JPH1147264A - 抗菌性付与抗血栓性組成物および医療用器具 - Google Patents

抗菌性付与抗血栓性組成物および医療用器具

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JPH1147264A
JPH1147264A JP9209267A JP20926797A JPH1147264A JP H1147264 A JPH1147264 A JP H1147264A JP 9209267 A JP9209267 A JP 9209267A JP 20926797 A JP20926797 A JP 20926797A JP H1147264 A JPH1147264 A JP H1147264A
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JP
Japan
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antibacterial
antithrombotic
extract
film
composition
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JP9209267A
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English (en)
Inventor
Hideyuki Yokota
英之 横田
Masahiro Seko
政弘 世古
Noriko Kadota
典子 門田
Kana Arimori
奏 有森
Masakazu Tanaka
昌和 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyobo Co Ltd
Original Assignee
Toyobo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡便性、汎用性に加えて、長期間にわたり優
れた抗血栓性を発揮することが可能な抗菌性付与抗血栓
性組成物および医療用器具を提供する。 【解決手段】 1種以上のムコ多糖類と第4級ホスホニ
ウムのイオン性複合体から成る脂溶化ムコ多糖および有
機高分子材料を必須成分とする抗菌性付与抗血栓性組成
物であって、該抗菌性付与抗血栓性組成物をガラスビー
ズ上にコーティグせしめて、あるいはフイルムにして、
あるいは成形体に被覆せしめた後、表面積6cm2 に対
して生理食塩水1mlの割合で50℃、72時間の抽出
を行なった際、抽出液中に遊離するリン濃度が0.1〜
20ppmである抗菌性付与抗血栓性組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、長期間にわたり優れた
抗血栓性が維持されるような抗菌性付与抗血栓性組成物
に関する。さらに詳細には、(a)ムコ多糖類と第4級
ホスホニウムのイオン性複合体から成る脂溶化ムコ多糖
および(b)有機高分子材料を必須成分とする抗菌性付
与抗血栓性組成物であって、該抗菌性付与抗血栓性組成
物をガラスビーズ上にコーティングせしめた後、該ガラ
スビーズの表面積6cm2 に対して生理食塩水を1ml
の割合で抽出液として用いて、もしくは該抗菌性付与抗
血栓性組成物を厚さ70〜100μmのフイルムにした
後、該フイルムの表面積6cm2 に対して生理食塩水を
1mlの割合で抽出液として用いて、もしくは抗菌性付
与抗血栓性組成物により被覆されてなる成形体の表面積
6cm2 に対して生理食塩水を1mlの割合で抽出液と
して用いて、50℃、72時間の抽出を行なった際の抽
出液中に遊離するリンの濃度が0.1〜20ppmであ
ることを特徴とする抗菌性付与抗血栓性組成物、ならび
に上記抗菌性付与抗血栓性組成物により少なくとも表面
が被覆されて成る医療用器具であって、該医療用器具の
表面積6cm2 に対して生理食塩水を1mlの割合で抽
出液として用いて50℃、72時間の抽出を行なった際
の抽出液中に遊離するリンの濃度が0.1〜20ppm
であることを特徴とする医療用器具に関する。
【0002】
【従来の技術】加工性、弾性、可撓性に優れた人工材料
は、近年医療用材料として広く利用されるようになって
きているが、人工腎臓、人工肺、補助循環装置、人工血
管等の人工臓器や、注射器、血液バッグ、心臓カテーテ
ル等のディスポーザブル製品として今後ますます利用が
拡大することが予想される。これらの医用材料として
は、充分な機械的強度や耐久性に加えて、生体に対する
安全性、特に血液と接触した場合に血液が凝固しないこ
と、すなわち抗血栓性が要求される。
【0003】従来、医療用材料に抗血栓性を付与する手
法としては、(1)材料表面にヘパリン等のムコ多糖類
やウロキナーゼ等の線溶活性因子を固定させたもの、
(2)材料表面を修飾して陰電荷や親水性などを付与し
たもの、(3)材料表面を不活性化したものの3通りに
大別できる。このうち(1)の方法(以下、表面ヘパリ
ン法と略記する)は、さらに(A)ポリマーと脂溶化し
たヘパリンのブレンド法、(B)脂溶化したヘパリンで
の材料表面被覆法、(C)材料中のカチオン性基にヘパ
リンをイオン結合させる方法、(D)材料とヘパリンを
共有結合させる方法に細分類される。
【0004】上記の方法のうち(2)、(3)の方法
は、長期的に体液と接触した場合には材料表面にタンパ
クが吸着して生体膜類似表面を形成して、安定した抗血
栓性を得ることが可能である。しかし、材料を生体内
(血液接触部位)に導入した初期段階では、生体内にお
いて種々の凝固因子等が活性化された状態にあるため、
ヘパリン投与などの抗凝血療法を施すことなしに充分な
抗血栓性を得るのは困難である。
【0005】これに対して(1)は、導入初期段階には
表面上のヘパリンやウロキナーゼによって抗血栓性、ま
たは生成した血栓の溶解性能が発揮されるが、長期間の
使用によって一般的に性能が低下する傾向にある。すな
わち、(A)(B)、(C)では、通常生理条件下での
長期の使用によってヘパリン類が脱離し易く、生体内に
固定して用いる医療用材料としては充分な性能が得られ
にくい。(D)で得られる材料では、ヘパリンが共有結
合されているため脱離しにくいという利点を有するが、
従来の結合方法では往々にしてヘパリン構成成分である
D−グルコサミンやD−グルクロン酸のコンフォメーシ
ョンに変化を与えてしまい、抗凝血効果を低下させてし
まうという欠点がある。
【0006】また(C)、(D)の方法では、ヘパリン
の固定化に利用できる官能基を含む材料を選択するか、
あるいは新たに導入する必要がある。このため、材料の
選択の幅が狭められたり、官能基の導入によって材料の
機械的強度が低下したりする可能性がある。また、操作
の煩雑化によって医療用材料を得る工程数が増加すると
いう問題もある。
【0007】このように材料の抗血栓化の容易さ、適用
できる材料の選択の幅の広さから考えると、(A)ポリ
マーと脂溶化したヘパリンのブレンド法、もしくは
(B)脂溶化したヘパリンでの材料表面被覆法が最も優
れた方法であると言える。しかしながら、この方法の致
命的な欠点は既述の通り、生理条件下での長期の使用に
よってヘパリン類が脱離し易いという点である。逆に言
えば、この欠点を克服することによって簡便性、汎用性
に富む優れた抗血栓化を提供することが可能になる。
【0008】この問題を解決する手段として、特開平2
−270823に開示されている方法がある。この方法
は天然ムコ多糖類と天然脂質もしくは合成脂質との複合
体を形成させることを特徴としており、ヘパリンと生体
内リン脂質の複合体で材料表面を被覆する技術が好まし
い例として挙げられている。
【0009】しかしながらこの方法は、ヘパリン溶出に
伴って同時に溶出されるカチオン性物質(脂溶化剤)が
天然脂質もしくは合成脂質であるため、生体に悪影響を
及ぼしにくいという点においてのみ有用であると言え
る。すなわち、この方法によって長期間使用時のヘパリ
ンの溶出による抗凝血性の低下が解決されたとは言い難
い。
【0010】また、高栄養輸液カテーテル(以下IVH
と略記する)など、長期間体内に留置する必要のある医
用デバイスでは、生体−材料界面からの感染が問題であ
った。血液と材料の接触によって生成した血栓に細菌が
繁殖し、これが体内に入り込んで感染を引き起こす。し
たがって、このような医用デバイスに使用される材料に
は抗血栓性と抗菌性を同時に併せ持つことが必要であ
る。このような抗菌性付与抗血栓性素材が強く望まれて
いたにもかかわらず、この分野に応用可能な素材はほと
んど報告されていないのが現状である。
【0011】一方、抗菌性材料に関しては種々の技術が
報告されている。抗菌剤としてアンモニウム塩を含有す
る抗菌性材料については、例えば特公平4−2530
1、特公平3−64143に、ビグアニドを含有する抗
菌性材料に関しては、例えば特公平5−80225、特
公平2−61261、特公平3−10341に、またア
クリジン化合物を含有する抗菌性材料については、例え
ば特公平3−76343などによって開示されている。
【0012】また、特開平7−82511、特開平7−
53316、特開平4−266912、特開平5−31
0820などにはホスホニウム塩を含有する抗菌性材料
について開示されている。さらに、特公平6−5589
2にはプロテイン銀を抗菌有効成分として含有する抗菌
性材料が開示されている。
【0013】これらの技術では、優れた抗菌性を発揮す
るための検討は行われているものの抗血栓性に対する配
慮がなされていないため、長期留置用医用デバイス等に
応用可能な抗菌性を付与された抗血栓性を有する素材と
して利用するのは困難である。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来技術
の欠点を解決し、簡便性、汎用性に加え長期間の抗血栓
性を発揮することが可能であると同時に、優れた抗菌性
をも発揮する抗菌性付与抗血栓性組成物および医療用器
具を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題に
鑑み、鋭意検討した結果、所定の条件において生理食塩
水を抽出液とした際に該抽出液中に遊離されるリンの濃
度が特定の範囲を有している組成物が特に抗血栓性に優
れることを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明
は、以下のような構成を有する。 (1)下記(a)および(b)を必須成分とする抗菌性
付与抗血栓性組成物であって、該抗菌性付与抗血栓性組
成物をガラスビーズ上にコーティングせしめた後、該ガ
ラスビーズの表面積6cm2 に対して生理食塩水を1m
lの割合で抽出液として用いて50℃、72時間の抽出
を行なった際の抽出液中に遊離するリンの濃度が0.1
〜20ppmであることを特徴とする抗菌性付与抗血栓
性組成物 (a)少なくとも1種のムコ多糖類および第4級ホスホ
ニウムのイオン性複合体から成る脂溶化ムコ多糖 (b)有機高分子材料 (2)上記(a)および(b)を必須成分とする抗菌性
付与抗血栓性組成物であって、該抗菌性付与抗血栓性組
成物を厚さ70〜100μmのフイルムにした後、該フ
イルムの表面積6cm2 に対して生理食塩水を1mlの
割合で抽出液として用いて50℃、72時間の抽出を行
なった際の抽出液中に遊離するリンの濃度が0.1〜2
0ppmであることを特徴とする抗菌性付与抗血栓性組
成物 (3)上記(a)および(b)を必須成分とする抗菌性
付与抗血栓性組成物であって、該抗菌性付与抗血栓性組
成物により被覆されてなる成形体の表面積6cm 2 に対
して生理食塩水を1mlの割合で抽出液として用いて5
0℃、72時間の抽出を行なった際の抽出液中に遊離す
るリンの濃度が0.1〜20ppmであることを特徴と
する抗菌性付与抗血栓性組成物 (4)ムコ多糖類として少なくともヘパリンもしくはヘ
パリン金属塩が含有される上記抗菌性付与抗血栓性組成
物 (5)第4級ホスホニウムが下記式[1]の構造である
上記抗菌性付与抗血栓性組成物 (6)有機高分子材料としてポリウレタンを必須成分と
する上記抗菌性付与抗血栓性組成物 (7)ポリウレタンが脂肪族系ポリウレタンおよび芳香
族系ポリウレタンがブレンドされてなる上記抗菌性付与
抗血栓性組成物 (8)上記抗菌性付与抗血栓性組成物により少なくとも
表面が被覆されて成る医療用器具であって、該医療用器
具の表面積6cm2 に対して生理食塩水を1mlの割合
で抽出液として用いて50℃、72時間の抽出を行なっ
た際の抽出液中に遊離するリンの濃度が0.1〜20p
pmであることを特徴とする医療用器具
【0016】
【化2】
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の抗菌性付与抗血栓性組成
物の必須成分である第4級ホスホニウムは上記式[1]
の構造を有することが好ましい。本発明においては、第
4級ホスホニウムは1種類だけ使用しても、あるいは何
種類かを同時に使用してもよい。第4級ホスホニウムの
リン原子に結合する4つの炭化水素鎖のうち、一つは炭
素数1〜25のアルキル基であり、好ましくは3〜2
0、さらに好ましくは6〜20のアルキル基である。他
の3つの炭化水素鎖は、炭素数1〜12、好ましくは1
〜8のアルキル基、または炭素数6〜12、好ましくは
6〜10のアリール基、または炭素数7〜20、好まし
くは7〜12のアラルキル基である。
【0018】上記第4級ホスホニウムの具体例として
は、トリブチルラウリルホスホニウム、トリブチルミリ
スチルホスホニウム、トリブチルセチルホスホニウム、
トリブチルステアリルホスホニウム、トリフェニルラウ
リルホスホニウム、トリフェニルミリスチルホスホニウ
ム、トリフェニルセチルホスホニウム、トリフェニルス
テアリルホスホニウム、ベンジルジメチルラウリルホス
ホニウム、ベンジルジメチルミリスチルホスホニウム、
ベンジルジメチルセチルホスホニウム、ベンジルジメチ
ルステアリルホスホニウムなどが例示されるが、式
[1]によって示される構造の化合物であれば、特にこ
れらに限定されない。
【0019】また、本発明の抗菌性付与抗血栓性組成物
はムコ多糖類も必須成分とする。ムコ多糖類としてはヘ
パリン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、デルマタ
ン硫酸、ケラタン硫酸およびこれらの金属塩等が挙げら
れるが、なかでもヘパリンもしくはヘパリン金属塩が特
に好ましい。
【0020】ムコ多糖類と第4級ホスホニウムとのイオ
ン性複合体(以下脂溶化ムコ多糖という)を得る方法は
特に限定されないが、例えばムコ多糖類の水溶液もしく
は水分散液と、第4級ホスホニウム塩の水溶液もしくは
水分散液を混合し、得られた沈澱を回収、凍結乾燥する
方法などが挙げられる。この際に使用する水に替えて、
弱酸性緩衝液を使用することも可能である。
【0021】上記緩衝液に使用される溶質としては、例
えば2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸、ピペラ
ジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)、N−
(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸、
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエ
タンスルホン酸、3−(N−モルホリノ)プロパンスル
ホン酸、3−(N−モルホリノ)−2−ヒドロキシプロ
パンスルホン酸、2−[4−(2−ヒドロキシエチル)
−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸が好ましく、特
に好ましくは2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸
(以下MESと略記する)、ピペラジン−1,4−ビス
(2−エタンスルホン酸)(以下PIPESと略記す
る)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(以
下MOPSと略記する)である。
【0022】本発明における抗菌性付与抗血栓性組成物
は、該抗菌性付与抗血栓性組成物をガラスビーズ上にコ
ーティングせしめた後、該ガラスビーズの表面積6cm
2 に対して生理食塩水を1mlの割合で抽出液として用
いて、もしくは厚さ70〜100μmのフイルムにした
後、該フイルムの表面積6cm2 に対して生理食塩水を
1mlの割合で抽出液として用いて、もしくは抗菌性付
与抗血栓性組成物により被覆されてなる成形体の表面積
6cm2 あたり1mlの生理食塩水を抽出液として使用
して、50℃、72時間の抽出を行った際の抽出液中に
遊離するリンの濃度が0.1〜20ppmであることを
特徴とする。脂溶化ムコ多糖が有機高分子材料(以下基
材と呼ぶ)に導入されることにより基材表面が不活性化
すると同時に、一部は基材から徐放することよって抗血
栓性、抗菌性が発揮される。
【0023】上記条件で生理食塩水により抽出を行った
際、抽出液中に遊離する第4級ホスホニウム由来のリン
濃度が上記範囲にあることにより必要かつ十分な抗血栓
性、抗菌性が発揮される。0.1ppmよりも少量であ
る場合には十分な抗血栓性、抗菌性が発揮されず、20
ppmよりも多量である場合には生体成分と接触した際
に性能が維持されにくく、生体に対する毒性等の問題が
生じてくる。十分な安全性を確保した上で十分な抗血栓
性、抗菌性を得るには抽出液中のリン濃度は0.1〜2
0ppmであり、1〜15ppmが好ましく、1〜10
ppmがさらに好ましい。
【0024】本発明における抗菌性付与抗血栓性組成物
および医療用器具に関する生理食塩水により抽出する際
の条件は、Annual Book of ASTM
Standards,vol.13.01,F619記
載の”Standard Practice for
Extraction of Medical Pla
stics”に準拠するものである。
【0025】本発明における抗菌性付与抗血栓性組成物
をガラスビーズ上にコーティングせしめたコーティング
ガラスビーズを用いて生理食塩水による抽出を行う場
合、以下に示すような条件で実施する。 (1)基材となる有機高分子5gを該有機高分子および
脂溶化ムコ多糖が可溶な溶媒(有機高分子がポリウレタ
ン、ポリ塩化ビニルの場合、THFが好ましい)100
0mlに溶解する。 (2)脂溶化ムコ多糖1gを添加し、溶液中の固形分濃
度が0.5%になるように溶媒を加えて調整する。 (3)粒径0.2mm、比重2.5のガラスビーズ(井
内盛栄堂製BZ−02)50gを脂溶化ムコ多糖/基材
溶液100mlに24時間浸漬した後、ガラスフィルタ
ーで濾過し、窒素気流下40℃で8時間、さらに40℃
で減圧乾燥を15時間行ってガラスビーズ表面にコーテ
ィングを行う。上記のガラスビーズを使用した場合,ガ
ラスビーズ1gあたりの表面積は120cm2 となるの
で、1gのガラスビーズに対して20mlの抽出液を使
用することで、所定の浴比で抽出することができる。
【0026】本発明において、抗菌性付与抗血栓性組成
物からフイルムを得ることが可能な場合には、フイルム
にしたもので上記の抽出を行ってもよい。その場合のフ
イルムの調製は次のようにして行なわれる。 (1)基材となる有機高分子50gを該有機高分子およ
び脂溶化ムコ多糖が可溶な溶媒(有機高分子がポリウレ
タン、ポリ塩化ビニルの場合、THFが好ましい)10
00mlに溶解する。 (2)脂溶化ムコ多糖10gを添加し、溶液中の固形分
濃度が5%になるように溶媒を加えて調整する。 (3)脂溶化ムコ多糖/基材溶液27gを水平に保った
12cm×12cmのガラス板上に均一に載せ、40℃
で8時間窒素気流下で乾燥後、さらに40℃で減圧乾燥
を15時間行う。 (4)ガラス板上からフイルムを剥離する。有機高分子
および溶媒の組合せとして、例えばポリウレタン/TH
F、ポリウレタン/DMF、ポリ塩化ビニル/THFの
場合には、上記の方法で厚さ70〜100μmのフイル
ムを得ることができる。得られたフイルムを12cm×
10cmに切断して、生理食塩水40mlにより上記条
件で抽出を行なう。なお、この場合のフイルムの表面積
とは、フイルムの表裏両面を合わせた面積である。すな
わち12×10×2=240cm2 を表面積とする。
【0027】さらに、本発明においては、抗菌性付与抗
血栓性組成物を成形体に被覆せしめた状態で抽出を行っ
てもよい。その場合の調製は次のようにして行なわれ
る。なお、この場合の成形体とは、カテーテル、カニュ
ーレ、シャント、血液バッグ、血液回路等の医療用器具
を示すものである。 (1)基材となる有機高分子50gを該有機高分子およ
び脂溶化ムコ多糖が可溶な溶媒(有機高分子がポリウレ
タン、ポリ塩化ビニルの場合、THFが好ましい)10
00mlに溶解する。 (2)脂溶化ムコ多糖10gを添加し、溶液中の固形分
濃度が5%になるように溶媒を加えて調整する。 (3)上記成形体を脂溶化ムコ多糖/有機高分子溶液中
に完全に浸漬させた後引き上げ、窒素気流下40℃で8
時間、さらに40℃で減圧乾燥を15時間行なって成形
体表面にコーティングを行なう。
【0028】本発明において、抽出液中のリン濃度を定
量分析は以下に示す硝酸−硫酸−過塩素酸分解吸光光度
法により行なう。この方法は、無機応用比色分析(共立
出版)第4巻、127〜206頁に記載の方法を一部改
変したものである。 (1)一定量(50μg以下)の試料を三角フラスコに
取り、濃硫酸3ml、濃硝酸3.5ml、過塩素酸0.
5mlを加えて湿式分解する。 (2)水を加えて全量で約20mlになるよう希釈し
て、室温まで放冷後、p−ニトロフェノール水溶液を指
示薬としてアンモニア水で中和する。その後室温まで放
冷する。 (3)上記の試料溶液を50mlメスフラスコに定量的
に移し、モリブデン酸アンモニウムの10規定硫酸溶液
(濃度2%)を5ml、0.5%硫酸ヒドラジン水溶液
を1ml加えて、全量で50mlになるよう水で希釈す
る。 (4)沸騰水浴中で10分間加熱して発色させ、830
nmにおける吸光度を分光光度計(日立製作所製U−3
210)を用いて測定する。 (5)既知濃度(0〜50μg/ml)のリン含有液
(リン酸二水素カリウム水溶液)であらかじめ作製して
おいた検量線から試料中のリン含量を算出する。
【0029】本発明の抗菌性付与抗血栓性組成物は脂溶
化ムコ多糖類を添加する基材である有機高分子材料とし
ては、例えばポリハロゲン化ビニル、ポリハロゲン化ビ
ニリデン、ポリウレタン、ポリウレタンウレア、ポリエ
ステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン等
が挙げられるが、ポリウレタンが特に好ましい。本発明
者らは鋭意研究を行った結果、詳細な機構は不明である
もののポリウレタンが少なくとも成分として含まれるこ
とにより長期の安定した抗血栓性、抗菌性が発揮される
ことを見出した。
【0030】上記有機高分子材料はポリウレタンが成分
の一つとして含有される場合、他の高分子材料とのブレ
ンドであってもよい。ポリウレタン以外の成分として
は、例えばポリハロゲン化ビニル、ポリハロゲン化ビニ
リデン、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、
ポリエチレン等が例示される。ブレンド系の基材を使用
する場合のポリウレタンの含量は好ましくは20〜10
0%、さらに好ましくは40〜100%である。
【0031】上記ポリウレタンは脂肪族系ポリウレタン
と芳香族系ポリウレタンのブレンドであることが好まし
い。脂肪族系ポリウレタン/芳香族系ポリウレタンのブ
レンドを使用する場合の両者の混合比率は重量比で2/
8〜8/2、好ましくは3/7〜7/3、さらに好まし
くは4/6〜6/4である。
【0032】脂溶化ムコ多糖を有機高分子材料と混合す
る際の添加量は、有機高分子材料100重量部に対して
脂溶化ムコ多糖を0.1〜200重量部とするのが好ま
しく、1〜100重量部がさらに好ましい(以下、重合
体100重量部に対して添加剤1重量部を加えた場合、
添加剤添加量は1phrであると表現する)。
【0033】本発明の抗菌性付与抗血栓性組成物は脂溶
化ムコ多糖の他に、無機系抗菌剤が添加されてもよい。
無機系抗菌剤としては、例えば銀、銅、亜鉛等の金属を
有効成分とする抗菌剤や抗菌性ガラス等が使用できる。
銀を有効成分とする抗菌剤として、具体的に例えば、銀
ゼオライト、銀−リン酸ジルコニウム複合体、銀セラミ
ックスなどを利用することが可能である。また、プロテ
イン銀やスルファジアジン銀など、金属の有機化合物錯
体も本発明において無機系抗菌剤として使用することが
可能である。これらの無機系抗菌剤のうち、本発明にお
いては銀系抗菌剤もしくは抗菌性ガラスが好ましく、な
かでも銀ゼオライトが特に好ましい。
【0034】本発明において無機系抗菌剤を添加した場
合には、脂溶化剤として機能する第4級ホスホニウムと
の相乗効果によって、より優れた抗菌性、広い抗菌スペ
クトルを材料に導入することが期待できる。
【0035】本発明において、無機系抗菌剤を基材とな
る有機高分子材料に導入する場合の添加量は、有機高分
子材料100重量部に対して好ましくは0.1〜50p
hr、さらに好ましくは1〜30phr程度の量であ
る。また、脂溶化ムコ多糖と無機抗菌剤の添加量比は5
0:1〜1:4が好ましく、25:1〜1:1がさらに
好ましい。
【0036】本発明の抗菌性付与抗血栓性組成物はさら
に、カテーテル、カニューレ、シャント、血液バッグ、
血液回路等の他の成形体に導入することも可能である。
上記成形体の素材としては特に限定されるものではな
く、例えばポリエーテルウレタン、ポリウレタン、ポリ
ウレタンウレア、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデ
ン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポ
リカーボネート等の従来より使用されている材質、また
将来使用されるであろう材質が広く利用できる。また、
既存および新規の材質からなる血液透析膜、血漿分離
膜、吸着材等の血液処理材に抗血栓性を付与する目的で
導入することも可能である。
【0037】上記構造体への導入方法も特に限定されな
いが、通常のブレンド法、コーティング法が適用可能で
あり、コーティング方法についても、塗布法、スプレー
法、ディップ法等、特に制限なく適用できる。これらの
方法のうち、生理活性物質であるムコ多糖類に熱履歴を
与えることのない方法を選ぶことが好ましい。
【0038】本発明の抗菌性付与抗血栓性組成物および
医療用器具は生体成分との接触初期段階ではもちろん、
接触が長期にわたった後も良好な抗血栓性が維持でき
る。また、第4級ホスホニウムの効果によって抗血栓性
を奏すると同時に優れた抗菌性をも付与することができ
る。
【0039】このような長所を活かして、本発明の抗菌
性付与抗血栓性組成物は各種の医療用器具あるいは機器
類に使用される素材の抗血栓化に広く適用できる。具体
的には、例えば血液透析膜や血漿分離膜およびこれらの
コーティング剤、血液中老廃物吸着材のコーティング剤
に適用できる。また、人工肺用の膜素材(血液と酸素の
隔壁)や人工心肺におけるシート肺のシート材料等にも
適用できる。
【0040】本発明における医療用器具としては特に限
定されないが、一般的に医療用途に用いられる器具類で
ある大動脈バルーン、血液バッグ、カテーテル、カニュ
ーレ、シャント、血液回路等が例示される。また、本発
明の抗菌性付与抗血栓性組成物が抗菌性を同時に有する
特長を利用して、従来生体−材料界面からの感染が問題
であったIVHなどに適用することも好ましい。本発明
の上記医療用器具を生理食塩水で上記の条件で抽出を行
う場合のリン濃度は0.1〜20ppmであり、好まし
くは1〜15ppm、さらに好ましくは1〜10ppm
である。
【0041】
【実施例】以下、実施例を用いて本発明を説明する。な
お、本発明は実施例により特に制限されるものではな
い。
【0042】<実施例1>ヘパリンナトリウム塩10.
00gをイオン交換水に溶解させ、全量で100mlと
した。塩化トリ−n−ブチルラウリルホスホニウム(以
下TBLP・Clと略記する)16.76gをイオン交
換水に溶解させ、全量で168mlとした。双方の溶液
を氷冷下で混合し、そのまま4℃で15時間静置して懸
濁液を得た。この懸濁液を3300rpmで遠心沈降さ
せて沈殿を回収し、さらに蒸留水を加え懸濁させた後遠
心分離によって沈殿を洗浄する操作を3回繰り返し、そ
の後沈殿を乾燥させてTBLP・Clとヘパリンの複合
体(以下TBLP−Hepと略記する)を得た。このT
BLP−Hepはベンゼン、DMF、THF、クロロホ
ルム等の有機溶媒に可溶であった。
【0043】市販脂肪族系ポリウレタン(Tecofl
ex(商品名)EG80A、以下Tecoと略記する)
をTHFに溶解して5%溶液とした。このTeco溶液
1000gに対し、上記で得たTBLP−Hep15.
00gを加えて一様な溶液とした後、THF300gを
加えて固形分濃度が5%になるよう調整した。このTB
LP−Hep/Tecoブレンド溶液27gを水平に保
った12cm×12cmのガラス板上に均一に載せ、4
0℃で8時間窒素気流下で乾燥後、40℃で減圧乾燥を
15時間行い、平均厚さ85μmのフイルムを得た(以
下このTBLP−Hep/Tecoブレンド材料を材料
A、材料Aから得たフイルムをフイルムAと略記す
る)。フイルムAには、TBLP−Hepが30phr
添加されていることになる。
【0044】上記の方法で得たフイルムAを12cm×
10cmに切断して生理食塩水40mlに浸漬し、50
℃で72時間抽出を行った。この抽出液を硫酸−硝酸−
過塩素酸系で湿式分解後、吸光光度法によってリン含量
を定量分析した。
【0045】フイルムA上での血漿相対凝固時間につい
て以下の方法で評価を行った。すなわち、フイルムAを
直径約3cmの円形に切り抜き、直径10cmの時計皿
の中央にはりつけた。このフイルム上にウサギ(日本白
色種)のクエン酸加血漿200μlを取り、0.025
mol/lの塩化カルシウム水溶液200μlを加え、
時計皿を37℃の恒温槽に浮かせながら液が混和するよ
うに穏やかに振盪した。塩化カルシウム水溶液を添加し
た時点から血漿が凝固(血漿が動かなくなる時点)まで
の経過時間を測定し、同様の操作をガラス上で行った場
合の血漿凝固に要した時間で割り、相対凝固時間として
表した。ただし、ガラス板上での凝固時間の12倍を超
えても血漿が凝固しない場合には評価を中断し、相対凝
固時間は>12と表した。結果は表1に示した。
【0046】材料A溶液をTHFで希釈して2%とし、
この溶液に40〜60メッシュのガラスビーズを30分
浸漬した後ガラスフィルターで濾過し、窒素気流下40
℃で8時間、40℃で減圧乾燥を15時間行ってガラス
ビーズ表面に材料Aをコートした。ヒト血清のPBS
(−)2倍希釈液1mlにこのコーティングビーズ10
0mgを浸漬し、穏やかに振盪しながら37℃で30分
間インキュベートした。この液をサンプルとしてMay
er法(Mayer,M.M.,”Complemen
t and Complement fixatio
n”Experimental Immunochem
istry 2nd Ed.p133〜240,C.
C.Thomas Publisher,1961)に
より溶血補体価(CH50)を測定した。結果は、ビー
ズを加えない上記希釈血清1mlにおける補体価を10
0%とし、百分率によって表1に示した。
【0047】フイルムAの抗菌性を以下の方法で評価し
た。なお、一連の操作は全て無菌的に行った。すなわ
ち、ブロース液(滅菌生理食塩水で50倍希釈)によ
り、約1×107 個/mlの細菌数とした緑膿菌液(以
下この細菌液を菌原液と呼ぶ)を調製した。この菌原液
の細菌数は、次のように定量した。菌原液を104 倍に
希釈した後100μlを普通寒天板上にまき、24時間
後に形成された緑膿菌のコロニー数を計測した。このコ
ロニー数をN個とすると、菌原液の細菌数Cは、 C=104 ×N/0.1=105 ×N[個/ml] と示される。
【0048】この菌原液100μlをブロース液(滅菌
生理食塩液で40倍希釈)で希釈して全量で40mlに
調製した(以下この液を浸漬原液と呼ぶ)。浸漬原液に
あらかじめ5cm×5cmに裁断してEOG滅菌したフ
イルムA上を浸漬して、37℃で24時間培養した。培
養後、浸漬原液を滅菌生理食塩水で10倍系列で10 4
倍まで希釈した(以下10n 倍希釈液と略記する)。そ
れぞれの希釈液100μlを普通寒天培地上にき、24
時間後普通寒天板上に形成された緑膿菌のコロニー数が
30ないし300個のプレートについて計測した。計測
して得られたコロニー数をNn 個とすると、25cm2
のフイルムAとの接触後の細菌数Na は次の式で与えら
れる。 Na =40×10n ×Nn /0.1
【0049】フイルムAと接触前の菌原液の細菌数は上
記Cの通りであり、使用した原液量は100μlである
から、フイルムA接触前の細菌数Nb は次式で示され
る。 Nb =104 ×N 浸漬原液40ml中での25cm2 の大きさのフイルム
との接触によるNb →Na の個数変化を表1に示した。
接触によって細菌数が減少するということはフイルムの
抗菌性が発揮されていることを示す。
【0050】材料AのTHF4%溶液を調製し、これに
既存の人工肺用ポリプロピレン製多孔質ホローファイバ
ーを浸漬して引き揚げ、40℃で12時間乾燥すること
によってホローファイバーへのコーティングを行った。
このホローファイバーを使用しin vivoで抗血栓
性を評価した。実験方法は次の通りである。
【0051】ペントバルビタール麻酔下でウサギ(日本
白色種、♂、2.5〜3.0kg)の大腿静脈を剥離し
て、末梢側を糸で結紮し、糸から2〜3cmのところを
血管鉗子でクランプした。結紮部分の中枢側を眼下剪刀
で血管径の1/4〜1/3切り、そこから試料であるホ
ローファイバーを10cm、中枢側に向かって挿入し
た。挿入位置から1cmほどのところで、血管外に出て
いるホローファイバーの端部を縫いつけ、ホローファイ
バーが流されるのを防止した。切開部分を縫合し、抗生
物質を投与して、以後試料を取り出すまで2週間にわた
って飼育した。
【0052】2週間後、ヘパリン加ペントバルビタール
で麻酔下、正中切開を施し、腹部大動脈より適当なチュ
ーブを用いて脱血してウサギを犠死させた後、ホローフ
ァイバーを挿入した部分の血管を切断した。血管を切開
してホローファイバーと血管内部を写真に撮るととも
に、目視で観察し5段階評価を行った。結果は表1に示
した。
【0053】フイルムAをPBS(−)に浸漬し、37
℃の振盪恒温槽で2週間にわたって溶出を行った。PB
S(−)は毎日交換した。以下、溶出後のフイルムをフ
イルムA’と呼ぶ。フイルムAと同様の方法でフイルム
A’での血漿相対凝固時間、抗菌性について評価を行っ
た。結果は表1に示した。
【0054】<実施例2>実施例1で使用したのと同一
のTecoと市販芳香族系ポリウレタン(Pellet
hane(商品名)2363−80AE、以下Pell
と略記する)を重量比1/1で混合し、THFに溶解し
て5%溶液とした。このTeco−Pell混合溶液1
000gに対し、実施例1で得たTBLP−Hep1
5.00gを加えて一様な溶液とした後、THF300
gを加えて固形分濃度が5%になるよう調整した。以
下、実施例1と同様の方法で、TBLP−Hep/Te
co−Pellブレンド材料B、および材料Bから成る
フイルムB(平均厚さ85μm)を得た。この材料Bお
よびフイルムBを用いて、実施例1と同様の方法で生理
食塩水抽出液中のリン含量、血漿相対凝固時間、補体
価、抗菌性、in vivo抗血栓性を測定した。ま
た、実施例1と同様の方法でフィルムBの溶出試験を実
施し、得られた溶出フイルムB’の血漿相対凝固時間、
抗菌性についても測定した。結果は表1に示した。
【0055】<実施例3>実施例1で使用したのと同一
のTecoをTHFに溶解して5%溶液とした。このT
eco溶液1000gに対し、実施例1で得たTBLP
−Hep1.00gを加えて一様な溶液とした後、TH
F20gを加えて固形分濃度が5%になるよう調整し、
実施例1と同様の方法で、TBLP−Hep/Teco
ブレンド材料C、および材料Cから成るフイルムC(平
均厚さ85μm)を得た。この材料CおよびフイルムC
を用いて、実施例1と同様の方法で生理食塩水抽出液中
のリン含量、血漿相対凝固時間、補体価、抗菌性、in
vivo抗血栓性を測定した。また、実施例1と同様
の方法でフィルムCの溶出試験を実施し、得られた溶出
フイルムC’の血漿相対凝固時間、抗菌性についても測
定した。結果は表1に示した。
【0056】<実施例4>実施例1で使用したのと同一
のTecoをTHFに溶解して5%溶液とした。このT
eco溶液1000gに対し、実施例1で得たTBLP
−Hep50.00gを加えて一様な溶液とした後、T
HF1000gを加えて固形分濃度が5%になるよう調
整し、実施例1と同様の方法で、TBLP−Hep/T
ecoブレンド材料D、および材料Dから成るフイルム
D(平均厚さ85μm)を得た。この材料Dおよびフイ
ルムDを用いて、実施例1と同様の方法で生理食塩水抽
出液中のリン含量、血漿相対凝固時間、補体価、抗菌
性、in vivo抗血栓性を測定した。また、実施例
1と同様の方法でフイルムDの溶出試験を実施し、得ら
れた溶出フイルムD’の血漿相対凝固時間、抗菌性につ
いても測定した。結果は表1に示した。
【0057】<実施例5>実施例1〜4で得たフイルム
A、B、C、Dを12cm×10cmに切断して生理食
塩水40mlに浸漬し、50℃で72時間抽出を行っ
た。この抽出液を使用し、Annual Book o
f ASTM Standards,vol.13.0
1,F750記載の”Standard Practi
ce forEvaluating Material
Extracts by Systemic Inj
ection in the Mouse”に準拠した
方法によって急性毒性を評価した。すなわち、サンプル
1種について5匹のマウスを使用して抽出液を尾静脈か
ら注入し(投与量は50μl/g−マウス体重)、3日
間飼育して状態を観察した。結果は表2に示した。
【0058】<比較例1>実施例1で使用した脂肪族系
ポリウレタンTecoを市販ポリ塩化ビニル(可塑剤と
してジオクチルフタレートを10phr含有、以下PV
Cと略記する)に変え、TBLP−Hepの添加量をP
VCに対して0.3phrとした以外は実施例1と同様
の方法で、TBLP−Hep/PVCブレンド材料E、
および材料Eから成るフイルムEを得た。この材料Eお
よびフイルムE(平均厚さ85μm)を用いて、実施例
1と同様の方法で生理食塩水抽出液中のリン含量、血漿
相対凝固時間、補体価、抗菌性、in vivo抗血栓
性を測定した。また、実施例1と同様の方法でフイルム
Eの溶出試験を実施し、得られた溶出フイルムE’の血
漿相対凝固時間、抗菌性についても測定した。結果は表
1に示した。
【0059】<比較例2>実施例1で得たTBLP−H
ep100mgにベンゼンを加えて全量で100gと
し、TBLP−Hep/ベンゼン溶液を得た。実施例1
と同様の方法で作製した12cm×12cm、厚さ70
〜100μmのTecoフイルム上にこの溶液3.00
gを均一に載せ、40℃で8時間窒素気流下で乾燥後、
40℃で減圧乾燥を15時間行い、TBLP−Hepに
よるTecoコーティングフイルム(平均厚さ85μ
m)を得た(以下このTBLP−HepによるTeco
コーティングフイルムをフイルムFと略記する)。
【0060】このTBLP−Hep/ベンゼン溶液でコ
ーティングを行って補体価とinvivo抗血栓性を、
フイルムFを用いて生理食塩水抽出液中のリン含量、血
漿相対凝固時間、抗菌性を実施例1と同様の方法で測定
した。また、実施例1と同様の方法でフイルムFの溶出
試験を実施し、得られた溶出フイルムF’の血漿相対凝
固時間および抗菌性についても測定した。結果は表1に
示した。
【0061】<比較例3>実施例1で使用したのと同一
のTecoをTHFに溶解して5%溶液とした。このT
eco溶液1000gに対し、実施例1で得たTBLP
−Hep60.00gを加えて一様な溶液とした後、T
HF1200gを加えて固形分濃度が5%になるよう調
整し、実施例1と同様の方法で、TBLP−Hep/T
ecoブレンド材料G、および材料Gから成るフイルム
G(平均厚さ85μm)を得た。この材料Gおよびフイ
ルムGを用いて、実施例1と同様の方法で生理食塩水抽
出液中のリン含量、血漿相対凝固時間、補体価、抗菌
性、in vivo抗血栓性を測定した。また、実施例
1と同様の方法でフイルムGの溶出試験を実施し、得ら
れた溶出フイルムG’の血漿相対凝固時間、抗菌性につ
いても測定した。結果は表1に示した。
【0062】<比較例4>比較例3で得たフイルムGを
使用し、実施例5と同様の方法で急性毒性を評価した。
結果は表2に示した。
【0063】<比較例5>脂溶化ヘパリンを導入してい
ないTecoフイルム(フイルムH,平均厚さ85μ
m)を用いて血漿相対凝固時間、抗菌性を測定した。ま
た、実施例1と同様の方法でフイルムHの溶出試験を実
施し、得られた溶出フイルムH’の血漿相対凝固時間、
抗菌性についても測定した。結果は表1に示した。
【0064】表1に示した結果からわかるように、本発
明の抗菌性付与抗血栓性組成物は優れた抗血栓性、抗菌
性を示しており、溶出後も性能が維持されている。表2
の結果から、本発明の抗菌性付与抗血栓性組成物は毒性
も低く医療用の材料としての安全性に優れていることが
わかる。
【0065】生理食塩水による処理で抽出されるリン濃
度が低レベルの比較例1では十分な性能が発揮されな
い。逆に抽出リン濃度が高い比較例3では、抗菌性、抗
血栓性は比較的良好であるが、表2の結果から毒性が高
くなってしまっていることが示される。また、高分子材
料を含有せずに、フイルム表面に脂溶化ムコ多糖をコー
ティングした比較例2では、溶出前の性能は比較的良好
であるものの、生理食塩水による処理で抽出されるリン
濃度が高く、PBS(−)溶出による性能の低下が大き
いことが示される。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【発明の効果】本発明の抗菌性付与抗血栓性組成物およ
び医療用器具は、優れた抗血栓性、抗菌性を有してお
り、その性能は材料調製直後のみならず長期間の溶出操
作後も維持される。また、毒性についても低く抑えられ
ており、医療用材料として優れた特性を持っている。さ
らに、本発明の抗菌性付与抗血栓性組成物はコーティン
グなどの方法によって基材の表面に導入することで既存
の構造体に簡便に抗血栓性、抗菌性を付与することがで
き、医療用材料の抗血栓化、抗菌化を行う材料として優
れた適性を有している。
フロントページの続き (72)発明者 有森 奏 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内 (72)発明者 田中 昌和 滋賀県大津市堅田二丁目1番1号 東洋紡 績株式会社総合研究所内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記(a)および(b)を必須成分とす
    る抗菌性付与抗血栓性組成物であって、該抗菌性付与抗
    血栓性組成物をガラスビーズ上にコーティングせしめた
    後、該ガラスビーズの表面積6cm2 に対して生理食塩
    水を1mlの割合で抽出液として用いて50℃、72時
    間の抽出を行なった際の抽出液中に遊離するリンの濃度
    が0.1〜20ppmであることを特徴とする抗菌性付
    与抗血栓性組成物。 (a)少なくとも1種のムコ多糖類および第4級ホスホ
    ニウムのイオン性複合体から成る脂溶化ムコ多糖 (b)有機高分子材料
  2. 【請求項2】 請求項1記載の(a)および(b)を必
    須成分とする抗菌性付与抗血栓性組成物であって、該抗
    菌性付与抗血栓性組成物を厚さ70〜100μmのフイ
    ルムにした後、該フイルムの表面積6cm2 に対して生
    理食塩水を1mlの割合で抽出液として用いて50℃、
    72時間の抽出を行なった際の抽出液中に遊離するリン
    の濃度が0.1〜20ppmであることを特徴とする抗
    菌性付与抗血栓性組成物。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の(a)および(b)を必
    須成分とする抗菌性付与抗血栓性組成物であって、該抗
    菌性付与抗血栓性組成物により被覆されてなる成形体の
    表面積6cm2 に対して生理食塩水を1mlの割合で抽
    出液として用いて50℃、72時間の抽出を行なった際
    の抽出液中に遊離するリンの濃度が0.1〜20ppm
    であることを特徴とする抗菌性付与抗血栓性組成物。
  4. 【請求項4】 ムコ多糖類として少なくともヘパリンも
    しくはヘパリン金属塩が含有される請求項1〜3のいず
    れかに記載の抗菌性付与抗血栓性組成物。
  5. 【請求項5】 第4級ホスホニウムが下記式[1]の構
    造である請求項1〜4のいずれかに記載の抗菌性付与抗
    血栓性組成物。 【化1】
  6. 【請求項6】 有機高分子材料としてポリウレタンを必
    須成分とする請求項1〜5のいずれかに記載の抗菌性付
    与抗血栓性組成物。
  7. 【請求項7】 ポリウレタンが脂肪族系ポリウレタンお
    よび芳香族系ポリウレタンがブレンドされてなる請求項
    1〜6のいずれかに記載の抗菌性付与抗血栓性組成物。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のいずれかに記載の抗菌性
    付与抗血栓性組成物により少なくとも表面が被覆されて
    成る医療用器具であって、該医療用器具の表面積6cm
    2 に対して生理食塩水を1mlの割合で抽出液として用
    いて50℃、72時間の抽出を行なった際の抽出液中に
    遊離するリンの濃度が0.1〜20ppmであることを
    特徴とする医療用器具。
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