JP2000167702A - 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 - Google Patents
硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具Info
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- JP2000167702A JP2000167702A JP34672298A JP34672298A JP2000167702A JP 2000167702 A JP2000167702 A JP 2000167702A JP 34672298 A JP34672298 A JP 34672298A JP 34672298 A JP34672298 A JP 34672298A JP 2000167702 A JP2000167702 A JP 2000167702A
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- cutting tool
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮
する表面被覆サーメット製切削工具を提供する。 【解決手段】 表面被覆サーメット製切削工具が、ＷＣ
基超硬合金基体またはＴｉＣＮ系サーメット基体の表面
に、各層が０．１〜１０μｍの平均層厚を有する、Ｔｉ
Ｃ層、ＴｉＮ層、ＴｉＣＮ層、ＴｉＣＯ層、ＴｉＮＯ
層、およびＴｉＣＮＯ層のうちの１層または２層以上か
らなるＴｉ化合物層と、各層が０．５〜１０μｍの平均
層厚を有し、かつ原子比に基ずく組成式：Ａｌ2 Ｏ3-x
で現した場合、ｘ：０．２〜０．５を満足するＡｌ酸化
物層の１層または２層以上と、で構成した硬質被覆層を
２〜２５μｍの全体平均層厚で蒸着してなる。
する表面被覆サーメット製切削工具を提供する。 【解決手段】 表面被覆サーメット製切削工具が、ＷＣ
基超硬合金基体またはＴｉＣＮ系サーメット基体の表面
に、各層が０．１〜１０μｍの平均層厚を有する、Ｔｉ
Ｃ層、ＴｉＮ層、ＴｉＣＮ層、ＴｉＣＯ層、ＴｉＮＯ
層、およびＴｉＣＮＯ層のうちの１層または２層以上か
らなるＴｉ化合物層と、各層が０．５〜１０μｍの平均
層厚を有し、かつ原子比に基ずく組成式：Ａｌ2 Ｏ3-x
で現した場合、ｘ：０．２〜０．５を満足するＡｌ酸化
物層の１層または２層以上と、で構成した硬質被覆層を
２〜２５μｍの全体平均層厚で蒸着してなる。
Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】この発明は、硬質被覆層の構
成層であるＡｌ酸化物層が強靭性を有し、これによって
各種鋼の断続切削を高切り込みや高送りなどの重切削条
件で行っても切刃にチッピング（微小欠け）の発生な
く、すぐれた切削性能を長期に亘って発揮するようにな
る表面被覆サーメット製切削工具（以下、被覆サーメッ
ト工具と略記する）に関するものである。
成層であるＡｌ酸化物層が強靭性を有し、これによって
各種鋼の断続切削を高切り込みや高送りなどの重切削条
件で行っても切刃にチッピング（微小欠け）の発生な
く、すぐれた切削性能を長期に亘って発揮するようにな
る表面被覆サーメット製切削工具（以下、被覆サーメッ
ト工具と略記する）に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】従来、一般に、炭化タングステン基超硬
合金基体および炭窒化チタン系サーメット基体（以下、
これらを総称してサーメット基体と云う）の表面に、各
層がそれぞれ０．１〜１０μｍの平均層厚を有する、Ｔ
ｉの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、窒
酸化物層、および炭窒酸化物層（以下、それぞれＴｉＣ
層、ＴｉＮ層、ＴｉＣＮ層、ＴｉＣＯ層、ＴｉＮＯ層、
およびＴｉＣＮＯ層で示す）のうちの１層または２層以
上からなるＴｉ化合物層と、各層がそれぞれ０．５〜１
０μｍの平均層厚を有し、かつＡｌ2 Ｏ3 の組成式（原
子比）で現わされるＡｌ酸化物層（以下、Ａｌ2 Ｏ3 層
と云う）とで構成された硬質被覆層を２〜２５μｍの全
体平均層厚で蒸着してなる、被覆サーメット工具が知ら
れており、これらの被覆サーメット工具が各種鋼の連続
切削や断続切削に用いられていることも良く知られると
ころである。また、上記被覆サーメット工具の硬質被覆
層が、例えばＴｉＣ層、ＴｉＮ層、あるいはＴｉＣＮ層
のＴｉ化合物層である場合、図１に概略説明図で示され
る物理蒸着装置の１種であるアークイオンプレーティン
グ装置を用い、ヒータで装置内を例えば７００℃の温度
に加熱した状態で、アノード電極とＴｉがセットされた
カソード電極（蒸発源）との間にアーク放電を発生さ
せ、同時に装置内に反応ガスとしてメタンガスまたは窒
素ガス、あるいは窒素ガスとメタンガスを導入し、一方
前記アノード電極およびカソード電極と所定間隔をもっ
て対向配置されたサーメット基体には、例えば−１２０
Ｖのバイアス電圧を印加した条件で、前記サーメット基
体の表面に、前記硬質被覆層を物理蒸着することも知ら
れている。さらに、上記硬質被覆層がＡｌ2 Ｏ3 層であ
る場合は、同じく図１のアークイオンプレーティング装
置において、カソード電極をＡｌとし、導入される反応
ガスを酸素とすると共に、サーメット基体表面に成膜さ
れるＡｌ2 Ｏ3 層は絶縁膜であるから、前記サーメット
基体にはバイアス電圧に代って高周波電圧またはパルス
電圧を印加することにより形成されている。
合金基体および炭窒化チタン系サーメット基体（以下、
これらを総称してサーメット基体と云う）の表面に、各
層がそれぞれ０．１〜１０μｍの平均層厚を有する、Ｔ
ｉの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、窒
酸化物層、および炭窒酸化物層（以下、それぞれＴｉＣ
層、ＴｉＮ層、ＴｉＣＮ層、ＴｉＣＯ層、ＴｉＮＯ層、
およびＴｉＣＮＯ層で示す）のうちの１層または２層以
上からなるＴｉ化合物層と、各層がそれぞれ０．５〜１
０μｍの平均層厚を有し、かつＡｌ2 Ｏ3 の組成式（原
子比）で現わされるＡｌ酸化物層（以下、Ａｌ2 Ｏ3 層
と云う）とで構成された硬質被覆層を２〜２５μｍの全
体平均層厚で蒸着してなる、被覆サーメット工具が知ら
れており、これらの被覆サーメット工具が各種鋼の連続
切削や断続切削に用いられていることも良く知られると
ころである。また、上記被覆サーメット工具の硬質被覆
層が、例えばＴｉＣ層、ＴｉＮ層、あるいはＴｉＣＮ層
のＴｉ化合物層である場合、図１に概略説明図で示され
る物理蒸着装置の１種であるアークイオンプレーティン
グ装置を用い、ヒータで装置内を例えば７００℃の温度
に加熱した状態で、アノード電極とＴｉがセットされた
カソード電極（蒸発源）との間にアーク放電を発生さ
せ、同時に装置内に反応ガスとしてメタンガスまたは窒
素ガス、あるいは窒素ガスとメタンガスを導入し、一方
前記アノード電極およびカソード電極と所定間隔をもっ
て対向配置されたサーメット基体には、例えば−１２０
Ｖのバイアス電圧を印加した条件で、前記サーメット基
体の表面に、前記硬質被覆層を物理蒸着することも知ら
れている。さらに、上記硬質被覆層がＡｌ2 Ｏ3 層であ
る場合は、同じく図１のアークイオンプレーティング装
置において、カソード電極をＡｌとし、導入される反応
ガスを酸素とすると共に、サーメット基体表面に成膜さ
れるＡｌ2 Ｏ3 層は絶縁膜であるから、前記サーメット
基体にはバイアス電圧に代って高周波電圧またはパルス
電圧を印加することにより形成されている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】一方、近年の切削加工
の省エネ化および省力化に対する要求は強く、これに伴
ない、切削工具には、できるだけ切削条件に影響されな
い、すなわち切削条件を変化させても、どの切削条件で
も十分満足に対応できる切削性能を発揮することが求め
られる傾向にあるが、上記の従来被覆サーメット工具に
おいては、硬質被覆層を構成するＡｌ2 Ｏ3 層は、高硬
度とすぐれた耐熱性を有するものの、十分な強靭性を具
備するものでないために、特に鋼の断続切削を高送りお
よび高切り込みなどの重切削条件で行った場合に、前記
Ａｌ2 Ｏ3 層が原因で切刃にチッピングが発生し易く、
比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
の省エネ化および省力化に対する要求は強く、これに伴
ない、切削工具には、できるだけ切削条件に影響されな
い、すなわち切削条件を変化させても、どの切削条件で
も十分満足に対応できる切削性能を発揮することが求め
られる傾向にあるが、上記の従来被覆サーメット工具に
おいては、硬質被覆層を構成するＡｌ2 Ｏ3 層は、高硬
度とすぐれた耐熱性を有するものの、十分な強靭性を具
備するものでないために、特に鋼の断続切削を高送りお
よび高切り込みなどの重切削条件で行った場合に、前記
Ａｌ2 Ｏ3 層が原因で切刃にチッピングが発生し易く、
比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
【０００４】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
上述のような観点から、上記の従来被覆サーメット工具
の硬質被覆層を構成するＡｌ2 Ｏ3 層に着目し、これの
強靭性化を図るべく研究を行なった結果、前記Ａｌ2 Ｏ
3 層に代わって、同じく原子比に基づく組成式：Ａｌ2
Ｏ3-x で現した場合、ｘ：０．２〜０．５を満足するＡ
ｌ酸化物層、すなわち従来Ａｌ2 Ｏ3 層に比して相対的
に酸素含有量の低いＡｌ酸化物層（以下、Ａｌ2 Ｏ3-x
層で示す）で硬質被覆層を構成すると、このＡｌ2 Ｏ
3-x 層は、前記Ａｌ2 Ｏ3 層と同等の高強度とすぐれた
耐熱性を保持した状態で強靭性を具備することから、こ
の結果の被覆サーメット工具は、これを用いて各種鋼の
断続切削を高切り込みや高送りなどの重切削条件で行っ
ても、切刃にチッピングの発生なく、すぐれた切削性能
を長期に亘って発揮するようになるという研究結果を得
たのである。
上述のような観点から、上記の従来被覆サーメット工具
の硬質被覆層を構成するＡｌ2 Ｏ3 層に着目し、これの
強靭性化を図るべく研究を行なった結果、前記Ａｌ2 Ｏ
3 層に代わって、同じく原子比に基づく組成式：Ａｌ2
Ｏ3-x で現した場合、ｘ：０．２〜０．５を満足するＡ
ｌ酸化物層、すなわち従来Ａｌ2 Ｏ3 層に比して相対的
に酸素含有量の低いＡｌ酸化物層（以下、Ａｌ2 Ｏ3-x
層で示す）で硬質被覆層を構成すると、このＡｌ2 Ｏ
3-x 層は、前記Ａｌ2 Ｏ3 層と同等の高強度とすぐれた
耐熱性を保持した状態で強靭性を具備することから、こ
の結果の被覆サーメット工具は、これを用いて各種鋼の
断続切削を高切り込みや高送りなどの重切削条件で行っ
ても、切刃にチッピングの発生なく、すぐれた切削性能
を長期に亘って発揮するようになるという研究結果を得
たのである。
【０００５】この発明は、上記の研究結果にもとづいて
なされたものであって、サーメット基体の表面に、各層
が０．１〜１０μｍの平均層厚を有する、ＴｉＣ層、Ｔ
ｉＮ層、ＴｉＣＮ層、ＴｉＣＯ層、ＴｉＮＯ層、および
ＴｉＣＮＯ層のうちの１層または２層以上からなるＴｉ
化合物層と、各層が０．５〜１０μｍの平均層厚を有
し、かつ原子比に基ずく組成式：Ａｌ 2 Ｏ3-x で現した
場合、ｘ：０．２〜０．５を満足するＡｌ2 Ｏ3-x 層の
１層または２層以上と、で構成した硬質被覆層を２〜２
５μｍの全体平均層厚で蒸着してなる、硬質被覆層がす
ぐれた耐チッピング性を発揮する被覆サーメット工具に
特徴を有するものである。
なされたものであって、サーメット基体の表面に、各層
が０．１〜１０μｍの平均層厚を有する、ＴｉＣ層、Ｔ
ｉＮ層、ＴｉＣＮ層、ＴｉＣＯ層、ＴｉＮＯ層、および
ＴｉＣＮＯ層のうちの１層または２層以上からなるＴｉ
化合物層と、各層が０．５〜１０μｍの平均層厚を有
し、かつ原子比に基ずく組成式：Ａｌ 2 Ｏ3-x で現した
場合、ｘ：０．２〜０．５を満足するＡｌ2 Ｏ3-x 層の
１層または２層以上と、で構成した硬質被覆層を２〜２
５μｍの全体平均層厚で蒸着してなる、硬質被覆層がす
ぐれた耐チッピング性を発揮する被覆サーメット工具に
特徴を有するものである。
【０００６】なお、この発明の被覆サーメット工具の硬
質被覆層を構成するＡｌ2 Ｏ3-x 層のｘ値を原子比で
０．２〜０．５としたのは、その値が０．２未満では層
の強靭性化が不十分で、硬質被覆層の構成層として実用
に供した場合、特に重切削条件での断続切削では切刃に
チッピングが発生するのを避けられず、一方その値が
０．５を越えると層自体の硬さが急激に低下し、実用に
際しての耐摩耗性低下の原因となるという理由によるも
のであり、さらにその平均層厚を０．５〜１０μｍとし
たのは、その層厚が０．５μｍ未満では所望の耐摩耗性
を確保することができず、一方その層厚が１０μｍを越
えると切刃にチッピングが発生し易くなるという理由に
基づくものある。また、Ｔｉ化合物層の各層のそれぞれ
の平均層厚を０．１〜１０μｍとしたのは以下に示す理
由によるものである。すなわち前記Ｔｉ化合物層はサー
メット基体表面に対する密着性にすぐれ、かつすぐれた
層間密着性を有し、さらに靭性を具備するものであり、
したがって、その層厚が０．１μｍ未満では所望の密着
性および靭性を確保することができず、この結果切刃に
欠けやチッピングが発生し易くなり、一方その層厚が１
０μｍを越えると摩耗進行が急激に促進されるようにな
ることによるものである。さらに上記硬質被覆層の全体
平均層厚を２〜２５μｍとしたのは、その層厚が２μｍ
未満では所望の耐摩耗性を確保することができず、一方
その層厚が２５μｍを越えると切刃にチッピングが発生
し易くなるという理由からである。
質被覆層を構成するＡｌ2 Ｏ3-x 層のｘ値を原子比で
０．２〜０．５としたのは、その値が０．２未満では層
の強靭性化が不十分で、硬質被覆層の構成層として実用
に供した場合、特に重切削条件での断続切削では切刃に
チッピングが発生するのを避けられず、一方その値が
０．５を越えると層自体の硬さが急激に低下し、実用に
際しての耐摩耗性低下の原因となるという理由によるも
のであり、さらにその平均層厚を０．５〜１０μｍとし
たのは、その層厚が０．５μｍ未満では所望の耐摩耗性
を確保することができず、一方その層厚が１０μｍを越
えると切刃にチッピングが発生し易くなるという理由に
基づくものある。また、Ｔｉ化合物層の各層のそれぞれ
の平均層厚を０．１〜１０μｍとしたのは以下に示す理
由によるものである。すなわち前記Ｔｉ化合物層はサー
メット基体表面に対する密着性にすぐれ、かつすぐれた
層間密着性を有し、さらに靭性を具備するものであり、
したがって、その層厚が０．１μｍ未満では所望の密着
性および靭性を確保することができず、この結果切刃に
欠けやチッピングが発生し易くなり、一方その層厚が１
０μｍを越えると摩耗進行が急激に促進されるようにな
ることによるものである。さらに上記硬質被覆層の全体
平均層厚を２〜２５μｍとしたのは、その層厚が２μｍ
未満では所望の耐摩耗性を確保することができず、一方
その層厚が２５μｍを越えると切刃にチッピングが発生
し易くなるという理由からである。
【０００７】
【発明の実施の形態】つぎに、この発明の被覆サーメッ
ト工具を実施例により具体的に説明する。原料粉末とし
て、いずれも０．５〜３μｍの平均粒径を有するＷＣ粉
末、ＴｉＣ粉末、ＴａＣ粉末、およびＣｏ粉末を用意
し、これら原料粉末を、重量％でＷＣ：９２％、Ｔｉ
Ｃ：１％、ＴａＣ：１％、およびＣｏ：６％の配合組成
に配合し、ボールミルで７２時間湿式混合し、乾燥した
後、１．５ｔｏｎ／ｃｍ2 の圧力で圧粉体にプレス成形
し、この圧粉体を真空中、温度：１４５０℃に１時間保
持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にＲ：０．０５の
ホーニング加工を施してＩＳＯ規格・ＳＥＥＮ１２０３
ＡＦＥＮ１のチップ形状をもったＷＣ基超硬合金製のサ
ーメット基体Ａを形成した。また、原料粉末として、い
ずれも０．５〜２μｍの平均粒径を有するＴｉＣＮ（重
量比でＴｉＣ／ＴｉＮ＝５０／５０）粉末、ＴａＣ粉
末、ＷＣ粉末、ＶＣ粉末、Ｃｏ粉末、Ｎｉ粉末、および
Ｃ粉末を用意し、これら原料粉末を、重量％でＴｉＣ
Ｎ：７５％、ＴａＣ：３％、ＷＣ：９％、ＶＣ：１％、
Ｃｏ：８％、Ｎｉ：３％、およびＣ：１％の配合組成に
配合し、ボールミルで２４時間湿式混合し、乾燥した
後、１ｔｏｎ／ｃｍ2 の圧力で圧粉体にプレス成形し、
この圧粉体を５ｔｏｒｒの窒素雰囲気中、温度：１５５
０℃に１時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分に
Ｒ：０．０３のホーニング加工を施してＩＳＯ規格・Ｓ
ＥＥＮ１２０３ＡＦＥＮ１のチップ形状をもったＴｉＣ
Ｎ系サーメット製のサーメット基体Ｂを形成した。
ト工具を実施例により具体的に説明する。原料粉末とし
て、いずれも０．５〜３μｍの平均粒径を有するＷＣ粉
末、ＴｉＣ粉末、ＴａＣ粉末、およびＣｏ粉末を用意
し、これら原料粉末を、重量％でＷＣ：９２％、Ｔｉ
Ｃ：１％、ＴａＣ：１％、およびＣｏ：６％の配合組成
に配合し、ボールミルで７２時間湿式混合し、乾燥した
後、１．５ｔｏｎ／ｃｍ2 の圧力で圧粉体にプレス成形
し、この圧粉体を真空中、温度：１４５０℃に１時間保
持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にＲ：０．０５の
ホーニング加工を施してＩＳＯ規格・ＳＥＥＮ１２０３
ＡＦＥＮ１のチップ形状をもったＷＣ基超硬合金製のサ
ーメット基体Ａを形成した。また、原料粉末として、い
ずれも０．５〜２μｍの平均粒径を有するＴｉＣＮ（重
量比でＴｉＣ／ＴｉＮ＝５０／５０）粉末、ＴａＣ粉
末、ＷＣ粉末、ＶＣ粉末、Ｃｏ粉末、Ｎｉ粉末、および
Ｃ粉末を用意し、これら原料粉末を、重量％でＴｉＣ
Ｎ：７５％、ＴａＣ：３％、ＷＣ：９％、ＶＣ：１％、
Ｃｏ：８％、Ｎｉ：３％、およびＣ：１％の配合組成に
配合し、ボールミルで２４時間湿式混合し、乾燥した
後、１ｔｏｎ／ｃｍ2 の圧力で圧粉体にプレス成形し、
この圧粉体を５ｔｏｒｒの窒素雰囲気中、温度：１５５
０℃に１時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分に
Ｒ：０．０３のホーニング加工を施してＩＳＯ規格・Ｓ
ＥＥＮ１２０３ＡＦＥＮ１のチップ形状をもったＴｉＣ
Ｎ系サーメット製のサーメット基体Ｂを形成した。
【０００８】ついで、これらサーメット基体Ａ、Ｂを、
アルカリ洗剤およびアルコール溶液中で超音波洗浄し、
乾燥した状態でそれぞれ図１に示されるアークイオンプ
レーティング装置に装入し、カソード電極（蒸発源）と
して、Ｔｉ化合物層形成に際してはＴｉを装着し、また
Ａｌ2 Ｏ3-x 層およびＡｌ2 Ｏ3 層形成においては、Ａ
ｌを装着し、装置内を排気して１×１０-5ｔｏｒｒの真
空に保持しながら、ヒーターで装置内を５００℃に加熱
した状態で、サーメット基体に−１００Ｖのバイアス電
圧を印加し、装置内に反応ガスとして硬質被覆層の組成
に応じてメタンガス、窒素ガス、および酸素ガスのうち
の１種または２種以上を導入しながら、前記カソード電
極とアノード電極との間にアーク放電を発生させ、もっ
て前記サーメット基体Ａ、Ｂのそれぞれの表面に、表１
〜４に示される目標組成および目標層厚で、硬質被覆層
がＡｌ2 Ｏ3-x 層とＴｉ化合物層からなる本発明被覆サ
ーメット工具１〜１８、および硬質被覆層がＡｌ2 Ｏ3
層とＴｉ化合物層からなる比較被覆サーメット工具１〜
１８をそれぞれ製造した。なお、上記の本発明被覆サー
メット工具１〜１８および比較被覆サーメット工具１〜
１８の硬質被覆層のうちのＴｉ化合物層の形成は、Ｔｉ
と非金属成分（Ｃ、Ｎ、およびＯ）との相対原子比が
１：１、同じく非金属成分であるＣとＮ、ＣとＯ、およ
びＮとＯの相対原子比も１：１、さらに同じくＣとＮと
Ｏの相対原子比も１：１：１となる条件で行い、したが
って表１〜４のＴｉＣＮ層、ＴｉＣＯ層、ＴｉＮＯ層、
およびＴｉＣＮＯ層は、それぞれＴｉＣ0.5 Ｎ0.5 、Ｔ
ｉＣ0. 5 Ｏ0.5 、ＴｉＮ0.5 Ｏ0.5 、およびＴｉＣ0.33
Ｎ0.33Ｏ0.33の目標組成で形成した。また、前記硬質被
覆層の構成層のそれぞれについて、その組成および層厚
を電子プローブＸ線マイクロアナライザー装置を用いて
測定したところ、目標組成および目標層厚と実質的に同
じ組成および平均層厚を示した。
アルカリ洗剤およびアルコール溶液中で超音波洗浄し、
乾燥した状態でそれぞれ図１に示されるアークイオンプ
レーティング装置に装入し、カソード電極（蒸発源）と
して、Ｔｉ化合物層形成に際してはＴｉを装着し、また
Ａｌ2 Ｏ3-x 層およびＡｌ2 Ｏ3 層形成においては、Ａ
ｌを装着し、装置内を排気して１×１０-5ｔｏｒｒの真
空に保持しながら、ヒーターで装置内を５００℃に加熱
した状態で、サーメット基体に−１００Ｖのバイアス電
圧を印加し、装置内に反応ガスとして硬質被覆層の組成
に応じてメタンガス、窒素ガス、および酸素ガスのうち
の１種または２種以上を導入しながら、前記カソード電
極とアノード電極との間にアーク放電を発生させ、もっ
て前記サーメット基体Ａ、Ｂのそれぞれの表面に、表１
〜４に示される目標組成および目標層厚で、硬質被覆層
がＡｌ2 Ｏ3-x 層とＴｉ化合物層からなる本発明被覆サ
ーメット工具１〜１８、および硬質被覆層がＡｌ2 Ｏ3
層とＴｉ化合物層からなる比較被覆サーメット工具１〜
１８をそれぞれ製造した。なお、上記の本発明被覆サー
メット工具１〜１８および比較被覆サーメット工具１〜
１８の硬質被覆層のうちのＴｉ化合物層の形成は、Ｔｉ
と非金属成分（Ｃ、Ｎ、およびＯ）との相対原子比が
１：１、同じく非金属成分であるＣとＮ、ＣとＯ、およ
びＮとＯの相対原子比も１：１、さらに同じくＣとＮと
Ｏの相対原子比も１：１：１となる条件で行い、したが
って表１〜４のＴｉＣＮ層、ＴｉＣＯ層、ＴｉＮＯ層、
およびＴｉＣＮＯ層は、それぞれＴｉＣ0.5 Ｎ0.5 、Ｔ
ｉＣ0. 5 Ｏ0.5 、ＴｉＮ0.5 Ｏ0.5 、およびＴｉＣ0.33
Ｎ0.33Ｏ0.33の目標組成で形成した。また、前記硬質被
覆層の構成層のそれぞれについて、その組成および層厚
を電子プローブＸ線マイクロアナライザー装置を用いて
測定したところ、目標組成および目標層厚と実質的に同
じ組成および平均層厚を示した。
【０００９】ついで、この結果得られた各種の被覆サー
メット工具のうち、本発明被覆サーメット工具１〜９お
よび比較被覆サーメット工具１〜９については、 被削材：Ｓ５０Ｃの角材、 切削速度：２２０ｍ／min.、 送り：０．２mm／rev.、 切り込み：３．０mm、 切削時間：１０分、 の条件での炭素鋼の乾式断続高切り込み切削試験、並び
に、 被削材：ＳＫＤ６１の角材、 切削速度：１８０ｍ／min.、 送り：０．４５mm／rev.、 切り込み：１．５mm、 切削時間：１０分、 の条件での合金鋼の乾式断続高送り切削試験を行ない、
また、本発明被覆サーメット工具１０〜１８および比較
被覆サーメット工具１０〜１８については、 被削材：Ｓ５０Ｃの角材、 切削速度：２５０ｍ／min.、 送り：０．１５mm／rev.、 切り込み：３．５mm、 切削時間：１０分、 の条件での炭素鋼の乾式断続高切り込み切削試験、並び
に、 被削材：ＳＫＤ１１の角材、 切削速度：２００ｍ／min.、 送り：０．４０mm／rev.、 切り込み：１．５mm、 切削時間：１０分、 の条件での合金鋼の乾式断続高送り切削試験を行ない、
いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
この測定結果を表５に示した。
メット工具のうち、本発明被覆サーメット工具１〜９お
よび比較被覆サーメット工具１〜９については、 被削材：Ｓ５０Ｃの角材、 切削速度：２２０ｍ／min.、 送り：０．２mm／rev.、 切り込み：３．０mm、 切削時間：１０分、 の条件での炭素鋼の乾式断続高切り込み切削試験、並び
に、 被削材：ＳＫＤ６１の角材、 切削速度：１８０ｍ／min.、 送り：０．４５mm／rev.、 切り込み：１．５mm、 切削時間：１０分、 の条件での合金鋼の乾式断続高送り切削試験を行ない、
また、本発明被覆サーメット工具１０〜１８および比較
被覆サーメット工具１０〜１８については、 被削材：Ｓ５０Ｃの角材、 切削速度：２５０ｍ／min.、 送り：０．１５mm／rev.、 切り込み：３．５mm、 切削時間：１０分、 の条件での炭素鋼の乾式断続高切り込み切削試験、並び
に、 被削材：ＳＫＤ１１の角材、 切削速度：２００ｍ／min.、 送り：０．４０mm／rev.、 切り込み：１．５mm、 切削時間：１０分、 の条件での合金鋼の乾式断続高送り切削試験を行ない、
いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
この測定結果を表５に示した。
【００１０】
【表１】
【００１１】
【表２】
【００１２】
【表３】
【００１３】
【表４】
【００１４】
【表５】
【００１５】
【発明の効果】表１〜５に示される結果から、本発明被
覆サーメット工具１〜１８は、いずれも硬質被覆層を構
成するＡｌ2 Ｏ3-x 層がＡｌ2 Ｏ3 層に比して一段とす
ぐれた強靭性を有することから、合金鋼の断続切削を高
切り込みおよび高送りの重切削条件で行っても切刃にチ
ッピングの発生なく、すぐれた切削性能を発揮するのに
対して、比較被覆サーメット工具１〜１８は、いずれも
これの硬質被覆層を構成するＡｌ2 Ｏ3 層の靭性が相対
的に低いものであることから、上記のような苛酷な条件
下では切刃にチッピングが発生し易く、比較的短時間で
使用寿命に至ることが明らかである。上述のように、こ
の発明の被覆サーメット工具は、硬質被覆層を構成する
Ａｌ 2 Ｏ3-x 層のもつきわめて高い強靭性によって、通
常の条件での各種鋼の連続切削および断続切削は勿論の
こと、きわめて苛酷な切削条件である断続切削を高切り
込みおよび高送りの重切削条件で行っても切刃がすぐれ
た耐チッピング性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性
能を発揮するようになるものであり、切削加工の省エネ
化および省力化に十分満足に対応できるものである。
覆サーメット工具１〜１８は、いずれも硬質被覆層を構
成するＡｌ2 Ｏ3-x 層がＡｌ2 Ｏ3 層に比して一段とす
ぐれた強靭性を有することから、合金鋼の断続切削を高
切り込みおよび高送りの重切削条件で行っても切刃にチ
ッピングの発生なく、すぐれた切削性能を発揮するのに
対して、比較被覆サーメット工具１〜１８は、いずれも
これの硬質被覆層を構成するＡｌ2 Ｏ3 層の靭性が相対
的に低いものであることから、上記のような苛酷な条件
下では切刃にチッピングが発生し易く、比較的短時間で
使用寿命に至ることが明らかである。上述のように、こ
の発明の被覆サーメット工具は、硬質被覆層を構成する
Ａｌ 2 Ｏ3-x 層のもつきわめて高い強靭性によって、通
常の条件での各種鋼の連続切削および断続切削は勿論の
こと、きわめて苛酷な切削条件である断続切削を高切り
込みおよび高送りの重切削条件で行っても切刃がすぐれ
た耐チッピング性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性
能を発揮するようになるものであり、切削加工の省エネ
化および省力化に十分満足に対応できるものである。
【図１】アークイオンプレーティング装置の概略説明図
である。
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Ｆターム(参考） 3C046 FF03 FF05 FF10 FF16 FF19 FF22 FF25 FF32 FF34 FF40 FF42 4K029 AA04 BA41 BA44 BA54 BA55 BA60 BB02 BC00 BD05 EA01
Claims (1)
- 【請求項１】 炭化タングステン基超硬合金基体または
炭窒化チタン系サーメット基体の表面に、 各層が０．１〜１０μｍの平均層厚を有するＴｉの炭化
物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、窒酸化物
層、および炭窒酸化物層のうちの１層または２層以上か
らなるＴｉ化合物層と、 各層が０．５〜１０μｍの平均層厚を有し、かつ原子比
に基ずく組成式：Ａｌ 2 Ｏ3-x で現した場合、ｘ：０．
２〜０．５を満足するＡｌ酸化物層の１層または２層以
上と、で構成した硬質被覆層を２〜２５μｍの全体平均
層厚で蒸着してなる、硬質被覆層がすぐれた耐チッピン
グ性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP34672298A JP2000167702A (ja) | 1998-12-07 | 1998-12-07 | 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP34672298A JP2000167702A (ja) | 1998-12-07 | 1998-12-07 | 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JP2000167702A true JP2000167702A (ja) | 2000-06-20 |
Family
ID=18385381
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP34672298A Pending JP2000167702A (ja) | 1998-12-07 | 1998-12-07 | 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP2000167702A (ja) |
Cited By (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2011051034A (ja) * | 2009-08-31 | 2011-03-17 | Mitsubishi Materials Corp | 表面被覆切削工具 |
-
1998
- 1998-12-07 JP JP34672298A patent/JP2000167702A/ja active Pending
Cited By (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2011051034A (ja) * | 2009-08-31 | 2011-03-17 | Mitsubishi Materials Corp | 表面被覆切削工具 |
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|---|---|---|---|
| A02 | Decision of refusal |
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