JPH11342889A - 船舶における気泡による摩擦抵抗低減効果の解析方法 - Google Patents

船舶における気泡による摩擦抵抗低減効果の解析方法

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JPH11342889A
JPH11342889A JP10155044A JP15504498A JPH11342889A JP H11342889 A JPH11342889 A JP H11342889A JP 10155044 A JP10155044 A JP 10155044A JP 15504498 A JP15504498 A JP 15504498A JP H11342889 A JPH11342889 A JP H11342889A
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equation
constant
bubble
bubbles
void fraction
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Yoshiaki Takahashi
義明 高橋
Yuki Yoshida
有希 吉田
Yoji Kato
洋治 加藤
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IHI Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 気泡による船体表面の摩擦抵抗低減効果をよ
り精度良く解析する。 【解決手段】 航行中の船体から船体表面近傍の流場に
気泡を噴出して発生する摩擦抵抗低減効果を解析する方
法において、船体表面の流場の流線方向及び船体壁面に
対して鉛直方向の気泡の運動から導かれた気泡に働く抗
力ΔRvに基づいて、気泡の時定数Tと流場の乱れ周波
数ωLとの積が1に対して十分大きい場合(高周波数帯
域の場合)における気泡の介在によるせん断応力の減少
量τtを求め、該せん断応力の減少は混合長が減少して
発生したものとして気泡径dbを変数とする気泡が存在
する場合の壁法則の定数κ1を求め、該壁法則の定数κ1
と気泡が存在しない場合の局所摩擦抵抗係数Cfとの関
係式及び気泡が存在しない場合の壁法則の定数κと局所
摩擦抵抗係数Cf0との関係式に基づいて、摩擦抵抗低減
比Cf/Cf0の解析解を求める。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、船舶における気泡
による摩擦抵抗低減効果の解析方法に関する。
【0002】
【従来の技術】船舶において航行時の摩擦抵抗を低減さ
せる方法として、船体表面に気泡を介在させる方法があ
る。このような船舶における摩擦抵抗低減法を理論解析
する場合における多くの気泡流モデルは、ボイド率分布
(気泡の分布)を既知量として与えてから船体表面の流
場における流れの諸量を計算するものであり、摩擦抵抗
低減効果の精度良い推定を行うためには、ボイド率分布
のメカニズムを解明することが極めて重要である。この
ような気泡を用いた摩擦抵抗低減法を実際の船舶に応用
することを考えた場合、諸計算の途中で気泡供給量を与
えてボイド率を推定することが必要となる。したがっ
て、実用的観点からもボイド率分布の研究は大きな意味
を持つ。
【0003】本出願人等は、特願平8−144646号
において、混合長理論に基づいて船体表面から噴き出さ
れた空気による気泡の運動状態を解析的に求める技術に
ついて出願した。また、特願平9−292999号にお
いては、このような気泡の運動に基づいて、船体表面に
おける気泡の分布状態をシミュレートする技術について
出願した。さらに、特願平9−142818号及び特願
平10−55453号においては、混合長理論を気泡流
に拡張することにより船体表面の乱流境界層に対する乱
流モデルを構築し、該乱流モデルに基づいて従来の実験
結果を合理的に説明することが可能な摩擦抵抗低減効果
の解析方法、及び混合長を表す壁法則の定数κ1を流場
の規模すなわち乱流境界層厚に応じて修正することによ
り、異なる流場の摩擦抵抗低減効果を解析的に求める技
術について出願した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記特願平
9−142818号及び特願平10−55453号に記
載の技術においては、簡単化を優先したために、その理
論展開の過程で十分に検討されていない部分があった。
例えば、以下の点については、検討が必ずしも十分では
なかった。
【0005】(1)y方向(重力方向)のスリップにつ
いては定量的に議論されているが、何故に気泡が乱れの
中でx方向に移動しない状態でよいのか、又は何故に一
定のスリップと仮定して良いのか。 (2)見かけの混合長変化lmbを導入する際に、式の簡
単化のために乱れ流速u'L,v'Lのどちらか一方は完全
にゼロになり、もう一方にダンピングが起こることが式
の表現上前提条件となっている。すなわち、乱流応力
(レイノルズ応力)の変化をτtとしているが、この点
に問題はないか。 (3)見かけ上、定数κ1(マイクロバブルが存在する
場合の乱流領域にける壁法則の定数)は(λm/db)α
2/3に比例して減少するとしたが、dbが非常に小さくな
ると、定数κ1はマイナスの値となるか。また、同様に
λmが非常に小さくなると、定数κ1はマイナスの値とな
るか。
【0006】(4)λm∝νL/Uτ(=y/y+)(底層
の長さスケールに比例)はいいが、y/y+∝δは妥当か
否か。 (5)気泡の混入により摩擦抵抗が減ることを前提とし
ているが、それだけでいいか。気泡が運動することによ
る運動量交換による応力の増加要素を考慮する必要はな
いのか。 なお、上記説明において、τtは気泡抗力によるせん断
応力の減少量、λmは見かけの乱れスケール、dbは気泡
の直径、α局所ボイド率、νLは液体の粘性係数、Uτ
は摩擦速度である。
【0007】本発明は、上述する問題点に鑑みてなされ
たもので、気泡による船体表面の摩擦抵抗低減効果をよ
り精度良く解析することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明では、第1の手段として、航行中の船体から
船体表面近傍の流場に気泡を噴出して発生する摩擦抵抗
低減効果を解析する方法において、船体表面の流場の流
線方向(x方向)及び船体壁面に対して鉛直方向(y方
向)の気泡の運動から導かれた気泡に働く抗力ΔRv
基づいて、気泡の時定数Tと流場の乱れ周波数ωLとの
積が1に対して十分大きい場合(高周波数帯域の場合)
における気泡の介在によるせん断応力の減少量τtを求
め、該せん断応力の減少は混合長が減少して発生したも
のとして気泡径dbを変数とする気泡が存在する場合の
壁法則の定数κ1を求め、該壁法則の定数κ1と気泡が存
在しない場合の局所摩擦抵抗係数Cfとの関係式及び気
泡が存在しない場合の壁法則の定数κと局所摩擦抵抗係
数Cf0との関係式に基づいて、前記高周波数帯域の場合
における摩擦抵抗低減比Cf/Cf0の解析解を求めるとい
う手段を採用する。
【0009】また、第2の手段として、上記第1の手段
において、気泡径dbを変数とする気泡が存在する場合
の壁法則の定数κ1について、実際のボイド率の分布パ
ターンからボイド率分布の支配方程式を特定することに
より気泡径dbを消去するという手段を採用する。
【0010】第3の手段としては、上記第2の手段にお
いて、ボイド率分布の支配方程式を特定する場合、該支
配方程式が発散しないこと及び乱れの抑制を加味した気
泡の運動エネルギーと浮力ポテンシャルエネルギーとの
和が最小となることを安定条件とするという手段を採用
する。
【0011】さらに、第4の手段として、航行中の船体
から船体表面近傍の流場に気泡を噴出して発生する摩擦
抵抗低減効果を解析する方法において、気泡の付加質量
A、気泡径db及び粘性係数μLからなる流場の流線方
向(x方向)の気泡の運動方程式(1)と船体表面に対
して鉛直方向(y方向)の気泡の運動方程式(2)とを
フーリエ変換することにより、気泡の時定数Tと流場の
乱れ周波数ωLとからなるx方向のゲインGx及びy方向
のゲインGyを式(3),(4)に基づいて求め、流場
の乱れ周期2π/ωLがインテグラルタイムスケールT*L
に等しいと仮定して、気泡の時定数Tと流場の乱れ周波
数ωLとの積が1に対して十分大きい場合(高周波数帯
域の場合)における気泡の抗力ΔRvを次式(16)の
ように気泡がない場合の壁法則の定数κ、密度ρL、動
粘性係数νL及びx方向の流速uLの時間平均から求め、
前記抗力ΔRvによるせん断力の減少量τtを次式(1
7)のように求め、前記せん断力の減少は混合長がlmb
だけ減少して発生したと仮定した場合におけるせん断力
の減少量τtの式(22)と前記式(17)との比較に
基づいて、経験定数a、気泡径db、液相の動粘性係数
νL、摩擦速度Uτ及び船体壁面近傍のボイド率αwから
なる混合長減少量lmbを式(27)のように求め、該式
(27)に基づいて壁法則の定数の修正量κ2を式(3
3)のように求めると共に、前記壁法則の定数κから前
記修正量κ2を差し引くことにより経験定数aと気泡径
bとをパラメータとする気泡が存在する場合の壁法則
の定数κ1を式(34)のように求め、流場の速度分布
について対数則が成立するとした場合に気泡が存在しな
い場合について導かれる式(36)及び気泡が存在する
場合について導かれる式(40)に対して、位置変数y
が乱流境界層厚δに等しいとして気泡が存在しない場合
における局所摩擦抵抗係数Cfと壁法則の定数κとの関
係式(44)及び気泡が存在する場合における局所摩擦
抵抗係数Cf0と壁法則の定数κ1との関係式(45)を
求め、該関係式(45)から前記関係式(44)を減算
して得られた式(48)を(Cf0/Cf1/2=1の近傍
で展開し、かつ、1次までの項を取ることによって式
(49)を求めると共に、前記式(48)について気泡
が存在する場合の壁法則の定数κ1の中の底層スケール
νL/Uτについて展開して式(50)を求め、該式(5
0)を前記式(33)に代入したものを前記式(34)
に代入した後、前記式(49)に代入して得られた式を
解くことにより、前記高周波数帯域の場合における摩擦
抵抗低減比Cf/Cf0の解析解を式(55)のように求め
るという手段を採用する。
【数26】
【数27】
【数28】
【数29】
【数30】
【数31】
【数32】
【数33】
【数34】
【数35】
【数36】
【数37】
【数38】
【数39】
【数40】
【数41】
【数42】
【数43】
【0012】第5の手段として、上記第4の手段におい
て、船体近傍の流場の流線方向(x方向)の流速jx
船体に対して鉛直方向(y方向)の流速jyからなる質
量保存式(56)を、局所ボイド率αの気相が拡散しか
つ流場の平均速度による抗力と浮力とによって移動する
と仮定し、局所ボイド率α、x方向の流速uLの平均
値、y方向の気相の速度vbの2乗平均値、経験定数
c、気相の混合長lbからなる式(57)のように流速
xを近似すると共に、x方向の流速uLの平均値、局所
ボイド率α、気泡の上昇速度qg、経験定数c、気相の
混合長lbからなる式(58)のように流速jyを近似す
ることにより、ボイド率分布の支配方程式(64)を求
め、該ボイド率分布の支配方程式(64)を局所ボイド
率αについて解いて、定数K0,K1と乱流境界層厚δと
をパラメータとする式(74)を求め、実験的に得られ
たボイド率の分布パターンから定数K0の値を決定する
と共に、該定数K0の値を定数K0を与える式(75)に
代入して得られた式と式(34)を連立させることによ
り、気泡が存在する場合における壁法則の定数κ1を気
泡径dbと経験定数aとに代えて、ボイド率分布をパラ
メータとする式として摩擦抵抗低減比Cf/Cf0の解析解
を求めるという手段を採用する。
【数44】
【数45】
【数46】
【数47】
【数48】
【数49】
【数50】
【0013】第6の手段として、上記第5の手段におい
て、実際のボイド率の分布パターンから定数K0の値を
決定する場合、該支配方程式が発散しないこと及び乱れ
の抑制を加味した気泡の運動エネルギーと浮力ポテンシ
ャルエネルギーとの和が最小となることを安定条件とす
るという手段を採用する。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係わる船舶におけ
る気泡による摩擦抵抗低減効果の解析方法の一実施形態
について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】〔第1実施形態〕まず、本発明の第1実施
形態について説明する。 1.乱流モデル 図1は、本実施形態の乱流モデルの概念図である。本実
施形態では、上側に位置する2次元平板(例えば船舶の
船底壁に相当する)下の流れを取り扱うものとし、図示
するようにy方向に加え、該y方向に直交するx方向を
も考慮した乱流モデルになっている。すなわち、本実施
形態では、船体表面(船底壁面)から噴き出された気泡
について、船底壁面に対して鉛直方向(y方向)と船底
表面の流場の流線方向(x方向)の運動を考える。
【0016】乱流境界層に混入した気泡は、液相の乱れ
速度に応答して運動する。空気は、水に比べて密度が1
/103程度であり、その慣性力は付加慣性力に比較し
て無視できる程度に小さい。しかし、この付加慣性力が
あるために、気泡運動の液相速度に対する応答には遅れ
が生じ、気液間に速度差が発生する。この速度差により
気泡には抗力が生じ、液相には反力が生じる。このよう
な気液間の速度差を算出するためには、気泡運動の動特
性を把握する必要があるので、以下に運動方程式による
気泡運動の解析について詳しく説明する。
【0017】ここでは前提条件として、気泡の形状は球
形、気泡の付加質量は体積と同等の水の質量の1/2と
する。また、抗力についてはStokesの式を用いる
こととする。このような前提条件の下に、直線A−A上
を流れる液相流体粒子の単純時間平均された位置を原点
とし、該原点からの相対変位X,Yとする。この場合、
気泡の運動方程式は、次式(1),(2)によって与え
るものとする。
【0018】
【数51】
【0019】
【数52】
【0020】ここで、mAは単体気泡の付加質量、μL
液相の粘性係数、dbは気泡の直径(気泡径)、u'L
液相のx方向の乱れ流速、v'Lは液相のy方向の乱れ流
速である。また、肩字「’」は、ある瞬間の平均速度か
らの変化(乱れ速度)であることを示し、添字「L」は
液相のものであることを示している。
【0021】これらの運動方程式(1),(2)をフー
リエ変換することにより、x方向の乱れ流速の2乗平均
に対するx方向の相対変位速度の2乗平均のゲイン(利
得)及びy方向の乱れ流速の2乗平均に対するy方向の
相対変位速度の2乗平均のゲインを以下の式(3),
(4)のように求める。なお、以下の説明において記号
 ̄は時間平均を、記号^は2乗平均を示すものとする。
【0022】
【数53】
【0023】
【数54】
【0024】これら式(3),(4)において、ωL
流場の乱れ角周波数であり、またTは気泡の時定数であ
り、下式(5)によって与えられるものである。なお。
この式(5)において、νLは液相の動粘性係数であ
る。
【0025】
【数55】
【0026】時間に対する2乗平均的な量を議論する場
合、2乗平均値を代表値と考えて計算を行う。例えば、
気泡が直線A−Aの上側半分の領域に位置するとき、気
泡に対する抗力ΔRvの2乗平均値は、次式(6)のよ
うに表される。
【0027】
【数56】
【0028】この式(6)中の(1−GX)GYについて
は、上式(3),(4)に基づいて次式(7)のように
表される。
【0029】
【数57】
【0030】ここで、気泡の時定数Tのオーダーと乱れ
周期2π/ωLの大小に応じて、以下の3つの周波数帯
域に分けて考える。本実施形態では、上述したように、
気泡が球形を保持できる程度に小さいことを仮定として
いるが、その中でさらに3つに分類して考える。 低周波数帯域 :TωL≪1 (8) 中周波数帯域 :TωL=O(1) (9) 高周波数帯域 :TωL≫1 (10)
【0031】これらの条件式(8)〜(10)で規定さ
れる帯域をそれぞれ低周波数帯域、中周波数帯域、高周
波数帯域と定義する。中周波数帯域は、与えられた仮定
に基づく厳密解を考える場合であり、一般に最も複雑に
なる。卓越した周波数が予め分かっている場合には、級
数展開等によって簡便化できるが、本実施形態では取り
扱わないこととする。一方、低周波数帯域あるいは高周
波数帯域の場合には、構成方程式が簡単化されるので、
パラメータ依存性に関して見通しが良くなることが多
い。したがって、以下では、高周波数帯域の場合、及び
低周波数帯域の場合について説明する。
【0032】1.1 高周波数帯域の場合 まず、高周波数帯域(TωL≫1)の場合について検討
する。この場合において、上記(1−GX)GYは、式
(10)に基づいて下式(11)のように近似される。
【0033】
【数58】
【0034】この式(11)を式(6)に代入すると、
また液相の密度をρLとした場合、該液相の密度をρL
液相の粘性係数μLとの間には周知のようにμL=ρL
νLの関係があるので、高周波数帯域における抗力ΔRv
の2乗平均値は、次式(12)のように与えられる。
【0035】
【数59】
【0036】上式(12)において、ρLは液相の密
度、lm0は船体の壁面近傍における気泡の平均自由行程
に対応した混合長である。なお、見かけの混合長は気泡
抗力によるせん断応力減少分が加味されるので、lm0
厳密には気泡の平均自由行程に対応していない。
【0037】ここで、船体の壁面近傍の範囲は、図2に
示すように、壁(Wall)から気泡(Bubble )の直径db
だけ離れたところまでとし、その代表位置をy=db/2
とする。
【0038】このような壁面近傍の混合長lm0について
は、次式(13)が成立する。なお、この式(13)に
おいて、κは気泡が存在しない場合における壁法則の定
数(von Karman定数)であり、0.41とする。
【0039】
【数60】
【0040】この式(13)に、上記y=db/2を代入
すると、式(14)のように表される。
【0041】
【数61】
【0042】一方、上記乱れ周期2π/ωLは、ある点
を渦が通過するに要する時間である時間スケールT
*L(インテグラルタイムスケール)に等しいと仮定でき
るので、次式(15)が成立する。
【0043】
【数62】
【0044】したがって、この場合における抗力ΔRv
の2乗平均値は、上式(14),(15)を式(12)
に代入することによって、次式(16)のように表され
る。
【0045】
【数63】
【0046】気泡1個当たりの空間要素における壁面上
の平均長さ、すなわち1つの気泡が動き回れる空間にお
ける壁面上の平均長さは、壁面近傍のボイド率をαw
すると、(π/6αw1/2bと表されるから、気泡抗
力によるせん断応力の減少量τtは、下式(17)のよ
うに表される。
【0047】
【数64】
【0048】ここで、せん断応力は、減少要素だけでな
く運動量交換による増加要素もある。気泡が移動する
と、移動前の場所に同体積の水が流れ込み運動量の移動
が起こる。気泡が乱流境界層内で運動することは、同体
積の水が付加的に運動することと等価であると考えるこ
とができる。付加的な応力発生機構は流体粒子の運動に
より発生するレイノルズ応力と同じであるから、せん断
応力の増加量をτmと置くと、該増加量τmは次式(1
8)によって表される。
【0049】
【数65】
【0050】この増加量τmは、式(10)によって規
定される高周波数帯域の場合、次式(19)のように表
される。
【0051】
【数66】
【0052】この式(19)によって与えられるせん断
応力の増加量τmと上式(17)によって与えられるせ
ん断応力の減少量τtとを比較すると、ここでは式(1
0)によって規定される高周波帯域を考えているので、
増加量τmは、減少量τtに対して1/TωLについて3
次以上のオーダーとなる。1次のオーダーを越えるもの
は無視するとすると、増加量τmを無視することができ
る。したがって、高周波帯域におけるせん断応力につい
ては、増加要素よりも減少要素の方が支配的であること
が分かる。
【0053】ここで、せん断応力の変化は、気泡の混入
によって混合長がlmbだけ見かけ上減少して発生したも
のであると仮定すると、壁面におけるせん断応力τ
wは、次式(20)のように表すことができる。この式
(20)において、μmは見かけ上の粘性係数(分子粘
性項の係数)である。
【0054】
【数67】
【0055】この壁面におけるせん断応力τwは、乱流
領域において第1項の分子粘性の項よりも第2項の渦粘
性の項(レイノルズ応力)の方が大きくなるので、次式
(21)のように表される。
【0056】
【数68】
【0057】この式(21)において、τw0は、液相固
有のレイノルズ応力である、また、上述した気液間の速
度差に起因するせん断応力の減少量τtについては、次
式(22)のように表すこととする。
【0058】
【数69】
【0059】この式(22)を上式(17)と比較する
と、混合長変化量lmbは、次式(23)のように与えら
れる。
【0060】
【数70】
【0061】乱れの時間スケールT*Lに乱れ速度の2乗
平均すなわち速度スケールを掛けたものは、気泡の平均
自由行程の1/2(長さスケール)を表すので、混合長
に比例すると考えることができる。特に対数則が成立す
る領域においては、次式(24)が成立し、すなわち次
式(25)が成立する。ここで、bは比例定数である。
括弧内のνL/Uτは、粘性底層の長さスケール(壁変
数)である。
【0062】
【数71】
【0063】
【数72】
【0064】上式(25)を式(23)に代入すると、
混合長変化量lmbは、次式(26)のように表される。
【0065】
【数73】
【0066】比例定数をまとめて経験定数aとして表す
と、式(26)は下式(27)のように表される。な
お、経験定数aは、式(28)のように表される。
【0067】
【数74】
【0068】
【数75】
【0069】式(27)から、気泡が存在しない場合の
壁法則の定数κの修正により、気泡の影響を表現できる
ことが分かる。整理すると、下式(29)〜(32)の
ようになる。
【0070】
【数76】
【0071】
【数77】
【0072】
【数78】
【0073】
【数79】
【0074】また、対数則を引き続き用いることも可能
であり、上式(25)の前提に対しても矛盾しない。す
なわち、気泡の混入による壁法則の定数κの修正量κ2
は、次式(33)のように表される。
【0075】
【数80】
【0076】したがって、気泡が存在する場合における
見かけ上の壁法則の定数κ1は、気泡が存在しない単層
流における壁法則の定数κから上記修正量κ2を減算す
ることによって、下式(34)のように表される。
【0077】
【数81】
【0078】この式(34)は極めて興味深い形をして
いる。乱れ制御のパラメータは括弧内にあり、見かけは
粘性底層の長さスケールと気泡の長さスケール(気泡の
直径に比例した量db/a)との比になっている。式(2
5)から、乱れのスケールは粘性底層の長さスケールと
深い関係にあると言えることから、本実施形態のモデル
は、乱れのスケールと気泡の直径の比が乱れ制御のパラ
メータである数理モデルとなっている。このことだけを
見ると、気泡が乱れの長さスケールに比べて相対的に小
さい場合に乱れの制御が起こるという実験結果に対し
て、矛盾していない。
【0079】1.2 低周波数帯域の場合 低周波数帯域の場合には、式(17)によって与えられ
る気泡抗力によるせん断応力の減少量τtは、オーダー
が(TωL2であり非常に小さい。よって、せん断応力
τwは、気泡がない場合のせん断応力τw0に増加量τm
加わり、下式(35)のように表される。
【0080】
【数82】
【0081】2.摩擦抵抗 次に、上述したようにせん断応力の減少要素が支配的で
ある高周波数帯域の漸近解として、摩擦抵抗低減比Cf/
f0を以下のように求める。ここでは、近似的ではある
が、複雑な陰関数表記を回避できる対数則を用いた方法
により、摩擦抵抗低減比Cf/Cf0を求める。なお、添字
「0」は気泡がない単相流の場合を示している。
【0082】気泡が存在しない場合において、流場の速
度分布について対数則が成立するところでは、下式(3
6)〜(39)が成立する。ここで、Bは定数である。
【0083】
【数83】
【0084】
【数84】
【0085】
【数85】
【0086】
【数86】
【0087】また、これら式(36)〜(39)に対し
て、気泡が存在する場合については、見かけ上の壁法則
の定数κ1を用いて下式(40)〜(43)のように表
される。
【0088】
【数87】
【0089】
【数88】
【0090】
【数89】
【0091】
【数90】
【0092】ここで、Bを気泡の有無に関係なく一定と
した理由は、壁面近傍(logY+→0)で乱流構造が変化
しないことを示唆している実験結果(岩品知明:東京大
学工学部船舶海洋工学科,卒業論文「マイクロバブルに
よる乱流摩擦抵抗低減のメカニズム」,1998)を、
Bが一定になっていると解釈したからである。
【0093】上記式(36),(40)において、位置
変数yが乱流境界層厚δに等しい(乱流境界層厚δは気
泡の有無に関わらず同じ)とすると、下式(44),
(45)のように書き改められる。
【0094】
【数91】
【0095】
【数92】
【0096】一方、気泡が介在しない場合の摩擦抵抗C
f0と気泡が介在する場合の摩擦抵抗Cfは、各々に式
(46),(47)のように表される。
【0097】
【数93】
【0098】
【数94】
【0099】ここで、この式(45)から式(44)を
減算すると、式(48)のように表される。
【0100】
【数95】
【0101】この式(48)について、(Cf/Cf0
1/2=1の近傍で展開し、1次までの項を取ると、下式
(49)が得られる。
【0102】
【数96】
【0103】さらに、気泡が存在する場合における壁法
則の定数κ1の中の底層スケールνL/Uτについて展開
すると、式(50)が得られる。
【0104】
【数97】
【0105】この式(50)を式(33)に代入し、そ
れを式(34)に代入した後に式(49)に代入する。
そして、摩擦抵抗低減比Cf/Cf0について解くと、下式
(51)が得られる。
【0106】
【数98】
【0107】なお、この式(51)において、κ10,κ
20,δ0 +は、次式(52)〜(54)によって各々与え
られるものである。なお、マイクロバブルの流れでは、
微小粒子の分散媒質であるサスペンションとは、気泡の
直径に関する条件が異なるため、第0近似的にνL=ν
とする。
【0108】
【数99】
【0109】
【数100】
【0110】
【数101】
【0111】さらに、船体壁面におけるせん断力の無次
元化において、共通にρU2/2を用いることにより、上
式(51)によって与えられる摩擦抵抗低減比Cf/Cf0
は、次式(55)のように表される。
【0112】
【数102】
【0113】3.検証 次に、上式(55)について、40m模型船によって取
得されたデータを用いて検証する。なお、この検証にお
いて、上述した経験係数aについてはGuin等の実験
データ(1996)を用いて決定した。
【0114】40m模型船の船尾側の乱流境界層は、気
泡径(約2mm)に比較して十分に厚く(数百mm)、
かつ、乱れによる拡散の影響よりも浮力の影響の方が大
きい。したがって、壁面近傍に集中する気泡量は、概ね
主流速と空気流量とから推定できる。
【0115】40m模型船の壁面近傍のボイド率につい
ては、以下のように考える。すなわち、イジェクション
による小規模渦の中心の流速を主流速Uの半分、つまり
0.5Uとし(Kobayasi,1983)、さらに1/7条則を
適用すると、小規模渦の中心の壁面からの位置は概略
0.1δの高さとなる。渦の端は、この2倍の高さつま
り0.2δであるから、壁面から0.1δ〜0.2δの
高さまでの領域が乱流応力の発生に大きく関係すると考
えられる。
【0116】このような考察に基づき、本実施形態で
は、壁面から0.2δの高さまでの領域における平均ボ
イド率をαwとする。また、気泡がない場合の諸量につ
いては1/7乗則より求めると共に、経験係数aについ
ては、図3に示すようにGuin等の実験データ(199
6)に沿うように20とした。
【0117】図4〜図7に、検証結果を示す。図4は、
40m模型船の速力をパラメータとして気泡を前から噴
き出した場合における摩擦抵抗低減比Cf/Cf0の実験デ
ータと上記式(55)に基づいて算出された摩擦抵抗低
減比Cf/Cf0(理論値)を比較したもの、図5は、40
m模型船の速力をパラメータとして気泡を中央から噴き
出した場合における実験データと理論値とを比較したも
の、図6は、40m模型船の速力をパラメータとして気
泡を船首及び中央から噴き出した場合における実験デー
タと理論値とを比較したもの、また図7は水中に噴射さ
れる気体の流量をパラメータとして気泡を前から噴き出
した場合における実験データと理論値とを比較したもの
である。
【0118】4.結論 上述したように従来の技術において検討が十分でなかっ
た点を念頭において、従来よりもより厳密な検討を行う
ことにより、上記気泡の介在による摩擦低減効果を示す
解析解つまり上式(55)を導いた。
【0119】そして、この式(55)を導出するに当た
り、気泡の時定数と乱流境界層の乱れ周期のオーダーの
比較により、低周波数帯域(TωL≪1)、中周波数帯
域T(ωL=O(1))及び高周波数帯域(TωL≫1)
に場合分けし、今回は高周波数帯域について解析解(漸
近解)を求めた。この高周波数帯域については、[底層
スケール]/[気泡径]に対して摩擦抵抗低減比Cf/C
f0は単調減少(気泡の効果大)となる。
【0120】また、高周波数帯域において、せん断応力
の増加量τmは、減少量τtに対して小さなものとなる。
しかし、中周波数帯域においては、増加量τmを無視で
きなくなり、低周波数帯域では逆に増加量τmが支配的
となる。すなわち、高周波数帯域では、気泡運動のレス
ポンスが悪く動きが小さいために運動量交換が行われ
ず、気泡抗力による応力減少の影響が大きくなる。これ
に対して、低周波数帯域では、運動量交換が活発に行わ
れて応力増加の影響が大きくなる。図8は、このような
低周波数帯域、中周波数帯域及び高周波数帯域における
摩擦抵抗低減比C f/Cf0の傾向を概念的に示した図であ
る。
【0121】図4〜図7に示すように、本実施形態によ
る摩擦抵抗低減比Cf/Cf0の解析解は、定性的に実験デ
ータと一致している。特に、持続距離については大幅に
改善されたと言える。また、40m模型船の速力が上昇
するに従って一致性が良くなるのは、解析解を求める際
の前提条件である高周波数帯域に近づくためであると考
えられる。なお、今後の課題として、全周波数帯域にお
ける解析解の導出、数値計算等があげられる。
【0122】〔第2実施形態〕次に、本発明の第2実施
形態について説明する。上記第1実施形態では、気泡が
存在する場合の壁法則の定数κ1は、上記式(33)に
よって与えられる修正量κ2を気泡が存在しない場合の
壁法則の定数κから減算することよって与えられるも
の、すなわち式(34)によって与えられるものとし
て、摩擦抵抗低減比Cf/Cf0の解析解つまり式(55)
を導出した。
【0123】しかし、式(55)の入力変数である壁面
近傍ボイド率αwと気泡径dbについては十分に検討を加
えなかった。気泡径dbについては、種々の計測データ
があり、一義的に決定することが困難な面がある。
【0124】本実施形態では、上式(34)と以下に説
明するボイド率分布の支配方程式とを連立させて気泡径
bと経験定数aとを消去することにより、気泡径db
代えてボイド率分布を入力変数とした摩擦抵抗低減比C
f/Cf0の解析解の導出について説明する。
【0125】なお、以下の説明では、ボイド率分布が次
の安定条件により直線的な分布が最も安定なパターンで
あると考え、One-way coupling (流体が気泡に与える
影響を考慮すること)あるいは Two-way coupling(流
体が気泡に与える影響を考慮すると共に、気泡が流体に
与える影響をも考慮すること)により、摩擦抵抗低減比
f/Cf0を計算する方法についても言及する。
【0126】〔安定条件〕 A.ボイド率分布の支配方程式が発散しないこと。 B.乱れの抑制を加味した運動エネルギーと浮力ポテン
シャルエネルギーを加算したエネルギーが最小になるこ
と。
【0127】1.ボイド率分布の支配方程式 基本的仮定や導出方法については、43rd JSPC
資料(第43回 日本造船学会推進性能研究委員会資
料,1997)に従うものとし、気泡の拡散を支配する
因子については簡単化のために乱れと浮力を考える。こ
のとき、気泡の速度はすべて抗力によって決定される。
この抗力としてStokesの式を用いると、力と速度とは比
例関係となるので、気泡の運動を考えるときに力をベー
スに運動方程式を立てる必要がなく、各要素速度の重ね
合わせでトータル速度を表すことができる。また、気泡
を拡散粒子として取り扱い、該拡散粒子によって構成さ
れる連続的な粒体つまり気相を考える。
【0128】図9は、本実施形態における気泡の解析モ
デルである。乱流境界層に点A,点B,点C及び点Dに
よって囲まれた検査領域を考え、該検査領域の周囲に4
つの気泡すなわち拡散粒子(1)〜(4)が位置する状
態を想定する。この各気泡(1)〜(4)の中心は、該
各気泡(1)〜(4)の運動中心であり、破線は各々に
各気泡(1)〜(4)の平均自由行程を直径とする円で
ある。そして、これら運動の中心間距離は、平均自由行
程と等しいと仮定する。
【0129】ここで、2次元乱流境界層理論では、平均
自由行程に相当するものは混合長であるから、第1次近
似として上記中心間距離を気相の混合長lbを用いてc
・lbと表す。cは経験定数であり、拡散係数としての
物理的な意味を持つ。なお、上記中心間距離は、乱れに
よる隣り合う渦と渦との距離であり、渦の長さスケール
と捉えることもできる。
【0130】上記検査領域の境界ABから境界CDに向
かって流れるx方向の流束をjx、また境界ADから境
界BCに向かって流れるy方向の流束をjyとした場
合、質量保存の法則により下式(56)が成立する。
【0131】
【数103】
【0132】局所ボイド率がαである気相が拡散し、か
つ、水の平均速度による抗力や浮力によって移流する場
合、上記流束をjx,jyは、下式(57),(58)の
ように近似できる。ここで、qgは浮力による気泡の上
昇速度、vbは気泡の速度である。
【0133】
【数104】
【0134】
【数105】
【0135】式(57)の第2項は、図9における気泡
(2)の乱れ速度及び気泡(4)の乱れ速度によって誘
起される流束である。また、式(58)の第3項は、気
泡(1)の乱れ速度及び気泡(3)の乱れ速度によって
誘起される流束である。
【0136】ここで、次式(59)〜(61)に示す前
提条件を設定する。これらの条件は、上式(57),
(58)を式(56)に代入した場合に、他の項と比較
して相対的に無視するという意味でゼロとしたものであ
り、そのオーダーは1/7乗則を基に評価した。なお、
Reは、レイノルズ数である。
【0137】
【数106】
【0138】
【数107】
【0139】
【数108】
【0140】これらの条件の下に、式(57),(5
8)を式(56)に代入すると、式(62)が得られ
る。
【0141】
【数109】
【0142】ここで、y方向の流束が船体壁面でゼロと
なることを考慮すると、次式(63)が成立する。
【0143】
【数110】
【0144】この式(63)を展開すると、次式(6
4)が導かれる。本実施形態では、この式(64)をボ
イド率分布の支配方程式とする。
【0145】
【数111】
【0146】この式(64)において、第1項及び第2
項は、乱れによる拡散を表す流束である。このうち、第
1項は液相固有の乱れによる拡散を表す要素、第2項は
ボイド支配による拡散を表す要素と考えられる。
【0147】2.気相の混合長 上記気相の混合長lbを求めるには、気泡の運動方程式
をベースとした検討を再度行う必要がある。流場の速度
分布に対数則が成立する船体の壁面近傍において、気相
の混合長lbと実際の(見かけではない)液相混合長l
m0の関係は、次式(65),(66)のとおりに導かれ
る。
【0148】
【数112】
【0149】
【数113】
【0150】ここで、Uτは摩擦速度である。また、定
数bは、次式(67)を満足すると共に、上述した経験
係数aに対して式(68)の関係を有するものである。
【0151】
【数114】
【0152】
【数115】
【0153】3.解 ボイド率分布を求めるに当たり、液相混合長lm0を便宜
上次式(69)のように表現しておく。
【0154】
【数116】
【0155】ここで、流場の速度分布に対数則が成立す
る領域では、次式(70),(71)が成立する。
【0156】
【数117】
【0157】
【数118】
【0158】式(66),(69)から気相の混合長l
bを求め、該気相の混合長lbと式(70),(71)を
ボイド率の支配方程式である式(64)に代入して整理
すると、次式(72)が得られる。なお、K0は定数で
ある。
【0159】
【数119】
【0160】ここで、局所ボイド率αが位置変数yのみ
の関数であると仮定すると、式(72)は式(73)の
ように書き改められる。
【0161】
【数120】
【0162】この式(73)は変数分離型の微分方程式
であり、、下式(74)のように容易に解析解を求める
ことができる。
【0163】
【数121】
【0164】ここで、定数K0及び定数K1は、次式(7
5),(76)によってそれぞれ与えられる。式(7
6)において、αavは乱流境界層内における平均ボイド
率である。
【0165】
【数122】
【0166】
【数123】
【0167】これら定数K0及び定数K1は、ボイド率分
布を決定するパラメータである。このうち、定数K0
ボイドのピーク位置を規定するパラメータであり、定数
1はボイド率全体の大きさを規定するパラメータであ
る。
【0168】図10は、式(74)において変数K0
変化させた場合における局所ボイド率αのy方向の変化
を示した図である。(a)はK0<1(ケース1)の場
合、(b)はK0=1の場合(ケース2)、(c)はK0
>1(ケース3)の場合における局所ボイド率αの変化
を示している。
【0169】ケース1の場合には、船体壁面(y=0)
において局所ボイド率αは発散する。しかし、ケース2
では発散せず、船体壁面において最も大きな値となる。
このケース2の場合は、修正された壁法則の定数κ1
変化により、見かけ上乱れが最も抑制されて運動エネル
ギーが最小となると共に、ケース3に比較して浮力ポテ
ンシャルエネルギーも小さくなる。したがって、ケース
2が最も安定したボイド率分布であると考えることがで
きる。
【0170】上式(75)に示されるように、変数K0
は気泡径dbの4乗に比例して変化するので、局所ボイ
ド率αは、気泡径dbの変化に対して非常に敏感であ
る。経験定数aも変数K0に対して大きな影響を持つこ
とを考慮すると、実際には広範囲に分布している気泡径
bを一義的に決定すること、及び気泡径dbを入力変数
としてボイド率分布を推定することは極めて困難であ
る。
【0171】そこで、本実施形態では、式(74)によ
って与えられるボイド率分布、つまり変数K0,K1を調
整することにより実際のボイド率分布を同定し、該同定
によって得られた変数K0から式(75)を用いて(db
/a)を求め、式(34)と連立させることにより摩擦
抵抗低減比Cf/Cf0に関するTwo-way couplingの方程式
を構成する。
【0172】また、式(75)における摩擦速度Uτを
気泡が混在しない場合における摩擦速度Uτ0に置き換
え、また気泡が混在する場合の壁法則の定数κ1を気泡
が混在しない場合の壁法則の定数κに置き換えることに
より、簡便なOne-way couplingの推定式をも構成するこ
とができる。
【0173】図11は、One-way coupling法及びTwo-wa
y coupling法の各計算手順を模式的に示したものであ
る。One-way coupling及びTwo-way couplingという用語
は、ラグランジアン・モデル等で用いられる用語である
が、本実施形態の計算法を的確に示す表現として好まし
いので、以下の説明にも用いる。One-way coupling法
は、気泡に係わる計算結果に基づいて気泡が存在する場
合の水に係わる計算を行うという計算法であり、Two-wa
y coupling法は、気泡に係わる計算結果に基づいて気泡
が存在する場合の水に係わる計算を行い、該気泡が存在
する場合の水に係わる計算結果を気泡の計算にフィード
バックするという計算方法である。
【0174】4.検証 4.1 2次元チャンネル ここでは、上記経験定数cの決定、近似法の評価及びモ
デルの定性的表現力の調査を行う。2次元チャンネル
(プレートオントップ)の実験結果(Guin他,19
96)を見ると、流速が実際の船速に近いU=5〜8m
l/s、ボイド率が約7%以下では、チャンネル中央で
ボイド率はゼロに近く、中心から離れて壁に近づいて行
くとほぼ直線的に増加する(図12参照)。このボイド
率分布パターンは、上記ケース2と類似している。仮
に、適用範囲が限定されるとしても、ボイド率分布のバ
ターンをケース2に固定することにより推定精度が維持
できるならば、実用上有利となる。
【0175】そこで、Two-way coupling法及び計測され
た壁面近傍ボイド率を用いた計算に加えて、One-way co
upling法を基にボイド率を直線分布(ケース2:K0
1)と近似した簡便な場合についても計算し、その適用
範囲について検討する。試計算は後述のとおり、Gui
n等の2次元チャンネル及び40m模型船について行っ
た。なお、上記第1実施形態と同様に、壁面近傍のボイ
ド率αwを壁面から0.2δだけ離れたところまでの平
均ボイド率とした。
【0176】図13に、チャンネル内流れにおける摩擦
抵抗低減比Cf/Cf0に対する平均ボイド率αm(チャン
ネルの全幅ベース)の影響に関する計算結果を示す。計
算はGuin等により計測されたボイド率を上式(7
5),(76)により壁面近傍のボイド率が同じになる
ように同定し、かつ、Two-way coupling法で計算したも
の(△マーク)と、簡便法としてOne-way coupling法で
計算したもの(ロマーク)をプロットした。また、参考
のため、Madavan(1984)のデータもプロッ
トした。
【0177】△マークの計算においては、入力であるボ
イド率分布に計測値を用いており、せん断応力モデル固
有の特性に関する検証を目的としている。傾向に関する
定性的一致性は良好である。しかし、平均ボイド率αm
が0.05を越えたあたりから、定量的にはかなりの差
異が見られるようになる。これはGuin等の摩擦抵抗
低減比Cf/Cf0は、気泡がない場合の主流速Um0で正規
化されている一方、計算では、便宜上、Cfは気泡あり
の主流速、Cf0は気泡なしの主流速でそれぞれ正規化さ
れているため、特に流路が狭い場合は定量的に一致しな
くなることが主因と思われる。
【0178】流路が狭い場合、計算により気泡ありの主
流速を精度良く推定することは課題として残されてい
る。ちなみに、Madavan等が用いた水槽は、断面
が508×714mmと比較的大きく、このような正規
化の違いによる影響は比較的小さい。また、壁面ボイド
率は、計測された絶対値を用いているので、ボイド率の
絶対値の計測に誤差がある場合には、この誤差が計算に
直接影響を与えることにもなる。
【0179】ロマークの計算は、簡便な方法がどの範囲
で適用できるかを調べるためのものである。△マークと
一致するのは平均ボイド率αmが約0.05までとみら
れる。後述する40m模型船による試験においては、そ
のデータの中で最も平均ボイド率αmが高くなる場合
は、7m/s,300l/min,x=3m(最も船首側
に位置するセンサ取付位置)であり、そのときの平均ボ
イド率αmは約0.06(境界層厚さベース)である。
【0180】全体としては、平均ボイド率はずっと低い
ので、ロマークの計算法と同じ簡便な計算法でも精度は
維持できると考えられる。このとき、壁面近傍ボイド率
αwは、境界層内平均ボイド率αavを用いることによ
り。、式(77)のように表される。 αw=2αav (77) なお、経験定数cについては、0.01を用いた。以後
の計算においても、c=0.01として計算を行ってい
る。
【0181】4.2 40m平底模型船による試験40
m模型船については、上記ケース2の線形相分布になる
として、One-waycoupling法による計算を実施した。
【0182】図14〜図17は、計算結果及び計測結果
を示すグラフである。このうち、図14は、船首側のノ
ズルから気体を吹き出し、速力を変化させた場合の原点
からの距離の影響を示している。図15は、船体中央部
のノズルから気体を吹き出し、速力を変化させた場合の
原点からの距離の影響を示している。図16は、船首側
及び船体中央部の両方のノズルから気体を吹き出し、速
力を変化させた場合の原点からの距離の影響を示してい
る。図17は、船首側のノズルから気体を吹き出し、該
気体の流量を変化させた場合の原点からの距離の影響を
示している。
【0183】図14を見ると、7m/sの場合の定量的
一致性については、5m/sの場合よりも劣っている。
これは、高周波数帯域の仮定が5〜6m/sの流場に合
っていない可能性がある。周波数による解析は今後の課
題である。
【0184】船体中央付近から気体を吹き出した場合に
差異が見られる原因としては、実験では吹き出し直後に
は、気泡運動の動的影響により壁面近傍のボイド率が一
時的に上がるためと考えられる。下流にいく程一致性が
向上するのは、気泡運動の動的影響が薄れるためである
と考えられる。なお、図17を見ると、本実施形態は、
流量の影響については良好に表現できていると考えられ
る。
【0185】5.結論 (1)乱流モデルとボイド率分布の支配方程式とを連立
させることにより、気泡径dbの代わりにボイド率の分
布パターンを入力として摩擦抵抗低減比Cf/Cf0を算出
する方程式を構成した。また、経験定数aは上記連立に
よって消去される。(2)ボイド率分布を考慮した高周
波数帯域における漸近解(乱流モデル)の定量的表現は
良好であることが分かった。
【0186】(3)適用範囲は限定されるが、ボイド率
の分布パターンを直線的なものに固定した場合でも推定
計算が可能である。流速が5〜8m/sかつ平均ボイド
率αavが0.05以下であれば、ボイド率を直線分布に
近似しても気泡による摩擦抵抗低減効果の傾向を推定す
ることができる。この場合、One-way coupling法を用い
ても推定精度を維持できる。
【0187】低速かつ底空気流量時に、ボイド率の分布
パターンが直線的になることは実験結果から設定した仮
定であり、本実施形態では発散せずかつエネルギーが最
小になることを安定条件としたが、その詳細機構の解明
は課題として残された。
【0188】乱れによる外乱が少なく、かつ体積力が船
体壁面の内部に向かって働くとき、船体壁面に近いほど
気泡の体積が大きくなることが安定条件である可能性も
ある。気泡の混入により流体の見かけ上の粘性が変化
し、船体壁面が高粘度流体の塊が付着して広がっていく
のと同様の現象が起きている可能性もある。あるいは、
安定化に向けて様々な大きさの気泡が層間を移動した
り、崩壊及び合体を行うことにより、マクロ的な気泡ス
ケールの調整が行われ、ボイド拡散力と浮力とが自然に
釣り合うようになるのかもしれない。
【0189】ただし、理論上、ボイド率の分布パターン
は気泡径の4乗に効くので、そのマクロ的な気泡スケー
ルの調整はほんの僅かなものと推測される。様々な気泡
スケールが入り乱れた場における安定化現象のミクロ的
解明について、これ以上の議論は今後の大きな課題と考
えられる。
【0190】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係わる船
舶における気泡による摩擦抵抗低減効果の解析方法によ
れば、以下のような効果を奏する。 (1)航行中の船体から船体表面近傍の流場に気泡を噴
出して発生する摩擦抵抗低減効果を解析する方法におい
て、船体表面の流場の流線方向(x方向)及び船体壁面
に対して鉛直方向(y方向)の気泡の運動から導かれた
気泡に働く抗力ΔRvに基づいて、気泡の時定数Tと流
場の乱れ周波数ωLとの積が1に対して十分大きい場合
(高周波数帯域の場合)における気泡の介在によるせん
断応力の減少量τtを求め、該せん断応力の減少は混合
長が減少して発生したものとして気泡径dbを変数とす
る気泡が存在する場合の壁法則の定数κ1を求め、該壁
法則の定数κ1と気泡が存在しない場合の局所摩擦抵抗
係数Cfとの関係式及び気泡が存在しない場合の壁法則
の定数κと局所摩擦抵抗係数Cf0との関係式に基づい
て、前記高周波数帯域の場合における摩擦抵抗低減比C
f/Cf0の解析解を求めるので、気泡による船体表面の摩
擦抵抗低減効果をより精度良く解析することが可能であ
る。 (2)また、気泡径dbを変数とする気泡が存在する場
合の壁法則の定数κ1について、実際のボイド率の分布
パターンからボイド率分布の支配方程式を特定すること
により気泡径dbを消去するので、種々の計測データに
よって一義的に決定することが困難であり、かつ上記摩
擦抵抗低減比Cf/Cf0の解析解において影響力の大きな
気泡径dbを入力変数としない摩擦抵抗低減比Cf/Cf0
の解析解を導出することができる。したがって、気泡の
介在による摩擦抵抗低減効果をより精度良く推定するこ
とができる。 (3)従来の理論では平板(船底)の摩擦抵抗低減効果
しか考慮できなかったが、船体壁面に対して鉛直方向
(法線方向)を考慮した式展開により傾斜船体における
摩擦抵抗低減効果をも推定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態における乱流モデルの
概念図である。
【図2】 本発明の第1実施形態に係わり、高周波数帯
域の場合に取り扱う流場を示す説明図である。
【図3】 本発明の第1実施形態に係わり、周波数帯域
毎の摩擦抵抗低減比Cf/Cf0の傾向を示す説明図であ
る。
【図4】 本発明の第1実施形態に係わり、経験定数a
の調整を示すグラフである。
【図5】 本発明の第1実施形態の検証結果を示す第1
のグラフである。
【図6】 本発明の第1実施形態の検証結果を示す第2
のグラフである。
【図7】 本発明の第1実施形態の検証結果を示す第3
のグラフである。
【図8】 本発明の第1実施形態の検証結果を示す第4
のグラフである。
【図9】 本発明の第2実施形態における乱流モデルの
概念図である。
【図10】 本発明の第2実施形態に係わり、ボイド率
の分布パターンを示す説明図である。
【図11】 本発明の第2実施形態に係わり、摩擦抵抗
低減比Cf/Cf0の計算手順を示す模式図である。
【図12】 本発明の第2実施形態に係わり、ボイド率
の分布パターンの検証結果を示すグラフである。
【図13】 本発明の第2実施形態に係わり、2次元チ
ャネルにおける平均ボイド率の影響の検証結果を示すグ
ラフである。
【図14】 本発明の第2実施形態の検証結果を示す第
1のグラフである。
【図15】 本発明の第2実施形態の検証結果を示す第
2のグラフである。
【図16】 本発明の第2実施形態の検証結果を示す第
3のグラフである。
【図17】 本発明の第2実施形態の検証結果を示す第
4のグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 加藤 洋治 千葉県松戸市小金原5−31−9

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 航行中の船体から船体表面近傍の流場に
    気泡を噴出して発生する摩擦抵抗低減効果を解析する方
    法であって、 船体表面の流場の流線方向(x方向)及び船体壁面に対
    して鉛直方向(y方向)の気泡の運動から導かれた気泡
    に働く抗力ΔRvに基づいて、気泡の時定数Tと流場の
    乱れ周波数ωLとの積が1に対して十分大きい場合(高
    周波数帯域の場合)における気泡の介在によるせん断応
    力の減少量τtを求め、 該せん断応力の減少は混合長が減少して発生したものと
    して気泡径dbを変数とする気泡が存在する場合の壁法
    則の定数κ1を求め、 該壁法則の定数κ1と気泡が存在しない場合の局所摩擦
    抵抗係数Cfとの関係式及び気泡が存在しない場合の壁
    法則の定数κと局所摩擦抵抗係数Cf0との関係式に基づ
    いて、前記高周波数帯域の場合における摩擦抵抗低減比
    f/Cf0の解析解を求める、 ことを特徴とする船舶における気泡による摩擦抵抗低減
    効果の解析方法。
  2. 【請求項2】 気泡径dbを変数とする気泡が存在する
    場合の壁法則の定数κ1について、実際のボイド率の分
    布パターンからボイド率分布の支配方程式を特定するこ
    とにより気泡径dbを消去することを特徴とする請求項
    1記載の船舶における気泡による摩擦抵抗低減効果の解
    析方法。
  3. 【請求項3】 ボイド率分布の支配方程式を特定する場
    合、該支配方程式が発散しないこと及び乱れの抑制を加
    味した気泡の運動エネルギーと浮力ポテンシャルエネル
    ギーとの和が最小となることを安定条件とすることを特
    徴とする請求項2記載の船舶における気泡による摩擦抵
    抗低減効果の解析方法。
  4. 【請求項4】 航行中の船体から船体表面近傍の流場に
    気泡を噴出して発生する摩擦抵抗低減効果を解析する方
    法であって、 気泡の付加質量mA、気泡径db及び粘性係数μLからな
    る流場の流線方向(x方向)の気泡の運動方程式(1)
    と船体表面に対して鉛直方向(y方向)の気泡の運動方
    程式(2)とをフーリエ変換することにより、気泡の時
    定数Tと流場の乱れ周波数ωLとからなるx方向のゲイ
    ンGx及びy方向のゲインGyを式(3),(4)に基づ
    いて求め、 流場の乱れ周期2π/ωLがインテグラルタイムスケール
    *Lに等しいと仮定して、気泡の時定数Tと流場の乱れ
    周波数ωLとの積が1に対して十分大きい場合(高周波
    数帯域の場合)における気泡の抗力ΔRvを次式(1
    6)のように気泡がない場合の壁法則の定数κ、密度ρ
    L、動粘性係数νL及びx方向の流速uLの時間平均から
    求め、 前記抗力ΔRvによるせん断力の減少量τtを次式(1
    7)のように求め、 前記せん断力の減少は混合長がlmbだけ減少して発生し
    たと仮定した場合におけるせん断力の減少量τtの式
    (22)と前記式(17)との比較に基づいて、経験定
    数a、気泡径db、液相の動粘性係数νL、摩擦速度Uτ
    及び船体壁面近傍のボイド率αwからなる混合長減少量
    mbを式(27)のように求め、 該式(27)に基づいて壁法則の定数の修正量κ2を式
    (33)のように求めると共に、前記壁法則の定数κか
    ら前記修正量κ2を差し引くことにより経験定数aと気
    泡径dbとをパラメータとする気泡が存在する場合の壁
    法則の定数κ1を式(34)のように求め、 流場の速度分布について対数則が成立するとした場合に
    気泡が存在しない場合について導かれる式(36)及び
    気泡が存在する場合について導かれる式(40)に対し
    て、位置変数yが乱流境界層厚δに等しいとして気泡が
    存在しない場合における局所摩擦抵抗係数Cfと壁法則
    の定数κとの関係式(44)及び気泡が存在する場合に
    おける局所摩擦抵抗係数Cf0と壁法則の定数κ1との関
    係式(45)を求め、 該関係式(45)から前記関係式(44)を減算して得
    られた式(48)を(Cf0/Cf1/2=1の近傍で展開
    し、かつ、1次までの項を取ることによって式(49)
    を求めると共に、前記式(48)について気泡が存在す
    る場合の壁法則の定数κ1の中の底層スケールνL/Uτ
    について展開して式(50)を求め、 該式(50)を前記式(33)に代入したものを前記式
    (34)に代入した後、前記式(49)に代入して得ら
    れた式を解くことにより、前記高周波数帯域の場合にお
    ける摩擦抵抗低減比Cf/Cf0の解析解を式(55)のよ
    うに求める、 ことを特徴とする船舶における気泡による摩擦抵抗低減
    効果の解析方法。 【数1】 【数2】 【数3】 【数4】 【数5】 【数6】 【数7】 【数8】 【数9】 【数10】 【数11】 【数12】 【数13】 【数14】 【数15】 【数16】 【数17】 【数18】
  5. 【請求項5】 船体近傍の流場の流線方向(x方向)の
    流速jxと船体に対して鉛直方向(y方向)の流速jy
    らなる質量保存式(56)を、局所ボイド率αの気相が
    拡散しかつ流場の平均速度による抗力と浮力とによって
    移動すると仮定し、 局所ボイド率α、x方向の流速uLの平均値、y方向の
    気相の速度vbの2乗平均値、経験定数c、気相の混合
    長lbからなる式(57)のように流速jxを近似すると
    共に、x方向の流速uLの平均値、局所ボイド率α、気
    泡の上昇速度qg、経験定数c、気相の混合長lbからな
    る式(58)のように流速jyを近似することにより、
    ボイド率分布の支配方程式(64)を求め、 該ボイド率分布の支配方程式(64)を局所ボイド率α
    について解いて、定数K0,K1と乱流境界層厚δとをパ
    ラメータとする式(74)を求め、 実験的に得られたボイド率の分布パターンから定数K0
    の値を決定すると共に、該定数K0の値を定数K0を与え
    る式(75)に代入して得られた式と式(34)を連立
    させることにより、気泡が存在する場合における壁法則
    の定数κ1を気泡径dbと経験定数aとに代えて、ボイド
    率分布をパラメータとする式として摩擦抵抗低減比Cf/
    f0の解析解を求めることを特徴とする請求項4記載の
    船舶における気泡による摩擦抵抗低減効果の解析方法。 【数19】 【数20】 【数21】 【数22】 【数23】 【数24】 【数25】
  6. 【請求項6】 実際のボイド率の分布パターンから定数
    0の値を決定する場合、該支配方程式が発散しないこ
    と及び乱れの抑制を加味した気泡の運動エネルギーと浮
    力ポテンシャルエネルギーとの和が最小となることを安
    定条件とすることを特徴とする請求項5記載の船舶にお
    ける気泡による摩擦抵抗低減効果の解析方法。
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Gursul Proposed mechanism for time lag of vortex breakdown location in unsteady flows
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Rokhsaz Effect of viscous drag on optimum spanwise lift distribution
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