JPH11302421A - 表面親水性成形物の製造方法 - Google Patents

表面親水性成形物の製造方法

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JPH11302421A
JPH11302421A JP10113342A JP11334298A JPH11302421A JP H11302421 A JPH11302421 A JP H11302421A JP 10113342 A JP10113342 A JP 10113342A JP 11334298 A JP11334298 A JP 11334298A JP H11302421 A JPH11302421 A JP H11302421A
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hydrophilic
compound
hydrophobic
group
excipient
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Application number
JP10113342A
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English (en)
Inventor
Tetsuo Takada
哲生 高田
Takanori Anazawa
孝典 穴澤
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Kawamura Institute of Chemical Research
DIC Corp
Original Assignee
Kawamura Institute of Chemical Research
Dainippon Ink and Chemicals Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 充分な親水性(生体適合性)と耐久性に優れ
た表面を有し、且つ成形物の性能低下を呈しない成形物
を提供すること。 【解決手段】 (1)1分子中に重合性不飽和二重結合を
2個以上有する疎水性化合物(a) と光重合開始剤とを含
有する疎水性の光重合性組成物を任意形状に賦形した賦
形物(b)を形成する第1工程、 (2)賦形物(b)の表面に、
重合性不飽和二重結合、4級アミノ基及びリン酸アニオ
ン基を有する化合物(c) を含有する親水性液体(d)に接
触させる第2工程、 (3)前記接触状態下の賦形物(b)に
活性光線を照射することによって、(イ)賦形物(b)を硬化
させると共に、(ロ)賦形物(b)と親水性液体(d)との接触
界面で、 疎水性化合物(a)と親水性化合物(c)とを共重
合させて疎水性の賦形物(b)の表面に親水性化合物(c)の
分子を化学的に結合させるが、(ハ)親水性液体(d)の中で
は前記接触界面を除き光重合反応を起こさせない第3工
程とから成る表面親水性成形物の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医療分野において
適用される、タンパク吸着が少なく、生体適合性に優れ
た表面親水性成形物の製造方法に関するものであり、更
に詳しくは、成形物表面に4級アミノ基及びリン酸アニ
オン基を有する化合物を結合させた表面親水性成形物の
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】医療分野で使用されている成形物におい
て大きな問題点は、生体適合性の不足から生じるもので
あり、血栓、溶血、感作性、免疫反応等の発生が挙げら
れる。
【0003】このような問題点を解決するために、通
常、成形物の表面に親水化処理や生体適合性処理が行わ
れている。例えば、特開平10−53658号公報に
は、ビニル系化合物と光重合開始剤からなる重合性組成
物を賦形し、得られた未硬化の賦形物を、親水基を有す
るビニル系化合物と接触させた状態で、これらに活性光
線を照射することによって、未硬化の賦形物を硬化させ
ると共に、賦形物の表面において、ビニル系化合物と親
水基を有するビニル系化合物の一部を共重合させる表面
親水性成形物の製造方法が提案されている。また、特開
平5−177119号公報には、4級アミノ基及びリン
酸アニオン基を有するメタクリレートとメタクリル酸エ
ステルからなる共重合体を溶剤に溶解させ、該溶液を疎
水性多孔質膜の細孔表面にコーティングした後、溶剤を
揮発させることにより、該共重合体を膜の細孔表面に保
持させる方法が提案されている。更に、特開平7−72
430号公報及び特開昭54−63025号公報には、
リン脂質類似構造を有するビニルモノマーを材料の表面
にグラフト重合させる方法が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】特開平10−5365
8号公報には、親水基を有するビニル系化合物としてア
ミノ酸アクリレートや糖アクリレートを用いることによ
り、生体適合性や選択吸着性を有する表面親水性成形物
が得られることが記載されているものの、血液適合性、
特に抗血小板粘着については、十分に満足できる性能を
有するものではなかった。
【0005】また、特開平5−177119号公報に提
案された製造方法では、先ず4級アミノ基及びリン酸ア
ニオン基を有するメタクリレートとメタクリル酸エステ
ルからなる共重合体を合成し、これを用いて疎水性多孔
質膜の表面に保持させるため、工程数の増加により生産
性が悪いという問題点がある。また、疎水性多孔質膜表
面に保持された共重合体は、非親水性または水に膨潤し
ないものでなければならない。即ち、該共重合体中の4
級アミノ基及びリン酸アニオン基を有するメタクリレー
トの含有率がある値以下にする必要があり、4級アミノ
基及びリン酸アニオン基の導入量と共重合体の膨潤性と
の両立を解決するのは非常に困難である。更に、該共重
合体と溶剤からなる溶液を多孔質膜の表面にコーティン
グした後、溶剤を揮発させる方法では、両性イオン基
(4級アミノ基及びリン酸アニオン基)が、コーティン
グ層と疎水性の強い空気との界面において極めて配向し
にくく、大部分の両性イオン基が生体適合性に寄与しな
いコーティング層の内部に配向(存在)してしまう、と
いう問題点がある。この問題点は、コーティング技術に
おいて最も一般的に存在する問題である。この問題点
は、処理された表面の濡れ性試験(水接触角)により、
容易に確認することができる。
【0006】更に、特開平7−72430号公報及び特
開昭54−63025号公報に開示された方法では、成
形物を、先ず、高温、長時間活性化処理(活性放射線照
射、オゾン処理、過酸化物処理等)した後、重合開始剤
を含んだリン脂質類似構造を有するビニルモノマーの溶
液に入れ、更に高温、長時間グラフト重合させる、とい
う多くの工程を要するため、生産性の低下が避けられな
い、という問題点があった。また、この方法において
は、処理条件が厳しく、材料の物性低下を引き起こす恐
れもあった。また、活性放射線として、プラズマを用い
た場合、真空を要するので、連続生産が非常に困難であ
る、という問題点があった。また、この方法では、活性
化処理後の材料を重合開始剤を含んだリン脂質類似構造
を有するビニルモノマーの溶液に入れてグラフト重合さ
せるため、グラフトと同時に、モノマー同志の自己重合
も引き起こされ、モノマーの再利用が不可能で、生産性
が低い、という問題点があった。さらに、通常の汎用ポ
リマー(ポリスルホン、ポリオレフィン等)或いはエン
ジニアリングポリマー(ポリイミド等)は、過酷な処理
条件でも活性化し難く、グラフト率の制御が非常に困難
であり、過度な条件で処理すると、材料(特にデリケー
トな表面をもつ人工肺)の劣化が生じ、性能や物理的な
強度の低下をもたらす、という問題点もあった。
【0007】以上のように、従来の方法では、材料の表
面にリン脂質類似構造の官能基を高密度にグラフトさせ
るには極めて困難であった。
【0008】本発明が開発しようとする課題は、4級ア
ミノ基及びリン酸アニオン基を有する両性イオン基の表
面結合量を幅広く制御でき、且つ該両性イオン基の結合
に伴う成形物の膨潤などによる変形や性能低下を呈しな
い成形物を提供し、このような成形物を工程数の増加を
招くことなく成形する製造方法を提供することにある。
即ち、該両性イオン基を有する重合性化合物が共有結合
により成形物の表面にブロック共重合の形で結合してお
り、成形物の内部には表面親水性(または生体適合性)
に寄与しない該両性イオン基の存在を避けることによ
り、該両性イオン基の機能を充分に発揮でき、且つ、成
形物の物理的構造、性質などに影響を及ぼさない表面親
水性成形物を提供し、そのような成形物を1工程で製造
する方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、1分子中に重合
性不飽和二重結合を2個以上有する疎水性化合物(a)
と光重合開始剤とを含有する疎水性の光重合性組成物を
薄膜状、糸状、ビーズ状、その他の任意形状に賦形した
賦形物(b)の表面に、重合性不飽和二重結合と4級ア
ミノ基及びリン酸アニオン基を有する重合性化合物
(c)を含有する親水性液体(d)に接触させた状態
で、活性光線を照射することによって、賦形物(b)を
硬化させると共に、賦形物(b)と親水性液体(d)と
の接触界面で、疎水性化合物(a)と重合性不飽和二重
結合と4級アミノ基及びリン酸アニオン基を有する重合
性化合物(c)とを共重合させて疎水性の賦形物(b)
の表面に化合物(c)の分子を化学的に結合させること
により、表面親水性成形物が1工程で容易に製造するこ
とができ、しかも、この製造方法によれば、化合物
(c)の密度等を容易に制御することができ、疎水性化
合物(a)からなる成形物が本来有する構造、物性等を
損なうことがないことを見出し、本発明を完成するに至
った。
【0010】即ち、本発明は上記課題を解決するため
に、(I)(1)1分子中に重合性不飽和二重結合を2
個以上有する疎水性化合物(a)と光重合開始剤とを含
有する疎水性の光重合性組成物を薄膜状、糸状、ビーズ
状、その他の任意形状に賦形した賦形物(b)を形成す
る第1工程と、(2)賦形物(b)の表面に、重合性不
飽和二重結合を有する親水性化合物(c)を含有する親
水性液体(d)に接触させる第2工程と、(3)前記接
触状態下の賦形物(b)に活性光線を照射することによ
って、(イ)賦形物(b)を硬化させると共に、(ロ)
賦形物(b)と親水性液体(d)との接触界面で、疎水
性化合物(a)と親水性化合物(c)とを共重合させて
疎水性の賦形物(b)の表面に親水性化合物(c)の分
子を化学的に結合させるが、(ハ)親水性液体(d)の
中では前記接触界面を除き光重合反応を起こさせない第
3工程とから成る表面親水性成形物の製造方法におい
て、重合性不飽和二重結合を有する親水性化合物(c)
として、4級アミノ基及びリン酸アニオン基を有する重
合性化合物を用いる表面親水性成形物の製造方法を提供
する。
【0011】また、本発明は上記課題を解決するため
に、(II)(1)1分子中に重合性不飽和二重結合を2
個以上有する疎水性化合物(a)と光重合開始剤とを含
有する疎水性の光重合性組成物を薄膜状、糸状、ビーズ
状、その他の任意形状に賦形した賦形物(b)を形成す
る第1工程と、(2)賦形物(b)に活性光線を照射し
て賦形物(b)を予備硬化させるが、少なくとも賦形物
(b)の表面に重合性不飽和二重結合が残留した状態に
維持する第2工程と、(3)予備硬化した賦形物(b)
の表面に、重合性不飽和二重結合を有する親水性化合物
(c)を含有する親水性液体(d)に接触させる第3工
程と、(4)前記接触状態下にある予備硬化した賦形物
(b)に活性光線を照射することによって、(イ)賦形
物(b)を完全に硬化させると共に、(ロ)賦形物
(b)と親水性液体(d)との接触界面で、疎水性化合
物(a)と親水性化合物(c)とを共重合させて疎水性
の賦形物(b)の表面に親水性化合物(c)の分子を化
学的に結合させるが、(ハ)親水性液体(d)の中では
前記接触界面を除き光重合反応を起こさせない第4工程
とから成る表面親水性成形物の製造方法において、重合
性不飽和二重結合を有する親水性化合物(c)として、
4級アミノ基及びリン酸アニオン基を有する重合性化合
物を用いる表面親水性成形物の製造方法を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の製造方法で使用する1分
子中に重合性不飽和二重結合を2個以上有する疎水性化
合物(a)は、有機、無機を問わず、活性光線例えば紫
外線、可視光、赤外線等の照射により重合し、ポリマー
となるものであれば良く、ラジカル重合、アニオン重
合、カチオン重合等、任意のものであって良い。そのよ
うな化合物としては、例えば、分子内にビニル基、ビニ
リデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基[以下、
アクリロイル基とメタクリロイル基を併せて(メタ)ア
クリロイル基と称する。(メタ)アクリル、(メタ)ア
クリレート等についても同様である]等を有する化合物
が挙げられるが、中でも活性光線照射により重合速度が
速いことから、(メタ)アクリロイル基を有する化合物
が好ましい。
【0013】本発明の製造方法で使用する疎水性化合物
(a)としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ
(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ
(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペン
チルグリコールジ(メタ)アクリレート、3−アクリロ
イルオキシグリセリンモノメタクリレート、2,2’−
ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオ
キシフェニル)プロパン2,2’−ビス(4−(メタ)
アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プ
ロパン、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、
ビス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]ヒドロキシ
エチルイソシアネート、フェニルグリシジルエーテルア
クリレートトリレンジイソシアネート、アジピン酸ジビ
ニルの如き2官能化合物;トリメチロールプロパントリ
(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メ
タ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイルオキ
シエチル]イソシアネート、ペンタエリスリトールトリ
(メタ)アクリレートの如き3官能化合物;ペンタエリ
スリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンジ
(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネート
の如き4官能化合物;ジペンタエリスリトールモノヒド
ロキシペンタ(メタ)アクリレートの如き5官能化合
物;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレー
トの如き6官能化合物、などが挙げられる。
【0014】また、本発明で使用する疎水性化合物
(a)としては、ビスフェノールAージエポキシー(メ
タ)アクリル酸付加物の如きエポキシ樹脂の(メタ)ア
クリル酸エステル、ポリエーテル樹脂の(メタ)アクリ
ル酸エステル、ポリブタジエン樹脂の(メタ)アクリル
酸エステル、分子末端に(メタ)アクリル基を有するポ
リウレタン樹脂等が挙げられる。
【0015】これらの疎水性化合物(a)は、単独で用
いることも、2種以上の化合物を混合して用いることも
できる。
【0016】更に、本発明の製造方法で使用する1分子
中に重合性不飽和二重結合を2個以上有する疎水性化合
物(a)には、必要に応じて、1分子中に重合性不飽和
二重結合を1個有する化合物を併用することもできる。
そのような目的で使用する1分子中に重合性不飽和二重
結合を1個有する化合物としては、例えば、エチル(メ
タ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキ
シル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレ
ート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メ
タ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリ
レート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メ
タ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレー
ト、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、などが
挙げられる。
【0017】上記の疎水性化合物(a)及び1分子中に
重合性不飽和二重結合を1個有する化合物の選択によ
り、表面親水性成形物の支持体成形物(即ち賦形物
(b)の硬化物)の架橋密度を任意に制御することがで
きる。例えば、耐熱性、耐溶剤性、耐膨潤性、硬度、強
度に優れた成形物を得るためには、1分子中に重合性不
飽和二重結合を2個以上有する疎水性化合物(a)の中
でも、官能基数の多いものを選択し、それから成形され
るポリマーの架橋密度を高める方法を採用すればよい。
逆に、熱可塑性、柔軟性、伸び等が要求される場合に
は、多官能の化合物を用いずに、架橋構造を有しないポ
リマーとする方法、或いは、多官能の化合物と、1分子
中に重合性不飽和二重結合を1個有する化合物を併用し
て比較的架橋密度の低いポリマーとする方法を採用すれ
ばよい。これらの方法は目的とする成形物の要求特性に
より任意に選定できる。
【0018】本発明で疎水性化合物(a)を用いる特徴
は、水に非膨潤の支持体成形物が得られることにある。
なお、本明細書で言う「水に非膨潤性」とは、20℃の
水に浸漬した場合、乾燥重量に対する重量増加率が5重
量%以下であることを言う。水に非膨潤性であることに
より、成形物は耐水性を有し、湿潤状態でも寸法変化や
強度が低下することはない。
【0019】本発明の製造方法において、疎水性の光重
合性組成物を賦形した賦形物(b)は、親水性化合物
(c)を含有する親水性液体(d)に接触してから光重
合硬化までの間、賦形された状態を実質的に保持できる
ものであることが必要である。そのために、疎水性の光
重合性組成物の主要な構成要素である疎水性化合物
(a)が親水性液体(d)に溶解しないもの、あるい
は、疎水性の光重合性組成物が高粘度のものが好まし
い。
【0020】疎水性の光重合性組成物中の光重合開始剤
は、本発明で使用する活性光線に対して活性であり、疎
水性化合物(a)、並びに親水性化合物(c)を重合さ
せることが可能なものであれば、特に制限がなく、例え
ば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオ
ン重合開始剤であって良い。そのような光重合開始剤と
しては、例えば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフ
ェノン、2,2′−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒ
ドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オ
ンの如きアセトフェノン類;ベンゾフェノン、4、4′
−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオ
キサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチ
オキサントン、2−イソプロピルチオキサントンの如き
ケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベ
ンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチル
エーテルの如きベンゾインエーテル類;ベンジルジメチ
ルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン
の如きベンジルケタール類などが挙げられる。
【0021】光重合開始剤は、疎水性の光重合性組成物
に溶解あるいは分散した状態で用いることができるが、
疎水性の光重合性組成物に溶解するものであることが好
ましい。疎水性の光重合性組成物中の光重合開始剤濃度
は、0.01〜20重量%の範囲が好ましく、0.5〜
10重量%の範囲が特に好ましい。
【0022】光重合開始剤の他に、熱重合開始剤も使用
することが可能である。例えが、ジブチルパーオキサイ
ドメチルエチルケトンパーオキサイド、t−ヘキシルヒ
ドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0023】疎水性の光重合性組成物には、その他の成
分を溶解又は非溶解の状態で含有させることもできる。
その他の成分としては、例えば、光重合性組成物の増粘
剤として機能するポリマー、最終成形物の物性改良剤と
して機能するポリマー、充填剤などの無機物、アラミド
繊維などの強化材、着色剤、防黴剤などの薬剤、多孔質
体を成形するための貧溶剤等が挙げられる。
【0024】本発明の製造方法で使用する重合性不飽和
二重結合を有する親水性化合物(c)は、4級アミノ基
及びリン酸アニオン基を有する重合性化合物である。そ
のような親水性化合物(c)としては、下記一般式
(1)
【0025】
【化5】
【0026】[式中、Xは、
【0027】
【化6】
【0028】(式中、R4は水素原子又はメチル基を表
わし、R5は炭素原子数1〜20のアルキル基、アルケ
ニル基、ヒドロキシアルキル基を表わす。)を表わし、
Yは、
【0029】
【化7】
【0030】(式中、mは1〜9の整数を表わす。)を
表わし、R1、R2及びR3は、各々独立に炭素原子数1
〜8のアルキル基、アリル基又はヒドロキシアルキル基
を表わす。]で表わされる化合物が好ましい。また、一
般式(1)で表わされる化合物の中でも、Xが
【0031】
【化8】
【0032】(式中、R4は水素原子又はメチル基を表
わす。)で表わされ、かつ、Yが−CH2CH2−で表わ
される化合物が特に好ましい。
【0033】一般式(1)で表わされる化合物の具体例
としては、2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル
−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェー
ト、(メタ)アクリロイルオキシブチル−2−(トリメ
チルアンモニオ)エチルホスフェート、(メタ)アクリ
ロイルオキシノナエチレンオキサイド−2−(トリメチ
ルアンモニオ)エチルホスフェート、(メタ)アクリロ
イルオキシトリプロピレンオキサイド−2’−(トリメ
チルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(ビニルオ
キシ)エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチル
ホスフェート、2−(p−ビニルベンジルオキシ)エチ
ル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェー
ト、2−(アリルオキシ)エチル−2’−(トリメチル
アンモニオ)エチルホスフェート、2−(スチリルオキ
シ)エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホ
スフェート、2−(エトキシフマロイルオキシ)エチル
−2’−(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェー
ト、などが挙げられる。これらの中でも、活性光線照射
による重合速度が速さの面から、(メタ)アクリロイル
基を有する化合物が好ましい。これらの化合物は、単独
で用いることも、2種類以上を混合して用いることもで
きる。
【0034】更に、これらの4級アミノ基及びリン酸ア
ニオン基を有する重合性化合物は、糖やアミノ酸残基、
カルボキシル基、スルホン基、ポリエチレングリコール
鎖などを有する(メタ)アクリレートと混合して用いる
ことも可能である。
【0035】本発明の親水性液体(d)は、親水性化合
物(c)を主たる構成要素とする。親水性液体(d)
は、その他に溶剤、重合禁止剤、連鎖移動剤などを含有
してもよいが、本発明で使用する活性光線に活性な光重
合開始剤を含有しないことが好ましい。そのような光重
合開始剤を含有すると、親水性化合物(c)が単独重合
し、親水性液体(d)の繰り返し使用の際に不都合が生
じるので、好ましくない。しかしながら、光重合開始剤
を含有する場合であっても、重合禁止剤や連鎖移動剤を
同時に含有させることにより、上記の不都合を減じるこ
とは可能である。
【0036】親水性液体(d)に用いられる液体は、
水、水溶性溶剤、界面活性剤もしくはそれらの混合物で
あることが好ましく、表面親水性に優れる成形物を得る
ためには、水又は水を主成分とする溶剤であることがさ
らに好ましく、界面活性剤と水との混合物であること
が、最も好ましい。
【0037】水溶性溶剤は、水と任意の割合で混和し得
る溶剤を言い、そのような水溶性溶剤としては、例え
ば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレン
グリコール、グリセリンなどのアルコール系溶剤、酢酸
などの酸、アセトンなどのケトン系溶剤、ホルムアミド
などのアミド系溶剤などが挙げられる。
【0038】必要に応じて親水性液体(d)に添加する
ことのできる界面活性剤は、親水性化合物(c)を含む
溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性
剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸
ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤、n−ドデシル
トリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界
面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレー
ト(商品名「ツィ−ン20」)、ポリオキシエチレンラ
ウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げら
れる。
【0039】親水性液体(d)中の親水性化合物(c)
の濃度は、成形物表面に要求される親水性(生体適合
性)、界面での反応性及び親水基結合量の制御、並びに
後洗浄の如き面から、0.5〜80重量%の範囲が好ま
しく、3〜30重量%の範囲が特に好ましい
【0040】一般的に、親水性液体(d)中の親水性化
合物(c)の濃度が高くなるほど、支持体成形物の表面
に固定される親水性層が厚くなるが、その厚みについて
は特に限定する必要がない。例えば、親水性層の強度に
対して要求されない場合は、該親水性層がゲル状のもの
であっても良い。しかし、親水性層に対しある一定に強
度を要求される場合には、親水性層が厚くなりすぎると
(例えば、乾燥状態で厚さ10μm以上)、湿潤時に表
面強度が低下し、親水性層の変形や剥離が生じ易くな
る。親水性液体(d)中の親水性化合物(c)の濃度を
上記の範囲にすることで、充分な親水性(生体適合性)
を示し、且つ表面親水性層が過度に厚くない親水性成形
物を得ることができる。
【0041】1分子中に重合性不飽和二重結合を2個以
上有する疎水性化合物(a)と光重合開始剤とを含有す
る疎水性の光重合性組成物の未硬化の賦形物と親水性液
体(d)との接触方法は任意であり、例えば、賦形物の
親水性液体(d)中への浸漬、賦形物表面への親水性液
体(d)の流延又はスプレー、賦形物と親水性液体
(d)の泡との接触、光重合性組成物と親水性液体
(d)の共押し出しなどの方法が挙げられ、中でも賦形
物の親水性液体(d)中への浸漬が好ましい。光重合性
組成物の賦形物と接触させる親水性液体(d)は、気相
(蒸気)であってもよい。
【0042】光重合性組成物を賦形して得られた未硬化
の賦形物を、親水性液体(d)と接触させた状態で光照
射すると、賦形物の内部又は表面で発生したラジカル、
アニオン、カチオンなどの活性種によって、疎水性化合
物(a)が重合すると共に、発生したこれらの活性種あ
るいは疎水性化合物(a)の重合連鎖におけるこれらの
活性種によって、賦形物の表面で親水性液体(d)に含
有される親水性化合物(c)の重合も誘発され、1つの
活性種から開始した重合反応は実質的に瞬時に終了す
る。即ち、重合反応は賦形物内部において疎水性化合物
(a)同士、賦形物と親水性液体(d)との接触面にお
いて、疎水性化合物(a)と親水性化合物(c)の間、
及び該接触面近傍の親水性液体(d)相中において親水
性化合物(c)同士で起こり、疎水性化合物(a)と親
水性化合物(c)とのブロック共重合体が形成される。
従って、賦形物が硬化することにより形成された支持体
成形物の内部には、親水性化合物(c)あるいはその重
合体は存在せず、親水性化合物(c)あるいはその重合
体は、支持体成形物の表面のみに結合される。支持体成
形物の表面に結合される親水基の量〔即ち、親水性化合
物(c)からなる重合体の量〕は、親水性化合物(c)
の濃度、反応温度、光重合性組成物中の光重合開始剤濃
度、光強度等によって調節することができる。支持体成
形型物の表面に固定された親水性化合物(c)は、重合
体とならず、親水性化合物(c)自体であることもあり
得る。
【0043】なお、本発明の製造方法では、親水性化合
物(c)は、使用された量の一部分が光重合性組成物の
賦形物の硬化物である支持体成形物の表面に結合し、残
余の親水性化合物(c)は、未硬化のまま親水性液体
(d)相中に残留することになる。
【0044】本発明の親水性成形物の形状は、光照射に
よって成形可能な物であれば特に限定されないが、例え
ば、糸状、中空糸状、管状、円筒状、粒子状、カプセル
状、フィルム状、板状、塗膜状、その他任意の形状であ
って良い。成形しやすさの面から、親水性成形物は、フ
ィルム状又は塗膜状であることが好ましい。また、親水
性成形物が更に別の支持体などと一体化された形態であ
っても良い。更に、親水性成形物は、均質物、多孔質
体、パターニング物、その他の構造を有するものであっ
ても良い。
【0045】多孔質体を作製する場合には、例えば、光
重合性組成物として、1分子中に重合性不飽和二重結合
を2個以上有する疎水性化合物(a)と相溶するが、該
疎水性化合物(a)からなる重合硬化物を溶解または膨
潤させない成分(貧溶剤又は相分離剤とも言う。以下、
「貧溶剤」という。)を含有するものを使用し、賦形し
た後、後述する予備重合などにより重合硬化させた後、
貧溶剤を除去すればよい。疎水性化合物(a)が重合す
ると同時に貧溶剤との相溶性が無くなるため、相分離を
起こし網目状に凝固する。洗浄して貧溶剤を除去するこ
とにより互いに連通した多孔質体を得ることができる。
【0046】そのような目的で使用する貧溶剤として
は、例えば、アジピン酸ジイソブチル、カプリル酸メチ
ル、カプリン酸メチル、ラウリン酸メチルの如き脂肪酸
のアルキルエステル;ジイソブチルケトンの如きケトン
類;ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチ
レングリコールモノラウリルエーテルの如き非イオン性
界面活性剤類、などが挙げられる。
【0047】1分子中に重合性不飽和二重結合を2個以
上有する疎水性化合物(a)と光重合開始剤とを含有す
る疎水性の光重合性組成物を賦形する方法には、特に制
限はない。例えば、コーターやスプレーなどによる塗
布、ノズルからの押し出し、鋳型への注型、また薄く均
一に塗布する必要がある場合や形状の複雑な物体、多孔
質体(例えば、多孔質膜)、不織布や織物などの表面
(細孔や繊維表面を含む)に塗布する場合には、該疎水
性の光重合性組成物を溶剤に溶解して、塗布、噴霧又は
浸漬した後、必要に応じ余分な液を除いて、該溶剤を揮
発させる方法を用いても良い。この場合の溶剤は、該疎
水性の光重合性組成物を溶解できるものであれば、如何
なるものであって良いが、塗布後の成形物を乾燥させる
必要性から、揮発性が比較的高い溶剤がより好ましい。
そのような溶剤としては、例えば、メタノール、エタノ
ール、1−プロパノール、2−プロパノールの如きアル
コール類;アセトン、メチルエチルケトンの如きケトン
類;ジエチルエーテルの如きエーテル類:酢酸エチルの
如きエステル類;ヘキサン、トルエンの如き炭化水素;
ジクロロメタン、ジクロロエタンの如き塩素系溶剤、な
どが挙げられる。
【0048】また、上記光重合性組成物を賦形した後、
該賦形物に光照射して賦形物を予備的に不完全硬化させ
ておいても良い。光重合性組成物の粘度が低い場合は、
光重合性組成物からなる賦形物を、親水性化合物(c)
あるいはそれらの溶液と接触させた時に、形状を維持し
にくい場合がある。このような場合は、賦形物を予め活
性光線で予備硬化(不完全硬化)させてから、親水性化
合物(c)あるいはそれらの溶液と接触させた後、光照
射を行なう方法が、賦形物の平滑性が向上するので、好
ましい。予備硬化が過剰であると、成形物の表面に導入
される親水基の量が減るため、光重合性組成物の重合性
官能基が残留している程度に止める必要があるが、その
最適条件は簡単な実験により求めることができる。予備
硬化は窒素雰囲気中で短時間で行なうこともできるが、
光重合性組成物が完全重合しない性質を利用して、重合
阻害を受けやすい空気中で短時間不完全硬化させる方法
が好ましい。
【0049】本発明の製造方法で使用する活性光線とし
ては、紫外線、可視光、赤外光を挙げられる。これらの
活性光線の中でも、重合硬化速度の点から紫外線、可視
光が好ましく、紫外線が特に好ましい。紫外線の主たる
波長が300nm以上であるが好ましく、350nm以上で
あることが特に好ましい。活性光線の他に、電子線、エ
ックス線、γ線等のエネルギー線の使用も可能である
が、支持体成形物に結合しない親水性化合物(c)重合
体の発生量を減じるためには活性光線が最も好ましい。
照射する活性光線の強度は、1〜5000mW/cm2
範囲が好ましく、10〜2000mW/cm2 の範囲が特
に好ましい。また、重合硬化速度を速め、重合を完全に
行う目的で、光照射を不活性ガス雰囲気下で行なうこと
が好ましく、親水性化合物(c)を水、水溶性溶剤、界
面活性剤もしくはそれらの混合物に溶解したものを用い
る場合は、これらに溶解している酸素を除去しておくこ
とが好ましい。疎水性化合物(a)もまた溶存酸素を除
去しておくことが好ましい。
【0050】光重合時の温度は特に制約されないが、7
0℃程度までの範囲では、温度は高い方が成形物の親水
性が増加するので好ましい。作業条件をも考慮すると、
室温〜50℃程度の範囲が好ましい。勿論、光照射によ
る硬化は、回分式で行っても良く、連続式で行っても良
い。光照射による硬化を回分式で行なう場合、賦形した
後、そのまま光照射して予備硬化させ、次いで得られた
予備硬化物を親水性化合物(c)と接触させて再び光照
射し、本硬化させても良い。
【0051】支持体成形物が多孔質体である場合のよう
に、重合硬化後の成形物中の未反応物、重合開始剤等の
除去が必要な場合には、洗浄、乾燥、吸引、置換等の方
法を採用することができる。これらの残存物の除去後
に、更に紫外線を照射(アフターキュア)することも可
能である。また、光照射による硬化後や、残存物の除去
後に熱処理することも可能である。熱処理により未反応
モノマー、残存溶剤の完全除去などを計ることができ
る。
【0052】本発明の製造方法によって得られる親水性
成形物の表面に親水性層が形成されていることは、表面
の水との接触角が低下することで判定できる。本発明の
製造方法により製造される表面親水性成形物は、表面に
該親水性層が形成されていない場合と比較して、水との
接触角が5度以上低下することが好ましい。表面親水性
成形物が、疎水性物質の吸着防止を要求される用途に使
用される場合などには、水との接触角の低下の度合いは
大きいほど好ましく、10度以上低下することが好まし
く、20度以上低下することがさらに好ましい。またこ
の場合、本発明の表面親水性成形物の水との接触角の値
は小さいほど好ましく、45度以下であることが好まし
く、30度以下であることがさらに好ましく、10度以
下であることが最も好ましい。
【0053】本発明の製造方法で製造される表面親水性
成形物において、親水性重合体は実質的に支持体成形物
の表面のみに存在し、内部には、例えば、共重合、ブレ
ンドなどの状態で存在しないことが好ましい。支持体成
形物が多孔質体の場合には、支持体成形物の内部とは支
持体成形物を構成する樹脂内部のことを言い、細孔の表
面は支持体成形物表面と見なす。支持体成形物が表面親
水性層とは異なるポリマーで構成されていることで、特
に湿潤状態において、支持体の物性低下が生じない。
【0054】
【実施例】以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更
に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の範囲に
限定されるものではない。なお、以下の実施例におい
て、「部」及び「%」は、特に断りがない限り、夫々
「重量部」及び「重量%」を表わす。
【0055】[測定項目の定義]以下の実施例及び比較
例における測定は、次の方法に従って行った。 (1)水接触角の測定 表面親水性成形物の水接触角は、協和科学株式会社製の
液滴法CA−D型接触角計を用いて測定した。
【0056】(2)成形物表面の元素分析 親水化した成形物表面の元素成分は、X線励起による光
電子分光法(ESCA)により測定した元素組成であ
り、全て原子の数の組成比である。測定は島津製作所製
のX線光電子分析装置ESCA850型を用い、成形物
表面と光電子検出器の角度(θ)が15゜の条件で行っ
た。
【0057】[合成例1][3−メタクリルオキシプロ
ピル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェ
ートの合成] 撹拌器、温度計及び塩化カルシウム管を備えた滴下ロー
トを3つ口フラスコに取り付け、脱水クロロホルム17
5mlに溶解させた2−ブロモエチルホスホリルジクロ
ライド(特開昭54−63025号に記載の化合物)1
16.7gをフラスコに加えた。脱水クロロホルム1.
75mlに3−ヒドロキシプロピルメタクリレート6
6.2g及び脱水トリエチルアミン54gを溶解させた
溶液を滴下ロートに加え、−20℃に氷冷撹拌下、徐々
に滴下した。滴下終了後、0℃でさらに1時間反応させ
た後、溶媒を蒸発させて濃縮した。濃縮液を冷却すると
徐々にトリエチルアミン塩酸塩が析出したので、析出固
体を濾別した。濾液にトリエチルアミン44g及び水1
3.5gを徐々に撹拌しながら滴下して中和し、1時間
放置してから更に析出したトリエチルアミン塩酸塩を濾
別した。濾液にハイドロキノンを少量加えてから酢酸バ
リウム64.5gを水120mlに溶解させた溶液を加
えて氷冷下1時間十分に振とうした。分離した水層にク
ロロホルム100mlを加えてよく振とうし、有機層を
分取した。クロロホルムによる抽出を3回繰り返しクロ
ロホルム層に硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、溶媒
を蒸発乾固させて反応粗生成物を得た。このようにして
得た反応粗生成物を四塩化炭素から再結晶させる操作を
2回繰り返して3−メタクリルオキシプロピル2’−ブ
ロムエチルハイドロジエンホスフェート42.1gを得
た。
【0058】脱水メタノール80mlにドライアイスで
液化したトリエチルアミン10mlを混合し、3−メタ
クリルオキシプロピル2’−ブロムエチルハイドロジエ
ンホスフェート7.0gを加えて溶解させた。反応温度
を15〜20℃に保ちながら、2日間反応させた後、反
応液を濃縮することによって、薄桃色の年長な液体を得
た。この液体を50mlのメタノールに溶解させた後、
炭酸銀を加え、室温で2時間撹拌しながら反応させた。
反応終了後、反応混合液を濾別し、濾液を濃縮して粘調
な液体を得た。この液体をシリカゲルクロマトグラフィ
ー(溶出液;クロロホルム:メタノール:水=65:2
5:4)を用いて精製して3−メタクリルオキシプロピ
ル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェー
ト2.0gを得た。
【0059】(3−メタクリルオキシプロピル−2’−
(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートの元素分
析結果) 計算値 ; C:O:N:P=65.3:26.1:
4.3:4.3 分析値 ; C:O:N:P=66.0:26.0:
4.0:4.0
【0060】[実施例1] (疎水性の光重合性組成物の調製)疎水性化合物(a)
として、1分子中に平均2個のアクリル基を有するエポ
キシアクリレートオリゴマー[共栄社化学(株)製の「エ
ポキシエステル80MFA」]70部と、ヘキサンジオ
ールジアクリレート[第一工業製薬(株)製の「ニューフ
ロンティアHDDA」]30部と、光重合開始剤として
[チバガイギー社製の「イルガキュアー184」]2部
とを均一に混合して、疎水性の光重合性組成物(1)を
得た。
【0061】(親水性液体(d)の調製)4級アミノ
基、リン酸アニオン基及び重合性不飽和二重結合を有す
る親水性化合物(c)として、2−メタクリロイルオキ
シエチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホス
フェート(別名:2−メタクリロイルオキシエチルホス
ホリルコリン;合成方法は特開昭54−63025号の
実施例1に開示)3部及び蒸留水97部を均一に混合し
て、親水性液体(d−1)を得た。
【0062】(表面親水性成形物の作製)コーターを用
いて疎水性の光重合性組成物(1)を厚さ250μmに
塗布したガラス板を、親水性液体(d−1)中に投入し
て、直ちに100mW/cm2 の紫外線を40秒間照射し
た後、該ガラス板を取り出した。このようにして得た硬
化物をエタノール中に10分間浸漬し、次いで、流水で
10分間洗浄した後、一晩自然乾燥させて、塗膜状の表
面親水性成形物を得た。
【0063】表面親水性成形物の表面について水接触角
の測定結果ならびに元素分析を行った結果を表1に示し
た。なお、得られた表面親水性成形物の表面親水性層の
厚みは走査型電子顕微鏡で観察されないほどに薄かっ
た。また、実施例1で得た表面親水性成形物の支持体成
形物は、37℃の水によって膨潤しなかった。
【0064】実施例1で用いた親水性化合物(c)
(「2−メタクリロイルオキシエチル−2’−(トリメ
チルアンモニオ)エチルホスフェート」)の元素比は、
C:O:N:P=58:32:5:5であった。該親水
性化合物の元素比と上記成形物表面の元素分析結果とが
近似しているほど、成形物表面に結合した親水基の量
(親水性化合物の量)が多く、表面の親水性化の程度が
高いことを示している。
【0065】また、親水性液体(d−1)に、100m
W/cm2 の紫外線を40秒間照射しても、水溶液中に硬
化物又はゲル化物が析出することはなかった。また、こ
の水溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー
(GPC)測定したところ、水溶液中の親水性化合物は
ほぼ同濃度で存在しており、重合物の生成量は無視しう
る量であった。
【0066】更に、得られた親水性成形物を未処理の牛
新鮮血液中に15分間浸漬した後、0.1モルのリン酸
緩衝液で3回リンスし、2%のグルタールアルデヒド液
で処理して、走査型電子顕微鏡で血小板の粘着様子を観
察した。その結果、血小板の粘着は認められなかった。
【0067】[実施例2] (親水性液体(d)の調製)4級アミノ基及びリン酸ア
ニオン基と重合性不飽和二重結合を有する親水性化合物
(c)として、2−メタクリロイルオキシエチル−2’
−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート5部、
及び蒸留水95部を均一に混合して、親水性液体(d−
2)を得た。
【0068】(表面親水性成形物の作製)実施例1にお
いて、親水性液体(d−1)に代えて、親水性液体(d
−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして塗膜状の
表面親水性成形物を製造した。このようにして得た表面
親水性成形物の表面について、水接触角の測定並びに元
素分析を行ない、その結果を表1に示した。なお、得ら
れた表面親水性成形物の表面親水性層の厚みは、走査型
電子顕微鏡で観察されないほどに薄かった。また、実施
例2で得たの表面親水性成形物の支持体成形物は37℃
の水によって膨潤しなかった。
【0069】また、親水性液体(d−2)に、100m
W/cm2 の紫外線を40秒間照射しても、水溶液中に硬
化物又はゲル化物が析出することはなかった。また、こ
の水溶液をGPC測定したところ、水溶液中の親水性化
合物はほぼ同濃度で存在しており、重合物の生成量は無
視し得る量であった。
【0070】更に、得られた親水性成形物を未処理の牛
新鮮血液中に15分間浸漬した後、0.1モルのリン酸
緩衝液で3回リンスし、2%のグルタールアルデヒド液
で処理して、走査型電子顕微鏡で血小板の粘着様子を観
察した。その結果、血小板の粘着は全く認められなかっ
た。
【0071】[実施例3] (親水性液体(d)の調製)4級アミノ基及びリン酸ア
ニオン基と重合性不飽和二重結合を有する親水性化合物
(c)として、2−メタクリロイルオキシエチル−2’
−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート10部
及び蒸留水90部を均一に混合して、親水性液体(d−
3)を得た。
【0072】(表面親水性成形物の作製)コーターを用
いて疎水性の光重合性組成物(1)を厚さ250μmに
塗布したガラス板に、空気中で100mW/cm2 の紫外
線を3秒間予備照射した。予備硬化した疎水性の光重合
性組成物からなる塗膜を有するガラス板を親水性液体
(d−3)中に投入して、更に100mW/cm2 の紫外
線を40秒間照射した後、該ガラス板を取り出した。こ
のようにして得た硬化物をエタノール中に10分間浸漬
し、次いで、流水で10分間洗浄した後、一晩自然乾燥
させて、塗膜状の表面親水性成形物を得た。
【0073】実施例1で使用した光重合性組成物(1)
をガラス板に厚さ250μmのコーターで塗布し、空気
中で100mW/cm2 の紫外線を3秒間予備照射して、
親水性液体(d−3)に投入し、更に100mW/cm2
の紫外線を40秒間照射した後、該ガラス板を取り出し
た。このようにして得た硬化物を、エタノール中に10
分間浸漬し、次いで、流水で10分間洗浄した後、一晩
自然乾燥させて、塗膜状の表面親水性成形物を得た(実
施例3−1)。
【0074】さらに、親水性液体(d−3)として、上
記のようにして表面親水性成形物を作製し、ガラス板を
取り出した後のものを再度使用した以外は、実施例3−
1と同じ方法によって、計5枚の表面親水性成形物を作
製し、それぞれ実施例3−1で作製した表面親水性成形
物と同様の処理を行った。
【0075】このようにして得た1枚目(実施例3−
1)と5枚目(実施例3−2)の表面親水性成形物の表
面について水接触角の測定並びに元素分析を行ない、そ
の結果を表1に示した。なお、得られた表面親水性成形
物の表面親水性層の厚みは、走査型電子顕微鏡で観察さ
れないほどに薄かった。また、実施例3で得た表面親水
性成形物の支持体成形物は37℃の水によって膨潤しな
かった。
【0076】また、親水性液体(d−3)に、100m
W/cm2 の紫外線を40秒間照射しても、水溶液中に硬
化物又はゲル化物が析出することはなかった。また、こ
の水溶液をGPC測定したところ、水溶液中の親水性化
合物はほぼ同濃度で存在しており、重合物の生成量は無
視し得る量であった。
【0077】この結果及び表1に示されたように1枚目
と5枚目で親水性の程度が変わらないことから、親水性
液体中に存在する親水性化合物の一部分のみが表面親水
性成形物の表面に固定され、親水性液体は繰り返し使用
が可能であることがわかる。
【0078】更に、得られた親水性成形物を未処理の牛
新鮮血液中に15分間浸漬した後、0.1モルのリン酸
緩衝液で3回リンスし、2%のグルタールアルデヒド液
で処理して、走査型電子顕微鏡で血小板の粘着様子を観
察した。その結果、血小板の粘着は全く認められなかっ
た。
【0079】[実施例4] (親水性液体(d)の調製)4級アミノ基及びリン酸ア
ニオン基と重合性不飽和二重結合を有する親水性化合物
(c)として、2−メタクリロイルオキシエチル−2’
−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート10
部、蒸留水89.5部及び界面活性剤〔ポリエチレング
リコール(n=10)モノラウレート〕0.5部を均一
に混合して、親水性液体(d−4)を得た。
【0080】(表面親水性成形物の作製)実施例1にお
いて、親水性液体(d−1)に代えて、親水性液体(d
−4)を用いた以外は、実施例1と同様にして、塗膜状
の表面親水性成形物を製造し、その表面について水接触
角の測定並びに元素分析を行ない、その結果を表1に示
した。なお、得られた表面親水性成形物の表面親水性層
の厚みは、走査型電子顕微鏡で観察されないほどに薄か
った。また、実施例4で得た表面親水性成形物の支持体
成形物は37℃の水によって膨潤しなかった。
【0081】また、親水性液体(d−4)に、100m
W/cm2 の紫外線を40秒間照射しても、水溶液中に硬
化物又はゲル化物が析出することはなかった。また、こ
の水溶液をGPC測定したところ、水溶液中の親水性化
合物はほぼ同濃度で存在しており、重合物の生成量は無
視し得る量であった。
【0082】更に、得られた親水性成形物を未処理の牛
新鮮血液中に15分間浸漬した後、0.1モルのリン酸
緩衝液で3回リンスし、2%のグルタールアルデヒド液
で処理して、走査型電子顕微鏡で血小板の粘着様子を観
察した。その結果、血小板の粘着は全く認められなかっ
た。
【0083】[実施例5] (親水性液体(d)の調製)4級アミノ基及びリン酸ア
ニオン基と重合性不飽和二重結合を有する親水性化合物
(c)として、合成例1で得た3−メタクリロイルオキ
シプロピル−2’−(トリエチルアンモニオ)エチルホ
スフェート40部及び蒸留水60部を均一に混合して、
親水性液体(d−5)を得た。
【0084】(表面親水性成形物の作製)実施例1にお
いて、親水性液体(d−1)に代えて、親水性液体(d
−5)を用いた以外は、実施例1と同様にして塗膜状の
表面親水性成形物を製造した。このようにして得た表面
親水性成形物の表面について、水接触角の測定並びに元
素分析を行ない、その結果を表1に示した。
【0085】水接触角においては、水滴を該表面親水性
成形物の表面に滴下したところ、水滴がすぐ広がり、表
面が完全に水で濡れた。なお、実施例5で用いた親水性
化合物(「2−メタクリロイルオキシプロピル−2’−
(トリエチルアンモニオ)エチルホスフェート」)の元
素比は、C:O:N:P=66:26:4:4であっ
た。得られた表面親水性成形物の表面親水性層の厚み
(乾燥時)は10μm以下であった。また、実施例5で
得た表面親水性成形物の支持体成形物は37℃の水によ
って膨潤しなかった。
【0086】なお、親水性液体(d−5)に、100m
W/cm2 の紫外線を40秒間照射しても、水溶液中に硬
化物又はゲル化物が析出することはなかった。また、こ
の水溶液をGPC測定したところ、水溶液中の親水性化
合物はほぼ同濃度で存在しており、重合物の生成量は無
視しうる量であった。
【0087】更に、得られた親水性成形物を未処理の牛
新鮮血液中に15分間浸漬した後、0.1モルのリン酸
緩衝液で3回リンスし、2%のグルタールアルデヒド液
で処理して、走査型電子顕微鏡で血小板の粘着様子を観
察した。その結果、血小板の粘着は全く認められなかっ
た。
【0088】[比較例1]コーターを用いて実施例1で
使用した疎水性の光重合性組成物(1)を厚さ250μ
mに塗布したガラス板を、水中に投入して、直ちに10
0mW/cm2 の紫外線を40秒間照射した後、該ガラス
板を取り出した。このようにして得た硬化物をエタノー
ル中に10分間浸漬し、次いで、流水で10分間洗浄し
た後、一晩自然乾燥させて、塗膜状の成形物を得た。
【0089】このようにして得た塗膜状の成形物の表面
について、水接触角の測定及び元素分析を行ない、その
結果を表1に示した。なお、この膜状成形物は37℃の
水によって膨潤しなかった。
【0090】[比較例2]コーターを用いて実施例1で
使用した疎水性の光重合性組成物(1)を厚さ250μ
mに塗布したガラス板を、窒素雰囲気中で100mW/
cm2 の紫外線を40秒照射した。このようにして得た硬
化物をエタノール中に10分間浸漬し、次いで、流水で
10分間洗浄した後、一晩自然乾燥させて、塗膜状の成
形物を得た。
【0091】このようにして得た塗膜状の成形物の表面
について、水接触角の測定及び元素分析を行ない、その
結果を表1に示した。
【0092】[比較例3]疎水性化合物(a)として、
ジシクロペンタニルジアクリレート(日本化薬(株)製の
「カヤラッドR−684」)60部、親水性化合物
(c)として、2−メタクリロイルオキシエチル−2’
−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート40部
及び「イルガキュアー184」(光重合開始剤)2部を
均一に混合して、親水性化合物を混合した光重合性組成
物(3’)を得た。
【0093】コーターを用いて実施例1で使用した光重
合性組成物(3’)を厚さ250μmに塗布したガラス
板を、窒素雰囲気中で100mW/cm2 の紫外線を40
秒照射した。このようにして得た硬化物をエタノール中
に10分間浸漬し、次いで、流水で10分間洗浄した
後、一晩自然乾燥させて、塗膜状の成形物を得た。
【0094】このようにして得た塗膜状の成形物の表面
について、水接触角の測定及び元素分析を行ない、その
結果を表1に示した。
【0095】比較例で用いた光重合性組成物(3’)
は、水中では相分離を起こすため、水中で重合硬化させ
ることはできなかった。更に、得られた成形物は、水に
浸漬させると数倍に膨潤した。
【0096】[実施例6] (疎水性の光重合性組成物の調製)疎水性化合物(a)
として、1分子内に平均して2個のアクリル基を有する
エポキシアクリレートオリゴマー[共栄社化学(株)製の
「エポキシエステル80MFA」]80部、ヘキサンジ
オールジアクリレート[第一工業製薬(株)製の「ニュー
フロンティアHDDA」]20部、光重合開始剤として
[チバガイギー社製の「イルガキュアー184」]2部
を均一に混合して、疎水性の光重合性組成物6を得た。
【0097】次に、孔径2mmの芯材吐出部を中心に有
し、その外側に内径4.4mm、スリット幅0.3mmの円
環吐出部を有するノズル使用し、芯材吐出部から実施例
3で使用した親水性液体(d−3)を65ml/分の吐出
量で押し出すと共に、円環吐出部から光重合性組成物
(6)を160ml/分の吐出量で空気中に押し出した。
これらは、中空糸状の光重合性組成物(6)の内面に親
水性液体(d−3)が接した状態で押し出されており、
これらがノズル下30〜60cmの範囲に達したところ
で、強度1200mW/cm2 の紫外線を照射した。紫外
線を照射した後、エタノール中に10分間浸漬し、流水
で10分間洗浄した後、一晩自然乾燥させて、外径94
0μm、内径530μmの中空糸状の(内)表面親水性成
形物を得た。
【0098】このようにして得た表面親水性成形物の内
表面について元素分析を行ない、その結果を表2に示し
た。なお、得られた表面親水性成形物の表面親水性層の
厚みは10μm以下であった。この中空糸状成形物は3
7℃の水によって膨潤しなかった。
【0099】[実施例7]1,6−ヘキサンジオールジ
アクリレート(日本化薬(株)製の「カヤラッドHDD
A」)5部、「イルガキュアー184」(光重合開始
剤)0.1部及びエタノール95部を均一に混合して、
光重合性組成物(7)を得た。
【0100】次に、直径60mmの円形状に切り抜いた厚
さ0.15mmのポリエチレンテレフタレート(PET)
製不織布(「MF−90」、日本バイリーン株式会社
製)を光重合性組成物(7)に浸漬し、超音波を1分間
照射して光重合性組成物(7)を不織布の繊維の間に浸
透させた後、不織布を取り出し、室温でエタノールを揮
発させて、光重合性組成物(7)で繊維表面をコーティ
ングした不織布を得た。
【0101】この不織布を実施例3で使用した親水性液
体(d−3)に浸漬し、直ちに100mW/cm2 の紫外
線を40秒間照射した。紫外線を照射した後、不織布を
取り出し、エタノール中に20分間浸漬し、流水で30
分間洗浄した後、一晩自然乾燥させて、親水化不織布を
得た。
【0102】このようにして得た親水化不織布の表面に
ついて水接触角の測定と元素分析を行った。未処理の不
織布では水滴が吸収されないが、親水化不織布は、多孔
質のため、水が細孔に吸収され、水接触角の値は測定で
きなかった。元素分析の結果を表1に示した。なお、得
られた表面親水性成形物の表面親水性層の厚みは10μ
m以下であった。この成形物は37℃の水によって膨潤
しなかった。
【0103】[実施例8] (疎水性の光重合性組成物の調製)1分子内に平均3個
のアクリロイル基を有するウレタンアクリレートオリゴ
マー(大日本インキ化学工業(株)製の「ユニディックV
−4263」)67.5部、ジシクロペンタニルジアク
リレート(日本化薬(株)製の「カヤラッドR−68
4」)22.5部、メトキシノナエチレングリコールア
クリレート(新中村化学工業(株)製の「NKエステルA
M−90G」)10部、カプリン酸メチル(貧溶剤)1
80部及び「イルガキュアー184」(光重合開始剤)
4部を均一に混合し、光重合性組成物(8)を得た。
【0104】(親水性液体(d)の調製)2−メタクリ
ロイルオキシエチル−2’−(トリメチルアンモニオ)
エチルホスフェート10部、蒸留水60部及びエタノー
ル30部を均一に混合して、親水性液体(d−8)を得
た。
【0105】(表面親水性成形物の作製)内径0.16
mmの円筒状ノズルより光重合性組成物(8)を22ml/
分の吐出量で空気中に液滴状に押し出し、ノズル下30
〜60cmの範囲に落ちてきたところに強度1200mW
/cm2 の紫外線を照射して、乳白色のビーズ状の予備硬
化物を得た。この予備硬化物を親水性液体(d−8)の
入ったビーカーに入れ、ビーカーの上から、再び強度1
00mW/cm2 の紫外線を40秒間照射して光重合・硬
化させて、直径0.45mmのビーズを得た。
【0106】このようにして得たビーズをエタノール中
に60分間浸漬し、流水で2時間洗浄した後、一晩自然
乾燥させて、直径0.4mmの白色ビーズ状多孔質体を得
た。
【0107】このようにして得た多孔質体の表面につい
て、水接触角の測定と元素分析を行なった。多孔質のた
め、水が細孔に吸収され、水接触角は測定できなかっ
た。元素分析の結果を表2に示した。なお、得られた表
面親水性成形物の表面親水性層の厚みは10μm以下で
あった。このビーズ状成形物は37℃の水によって膨潤
しなかった。
【0108】
【表1】
【0109】表1に示した実施例1〜3の結果から、親
水性液体(d)中の親水性化合物[2−メタクリロイル
オキシエチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチル
ホスフェート]の濃度が増加するに従って、成形物表面
の元素分析結果が親水性化合物の元素比と近似した値と
なることから、親水性液体中の親水性化合物の濃度が増
加するに従って、成形物表面に結合した親水基の量が増
える結果、親水性も著しく増加し、水接触角が小さくな
ることが理解できる。
【0110】また、実施例3及び4の結果から、親水性
液体中に界面活性剤を含有させることによって、より親
水性の高い表面が得られることが理解できる。更に、実
施例5の結果から、親水性液体中の親水性化合物[2−
メタクリロイルオキシプロピル−2’−(トリエチルア
ンモニオ)エチルホスフェート]の濃度が40重量%に
なると、表面がほぼ全て親水基で覆われた超親水性の表
面親水性成形物が得られることが理解できる。
【0111】
【発明の効果】本発明の製造方法によって得られる表面
親水性成形物は、成形物内部に親水基(4級アミノ基及
びリン酸アニオン基)が存在しないので、成形物の膨潤
が起こらず、成形物本来の構造、物性等を損なうことが
なく、しかも、親水基の離脱が起こらないという利点が
ある。また、本発明の表面親水性成形物の製造方法によ
れば、成形物の表面にのみ親水基が共有結合し、且つ成
形物の表面に結合する親水基の密度等を容易に制御で
き、親水性や生体適合性の高い成形物を容易に製造でき
る。更に、本発明の表面親水性成形物の製造方法によれ
ば、成形性が高く、任意の形状の成形物を作ることがで
きる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C09D 5/00 C09D 5/00 Z // C08F 2/50 C08F 2/50 230/02 230/02 C08J 7/04 C08J 7/04 T D06M 10/00 D06M 10/00 K 15/267 15/267 C08L 43:02

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (1)1分子中に重合性不飽和二重結合
    を2個以上有する疎水性化合物(a)と光重合開始剤と
    を含有する疎水性の光重合性組成物を薄膜状、糸状、ビ
    ーズ状、その他の任意形状に賦形した賦形物(b)を形
    成する第1工程と、(2)賦形物(b)の表面に、重合
    性不飽和二重結合を有する親水性化合物(c)を含有す
    る親水性液体(d)に接触させる第2工程と、(3)前
    記接触状態下の賦形物(b)に活性光線を照射すること
    によって、 (イ)賦形物(b)を硬化させると共に、 (ロ)賦形物(b)と親水性液体(d)との接触界面
    で、疎水性化合物(a)と親水性化合物(c)とを共重
    合させて疎水性の賦形物(b)の表面に親水性化合物
    (c)の分子を化学的に結合させるが、 (ハ)親水性液体(d)の中では前記接触界面を除き光
    重合反応を起こさせない第3工程とから成る表面親水性
    成形物の製造方法において、 重合性不飽和二重結合を有する親水性化合物(c)とし
    て、4級アミノ基及びリン酸アニオン基を有する重合性
    化合物を用いることを特徴とする表面親水性成形物の製
    造方法。
  2. 【請求項2】 4級アミノ基及びリン酸アニオン基を有
    する重合性化合物が一般式(1) 【化1】 [式中、Xは、 【化2】 (式中、R4は水素原子又はメチル基を表わし、R5は炭
    素原子数1〜20のアルキル基、アルケニル基、ヒドロ
    キシアルキル基を表わす。)を表わし、Yは、 【化3】 (式中、mは1〜9の整数を表わす。)を表わし、
    1、R2及びR3は、各々独立に炭素原子数1〜8のア
    ルキル基、アリル基又はヒドロキシアルキル基を表わ
    す。]で表わされる化合物である請求項1記載の表面親
    水性成形物の製造方法。
  3. 【請求項3】 4級アミノ基及びリン酸アニオン基を有
    する重合性化合物が、一般式(1)において、Xが 【化4】 (式中、R4は水素原子又はメチル基を表わす。)で表
    わされ、かつ、Yが−CH2CH2−で表わされる化合物
    である請求項2記載の表面親水性成形物の製造方法。
  4. 【請求項4】 賦形物(b)と親水性液体(d)とを接
    触させる方法が、賦形物(b)を親水性液体(d)中に
    浸漬させる方法である請求項1〜3のいずれか1項に記
    載の製造方法。
  5. 【請求項5】 光重合性組成物が、1分子中に重合性不
    飽和二重結合を2個以上有する疎水性化合物(a)と相
    溶するが、1分子中に重合性不飽和二重結合を2個以上
    有する疎水性化合物(a)から成る重合硬化物を溶解又
    は膨潤させない成分を含有する請求項1〜4のいずれか
    1項に記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 親水性液体(d)が界面活性剤を含有す
    る請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 (1)1分子中に重合性不飽和二重結合
    を2個以上有する疎水性化合物(a)と光重合開始剤と
    を含有する疎水性の光重合性組成物を薄膜状、糸状、ビ
    ーズ状、その他の任意形状に賦形した賦形物(b)を形
    成する第1工程と、(2)賦形物(b)に活性光線を照
    射して賦形物(b)を予備硬化させるが、少なくとも賦
    形物(b)の表面に重合性不飽和二重結合が残留した状
    態に維持する第2工程と、(3)予備硬化した賦形物
    (b)の表面に、重合性不飽和二重結合を有する親水性
    化合物(c)を含有する親水性液体(d)に接触させる
    第3工程と、(4)前記接触状態下にある予備硬化した
    賦形物(b)に活性光線を照射することによって、 (イ)賦形物(b)を完全に硬化させると共に、 (ロ)賦形物(b)と親水性液体(d)との接触界面
    で、疎水性化合物(a)と親水性化合物(c)とを共重
    合させて疎水性の賦形物(b)の表面に親水性化合物
    (c)の分子を化学的に結合させるが、 (ハ)親水性液体(d)の中では前記接触界面を除き光
    重合反応を起こさせない第4工程とから成る表面親水性
    成形物の製造方法において、 重合性不飽和二重結合を有する親水性化合物(c)とし
    て、4級アミノ基及びリン酸アニオン基を有する重合性
    化合物を用いることを特徴とする表面親水性成形物の製
    造方法。
  8. 【請求項8】 4級アミノ基及びリン酸アニオン基を有
    する重合性化合物が請求項2に記載の一般式(1)で表
    わされる化合物である請求項7記載の表面親水性成形物
    の製造方法。
  9. 【請求項9】 4級アミノ基及びリン酸アニオン基を有
    する重合性化合物が、請求項3記載の化合物である請求
    項8記載の表面親水性成形物の製造方法。
  10. 【請求項10】 賦形物(b)と親水性液体(d)とを
    接触させる方法が、賦形物(b)を親水性液体(d)中
    に浸漬させる方法である請求項7〜9のいずれか1項に
    記載の製造方法。
  11. 【請求項11】 光重合性組成物が、1分子中に重合性
    不飽和二重結合を2個以上有する疎水性化合物(a)と
    相溶するが、1分子中に重合性不飽和二重結合を2個以
    上有する疎水性化合物(a)から成る重合硬化物を溶解
    又は膨潤させない成分を含有する請求項9〜10のいず
    れか1項に記載の製造方法。
  12. 【請求項12】 親水性液体(d)が界面活性剤を含有
    する請求項7〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
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