JPH11328619A - 磁気インピーダンス効果素子を備えた薄膜磁気ヘッド - Google Patents

磁気インピーダンス効果素子を備えた薄膜磁気ヘッド

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JPH11328619A
JPH11328619A JP12795098A JP12795098A JPH11328619A JP H11328619 A JPH11328619 A JP H11328619A JP 12795098 A JP12795098 A JP 12795098A JP 12795098 A JP12795098 A JP 12795098A JP H11328619 A JPH11328619 A JP H11328619A
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thin
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JP12795098A
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English (en)
Inventor
Yutaka Naito
豊 内藤
Teruo Bito
輝夫 尾藤
Takashi Hatauchi
隆史 畑内
Teruhiro Makino
彰宏 牧野
Akihisa Inoue
明久 井上
Takeshi Masumoto
健 増本
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Alps Alpine Co Ltd
Original Assignee
Alps Electric Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、優れたMI効果を示し、磁束検出
感度が高いとともに、高い飽和磁束密度を示し、透磁率
も高いFe系軟磁性合金の薄膜を外部磁界検出用として
備えた薄膜磁気ヘッドを提供することを目的とする。 【解決手段】 本発明は、外部磁界によってインピーダ
ンスの変化を生じる磁気インピーダンス効果素子が外部
磁界検出用として備えられるとともに、前記磁気インピ
ーダンス効果素子が非晶質相と平均結晶粒径50nm以
下のαFeの微細結晶粒とを主体とするFe系の軟磁性
合金から構成されたことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微細結晶粒を析出
させた鉄系の軟磁性合金を外部磁界検出用として備えた
薄膜磁気ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】近年において、コンピュータの外部記憶
装置であるハードディスクや、デジタルオーディオテー
プレコーダ、デジタルビデオテープレコーダ等に代表さ
れる磁気記録装置は、一層の小型化とともに、記録密度
の向上が要望されている。上述の要望に対応するために
は、磁気ヘッドの高性能化が不可欠であり、最近では、
再生ヘッドに磁気抵抗素子(以下MR素子と略記す
る。)を用いた磁気ヘッドが開発されている。
【0003】MR素子を用いた磁気ヘッドは、記録媒体
との相対速度の依存性が無く、低い相対速度での記録信
号の読み出しに向いているが、記録媒体の記録磁化の変
化に対する抵抗変化率が低いために出力信号の感度が低
く、将来の更なる高密度化への対応が難しいという課題
がある。そこで、最近注目を集めているのが、磁気イン
ピーダンス効果(Magneto-Impedance Effect:MI効
果)を有する素子(磁気インピーダンス効果素子:MI
効果素子)である。
【0004】磁気インピーダンス効果とは、例えば図1
4に示す閉回路においてワイヤ状またはリボン状の磁性
体Miに電源EacからMHz帯域の交流電流Iacを印加
し、この状態で磁性体Miの長さ方向に外部磁界Hexを
印加すると、外部磁界Hexが数ガウス程度の微弱磁界で
あっても、磁性体Miの両端に素材固有のインピーダン
スによる電圧Emiが発生し、その振幅が外部磁界Hexの
強度に対応して数十%の範囲で変化する、すなわちイン
ピーダンス変化を起こす現象をいう。
【0005】この磁気インピーダンス効果を有する素子
(MI素子)は、素子の長さ方向の外部磁界に感応する
ので、例えば磁界センサとして用いる場合などにおい
て、従来のコイル巻き磁心を用いた磁束検出型の磁界検
知素子などと異なり、センサヘッドの長さを1mm程度
以下としても磁界検出感度が劣化せず、10-5 Oe程
度の高分解能を有する微弱磁界センサが得られるばかり
でなく、数MHz以上の励磁が可能であるため、200
MHz〜300MHzの高周波磁界が振幅変調のキャリ
アとして使用でき、従って磁界センサの遮断周波数を1
0MHz以上に設定することが容易であることなどか
ら、新しい超小型磁気ヘッドや微弱磁界検出器としての
応用が期待されている。この種の磁気インピーダンス効
果を有する素材としては、従来からFe-Si-B系、例
えばFe78Si913の非晶質リボンや、Fe-Co-S
i-B系、例えば(Fe6Co9472.5Si12.515の非
晶質ワイヤ(毛利佳年雄ほか、「磁気−インピーダンス
(MI)素子」、電気学会マグネティックス研究会資料
vol.1,MAG-94,No.75-84,P27-36,1994年発行)が報告さ
れている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記のFe-
Si-B系やFe-Co-Si-B系の素材をMI素子とし
て使用するに際してはそれぞれ問題があった。すなわ
ち、図15に示すように、正負の印加磁界(Oe)に対
する出力電圧Emi(mV)を測定するとき、曲線aで示
すFe-Si-B系は磁界検出感度が低く、増幅倍率を1
00倍程度と高くする必要があり、ノイズの混入などの
ため高感度の磁界検知素子を得ることが困難である。ま
た曲線bで示すFe-Co-Si-B系の素材は、 図15
に示すように感度は十分に高いが、印加磁界が例えば−
2 Oe〜+2 Oe程度の微弱磁界の範囲内では、感度
がきわめて急峻に立ち上がるため、この間での定量性が
得られず微弱磁界検知素子としては使用困難であった。
また、絶対値で2 Oeを越える磁界帯域において使用
可能ではあるが、約2 Oe程度のバイアス磁界を印加
する必要があり、バイアス磁界を印加するためにコイル
を設置し、ある程度の電流を流す必要があった。
【0007】また、従来から本発明者らは、種々の合金
の開発を進めており、この合金開発のテーマの1つとし
て非晶質相中に微結晶を析出させたFe系軟磁性合金の
研究開発を行っている。この種のFe系軟磁性合金はF
eに特定組成の金属元素MとBを添加した成分系で実現
することができ、特定組成の合金溶湯を急冷して非晶質
材を得た後で熱処理を施してα-Feの微細結晶粒を析
出させることで製造することができるとともに、1.5
Tを超える高い飽和磁束密度と高い透磁率を両立する優
れた軟磁性合金であった。
【0008】本発明者らは、このような背景に基づいて
前述のFe系軟磁性合金の研究を進めた結果、これらの
Fe系軟磁性合金が室温で高い飽和磁束密度を示し、高
い透磁率を示すと同時にMI効果をも示すことを発見
し、本願発明に到達した。
【0009】本発明は前記事情に鑑みてなされたもの
で、優れたMI効果を示し、磁束検出感度が高いととも
に、高い飽和磁束密度を示し、透磁率も高いFe系軟磁
性合金の薄膜を外部磁界検出用として備えた薄膜磁気ヘ
ッドを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は前記課題を解決
するために、外部磁界によってインピーダンスの変化を
生じる磁気インピーダンス効果素子が外部磁界検出用と
して備えられるとともに、前記磁気インピーダンス効果
素子が非晶質相と平均結晶粒径50nm以下のα-Fe
の微細結晶粒とを主体とするFe系の軟磁性合金から構
成されたことを特徴とする。前記磁気インピーダンス効
果素子が、Fe、Co、Niのうちの1種又は2種以上
の元素を主成分とし、Zr、Nb、Ta、Hf、Mo、
Ti、V、Wのうちの1種又は2種以上の元素とBを含
むFe系の軟磁性合金からなることが好ましい。
【0011】更に本発明は、磁気媒体に媒体対向面を向
けて相対移動するスライダに書込ヘッドと読出ヘッドが
設けられ、前記書込ヘッドが薄膜状の上部コアと下部コ
アとそれらの間に介在された磁気ギャップとコイル導体
とを具備する磁気誘導型構造とされ、前記読出ヘッドが
磁気インピーダンス効果素子薄膜とこのインピーダンス
効果素子薄膜に接続された電極膜を具備して構成された
ことを特徴とする。
【0012】本発明は前記構造において、前記磁気イン
ピーダンス効果素子薄膜にバイアス印加手段が付設され
てなることを特徴とする。本発明において、前記バイア
ス印加手段が、前記磁気インピーダンス効果素子薄膜に
接続された永久磁石からなることを特徴とするものでも
良い。
【0013】本発明において、前記バイアス印加手段が
前記磁気インピーダンス効果素子薄膜に積層された強磁
性体薄膜とこの強磁性体薄膜に積層された反強磁性体薄
膜とを具備して構成され、前記バイアスが前記反強磁性
体薄膜により前記強磁性体薄膜に誘起させた交換結合磁
界により印加されてなることが好ましい。
【0014】更に、前記軟磁性合金として下記の組成式
で表されるものを用いることができる。 (Fe1-a-b
CoaNibcxy ただし、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、M
o、Wのうちの1種または2種以上を示し、組成比を示
すa、b、c、x、yは、0≦a+b≦0.1、75原子%≦c
≦93原子%、0.5≦x≦18原子%、4原子%≦y≦
9原子%である。前記軟磁性合金として下記の組成式で
表されるものを用いることができる。 (Fe1-a-bCoaNibcxyz ただし、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、M
o、Wのうちの1種または2種以上を示し、XはSi、
Al、Ge、Gaのうちの1種または2種以上であり、
組成比を示すa、b、c、x、y、zは、0≦a+b≦0.1、
75原子%≦c≦93原子%、0.5原子%≦x≦18原
子%、4原子%≦y≦9原子%、z≦4原子%である。
【0015】前記軟磁性合金として下記の組成式で表さ
れるものを用いることができる。 (Fe1-a-bCoaNibcxyd ただし、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、M
o、Wのうちの1種または2種以上を示し、TはCu、
Ag、Au、Pd、Ptのうちの1種または2種以上で
あり、組成比を示すa、b、c、x、y、dは、0≦a+b≦
0.1、75原子%≦c≦93原子%、0.5≦x≦18原
子%、4原子%≦y≦9原子%、d≦4.5原子%であ
る。前記軟磁性合金として下記の組成式で表されるもの
を用いることができる。 (Fe1-a-bCoaNibcxydz ただし、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、M
o、Wのうちの1種または2種以上を示し、TはCu、
Ag、Au、Pd、Ptのうちの1種または2種以上、
XはSi、Al、Ge、Gaのうちの1種または2種以
上であり、組成比を示すa、b、c、x、y、d、zは、0≦a
+b≦0.1、75原子%≦c≦93原子%、0.5≦x≦
18原子%、4原子%≦y≦9原子%、d≦4.5原子
%、z≦4原子%である。
【0016】更に前述のいずれかに記載の軟磁性合金を
構成する合金にCr、Ru、Rh、Irなどの白金族元
素の少なくとも1種または2種以上が合計で5原子%以
下添加されてなることを用いても良い。
【0017】
【発明の実施の形態】以下図面を参照して本発明の一形
態の薄膜磁気ヘッドについて説明する。この例の薄膜磁
気ヘッドHAは、ハードディスク装置等に搭載される浮
上式のもので、この磁気ヘッドHAのスライダ51は、
図1の矢印A'で示す側がディスク面の移動方向の上流
側に向くリーディング側で、図1の矢印B'で示す側が
ディスク面の移動方向下流側に向くトレーリング側であ
る。このスライダ51のディスクに対向する面では、レ
ール状のレール面51a、51a、51bと、エアーグ
ルーブ51c、51cが形成されている。そして、この
スライダ51のトレーリング側の端面51d側中央に薄
膜磁気ヘッドコア50が設けられている。
【0018】この例で示す薄膜磁気ヘッドコア50は、
図2と図3に断面構造を示すような複合型磁気ヘッドで
あり、図1に示すスライダ51のトレーリング側端面5
1d上に、図2に示す構造のMI効果素子ヘッド(読出
ヘッド)h1と、インダクティブヘッド(磁気誘導型磁
気ヘッド:書込ヘッド)h2とが順に積層されて構成さ
れている。
【0019】この例のMI効果素子ヘッドh1はMI効
果を利用して磁気ディスクなどの記録媒体からの漏れ磁
束を検出し、磁気信号を読み取るものである。図2また
は図3に示すようにMI効果素子ヘッドh1において、
スライダ51のトレーリング側端部に形成されたFe-
Ni合金、センダスト(Fe-Al-Si合金)等の磁性
合金からなる磁束導入層(下部コア層)53上に、アル
ミナ(Al23)などの非磁性材料により形成された読
み取り側ギャップG2が形成層されている。そして、前
述した磁束導入層53の一部にはMI効果素子薄膜(こ
の例では短冊状などのように細長い形状に形成されてい
る)22が後述する磁石層23、電極膜25(図3では
省略)とともに成膜され、MI効果素子10を形成して
いる。この磁束導入層53とMI効果素子10は磁気的
に結合されており、磁気ディスクからの漏れ磁束は磁束
導入層53とMI効果素子10を連続して通過すること
になる。なお、磁束導入層53およびMI効果素子薄膜
22の下にさらに下部シールド層(図示せず)を設け、
外部ノイズを吸収させる構成といても良い。また、更に
MI効果素子薄膜22および磁束導入層53の上には、
アルミナなどからなる上部ギャップ層G2がMI効果素
子薄膜22を覆うように連続的に形成され、その上に上
部シールド層が形成されており、この上部シールド層は
その上に設けられるインダクティブヘッドh2の下部コ
ア55と兼用にされている。
【0020】図4はMI効果素子ヘッドh1に適用され
たMI効果素子10の一例を示すもので、この例のMI
効果素子10は、以下に説明するα-Feの微細結晶粒
を非晶質相中に析出させた軟磁性合金からなるMI効果
素子薄膜22と、このMI効果素子薄膜22の両側面側
に形成された磁束導入層53とこの磁束導入層53上に
積層された磁石層23が形成され、MI効果素子10か
らの出力電流を取り出す電極膜25が形成されている。
【0021】ここで以下に、本発明で用いるMI効果素
子薄膜22を構成する軟磁性合金薄膜について説明す
る。本発明に係るMI効果素子薄膜22を構成する合金
は、基本的に下記の組成を有し、交流電流を印加すると
き、インピーダンスが外部磁界に依存して変化するもの
である。本発明のMI効果素子薄膜22を構成する合金
は、Fe、Co、Niのうちの1種または2種以上の金
属元素と、Zr、Nb、Ta、Hf、Mo、Ti、Vの
うちの1種または2種以上からなる金属元素と、Bを含
む組成を有するもので、非晶質相と粒径50nm以下の
微細結晶粒とを主体としてなる合金である。
【0022】ここで前記の軟磁性合金は以下の組成式で
表されるものでも良い。 (Fe1-a-bCoaNibcxy (Fe1-a-bCoaNibcxyz (Fe1-a-bCoaNibcxyd (Fe1-a-bCoaNibcxydXz ただし、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、M
o、Wのうちの1種または2種以上を示し、TはCu、
Ag、Au、Pd、Ptのうちの1種または2種以上、
XはSi、Al、Ge、Gaのうちの1種または2種以
上であり、組成比を示すa、b、c、x、y、d、zは、0≦a
+b≦0.1、75原子%≦c≦93原子%、0.5≦x≦
18原子%、4原子%≦y≦9原子%、d≦4.5原子
%、z≦4原子%である。
【0023】本発明のMI効果素子薄膜22を作成する
際には、前記の組成になるように原料を混合したものを
アーク溶解などの手段で溶解して母合金を得た後に、こ
の母合金を用いてターゲットを形成するか、前記の組成
を複数組み合わせて満足するような組成の合金ターゲッ
トを用意する。そして、前記ターゲットを用いて真空蒸
着、スパッタなどの薄膜形成法を用いて基板上に成膜
し、この膜を急冷し、非晶質を主体とする薄膜を得た後
で、この非晶質合金薄膜に対して組織の一部あるいは大
部分を結晶化するための熱処理を施して薄膜として得る
ことができる。結晶化のための熱処理を行う温度は用い
る組成系において若干異なるが、概ね、400〜700
℃の間の温度である。この範囲の温度で熱処理がなされ
ることで非晶質相の中の一部が結晶化し、非晶質相と微
細な結晶粒の混合した薄膜組織が得られ、MI効果素子
薄膜22が得られる。
【0024】前記の軟磁性合金からなるMI効果素子薄
膜22は、例えばこれを用いて細長い試料を作成し、概
略を図15に示した測定回路に磁性体Miとして挿入
し、3MHzの交流電流Iacを印加した状態で試料Mi
の長さ方向に外部磁界Hexを印加すると、例えば前記式
の組成を有するMI効果素子薄膜について図8〜図14
に示すように、磁界ゼロを中心に正負磁界の絶対値に依
存して正負方向にほぼ対称的にかつ直線的に出力電圧
(Eme)、すなわちインピーダンスが変化(上昇)し、
直線性の良好な磁気インピーダンス効果を有するもので
ある。
【0025】これらの式の組成を有するMI効果素子薄
膜22は、従来から磁気インピーダンス効果を有するこ
とが知られている非晶質合金、即ち、図15に示した曲
線aで示すFe78Si1913、および曲線bで示す(F
6Co9472.5Si12.51 5 と比較すると、曲線aで
示す試料より感度が高く、これを用いた磁界検知回路の
増幅率を低減することができるのでノイズを抑制するこ
とができ、一方、微弱磁界の範囲内(−2 Oe〜+2
Oe)で曲線bで示す試料より立ち上がりが緩やかであ
るので定量性が良好となり、また、正負磁界に関して感
度の対称性及び直線性がよいので、これを用いた磁界検
知回路の回路構成が容易となる。このため本発明のMI
効果素子薄膜22は、磁界検知素子として好適に使用で
きるものであることがわかる。
【0026】次に、本発明のMI効果素子薄膜22に用
いることができる軟磁性合金の組成限定理由について以
下に詳しく説明する。 「組成限定理由」 本発明組成系において、主成分であるFeとCoとNi
は、磁性を担う元素であり、1.0T(10kG)以
上、好ましくは1.5T以上の高い飽和磁束密度と優れ
た透磁率を得るために重要である。
【0027】これらの組成の軟磁性合金においては、F
eとCoとNiの添加量の合計を示すcの値は、93原
子%以下である。これは、cが93原子%を超えると急
冷法によって非晶質単相を得ることが困難になり、この
結果、熱処理してから得られる合金薄膜の組織が不均一
になって高い透磁率が得られないためである。また、飽
和磁束密度10kG以上を得るためには、cが75原子
%以上であることがより好ましいのでcの範囲を75〜
93原子%とした。またFeの一部は、磁歪等の調整の
ためにCoもしくはNiで置換してもよく、この場合、
好ましくはFeの10%、さらに好ましくは5%以下と
するのがよい。この範囲外であると透磁率が劣化する。
従って前記組成式においてCoとNiの組成比a、bは、
0≦a +b≦0.1の範囲が好ましく、0≦a+b≦0.0
5の範囲がより好ましい。
【0028】また、Bには、軟磁性合金の非晶質形成能
を高める効果、結晶組織の粗大化を防ぐ効果、および熱
処理工程において磁気特性に悪影響を及ぼす化合物相の
生成を抑制する効果があると考えられる。また、本来、
α-Feに対してZr、Hf、Nbはほとんど固溶しな
いが、合金薄膜の全体を急冷して非晶質相化すること
で、Zr、Hf、Nbを過飽和に固溶させ、この後に施
す熱処理によりこれら元素の固溶量を調節して一部を結
晶化し、微細結晶粒として析出させることで、得られる
軟磁性合金の軟磁気特性を向上させ、合金薄膜の磁歪を
小さくできる。また、微結晶粒を析出させ、その微結晶
粒の粗大化を抑制するには、結晶粒成長の障害となり得
る非晶質相を粒界に残存させることが必要であると考え
られる。
【0029】さらに、この粒界非晶質相は、熱処理温度
の上昇によってα-Feから排出されるZr、Hf、N
b等のM元素を固溶することで軟磁気特性を劣化させる
Fe-M系化合物の生成を抑制すると考えられる。よっ
て、Fe-Zr(Hf,Nb)系の合金にBを添加するこ
とが重要となる。Bの添加量を示すXが、0.5原子%を
下回る場合、粒界の非晶質相が不安定となるため、十分
な添加効果が得られない。また、Bの添加量を示すXが
18原子%を超えると、B-M系およびFe-B系におい
て、ホウ化物の生成傾向が強くなり、この結果、微細結
晶組織を得るための熱処理条件が制約され、良好な軟磁
気特性が得られなくなる。このように適切な量のBを添
加することで析出する微細結晶粒の平均結晶粒径を少な
くとも50nm以下、より好ましくは30nm以下に調
整することができる。
【0030】また、非晶質相を得やすくするためには非
晶質形成能の特に高いZr、Hf、Nbのいずれかを含
むことが好ましく、Zr,Hf,Nbの一部は他の4A
〜6A族元素のうちの非晶質形成能の高いTi,V,T
a,Mo,Wのいずれかの元素と置換することができ
る。こうしたM元素は、比較的遅い拡散種であり、M元
素の添加は、微細結晶核の成長速度を小さくする効果、
非晶質形成能を持つと考えられ、組織の微細化に有効で
ある。しかし、M元素の添加量を示すyが4原子%を下
回る値になると、核成長速度を小さくする効果が失わ
れ、この結果、結晶粒径が粗大化し良好な軟磁性が得ら
れない。Fe-Hf-B系合金の場合、Hf=5原子%で
の平均結晶粒径は13nmであるのに対してHf=3原
子%では39nmと粗大化することが本発明者らの実験
で確認されている。他方、M元素の添加量を示すyが9
原子%を超えると、M-B系またはFe-M系の化合物の
生成傾向が大きくなり、良好な特性が得られない他、急
冷後の薄膜が脆化し、剥離などの問題を生じる。よっ
て、yの範囲を4〜9原子%とした。
【0031】これらの元素の中でもNbとMoとWは、
酸化物の生成自由エネルギーの絶対値が小さく、熱的に
安定であり、製造時に酸化しずらいものである。よっ
て、これらの元素を添加している場合は製造条件が容易
で安価に製造することができ、また、製造コストの面で
も有利である。これらの元素を添加して前記軟磁性合金
を製造する場合に、具体的には、所定組成とした母合金
ターゲット、あるいは、2種以上の合金とした複合ター
ゲット、あるいは必要元素ターゲットを複数備えたスパ
ッタ装置などの成膜装置を用いて成膜し、成膜後に必要
に応じて熱処理を施せばよい。
【0032】また、Si,Al,Ge,Gaのうち、1
種または2種以上の元素Xを4原子%以下含有すること
が好ましい。これらは半金属元素として知られるもので
あるが、これらの半金属元素はFeを主成分とするbc
c相(体心立方晶の相)に固溶する。それらの元素の含
有量が4原子%を超えると磁歪が大きくなるか、飽和磁
束密度が低下するか、透磁率が低下するので好ましくな
い。これらの元素は、軟磁性合金の電気抵抗を上昇さ
せ、鉄損を低下させる効果があるが、Alは特にその効
果が大きい。またGe,Gaは結晶粒径を微細化させる
効果がある。従ってSi,Al,Ge,Gaのうち、A
l,Ge,Gaは添加した効果が特に大きく、Al,G
e,Gaの単独添加もしくはAlとGe、AlとGa、
GeとGa、AlとGeとGaの複合添加とすることが
より好ましい。
【0033】更に、Cu,Ag,Au,Pd,Ptの1
種または2種以上の元素Tを4.5原子%以下含有させ
ると、軟磁気特性が改善される。Cu等のように、Fe
と固溶しない元素を微量添加することにより、組成が揺
らぎ、Cuが結晶化の初期段階にクラスターを形成し、
相対的にFeリッチな領域が生じ、α−Feの核生成頻
度を増加させることができる。また、これらの系の合金
の結晶化温度を示差熱分析法により測定したところ、上
記Cu,Ag等の元素の添加は結晶化温度をやや低める
ようである。これは、これらの添加により非晶質が不均
一となり、その結果、非晶質の安定性が低下したことに
起因すると考えられる。不均一な非晶質相が結晶化する
場合、部分的に結晶化しやすい領域が多数でき不均一核
生成するため、得られる組成が微細結晶粒組織となると
考えられる。以上の観点からこれらの元素以外の元素で
も結晶化温度を低下させる元素には、同様の効果が期待
できる。
【0034】尚、これらの元素以外でも耐食性を改善す
るために、Cr,Ru,Rh,Irなどの白金族元素を
添加することも可能である。これらの元素は、5原子%
よりも多く添加すると、飽和磁束密度の劣化が著しくな
るため、添加量は5原子%以下に抑える必要がある。ま
た、他に、前述の組成に加え、必要に応じてY,La,
Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,D
y,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Zn,Cd,I
n,Sn,Pb,As,Sb,Bi,Se,Te,L
i,Be,Mg,Ca,Sr,Ba等の元素を添加する
ことで得られる軟磁性合金の磁歪を調整することもでき
る。その他、前記組成系の軟磁性合金において、H、
N、O、S等の不可避的不純物については所望の特性が
劣化しない程度に含有していても本発明で用いる軟磁性
合金の組成と同一とみなすことができるのは勿論であ
る。
【0035】図2〜図4に示す磁束導入層53は、Ni
-Fe合金、Co-Fe合金、Ni-Co合金、Co、N
i-Fe-Co合金、センダスト(Fe-Si-Al合金)
などの薄膜からなる。また、磁束導入層53をCo薄膜
とNi-Fe合金薄膜との積層構造から構成することも
できる。磁石層23、23は軟磁性合金からなるMI効
果素子薄膜22の両側に配置され、磁石層23からの漏
れ磁束を利用してMI効果素子薄膜22にバイアスを印
加する構造とされている。ここで用いる磁石層23は、
Co-Pt、Co-Cr-Pt合金などの硬質磁性材料
(磁石材料)の層から形成されている。さらに、磁石層
23、23上には電極膜25、25が積層され、MI効
果素子薄膜22からの出力電流を検出回路に導入する。
【0036】次に、図2または図3に示すこの実施形態
のインダクティブヘッドh2は、下部コア55の上に、
ギャップ層64が形成され、その上に平面的に螺旋状と
なるようにパターン化されたコイル層66が形成され、
コイル層66は絶縁材料層67に囲まれている。更に、
絶縁材料層67の上に形成された層状の上部コア68
は、その先端部68aをレール面51bにて層状の下部
コア55に微小間隙をあけて対向し、磁気ギャップG1
を構成するとともに、上部コア68の基端部68bを下
部コア55と磁気的に接続させて設けられている。ま
た、上部コア68の上にはアルミナなどからなる保護層
69が設けられている。
【0037】この実施形態で用いられる下部コア55と
上部コア68は、従来から用いられている飽和磁束密度
と透磁率の優れた軟磁性合金を用いることができる。一
例としてパーマロイ、Fe-Ni系合金やセンダスト
(Fe-Si-Al系合金)あるいはフェライトなどで良
い。
【0038】前述の構成のインダクティブヘッドh2
は、コイル層66に記録電流が与えられ、コイル層66
からコア層に記録電流が与えられる。そして、磁気ギャ
ップG1の部分での金属ガラス製の下部コア55と上部
コア68の先端部からの漏れ磁界によりハードディスク
などの記録媒体に磁気信号を記録することができる。ま
た、MI効果素子ヘッドh1においては、ハードディス
クなどの磁気記録媒体からの微小の漏れ磁界の有無によ
りMI効果素子薄膜12のインピーダンスが変化するの
で、このインピーダンス変化を読み取ることで記録媒体
の記録内容を読み取ることができる。
【0039】図5はMI効果素子薄膜22のMI効果を
測定するための回路系の一例を示すもので、図5Aに示
す回路構成ではMI効果素子薄膜222に対して電源E
acからMHz帯域の交流電流Iacを印加し、この状態で
MI効果素子薄膜22の長さ方向に外部磁界Hexを印加
すると、外部磁界Hexが数ガウス程度の微弱磁界であっ
てもMI効果素子薄膜22の両端に素材固有のインピー
ダンスによる電圧Emiが発生し、その振幅が外部磁界H
exの強度に対応して大きな割合で変化するので微弱磁界
検出ができる。
【0040】次に、MI効果素子薄膜12を用いて薄膜
磁気ヘッドHAを実際に構成する際には、高周波電流を
使用するので、回路の浮遊インピーダンスなどで感度が
不安定にならないように配慮する必要がある。この問題
の一つの解決策として、前述の構成のMIヘッドにあっ
ては、MIヘッドと高周波電源とを一体化した自己発振
方式の磁界検知回路を採用することが好ましい。この自
己発振回路を有する磁界検知回路の一例を図5Bに示
す。
【0041】図5Bに示す回路では、ブロックa、b、
cはそれぞれ高周波電源部、外部磁界検出部、増幅出力
部であり、外部磁界検出部bに薄膜磁気ヘッドHAのM
I効果素子薄膜22が接続された構造とされている。高
周波電源部aは、高周波交流電流を発生し外部磁界検知
部bに供給するための回路であってその方式は特に限定
されない。ここでは一例として、安定化コルビッツ発振
回路を採用したものを掲げる。自己発振方式ではこの他
に磁気変調を利用した振幅変調(AM)、周波数変調
(FM)、または位相変調(PM)をかけて磁界感知作
動をさせることもできる。
【0042】外部磁界検知部bは、薄膜磁気ヘッドHA
のMI効果素子ヘッドh1に設けられているMI効果素
子薄膜22と復調回路とからなり、高周波電源部aから
供給された高周波交流電流により待機状態とされたMI
効果素子薄膜12が外部磁界(Hex)に感応して発生し
たインピーダンス変化を、復調回路により復調し、増幅
出力部cに伝送する。増幅出力部cは差動増幅回路と出
力端子とを有する。この磁気センサ回路は、図示しない
が負帰還ループ回路が設けてあり、強い負帰還をかける
ことによって高精度・高感度・高速応答・高安定の微弱
磁気センサ回路が形成される。
【0043】本発明のMI効果素子薄膜22は、後述の
実施例で示すように、外部磁界の極性に係わらず同様の
パラメータ変化を示す。従って、リニア磁界センサを構
成する場合には直流磁界バイアスを印加する必要があ
る。本発明のMI効果素子薄膜12は微弱磁界における
直線性が高いため、磁石層23、23からのバイアス磁
界も軽微で良い。
【0044】本発明のMI効果素子薄膜を用いた薄膜磁
気ヘッドHAはMI効果素子薄膜22の長さ方向(図4
のX方向)の磁界変化に感応する。そして、数10〜1
00%/Oeのインピーダンス変化率と、10-6 Oe
の高い分解能と、数MHzの断周波数とを合わせ持つ、
高感度な薄膜磁気ヘッドHAを提供することができる。
そして、例えばヘッド長が極小寸法であっても磁界検出
感度は劣化せず、1Hz以上の交流磁界に対する最小検
出磁界は10-6に達する。
【0045】また、この形態の薄膜磁気ヘッドHAは、
応答の速い磁化の回転による磁束変化を利用することに
なるので高速応答性である。即ち、通過電流を高周波に
すると、表皮効果によってインピーダンスが外部磁界に
依存して鋭敏に変化し高感度化すると共に、磁壁の移動
が強い過電流制動により抑制され、磁化ベクトルの移動
によって磁束が発生するので高速応答性となる。本発明
のMI効果素子薄膜12を用いてコルピッツ発振回路な
どの自己発振回路を構成し、振幅変調方式のセンサを形
成すると、その遮断周波数は発振周波数の1/10程度
であり、数十MHzの発振周波数では直流磁界から数M
Hzの高周波磁界に至るまで、分解能が約10-6Oeの
高感度で安定に検出できるようになり、磁気記録媒体か
らの微小磁界でも好感度で検出可能な薄膜磁気ヘッドを
提供できる。
【0046】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳しく説明
する。 (実施例1)高周波マグネトロンスパッタ装置を用い、
Al23膜を被覆したAl23-TiC(アルチック)
基板(磁気ヘッドのスライダ用として常用される基板)
上に、複数のターゲットを用いて以下に示す構造になる
ようにスパッタして積層体を作成し、それをエッチング
により加工して図4に示す構造のMI効果素子を製造し
た。
【0047】この際、以下の表1に示す各組成の厚さ1
μmのMI効果素子薄膜とその両端にNi80Fe20合金
からなる厚さ1μmの強磁性体薄膜(磁束導入層)を成
膜積層し、更に強磁性体薄膜上にCo80Cr4Pt16合
金からなる磁石層と電極層をスパッタにより積層し、フ
ォトリソグラフィープロセスとイオンミリングによりM
I効果素子薄膜が露出するように磁石層と電極層を除去
して図4に示す構造のMI効果素子を得た。各組成試料
の組成と飽和磁束密度、透磁率は表1に示す結果とな
り、磁歪と薄膜幅の測定結果および熱処理時の昇温速度
と保持温度と保持時間について表2に示す。
【0048】前記MI効果素子薄膜を図5Bに示す磁界
検知回路に挿入し、3MHzの交流電流を印加した状態
で、MI効果素子薄膜の長さ方向(図4のX方向)に外
部磁界Hexを印加し、外部磁界Hex(Oe)と発生した
出力電圧(mV)との関係をプロットした。外部磁界H
exは0 Oeからスタートし、5 Oe、0 Oe、−5
Oe、0 Oeと連続的に往復変化させた。増幅倍率は
10倍に設定した。以上の測定結果を図6〜図12に示
す。
【0049】 「表1」 試料No. 組成 Bs(T) μ'(1MHz) 1 Fe83.7Zr3.7Nb3.67.8Cu1.2 1.52 4500 2 Fe83.7Zr3.7Nb3.67.8Cu1.2 1.52 4500 3 Fe85.5Zr3.4Nb3.36.7Cu1.1 1.57 5000 4 Fe85.5Zr3.4Nb3.36.7Cu1.1 1.57 5000 5 Fe81.1Nb7.511.4 1.55 4000 6 Fe81.1Nb7.511.4 1.55 4000 7 Fe81.1Nb7.511.4 1.55 4000 8 Fe81.1Nb7.511.4 1.55 4000 9 Fe89.0Nb7.72.7 1.70 3200 10 Fe89.0Nb7.72.7 1.70 3200 11 (Fe0.985Co0.01589.6Zr7.72.7 1.70 3400 12 (Fe0.985Co0.01589.6Zr7.72.7 1.70 3400 13 Fe72.4Si14.28.8Nb3.3Cu1.3 1.20 4000 14 Fe72.4Si14.28.8Nb3.3Cu1.3 1.20 4000
【0050】 「表2」 磁歪 薄膜幅 昇温速度 温度 保持時間 試料No. λs(×10-6) (℃/分) (℃) (分) 1 0.3 1mm 40 680 0 2 0.3 0.3mm 40 680 0 3 −0.3 1mm 40 680 0 4 −0.3 0.3mm 40 680 0 5 0.3 1mm 180 670 5 6 0.3 0.3mm 180 670 5 7 0.0 1mm 180 750 1 8 0.0 0.3mm 180 750 1 9 −1.0 1mm 180 600 5 10 −1.0 0.3mm 180 600 5 11 0.0 1mm 180 650 5 12 0.0 0.3mm 180 650 5 13 2.0 1mm 40 550 60 14 2.0 0.3mm 40 550 60
【0051】この結果からこの例のMI効果素子は、−
5 Oe〜+5 Oe程度の磁界においてリニアリティの
良好な線形応答性を得ることができ、−2 Oe〜+2
Oe程度の微弱磁界帯域においても高感度でかつ良好な
定量性を示し、かつヒステリシスも僅少であることか
ら、優れたMI素子であることがわかる。
【0052】特に、薄膜幅が約1mmの試料に比べて薄
膜幅が0.3mmの試料が良好な応答性を有している。
これは、薄膜幅が少ない方が線材試料に近い試料形状を
なしているためである。また、いずれの試料においても
Siを含まない系(FeZrNbBCu系、FeNbB
系、FeZrB系、FeCoZrB系)においては飽和
磁束密度が1.5〜1.70Tの優れた値を示し、1MH
zにおいて3200〜5000の優れた透磁率を示し、
磁歪も小さい特性を有している。これに対してSiを含
む系(FeSiBNbCu系)においても飽和磁束密度
は若干低いものの、1MHzにおいて4000の透磁率
が得られた。更に、Siを含まない系においては熱処理
条件として保持時間を0〜5分と少なくしても良好な軟
磁気特性が得られるが、Siを含む系においては保持時
間を60分程度として良好な軟磁気特性が得られた。
【0053】
【発明の効果】以上説明したように本発明において、特
殊な組成の軟磁性合金からなる磁気インピーダンス効果
素子薄膜を外部磁界検出用として備えてたものは、磁気
抵抗効果よりも遥かに大きな変化を示すMI効果を利用
して磁気記録媒体からの微小な磁界に線形応答して高感
度な読出性能を得ることができる薄膜磁気ヘッドを得る
ことができる。また、本発明に係る軟磁性合金からなる
MI効果素子薄膜は、正負磁界に対するインピーダンス
変化の対称性が良好であり、かつ微弱磁界域での定量性
が良好なために、高感度な読出性能を得ることができる
薄膜磁気ヘッドを得ることができる。
【0054】次に、スライダに書込ヘッドと読出ヘッド
を設け、書込ヘッドを磁気誘導型構造とし、読出ヘッド
をMI効果素子薄膜と電極膜から構成することで、磁気
記録媒体に対する磁気情報の書き込みができるととも
に、磁気記録媒体からの漏れ磁界を高感度で読出可能な
薄膜磁気ヘッドを提供できる。
【0055】本発明で用いる軟磁性合金のMI効果素子
薄膜は、微弱磁界における直線性に優れているが、更
に、前記磁気インピーダンス効果素子薄膜にバイアス印
加手段を付設することで、良好なリニア磁界センサとし
てハードディスクの漏れ磁界を検出することができる。
また、本発明で用いる軟磁性合金のMI効果素子薄膜は
微弱磁界における直線性に優れているので、バイアス磁
界も軽微で良い。前記バイアス印加手段としては、磁気
インピーダンス効果素子薄膜に接続された永久磁石を用
いたものが良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る磁気インピーダンス効果素子薄
膜を備えた薄膜磁気ヘッドの一実施形態の斜視図。
【図2】 図1に示す薄膜磁気ヘッドの要部の断面図。
【図3】 図1に示す薄膜磁気ヘッドの要部の一部を断
面とした斜視図。
【図4】 磁気インピーダンス効果素子薄膜の一例を示
す断面図。
【図5】 磁気インピーダンス特性の測定回路を示すも
ので、図5Aはその一例を示す回路図、図5Bは他の例
を示す回路図。
【図6】 実施例で得られたNo.1、2の試料の磁界
感応性を示す図。
【図7】 実施例で得られたNo.3、4の試料の磁界
感応性を示す図。
【図8】 実施例で得られたNo.5、6の試料の磁界
感応性を示す図。
【図9】 実施例で得られたNo.7、8の試料の磁界
感応性を示す図。
【図10】 実施例で得られたNo.9、10の試料の
磁界感応性を示す図。
【図11】 実施例で得られたNo.11、12の試料
の磁界感応性を示す図。
【図12】 実施例で得られたNo.13、14の試料
の磁界感応性を示す図。
【図13】 一般的な磁気インピーダンス特性の測定回
路図。
【図14】 従来のMI素子の一例における磁界感応性
を示すグラフ。
【符号の説明】
HA・・・薄膜磁気ヘッド、h1・・・MI効果素子ヘッド
(読出ヘッド)、h2・・・インダクティブヘッド(磁気誘
導型磁気ヘッド:書込ヘッド)、10・・・MI効果素
子、22・・・MI効果素子薄膜、23・・・磁石層(永久磁
石)、25・・・電極膜、50・・・磁気ヘッドコア、51・・
・スライダ、53・・・磁束導入層(下部コア層)、55・・
・下部コア、68・・・上部コア。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 内藤 豊 東京都大田区雪谷大塚町1番7号 アルプ ス電気株式会社内 (72)発明者 尾藤 輝夫 東京都大田区雪谷大塚町1番7号 アルプ ス電気株式会社内 (72)発明者 畑内 隆史 東京都大田区雪谷大塚町1番7号 アルプ ス電気株式会社内 (72)発明者 牧野 彰宏 東京都大田区雪谷大塚町1番7号 アルプ ス電気株式会社内 (72)発明者 井上 明久 宮城県仙台市青葉区川内元支倉35番地 川 内住宅11−806 (72)発明者 増本 健 宮城県仙台市青葉区上杉3丁目8−22

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外部磁界によってインピーダンスの変化
    を生じる磁気インピーダンス効果素子が外部磁界検出用
    として備えられるとともに、前記磁気インピーダンス効
    果素子が非晶質相と平均結晶粒径50nm以下のα-F
    eの微細結晶粒とを主体とするFe系の軟磁性合金から
    構成されたことを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
  2. 【請求項2】 前記磁気インピーダンス効果素子が、F
    e、Co、Niのうちの1種又は2種以上の元素を主成
    分とし、Zr、Nb、Ta、Hf、Mo、Ti、V、W
    のうちの1種又は2種以上の元素とBを含むFe系の軟
    磁性合金から形成されたことを特徴とする請求項1記載
    の薄膜磁気ヘッド。
  3. 【請求項3】 磁気媒体に媒体対向面を向けて相対移動
    するスライダに書込ヘッドと読出ヘッドが設けられ、前
    記書込ヘッドが薄膜状の上部コアと下部コアとそれらの
    間に介在された磁気ギャップとコイル導体とを具備する
    磁気誘導型構造とされ、前記読出ヘッドが磁気インピー
    ダンス効果素子とこのインピーダンス効果素子に接続さ
    れた電極膜を具備して構成されたことを特徴とする請求
    項1又は2記載の薄膜磁気ヘッド。
  4. 【請求項4】 前記磁気インピーダンス効果素子薄膜に
    バイアス印加手段が付設されてなることを特徴とする請
    求項1〜3のいずれかに記載の薄膜磁気ヘッド。
  5. 【請求項5】 前記バイアス印加手段が前記磁気インピ
    ーダンス効果素子薄膜に接続された永久磁石からなるこ
    とを特徴とする請求項4記載の薄膜磁気ヘッド。
  6. 【請求項6】 前記バイアス印加手段が前記磁気インピ
    ーダンス効果素子薄膜に積層された強磁性体薄膜とこの
    強磁性体薄膜に積層された反強磁性体薄膜とを具備して
    構成され、前記バイアスが前記反強磁性体薄膜により前
    記強磁性体薄膜に誘起させた交換結合磁界により印加さ
    れてなることを特徴とする請求項4記載の薄膜磁気ヘッ
    ド。
  7. 【請求項7】 前記軟磁性合金が下記の組成式で表され
    ることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の薄
    膜磁気ヘッド。 (Fe1-a-bCoaNibcxy ただし、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、M
    o、Wのうちの1種または2種以上を示し、組成比を示
    すa、b、c、x、yは、0≦a+b≦0.1、75原子%≦c
    ≦93原子%、0.5≦x≦18原子%、4原子%≦y≦
    9原子%である。
  8. 【請求項8】 前記軟磁性合金が下記の組成式で表され
    ることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の薄
    膜磁気ヘッド。 (Fe1-a-bCoaNibcxyz ただし、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、M
    o、Wのうちの1種または2種以上を示し、XはSi、
    Al、Ge、Gaのうちの1種または2種以上であり、
    組成比を示すa、b、c、x、y、zは、0≦a+b≦0.1、
    75原子%≦c≦93原子%、0.5原子%≦x≦18原
    子%、4原子%≦y≦9原子%、z≦4原子%である。
  9. 【請求項9】 前記軟磁性合金が下記の組成式で表され
    ることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の薄
    膜磁気ヘッド。 (Fe1-a-bCoaNibcxyd ただし、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、M
    o、Wのうちの1種または2種以上を示し、TはCu、
    Ag、Au、Pd、Ptのうちの1種または2種以上で
    あり、組成比を示すa、b、c、x、y、dは、0≦a+b≦
    0.1、75原子%≦c≦93原子%、0.5≦x≦18原
    子%、4原子%≦y≦9原子%、d≦4.5原子%であ
    る。
  10. 【請求項10】 前記軟磁性合金が下記の組成式で表さ
    れることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の
    薄膜磁気ヘッド。 (Fe1-a-bCoaNibcxydz ただし、MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、M
    o、Wのうちの1種または2種以上を示し、TはCu、
    Ag、Au、Pd、Ptのうちの1種または2種以上、
    XはSi、Al、Ge、Gaのうちの1種または2種以
    上であり、組成比を示すa、b、c、x、y、d、zは、0≦a
    +b≦0.1、75原子%≦c≦93原子%、0.5≦x≦
    18原子%、4原子%≦y≦9原子%、d≦4.5原子
    %、z≦4原子%である。
  11. 【請求項11】 請求項7〜10のいずれかに記載の軟
    磁性合金を構成する合金にCr、Ru、Rh、Irなど
    の白金族元素の少なくとも1種または2種以上が合計で
    5原子%以下添加されてなることを特徴とする請求項1
    〜10のいずれかに記載の薄膜磁気ヘッド。
JP12795098A 1998-05-11 1998-05-11 磁気インピーダンス効果素子を備えた薄膜磁気ヘッド Withdrawn JPH11328619A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021039711A1 (ja) * 2019-08-26 2021-03-04 日立金属株式会社 Fe-Co-Si-B-Nb系ターゲット

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WO2021039711A1 (ja) * 2019-08-26 2021-03-04 日立金属株式会社 Fe-Co-Si-B-Nb系ターゲット

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