JPH11348708A - 車両用エアバッグ装置のリッド構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 エアバッグリッドとしての剛性を維持しなが
ら、乗員等に対する十分な衝撃吸収性を有せしめ、さら
にはリサイクル化を可能とするシングルマテリアル化と
すること。 【解決手段】 インストルメントパネル２１に形成され
ているエアバッグ膨出口２２を常閉するために用いられ
るエアバッグリッドであって、該エアバッグリッドは、
熱可塑性エラストマで形成されたインナーリッド２４
と、該インナーリッド２４の表側に層成されるビーズ発
泡体層２５と、該ビーズ発泡体層２５の表側に貼着さ
れ、かつ発泡層２６と表皮層２７とからなるラミネート
表皮２８とからなる構成。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、自動車に設備され
るエアバッグ装置のリッド構造に係り、特にエアバッグ
リッドとしての剛性を維持しながら、乗員等に対する十
分な衝撃吸収性を有せしめ、さらにはリサイクル化を可
能とするシングルマテリアル化とする車両用エアバッグ
装置のリッド構造に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】自動車の車室内に設けられているインス
トルメントパネルの特に助手席側に設備されているエア
バッグ装置の一般的な構造として、例えば図６、図７で
示す如きものがある。以下このエアバッグ装置の主要部
構成について説明すると、１はインストルメントパネル
であって、このインストルメントパネル１の助手席側に
は、エアバッグ膨出口２が穿設されており、常時はこの
エアバッグ膨出口２を閉塞するためのエアバッグリッド
３が、そのエアバッグ膨出口２に被着されている。

【０００３】上記エアバッグ膨出口２の内側には、エア
バッグモジュール４がブラケット５を介して取付けられ
ており、このエアバッグモジュール４は、ケース６と、
このケース６内に収容されるインフレータ収納筒７、イ
ンフレータ８及びエアバッグ９により構成されている。
さらに上記のエアバッグリッド３の裏側には、係止片１
０が突設されており、この係止片１０を、ケース６に設
けられているフック部１１に係止させて、そのエアバッ
グリッド３によるエアバッグ膨出口２の閉塞を維持させ
ているものである。

【０００４】そして車体が衝突等による衝撃力を受ける
と、その衝撃力によりインフレータ８が起爆し、その爆
発力で発生する高圧ガスがエアバッグ９内に供給されて
エアバッグ９は瞬時に脹らみ、このエアバッグ９の脹ら
みを受けたエアバッグリッド３は、その開裂溝１２に沿
って破断し、その結果膨張されたエアバッグ９がエアバ
ッグ膨出口２を経て搭乗者方向へ膨出される構成となっ
ている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところが、上記のよう
に、従来のエアバッグ装置を構成しているエアバッグリ
ッド３の剛性は、インストルメントパネル１の表面剛性
と同様に搭乗者による押圧力等の外力では容易に変形を
生じたり、ベコツキを生じることのない剛性を保たせる
ことが必要であることから、従来のエアバッグリッド３
は、例えば複合ポリプロピレン樹脂等を用いて、高剛性
構造に樹脂成形しているものであった。このために、エ
アバッグリッドの剛性は、車両の通常使用時においては
不足を生じないが、例えばエアバッグ装置が動作しない
程度の衝撃力を受けたとき、又は車両の衝撃とは無関係
に搭乗者がエアバッグリッド３に突き当る等の衝撃力を
受けたとき、その搭乗者への衝撃力の緩和が不足すると
いう不具合があった。

【０００６】本発明は、かかることに着目してなされた
もので、特に車両用エアバッグ装置のリッド構造を柔軟
性を有する樹脂材料で形成したインナーリッド、該イン
ナーリッドの表側に層成された発泡層及び該発泡層の表
面に添着される表皮層とからなる三層構造となしてエア
バッグリッドの緩衝性を高めることを第１の目的とす
る。

【０００７】また本発明では、上記エアバッグリッドを
構成するインナーリッド、発泡層及び表皮層の各材質を
同一系統の樹脂材料となして、シングルマテリアル化
し、これにより三層構造部品であるエアバッグリッドの
リサイクルの容易性を高めることを第２の目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記第１の目的を達成す
るために、本発明の請求項１では、インストルメントパ
ネルに形成されているエアバッグ膨出口を常閉するため
に用いられるエアバッグリッドであって、該エアバッグ
リッドは、熱可塑性エラストマで形成されたインナーリ
ッドと、該インナーリッドの表側に層成されるビーズ発
泡体層と、該ビーズ発泡体層の表側に貼着され、かつ発
泡層と表皮層とからなるラミネート表皮とからなる車両
用エアバッグ装置のリッド構造であることを特徴として
いる。

【０００９】また上記第２の目的を達成するために、請
求項２では、請求項１に加えて、上記インストルメント
パネル、インナーリッド、ビーズ発泡体層及びラミネー
ト表皮のいずれもの材質がオレフィン系樹脂である車両
用エアバッグ装置のリッド構造であることを特徴として
いる。

【００１０】

【発明の実施の形態】以下に本発明を図１乃至図５に示
す各実施形態に基いて詳細に説明する。

【００１１】図１は本発明により構成されたエアバッグ
リッドをインストルメントパネルに設けられているエア
バッグ膨出口に取付けた状態の断面であって、２１はそ
のインストルメントパネル、２２は該インストルメント
パネル２１に設けられているエアバッグ膨出口を示す。
２３はそのエアバッグ膨出口２２を閉塞するようにして
取付けられるエアバッグリッドであって、以下このエア
バッグリッド２３の構成の第１の実施形態について図１
及び図２を基にして具体的に述べる。

【００１２】２４はエアバッグリッド２２の構成部材で
あるインナーリッドであって、このインナーリッド２４
は、所定の形状で樹脂成形されており、このインナーリ
ッド２４の表側には、ビーズ発泡体を発泡させることで
形成されたビーズ発泡体層２５が形成されており、さら
にこのビーズ発泡体層２５の表面には、発泡層２６と表
皮層２７とからなる２層のラミネート表皮２８が貼着さ
れている。

【００１３】このように本実施形態によるエアバッグリ
ッド２３は、周知のインサート発泡成形法を採用して成
形されるものであって、例えば予め所定の形状に形成さ
れたインナーリッド２４及び軟化せしめたラミネート表
皮２８を所定の発泡成形型内にセット型閉めした後、そ
のインナーリッド２４と表皮２８との間に供給した発泡
ビーズを発泡させることで、上記インナーリッド２４、
ビーズ発泡体層２５、及びラミネート表皮２８が一体で
ある所望形状のエアバッグリッド２３が構成される。か
くして構成されたエアバッグリッド２３の内側所望位置
に、レーザカット熱刃又は超音波刃等の溝形成手段によ
りエアバッグリッド２３の表面に至らない開裂溝２９を
形成してエアバッグリッドを完成する。

【００１４】本実施形態でのエアバッグリッド２３は、
上記インナーリッド２４、ビーズ発泡体層２５及びラミ
ネートされた発泡層２６、表皮層２７とからなるラミネ
ート表皮２８で構成されているが、上記インナーリッド
２４、ビーズ発泡体層２５、発泡層２６、表皮層２７各
構成部材はいずれもが同一系統のオレフィン系樹脂で形
成されており、例えばインナーリッド２４の材質は、オ
レフィン系熱可塑性エラストマ（ＴＰＯ）であり、ビー
ズ発泡体層２５の材質は、ポリプロピレン（ＰＰ）であ
り、ラミネート表皮２８の発泡層２６の材質はポリプロ
ピレン（ＰＰ）の発泡体であり、表皮層２７の材質はオ
レフィン系熱可塑性エラストマ（ＴＰＯ）であって、い
ずれもがオールオレフィン系樹脂により成形されている
ものである。なおインストルメントパネル２１の材質も
オレフィン系樹脂である複合ポリプロピレンを用いて形
成している。

【００１５】このようにエアバッグリッド２３を構成し
ている各構成部材の材質をインストルメントパネル２１
を構成している材質と同等のオールオレフィン系樹脂を
選択使用していることから、上記インストルメントパネ
ル２１及びエアバッグリッド２３がシングルマテリアル
化がなされており、これによってリサイクルが可能とな
る。またオレフィン系の軟質樹脂を用いて構成したイン
ナーリッド２４、発泡体であるビーズ発泡体層２５及び
ラミネート表皮２８によるエアバッグリッド２３の構成
は、柔軟性に富み、特にオレフィン系軟質樹脂を用いて
形成したインナーリッド２４となしていることで衝撃吸
収性に優れたエアバッグリッドを提供できる。

【００１６】なお３０は、上記エアバッグリッド２３の
内側でステアリングメンバー３１により固定保持されて
いるエアバッグモジュールであって、このエアバッグモ
ジュールの外側面に設けられている係止片３２を介して
上記エアバッグリッド２３のインナーリッド２４が係止
されている。またラミネート表皮２８の周辺部は、イン
ストルメントパネル２１に設けられているエアバッグ膨
出口２２の周辺部に穿設されている透孔３３を通してそ
のインストルメントパネル２１の裏側で加締め３４られ
て固定されている。

【００１７】図３乃至図５はエアバッグリッド２３を真
空成形装置を用いて製作するための他の実施形態を示す
もので、以下そのエアバッグリッドの製作手順について
説明する。先ずは図３で示すようにエアバッグリッドの
開裂線となる多数のスリット３５を隔設せしめてなる所
定形状のビーズ発泡体３６と、同様にして開裂用となる
スリット３７を設けてなるオレフィン系軟質樹脂の軟質
インナーリッド３８を予め所定形状に成形し、そのイン
ナーリッド３８と、ビーズ発泡体３６とを接着又は加熱
熔着手段により接着して予備成形品（Ａ）を作成する
か、あるいは開裂用となるスリット３７を設けてなる所
定形状の軟質インナーリッド３８をオレフィン系樹脂を
用いて予め形成し、この軟質インナーリッド３８を所定
の発泡成形型内にセットした後、その発泡成形型内に発
泡性ビーズを注入発泡させて、上記軟質インナーリッド
３８をインサート成形してなるビーズ発泡体層２５を一
体成形してなる予備成形品（Ａ）を得る。

【００１８】次にかかる構成の予備成形品（Ａ）を図４
で示すように、エアバッグ成形用の真空成形型３９予め
設けられている置き駒４２を一次成形品（Ａ）の各スリ
ット３５，３７内に挿入して、それらのスリットが詰ま
らないように保持させてインサート（セット）した後、
該一次成形品（Ａ）上に、ヒータ４０により加熱軟化さ
れたラミネート表皮４１を位置させる。次いで上記真空
成形型３９を型閉めした後、その真空成形型３９内を負
圧とすることで、該真空成形型３９内にインサートせし
めている一次成形品（Ａ）に表皮４１が接着され、前実
施形態の構成と同様に、軟質インナーリッド３８、ビー
ズ発泡体３６及びラミネート表皮４１が一体となったエ
アバッグリッドが成形される。

【００１９】このような実施形態のエアバッグリッドの
構成も発泡成形されている軟質インナーリッド３８及び
ビーズ発泡体３６と、発泡層２６と表皮層２７とからな
るラミネート表皮４１とによる層成体であるからそのエ
アバッグ自体の柔軟性が十分であって、特にインナーリ
ッド３８がオレフィン系軟質樹脂により形成されて柔軟
性をしていることにより衝撃吸収性に優れるものであ
る。さらに上記軟質インナーリッド３８、ビーズ発泡体
３６、ラミネート表皮４１のいずれもその材質をオール
オレフィン系樹脂を選択使用していることでリサイクル
が可能である。

【００２０】

【発明の効果】以上述べたように本発明のエアバッグ構
造によれば、軟質インナーリッド、ビーズ発泡体、表皮
とからなる層成は、柔軟性に富み、衝撃吸収性に優れ、
車両用エアバッグ装置のリッド構造として実用性に優れ
るものである。また上記エアバッグリッドを層成する各
部材をオールオレフィン系樹脂を用いて形成したことに
より、リサイクル化が可能となるという作用効果が得ら
れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明よりなるエアバッグリッドの実施形態を
示した断面説明図。

【図２】図１におけるＢ部の拡大断面図。

【図３】本発明よりなるエアバッグリッドを構成する予
備成形品の断面図。

【図４】本発明よりなるエアバッグリッド成形途中を示
した説明図。

【図５】本発明よりなるエアバッグリッド成形終了時を
示した説明図。

【図６】インストルメントパネルに対するエアバッグリ
ッドの取付けを示した斜視図。

【図７】図６におけるＣ−Ｃ線断面拡大図。

【符号の説明】

２１…インストルメントパネル ２２…エアバッグ膨出口 ２３…エアバッグリッド ２４…インナーリッド ２５…ビーズ発泡体層 ２６…発泡層 ２７…表皮層 ２８…ラミネート表皮 ２９…開裂溝 ３０…エアバッグモジュール ３１…ステアリングメンバー ３２…係止片 ３３…透孔 ３４…加締め ３５…スリット ３６…ビーズ発泡体 ３７…スリット ３８…インナーリッド ３９…真空成形型 ４０…ヒータ ４１…ラミネート表皮 ４２…置き駒

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 インストルメントパネル（２１）に形成
   されているエアバッグ膨出口（２２）を常閉するために
   用いられるエアバッグリッドであって、該エアバッグリ
   ッドは、熱可塑性エラストマで形成されたインナーリッ
   ド（２４）と、該インナーリッド（２４）の表側に層成
   されるビーズ発泡体層（２５）と、該ビーズ発泡体層
   （２５）の表側に貼着され、かつ発泡層（２６）と表皮
   層（２７）とからなるラミネート表皮（２８）とからな
   ることを特徴とする車両用エアバッグ装置のリッド構
   造。
2. 【請求項２】 上記インストルメントパネル（２１）、
   インナーリッド（２４）、ビーズ発泡体層（２５）及び
   ラミネート表皮（２８）のいずれもの材質がオレフィン
   系樹脂であることを特徴とする請求項１に記載の車両用
   エアバッグ装置のリッド構造。