JPH11299477A - 微生物数測定装置 - Google Patents

微生物数測定装置

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JPH11299477A
JPH11299477A JP11466898A JP11466898A JPH11299477A JP H11299477 A JPH11299477 A JP H11299477A JP 11466898 A JP11466898 A JP 11466898A JP 11466898 A JP11466898 A JP 11466898A JP H11299477 A JPH11299477 A JP H11299477A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、薬剤や特別な装置を必要とするこ
となく、簡易で高感度な測定ができ、自動測定が可能
で、メンテナンスフリーの微生物数測定装置を提供する
ことを目的とする。 【解決手段】 本発明の微生物数測定装置は、微生物含
有の液体を導入することができ、内部に複数の電極3
と、電極3間に形成される電界を集中するための電界集
中部が設けられたセル1と、セル1中に電界を形成する
ための交流電圧を電極3に印加する電源回路4と、電源
回路4を制御するための制御手段11と、電界集中部を
充たした液体に光を入射する入射部を有すとともに、前
記液体中の微生物により散乱された光を検出する受光部
を有した測定部を備え、制御手段11が電源回路4によ
り電界を形成して微生物を誘電泳動させ、測定部は受光
部が検出した光の散乱強度に基づいて微生物数を算出す
ることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は溶液中の微生物数を
測定するための微生物数測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、溶液中の微生物数を測定する方法
として特開昭57−50652号公報に記載されたもの
等の多数の技術が知られている。
【0003】しかし、従来の技術による微生物数の測定
方法は、試料液に専用の薬剤、例えば酵素や色素を投入
して生化学反応を起こさせ、その反応経過や結果を蛍光
や発光によって測定するものであり、その測定感度は比
較的高いが、微生物分野と生化学分野に関する専門知識
が必要であったり、また専用で高価な大型の測定装置が
必要となったり、さらには専任者による作業が必要とな
る等、とても一般的かつ簡易に微生物数を測定すること
ができるものではなかった。
【0004】そこで、特開昭59−91900号公報に
記載されたものをはじめとする、物理的手段のみを使
い、薬剤を一切用いないで、小型で、試料系に組み込ん
で自動測定ができ、簡易に測定できる微生物数検出装置
が提案されたが、微生物数が10の8乗cells/m
l(1ml中に微生物数が1億個)以上にならないと検
出できないなどその応用範囲に著しい制限が加えられて
いた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来の技
術による微生物数測定装置で測定感度を上げるために
は、何らかの薬剤を使用したり、専用の測定装置,専門
知識を持った専任者による操作が必要なものであった。
また薬剤を使用しない簡易型の装置では、このような専
任者を必要とはしないための簡易な測定が可能になる
が、試料液に含まれた微生物数が非常に多くないと測定
が難しく、これでは低感度の測定器しか得られないし、
試料液中に薄い濃度で分布している微生物を移動させて
局部的に濃度を上げて感度を向上させたくても、これを
実施できる簡易でメンテナンスフリーな手段がないとい
う問題があった。
【0006】そこでこれらの問題を解決するため本発明
は、薬剤や特別な装置を必要とすることなく、簡易で高
感度な測定ができ、自動測定が可能で、メンテナンスフ
リーの微生物数測定装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに本発明の微生物数測定装置は、電界集中部を充たし
た液体に光を入射する入射部を有すとともに、前記液体
中の微生物により散乱された光を検出する受光部を有し
た測定部を備え、制御手段が電源回路により電界を形成
して微生物を誘電泳動させ、前記測定部は前記受光部が
検出した光の散乱強度に基づいて微生物数を算出するこ
とを特徴とする。
【0008】これにより、薬剤や特別な装置を必要とす
ることなく、簡易で高感度な測定ができ、自動測定が可
能でメンテナンスフリーの微生物数測定装置を提供する
ことができる。
【0009】
【発明の実施の形態】請求項1に記載された発明は、微
生物含有の液体を導入することができ、内部に複数の電
極と、該電極間に形成される電界を集中するための電界
集中部が設けられたセルと、前記セル中に前記電界を形
成するための交流電圧を前記電極に印加する電源回路
と、前記電源回路を制御するための制御手段と、前記電
界集中部を充たした液体に光を入射する入射部を有すと
ともに、前記液体中の微生物により散乱された光を検出
する受光部を有した測定部を備え、前記制御手段が前記
電源回路により前記電界を形成して微生物を誘電泳動さ
せ、前記測定部は前記受光部が検出した光の散乱強度に
基づいて微生物数を算出することを特徴とする微生物数
測定装置であるから、微生物数の少ない試料においても
微生物を電極付近に集中させた後に光学的な手段である
入射部と受光部によってその数を測定することができ、
薬剤や特別な装置を必要とすることなく、簡易で高感度
な測定ができる。
【0010】請求項2に記載された発明は、前記入射部
と前記受光部の少なくともいずれかが光ファイバを備え
たことを特徴とする請求項1記載の微生物測定装置であ
るから、光ファイバにより光源からの光を電界集中部に
導くこがとでき、電界集中部付近に光源を置く必要がな
くなる。
【0011】請求項3に記載された発明は、前記光ファ
イバから液体中に入射された光の光束の広がる範囲内に
前記電極の端部が配置されたことを特徴とする請求項1
または2に記載の微生物数測定装置であるから、前記電
界集中部に微生物を集中させる早い段階から測定を行な
うことができ、感度と精度の高い測定結果を得ることが
できる。
【0012】請求項4に記載された発明は、前記光ファ
イバの切断面及び側面が絶縁性の有機高分子でコーティ
ングされていることを特徴とする請求項2または3に記
載の微生物数測定装置であるから、光ファイバが劣化す
ることがなく、簡単な構成でありながら高精度の測定を
行うことができる。
【0013】請求項5に記載された発明は、前記光ファ
イバのコア及びクラッドが有機高分子で構成されている
ことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の微生
物数測定装置であるから、光ファイバが劣化することが
なく、簡単な構成でありながら高精度の測定を行うこと
ができる。
【0014】請求項6に記載された発明は、前記入射部
と前記受光部のいずれもが光ファイバを備え、前記光フ
ァイバのクラッド外周には導電性の薄膜がコーティング
されて電極が形成されていることを特徴とする請求項2
〜5のいずれかに記載の微生物測定装置であるから、一
体化することで構造が簡単化でき、簡単な構成でありな
がら高精度の測定を行うことができる。
【0015】請求項7に記載された発明は、微生物含有
の液体を導入することができ、内部に複数の電極と、該
電極間に形成される電界を集中するための電界集中部が
設けられたセルと、前記セル中に前記電界を形成するた
めの交流電圧を前記電極に印加する電源回路と、前記電
源回路を制御するための制御手段と、前記電界集中部の
液体に光を入射する入射部と前記液体中の微生物により
散乱された光を検出する受光部を有すとともに、前記光
のうち散乱されずにそのまま透過した光の偏波面の回転
を検出する偏波面検出部を有した測定部を備え、前記制
御手段が前記電源回路により前記電界を形成して微生物
を誘電泳動させ、前記測定部は前記受光部が検出した光
の散乱強度に基づいて微生物数を算出を行い、前記偏波
面の回転量により微生物の同定を行うことを特徴とする
微生物数測定装置であるから、偏波面の回転から微生物
の組成や代謝に関する情報を取出すことができ、簡単な
構成でありながら高精度の測定と微生物の同定を行うこ
とができる。
【0016】以下、本発明の実施の形態について、図1
〜図3を用いて説明する。 (実施の形態1)本発明の一実施の形態である微生物数
測定装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態1における微生物数測定装置
の全体構成図、図2は本発明の実施の形態1における電
界集中部近傍の詳細説明図、図3は微生物数測定時に観
察される散乱光強度の時間変化の説明図である。
【0017】図1,2及び3において、1はセル、2は
電磁弁、3は電極、4は電源回路、5は光源側の光ファ
イバ、6は受光側の光ファイバ、7は光源、8は受光
器、9は測定回路、10はメモリ、11は制御手段、1
2は試料系配管である。光ファイバ5やレンズ等の光学
素子が、光源7からの光をセル1内に設けた後述する電
界集中部に入射する本実施の形態1の入射部に相当し、
光ファイバ6と受光器8等が本実施の形態1の受光部に
相当するものである。さらに、21は電極底部、22は
針状突起、23は電極3間のギャップ、30は光源側の
光ファイバ5から出射される光束の広がる範囲、31は
受光側の光ファイバ6による光の受光範囲である。光束
の広がる範囲というのは、出射された光が束となって円
錐状に広がる領域を意味する。
【0018】図1及び図2に示すように、誘電泳動によ
って試料液中の微生物を所定位置に移動させるために、
電極3が微小なギャップ23を介して対向して設けられ
ている。本実施の形態1においては電極3は円錐状の電
極底部21と円錐先端から鋭く突き出した針状突起22
を備えている。このギャップ23付近の構成が本実施の
形態1の電界集中部にあたる。電界集中部は空間の中で
局部的に電界が集中する構成であればよく、実施の形態
1のように微少なギャップ23を挟んでの電極3の構成
のように最もシンプルな構成でもよいし、絶縁体でセル
に絞り部を形成して試料溶液を充たす構成等、いろいろ
の構成を採用できる。なお、電極底部21と針状突起2
2に関しては電極3の少なくとも一方がこの構成を備え
るのでもよい。本実施の形態1では針状突起22は白金
から構成され、ギャップ23を挟んで一直線上で対向す
るように設けられる。またここではギャップ23の間隔
が100μmに設定されているが、ギャップ23の間隔
は測定対象となる微生物の大きさ等の影響を受けるため
必要に応じて調節される。例えば、酵母のような大きな
ものでは広く、リケッチアのように小さなものについて
は狭くする必要がある。また、ギャップ23の間隔は、
広いほど大量の微生物を濃縮することができ、測定のダ
イナミックレンジも広くなるが、測定までの時間が長く
必要になり、誘電泳動のために必要な電力も大きくな
る。逆にギャップ23を狭くすると、電力と測定のため
に必要となる時間は少なくなるが、測定のダイナミック
レンジは狭くなってしまうものである。以上のような理
由から本実施の形態1においては、ギャップ23の間隔
を100μmとしているが、この値は10〜300μm
の範囲で適宜調節されることが望ましい。さらに図示さ
れていないが、針状突起22の先端部分を除く部分と電
極底部21に絶縁性でかつ疎水性のフッソ系薄膜コーテ
ィング等の有機高分子コーティングが施されている。こ
の有機高分子コーティングにより光ファイバが劣化する
ことがなく、簡単な構成でありながら高精度の測定を行
うことができる。
【0019】電源回路4は液体中の微生物等を誘電泳動
させるための交流電流を電極3間に供給する。この電源
回路4は電磁弁2等と共に制御手段11によって制御さ
れる。制御手段11は、図示しないマイクロプロセッサ
と、予め設定されたプログラムを保存するためのメモ
リ、タイマー、さらに測定回路9との間の信号の伝送路
等から構成され、前記プログラムにしたがって電磁弁2
の開閉を行い、電源回路4を制御して、電極3へ特定の
周波数と電圧をもった交流電圧を印加する。さらに制御
手段11は測定回路9と信号の送受信を行う。
【0020】光源側の光ファイバ5は石英ガラスを主材
料としコア径50ミクロン、クラッド径125ミクロン
でコアの屈折率に分布を持ち樹脂製の保護外皮すなわち
絶縁性でかつ疎水性のフッソ系薄膜等の有機高分子コー
ティングが施されている。光ファイバ5は一方を光源側
に、他方をギャップ23に近接して配置され、両端面は
光学的に平坦に研磨されている。また図示しないが既述
したように、光源7と光源側の光ファイバ5の間にはレ
ンズ等の光学素子が配置され、光源7の光を光ファイバ
5に効率よく入射させている。光ファイバ5のギャップ
23側の端面からは光ファイバ5内を伝わってくる光源
7の光が図2の30に示すような範囲に広がって出射す
る。本実施の形態1においてはこの光束の広がる範囲3
0と少なくとも一方の針状突起22の先端が互いに重な
るように配置されている。いいかえるなら、電極3の端
部が液中に入射された光の広がる円錐状空間内に配置さ
れることになる。なお、本実施の形態1では石英ガラス
を主成分とする光ファイバを用いたが、有機高分子を主
成分とする光ファイバを用いてもよい。有機高分子を主
成分とする光ファイバは、石英ガラスを主成分とする光
ファイバと比較して光の伝播時の減衰が大きいことが知
られているが、本実施の形態1のように伝播距離が通信
用途等と比較して極端に短い場合にはなんら問題は生じ
ない。
【0021】受光側の光ファイバ6は光ファイバ5同様
石英ガラスを主材料としコア径50ミクロン、クラッド
径125ミクロンでコアの屈折率に分布を持ち、樹脂製
の保護外皮すなわち絶縁性でかつ疎水性のフッソ系薄膜
等の有機高分子コーティングが施されている。光ファイ
バ6は一方を受光器側に、他方をギャップ23に近接し
て配置され、両端面は光学的に平坦に研磨されている。
また図示しないが、受光器8と光源側光ファイバ6の間
にはレンズ等の光学素子が配置され、光ファイバ5を伝
って来た光が効率よく受光器8で検出される。光ファイ
バ6のギャップ23側の端面では図2の31に示す受光
範囲の内側から光ファイバ6に入射した光だけが受光器
8で検出される。受光範囲31以外の範囲から光ファイ
バ6に入射した光は光ファイバ6内の光の伝播条件を満
たすことができず、受光器8に至る以前に減衰して消滅
してしまうものである。光ファイバ6についても有機高
分子を主成分とする光ファイバを用いることができる。
【0022】本実施の形態1においては、光ファイバ5
と光ファイバ6は同一平面内で互いに135度の角度を
もって配置される。この135度というのは望ましい角
度の1つであって、散乱光を測定するのが容易な角度で
あれば他の角度でもよく、例えば10度付近から170
度付近までの角度を採用することができる。さらに、受
光範囲31と光束の広がる範囲30が少なくとも一方の
針状突起22の先端部分と互いに重なるように配置され
る。いいかえると少なくとも一方の電極3の端部が光源
側と受光側の光束の範囲内に配置されることになる。
【0023】また、本実施の形態1においては上記した
通り、光ファイバ5、6は共に図示しないがギャップ2
3側の端面に疎水性のフッソ系薄膜等の有機高分子がコ
ーティングされている。石英ガラスは経年変化により次
第に吸水しクラックを生じて劣化することが知られてい
るが、本実施の形態1では端面に疎水性の薄膜を施すこ
とにより水の侵入を阻止し劣化を防止している。
【0024】ところで、光ファイバ5,6のコア径及び
屈折率分布の有無を適宜選択することにより、光束の広
がる範囲30と受光範囲31は変更することができる。
すなわち、コア径を小さくすると光束の広がる範囲30
と受光範囲31は狭くなり、より光エネルギー密度が高
くかつバックグラウンドノイズの少ない測定を行なうこ
とが可能になる。しかしながら、コア径の小さな光ファ
イバは光源7及び受光器8との光学的な結合効率を高め
ることが難しくなる。そこで実施の形態1ではコア径5
0ミクロン、クラッド径125ミクロンでコアの屈折率
に分布を持つ光ファイバを用いることにより、簡易な構
成で効率の良い検出を行なっている。
【0025】次に測定回路9は、図示しないマイクロプ
ロセッサ、光源7を点灯させるためのリレー、受光器8
からの信号を検出する検出回路、制御手段11との間の
信号を伝える伝送路等から構成され、誘電泳動で捕捉さ
れた微生物に起因する散乱光強度を測定し、後述する方
法に従って微生物数を算出する。さらに必要に応じて演
算結果をメモリ10に格納したり、予め保存されている
データを読み出して比較を行う等して、試料系に含まれ
ている微生物数を算出する。なお、このマイクロプロセ
ッサは制御手段11と測定回路9とで共用することがで
きる。また測定回路9と制御手段11は、互いに通信す
ることにより、予め設定されたプログラムに従って一連
の測定動作を連携して円滑に進めることができる。
【0026】以下、試料の導入からセル1内の微生物の
濃縮、測定、洗浄にいたるまでの一連の流れを説明す
る。初期状態では試料系配管12とセル1を遮断するた
めの電磁弁2は開放状態にあり、試料系配管12の液体
はセル1内を自由に通過している。所定のタイミング
で、予めプログラムによって設定された測定動作に入る
と制御手段11は電磁弁2を閉状態にし、セル1を試料
系配管12から遮断し、セル1内のみの閉鎖系を構成す
る。その後、制御手段11は、セル1内の液体の流動が
収まると予想される予め設定された所定時間が経過する
と、測定回路9に測定開始の信号を送って測定の開始を
指令する。
【0027】測定開始の指令を受けた測定回路9は、直
ちに光源7を点灯させ散乱光強度を測定する。そしてこ
の値を初期値としてメモリ10に格納し、初期値の測定
が終了したことを信号を送って制御手段11に伝える。
以下、制御手段11と測定回路9は必要に応じて適宜信
号のやり取りを行い、予め設定されたプログラムに従っ
た円滑な動作を行う。
【0028】次いで制御手段11は電源回路8を制御し
て電極3間に周波数100kHzでピーク電圧100V
の正弦波交流電圧を印加させる。なお、ここで交流電圧
というのは、正弦波のほか、ほぼ一定の周期で流れの向
きを変える電圧のことであり、かつ両方向の電流の平均
値が等しいものである。
【0029】予め設定された所定時間が経過した後に送
出される制御手段11からの信号により測定回路9は再
び散乱光強度を測定し、その値をメモリ10に格納す
る。
【0030】その後、予め設定された時間毎に、制御手
段11と測定回路9は連携して散乱光強度の測定を繰り
返す。測定手段は測定された散乱光強度をその都度メモ
リ10に格納する。このように、誘電泳動による微生物
のギャップ23付近への移動を行ないながら散乱光強度
の測定を繰り返すことによって、散乱光強度の時間変化
を調べることができる。
【0031】誘電泳動のための交流電圧印加開始後予め
プログラムされた所定の回数の散乱光強度の測定を行う
と、測定回路9はメモリ10に格納されている複数の散
乱光強度測定結果から、その時点までの電極3間の散乱
光強度の時間変化の傾きを計算し、後述する変換式に従
って試料系の微生物数を算出する。
【0032】ところで、高周波の交流電圧の印加によっ
て発生する交流電界の作用で、セル1内の微生物はその
誘電的な性質によって最も電場が強くかつ不均一な部
分、すなわち電界集中部に泳動される。本実施の形態1
では電極3のギャップ23付近の構成が電界集中部にあ
たり、中でも最も電界が集中するのは一直線上に対向す
る針状突起22の先端を結んだ部分すなわちギャップ2
3である。ギャップ23付近の微生物は電極3間に生じ
る電界作用によってギャップ23へ向かって泳動され
る。最初に泳動された微生物は針状突起22の先端に付
着し、以降に移動してくる微生物は対向する電極に向か
ってギャップ23を架橋するように並ぶ。以降の状態は
試料液体中に存在する微生物数とギャップ23の間隔に
依存するが、十分に微生物数が多い時にはギャップ23
が微生物24から構成される鎖によって架橋されるほど
になり、さらにギャップ23を中心として目視できるラ
グビーボール状の微生物体の固まりを生じるほどにな
る。この際、当初からギャップ23付近に浮遊していた
微生物は直ちにギャップ23部分へ移動するし、ギャッ
プ23から離れたところに浮遊していた微生物は距離に
応じて所定時間経過後にギャップ23部に至るため、一
定時間後にギャップ23付近の所定領域に集まっている
微生物の数はセル1内の微生物数に比例する。これは当
然のことながら試料系配管12に存在する微生物数に比
例するものである。ギャップ23付近に移動する微生物
が増加するにしたがってギャップ23付近で集まった微
生物によって散乱される光の強度は大きくなる。この散
乱光を検出し適宜演算を行うことによって試料中の微生
物数を算出することができる。
【0033】本実施の形態1では前述したように受光範
囲31と光束の広がる範囲30が少なくとも一方の針状
突起22の先端部分と互いに重なるように配置されてい
るため、試料中に含まれる微生物数が非常に少ない場合
でも正確な検出が可能である。なぜ受光範囲31と光束
の広がる範囲30が少なくとも一方の針状突起22の先
端部分に互いに重なるように配置されていると微生物数
が非常に少ない場合でも正確な検出が可能であるのかと
いうと、前述したように誘電泳動によって最初に泳動さ
れた微生物は針状突起22の先端に付着し、それ以降に
移動してくる微生物は対向する電極に向かってギャップ
23を架橋するように並ぶからであり、試料に含まれる
微生物数が非常に少ない場合には、泳動された微生物は
ほとんどが針状突起22の先端近傍に集まるからであ
る。先端部分に集まった微生物を正確に検出するには光
束の広がる範囲30と針状突起22の先端が接していれ
ば充分であるが、試料の温度によっては針状突起22を
含む電極3や光ファイバ5、6が熱膨張/熱収縮して互
いの位置関係が微小ながらずれるために針状電極22と
光束の広がる範囲30を正確に接触させておくことがで
きず、結果として測定値に誤差を生じる。前述したずれ
が針状突起22先端と光束の広がる範囲30が重なる方
向にずれる場合には、正確な微生物数を算出することが
できるため問題はとくに生じない。しかしながら、前述
したずれが針状突起22先端と光束の広がる範囲30が
離れる方向にずれる場合には、針状突起22の先端に付
着した微生物による散乱光を全く検出できなくなり正確
な微生物数の算出ができなくなってしまうものである。
【0034】本実施の形態1では予め熱膨張等を考慮し
て受光範囲31と光束の広がる範囲30が少なくとも一
方の針状突起22の先端部分と互いに重なるように配置
されているため、試料の温度が様々に変化しても安定し
た測定が可能である。このような配置では、針状突起2
2の先端部分による散乱が生じるが、この散乱光強度は
すでに説明したように誘電泳動のための電圧を印加する
前に行われる初期値の測定によってその後の演算で差し
引きされ、測定結果に誤差を生じることはない。また、
測定は迅速に行なわれるため、測定中の試料の温度変化
が測定結果に影響することもない。
【0035】このようにして測定される散乱光強度の時
間変化を示したのが図3である。そして図3からも分か
るように、測定初期の散乱光強度の時間変化の傾き(勾
配)も散乱光強度の時間変化と同様に、微生物数に対応
して増加しているのが分かる。散乱光強度の時間変化で
微生物数を算出する場合、過渡状態をすぎて平衡状態に
なってから測定した方が正確であるから、どうしても時
間が長くかかるが、測定初期の散乱光強度の時間変化の
傾き(勾配)によって微生物数を算出する場合は、比較
的短時間で微生物数を算出できるという特徴がある。
【0036】さて、散乱光強度変化と試料系配管12の
微生物数を関連付けるためには散乱光強度と微生物数間
の変換式が必要である。この変換式は微生物数が明らか
な校正用試料を、本実施の形態1で説明した微生物数測
定装置の測定系を用いて予め測定し、その時の微生物数
と散乱光強度の間の相関関係からばらつきを回帰分析し
て得られる曲線をあらわす関数をもちいる。この変換式
をメモリ10に記憶させ、微生物数が未知の試料を測定
する場合には、所定時間内における散乱光強度変化の値
を代入することにより試料系の微生物数を算出できる。
【0037】ここで実施の形態1の試料系としては、例
えば酵母の培養液等の単一微生物系を想定しているが、
混合微生物系であっても、微生物の種類とその構成比が
大きく変化しない限り、前もって同様の変換式を算出し
ておいて測定することが可能である。
【0038】以上説明したように、微生物数を算出後、
予めプログラムされた所定の時間が経過すると、測定装
置10は測定終了の通知を制御手段11に送る。これを
受け、制御手段11は電極3への通電を停止するととも
に電磁弁2を開放して洗浄に入る。ギャップ23付近に
集まった微生物は、電磁弁2の開放により流入する試料
系配管12の液体によって洗い流される。
【0039】本実施の形態1においては電極3の針状突
起22の先端を除いた部分と電極底部21の部分にフッ
ソ系薄膜等の絶縁性かつ疎水性の有機高分子がコーティ
ングされているため、移動してきた微生物は電極表面に
ほとんど付着することなく洗い流され、一連の測定動作
が終了する。
【0040】このように本実施の形態1では、誘電泳動
による微生物の濃縮を行いながら、定期的に測定回路9
による電極3間の散乱光強度を測定することができ、散
乱光強度の時間変化を検出することができるので、比較
的短時間で、簡易な構造でありながら、測定感度が高
く、また自動測定も可能でメンテナンスフリーの微生物
数測定装置を提供することができる。
【0041】(実施の形態2)本発明の実施の形態2に
おける微生物数測定装置について図面を参照しながら詳
細に説明する。図4は本発明の実施の形態2における微
生物数測定装置の全体構成図、図5は本発明の実施の形
態2における電界集中部近傍の詳細説明図、図6は本発
明の実施の形態2における電界集中部への微生物の移動
状態を説明するための図である。
【0042】本実施の形態2の微生物数測定装置は、実
施の形態1の微生物数測定装置と重複する部分があるた
め、実施の形態1と異なる部分について詳細な説明を加
える。
【0043】図4及び図5、図6において41は誘電泳
動のための電圧を印加する電極を一体化した光源側光フ
ァイバ、42は誘電泳動のための電圧を印加する電極を
一体化した受光側光ファイバ、43は光ファイバ41と
光ファイバ42のなすギャップ、44は光ファイバ41
から出射される光束の広がる範囲、45は光ファイバ4
2の受光範囲、46は誘電泳動によって電界集中部に移
動してきた微生物である。
【0044】図4及び図5,図6に示すように、セル1
内には誘電泳動によって試料液中の微生物を所定位置に
移動させるために、誘電泳動のための電圧を印加する電
極が一体化された光源側の光ファイバ41と、同じく電
極が一体化された受光側の光ファイバ42が一直線上に
対向して設けられている。光ファイバ41と光ファイバ
42のクラッド表面には白金がコートされており、この
白金のコートは電源回路4と電気的に接続されている。
このように本実施の形態2では実施の形態1と異なり誘
電泳動のための電極が光ファイバと別体に設けられるの
ではなく、コートとして被覆されることで両者が一体と
なっている。従って、実施の形態2における電界集中部
は光ファイバ41と光ファイバ42のギャップ43とな
る。
【0045】実施の形態2におけるギャップ43の間隔
は300ミクロンである。ギャップ43も実施の形態1
におけるギャップ23同様間隔は測定対象となる微生物
の大きさ等の影響を受けるため必要に応じて調節され
る。
【0046】実施の形態2における光ファイバ41と光
ファイバ42は有機高分子を材料とし、コア径は100
ミクロンである。光ファイバ41,42はコア径が大き
いため出射される光束の広がる範囲44、受光範囲45
は実施の形態1に比較して広くなる。
【0047】以下に、試料の導入からセル1内の微生物
の濃縮、測定、洗浄にいたるまでの一連の流れを説明す
るが、実施の形態2においても誘電泳動によって微生物
を電界集中部に移動させ、微生物に起因する散乱光強度
の時間変化を測定した後に演算して試料中の微生物数を
算出するという考え方は同じである。また、濃縮、測
定、洗浄に至る一連の動作は実施の形態1と同様である
ので説明を実施の形態1に譲って省略する。実施の形態
2が実施の形態1と大きく異なる点は、誘電泳動のため
の電極と測定のための光ファイバが一体化されていると
いう構成にある。以下この点に絞って詳細に説明する。
【0048】試料導入後、測定開始の指令を受けた測定
回路9は、直ちに光源7を点灯させ散乱光強度を測定
し、その値を初期値としてメモリ10に格納する。この
時に測定される値は光源7から光ファイバ41を伝って
ギャップ43を介して光ファイバ42に入射したもので
ある。実施の形態1で説明した如く、光ファイバ41,
42はそれぞれ光束の広がる範囲44と受光範囲45を
もっている。光ファイバ41,42は一直線上に対向し
ているが、光源7からの光は光ファイバ41のギャップ
43に近い方の端面で光束の広がる範囲44のように広
がるため、すべてが光ファイバ42に入射するわけでは
ない。光ファイバ43に入射する光は幾何光学的には光
ファイバ41内を直進してきた成分、量子光学的には低
次の伝播モードをもったものに限られる。
【0049】さて、初期値の測定後誘電泳動が開始さ
れ、予め設定された所定時間が経過した後に送出される
制御手段11からの信号により測定回路9は再び散乱光
強度を測定し、その値をメモリ10に格納する。この時
には、試料中に存在する濃度に応じて一定の数の微生物
が電界集中部に移動してきている。
【0050】ここで、実施の形態2における微生物の移
動は実施の形態1とは異なり図6に示すようになる。実
施の形態2における誘電泳動のための電圧を印加する電
極は光ファイバ41,42のクラッド表面に設けられて
おり、電極のみを考えた場合には対向する円筒形状をし
ていると考えることができる。従って最も電界が強くな
る部分も光ファイバ41,42のクラッド表面を互いに
結んだ円筒形となる。この円筒形状の最も電界の強い集
中した部分から離れるに従い電界は弱まっていく。よっ
て、光ファイバ41,42のコアが対向する部分の電界
は前記円筒形状の強電界部分よりも電界強度は弱い。つ
まり、実施の形態2では誘電泳動による微生物の移動は
前記円筒形状の強電界部分に向かって生じることにな
る。以下、前記円筒形状の強電界部分を単に強電界部分
と記述する。
【0051】光束の広がる範囲44と強電界部分は互い
に重なっているため強電界部分に移動してきた微生物4
6は光を散乱するようになる。この時散乱される光はラ
ンダムな方角に向かうが、受光範囲45と強電界部分が
重なっているために光ファイバ42方向に散乱された光
は光ファイバ42に入射し受光器8によって検出され
る。したがって、強電界部分に存在する微生物46の数
に依存した検出光の増加が認められるようになる。
【0052】以下、実施の形態1と同様に、予め設定さ
れた時間毎に制御手段11と測定回路9は連携して散乱
光強度の測定を繰り返し、演算によって試料中の微生物
数を算出した後、洗浄が行われ測定動作が終了する。
【0053】ここで実施の形態2の試料系としては、実
施の形態1同様例えば酵母の培養液等の単一微生物系を
想定している。また、混合微生物系であっても、微生物
の種類とその構成比が大きく変化しない限り、前もって
同様の変換式を算出しておいて測定することが可能であ
る。
【0054】このように本実施の形態2においては誘電
泳動のための電極と測定のための光学系が一体で構成さ
れており、簡易な構成を実現している。また、光ファイ
バ41,42は有機高分子系の材料からなるため液体中
での劣化がほとんどなく、簡易な構造でありながら、測
定感度が高く、また自動測定も可能でメンテナンスフリ
ーの微生物数測定装置を提供することができる。
【0055】(実施の形態3)本発明の実施の形態3に
おける微生物数測定装置について図面を参照しながら詳
細に説明する。図7は本発明の実施の形態3における微
生物数測定装置の全体構成図である。図8は本発明の実
施の形態3における電界集中部近傍の詳細説明図であ
る。
【0056】本実施の形態3の微生物数測定装置は、実
施の形態1の微生物数測定装置と重複する部分があるた
め、実施の形態1と異なる部分について詳細な説明を加
える。
【0057】図7において50は光源側の偏波面保存光
ファイバ、51は微生物体に起因する光源光の偏波面の
回転を測定するための偏波面保存光ファイバ、52は旋
光度測定のための受光器を含む光学系、53は直線偏光
を出射する光源である。
【0058】偏波面保存光ファイバ50,51は入射し
た光の偏波面を保ったまま伝播することが可能な偏波面
保存型の光ファイバであり、石英ガラスから構成されて
いる。光学系52は、図示しない複数のレンズと偏光板
とファラデー素子と光の強度を検出できる受光器を組み
合わせて構成され、偏波面保存光ファイバ51を伝播し
てきた光の偏波面の回転角を測定することができる。光
源53は、やはり図示しないレーザーダイオードと複数
のレンズと偏光板から構成され、偏光板によって規制さ
れる特定角度の直線偏光のみを偏波面保存光ファイバ5
0に入射できるものである。偏波面保存光ファイバ50
と光ファイバ6は同一平面内で互いに135度の角度を
もって配設され、偏波面保存光ファイバ50と偏波面保
存光ファイバ51は同一直線状に対向して配設される。
この135度というのは望ましい角度の1つであって、
散乱光を測定するのが容易な角度であれば他の角度でも
よく、例えば90度から170度付近までの角度を採用
することができる。そして、偏波面保存光ファイバ51
と光学系52等が本実施の形態3の偏波面検出部を構成
し、偏波面保存光ファイバ50から入射された光のうち
散乱されないで、微生物の中を透過する光が後述する旋
光性により偏波面が回転するのを検出するものである。
【0059】ここで、偏光および偏波面の回転について
説明する。光は電界と磁界が互いに直交しながら伝播す
るきわめて周波数の高い電磁波である。したがって無線
周波数での電波と同様垂直/水平等の直線偏光、円偏
光、無偏光等を考えることができる。白熱電球等の一般
的な光源では放出される光の電界の振動方向はバラバラ
でいわゆる無偏光の状態である。無偏光状態の光を特定
の方向に配向した分子からなる結晶等に通過させること
により特定方向に偏光した光だけを選択的に取り出すこ
とができる。またこのような性質を持った物質は偏光板
として光学分野で広く利用されている。
【0060】一方、特定の構造を持った分子は光との相
互作用前後でその光の偏波面を分子固有の一定値だけ回
転させることが知られており、この性質は旋光性と呼ば
れている。分子の旋光性は特に有機化学においては不斉
炭素の存在で説明されており、有機物質の定性、定量に
利用されている。また、生化学の分野で議論されること
の多い蛋白質、アミノ酸等はほとんどすべてが不斉炭素
をもっており、従って旋光性をもっており、定性、定量
が可能である。
【0061】旋光性による光の偏波面の回転角度は、物
質の種類とその濃度と光路長に依存し、二種類以上の旋
光性物質が共存するときは回転角度はその二物質の存在
比率に応じた回転角度の和になる。光路長と光路に存在
する旋光性物質の濃度が規定されれば、旋光性による光
の偏波面の回転角度の変化は物質固有の値となり、定性
分析が可能になる。その他にも、特定方向に偏光した光
と旋光性をもった物質とを相互作用させることにより物
質についてのさまざまな情報を引き出すことができる。
【0062】実施の形態3における偏波面の角度および
その変化を測定する偏波面検出部について説明すると、
旋光度測定のための受光器を含む光学系52内で、偏波
面保存光ファイバ51からの光はその偏波面を保持した
ままレンズでコリメートされファラデー素子に入射され
る。ファラデー素子と後方の受光器との間には偏光板が
あり、特定方向に偏光した光のみが偏光板を通過して受
光器に入射し検出される。そして、このファラデー素子
に印加する電圧を変化させると、ファラデー素子内を通
過する光の偏波面は印加電圧に応じて回転し、ファラデ
ー素子によって偏波面が回転した光のうち偏光板で規制
される所定角度になったときのみ受光器に到達し検出さ
れる。従って、ファラデー素子に印加する電圧を掃引
し、受光器への入射光の強度が最大になったときの印加
電圧が偏波面保存光ファイバ51によって伝播されてき
た光の偏波面の角度と相関することになる。すなわち、
偏波面保存光ファイバ51によって伝播されてくる光の
偏波面が変化すると、受光器への入射光強度を最大にす
るためのファラデー素子への印加電圧が変化し、この電
圧の変化および変化量によって偏波面が変化したこと、
及びその変化量を知ることができる。このように、受光
器への入射光強度とファラデー素子への印加電圧を調べ
ることによって偏波面の角度とその変化を知ることがで
きるものである。
【0063】本発明は、実施の形態3で説明したよう
に、偏波面検出部において偏波面の角度を算出するもの
であるが、以下煩雑になるのでこのような一連の動作を
単に測定するという表現で説明する。なお、上記の測定
回路9による測定は、回路のみで行うのでも、マイクロ
プロセッサでソフト的に行うのでも全く同様であり、い
ずれの場合も含むものである。また、光源に用いるレー
ザーダイオードからの出力光はある程度偏光している
が、厳密な直線偏光を得るために本実施の形態3では偏
光板を通過させてから入射している。
【0064】以下に、試料の導入からセル1内の微生物
の濃縮、測定、洗浄にいたるまでの一連の流れを説明す
るが、実施の形態3においても誘電泳動によって微生物
を電界集中部に移動させ、微生物に起因する散乱光強度
の時間変化を測定した後に演算して試料中の微生物数を
算出するという微生物数測定の考え方は同じである。ま
た、濃縮、洗浄等の動作は実施の形態1と同様であるの
で説明を実施の形態1に譲って省略する。実施の形態3
が実施の形態1と大きく異なる点は、実施の形態1で説
明した方法で微生物数を測定した後に更に微生物に起因
する光源光の偏波面の回転を測定することにより、微生
物の同定を行うことにある。以下この点に絞って詳細に
説明する。
【0065】試料導入後、測定開始の指令を受けた測定
回路9は、直ちに光源7を点灯させ受光器8の信号を調
べて散乱光強度を測定し、その値を初期値としてメモリ
10に格納すると同時に旋光度測定のための受光器を含
む光学系52によって偏波面角度を測定し、その値を初
期値として取得しメモリ10に格納する。
【0066】その後、実施の形態1ですでに説明した流
れによって一連の微生物数測定のための動作が終了する
と、測定回路9は旋光度測定のための受光器を含む光学
系52によって偏波面の角度を再び測定する。直線偏光
を出射する光源53からの光の一部はギャップ23に存
在する微生物によって散乱され、それによって微生物数
が測定されるが、一部は散乱されずに透過して偏波面保
存光ファイバ51に入射される。この透過光は微生物体
の表面および微生物体を取り巻く代謝物等の物質と相互
作用し、それらの物質のもつ旋光性によってその偏波面
を回転させられる。
【0067】こうして生じる偏波面の角度の初期値から
の変化量は誘電泳動によって濃縮された微生物の種類に
関する情報を含む。なぜならば、微生物はその種類によ
って特定の蛋白質、糖質等から構成され、その種類や比
率は微生物種によって固有のものだからである。このよ
うに微生物が固有の種類/比率の蛋白質、糖類等から構
成されており、すでに説明したようにこれらの物質はほ
とんどが固有の旋光性をもっているため、微生物数や光
路長など条件を共通にして偏波面の角度の回転角度を測
定すれば微生物の特定ができるものである。なお、微生
物の同定を行うため実施の形態3の試料系としては、例
えば混合微生物を固体培地上で培養しその中の単一コロ
ニーから釣菌した試料などの単一微生物系を想定してい
る。
【0068】以上説明したように、濃度すなわち微生物
数と、光路長が一定であれば微生物の種類によって偏波
面の回転角度は一定の値をもつようになる。実施の形態
3においては微生物数は光の散乱強度を検出することで
測定し、光路長を一定長に固定することで、微生物の種
類ごとに偏波面の角度の初期値からの変化量を微生物数
で割ることにより、各微生物に特有な単位微生物数あた
りの偏波面の回転角度を算出することができる。このよ
うにして算出した各種類の微生物の単位微生物数あたり
の偏波面の回転角について予めメモリ10に記憶してお
き、これと測定した単位微生物数あたりの偏波面の回転
角度とを比較することで、泳動された微生物の種類を同
定することができるものである。微生物数の測定と同定
が終了した後は、実施の形態1と同様にして洗浄が行わ
れ測定動作が終了する。
【0069】このように本実施の形態では微生物の数を
測定すると同時にその種類を知ることができ、簡易な構
造でありながら、測定感度が高く、また自動測定も可能
でメンテナンスフリーの微生物数測定装置を提供するこ
とができる。
【0070】
【発明の効果】本発明によれば、薬剤や特別な装置を必
要とすることなく、簡易で高感度な測定ができ、自動測
定が可能でメンテナンスフリーの微生物数測定装置を提
供することができる。また、微生物数の測定のほか、単
一微生物系であれば微生物の種類を同定できるものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における微生物数測定装
置の全体構成図
【図2】本発明の実施の形態1における電界集中部近傍
の詳細説明図
【図3】微生物数測定時に観察される散乱光強度の時間
変化の説明図
【図4】本発明の実施の形態2における微生物数測定装
置の全体構成図
【図5】本発明の実施の形態2における電界集中部近傍
の詳細説明図
【図6】本発明の実施の形態2における電界集中部への
微生物の移動状態を説明するための図
【図7】本発明の実施の形態3における微生物数測定装
置の全体構成図
【図8】本発明の実施の形態3における電界集中部近傍
の詳細説明図
【符号の説明】
1 セル 2 電磁弁 3 電極 4 電源回路 5,6,41,42 光ファイバ 7 光源 8 受光器 9 測定回路 10 メモリ 11 制御手段 12 試料系配管 21 電極底部 22 針状突起 23 ギャップ 30,44 光束の広がる範囲 31,45 受光範囲 43 ギャップ 46 微生物

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】微生物含有の液体を導入することができ、
    内部に複数の電極と、該電極間に形成される電界を集中
    するための電界集中部が設けられたセルと、前記セル中
    に前記電界を形成するための交流電圧を前記電極に印加
    する電源回路と、前記電源回路を制御するための制御手
    段と、前記電界集中部を充たした液体に光を入射する入
    射部を有すとともに、前記液体中の微生物により散乱さ
    れた光を検出する受光部を有した測定部を備え、前記制
    御手段が前記電源回路により前記電界を形成して微生物
    を誘電泳動させ、前記測定部は前記受光部が検出した光
    の散乱強度に基づいて微生物数を算出することを特徴と
    する微生物数測定装置。
  2. 【請求項2】前記入射部と前記受光部の少なくともいず
    れかが光ファイバを備えたことを特徴とする請求項1記
    載の微生物測定装置。
  3. 【請求項3】前記光ファイバから液体中に入射された光
    の光束の広がる範囲内に前記電極の端部が配置されたこ
    とを特徴とする請求項1または2に記載の微生物数測定
    装置。
  4. 【請求項4】前記光ファイバの切断面及び側面が絶縁性
    の有機高分子でコーティングされていることを特徴とす
    る請求項2または3に記載の微生物数測定装置。
  5. 【請求項5】前記光ファイバのコア及びクラッドが有機
    高分子で構成されていることを特徴とする請求項2〜4
    のいずれかに記載の微生物数測定装置。
  6. 【請求項6】前記入射部と前記受光部のいずれもが光フ
    ァイバを備え、前記光ファイバのクラッド外周には導電
    性の薄膜がコーティングされて電極が形成されているこ
    とを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の微生物
    測定装置。
  7. 【請求項7】微生物含有の液体を導入することができ、
    内部に複数の電極と、該電極間に形成される電界を集中
    するための電界集中部が設けられたセルと、前記セル中
    に前記電界を形成するための交流電圧を前記電極に印加
    する電源回路と、前記電源回路を制御するための制御手
    段と、前記電界集中部の液体に光を入射する入射部と前
    記液体中の微生物により散乱された光を検出する受光部
    を有すとともに、前記光のうち散乱されずにそのまま透
    過した光の偏波面の回転を検出する偏波面検出部を有し
    た測定部を備え、前記制御手段が前記電源回路により前
    記電界を形成して微生物を誘電泳動させ、前記測定部は
    前記受光部が検出した光の散乱強度に基づいて微生物数
    を算出を行い、前記偏波面の回転量により微生物の同定
    を行うことを特徴とする微生物数測定装置。
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