JPH11310867A - 硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を有する表面被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents

硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を有する表面被覆超硬合金製切削工具

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JPH11310867A
JPH11310867A JP11679698A JP11679698A JPH11310867A JP H11310867 A JPH11310867 A JP H11310867A JP 11679698 A JP11679698 A JP 11679698A JP 11679698 A JP11679698 A JP 11679698A JP H11310867 A JPH11310867 A JP H11310867A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を有する表面
被覆超硬合金製切削工具を提供する。 【解決手段】 炭化タングステン基超硬合金基体の表面
に、アークイオンプレーティング形成の組成式:(Ti
1-x Alx )Nおよび同(Ti1-x Alx )C1- y y
(ただし、原子比で、xは0.3〜0.7、yは0.5
〜0.99を示す)を有する(Ti,Al)N層および
(Ti,Al)CN層のうちのいずれか、または両方で
構成された単層または複層からなる硬質被覆層を3〜2
0μmの平均層厚で物理蒸着してなる被覆超硬工具にし
て、Cukα線を線源として用いた上記被覆超硬工具の
X線回折で、上記硬質被覆層が、42.5〜44.5度
の範囲内の回折角(2θ)に現れる回折ピークが主ピー
クとこれに連なる左右ピークの3連続ピーク形状のX線
回折パターンを示してなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、硬質被覆層がす
ぐれた耐摩耗性を有し、例えば鋼の高速断続切削である
高速フライス切削に用いた場合にもすぐれた耐摩耗性を
発揮し、工具寿命の延命化を可能ならしめる表面被覆超
硬合金製切削工具(以下、被覆超硬工具と云う)に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】従来、一般に、例えば図1に概略説明図
で示される物理蒸着装置の1種であるアークイオンプレ
ーティング装置を用い、ヒータで装置内を、例えば雰囲
気を5〜30mtorrの真空として、300〜700
℃の温度に加熱した状態で、アノード電極と所定組成を
有するTi−Al合金ターゲットがセットされたカソー
ド電極(蒸発源)との間に、電圧:10〜50V、電
流:80〜100Aの条件でアーク放電を発生させ、同
時に装置内に反応ガスとして窒素ガス、または窒素ガス
とメタンガスを導入し、一方炭化タングステン(以下、
WCで示す)基超硬合金からなる基体(以下、超硬基体
と云う)には、ー150〜ー300Vのバイアス電圧を
印加した条件で、前記超硬基体の表面に、例えば特開昭
62−56565号公報に記載されるように、TiとA
lの複合窒化物[以下、(Ti,Al)Nで示す]およ
び複合炭窒化物[以下、(Ti,Al)CNで示す]の
うちのいずれか、あるいは両方で構成された単層または
複層の硬質被覆層を3〜20μmの平均層厚で蒸着する
ことにより被覆超硬工具を製造することが知られてい
る。また、上記従来被覆超硬工具は、Cukα線を線源
として用いたX線回折で、例えば上記硬質被覆層が(T
i,Al)N層である場合、図2に例示されるX線回折
パターンを示し、図示される通り35.5〜37.5
度、42.5〜44.5度、および61.5〜64.5
度のそれぞれの範囲内の回折角(2θ)に回折ピークが
現れる[硬質被覆層が(Ti,Al)CN層である場合
も同様な回折パターンを示す]ことも知られている。さ
らに、これらの従来被覆超硬工具が、例えば鋼などの連
続切削や断続切削に用いられることも良く知られるとこ
ろである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一方、近年、切削加工
は、切削機械の高性能化および高出力化と相まって高速
化の傾向にあるが、上記の従来被覆超硬工具において
は、これを高速切削、例えば鋼の高速断続切削である高
速フライス切削に用いた場合には、切刃の摩耗進行が著
しく促進されるようになることから、比較的短時間で使
用寿命に至り、省力化およびエネ化の面からも望ましく
ないのが現状である。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
上述のような観点から、上記の従来被覆超硬工具を構成
する硬質被覆層に着目し、特にこれの耐摩耗性向上を図
るべく研究を行った結果、被覆超硬工具の硬質被覆層を
構成する(Ti,Al)N層および(Ti,Al)CN
層を、上記の通り図3に例示されるアークイオンプレー
ティング装置を用いて形成するに際して、Ti−Al合
金ターゲットと共に、Tiターゲットをターゲット面を
同じくして配置し、これら2種のターゲットとアノード
電極間に同時にアーク放電を発生させ、 Ti−Al合金ターゲットのアーク放電電流:80〜1
00A(上記の従来条件と同じ)、 Ti−Al合金ターゲットのアーク放電電圧:10〜5
0V(上記の従来条件と同じ)、 Tiターゲットのアーク放電電流:10〜40A、 Tiターゲットのアーク放電電圧:10〜50V、 反応ガス:窒素ガス、または窒素ガスとメタンガス(上
記の従来条件と同じ)、 雰囲気圧力(真空度):5〜30mtorr(上記の従
来条件と同じ)、 雰囲気温度:300〜700℃(上記の従来条件と同
じ)、 超硬基体へのバイアス電圧:(−400〜−500V)
と(−10〜30V)の2種類の高低電圧を1〜5Hz
の周波数で繰り返し印加、とした条件で、組成式:(T
1-x Alx )Nおよび同(Ti1-x Alx )C1- y
y (ただし、原子比で、xは0.3〜0.7、yは0.
5〜0.99を示す)を満足する(Ti,Al)N層お
よび(Ti,Al)CN層を形成すると、この結果の被
覆超硬工具は、Cukα線を線源として用いたX線回折
で、X線回折パターンにおける42.5〜44.5度の
範囲内の回折角(2θ)に現れる回折ピークが、例えば
上記硬質被覆層が(Ti,Al)N層である場合のX線
回折パターンが図1に例示される通り、主ピークとこれ
に連なる左右ピークの3連続ピーク形状を示すようにな
り、これを高速切削、例えば鋼の高速断続切削である高
速フライス切削に用いた場合にも、切刃の摩耗進行が著
しく抑制され、すぐれた耐摩耗性を発揮するようになる
という研究結果を得たのである。
【0005】この発明は、上記の研究結果に基づいてな
されたものであって、超硬基体の表面に、アークイオン
プレーティング形成の組成式:(Ti1-x Alx )Nお
よび同(Ti1-x Alx )C1-y y (ただし、原子比
で、xは0.3〜0.7、yは0.5〜0.99を示
す)を有する(Ti,Al)N層および(Ti,Al)
CN層のうちのいずれか、または両方で構成された単層
または複層からなる硬質被覆層を3〜20μmの平均層
厚で物理蒸着してなる被覆超硬工具にして、Cukα線
を線源として用いた上記被覆超硬工具のX線回折で、上
記硬質被覆層が、42.5〜44.5度の範囲内の回折
角(2θ)に現れる回折ピークが主ピークとこれに連な
る左右ピークの3連続ピーク形状のX線回折パターンを
示してなる、硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を有する被
覆超硬工具に特徴を有するものである。
【0006】なお、この発明の被覆超硬工具において、
硬質被覆層を構成する(Ti,Al)Nおよび(Ti,
Al)CNにおけるAlはTiCNに対して硬さを高
め、もって耐摩耗性を向上させるために固溶するもので
あり、したがって組成式:(Ti1-x Alx )Nおよび
同(Ti1-x Alx )C1-y y のx値が0.3未満で
は所望の耐摩耗性を確保することができず、一方その値
が0.7を越えると、切刃に欠けやチッピングが発生し
易くなると云う理由によりx値を0.3〜0.7(原子
比)と定めたのである。また、(Ti,Al)CN層に
おけるC成分には、硬さを向上させる作用があるので、
(Ti,Al)CN層は上記(Ti,Al)N層に比し
て相対的に高い硬さをもつが、この場合C成分の割合が
0.01未満、すなわちy値が0.99を越えると所定
の硬さ向上効果が得られず、一方C成分の割合が0.5
を越える、すなわちy値が0.5未満になると靭性が急
激に低下するようになることから、y値を0.5〜0.
99、望ましくは0.55〜0.9と定めた。硬質被覆
層の平均層厚を3〜20μmとしたのは、その層厚が3
μm未満では所望のすぐれた耐摩耗性を確保することが
できず、一方その層厚が20μmを越えると切刃に欠け
やチッピングが発生し易くなると云う理由によるもので
あり、望ましくは5〜10μmの平均層厚とするのがよ
い。さらに、この発明の被覆超硬工具に、これの使用前
および使用後の識別を容易にするために、最表面層とし
て黄金色の色調を有する窒化チタン(TiN)層を0.
1〜1μmの平均層厚で蒸着してもよい。
【0007】
【発明の実施の形態】ついで、この発明の被覆超硬工具
を実施例により具体的に説明する。原料粉末として、い
ずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC
粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉
末、Cr3 2 粉末、TiN粉末、TaN粉末、および
Co粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される
配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、
乾燥した後、1.5ton/cm2 の圧力で圧粉体にプ
レス成形し、この圧粉体を真空中、温度:1400℃に
1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:
0.05のホーニング加工を施してISO規格・SPG
N120312のチップ形状をもったWC基超硬合金製
の超硬基体1〜10を形成した。
【0008】ついで、これら超硬基体1〜10を、アセ
トン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、それぞれ図3
に例示される通常のアークイオンプレーティング装置に
装入し、一方カソード電極(蒸発源)として種々の成分
組成をもったTi−Al合金ターゲットとTiターゲッ
トをターゲット面を同じくして装着し、まず、装置内を
排気して1×10-5torrの真空に保持しながら、ヒ
ーターで装置内を500℃に加熱した後、Arガスを装
置内に導入して1×10-3torrのAr雰囲気とし、
この状態で前記超硬基体に−800vのバイアス電圧を
印加して超硬基体表面をArガスボンバート洗浄し、つ
いで、 Ti−Al合金ターゲットのアーク放電電流:100
A、 Ti−Al合金ターゲットのアーク放電電圧:25V、 Tiターゲットのアーク放電電流:10A、 Tiターゲットのアーク放電電圧:15V、 反応ガス:窒素ガス、または窒素ガスとメタンガス、 雰囲気圧力(真空度):30mtorr、 雰囲気温度:450℃、 超硬基体へのバイアス電圧:−450Vと−20Vの高
低電圧を2Hz の周波数で繰り返し印加、とした条件
で、前記超硬基体1〜10のそれぞれの表面に、表2、
3に示される組成および平均層厚をもった硬質被覆層を
蒸着することにより本発明被覆超硬工具1〜18をそれ
ぞれ製造した。
【0009】また、比較の目的で、Tiターゲットを用
いず、かつ超硬基体へのバイアス電圧の印加を−100
V一定とする以外は同一の条件で、上記本発明被覆超硬
工具1〜18のそれぞれに対応する組成および平均層厚
(これらは上記本発明被覆超硬工具1〜18のそれとほ
とんど変わらない結果を示したので、その記載を省略す
る)をもった硬質被覆層を蒸着することにより従来被覆
超硬工具1〜18をそれぞれ製造した。
【0010】この結果得られた各種の被覆超硬工具につ
いて、その硬質被覆層表面を、 ターゲット:Cu、 ステップ角度:0.04度、 計数時間:0.05秒、 管電圧:40KV、 管電流:300mA、 発散スリット:1度、 受光スリット:0.2mm、 散乱スリット:1度、 測定角度(2θ):20〜80度、 の条件でX線回折し、このX線回折で得られたX線回折
パターンにおける42.5〜44.5度の範囲内の回折
角(2θ)に現れる回折ピークを観察し、回折ピークの
回折角(2θ)を測定した。この結果を表4、5に示し
た。
【0011】つぎに、この結果得られた本発明被覆超硬
工具1〜18および従来被覆超硬工具1〜18につい
て、 被削材:JIS・SCM440の角材、 切削速度:300m/min.、 切込み:2mm、 送り:0.3mm/刃、 切削時間:10分、 の条件での合金鋼の乾式断続切削(フライス切削)試験
を行ない、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。これらの測
定結果を表4、5に示した。
【0012】
【表1】
【0013】
【表2】
【0014】
【表3】
【0015】
【表4】
【0016】
【表5】
【0017】
【発明の効果】表2〜5に示される結果から、本発明被
覆超硬工具1〜18は、いずれも苛酷な条件となる合金
鋼の乾式断続切削(フライス切削)試験で、従来被覆超
硬工具1〜18に比して一段とすぐれた耐摩耗性を発揮
することが明らかである。上述のように、この発明の被
覆超硬工具は、鋼などの通常の条件での連続切削や断続
切削は勿論のこと、断続切削を高速で行っても、すぐれ
た耐摩耗性を示し、長期に亘っての切削を可能とするも
のであり、切削加工の省力化およびエネ化に寄与するも
のである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明被覆超硬工具2のX線回折パターンを示
す図である。
【図2】従来被覆超硬工具2のX線回折パターンを示す
図である。
【図3】アークイオンプレーティング装置の概略説明図
である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭化タングステン基超硬合金基体の表面
    に、アークイオンプレーティング形成の組成式:(Ti
    1-x Alx )Nおよび同(Ti1-x Alx )C1-y y
    (ただし、原子比で、xは0.3〜0.7、yは0.5
    〜0.99を示す)を有するTiとAlの複合窒化物お
    よびTiとAlの複合炭窒化物のうちのいずれかで構成
    された単層または両方で構成された複層からなる硬質被
    覆層を3〜20μmの平均層厚で物理蒸着してなる表面
    被覆超硬合金製切削工具にして、 Cukα線を線源として用いた上記表面被覆超硬合金製
    切削工具のX線回折で、上記硬質被覆層が、42.5〜
    44.5度の範囲内の回折角(2θ)に現れる回折ピー
    クが主ピークとこれに連なる左右ピークの3連続ピーク
    形状のX線回折パターンを示すことを特徴とする硬質被
    覆層がすぐれた耐摩耗性を有する表面被覆超硬合金製切
    削工具。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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US7083868B2 (en) 2002-09-04 2006-08-01 Seco Tools Ab Composite structured wear resistant coating
US7150925B2 (en) * 2001-10-30 2006-12-19 Mitsubishi Materials Kobe Tools Corporation Surface coated cemented carbide cutting tool having hard coating layer exhibiting excellent wear resistance in high speed machining
US7258933B2 (en) * 2002-06-25 2007-08-21 Mitsubishi Materials Corporation Coated cutting tool member
JP2013094883A (ja) * 2011-10-31 2013-05-20 Kyocera Corp 切削工具

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