JPH11256062A - 気化性色素、その製造方法及び当該気化性色素を用いた記録方法 - Google Patents

気化性色素、その製造方法及び当該気化性色素を用いた記録方法

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JPH11256062A
JPH11256062A JP5519198A JP5519198A JPH11256062A JP H11256062 A JPH11256062 A JP H11256062A JP 5519198 A JP5519198 A JP 5519198A JP 5519198 A JP5519198 A JP 5519198A JP H11256062 A JPH11256062 A JP H11256062A
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vaporizable
less
ppm
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JP5519198A
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Yukichi Murata
勇吉 村田
Isao Uchiyama
功 内山
Osamu Kawashima
修 川嶋
Masato Niihara
正人 新原
Toshiyuki Koyama
敏之 小山
Masaya Fujisue
昌也 藤末
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Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C09DYES; PAINTS; POLISHES; NATURAL RESINS; ADHESIVES; COMPOSITIONS NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; APPLICATIONS OF MATERIALS NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • C09BORGANIC DYES OR CLOSELY-RELATED COMPOUNDS FOR PRODUCING DYES, e.g. PIGMENTS; MORDANTS; LAKES
    • C09B1/00Dyes with anthracene nucleus not condensed with any other ring
    • C09B1/16Amino-anthraquinones
    • C09B1/20Preparation from starting materials already containing the anthracene nucleus
    • C09B1/26Dyes with amino groups substituted by hydrocarbon radicals
    • C09B1/28Dyes with amino groups substituted by hydrocarbon radicals substituted by alkyl, aralkyl or cyclo alkyl groups
    • C09B1/285Dyes with no other substituents than the amino groups

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Abstract

(57)【要約】 【目的】色素気化型熱記録方式に適用した場合、良好な
記録を行うことができる色素及びその製造方法を提供す
る。 【構成】気化性色素の、(i)第4周期遷移金属であるチ
タン、クロム、鉄、ニッケル、銅及び亜鉛の含有量の合
計を16ppm以下とするか、あるいは(ii)アルカリ金
属あるいはアルカリ土類金属におけるナトリウム、カリ
ウム、マグネシウム、カリウム及びバリウムの含有量を
合計で32ppm以下とするか、あるいは(iii)上記第
4周期遷移金属のうち、特にクロム、鉄、ニッケル、銅
及び亜鉛の含有量の合計を10ppm以下で、かつ、ア
ルカリ金属及びアルカリ土類金属におけるナトリウム、
カリウム及びカルシウムの含有量の合計を10ppm以
下とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、気化性色素、その
製造方法及び気化性色素を使用する色素気化型熱記録方
法(画像情報に応じた選択的加熱により、熱記録ヘッド
から色素を気化により飛翔せしめ、対向する印画紙に記
録する画像記録方法)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年ハードコピーのカラー化に対するニ
ーズが急速に高まっており、電子写真、インクジェッ
ト、溶融型感熱転写、色素熱転写(昇華型感熱転写)など
の記録技術が検討されている。これらの記録技術の中
で、色素熱転写記録方式は適当なバインダ樹脂中に、熱
転写性色素を高濃度に分散させたインク層が塗布され
た、インクリボンあるいはインクシートと、熱転写され
る色素を受容する色素染着性樹脂が塗布された印画紙と
を重ね合わせ、インクシートの色素が塗布された背面か
ら、サーマルヘッドで、画像情報に応じた熱を加え、そ
の熱量に応じて色素の転写量を制御して、階調性の画像
を記録する方式である。上記の操作を減色混合の三原
色、即ち、イエロー、マゼンタ、シアンに分解された画
像信号について、それぞれ繰り返すことによって、連続
的な階調を持つフルカラー画像を得ることができる。こ
の方式は銀塩カラー写真並の高品位の画像が得られ、装
置の小型化、保守が容易であることが特徴である。しか
し、この方式はインクシートの使い捨てに起因する多量
の廃棄物の発生と、高いランニングコストが大きな欠点
であり、その普及が妨げられている。溶融型感熱転写記
録方式もインクリボンあるいはインクシートを使用する
ため、同様の欠点を有する。
【0003】一方インクジェット記録方式は、画像情報
に応じて、静電吸引方式、振動発生方式(ピエゾ方式)、
サーマル方式(バブルジェット方式)などの方法で、記録
液の小滴を記録ヘッドに設けられたノズルから飛翔さ
せ、印画紙に付着せしめ記録を行うものである。従っ
て、インクシートを使用する場合のように廃棄物の発生
が殆ど無く、ランニングコストも低いため、簡易にカラ
ー画像を出力する技術として普及が拡大している。しか
し、インクジェット方式は、画素内の濃度階調が原理的
に困難であり、色素熱転写記録方式で得られるような高
品位のカラー画像を短時間で再現することは困難であ
る。即ち、従来のインクジェット方式は、インクの1液
滴が一定濃度の1画素を形成するので、原理的に画素内
階調が困難である。ディザ法による疑似階調の表現が試
みられているが、色素熱転写記録方式に比べると画質が
劣り、記録時間も著しく低下する。
【0004】電子写真方式はランニングコストが低く、
記録速度も速いが、装置の小型化が難しく、装置コスト
も高いのが欠点である。上記のように、画質、ランニン
グコスト、装置コスト、記録速度などの要求を全て満足
する記録技術は現在存在しない。これらの問題点を解決
する新たな熱記録方法(色素気化型熱記録方法)が提案さ
れている(特開昭52−36033、特開昭54−71
636、特開昭54−71637、特開昭59−227
59、特開昭62−162593、特開昭62−183
392、特開昭62−220388号公報等参照)。即
ち、これらの方法は気化性(昇華性)色素、あるいは気化
性色素を含む記録液(インク組成物)を、直接加熱するこ
とにより色素を気化(昇華)させ、気化した色素を飛翔さ
せて印画紙に導き記録を行う方法である。この熱記録方
式では加熱手段への記録エネルギーに応じて、色素の気
化量を制御することができるため、濃度階調が可能とな
り、インクシートを使用する従来の色素熱転写記録方式
と同様の高画質のカラー記録が可能となり、しかもイン
クシートを使用しないので、インクジェット方式と同様
の低ランニングコストが実現できる。
【0005】なお、本明細書において、気化性色素ある
いは色素気化型熱記録という場合の“気化"とは、固体
又は液体状態の色素の少なくとも一部を気化させるこ
と、具体的には色素の少なくとも一部を、固体状態か
ら、直接昇華させることあるいは液化させた後に気化さ
せる擬昇華を含むものである。しかし、これらの方法で
は色素を直接加熱して気化させるために、色素に対する
熱のストレスが非常に大きく、従来の色素では記録中に
熱分解が生じ、安定した記録を実施することが困難であ
った。従って、色素の耐熱性の向上が重要な課題であ
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
の新熱記録方式用の色素として優れた熱安定性を有す
る、高度に精製された色素、その製造方法及び当該色素
を使用する上記新熱記録方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本願第1の発明は、
(i)第4周期遷移金属であるチタン、クロム、鉄、ニ
ッケル、銅及び亜鉛の含有量の合計が、16ppm以下
であるか、(ii)アルカリ金属あるいはアルカリ土類
金属における、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、
カルシウム及びバリウムの含有量の合計が、32ppm
以下であるか、あるいは(iii)第4周期遷移金属で
あるクロム、鉄、ニッケル、銅及び亜鉛の含有量の合計
が10ppm以下で、かつ、アルカリ金属、アルカリ土
類金属におけるナトリウム、カリウム及びカルシウムの
含有量の合計が10ppm以下であることを特徴とする
気化性色素に存する。
【0008】また本願第2の発明は、気化性色素であっ
て、メチン系色素、アントラキノン系色素、アゾメチン
系色素、アゾ系色素、キノフタロン系色素、クマリン系
色素、ペリノン系色素、キサンテン系色素、チオキサン
テン系色素、アザチオキサンテン系色素、オキサジン系
色素、及びチアジン系色素からなる群から選ばれる色素
を気化精製してなることを特徴とする気化性色素の製造
方法に存する。
【0009】また、本願第3の発明は、得られた気化性
色素を使用する色素気化型熱記録方法に存する。
【0010】
【発明の実施の形態】インクリボンあるいはインクシー
トを用いる従来型の色素熱転写記録方式では、色素は気
化と熱拡散の両方のメカニズムで印画紙に熱転写される
為、色素に対する熱ストレスはそれほど大きくなく、色
素に対する熱安定性の要求水準もそれほど高くない。そ
の為、使用する色素は、通常の方法で合成された色素を
そのまま使用するか、または汎用の精製溶媒を用いた熱
懸濁精製法で精製後使用されていた。
【0011】しかしながら、色素気化型熱記録方法で
は、色素を直接加熱して気化させるために、色素に対す
る熱のストレスが非常に大きく、従来の色素を用いたの
では記録中に熱分解が生じ、安定した記録を実施するこ
とが困難であり、色素の耐熱性の向上が重要な課題であ
る。色素合成から熱転写記録に用いられるまでには、取
り扱いの過程(合成時、輸送時、貯蔵時、記録環境)で、
ごく微量でも記録特性に多大な影響を及ぼす元素が混入
してくる。そして本発明者らは、気化性色素の性能に対
して、厳密に色素の混入元素を管理する必要があること
に注目した。
【0012】本発明者らは、色素中の金属の含有量と色
素の熱安定性との関係について鋭意検討した結果、前記
した特定の種類の金属の含有量を特定濃度にすることに
よって優れた熱安定性を示すことを見出したものであ
る。第4周期遷移金属であるチタン、クロム、鉄、ニッ
ケル、銅及び亜鉛は次のようにして気化性色素に混入し
てしまう。
【0013】即ち、クロム及びチタンは、色素合成原
料、合成時に使用される溶媒、助剤、濾材あるいはSUS
製反応器等の反応器材料等の色素合成過程のほか、保存
環境下での建材や塗料などから、また、輸送や搬送に伴
う梱包容器や配管から、色素に混入し、例えば、後述す
る比較例にも示されるように、6000ppb以上もの
量で混入してしまう。
【0014】亜鉛は、色素合成原料、合成時に使用され
る溶媒、助剤あるいは、反応器材料のほか、保存環境下
での建材や塗料、輸送に伴う配管や搬送に伴う貯蔵容器
などから色素に混入し、例えば、後述する比較例にも示
されるように、900ppb以上もの量で混入してしま
う。鉄及び銅は、色素合成原料、合成時に使用される溶
媒、助剤、触媒あるいはステンレス製反応器、軟鋼製反
応器等の反応器材料等の色素合成過程のほか、水、窒素
等の各種ユーティリティー、保存環境下での建材や塗
料、輸送に伴う配管や貯蔵容器などから、色素に混入
し、例えば、後述する比較例にも示されるように、15
ppm以上もの量で混入してしまう。
【0015】ニッケルは、色素合成原料、合成時に使用
される溶媒、助剤、あるいはSUS製反応器等の反応器材
料等の色素合成過程のほか、輸送に伴う配管から、色素
に混入し、例えば、後述する比較例にも示されるよう
に、200ppb以上もの量で混入してしまう。また、
アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属におけるナトリ
ウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム及びバリウ
ムは次のようにして気化性色素に混入してしまう。
【0016】ナトリウム及びカルシウムは、色素合成原
料、合成時に使用される溶媒、助剤、あるいはガラス製
反応器等の反応器材料等の色素合成過程のほか、大気中
あるいは手作業中の混入、水、窒素等の各種ユーティリ
ティーなどから、また、梱包容器などから、色素に混入
し、例えば、後述する比較例にも示されるように、50
ppm以上もの量で混入してしまう。
【0017】マグネシウムは、色素合成原料、合成時に
使用される溶媒、助剤、触媒担体、濾材等の色素合成過
程のほか、保存環境下での建材や塗料などから、大気
中、梱包容器などから、色素に混入し、例えば、後述す
る比較例にも示されるように、3000ppb以上もの
量で混入してしまう。カリウムは、色素合成原料、合成
時に使用される溶媒、助剤等の色素合成過程のほか、保
存環境下での建材や塗料などから、また、大気中から色
素に混入し、例えば、後述する比較例にも示されるよう
に、1000ppb以上もの量で混入してしまう。
【0018】バリウムは、色素合成原料、合成時に使用
される溶媒、助剤等の色素合成過程のほか、大気中ある
いは手作業中の混入、水、窒素等の各種ユーティリィー
などから、色素に混入し、例えば、後述する比較例にも
示されるように、100ppb以上もの量で混入してし
まう。本発明の気化性色素においては、(i)第4周期
遷移金属であるチタン、クロム、鉄、ニッケル、銅及び
亜鉛の含有量の合計を16ppm以下、好ましくは2p
pm以下とする、あるいは(ii)アルカリ金属あるい
はアルカリ土類金属におけるナトリウム、カリウム、マ
グネシウム、カルシウム及びバリウムの含有量を合計で
32ppm以下、好ましくは1ppm以下とする、ある
いは(iii)上記第4周期遷移金属のうち、特にクロ
ム、鉄、ニッケル、銅及び亜鉛の含有量の合計を10p
pm以下で、かつ、アルカリ金属及びアルカリ土類金属
におけるナトリウム、カリウム及びカルシウムの含有量
の合計を10ppm以下とすることによって熱安定性の
優れた高性能の気化性色素が得られる。
【0019】即ち、「特定の第4周期遷移金属」又は「アル
カリ金属あるいはアルカリ土類金属」を厳しく規制する
か、これらの双方のうち特定の元素を組合せて規制すれ
ば高性能の気化性色素が得られることを見出したもので
ある。中でも、第4周期遷移金属のうち、クロムとチタ
ンの含有量の合計が5000ppb以下、中でも100
0ppb以下、特に100ppb以下、ニッケルの含有
量が100ppb以下、中でも50ppb以下、特に1
0ppb以下、鉄及び銅の含有量の合計が10ppm以
下、中でも1ppm以下、亜鉛の含有量が500ppb
以下、中でも400ppb以下であることが好ましい。
【0020】また、アルカリ金属及びアルカリ土類金属
のうち、カリウムの含有量が100ppb以下、中でも
50ppb以下、ナトリウム及びカルシウムの含有量の
合計が30ppm以下、中でも10ppm以下、その中
で、1ppm以下、特に0.5ppm以下、マグネシウ
ムの含有量が2000ppb以下、中でも500ppb
以下、特に100ppb以下、バリウムの含有量が90
ppb以下、中でも50ppb以下であることが好まし
い。
【0021】上記の金属含有量の制御された気化性色素
は、通常の方法で合成された色素に対して溶媒を利用し
た再結晶法、再沈殿法、カラムクロマトグラフィー及び
気化精製法などの高度な精製法を適用するとともにかつ
精製条件、例えば、温度条件、圧力条件、雰囲気、溶媒
の種類・組成、色素濃度、加熱及び冷却速度、攪拌条
件、カラム充填材の種類、通液条件等を注意深く吟味
し、選択することによって初めて製造することができ
る。
【0022】従って、精製に当たって、精製溶媒を使用
する場合の溶媒中に含まれる前記各金属の含有量は、各
金属について、好ましくは1ppm以下であり、より好
ましくは0.1ppm以下である。また、使用する装置
は、使用前に上記高純度精製溶媒で十分に洗浄しておく
ことが好ましい。気化精製法は、固体または液体状態の
色素を気化させた後に固化又は液化させることによって
精製する方法であって、具体的には、色素を固体状態か
ら直接気化させ次に気体状態から直接固化させる昇華精
製法、色素を液化させた後で気化させ次に気体状態から
直接固化させる擬昇華精製法を含むが、色素を液化させ
た後で気化させ次に気体状態から一旦液化させた後で固
化させてもかまわない。また、色素を溶媒に溶解させた
色素溶液を気化させ、次に液化させた後、溶媒を除去し
てもかまわない。以下、これらを総称して気化精製とい
う。
【0023】上記の高度な精製法の中で、カラムクロマ
トグラフィー、気化精製法などが特に効果的である。特
に、気化精製法は溶媒を使用しなくても実施できるので
有利である。気化精製は高温での加熱下に実施される
が、加熱温度としては色素の気化温度以上で分解温度以
下に抑えて実施する必要がある。加熱温度は色素の気化
温度よりも通常、5〜100℃高く、好ましくは10〜
70℃高くし、分解温度よりも通常、5〜200℃低
く、好ましくは20〜200℃低くする。また、色素の
分解を防ぎ加熱温度を低くするため及び色素の気化速度
を促進するために、減圧下で実施するのが有効である。
通常、圧力条件としては0.0001〜500torr、好
ましくは0.001〜50torr、特に好ましくは0.0
1〜20torrである。また、必要によりキャリアーガス
を用いてもよく、このガスとしては、色素と反応性を有
さない窒素、アルゴン、ヘリウム等を流通させることも
できる。更に後述するように、色素の熱分解抑制剤の存
在下で精製することが有効である。
【0024】気化精製法の中で、昇華精製及び擬昇華精
製の場合は固化した精製色素が直接得られるので、プロ
セスが複雑にならず工業的に有利である。図1は、色素
の昇華精製及び擬昇華精製において、一例として用いら
れるゴールドファーネス電気炉を有する自動加熱装置の
要部構造を示す断面図である。1はゴールドファーネス
電気炉、2はアルミナ繊維、3は原料色素を収容する試験
管、4はグーチロート、5は石英管、6は原料色素、7は昇
華精製色素、8及び8′は熱電対位置を表す。
【0025】工業的な気化精製プロセスにおいては、精
製すべき気化性色素を収容した容器を加熱ヒータ等で加
熱し、色素の気化温度以上、好ましくは10℃以上高い
温度迄の温度で、かつ熱分解温度以下の温度で色素を気
化させる。気化された色素ガスは冷却ドラム等の冷却表
面に誘導するなどして冷却され、精製色素(固体)として
付着させた後、スクレイパー等で掻き取ることにより精
製色素を回収する。
【0026】本発明の気化性色素原料としては、メチン
系色素、アゾメチン系色素、アゾ系色素、キノフタロン
系色素、クマリン系色素、アントラキノン系色素、及び
縮合多環系色素が挙げられる。これらの色素は良好な気
化性を有するために、非イオン性の構造であることが望
ましい。色素気化型熱記録に用いる色素としては通常、
気化する温度として常圧で400℃以下、好ましくは3
00℃以下、更に好ましくは100〜300℃を有す
る。
【0027】メチン系色素としては下記一般構造式(I)
で表される色素が挙げられる。
【0028】
【化1】
【0029】ここで、X1及びY1はX1(Y1)CH2 で表される
活性メチレン化合物の残基を表し、X1及びY1は、それぞ
れ、シアノ基、−COZ2または−SO2Z3(Z2及びZ3として
は、それぞれ、−R1、−OR2 、−NR3R4 、または5〜6員
環のヘテロ環基を表し、R1〜R4は、それぞれ、水素原
子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非
置換のアリール基、5〜6員環のヘテロ環基、または5〜6
員環のシクロアルキル基を表す。)を表すか、またはX1
とY1とが一緒になって5〜6員環の炭素環もしくはヘテロ
環を形成してもよく、これらの環は他の環と縮合してい
てもよい。具体的には下記一般式(II)〜(VII)のものが
挙げられる。
【0030】
【化2】
【0031】
【化3】
【0032】
【化4】
【0033】
【化5】
【0034】
【化6】
【0035】
【化7】
【0036】(式中、R5〜R21 は、それぞれ水素原子、
置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換
のアリール基、シアノ基、、−COZ4、−SO2Z5 、−NR22
R23 、−OR24、−NR25COZ6、−NR26SO2Z7 、ニトロ基、
又は、ハロゲン原子を表し、Z4〜Z7は、それぞれ、−R
27 、−OR28、−NR29R30 、または5〜6員環のヘテロ環
基を表し、R22 〜R30 は、それぞれ、水素原子、置換も
しくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリ
ール基、5〜6員環のヘテロ環基、または5〜6員環のシク
ロアルキル基を表す。) Zは水素原子はシアノ基を表し、A1は、ベンゼン環或い
は、チアゾール環、キノリン環、ピリジン環、チオフェ
ン環、イミダゾール環等のヘテロ環を表し、これらは、
−NR31R32(R31 及びR32 は、それぞれ、水素原子、置換
もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のア
リール基、−COZ12 、または−SO2Z13(Z 12及びZ13 はそ
れぞれ−R42 、−OR43、−NR44R45 或いは5〜6員環のヘ
テロ環基(R42〜R45 は水素原子、置換又は非置換のアリ
ール基、5〜6員環のヘテロ環基或いは5〜6員環のシクロ
アルキル基を表す。)を表す。)を示す。)、置換又は非
置換のアルキル基、置換又は非置換のアルコキシ基或い
はハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0037】メチン系色素の具体例を第1表の1a〜1jに
示す。アゾメチン系色素としては下記一般式構造(VIII)
で表される色素が挙げられる。
【0038】
【化8】
【0039】ここで、X2及びY2はX2(Y2)CH2 で表される
活性メチレン化合物の残基であって、それぞれ前記X1
びY1と同様に定義され、A2は前記A1と同様に定義され
る。アゾメチン系色素の具体例を第1表の2a〜2jに示
す。アゾ系色素としては下記一般構造式(IX)で表される
色素が挙げられる。
【0040】
【化9】
【0041】ここで、A3はA3−NH2 で表されるジアゾ成
分の残基を表し、任意の置換基を有していても良いベン
ゼン環、あるいは、ヘテロ環である。A3で表されるヘテ
ロ環の例としては、チアゾール、イソチアゾール、イミ
ダゾール、ピラゾール、トリアゾール、1,2,4−チアジ
アゾール、1,3,4−チアジアゾール、ベンゾチアゾー
ル、ベンゾイソチアゾールまたはチオフェン等の環が挙
げられる。A3で表されるベンゼン環またはヘテロ環の置
換基としては、置換もしくは非置換のアルキル基、置換
もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換のア
ルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、−CO
Z8、−SO2Z9 、−NR33R34 、−NR35COZ10 、−NR36SO2Z
11または−SR41が挙げられ、Z8〜Z11 は、それぞれ、−
R37 、−OR38、−NR39R40 或いは5〜6員環のヘテロ環を
表し、R33 〜R41 は、それぞれ、水素原子、置換もしく
は非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアリール
基、5〜6員環のヘテロ環基、または5〜6員環のシクロア
ルキル基を表す。
【0042】また、BはB−Hで表されるカップリング成
分の残基を表し、任意の置換基を有していても良いベン
ゼン環、ヘテロ環、あるいは活性メチレン化合物の残基
である。Bで表されるヘテロ環の例としては、チアゾー
ル、キノリン、ピリジン、チオフェン、またはイミダゾ
ール等の環が挙げられる。Bで表されるベンゼン環また
はヘテロ環の置換基としては、前記A1の置換基と同様の
ものが挙げられる。
【0043】アゾ系色素の具体例を第1表の3a〜3jに示
す。キノフタロン系色素(4a〜4b)、クマリン系色素(5a
〜5b)、アントラキノン系色素(6a〜6k)及びその他の縮
合多環系色素(7a〜7j)の具体例をそれぞれ第1表に示
す。これらの色素の内で、メチン系色素、アントラキノ
ン系色素などは耐熱性が優れており、気化性が良好であ
るので本発明の目的に特に適している。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
【表5】
【0049】
【表6】
【0050】
【表7】
【0051】
【表8】
【0052】また、気化精製にあたって使用される色素
の熱分解抑制剤としては、色素物性に影響を与えない限
り制限はなく、酸化防止剤、光安定剤、ゴムの老化防止
剤等から選ぶことが出来る。特に、本発明に係わる色素
の熱分解抑制に有効な物質は、酸化防止剤としては、そ
れぞれ第2表、第3表及び第4表に示したフェノール系化
合物、リン酸系化合物、硫黄系化合物等が挙げられる。
その他の酸化防止剤としては、ビタミンC、ビタミンE等
の天然の酸化防止剤や食品衛生法により食品への添加が
許されている合成酸化防止剤であるジブチルオキシトル
エン、ブチルオキシアニソール、プロトカテチュ酸エチ
ル、没食子酸イソアミル、没食子酸プロピル、グアヤク
脂、ノルジヒドログアイアレチン酸等が挙げられる。光
安定剤として知られている化合物としては、第5表に示
したヒンダードアミン系化合物が挙げられる。またゴム
用老化防止剤として知られている化合物としては、第6
表に示されるジフェニルアミン系化合物その他が挙げら
れる。
【0053】
【表9】
【0054】
【表10】
【0055】
【表11】
【0056】
【表12】
【0057】
【表13】
【0058】
【表14】
【0059】
【表15】
【0060】
【表16】
【0061】
【表17】
【0062】
【表18】
【0063】
【表19】
【0064】特にヒンダードフェノール系化合物、ヒン
ダードアミン系化合物、ジフェニルアミン系化合物等が
優れた抑制効果を示すので好ましい。また、安全面から
は、ビタミンC、ビタミンE等の天然の酸化防止剤や食品
衛生法により食品への添加が許されている合成酸化防止
剤であるジブチルオキシトルエン、ブチルオキシアニソ
ール、プロトカテチュ酸エチル、没食子酸イソアミル、
没食子酸プロピル、グアヤク脂、ノルジヒドログアイア
レチン酸等が望ましい。
【0065】色素に対する熱分解抑制剤の使用量として
は、0.1〜200重量%の範囲から選ばれるが、特
に、1〜100重量%が好ましい。熱分解抑制剤は1種に
限らず、2種以上を混合して用いることも出来る。色素
及び熱分解抑制剤は、気化精製の開始前に混合しておけ
ばよいが、気化精製中に必要に応じて熱分解抑制剤を分
割供給することもできる。また、色素と熱分解抑制剤の
両方あるいはどちらかを両者に対して反応性を有さない
溶媒に溶かした溶液としてから混合して適宜溶媒を除去
することによって調製することができる。
【0066】上記のようにして気化精製された色素は、
そのまま、或いは、場合によって高沸点の有機溶媒で、
数%〜90%程度、好ましくは、5%〜90%、更に好まし
くは5〜70%特に好ましくは5%〜15%程度に希釈し
て、色素気化型熱記録を行う前記新熱記録方式における
色素として好適に用いられる。混合効果を促進するため
に加熱した超音波処理することもできる。加熱温度は、
好ましくは30〜130℃、特に好ましくは50〜90
℃である。
【0067】本発明の気化性色素は色素気化型熱記録に
用いるにあたっても、上記特定の金属含有量に維持され
るようにすべきことはいうまでもない。即ち、上記した
インク組成物にする場合に用いられる有機溶媒及び装置
内において気化記録に供されるまでに色素が汚染される
ことなく前記特定の範囲内になるように維持することで
気化記録を工業的に有利に行うことができる。
【0068】本発明の色素は、色素気化型熱記録を行う
前記新熱記録方式における色素として好適に用いられ
る。即ち、該記録方式において極めて重要な物性である
熱安定性に優れており、良好な記録が行える特徴を有す
る。
【0069】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明する
が本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 比較例1 (色素の合成)1,4−ジヒドロキシアントラヒドロキノン
192g、2−エチルヘキシルアミン258g、イソプ
ロピルアルコール1572gを仕込み、80℃で4時間
攪拌した後、硫酸銅8gを加え、更に80℃で4時間攪
拌下、空気を吹込みながら反応させた。室温まで冷却
後、析出した結晶を濾過し、得られた結晶を7%塩酸水
1876g中に懸濁させ、70℃で1時間攪拌した。そ
の後、結晶をろ過、水で洗浄後乾燥し、第1表のNo.6kの
構造式で示される合成色素Aを309g得た。この合成
色素Aの純度は高速液体クロマトグラフィーでの分析の
結果99.7%であった。また、合成色素Aを湿式分解
後、ICP-AES(高周波誘導結合プラズマ原子発光分光計)
によって測定した結果、第4周期遷移金属については、
チタンの含有量は4ppm、クロムの含有量は2pp
m、鉄の含有量は8ppm、ニッケルの含有量は0.2
ppm、銅の含有量は10ppm、亜鉛の含有量は0.
9ppmであり、合計量は25.1ppmであった。ま
た、アルカリ金属、アルカリ土類金属については、ナト
リウムの含有量は20ppm、カリウムの含有量は1p
pm、マグネシウムの含有量は3ppm、カルシウムの
含有量は30ppm、バリウムの含有量は0.1ppm
であり、合計量は54.1ppmであった。また、合成
色素Aをトルエン(和光純薬工業社製、特級)に溶解した
後、超純水を加えてpKa値が3以下である酸由来のア
ニオンを水相に抽出し、イオンクロマトグラフィーによ
って測定した結果、塩素イオンの含有量は2.8mmo
l/kgであり、硫酸イオンの含有量は0.5mmol/
kgであり、その他のpKa値が3以下である酸由来の
アニオンは検出されなかった。 (色素の熱安定性試験)上記の方法で得た合成色素A0.
5gを内径2cm、長さ20cmのガラス製試験管の底
部に入れ、試料の上部にアルミナ繊維の薄膜を詰めた。
その試験管を前記気化性色素の気化精製に用いられる図
1のゴールドファーネス電気炉1を有する自動加熱装置
(株式会社サーモ理工製)の石英管5内に入れ、試験管の
出口にグーチロート4を被せ合成色素A(原料色素)6をセ
ットした。但し、熱安定性試験にあたっては、加熱条件
として石英管を油回転真空ポンプに接続し、排気をし、
0.1torrの減圧とし、後述する実施例3で採用した気
化精製温度200℃を40℃上回る240℃で3時間加
熱し、色素の熱分解挙動を調べる熱安定性試験を実施し
た。その結果、図1に示すように気化(擬昇華)、冷却さ
れた色素7が試験管3の出口部分の器壁に青色の結晶とし
て析出した。試験管3の出口付近の温度は30℃であっ
た。試験管の底部には、黒色の非気化性の残渣が残っ
た。試験管の出口部分に析出した色素の純度は、高速液
体クロマトグラフィーでの分析の結果97.0%であ
り、純度が2.7%低下した。試験管の底部に残った残
渣中には色素は全く残存しておらず、その量は0.00
24gであり、処理した色素の0.48%に相当した。 実施例1 (色素の精製)比較例1で得た合成色素A50gを50℃の
N,N−ジメチルホルムアミド(関東化学社製、特級)50
0mlに溶解し、室温で強く攪拌している脱塩水250
0ml中に2時間かけて滴下し、色素を析出させた。析
出した色素はろ過、脱塩水で洗浄後、乾燥し、再沈殿法
による精製色素Bを得た。得られた再沈殿法による精製
色素Bの純度は、99.7%であった。また、ICP-AESで
は検出限界以下であり検出されない金属があった為、精
製色素をクラス1000のクリーンルーム内に置かれた
赤外線加熱炉で乾式灰化後、半導体用の高純度な酸に加
熱溶解し超純水で定容した後、ICP-MS(高周波誘導結合
プラズマ質量分析計)によって測定した結果、第4周期遷
移金属について、チタンの含有量は200ppb、クロ
ムの含有量は200ppb、鉄の含有量は3000pp
b、ニッケルの含有量は200ppb、銅の含有量は5
000ppb、亜鉛の含有量は400ppbであり、合
計量は9000ppb(9ppm)であった。 (色素の熱安定性試験)得られた精製色素Bを使用し、他
は比較例1と同様の方法で色素の熱安定性試験を実施し
た。その結果、色素7が試験管3の出口部分の器壁に青色
の結晶として析出し、試験管の底部には、黒色の非気化
性の残渣が少量残った。試験管の出口部分に析出した色
素の純度は、97.9%であり、純度が1.8%低下し
た。試験管の底部に残った残渣中には色素は全く残存し
ておらず、その量は0.0007gであり、処理した色
素の0.14%に相当した。
【0070】上記の試験結果より、溶媒を用いた再沈殿
法により精製した、第4周期遷移金属であるチタン、ク
ロム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛の含有量の合計が16p
pm以下の気化性色素は、加熱後の残渣が少量となるこ
と、及び熱安定性の向上により加熱記録時の色素の分解
が抑制されることから、前記の新熱記録方式に適用した
場合、良好な記録ができる特性を有していることが明ら
かである。 実施例2 (色素の精製)比較例1で得た合成色素A20gをクロロホ
ルム(石津製薬社製、特級)600mlに溶解し、シリカ
ゲル(Daisogel IR60(ダイソー社製))600gを担体と
し、クロロホルム4000mlを溶出液としてカラムク
ロマトグラフィーによる精製を実施した結果、精製色素
C19.2gを回収した。この精製色素Cの純度は、9
9.8%であった。また、精製色素CをICP-MSによって測
定した結果、第4周期遷移金属について、チタンの含有
量は20ppb、クロムの含有量は50ppb、鉄の含
有量は400ppb、ニッケルの含有量は20ppb、
銅の含有量は200ppb、亜鉛の含有量は300pp
bであり、合計量は990ppb(0.99ppm)で
あった。また、アルカリ金属、アルカリ土類金属につい
ては、ナトリウムの含有量は200ppb、カリウムの
含有量は80ppb、マグネシウムの含有量は50pp
b、カルシウムの含有量は800ppbであり、合計量
は1130ppb(1.13ppm)であった。なお、
バリウムの含有量は検出限界(1ppb)以下であっ
た。 (色素の熱安定性試験)得られた精製色素Cを使用し、他
は比較例1と同様の方法で色素の熱安定性試験を実施し
た。その結果、色素7が試験管3の出口部分の器壁に青色
の結晶として析出し、試験管の底部には、黒色の非気化
性の残渣が少量残った。試験管の出口部分に析出した色
素の純度は、99.3%であり、純度が0.5%低下し
た。試験管の底部に残った残渣中には色素は全く残存し
ておらず、その量は0.0002gであり、処理した色
素の0.04%に相当した。
【0071】上記の試験結果より、カラムクロマトグラ
フィーにより精製した、色素中の第4周期遷移金属であ
るチタン、クロム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛の含有量の
合計が2ppm以下かつアルカリ金属、アルカリ土類金
属であるナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシ
ウム、バリウムの含有量の合計が32ppm以下の気化
性色素は、加熱後の残渣が少量となること、及び熱安定
性の向上により加熱記録時の色素の分解が抑制されるこ
とから、前記の新熱記録方式に適用した場合、良好な記
録ができる特性を有していることが明らかである。 実施例3 (色素の精製)実施例1で得た精製色素B5gを図1の装置
を用いて気化(擬昇華)精製処理した。但し、気化精製処
理の条件は、0.1torrの減圧下、200℃で3時
間加熱であった。試験管3の出口部分の器壁に青色の結
晶として気化精製色素D4.8gが得られた。得られた
気化精製色素Dの純度は99.7%であり、また、ICP-MS
によって測定した結果、第4周期遷移金属について、チ
タンの含有量は7ppb、クロムの含有量は4ppb、
鉄の含有量は100ppb、銅の含有量は50ppb、
亜鉛の含有量は300ppbであり、合計量は461p
pb(0.461ppm)であった。なお、ニッケルの
含有量は検出限界(9ppb)以下であった。また、ア
ルカリ金属、アルカリ土類金属については、ナトリウム
の含有量は60ppb、カリウムの含有量は20pp
b、マグネシウムの含有量は7ppb、カルシウムの含
有量は40ppbであり、合計量は127ppb(0.
127ppm)であった。なお、バリウムの含有量は検
出限界(1ppb)以下であった。また、イオンクロマ
トグラフィーによって測定した結果、塩素イオンの含有
量は0.03mmol/kgであり、硫酸イオン及びそ
の他のpKa値が3以下である酸由来のアニオンは検出
されなかった。 (色素の熱安定性試験)上記の方法で得た気化精製色素D
0.5gを使用し、他は比較例1と同様の方法で色素の
熱安定性試験を実施した。その結果、色素7が試験管3の
出口部分の器壁に青色の結晶として析出し、試験管の底
部には、黒色の非気化性の残渣が極少量残った。試験管
の出口部分に析出した色素の純度は、99.5%であ
り、純度が0.2%低下した。試験管の底部に残った残
渣中には色素は全く残存しておらず、その量は0.00
01g以下であり、処理した色素の0.02%以下に相
当した。
【0072】上記の試験結果より、気化精製により精製
した、色素中の第4周期遷移金属であるチタン、クロ
ム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛の含有量の合計が2ppm
以下かつアルカリ金属、アルカリ土類金属であるナトリ
ウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム
の含有量の合計が1ppm以下の気化性色素は、加熱後
の残渣が極めて少量となること、及び熱安定性の向上に
より加熱記録時の色素の分解が抑制されることから、前
記の新熱記録方式に適用した場合、極めて良好な記録が
できる特性を有していることが明らかである。 比較例2 (気化精製色素への金属添加実験) (色素の調製)実施例3で得られた気化精製色素D1gを
用い下記調製法により金属添加色素Eを調製した。
【0073】テトライソプロポキシチタン(Ti(O−
iC374)(関東化学社製、試薬特級)0.118
gを採取しイソプロピルアルコール(三菱化学社製、E
L用)100mlに溶解した後、10ml採取しイソプ
ロピルアルコールで100mlに定容して溶液Lを得
た。この溶液L中のチタンの濃度は20μg/mlであ
った。硝酸クロム(III)九水和物(Cr(NO33
9H2O)(関東化学社製、試薬特級)0.154g、
硝酸鉄(III)九水和物(Fe(NO33・9H2O)
(関東化学社製、試薬特級)0.144g、硝酸ニッケ
ル(II)六水和物(Ni(NO32・6H2O)(関東
化学社製、試薬特級)0.099g、硝酸銅(II)三水
和物(Cu(NO32・3H2O)(関東化学社製、試
薬特級)0.078g、硝酸亜鉛六水和物(Zn(NO
32・6H2O)(関東化学社製、試薬特級)0.09
38g、硝酸ナトリウム(NaNO3)(関東化学社
製、試薬特級)0.0568g、硝酸カリウム(KNO
3)(関東化学社製、試薬特級)0.0517g、硝酸
カルシウム四水和物(Ca(NO32・4H2O)(関
東化学社製、試薬特級)0.1176g、硝酸マグネシ
ウム六水和物(Mg(NO32・6H2O)(関東化学
社製、試薬特級)0.219g、硝酸バリウム(Ba
(NO32)(関東化学社製、試薬特級)0.038g
を採取し、超純水100mlに溶解定容した後、10m
lを採取し超純水100mlに定容して溶液Mを得た。
この溶液M中のクロム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ナト
リウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウ
ム濃度はそれぞれ2μg/mlであった。
【0074】気化精製色素D1gに溶液L1mlと溶液
M10mlを添加し、超音波洗浄機(シャープ(株)製
UT―104)を用い室温で30分間、超音波分散処
理し更にエバポレーター(柴田科学社製、ロータリーエ
バポレーター EL130)で70℃、40torrの
減圧下で水分を蒸発乾固させ金属添加色素Eを得た。得
られた金属添加色素Eの純度は99.7%であった。チ
タン、クロム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ナトリウム、
カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウムの添加
量は、それぞれ20ppmであり、金属添加色素E中の
第4周期遷移金属であるチタンの含有量は20.007
ppm、クロムの含有量は20.004ppm、鉄の含
有量は20.1ppm、ニッケルの含有量は20pp
m、銅の含有量は20.05ppm、亜鉛の含有量は2
0.3ppmであり、合計量は120.461ppmで
あった。また、アルカリ金属、アルカリ土類金属である
ナトリウムの含有量は20.06ppm、カリウムの含
有量は20.02ppm、マグネシウムの含有量は2
0.007ppm、カルシウムの含有量は20.04p
pm、バリウムの含有量は20ppmであり合計量は1
00.127ppmであった。 (色素の熱安定性試験)上記の方法で得た金属添加色素E
0.5gを使用し、比較例1と同様の方法で色素の熱安
定性の試験を実施した。但し、使用した装置は図2の色
素熱安定性評価装置を用い、比較例1より10℃低い2
30℃で5分間の加熱とした。即ち、原料色素18とし
て金属添加色素E0.5gを原料色素秤量箱12内で秤
量し、ゴールドファーネス電気炉11を有する自動加熱
装置の石英管15内におさめられたガラス容器13内に
設置した後、0.1torrの減圧下で230℃、5分
間加熱し、色素の熱分解挙動を調べる熱安定性試験を実
施した。(なお、図2中、17は熱電対位置を表す。)
その結果、加熱初期の気化(擬昇華)物がガラス管14
(気化色素冷却部)の部分の器壁に青色の結晶(気化成
分16)として析出した。気化析出した成分(色素)の
重量は0.0048gで、原料色素の0.96%に相当
した。析出した色素の純度は、高速液体クロマトグラフ
ィーでの分析の結果92.4%であり、純度が7.3%
低下した。 比較例3(気化精製色素への金属添加実験) (色素の調製)実施例3で得られた気化精製色素D1gを
用い下記調製法により金属添加色素Fを調製した。
【0075】硝酸クロム(III)九水和物(Cr(N
33・9H2O)(関東化学社製、試薬特級)0.1
54g、硝酸鉄(III)九水和物(Fe(NO33・9
2O)(関東化学社製、試薬特級)0.144g、硝
酸ニッケル(II)六水和物(Ni(NO32・6H
2O)(関東化学社製、試薬特級)0.099g、硝酸
銅(II)三水和物(Cu(NO32・3H2O)(関東
化学社製、試薬特級)0.078g、硝酸亜鉛六水和物
(Zn(NO32・6H2O)(関東化学社製、試薬特
級)0.0938g、硝酸ナトリウム(NaNO3
(関東化学社製、試薬特級)0.0568g、硝酸カリ
ウム(KNO3)(関東化学社製、試薬特級)0.05
17g、硝酸カルシウム四水和物(Ca(NO32・4
2O)(関東化学社製、試薬特級)0.1176gを
超純水100mlに溶解した溶液Oを作成した。この溶
液Oを10ml採取し超純水で100mlに定容し溶液
Pを得た。この溶液P中のクロム、鉄、ニッケル、銅、
亜鉛、ナトリウム、カリウム、カルシウムの濃度はそれ
ぞれ2μg/mlであった。
【0076】気化精製色素D1gに溶液P10mlを添
加し、超音波洗浄機(シャープ(株)製 UT―10
4)を用い室温で30分間、超音波分散処理し更にエバ
ポレーター(柴田科学社製、ロータリーエバポレーター
EL130)で70℃、40torrの減圧下で水分
を蒸発乾固させ金属添加色素Fを得た。得られた金属添
加色素Fの純度は99.7%であった。クロム、鉄、ニ
ッケル、銅、亜鉛、ナトリウム、カリウム、カルシウム
の添加量は、それぞれ20ppmであり、金属添加色素
F中の第4周期遷移金属であるチタンの含有量は0.0
07ppm、クロムの含有量は20.004ppm、鉄
の含有量は20.1ppm、ニッケルの含有量は20p
pm、銅の含有量は20.05ppm、亜鉛の含有量は
20.3ppmであり、合計量は100.461ppm
であった。また、アルカリ金属、アルカリ土類金属であ
るナトリウムの含有量は20.06ppm、カリウムの
含有量は20.02ppm、カルシウムの含有量は2
0.04ppm、マグネシウムの含有量は0.007p
pm、バリウムの含有量は検出限界(0.001pp
m)以下であり、合計量は60.127ppmであっ
た。 (色素の熱安定性試験)上記の方法で得た金属添加色素F
0.5gを使用し、比較例2と同様の方法で色素の熱安
定性の試験を実施した。その結果、加熱初期の気化(擬
昇華)物がガラス管14(気化色素冷却部)の部分の器
壁に青色の結晶(気化成分16)として析出した。気化
析出した成分(色素)の重量は0.0049gで、原料
色素の0.98%に相当した。析出した色素の純度は、
高速液体クロマトグラフィーでの分析の結果95.8%
であり、純度が3.9%低下した。 実施例4 (気化精製色素への金属添加実験) (色素の調製)実施例3で得られた気化精製色素D1gを
用い下記調製法により金属添加色素Gを調製した。
【0077】比較例3の溶液Oを1ml採取し超純水で
100mlに定容後、更に10mlを採取し100ml
に定容し溶液Qを得た。この溶液Q中のクロム、鉄、ニ
ッケル、銅、亜鉛、ナトリウム、カリウム、カルシウム
濃度はそれぞれ0.02μg/mlであった。気化精製
色素D1gに溶液Q10mlを添加し、超音波洗浄機
(シャープ(株)製 UT―104)を用い室温で30
分間、超音波分散処理し更にエバポレーター(柴田科学
社製、ロータリーエバポレーター EL130)で70
℃、40torrの減圧下で水分を蒸発乾固させ金属添
加色素Gを得た。
【0078】得られた金属添加色素Gの純度は99.7
%であった。クロム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ナトリ
ウム、カリウム、カルシウムの添加量は、それぞれ0.
2ppmであり、金属添加色素G中の第4周期遷移金属
であるチタンの含有量は0.007ppm、クロムの含
有量は0.204ppm、鉄の含有量は0.3ppm、
ニッケルの含有量は0.2ppm、銅の含有量は0.2
5ppm、亜鉛の含有量は0.5ppmであり、合計量
は1.461ppmであった。また、アルカリ金属、ア
ルカリ土類金属であるナトリウムの含有量は0.26p
pm、カリウムの含有量は0.22ppm、カルシウム
の含有量は0.24ppm、マグネシウムの含有量は
0.007ppm、バリウムの含有量は検出限界(0.
001ppm)以下であり、合計量は0.727ppm
であった。 (色素の熱安定性試験)上記の方法で得た金属添加色素G
0.5gを使用し、比較例2と同様の方法で色素の熱安
定性の試験を実施した。その結果、加熱初期の気化(擬
昇華)物がガラス管14(気化色素冷却部)の部分の器
壁に青色の結晶(気化成分16)として析出した。気化
析出した成分(色素)の重量は0.0035gで、原料
色素の0.7%に相当した。析出した色素の純度は、高
速液体クロマトグラフィーでの分析の結果98.1%で
あり、純度が1.6%低下した。
【0079】上記の試験結果より、色素中の第4周期遷
移金属であるチタン、クロム、鉄、ニッケル、銅及び亜
鉛の合計量が16ppm以下で、アルカリ金属あるいは
アルカリ土類金属におけるナトリウム、カリウム、マグ
ネシウム、カルシウム及びバリウムの含有量の合計が3
2ppm以下である気化性色素、並びに色素中の第4周
期遷移金属であるクロム、鉄、ニッケル、銅及び亜鉛の
合計量が10ppm以下で、アルカリ金属あるいはアル
カリ土類金属であるナトリウム、カリウム及びカルシウ
ムの含有量の合計が10ppm以下である気化性色素
は、熱安定性の向上により加熱記録時の色素の分解が抑
制されることから、前記の新熱記録方式に適用した場
合、良好な記録ができる特性を有していることが明らか
である。 実施例5 N,N−ジ(n)ブチルアニリン20gをN,N−ジメチルホル
ムアミド50ml中に仕込み、攪拌下にテトラシアノエ
チレン11.5gを添加し、室温下で3時間攪拌下、反
応した。析出した結晶を濾過し、メタノールで洗浄乾燥
し、下記構造式で示される色素(融点129℃)を25g
得た。
【0080】
【化10】
【0081】上記の方法で得た色素1gを内径2cm、
長さ20cmのガラス製試験管の底部に入れ、試料の上
部にアルミナ繊維の薄膜を詰めた。その試験管を図1に
示すように、ゴールドファーネス透明電気炉1を有する
自動加熱装置(株式会社サーモ理工製)の石英管5内に入
れ、試験管の出口にグーチロート4を被せ原料色素(試
料)6をセットした。石英管を油回転真空ポンプ及び油拡
散ポンプに接続し、排気をし、7×10-4torrの減圧と
し、170℃で3時間加熱し、気化精製を実施した。そ
の結果、図1に示すように気化精製された色素7が試験管
3の出口部分の器壁に赤色の結晶として析出した。試験
管3の出口付近の温度は30℃であった。試験管の底部
には、黒色の非気化性の残渣が少量残った。また、試験
管3の出口に付けたグーチロート4には、低温気化性成分
と目的の色素の混合体が薄く器壁に付着した。試験管の
出口部分に析出した色素の量は0.95gであり、純度
は高速液体クロマトグラフィーでの分析の結果99.9
%以上であった。試験管の底部に残った残渣は0.03
gであった。この残渣中には色素は全く残存していなか
った。また、グーチロートに付着した成分は0.02g
であり、この成分中に色素は85%含まれていた。
【0082】上記の方法で気化精製した色素1gを上記
と同様の方法で再気化精製を実施したところ、試験管の
底部に残渣は全く残らなかった。試験管の出口部分から
は0.99g、グーチロートの器壁からは0.01gの
色素が回収されたが、それぞれの純度は99.9%以上
であった。上記の方法で気化精製された純度99.9%
以上の色素及び未精製の色素(純度98.6%)をそれぞ
れ1μg、アルミニウム製容器(容量:40μl)に封入
し、示差走査熱量計セイコーDSC20(セイコーインスツル
メント(株)製)で、200℃で2時間加熱した後、色素の
分解率を調べた。その結果、精製色素は全く分解が無か
ったが、未精製の色素は6%の色素が分解していた。
【0083】上記の試験結果より、気化精製した色素は
加熱後の残渣を含有しないため、及び熱安定性の向上に
より加熱記録時の色素の分解が抑制されるため、前記の
新熱記録方式に適用した場合、良好な記録ができる特性
を有している。 実施例6 3−メチル−4−ホルミル−N,N−ジ(i)ブチルアニリン2
4.7g及びマロノニトリル6.9gをメタノール10
0ml中に仕込み、1N苛性ソーダ水溶液5mlを添加
し、室温下で5時間攪拌下、反応した。析出した結晶を
濾過し、メタノールで洗浄後乾燥し、下記構造式で示さ
れる色素(融点117℃)を26g得た。
【0084】
【化11】
【0085】上記の方法で得た色素1gを実施例5と同
様の方法で気化精製を実施した。但し加熱温度は150
℃とした。その結果、精製された色素が試験管の出口部
分の器壁に黄色の結晶として析出した。試験管の底部に
は、黒色の非気化性の残渣が少量残った。また、試験管
の出口に付けたグーチロートには、低温気化性成分と目
的の色素の混合体が薄く器壁に付着した。試験管の出口
部分に析出した色素の量は0.93gであり、純度は高
速液体クロマトグラフィーでの分析の結果99.9%以
上であった。試験管の底部に残った残渣は0.02gで
あり、この残渣中には色素は全く残存していなかった。
また、グーチロートに付着した成分は0.05gであ
り、この成分中に色素は90%含まれていた。
【0086】上記の方法で気化精製した色素1gを上記
と同様の方法で再気化精製を実施したところ、試験管の
底部に残渣は全く残らなかった。試験管の出口部分から
は0.98g、グーチロートの器壁からは0.02gの
色素が回収されたが、それぞれの純度は99.9%以上
であった。上記の方法で気化精製された純度99.9%
以上の色素及び未精製の色素(純度98.5%)をそれぞ
れ1μg、アルミニウム製容器(容量:40μl)に封入し、
示差走査熱量計セイコーDSC20(セイコーインスツルメン
ト(株)製)で、200℃で2時間加熱した後、色素の分解
率を調べた。その結果、精製色素は全く分解が無かった
が、未精製の色素は5%の色素が分解していた。
【0087】上記の試験結果より、気化精製した色素は
加熱後の残渣を含有しないため、及び熱安定性の向上に
より加熱記録時の色素の分解が抑制されるため、前記の
新熱記録方式に適用した場合、良好な記録ができる特性
を有している。 実施例7 1−イソブチルアミノ−4−ブロモアントラキノン7.2
g、アニリン56g、酢酸ソーダ3.3g及び硫酸銅
0.1gを仕込み、155〜160℃で1時間攪拌下、
反応した。室温まで冷却後、メタノール100ml及び
濃塩酸50mlを添加し、30分間攪拌後、析出した結
晶を濾過し、メタノール及び水で洗浄後乾燥し、下記構
造式で示される色素(融点130℃、分解温度362℃)
を5.5g得た。
【0088】
【化12】
【0089】上記の方法で得た色素1gを実施例5と同
様の方法で精製を実施した。但し加熱温度は180℃と
した。その結果、精製された色素が試験管の出口部分の
器壁に青色の結晶として析出した。試験管の底部には、
黒色の非気化性の残渣が少量残った。また、試験管の出
口に付けたグーチロートには、低温気化性成分と目的の
色素の混合体が薄く器壁に付着した。試験管の出口部分
に析出した色素の量は0.90gであり、純度は高速液
体クロマトグラフィーでの分析の結果99.9%以上で
あった。試験管の底部に残った残渣は0.09gであ
り、この残渣中には色素は全く残存していなかった。ま
た、グーチロートに付着した成分は0.01gであり、
この成分中に色素は50%含まれていた。
【0090】上記の方法で気化精製した色素1gを上記
と同様の方法で再気化精製を実施したところ、試験管の
底部に残渣は全く残らなかった。試験管の出口部分から
は0.99g、グーチロートの器壁からは0.01gの
色素が回収されたが、それぞれの純度は99.9%以上
であった。上記の方法で気化精製された純度99.9%
以上の色素及び未精製の色素(純度95.9%)をそれぞ
れ1μg、アルミニウム製容器(容量:40μl)に封入し、
示差走査熱量計セイコーDSC20(セイコーインスツルメン
ト(株)製)で、200℃で2時間加熱した後、色素の分解
率を調べた。その結果、精製色素は全く分解が無かった
が、未精製の色素は10%の色素が分解していた。
【0091】上記の試験結果より、気化精製した色素は
加熱後の残渣を含有しないため、及び熱安定性の向上に
より加熱記録時の色素の分解が抑制されるため、前記の
新熱記録方式に適用した場合、良好な記録ができる特性
を有している。 実施例8 2,6−ジ(t)ブチルフェノール2.6gをアセトン50m
l中に仕込み、この中にアンモニア水(28%品)25m
l及び水25mlを加え0℃に冷却した。この中に、2
−アミノ−5−(N,Nジエチルアミノ)トルエン塩酸塩2.
6gを水25mlに溶解した溶液と、過硫酸アンモニウ
ム4.6gを水25mlに溶解した溶液を反応温度を0
〜5℃に保ち同時に滴下した。同温度で2時間攪拌下、
反応した。析出した結晶を濾過し、メタノールで洗浄後
乾燥し、下記構造式で示される色素(融点141℃、分
解温度296℃)を2g得た。
【0092】
【化13】
【0093】上記の方法で得た色素1gを実施例5と同
様の方法で気化精製を実施した。但し加熱温度は150
℃とした。その結果、精製された色素が試験管の出口部
分の器壁に青色の結晶として析出した。試験管の底部に
は、黒色の非気化性の残渣が少量残った。また、試験管
の出口に付けたグーチロートには、低温気化性成分と目
的の色素の混合体が薄く器壁に付着した。試験管の出口
部分に析出した色素の量は0.94gであり、純度は高
速液体クロマトグラフィーでの分析の結果99.9%以
上であった。試験管の底部に残った残渣は0.04gで
あり、この残渣中には色素は全く残存していなかった。
また、グーチロートに付着した成分は0.02gであ
り、この成分中に色素は80%含まれていた。
【0094】上記の方法で気化精製した色素1gを上記
と同様の方法で再気化精製を実施したところ、試験管の
底部に残渣は全く残らなかった。試験管の出口部分から
は0.99g、グーチロートの器壁からは0.01gの
色素が回収されたが、それぞれの純度は99.9%以上
であった。上記の方法で気化精製された純度99.9%
以上の色素及び未精製の色素(純度98.3%)をそれぞ
れ1μg、アルミニウム製容器(容量:40μl)に封入し、
示差走査熱量計セイコーDSC20(セイコーインスツルメン
ト(株)製)で、180℃で2時間加熱した後、色素の分解
率を調べた。その結果、精製色素は全く分解が無かった
が、未精製の色素は8%の色素が分解していた。
【0095】上記の試験結果より、気化精製した色素は
加熱後の残渣を含有しないため、及び熱安定性の向上に
より加熱記録時の色素の分解が抑制されるため、前記の
新熱記録方式に適用した場合、良好な記録ができる特性
を有している。 実施例9 m−フルオロアニリン3.3g、水70ml及び濃塩酸
6.8mlを仕込み、0℃に冷却し、亜硝酸ソーダ2.
4gを水10mlに溶解した溶液を、反応温度を0〜5
℃にコントロールし、滴下した。同温度で2時間攪拌
し、ジアゾ化反応を実施した。一方、3−シアノ−4−メ
チル−6−ヒドロキシ−N−(i)ブチルピリドン−2を水2
00ml、酢酸ソーダ8g、苛性ソーダ3.6gからな
る水溶液に仕込み溶解した。この溶液に濃塩酸を約5m
l加え、溶解のpHを約5.5に調整して、0℃に冷却し
た。この液に先に調製したジアゾ液を0〜5℃の温度で
滴下した。この反応液に10%苛性ソーダ水溶液を滴下
し、pHを5.5付近に再調整した後、0〜5℃で1時間
攪拌下、反応した。反応後、析出した結晶を濾過し、水
及びメタノールで洗浄後、乾燥し、下記構造式で表され
る色素(融点182℃、分解温度297℃)を9.5g得
た。
【0096】
【化14】
【0097】上記の方法で得た色素1gを実施例5と同
様の方法で昇華精製を実施した。その結果、昇華精製さ
れた色素が試験管の出口部分の器壁に黄色の結晶として
析出した。試験管の底部には、黒色の非昇華性の残渣が
少量残った。また、試験管の出口に付けたグーチロート
には、低温昇華性成分と目的の色素の混合体が薄く器壁
に付着した。試験管の出口部分に析出した色素の量は
0.91gであり、純度は高速液体クロマトグラフィー
での分析の結果99.9%以上であった。試験管の底部
に残った残渣は0.08gであり、この残渣中には色素
は全く残存していなかった。また、グーチロートに付着
した成分は0.01gであり、この成分中に色素は80
%含まれていた。
【0098】上記の方法で昇華精製した色素1gを上記
と同様の方法で再昇華精製を実施したところ、試験管の
底部に残渣は全く残らなかった。試験管の出口部分から
は0.99g、グーチロートの器壁からは0.01gの
色素が回収されたが、それぞれの純度は99.9%以上
であった。上記の方法で昇華精製された純度99.9%
以上の色素及び未精製の色素(純度96.5%)をそれぞ
れ1μg、アルミニウム製容器(容量:40μl)に封入
し、示差走査熱量計セイコーDSC20(セイコーインスツル
メント(株)製)で、180℃で2時間加熱した後、色素の
分解率を調べた。その結果、精製色素は全く分解が無か
ったが、未精製の色素は6%の色素が分解していた。
【0099】上記の試験結果より、昇華精製した色素は
加熱後の残渣を含有しないため、及び熱安定性の向上に
より加熱記録時の色素の分解が抑制されるため、前記の
新熱記録方式に適用した場合、良好な記録ができる特性
を有している。 実施例10 表−1のNo.6kの色素(融点89℃、分解温度329℃)
0.5gとビタミンC0.05gを予め混合し、色素混
合物を調製した。この色素混合物を用いて実施例5と同
様の方法で気化精製を実施した。但し、実施例3、5及
び9より圧力の高い0.8torrの減圧、加熱温度は
200℃で、加熱時間は1時間とした。その結果、気化
された色素が試験管の出口部分の器壁に青色の結晶とし
て析出した。色素の純度は高速液体クロマトグラフィー
での分析の結果99.1%であり、精製前の純度99.
4%に対する純度低下は0.3%であった。
【0100】上記の方法で気化精製された純度99.1
%の色素を1μg、アルミニウム製容器(容量:40μl)に
封入し、示差走査熱量計セイコーDSC20(セイコーインス
ツルメント(株)製)で、200℃で2時間加熱した後、色
素の分解率を調べた。その結果、精製色素は全く分解が
無かった。また、ビタミンCを用いずに、他は同様に試
験した結果、昇華された色素の純度は高速液体クロマト
グラフィーでの分析の結果90.4%であり、精製前の
純度99.4%に対する純度低下は9.0%であった。
【0101】また、未精製の色素(純度99.4%)を1μ
g、アルミニウム製容器(容量:40μl)に封入し、示差
走査熱量計セイコーDSC20(セイコーインスツルメント
(株)製)で、200℃で2時間加熱した後、色素の分解率
を調べた結果、10%の色素が分解していた。上記の試
験結果より、ビタミンCの存在下で気化精製を実施する
ことにより、精製時の色素の熱分解を抑制することがで
き、また、精製した色素は熱安定性の向上により加熱記
録時の色素の分解が抑制されるため、前記の新熱記録方
式に適用した場合、良好な記録ができる特性を有してい
る。
【0102】
【発明の効果】本発明の色素は、色素気化型熱記録方式
による記録方法に適用した場合、工業的に有利に良好な
記録を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この図は、本発明の気化性色素を製造するにあ
たって気化精製法を用いる場合の一例として用いられる
ゴールドファーネス電気炉を有する自動加熱装置の要部
構造を示す断面図である。
【図2】この図は、本発明の比較例2、3及び実施例4に
おいて用いられた色素の熱安定性評価装置の要部構造を
示す断面図である。
【符号の説明】
1 ゴールドファーネス電気炉 2 アルミナ繊維 3 試験管 4 グーチロート 5 石英管 6 原料色素 7 昇華精製色素 8、8' 熱電対位置 11 ゴールドファーネス電気炉 12 原料色素秤量箱 13 ガラス容器 14 ガラス管(気化色素冷却部) 15 石英管 16 気化成分 17 熱電対位置 18 原料色素
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 新原 正人 福岡県北九州市八幡西区黒崎城石1番1号 三菱化学株式会社黒崎事業所内 (72)発明者 小山 敏之 福岡県北九州市八幡西区黒崎城石1番1号 三菱化学株式会社黒崎事業所内 (72)発明者 藤末 昌也 福岡県北九州市八幡西区黒崎城石1番1号 三菱化学株式会社黒崎事業所内

Claims (26)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第4周期遷移金属であるチタン、クロ
    ム、鉄、ニッケル、銅及び亜鉛の含有量の合計が16p
    pm以下であることを特徴とする気化性色素。
  2. 【請求項2】 クロムとチタンの含有量の合計が500
    0ppb以下である請求項1に記載の気化性色素。
  3. 【請求項3】 ニッケルの含有量が100ppb以下で
    ある請求項1に記載の気化性色素。
  4. 【請求項4】 鉄と銅の含有量の合計が10ppm以下
    である請求項1に記載の気化性色素。
  5. 【請求項5】 亜鉛の含有量が500ppb以下である
    請求項1に記載の気化性色素。
  6. 【請求項6】 第4周期遷移金属であるチタン、クロ
    ム、鉄、ニッケル、銅及び亜鉛の含有量の合計が2pp
    m以下である請求項1に記載の気化性色素。
  7. 【請求項7】 クロムとチタンの含有量の合計が100
    ppb以下である請求項6に記載の気化性色素。
  8. 【請求項8】 鉄と銅の含有量の合計が1ppm以下で
    ある請求項6に記載の気化性色素。
  9. 【請求項9】 アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属
    における、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カル
    シウム及びバリウムの含有量の合計が、32ppm以下
    であることを特徴とする気化性色素。
  10. 【請求項10】ナトリウムとカルシウムの含有量の合計
    が30ppm以下である請求項9に記載の気化性色素。
  11. 【請求項11】カリウムの含有量が100ppb以下で
    ある請求項9に記載の気化性色素。
  12. 【請求項12】マグネシウムの含有量が2000ppb
    以下である請求項9に記載の気化性色素。
  13. 【請求項13】バリウムの含有量が90ppb以下であ
    る請求項9に記載の気化性色素。
  14. 【請求項14】アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属
    における、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カル
    シウム及びバリウムの含有量の合計が、1ppm以下で
    ある請求項9に記載の気化性色素。
  15. 【請求項15】ナトリウムとカルシウムの含有量の合計
    が0.5ppm以下である請求項14に記載の気化性色
    素。
  16. 【請求項16】マグネシウムの含有量が100ppb以
    下である請求項14に記載の気化性色素。
  17. 【請求項17】バリウムの含有量が50ppb以下であ
    る請求項14に記載の気化性色素。
  18. 【請求項18】第4周期遷移金属であるクロム、鉄、ニ
    ッケル、銅及び亜鉛の含有量の合計が10ppm以下
    で、かつ、アルカリ金属及びアルカリ土類金属における
    ナトリウム、カリウム及びカルシウムの含有量の合計が
    10ppm以下であることを特徴とする気化性色素。
  19. 【請求項19】気化性色素が、メチン系色素、アントラ
    キノン系色素、アゾメチン系色素、アゾ系色素、キノフ
    タロン系色素、クマリン系色素、ペリノン系色素、キサ
    ンテン系色素、チオキサンテン系色素、アザチオキサン
    テン系色素、オキサジン系色素、及びチアジン系色素か
    らなる群から選ばれる色素である請求項1〜18のいづ
    れかに記載の気化性色素。
  20. 【請求項20】気化性色素であって、メチン系色素、ア
    ントラキノン系色素、アゾメチン系色素、アゾ系色素、
    キノフタロン系色素、クマリン系色素、ペリノン系色
    素、キサンテン系色素、チオキサンテン系色素、アザチ
    オキサンテン系色素、オキサジン系色素、及びチアジン
    系色素からなる群から選ばれる色素を気化精製し、第4
    周期遷移金属であるチタン、クロム、鉄、ニッケル、銅
    及び亜鉛の含有量の合計を16ppm以下にすることを
    特徴とする気化性色素の製造方法。
  21. 【請求項21】気化性色素であって、メチン系色素、ア
    ントラキノン系色素、アゾメチン系色素、アゾ系色素、
    キノフタロン系色素、クマリン系色素、ペリノン系色
    素、キサンテン系色素、チオキサンテン系色素、アザチ
    オキサンテン系色素、オキサジン系色素、及びチアジン
    系色素からなる群から選ばれる色素を気化精製し、アル
    カリ金属あるいはアルカリ土類金属における、ナトリウ
    ム、カリウム、マグネシウム、カルシウム及びバリウム
    の含有量の合計を32ppm以下にすることを特徴とす
    る気化性色素の製造方法。
  22. 【請求項22】気化性色素であって、メチン系色素、ア
    ントラキノン系色素、アゾメチン系色素、アゾ系色素、
    キノフタロン系色素、クマリン系色素、ペリノン系色
    素、キサンテン系色素、チオキサンテン系色素、アザチ
    オキサンテン系色素、オキサジン系色素、及びチアジン
    系色素からなる群から選ばれる色素を気化精製し、第4
    周期遷移金属であるクロム、鉄、ニッケル、銅及び亜鉛
    の含有量の合計が10ppm以下で、かつ、アルカリ金
    属あるいはアルカリ土類金属における、ナトリウム、カ
    リウム及びカルシウムの含有量の合計が10ppm以下
    にすることを特徴とする気化性色素の製造方法。
  23. 【請求項23】気化精製が減圧下で行われる請求項20
    〜22のいづれかに記載の気化性色素の製造方法。
  24. 【請求項24】気化精製が気化性色素の熱分解抑制剤の
    存在下で行われる請求項20〜22のいづれかに記載の
    気化性色素の製造方法。
  25. 【請求項25】請求項1、9、及び18のいずれかに記
    載の色素を使用することを特徴とする色素気化型熱記録
    方法。
  26. 【請求項26】気化精製された色素を使用することを特
    徴とする色素気化型熱記録方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000160043A (ja) * 1998-11-30 2000-06-13 Mi Tec:Kk β−キノフタロン精製法及びβ−キノフタロン蛍光磁粉
JP2004533342A (ja) * 2000-11-21 2004-11-04 イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー 改良された安定性を有する感熱画像形成エレメント
JP2017214457A (ja) * 2016-05-30 2017-12-07 コニカミノルタ株式会社 水系インクおよびインクジェット捺染方法

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