JPH11339632A - 電子放出源及びこれを用いた電子銃 - Google Patents

電子放出源及びこれを用いた電子銃

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JPH11339632A
JPH11339632A JP14160398A JP14160398A JPH11339632A JP H11339632 A JPH11339632 A JP H11339632A JP 14160398 A JP14160398 A JP 14160398A JP 14160398 A JP14160398 A JP 14160398A JP H11339632 A JPH11339632 A JP H11339632A
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JP
Japan
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electron
electron emission
diamond
emission source
conductive substrate
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JP14160398A
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Satoshi Nakada
諭 中田
Eisuke Negishi
英輔 根岸
Koichiro Sumi
紘一郎 住
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Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
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  • Electrodes For Cathode-Ray Tubes (AREA)
  • Solid Thermionic Cathode (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 全く新規な電子放出部を有して比較的に低温
度で電子を放出させることができ、消費電力の低減を図
る。 【解決手段】 導電性基板上に形成され、ダイヤモンド
を主体とする電子放出部と、この電子放出部を加熱する
加熱手段とを備え、上記電子放出部が上記加熱手段によ
り加熱されることにより電子を放出する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、陰極線管
等に用いられる電子放出源及びこれを用いた電子銃に関
し、特に、全く新規な電子放出部を有する電子放出源及
びこれを用いた電子銃に関する。
【0002】
【従来の技術】陰極線管(Cathord Ray Tube、以下、
「CRT」と略称する。)は、蛍光体を有するパネル面
と、蛍光体を発光させるための電子を放出する電子銃と
を備える。この電子銃は、パネル面が嵌め込まれたファ
ンネル部の起端部側のネック部内に配設される。この電
子銃は、概して、電子を放出する電子放出源と、放出さ
れた電子を所定のスポット径を有する電子ビームに変換
する電子レンズとから構成されている。また、電子放出
源は、上面に電子放出部が配設された金属筒内にフィラ
メントヒータを有するように構成されている。
【0003】このように構成された電子銃では、フィラ
メントヒータに通電し、金属筒を加熱するとともに電子
放出部に所定の電界を印加する。これにより、電子放出
部からは、電子が放出されることとなる。
【0004】そして、放出された電子は、電子レンズに
より所定のスポット径を有する電子ビームに変換されて
電子銃から出射される。この電子銃から出射された電子
ビームは、ファンネル部に配設された偏向ヨークにより
所定方向に軌道修正され、パネル面の所定の位置の蛍光
体に達する。このパネル面は、蛍光体に電子ビームが衝
突することにより蛍光体が発光し、全体として所定の画
像を表示することとなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、具体的に、
CRTを構成する電子銃における電子放出部では、電子
放出部として酸化バリウム等の酸化物が用いられ、電子
放出部を約800度以上の温度に加熱することにより電
子を放出させていた。
【0006】しかしながら、電子銃では、電子放出部を
約800℃といった高温度で加熱する場合、大きな電力
が消費されることになる。このため、上述したような電
子銃では、エネルギ消費が膨大であり、省エネルギを達
成することが困難であった。
【0007】また、上述したような電子銃では、例え
ば、電子放出部として酸化バリウム等が用いられ、この
酸化バリウム等を約800度以上の高温度に加熱してい
た。このため、酸化バリウム等の電子放出部は、蒸発及
び変質することがあった。
【0008】このように、酸化バリウム等の電子放出部
が蒸発すると、酸化バリウム等が電子放出源周辺に付着
してしまうため、電子放出源周辺が汚染されてしまう。
このように、電子銃では、電子放出源周辺が汚染されて
しまうと、異常放電を誘発してしまうといった問題点が
あった。また、酸化バリウム等の電子放出部が変質する
と、電子銃の電子放出特性が劣化してしまうといった問
題点が生ずる。
【0009】そこで、本発明は、上述したような従来の
実状に鑑みて、全く新規な電子放出部を有して比較的に
低温度で電子を放出させることができ、消費電力の低減
が図られ、安定的な電子放出特性を示す電子放出源及び
これを用いた電子銃を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】上述した目的を達成した
本発明に係る電子放出源は、導電性基板上に形成され、
ダイヤモンドを主体とする電子放出部と、この電子放出
部を加熱する加熱手段とを備え、上記電子放出部が上記
加熱手段により加熱されることにより電子を放出するこ
とを特徴とするものである。
【0011】以上のように構成された本発明に係る電子
放出源は、ダイヤモンドを主体とする電子放出部を加熱
することにより、ダイヤモンドから電子を放出させる。
このダイヤモンドを主体とする電子放出部は、ダイヤモ
ンドの(111)結晶面が負の電子親和力を持つため、
電子が結晶面から飛び出す際に必要とされるエネルギ障
壁が伝導帯よりも低くなっている。また、ダイヤモンド
を主体とする電子放出部は、電子を放出させる際の活性
化エネルギが小となり、言い換えると、電子の放出に要
する仕事関数が少なくなっている。このため、本発明に
係る電子放出源は、低温度に対して優れた電子放出特性
を示すこととなる。
【0012】また、本発明に係る電子銃は、導電性基板
上に形成されてダイヤモンドを主体とする電子放出部と
この電子放出部を加熱する加熱手段とを有し、上記電子
放出部が上記加熱手段により加熱されることにより電子
を放出すること電子放出源と、この電子放出源から放出
された電子を電子ビームに変換する電子ビーム変換手段
とを備えることを特徴とするものである。
【0013】以上のように構成された本発明に係る電子
銃は、上述した電子放出源の場合と同様に、ダイヤモン
ドから電子を放出さセル際の仕事関数が小さくなってい
る。このように、電子放出源が小さな活性化エネルギに
対して電子を放出することができるため、電子銃は、低
電力で電子ビームを出射する。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る電子放出源及
びこれを用いた電子銃の好適な実施の形態を図面を参照
して詳細に説明する。
【0015】本実施の形態に示す電子放出源及び電子銃
は、図1に示すように、例えば、CRTを構成する電子
銃1に用いられる。この電子銃1は、CRTのパネル面
に配設された赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体の
それぞれに対して電子を放出する3つの電子放出源2
(この図1においては1つの電子放出源2を図示す
る。)と、第1グリッド3、第2グリッド4、第3グリ
ッド5、第4グリッド6及び第5グリッド7とから構成
されている。この電子銃1では、ユニポテンシャル型の
静電集束方式が採用されており、第1グリッド3、第2
グリッド4及び第3グリッド5からプリフォーカス系レ
ンズが構成されるとともに、第3グリッド5、第4グリ
ッド6及び第5グリッド7から主レンズ系が構成され
る。
【0016】また、この電子放出源2は、図2に示すよ
うに、ダイヤモンドを主体とする電子放出部8と、略円
筒状に形成されたスリーブ9と、このスリーブ9内に配
置されたフィラメントヒータ10と、電子放出部8と対
向するように配設された電極11とから構成されてい
る。
【0017】この電子放出源2において、電子放出部8
は、ダイヤモンドを主体として形成されてなり、図3に
示すように、導電性基板12上に配設される。そして、
この電子放出部8は、主として、ダイヤモンドを主体と
する粒子13が凝集してなる粒子構造であることが好ま
しい。また、このダイヤモンドを主体とする粒子13
は、その粒径が10μm以下であることがより好まし
い。
【0018】さらに、この電子放出部8は、ダイヤモン
ドを主体としてなり、その他の不純物として窒素及び燐
から選ばれる少なくとも一種の元素を含有することが好
ましい。電子放出部8は、このような不純物が含有され
ることにより、N型伝導を示すこととなる。このとき、
燐又は窒素からなる不純物は、100〜10000pp
mの濃度で含有されることが好ましい。この範囲内で不
純物が含有されることにより、電子放出部8では、N型
伝導による電気伝導が良好に発生することとなる。
【0019】一方、スリーブ9は、略円筒状を呈し、例
えば、ニッケルクロム合金等の金属から形成されてい
る。そして、このスリーブ9では、一方の端面に開口部
が形成されており、他方の端面に上述した電子放出部を
載置する載置部が形成されている。そして、載置部上に
は、電子放出部が形成された導電性基板12が載置され
る。
【0020】さらに、フィラメントヒータ10は、例え
ば、タングステン等の導電性線材から形成され、所定の
電流を供給する第1の電源14と電気的に接続されてい
る。このフィラメントヒータ10は、上述したスリーブ
9の一方端部に形成された開口部からスリーブ9内に挿
入されて配設される。
【0021】さらにまた、電極11は、例えば、非磁性
のステンレス等の導電性材料から形成され、略中心部に
開口部11aを有する。この電極11は、所定の電界を
発生させるために第2の電源15と電気的に接続されて
いる。そして、この電極11は、スリーブ9上に配設さ
れた電子放出部8と約100〜200μmの間隔で対向
するように配設される。
【0022】ここで、ダイヤモンドを主体とする電子放
出部8の作製方法の一例を説明する。
【0023】先ず、一主面が平坦面とされた導電性基板
12を用意する。この導電性基板12は、例えば、S
i,Ni,Cu,Ir,Pt,Mo,Ta,W等の導電
性材料から形成されている。そして、この導電性基板1
2の一主面に対して研磨処理を行う。
【0024】導電性基板12の一主面は、研磨加工され
ることによって高度に平坦化及び均一に微細な傷を付け
ることとなる。このように、導電性基板12の一主面を
平坦化及び均一に微細な傷を付けることによって、ダイ
ヤモンド生成時初期において、導電性基板12上にダイ
ヤモンド粒子核を高密度に形成することができ、その結
果、電子放出部8中のダイヤモンドの成長を効率的にす
ることができる。
【0025】このとき、研磨加工する手法としては、ダ
イヤモンド微粒子の粉末を用いて研磨する方法、ダイヤ
モンド微粒子を分散させたペーストを用いて研磨する方
法、又は、ダイヤモンド微粒子を水、エタノール、アセ
トン、トルエン等の分散液に分散させたコロイド溶液中
に導電性基板12を浸漬した状態で超音波処理を行う方
法等を挙げることができる。
【0026】次に、導電性基板12を、スリーブ9に形
成された載置部に載置するに足る大きさ及び形状に機械
加工する。なお、この機械加工は、導電性基板12上に
電子放出部8が形成された後に行われても良い。
【0027】このとき、導電性基板12は、Siからな
ることが好ましい。導電性基板12がSiからなる場
合、上述した機械加工は、ダイシング又は劈開を用いる
ことができる。これに対して、導電性基板12が金属か
らなる場合、上述した機械加工は、打ち抜き加工を用い
ることができる。このように、機械加工としてダイシン
グ又は劈開を用いた場合には、優れた精度及び生産性の
向上を達成することができる。
【0028】次に、導電性基板12上にダイヤモンドを
主体とする電子放出部8を形成する。この電子放出部8
を形成する際には、図4に示すようなマイクロ波CVD
装置20を用いることができる。
【0029】このマイクロ波CVD装置20は、反応を
行うための石英管21と、この石英管21内に配設され
た基板載置部22と、マイクロ波を発生させるマイクロ
波発振器23と、発生したマイクロ波を石英管21内に
誘導するマイクロ波導波管24とから構成されている。
また、このマイクロ波CVD装置20は、石英管21の
一方端部に反応ガス導入管25を有するとともに他方端
部に反応ガス排出管26を有する。このマイクロ波CV
D装置20において、導電性基板12は、電子放出部8
が形成される一主面が反応ガス導入管25と対向するよ
うに基板載置部22に載置される。また、このマイクロ
波CVD装置20において、マイクロ波導波管24は、
反応ガス導入管25と導電性基板12との中途部におけ
る石英管21の側面に取り付けられ、この部分にマイク
ロ波を供給するような構成とされる。さらに、反応ガス
導入管25は、図示しないが反応ガスを供給するガス供
給装置に接続されるとともに、反応ガス排出管26は、
図示しないが真空ポンプと接続されている。
【0030】また、このマイクロ波CVD装置20で
は、反応ガスとしてCH4、H2、PH3(フォスフィ
ン)からなる混合ガスが用いられる。この反応ガスにお
いて、CH4はダイヤモンドを構成する炭素源となり、
PH3は不純物としての燐源となる。具体的には、反応
ガスは、CH4のH2に対するモル比が0.15%であ
り、反応ガス中の燐の炭素に対するモル比が0.1%と
なるように調製された。
【0031】以上のように構成されたマイクロ波CVD
装置20は、反応ガス導入管25から反応ガス排出管2
6に向かって反応ガスが供給され、石英管21内を所定
の圧力とした後に所定の条件でマイクロ波を反応ガスに
対して照射する。これにより、導電性基板12上には、
不純物として燐を有し、ダイヤモンドを主体とする電子
放出部8が形成されることとなる。
【0032】このとき、マイクロ波発振器23は、マイ
クロ波を発生することにより、高温度になるために水冷
されることが好ましい。また、マイクロ波が照射される
ことにより石英管21内及び導電性基板12上も高温度
になるが、マイクロ波の照射エネルギ量を調節すること
により導電性基板12の温度を制御することができる。
【0033】また、このマイクロ波CVD装置20を用
いた場合、具体的に、H2流量は約200ccmとさ
れ、石英管21内の圧力が80Torrとされ、導電性
基板12の温度が950℃とされた。
【0034】次に、上述したように、導電性基板12を
スリーブ9に形成された載置部に載置することにより、
スリーブ9に電子放出部8を配設する。
【0035】このように作製された電子放出部8は、上
述したような電子放出源2に用いられ、フィラメントヒ
ータ10により加熱されるとともに電極11により電界
が印加されて電子を放出する。
【0036】このダイヤモンドを主体とする電子放出部
8では、図5(a)に示すように、ダイヤモンドの(1
11)結晶面が負の電子親和力を持つため、電子が結晶
面から飛び出す際に必要とされるエネルギ障壁が伝導帯
よりも低くなっている。また、ダイヤモンドを主体と
し、不純物として燐を含有する電子放出部8は、図5
(b)に示すように、燐がドナーを形成し、電子を放出
させる際の活性化エネルギが小となり、言い換えると、
電子の放出に要する仕事関数が0.5V以下となってい
る。このため、この電子放出源2は、低温度に対して優
れた電子放出特性を示すこととなる。これに対して、従
来において、用いられていた電子放出材料である酸化物
材料では、仕事関数が1〜1.6V程度であり、比較的
高温度でなければ電子放出を行うことができなかった。
【0037】具体的には、電子放出源2では、電子放出
部8を700℃以下に加熱することにより電子を放出さ
せることができる。言い換えると、この電子放出源2で
は、従来のように約800℃以上に加熱する必要がな
く、約700℃程度に加熱することにより十分な量の電
子を放出することができる。
【0038】このように、この電子放出源2は、比較的
低温度で加熱することにより電子を放出することができ
る。このため、この電子放出源2では、電子放出のため
の電力消費を低減することができ、省エネルギ化を図る
ことができる。
【0039】また、この電子放出源2では、上述したよ
うに、電子放出部8を比較的低温度に加熱している。こ
のため、この電子放出源2では、電子放出部8を構成す
る材料を蒸発させてしまうことが防止される。これによ
り、この電子放出源2では、電子放出部8を構成する材
料が対向配置された電極11に蒸着されることによる汚
染が確実に防止される。
【0040】したがって、この電子放出源2では、電子
放出部8と電極11とが短絡してしまったり、電子放出
部8が異常放電を起こすようなことが確実に防止され
る。このようなことから、上述したような電子放出源2
は、常に安定的な電子放出特性を示すことができる。
【0041】さらに、この電子放出源2において、電子
放出部8は、図3に示したような粒径10μm以下のダ
イヤモンド結晶粒13が凝集してなるような構成とされ
ていた。このように電子放出部8の形状が粒子構造であ
るような場合、ダイヤモンド結晶粒13の先端部に電界
が集中することになり、この先端部からより多くの電子
が放出されることとなる。したがって、電子放出部8
は、粒子構造とされることにより電子放出特性に優れた
ものとなる。
【0042】一方、上述したような電子放出源2を有す
る電子銃1は、電子放出源2から放出された電子を電子
ビームに変換する。このとき、電子銃1では、第1のグ
リッド3乃至第3のグリッド5に所定の電圧がそれぞれ
印加される。これにより、この電子銃においては、第1
のグリッド3乃至第3のグリッド5によりプリフォーカ
ス系レンズが形成されることとなり、放出された電子が
プリフォーカスされる。そして、第3のグリッド5乃至
第5のグリッド7により主レンズが形成されることとな
り、最終的に所定のスポット径を有する電子ビームとな
る。
【0043】この電子銃1においては、上述したよう
に、電子放出部8を比較的低温度に加熱して放出された
電子を電子ビームとして出射している。このため、この
電子銃1は、所望量の電子ビームを出射するための消費
電力を低減することができ、省エネルギ化を図ることが
できる。
【0044】また、この電子銃1では、上述したよう
に、電子放出部8を比較的低温度に加熱している。この
ため、この電子銃では、電子放出部8を構成する材料を
蒸発させてしまうことが防止される。これにより、この
電子銃1では、電子放出部8を構成する材料が対向配置
された電極11や、第1グリッド3等に蒸着されること
による汚染が確実に防止される。
【0045】したがって、この電子銃1では、電子放出
部8と電極11とが短絡してしまったり、電子放出部8
が異常放電を起こしてしまったり、第1グリッド3の精
度を劣化するようなことが確実に防止される。このよう
なことから、上述したような電子銃1は、常に安定的に
所定の電子ビームを出射することができる。
【0046】ところで、この電子放出部8は、上述した
ような反応ガスを用いて形成されたものに限定されず、
以下に示すような反応ガスを用いて形成されたものであ
ってもよい。
【0047】すなわち、上述したマイクロ波CVD装置
20に用いられる反応ガスとしては、CH4、H2、P
(C25)(トリエチルリン)からなる混合ガスが用い
られてもよい。この反応ガスでは、P(C25)が燐源
となっている。
【0048】この反応ガスの場合、P(C25)は、常
温で液体であるためにH2ガスで同伴されて反応ガス導
入管25に導かれる。そして、この反応ガスを用いた場
合、具体的に、H2流量は約100ccmとされ、CH4
のH2に対するモル比が0.1%、燐の炭素に対するモ
ル比が0.5%、石英管21内の圧力が40Torrと
され、導電性基板12の温度が850〜950℃とされ
た。
【0049】この場合、電子放出部8中の燐含有量は、
P(C25)の温度を制御することにより蒸発量を調節
して反応ガス中のP(C25)含有量を所望の値とする
ことにより調節される。この反応ガスを用いた場合、燐
源として、毒性を有するフォスフィンを用いていないた
め、反応ガスを取り扱いやすくなるとともに製造方法が
簡便となる。
【0050】また、電子放出部8は、炭素源として(C
32CO(アセトン)を用い、不純物である窒素源と
して(C252NH(ジエチルアミン)を用いるよう
にして形成されてもよい。この場合、電子放出部は、図
6に示すようなマイクロ波CVD装置30を用いて形成
される。この図6に示すマイクロ波CVD装置30は、
反応ガスを生成する反応槽31が反応ガス導入管25に
取り付けられている以外は、図4に示したマイクロ波C
VD装置20と同様の構成である。
【0051】この場合、(C252NH(ジエチルア
ミン)は、分子構造がアセトンと類似しており、蒸気圧
もまたアセトンと近い値を持っている。このため、反応
槽内で(C252NH(ジエチルアミン)を(CH3
2CO(アセトン)に溶解させ、水素ガスを同伴させる
ことによって、反応ガスを生成することができる。
【0052】具体的に、石英管に供給される反応ガスに
おいて、H2流量は150sccmとされ、アセトン流
量は1.5ccmとされ、ジエチルアミン流量は1.5
×10-3ccmとされた。また、このマイクロ波CVD
装置30を用いた場合、導電性基板12の温度は、80
0℃とされた。
【0053】この場合、アセトンとジエチルアミンとが
略々同等の蒸気圧を有するため、反応ガス中の窒素濃度
は、反応槽31中のジエチルアミンの濃度を制御するこ
とにより調節することができる。このため、この手法で
は、ダイヤモンドを主体とする電子放出部8中に含有さ
れる不純物の量を容易に制御することができる。
【0054】さらに、この電子放出部8は、上述したよ
うなマイクロ波CVD装置20,30を用いて形成され
たものに限定されず、図7に示すような熱フィラメント
CVD装置40を用いて形成されたものであってもよ
い。
【0055】この熱フィラメントCVD装置40は、内
部に導電性基板12を配設する反応槽41と、この反応
槽41内における導電性基板12の近傍に配されたフィ
ラメント線42と、反応槽41内を所定の圧力に維持す
るロータリーポンプ43(図中R.Pで示す。)と、反
応ガスを生成するとともに反応槽41内に反応ガスを供
給する反応ガス生成槽44とから構成されている。ま
た、この熱フィラメントCVD装置40では、フィラメ
ント線42に所定の電流を供給する電源45が取り付け
られている。
【0056】また、この熱フィラメントCVD装置40
を用いる場合、反応ガスには、炭素源としてアセトン又
はメタノールが用いられ、燐源として5酸化燐が用いら
れ、同伴ガスとして水素が用いられる。
【0057】このように構成された熱フィラメントCV
D装置40では、アセトン又はメタノール中に5酸化燐
を溶解させ、水素ガス同伴させることにより反応ガスを
生成する。そして、生成された反応ガスは、反応槽41
内に所定の圧力で供給される。
【0058】熱フィラメントCVD装置40では、反応
槽41内に反応ガスが供給された状態でフィラメント線
42に所定の電流を供給する。これにより、反応ガス
は、熱分解されて導電性基板12上に堆積し、ダイヤモ
ンドを主体とし、不純物として燐を含有する電子放出部
8となる。
【0059】このとき、導電性基板12の温度は、約8
00℃程度となっている。この導電性基板12の温度
は、フィラメント線42に供給される電流を制御するこ
とにより調節することができる。
【0060】さらにまた、電子放出部8は、図8に示す
ような有磁場マイクロ波CVD装置や、図9に示すよう
なアーク放電プラズマジェット装置や、プラズマCVD
装置、GS(Gas source)MBE装置等、従来公知の装
置を用いることができる。
【0061】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明に
係る電子放出源及びこれを用いた電子銃は、ダイヤモン
ドを主体とする電子放出部を加熱している。このため、
この電子放出源及びこれを用いた電子銃は、ダイヤモン
ドから電子を放出するために必要な電力を低減させるこ
とができる。そして、この電子放出源及びこれを用いた
電子銃では、電子放出部を比較的低温度で加熱している
ため、電子放出部を構成する材料を蒸発させるようなこ
とが確実に防止される。したがって、この電子放出源及
びこれを用いた電子銃は、常に安定的な電子放出特性を
示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電子銃の構成を示す断面図であ
る。
【図2】本発明に係る電子放出源の構成を示す概略構成
図である。
【図3】電子放出部の要部断面図である。
【図4】マイクロ波CVD装置の構成を示す概略構成図
である。
【図5】(a)はダイヤモンド(111)面におけるエ
ネルギ状態図であり、(b)はN型伝導を示す電子放出
部のエネルギ状態図である。
【図6】他の反応ガスを用いる場合に使用されるマイク
ロ波CVD装置の構成を示す概略構成図である。
【図7】熱フィラメントCVD装置の構成を示す概略構
成図である。
【図8】有磁場マイクロ波CVD装置の概略構成図であ
る。
【図9】アーク放電プラズマジェット装置の概略構成図
である。
【符号の説明】
1 電子銃、2 電子放出源、3 第1のグリッド、4
第2のグリッド、5第3のグリッド、6 第4のグリ
ッド、7 第5のグリッド、8 電子放出部

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 導電性基板上に形成され、ダイヤモンド
    を主体とする電子放出部と、 上記電子放出部を加熱する加熱手段とを備え、 上記電子放出部は、上記加熱手段により加熱されること
    により電子を放出することを特徴とする電子放出源。
  2. 【請求項2】 上記電子放出部は、主として、粒子構造
    であることを特徴とする請求項1記載の電子放出源
  3. 【請求項3】 上記電子放出部は、粒径が10μm以下
    であるダイアモンド結晶粒を凝集させて形成されたこと
    を特徴とする請求項1記載の電子放出源。
  4. 【請求項4】 上記電子放出部は、N型伝導を示すこと
    を特徴とする請求項1記載の電子放出源。
  5. 【請求項5】 上記電子放出部は、窒素及び燐から選ば
    れる少なくとも一種の元素を含有することを特徴とする
    請求項1記載の電子放出源。
  6. 【請求項6】 上記窒素及び燐から選ばれる少なくとも
    一種の元素の濃度は、100〜10000ppmである
    ことを特徴とする請求項5記載の電子放出源。
  7. 【請求項7】 上記導電性基板は、Siからなることを
    特徴とする請求項1記載の電子放出源。
  8. 【請求項8】 導電性基板上に形成され、ダイヤモンド
    を主体とする電子放出部と、上記電子放出部を加熱する
    加熱手段とを有し、上記電子放出部が上記加熱手段によ
    り加熱されることにより電子を放出する電子放出源と、 上記電子放出源から放出された電子を電子ビームに変換
    する電子ビーム変換手段とを備えることを特徴とする電
    子銃。
JP14160398A 1998-05-22 1998-05-22 電子放出源及びこれを用いた電子銃 Withdrawn JPH11339632A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003050836A3 (en) * 2001-12-11 2003-10-02 Element Six Ltd Fast heating cathode

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