体リガンドである。指数xは1
〜 3の整数であり、好ましくは1又は2であり、yは1 〜 2x + 1の整数
であり、yは、x + zの合計が+5(バナジウム)又は+6(モリブデン、ル
テニウム)の金属酸化レベルを与えるように選択される。指数zは2 〜 2xの
範囲の整数であり、xは好ましくは2である。
用いることができる酸化剤は、過酸化水素又は他のヒドロペルオキシド、例え
ば第三ブチルペルオキシド、又は別の慣習的な酸化剤である。好ましい態様では
、空気又は酸素だけが用いられる。
リガンドは、最大二つまで前記リガンドを結合させることができる金属中心に
対して、二価(bidentate)形態で結合している。ジオキソ錯体は、ここでは、
シス異性体及びトランス異性体として双方存在することができる。好ましい態様
では、バナジウム錯体及びモリブデン錯体は、シス異性体として存在し、ルテニ
ウム錯体はトランス異性体として存在する。
好ましく用いられる供与体リガンドは、下式(2),(3)及び(4)
[式中、XはN(窒素)、O(酸素)又はS(硫黄)及びX'はN(窒素)又は
C(炭素)であり、R1及びR2は、互いに独立に、枝分れ又は枝分れしていない
場合によってハロゲン化されたC1〜C12-アルキル基であるか、又は場合によっ
て置換されたC6〜C14-アリール基又はヘテロアリール基であるか、又は二つは
共に基C=O又はC=Sである]から誘導される化合物である。更にR1又はR2
のいずれかは、更に水素基であることもできる。環は、アルキル基、アリール基
又はアルコキシ基によって場合によって置換することができる。特に、式(4)
におけるX'は、XがNである場合N又はCであり、XがS又はOである場合X'
はCである。
好ましいリガンドは、例えば1,1−(C1〜C6)-アルキル−1−(2−ピ
リジル)メタノール、1−(2−ピリジル)−シクロヘキサン−1−オール、1
,1−(C1〜C6)−パーフルオロアルキル−1−(2−ピリジル)メタノール
、1,1−(C1〜C6)−アルキル−1−(2−チオフェニル)メタノール、1
,1−(C1〜C6)−パーフルオロアルキル−1−(2−チオフェニル)メタノ
ール、1,1−(C1〜C6)-アルキル−1−(2−ピロリル)メタノール、1
,1−(C1〜C6)-アルキル−1−(2−イミダゾール)メタノール、及び1
,1−(C1〜C6)−パーフルオロアルキル−1−(2−イミダゾール)メタノ
ールである。
式(1)で表される錯体は、有機溶媒中において対応するリガンドと適当な先
駆物質とを反応させることによって調製される。
適当な先駆物質は、例えばモリブデニルアセチルアセトネートMoO2(acac)2
、又はバナジルアセチルアセトネートVO(aca-c)2のような市販されているオキ
ソアセチルアセトネートである。更に、オキソ−ジチオカルバメート、例えばモ
リブデニルビス(N,N−ジエチル−ジチオカルバメート)、酸化物のピリジル
及び/又はアセテート錯体、より高度の酸化物、例えば三酸化モリブデン、酸化
ルテニウム又は酸化バナジウム(V)、又は対応する酸及びそれらの塩を用いる
こともできる。
文献で説明されているRuO2(py)2(OAc)2は、対応するルテニウム錯体の
調製のための出発物質として好ましく用いられる(Inorg.Chem.1990,29,419
0〜4195)。いくつかの場合では、新しく調製された錯体は、他の新規な錯体の
ための先駆物質であることは、適当であると考えることができる。
先駆物質は、有機溶媒中で懸濁される。適当な有機溶媒は、好ましくは、例え
ばメタノール又はエタノールのような極性プロトン性溶媒であり、また例えばア
セトニトリル又はメチル第三ブチルエーテル(MTBE)のような非プロトン性
溶媒である。
次に、対応するリガンドを、撹拌しながら加える。用いられるリガンドの量は
、好ましくは、用いられる先駆物質の量の二倍である。リガンドは、化学量論量
未満又は化学量論量を超える量で用いることもできるが、コストのかかる精製プ
ロセスが、次にしばしば必要である。用いられる先駆物質が可溶性である場合、
一般的には、使用前に完全に溶解させる。
反応温度は、用いられる溶媒に左右され、−30℃ 〜 溶媒の沸点の範囲であ
り、好ましくは0℃ 〜 25℃である。反応の時間は、概して2 〜 300、好
ましくは3 〜 90分である。
反応後に、真空中で溶媒を取り除く。対応する錯体が沈殿する場合、それを濾
別し、用いた溶媒で洗浄する。形成された錯体が溶液のままである場合、この溶
液を蒸発乾固させ、その残留物を、用いた溶媒及び例えばn−アルカン又はジエ
チルエーテルのような非極性溶媒から再結晶させる。次に、この方法で精製した
錯体を高度の真空下で乾燥させる。
本発明にしたがう化合物は、大気酸素又は別の酸化剤の存在下で、選択的にオ
レフィンをエポキシ化することができ:それらは、酸化触媒として一般的に更に
適する。
更に、驚くべきことに、対応するモリブデン錯体、バナジウム錯体又はルテニ
ウム錯体を有機又は無機の支持体と反応させる場合、改良された触媒特性が得ら
れることが発見された。
したがって、本発明は、更に、空気又は酸素の存在下で、オレフィンの選択的
酸化のための不均質触媒に関するものでもある。
これらの触媒の成分は、上記式(1)の化合物である。
上記リガンドに加えて、文献に記載されたリガンドを、式Iの化合物を不均質
化するために用いることもでき、例えばアセチルアセトネート錯体MoO2(acac)2
のモリブデンに関して、又はRuO2(py)2(OAc)2のルテニウムに関して用い
ることもできる(Inorg.Chem.1990,24,4190〜95)。
適当な支持材は無機及び有機の支持体である。無機支持体としては、例えば以
下の群からの材料:すなわち、酸化アルミニウム、二酸化珪素、アルモシリケー
ト、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、二酸化トリウム、酸化ランタン、酸化
マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化錫、二酸化セリウム、酸化
亜鉛、酸化硼素、窒化硼素、炭化硼素、燐酸硼素、燐酸ジルコニウム、珪酸アル
ミニウム、窒化珪素及び炭化珪素がある。
適当な有機支持体は、遊離供与体の可能性を提供するすべてのポリマーであり
、すなわち例えばポリピリジン又はポリアクリレートのようなO基,N基又はS
基を有するポリマーである。
支持材は、式1の錯体の合成の開始時に、合成中に又は合成後に、特に式1の
化合物の合成後に加えることができる。式1の出発錯体は、ここでは、有機溶媒
又は水の中に溶かし、支持材を加え、その混合物を撹拌する。支持材/錯体(1
)の量の割合は、好ましくは1:1 − 1:1000、特に1:2 − 1:10
0である。
反応温度は、用いる溶媒に左右され、−30 ℃〜 溶媒の沸点の範囲である。
反応の時間は、概して1分 〜 24時間であり、好ましくは10分 〜 8時間で
ある。
反応後に、溶媒を濾別する。フィルター上にある得られた残留物を、その形態
で、又は真空中で乾燥後に、又は80 〜 300℃の温度で乾燥後に、用いるこ
とができる。
本発明にしたがう不均質触媒は、大気酸素によって選択的にオレフィンをエポ
キシ化することができる。
酸素のみが酸化剤として必要とされ、純粋な形態で又は大気酸素として又は例
えばCO2、N2、希ガス又はメタンのような不活性ガスで希釈した形態で用いる
ことができる。
更に、本発明は、触媒の存在下で、下式
で表されるアルケンを、大気酸素によって選択的にエポキシ化する方法に関する
ものでもある。用いる触媒は、下式(1)
MxOy(L)z (1)
で表される化合物である。
R1,R2,R3及びR4は、以下の意味を有する:すなわち、
R1,R2,R3及びR4は、互いに独立に、水素、C1〜C20-アルキル、C1
〜C12-アルコキシであり、又はR1及びR2は、一緒になって、5〜30個の炭
素原子、好ましくは5〜8個の炭素原子を有する環を形成する。
M及びL、及び指数x,y及びzは上述の意味を有する。
脂肪族の場合によって枝分かれしたC2〜C30-オレフィン及び脂環式C5〜C1 2
-オレフィン、好ましくは2〜12個の炭素原子を有する線状オレフィン、及び
5〜12個の炭素原子を有する環状オレフィンを、特に、オレフィンをエポキシ
化するための本発明にしたがう方法によって、選択的にエポキシ化する。
純粋な形態、あるいは例えばCO2,N2、希ガス又はメタンのような不活性ガ
スで希釈された形態であることができる酸素は、酸化剤として機能する。
顕著な酸化が触媒を添加しなくても既に起こっている酸化条件が選択され、こ
の場合には、エポキシド形成の選択率は低い。
エポキシ化反応を行うことができる温度は30〜500℃の範囲であり、圧力
は常圧〜200バールで変化させることができ、好ましくは100バール以下で
ある。温度/圧力の範囲は、温度も圧力もどちらも極端に高い値ではないように
、一般的に選択する。その理由は、これらの条件下では、反応が一層扱いにくく
なるからである。例えば、30〜300℃の温度及び常圧〜30バール
の圧力が、C6〜C12-アルケンを酸化するのに有利であることが分かった。また
、6個未満の炭素原子を有するアルケンのエポキシ化は、好ましくは、30〜1
00バールの圧力下で、120〜230℃のより低温で行う。反応は、酸化が常
に液相で起こるように行う。
本発明にしたがう不均質触媒を用いるオクテンのエポキシ化は、一般的に、3
0〜300℃で、好ましくは70〜130℃で行う。プロペンの場合では、温度
は、好ましくは100〜500℃、特に125〜230℃である。圧力は、20
〜200バール、特に35〜100バールであるべきである。
不均質触媒の場合及び均質触媒の場合の双方において、液相酸化は、純粋なオ
レフィン中で、又は酸化のために適当な溶媒中で希釈された状態で行う。可能な
適当な溶媒は、例えばクロロベンゼン、1−クロロ−4−ブロモベンゼン及びブ
ロモベンゼンのようなハロゲン化芳香族化合物、例えばクロロホルム、クロロプ
ロパノール、塩化メチレン、1,2−ジクロロメタン及びトリクロロエチレンの
ようなハロゲン化及び非ハロゲン化炭化水素、及び更にアルコール、特に例えば
エタノール、メタノール又はプロパノールのようなC1〜C12アルコールならび
により高級なアルコール及び水である。
酸化は、連続法又は回分法で行うことができる。触媒はバルク状で加えること
ができる。また触媒は、触媒反応中に、例えば先駆物質及びリガンドから、及び
不均質触媒を用いる場合には適当ならば対応する支持材から、その場で生成させ
ることもできる。反応は、触媒を基準として化学量論量の、例えばヒドロペルオ
キシド、過酸化水素又は過酸のような活性剤及び/又は例えばアゾビスイソブチ
ロニトルのような遊離基開始剤を加えることによって、更に促進することができ
る。
連続手順では、反応器における滞留時間が、60分未満、好ましくは1分未満
となるように、酸素は計量して供給する。回分法では、アルケンの転化が完了す
るまで、酸素を取り入れることができるが、アルケンの転化率が<50%となる
ような酸素の取り込みが好ましい。酸素の取り込みが>50%であると、転化率
は増大するが、選択率は低下する。その理由は、エポキシドの更なる酸化が増加
するからである。反応生成物は、例えば蒸留によって精製する。これは、連続手
順にも適合する。
エポキシドの収率は、式(1)の化合物を含む触媒を用いる本発明にしたがう
方法によって、従来技術に比べて有意に向上する。したがって、例えば>50%
のエポキシド収率が、オクト−1−エンの酸化において達成される。これまでに
知られている方法における最も高い収率は43.8%であった。これは、本発明
にしたがう方法によって、>2の触媒の影響を測定するための触媒指数(触媒反
応及び非触媒反応からのエポキシド選択率の比)が達成されていることを意味し
ている。
オレフィンのエポキシ化反応の選択率は、本発明にしたがう均質なバナジウム
及びモリブデンの遷移金属錯体の存在下で、40%を超えて、特に≦45%まで
増加し、また本発明にしたがうルテニウム遷移金属錯体を用いる場合、≧30%
まで増加する。特に、本発明にしたがうモリブデン及びバナジウム触媒を用いて
、≧50%の選択率で、オレフィンをエポキシ化することができ、また本発明に
したがうルテニウム触媒を用いる場合には、≧35%の選択率で、オレフィンを
エポキシ化することができる。
更に、触媒の影響は、触媒について記載した不均質化によってかなり増大する
ことが観察される。したがって、ポリピリジン上のMoO2(acac)2の場合、1,
2−エポキシオクタンについての選択率は49%まで増加するが、純粋なMoO2
(acac)2による均一な場合では、10〜35%であった。同様な効果は、対応す
るルテニウム化合物でも観察される。
一般的に、本発明にしたがう不均質ルテニウム錯体を、より高級なオレフィン
(≧C6)のエポキシ化で用いる場合、選択率≧35%、特に≧39%を達成する
ことができ、本発明にしたがう不均質モリブデン錯体を用いる場合には、選択率
≧45%、特に≧49%が達成される。
本発明にしたがう方法における酸化剤として用いられる酸素は、安価で市販さ
れており、またエポキシ化反応後に廃棄しなければならない還元副産物の生成を
排除する。
本発明にしたがう式(1)の化合物、及びこれらの化合物を含む触媒は、脂肪
族の場合によって枝分れしたC2〜C30-アルケン及び脂環式C5〜C12-アルケン
、好ましくは線状C2〜C30-アルケン及び脂環式C5〜C8-アルケン、特に好ま
しくはC2〜C12-アルケンを酸化するのに特に適している。しかしながら、より
長鎖又はより高級のアルケンのエポキシドも、本発明にしたがう錯体によって製
造することができる。オレフィンは、ここでは、更なるアルキル又はアルコキシ
によっても、又は芳香族基によっても置換することができる。
以下、実施例を掲げて、本発明を更に詳細に説明する。
実施例
以下のリガンドを調製した:
実施例1
L1:1,1−ジメチル−1−(2−ピリジル)メタノール
実施例2
L2:1,1−ジエチル−1−(2−ピリジル)メタノール
実施例3
L3:1,1−ジプロピル−1−(2−ピリジル)メタノール
実施例4
L4:1,1−ジイソプロピル−1−(2−ピリジル)メタノール
実施例5
L5:1,1−ジ−n−ブチル−1−(2−ピリジル)メタノール
実施例6
L6:1−(2−ピリジル)−シクロヘキサン−1−オール
実施例1〜6のためのリガンドの合成:
アルゴン下で、ブチルリチウム0.12モルを、メチル第三ブチルエーテル3
00mlに対して、ゆっくりと滴下して加え、−30℃まで冷却する。この操作
中に、温度は、−20℃を超えて上昇させるべきではない。メチル第三ブチルエ
ーテル75ml中に溶かした2−ブロモピリジン0.13モルを、エーテル含有
ブチルリチウム溶液に対してゆっくりと滴下して加える。その結果、オルガノリ
チウム化合物の赤色の溶液特性が生じる。メチル第三ブチルエーテル75ml中
に溶かした特定のカルボニル化合物(表1に列記した)0.15モルを、前記の
ようにして調製した暗赤色の明澄な溶液に対して滴下して加える。ここでも又、
温度は、−20℃を超えて上昇させるべきではない。その溶液を、−30℃で2
時間撹拌し、次に0℃までゆっくりと温める。引き続いて、少量の蒸留水で注意
深く加水分解する。その後で、その溶液を、室温まで温め、少量の濃度15%塩
酸と共に震盪することによって抽出する。水性相を、15%濃度の水酸化ナトリ
ウム溶液で中和し、メチル第三ブチルエーテルで抽出する。次に、エーテル相を
回転蒸発機で蒸発させる。所望の生成物が残り、それを、再結晶(固体生成物)
又は蒸留(液体生成物)によって精製する。
以下のモリブデン錯体を調製した:
実施例7:実施例1からのL1を有するMoO2(L1)2(シス−ジオキソ配
置)、収率:85%
δ=8.68(d),7.78(t),7.33(d),7.24(t),1
.8(d)
シス−ジオキソ配置:IR(KBr)ν(Mo=O)920(強い),905(
強い)cm-1
実施例8:実施例2からのL2を有するMoO2(L2)2、収率:79%
δ=8.74(d),7.76(t),7.28(d),7.23(t),
2.10(d),1.0(d)
実施例9:実施例3からのL3を有するMoO2(L3)2、収率:82%
δ=8.70(d),7.75(t),7.25(d),7.24(t),2
.05(d),1.6(d),1.0(d)
実施例10:実施例4からのL4を有するMoO2(L4)2、収率:75%
δ=8.73(d),7.72(t),7.27(d),7.22(t),2
.01(m),1.25(m)
実施例11:実施例5からのL5を有するMoO2(L5)2、収率:82%
δ=8.74(d),7.76(t),7.26(d),7.23(t),2
.01(m),1.65(m),1.25(m),0.8(m)
実施例12:実施例6からのL6を有するMoO2(L6)2、収率:82%
δ=8.71(d),7.72(t),7.29(d),7.24(t),2
.20(m),1.75(m),1.55(m)
実施例13:L7を有するMoO2(L7)2=ヒドロキシメチルチオフェン
(製造者:Aldrich)、収率:73%
δ=7.56(d),7.15(d),6.63(t),5.6(s)
モリブデン錯体は以下のようにして調製する:
モリブデンジオキソジアセチルアセトネート1.5g(4.5ミリモル)を、
乾燥メタノール100ml中に懸濁させる。その混合物を15分間撹拌してから
、特定のリガンド9ミリモルを加える。溶液が透明になるまで、その溶液を撹拌
する。錯体が沈殿し始めるまで、室温でメタノールを除去する。溶媒をほとんど
乾燥するまで除去してから、錯体を濾別し、氷冷メタノールで洗浄する。
実施例14
実施例1からのLを有するVO2(L1)2
バナジル(IV)アセチルアセトネート1gを、乾燥テトラヒドロフラン10
0ml中に溶かす。次に、実施例1からのリガンド0.85mlを加える。その
混合物を室温で2時間撹拌してから、溶媒を除去する。沈殿した錯体を氷冷メチ
ル第三ブチルエーテル(MTBE)で洗浄し、その洗浄溶液をガラスフィルター
で除去する。次に、高度の真空下で、錯体を乾燥させる。
収率:65%
δ=8.68(d),7.71(t),7.20(d),7.15(dd),
1.9(d)
実施例15
錯体RuO2(Pic)2[式中、Pic=ピリジン−2−カルボン酸](製造者:Rie
del de Haen)
RuO2(Ac)2(Py)2[式中、Ac=アセテート及びPy =ピリジン]1gを、
アルゴン下に置き、乾燥アセトニトリル100ml中に懸濁させる。沈殿物を有
する暗褐色溶液が生じる。次に、ピコリン酸600mgを加える。2分後、黄土
色の沈殿が分離し、カニューレで溶液を除去し、沈殿を、ガラスフリットを用い
て吸引しながら濾別し、氷冷メタノールで洗浄する。その沈殿を、12時間、高
度の真空下で乾燥させる。
収率:225mg(22%);
1H-NMR(CDCl3)δ=7.58(d),7.98(t),8.28(t
),8.61(d)ppm
実施例16
L1として1,1−ジメチル−1−(2−ピリジル)メタノールを有するRu
O2(L1)2
錯体RuO2(Ac)2(Py)2 1gを、アルゴン下に置き、乾燥アセトニトリ
ル100ml中に懸濁させる。沈殿物を有する暗褐色溶液が生じる。次に、その
溶液を−15℃まで冷却し、リガンド0.550mlを加える。その混合物を1
時間撹拌し、溶媒を−15℃で除去する。その錯体を氷冷アセトニトリルで洗浄
することによって精製し、その洗浄溶液を、ガラスフィルターを用いているカニ
ューレで除去する。次に、その錯体を高度の真空下で乾燥させる。
収率:233mg(24%);
1H-NMR(CDCl3)δ=1.58(s),7.62(dd),7.82(
d),8.21(t),9.21(d)
比較実施例1:オクト−1−エンの自動酸化:
オクト−1−エン2.0ml(12.6ミリモル)を、100℃に温度調節し
た10ml反応器の中に入れる。その装置をO2でパージし、純粋なO2雰囲気(
1バール)で満たす。6時間後、O2の取り込みは10ml(0.45ミリモル
)である。次に、装置を冷却し、ヘプタン(外部GC標準)を正確に50μl取
って、反応溶液1mlに加え、その溶液を、ガスクロマトグラフィーで分析する
。1,2−エポキシオクタンに関する選択率は21%である。
比較実施例2:オクト−1−エンの酸化、触媒:MoO2(acac)2:
オクト−1−エン2.0ml(12.6ミリモル)及びMoO2(acac)254m
g(120マイクロモル)を、100℃に温度調節した10ml反応器の中に入
れる。その装置をO2でパージし、純粋なO2雰囲気(1バール)で満たす。15
0分後、O2の取り込みは10mlである。冷却することによって反応を中断さ
せ、ヘプタン(外部;GC標準)を正確に50μl取って、反応溶液1mlに対
して加え、その溶液を、ガスクロマトグラフィーで分析する。
1,2−エポキシオクタンに関する選択率:7%
触媒指数:0.30
触媒指数は、この実施例の触媒反応のエポキシドの選択率の、比較実施例1の
非触媒反応のエポキシドの選択率に対する割合として規定される。
実施例17
オクト−1−エンの酸化、触媒 RuO2(pic)2
オクト−1−エン2.0ml(12.6ミリモル)及びRuO2(pic)2120
マイクロモルを、100℃に温度調節した10ml反応器の中に入れる。その装
置をO2でパージし、O2雰囲気(1バール)で満たす。265分以内における1
0mlのO2の取り込みの後、冷却することによって反応を中断させ、ヘプタン
(外部GC標準)50μlを、反応溶液1mlに対して加える。ガスクロマトグ
ラフィーで分析すると、1,2−エポキシオクタンに関する選択率は32%であ
る。
実施例18
オクト−1−エンの酸化、触媒RuO2(L1)2
オクト−1−エン2.0ml(12.6ミリモル)及びRuO2(L1)2120
マイクロモルを、100℃に温度調節した10ml反応器の中に入れる。その装
置をO2でパージし、O2雰囲気(1バール)で満たす。220分以内における1
0mlのO2の取り込みの後、冷却することによって反応を中断させ、ヘプタン
(外部GC標準)50μlを、反応溶液1mlに対して加える。ガスクロマトグ
ラフィーで分析すると、1,2−エポキシオクタンに関する選択率は36%であ
る。
実施例19
プロペンの酸化、触媒RuO2(L1)2
RuO2(L1)218mgを、200mlオートクレーブにおいてクロロベンゼ
ン20ml中に溶かし、プロペン25gを−20℃で縮合させる。その反応混合
物を150℃にし、その温度で空気15バールを圧し入れ、その混合物を10分
間撹拌する。その後で、反応を中断させ、ガスサンプル及び液体サンプルを20
℃で取り出し、双方ともに、ガスクロマトグラフィーによって分析する。酸化プ
ロペンに関する選択率は、O2転化率55%において15%である。
実施例20〜32:オクト−1−エンの酸化(表1):
オクト−1−エン2.0ml(12.6ミリモル)及び各場合において触媒1
20マイクロモルを、100℃に温度調節した10ml反応器の中に入れる。そ
の装置をO2でパージし、純粋なO2雰囲気(1バール)で満たす。O2 10ml
の取り込みにかかった時間を測定し、冷却することによって反応を中断させる。
ヘプタン(外部GC標準)50μlを、反応溶液1mlに対して正確に加え、そ
の溶液を、ガスクロマトグラフィーで分析する。表1には、用いた触媒が実施例
に対して割り当てられており、O210mlの取り込みにかかった時間、エポキ
シド選択率、及び比較実施例2で規定した触媒指数が列記されている。
実施例33:オクト−1−エンの酸化、より長時間のO2の取り込み
オクト−1−エン2.0ml(12.6ミリモル)及びMoO2(L2)245m
g(120マイクロモル)を、100℃に温度調節した10ml反応器の中に入
れる。その装置をO2でパージし、純粋なO2雰囲気(1バール)で満たす。36
0分後、O2の取り込みは35mlである。冷却することによって反応を中断さ
せ、ヘプタン(外部GC標準)50μlを反応溶液1mlに対して正確に加え、
その溶液をガスクロマトグラフィーで分析する。
1,2−エポキシオクタンに関する選択率:55%
触媒指数:2.63
この実施例から、エポキシドの選択率は、転化率(酸素の取り込み;実施例2
1と比較)とは無関係であることが理解できる。
実施例34:オクト−1−エンの酸化、第三ブチルヒドロペルオキシドによ
る活性化:
オクト−1−エン2.0ml(12.6ミリモル)、MoO2(L2)2 45mg
(120マイクロモル)及び水中70%濃度第三ブチルヒドロペルオキシド溶液
を、100℃に温度調節した10ml反応器の中に入れる。その装置をO2でパ
ージし、純粋なO2雰囲気(1バール)で満たす。120分後、O2の取り込みは
10mlである。冷却することによって反応を中断させ、ヘプタン(外部GC標
準)50μlを反応溶液1mlに対して正確に加え、その溶液をガスクロマトグ
ラフィーで分析する。
1,2−エポキシオクタンに関する選択率:53%
触媒指数:2.53
ほぼ(触媒を基準とした)化学量論量のヒドロペルオキシドを加えることによ
って、反応を促進できることは明らかである(実施例21と比較)。
実施例35:プロペンの酸化:
MoO2(L1)2 18mgを、200mlオートクレーブにおいてクロロベンゼ
ン20ml中に溶かし、プロペン15gを−20℃で縮合させる。その反応混合
物を180℃にし、その温度で空気15バールを圧し入れ、その混合物を10分
間撹拌する。次に、冷却することによって反応を中断させ、ガスサンプル及び液
体サンプルを20℃で取り出し、双方ともに、ガスクロマトグラフィーで分析す
る。酸化プロペンに関する選択率は、O2転化率85%において、21%である
。
実施例36
MoO2(acac)2とポリピリジン RReillex 402 との反応
MoO2(acac)2200mg及びポリピリジン RReillex 402 900mgを、2
5℃において4時間、アセトニトリル30ml中で撹拌する。次に、反応混合物
を濾過し、残留物を塩化メチレンで洗浄し、真空中で乾燥させる。この形態で触
媒として用いられるベージュ色の物質930mgが得られる。
実施例37
RuO2(OAc)2(Py)2とポリピリジン RReillex 402 との反応
RuO2(OAc)2(Py)2[Inorg.Chem.1990,29,4190〜4195 にしたがって調
製した]200mg及びポリピリジン RReillex 402 1.8gを、25℃におい
て4時間、アセトニトリル30ml中で撹拌する。次に、その反応混合物を濾過
し、残留物を塩化メチレンで洗浄し、真空中で乾燥させる。この形態で触媒とし
て用いられる緑色物質2.0gが得られる。
実施例38
RuO2(OAc)2(Py)2と酸化アルミニウムとの反応
RuO2(OAc)2(Py)2[Inorg.Chem.1990,29,4190〜4195 にしたがって調
製した]2.5gをアセトニトリル30ml中に溶かし、次に、典型的な表面積
20 〜 40m2/gを有する市販の酸化アルミニウム9gを加える。その混合物を
室温で4時間、撹拌する。その後、固形分を吸引しながら濾別し、塩化メチレン
で洗浄し、フリット上にある残留物を真空中で乾燥させる。この形態で触媒とし
て用いられる淡褐色の物質10.2gが得られる。
実施例39
RuO2(OAc)2(Py)2と二酸化珪素との反応
RuO2(OAc)2(Py)2[Inorg.Chem.1990,29,4190〜4195 にしたがって調
製した]2.5gをアセトニトリル30ml中に溶かし、多孔質珪藻土9gを加
える。その混合物を室温で4時間、撹拌する。その後で、固形物を吸引しながら
濾別し、塩化メチレンで洗浄し、フリット上にある残留物を真空中で乾燥させる
。この形態で触媒として用いられる淡褐色物質9.8gが得られる。
実施例40
オクト−1−エンの酸化、実施例36からの触媒
オクト−1−エン2.0ml(12.6ミリモル)及び実施例1からの触媒物
質200mgを、100℃に温度調節した10ml反応器(隔壁、還流凝縮器・
ガスビュレット)の中に入れる。その装置をO2でパージし、純粋なO2雰囲気(
1バール)で満たす。190分後、O2を10ml取り込んだ後で、冷却するこ
とによって反応を中断させ、ヘプタン(外部GC標準)50μlを反応溶液1m
lに対して正確に加える。その溶液をガスクロマトグラフィーで分析すると、1
,2−エポキシオクタンに関する選択率は49%である。
実施例41
オクト−1−エンの酸化、実施例37からの触媒
オクト−1−エン2.0ml(12.6ミリモル)及び実施例2からの触媒物
質200mgを、100℃に温度調節した10ml反応器(隔壁、還流凝縮器・
ガスビュレット)の中に入れる。その装置をO2でパージし、純粋なO2雰囲気(
1バール)で満たす。190分後、O2を10ml取り込んだ後で、冷却するこ
とによって反応を中断させ、ヘプタン(外部GC標準)50μlを反応溶液1m
lに対して正確に加える。その溶液をガスクロマトグラフィーで分析すると、1
,2−エポキシオクタンに関する選択率は45%である。
実施例42
オクト−1−エンの酸化、実施例38からの触媒
オクト−1−エン2.0ml(12.6ミリモル)及び実施例3からの触媒物
質200mgを、100℃に温度調節した10ml反応器(隔壁、還流凝縮器・
ガスビュレット)の中に入れる。その装置をO2でパージし、純粋なO2雰囲気(
1バール)で満たす。90分後、O2を10ml取り込んだ後で、冷却すること
によって反応を中断させ、ヘプタン(外部GC標準)50μlを反応溶液1ml
に対して正確に加える。その溶液をガスクロマトグラフィーで分析すると、1,
2−エポキシオクタンに関する選択率は39%である。
実施例43
オクト−1−エンの酸化、実施例39からの触媒
オクト−1−エン2.0ml(12.6ミリモル)及び実施例4からの触媒物
質200mgを、100℃に温度調節した10ml反応器(隔壁、還流凝縮器・
ガスビュレット)の中に入れる。その装置をO2でパージし、純粋なO2雰囲気(
1バール)で満たす。100分後、O2を10ml取り込んだ後で、冷却するこ
とによって反応を中断させ、ヘプタン(外部GC標準)50μlを反応溶液1m
lに対して正確に加える。その溶液をガスクロマトグラフィーで分析すると、1
,2−エポキシオクタンに関する選択率は39%である。
実施例44:
プロペンの酸化、実施例39からの触媒
クロロベンゼン20ml中実施例4からの触媒200mgを、200mlオー
トクレーブ中に入れ、プロペン25gを−20℃で縮合させる。その反応混合物
を150℃にし、その温度で空気15バールを圧し入れ、その混合物を10分間
撹拌する。その後で、冷却することによって反応を中断させ、ガスサンプル及び
液体サンプルを20℃で取り出し、双方ともに、ガスクロマトグラフィーで分析
する。酸化プロペンに関する選択率は、25%である。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】1997年2月4日
【補正内容】
『 請求の範囲
1.アルケンの選択的エポキシ化のための触媒としての下式(1)
MxOy(L)z (1)
{式中、指数x,y及びzは以下の意味を有する:すなわち、
xは1 〜 3の整数であり、yは1 〜 2x + 1の整数であり、yは、x
+ zの合計が+6の金属酸化数を与えるように選択され;zは2 〜 2xの範
囲の整数であり;
Mはルテニウム又はモリブデンであり、
LはN,O又はS供与体リガンドであり、
ただし、特にMがモリブデンである場合には、Lは下式(2),(3)又は(4
)
[式中、XはN(窒素)、O(酸素)又はS(硫黄)及びX'はN(窒素)又は
C(炭素)であり、及び
R1及びR2は、互いに独立に、枝分れ又は枝分れしていない、場合によってハ
ロゲン化されたC1〜C12-アルキル基であるか、又は場合によって置換されたC6
〜C14-アリール基であるか又はヘテロアリール基であるか、又は二つは共に基
C=O又はC=Sであり、あるいはR1又はR2は水素基である]の化合物から誘
導される化合物であり、モリブデン化合物を用いる場合、エポキシ化反応におけ
る選択率は45%を超える}
で表される化合物。
2.無機又は有機の支持材と、下式(1)
MxOy(L)z (1)
{式中、指数x,y及びzは以下の意味を有する:すなわち、
xは1 〜 3の整数であり、yは1 〜 2x + 1の整数であり、yは、x
+ zの合計が+6の金属酸化数を与えるように選択され;zは2 〜 2xの範
囲の整数であり;
Mはルテニウム又はモリブデンであり、
LはN,O又はS供与体リガンドであり、
ただし特にMがモリブデンである場合には、Lは下式(2),(3)又は(4)
[式中、XはN(窒素)、O(酸素)又はS(硫黄)及びX'はN(窒素)又は
C(炭素)であり、及び
R1及びR2は、互いに独立に、枝分れ又は枝分れしていない、場合によってハ
ロゲン化されたC1〜C12-アルキル基であるか、又は場合によって置換されたC6
〜C14-アリール基であるか又はヘテロアリール基であるか、又は二つは共に基
C=O又はC=Sであり、あるいはR1又はR2は水素基である]の化合物から誘
導される化合物であり、モリブデン化合物を用いる場合、オレフィンの酸化にお
ける選択率は45%を超える}
で表される化合物とを含む、酸素の存在下でオレフィンを選択的に酸化するため
の不均質触媒。
3.式(1)で表される錯体が、有機溶媒中で易溶性である請求項1記載の化
合物。
4.RuO2(py)2(OAc)2を、式(1)で表される化合物として用いる請求
項2記載の触媒。
5.用いられる無機又は有機の支持材が:酸化アルミニウム、二酸化珪素、ア
ルモシリケート、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、二酸化トリウム、酸化ラ
ンタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化錫、二酸化セ
リウム、酸化亜鉛、酸化硼素、窒化硼素、炭化硼素、燐酸硼素、燐酸ジルコニウ
ム、窒化珪素又は炭化珪素又はポリピリジン又はポリアクリレートから成る群よ
り選択される材料である請求項2記載の触媒。
6.アルケンのエポキシ化における選択率が、Mがルテニウムである場合、≧
30%である請求項1記載の化合物。
7.下式
で表されるアルケンを、下式(1)
MxOy(L)z (1)
{上記式中、R1,R2,R3,R4,M,L,x,y及びzは、以下の意味を有す
る:すなわち、
R1,R2,R3及びR4は、互いに独立に、水素、C1〜C20-アルキル、C1
〜C12-アルコキシ又はC6〜C10-アリールであり、又はR1及びR2は、一緒に
なって5 〜 30個の炭素原子を有する環を形成する;
指数x,y及びzは以下の意味を有する:すなわち、
xは1 〜 3の整数であり、yは1 〜 2x + 1の整数であり、 yは
、x + zの合計が+6の金属酸化レベルを与えるように選択され;zは2 〜
2xの範囲の整数であり;
Mはルテニウム又はモリブデンであり、及び
Lは供与体リガンドであり、
ただし特にMがモリブデンである場合には、Lは下式(2),(3)又は(4)
[式中、XはN(窒素)、O(酸素)又はS(硫黄)及びX'はN(窒素)又は
C(炭素)であり、及び
R1及びR2は、互いに独立に、枝分れ又は枝分れしていない、場合によってハ
ロゲン化されたC1〜C12-アルキル基であるか、又は場合によって置換されたC6
〜C14-アリール基であるか又はヘテロアリール基であるか、又は二つは共に基
C=O又はC=Sであり、あるいはR1又はR2は水素基である]の化合物から誘
導される化合物であり、モリブデン化合物を用いる場合、反応における選択率は
≧40%である}
で表される触媒の存在下で、大気酸素によって選択的にエポキシ化するための方
法。
8.1,1−(C1〜C6)-アルキル−1−(2−ピリジル)メタノール、1
−(2−ピリジル)−シクロヘキサン−1−オール、1−フェニル−1−(2−
ピリジル)メタノール、1,1−(C1〜C6)-アルキル−1−(2−チオフェ
ニル)メタノール、1,1−(C1〜C6)−パーフルオロアルキル−1−(2−
チオフェニル)メタノール、1,1−(C1〜C6)−アルキル−1−(2−ピロ
リル)メタノール、1,1−(C1〜C6)−アルキル−1−(2−イミダゾール
)メタノール、1,1−(C1〜C6)−パーフルオロアルキル−1−(2−イミ
ダゾール)メタノールから誘導される化合物を、供与体リガンドとして用いる請
求項7記載の方法。
9.脂肪族の場合によって枝分れしたC2〜C30-オレフィン又は脂環式C5〜
C12-オレフィンを、エポキシ化する請求項7記載の方法。
10.酸化剤として用いる酸素を、純粋な形態で用いるか、又は不活性ガスで
希釈する請求項7記載の方法。
11.反応温度が、C6〜C12-アルケンの酸化中30 〜 300℃であり、
C2〜C5-アルケンの酸化中120 〜 230℃であり、且つ圧力を、反応が液
相中で進行するように選択する請求項7記載の方法。
12.酸化を、純粋なオレフィン中で溶媒を用いずに行う請求項7記載の方法
。
13.酸化を、ハロゲン化芳香族化合物、ハロゲン化又は非ハロゲン化炭化水
素、C1〜C12-アルコールから成る群より選択される溶媒中で、又は水中で行う
請求項7記載の方法。
14.反応の選択率が、Mがルテニウムの場合、≧30%である請求項7記載
の方法。』
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フロントページの続き
(31)優先権主張番号 P4447233.1
(32)優先日 1994年12月30日
(33)優先権主張国 ドイツ(DE)
(31)優先権主張番号 19536076.1
(32)優先日 1995年9月28日
(33)優先権主張国 ドイツ(DE)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),CA,JP,US
(72)発明者 ヘルマン,ヴォルフガング・アントン
ドイツ連邦共和国デー−85354 フライジ
ング,ガルテンシュトラーセ 69