JPH11253999A - 有機性廃液の好気性処理方法及びその装置 - Google Patents

有機性廃液の好気性処理方法及びその装置

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JPH11253999A
JPH11253999A JP6374398A JP6374398A JPH11253999A JP H11253999 A JPH11253999 A JP H11253999A JP 6374398 A JP6374398 A JP 6374398A JP 6374398 A JP6374398 A JP 6374398A JP H11253999 A JPH11253999 A JP H11253999A
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sludge
treatment
organic waste
waste liquid
aerobic
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JP6374398A
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Shigeto Adachi
成人 足立
Takeshi Tanaka
毅 田中
Junji Haga
潤二 芳賀
Kazuhiko Asahara
一彦 浅原
Yoshihisa Kitaoka
義久 北岡
Masahiko Miura
雅彦 三浦
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Kobe Steel Ltd
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 大型の装置とならず、残存オゾンの問題もな
く、またコストが高くつかず、しかも発生する余剰汚泥
量を低減、或いは零にさえもすることのできる有機性廃
液の好気性処理方法及びその装置を提供することを目的
とする。 【解決手段】 経路7から導入される有機性廃液を、活
性汚泥槽1(好気性処理槽)において好気性微生物によ
り好気的に処理し、これを沈澱装置2に導入して固液分
離する。この分離された沈澱汚泥10を改質装置18に
おいて高電圧パルス放電処理を施して改質する。該改質
によって生成した改質汚泥を活性汚泥槽1に返送し、再
び好気性処理する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、下水処理場や屎尿
処理場における下水処理過程、或いは食品工場や化学工
場の排水過程等から排出される有機性廃液を、生物学的
に処理する好気性処理方法、及びその装置に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】有機性廃液に対しては一般に生物学的処
理法が適用されており、該処理法は嫌気性処理法と好気
性処理法に大別される。上記嫌気性処理法は、空気を遮
断して酸素の存在しない状態にして、嫌気性微生物によ
り主に有機汚濁物質を分解する方法であり、消化法がそ
の代表例である。また上記好気性処理法は、空気または
酸素の存在下で、好気性微生物によって主に有機汚濁物
質を酸化分解する方法であり、活性汚泥法がその代表例
である。
【0003】図8は上記活性汚泥法における処理装置を
示す模式図である。まず活性汚泥槽1に経路7から有機
性廃液を導入し、該活性汚泥槽(曝気槽)1中の活性汚
泥と上記有機性廃液を混合しつつ曝気する。活性汚泥に
は好気性微生物が存在しており、該好気性微生物によっ
て上記有機性廃液中の有機汚濁物質が二酸化炭素や水に
分解処理され、また上記有機汚濁物質が微生物に同化さ
れて活性汚泥が増殖する。
【0004】この処理された混合液は経路8から沈澱装
置2に導入されて上澄液20と沈澱汚泥10に固液分離
され、該上澄液20は処理済水として経路9から排出さ
れる。尚この処理済水は、放流先の排出基準に従って必
要により高次処理(硝化脱窒素処理やオゾン処理等)さ
れて放流される。
【0005】一方上記沈澱汚泥10の一部は、ポンプ1
6によって返送経路11から上記活性汚泥槽1に返送さ
れ、活性汚泥槽1における微生物源となり、残る沈澱汚
泥10は余剰汚泥として経路15から系外に排出され
る。尚返送する沈澱汚泥10の量は、通常、活性汚泥槽
1内に保持される微生物量を一定にする様に調整され、
従って活性汚泥槽1において有機性廃液から微生物の同
化によって新たに生成する汚泥量と同量の汚泥が、排出
される余剰汚泥となる。
【0006】上記余剰汚泥は消化,脱水,濃縮,乾燥,
焼却等の処理が施されているが、余剰汚泥は脱水性が悪
い為にいずれの処理方法も困難であり、手間と費用が非
常に高くかかる問題がある。また上記余剰汚泥をそのま
ま埋立や海洋投棄する方法もあるが、埋立可能地を確保
することが難しく、また海洋投棄についても環境汚染の
問題が指摘されている。
【0007】従って排出する余剰汚泥の削減が望まれて
おり、以下の如く余剰汚泥を全く発生させない完全酸化
法や、生成した余剰汚泥を減容化する方法が提案されて
いる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記完全酸化法は図8
に示す方法と同じく、有機性廃液を活性汚泥によって好
気性処理する方法であるが、その際汚泥の負荷を低くし
て汚泥の増殖量と汚泥の自己消化量を釣り合わせ、余剰
汚泥を生成しない様にする方法である。しかし該方法
は、活性汚泥槽の負荷を低くする必要から広大な敷地が
必要となり、実用的でない。
【0009】上記余剰汚泥の減容化方法としては下記の
様に様々な方法が提案されており、まず第一の方法とし
て、有機性廃液処理の為の活性汚泥槽とは別に、嫌気性
消化装置或いは好気性消化装置を設け、該消化装置で上
記余剰汚泥の消化を行うという方法がある。しかし該方
法では、装入した余剰汚泥の約50%が分解されるにす
ぎず、残りは未消化汚泥として排出される。しかも該未
消化汚泥は生物学的に難分解性の物質で構成されている
為に、これ以上の減容化ができず、焼却或いはそのまま
廃棄せざるを得ないという問題がある。
【0010】また第二の減容化方法として特開平6−2
06088号公報には、活性汚泥槽での好気性処理によ
り生成した余剰汚泥を、オゾン処理して活性汚泥槽(曝
気層)に返送するという方法が提案されているが、該方
法はオゾンを使用することから残存オゾンの問題がある
他、電気エネルギーをオゾン発生に変換する際のエネル
ギー効率が悪く、処理コストが高くつくという問題があ
る。
【0011】第三の減容化方法として特開平9−107
91号公報には、活性汚泥槽での好気性処理により生成
した余剰汚泥を、好気性好熱菌或いは嫌気性好熱菌を用
いて高温可溶化処理し、その後活性汚泥槽(曝気層)に
返送するという方法が提案されているが、該方法は可溶
化処理槽を高温に保つ為に過大なエネルギーを必要と
し、また生物学的処理であるため装置的にも大型化する
上、処理時間が長くかかり、従ってコストが高くつくと
いう問題がある。
【0012】第四の減容化方法として特開平9−206
785号公報には、有機性廃液を嫌気性微生物によりメ
タン発酵させて嫌気性処理した後、生成した余剰汚泥を
オゾン処理または高電圧パルス放電処理して改質し、上
記嫌気性処理工程に返送するという方法が提案されてい
る。しかしながら該方法は嫌気性処理に関するものであ
り、好気性処理への適用の可能性については示されてい
ない。
【0013】そこで本発明は上記の様な実状に鑑みてな
されたものであり、大型の装置とならず、残存オゾンの
問題もなく、またコストが高くつかず、しかも発生する
余剰汚泥量を低減、或いは零にさえもすることのできる
有機性廃液の好気性処理方法及びその装置を提供するこ
とを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明に係る有機性廃液
の好気性処理方法は、好気性微生物の存在する汚泥を用
いて有機性廃液を好気的に処理し、該好気性処理で増殖
された汚泥を高電圧パルス放電処理及び/または電界パ
ルス印加処理により改質し、該改質によって生成した改
質汚泥を前記好気性処理で処理することを要旨とする。
【0015】また本発明に係る有機性廃液の好気性処理
方法は、好気性微生物の存在する汚泥を用いて有機性廃
液を好気的に処理する好気性処理工程と、該好気性処理
工程から抜き出される汚泥の全部または一部を高電圧パ
ルス放電処理及び/または電界パルス印加処理により改
質する改質工程と、該改質工程において生成した改質汚
泥を前記好気性処理工程に返送する返送工程とを備えた
ことを要旨とする。
【0016】或いは本発明に係る有機性廃液の好気性処
理装置は、好気性微生物の存在下に有機性廃液を好気的
に処理する好気性処理槽と、該好気性処理槽から抜き出
された汚泥の全部または一部を高電圧パルス放電処理及
び/または電界パルス印加処理により改質する改質装置
と、該改質装置において生成した改質汚泥を前記好気性
処理槽に返送する返送手段とを備えたことを要旨とす
る。
【0017】上記の様に汚泥に高電圧パルス放電処理や
電界パルス印加処理を施すことにより、汚泥は可溶化
し、また低分子化されて、好気性微生物に易分解性の物
質(改質汚泥)となる。そして該改質汚泥を好気性処理
槽に返送することにより、該改質汚泥を好気性微生物が
餌として利用し、分解する。この様にして汚泥を改質し
て循環することにより、余剰汚泥として系外に排出する
量を減少、或いは零とすることができる。
【0018】尚上記高電圧パルス放電処理とは、電極間
に高電圧を印加することによって放電を発生させて処理
するというものであり、該放電を直接的に汚泥に作用さ
せて可溶化,低分子化する。また上記電界パルス印加処
理とは、汚泥中の微生物の細胞膜破壊に至る電界を電極
間に形成して処理するというものであり、これにより汚
泥が可溶化,低分子化する。
【0019】更に本発明に係る有機性廃液の好気性処理
方法においては、前記高電圧パルス放電が電極間に平面
的な放電を生じさせて行うものであることが好ましい。
放電が線状的なものの場合よりも平面的な放電の方が、
汚泥に対して広範囲に高電圧パルス放電が作用する様に
なるから、効率良く汚泥を可溶化,低分子化する。
【0020】加えて本発明に係る有機性廃液の好気性処
理装置において高電圧パルス放電処理を施す場合には、
該高電圧パルス放電に用いる電極の一方が棒電極、他方
が平板電極であることが好ましい。この様に棒電極と平
板電極とすることにより、パルス放電を平面的なものと
し易く、よって汚泥を効率良く改質できるということを
実験により確認している。
【0021】また本発明に係る有機性廃液の好気性処理
装置において電界パルス印加処理を施す場合には、該電
界パルス印加処理に用いる電極の双方が平板電極である
ことが好ましい。この様に平板電極からなる電極対とす
ることにより、電極間に均一且つ広範な電界の印加を容
易に行える様になる。
【0022】
【発明の実施の形態及び実施例】図1は本発明に係る有
機性廃液の好気性処理装置の一例を示す模式図である。
まず従来と同様に経路7から有機性廃液を活性汚泥槽
(好気性処理槽)1に導入し、該活性汚泥槽1中の活性
汚泥と上記有機性廃液を混合しつつ曝気し、活性汚泥中
の好気性微生物によって上記有機性廃液を分解処理す
る。次にこの処理された混合液を経路8を介して沈澱装
置2に導入し、該沈澱装置2において上澄液20と沈澱
汚泥10に固液分離し、上記上澄液20を処理済水とし
て経路9から排出する。尚この処理済水は上記従来と同
様に、放流先の排出基準に従って必要により高次処理
(硝化脱窒素処理やオゾン処理等)を施して放流すると
良い。
【0023】一方上記沈澱汚泥10を、経路12からポ
ンプ17によって改質装置18の改質槽3に導入する。
【0024】該改質装置18は改質槽3と電源4を備え
ており、該電源4に接続された棒電極(+極)5と平板
電極(−極)6が、改質槽3内の汚泥に浸漬する様にし
て平行に配設されている。改質槽3内部にある汚泥(沈
澱装置2から導入された沈澱汚泥10)は、電気的には
ある所定の誘電率を示す誘電体とみなすことができ、上
記電極5,6間に誘電体が満たされた状態で電圧を加え
て電極5,6に夫々正負の電荷を搬送すると、上記誘電
体(汚泥)には電界が形成され、この電界の強さがある
程度以上となったときに絶縁破壊を生じ、電極5,6間
に放電が発生する。
【0025】上記の様にして電極5,6間に高電圧パル
ス放電することによって、沈澱汚泥は可溶化,低分子化
(改質)する。即ち高電圧パルス放電により沈澱汚泥中
の微生物は死滅し、更に細胞破壊等により分解されて低
分子の有機物や無機物が生成し、また微生物以外の有機
物も低分子化されて、好気性微生物に易分解性の物質
(以下、改質汚泥と称することがある)となる。
【0026】次に改質装置18において生成した上記改
質汚泥を、返送経路(返送手段)13から活性汚泥槽
(好気性処理槽)1に返送する。該活性汚泥槽1内にお
いては上記改質汚泥を好気性微生物が餌として利用し分
解する。
【0027】この様に汚泥を高電圧パルス放電により改
質して活性汚泥槽1に返送するという様にして循環する
ことにより、汚泥は減容化され、その結果余剰汚泥とし
て排出される量が低減する。尚この余剰汚泥は経路15
を介して系外に排出する。
【0028】また改質装置18に導入する汚泥量を調整
することにより排出余剰汚泥量を制御でき、従ってこの
様に改質装置18への導入汚泥量を適宜調整すれば、排
出する余剰汚泥を零とすることも可能である。
【0029】尚従来の様に、上記沈澱汚泥に高電圧パル
ス処理を施さずにそのまま汚泥中の微生物が生きた状態
で活性汚泥槽1に返送しても、活性汚泥槽1内の微生物
の餌として利用され難いため、汚泥はほとんど減容化し
ない。但し本発明は、上記の様に沈澱汚泥10の一部を
改質処理せずにそのまま活性汚泥槽1に返送することを
排除するものではなく、例えば活性汚泥槽1内の好気性
微生物が減少したとき等において、沈澱汚泥10をその
まま返送経路11を介して返送することにより、活性汚
泥槽1内の好気性微生物を増量する様にしても良い。次
に本発明に係る有機性廃液の好気性処理装置の他の例に
ついて説明する。
【0030】図2は該好気性処理装置を示す模式図であ
る。前述の図1に示す装置においては沈澱装置2で固液
分離した後、沈澱汚泥10を改質する様にしたが、図2
に示す装置においては、活性汚泥槽1から沈澱装置2に
汚泥を導入する前に、活性汚泥槽1内の混合液を経路2
1から抜き出して改質装置18に導入し、該改質装置1
8において高電圧パルス放電処理を施して改質汚泥と
し、活性汚泥槽1に返送経路(返送手段)22から返送
する様にしている。尚図2において、19はポンプであ
り、図1と同じ構成部分については同一の符号を付して
重複説明を避ける。
【0031】改質装置18には上記混合液が固液分離さ
れずにそのまま導入されるが、この場合においても前述
と同様に、混合液中の汚泥が高電圧パルス放電処理を受
け、改質(可溶化,低分子化)される。そして上記と同
様に改質汚泥は活性汚泥槽1内の好気性微生物の餌とし
て利用,分解される。この様にして汚泥を改質して活性
汚泥槽1に循環することにより、汚泥は減容化される。
【0032】そして活性汚泥槽1内の混合液は適宜経路
8から沈澱装置2に導入され、固液分離されて上澄液2
0が処理済水として経路9から排出される。
【0033】図1,2に示す好気性処理装置のいずれに
おいても、改質装置18により改質する汚泥量として
は、経路7から導入する有機性廃液を基として好気性微
生物の作用によって生成する汚泥量(以下、有機性廃液
由来余剰汚泥量と称することがある)よりも多くするこ
とが望ましい。
【0034】改質装置18により処理されて生成した改
質汚泥は、活性汚泥層1に返送され、該活性汚泥層1内
の微生物によって一部は無機化されるものの、残りは再
び同化されて活性汚泥を生成する様になる。従って有機
性廃液由来余剰汚泥量と同量の汚泥を改質装置18に導
入して返送したのでは、活性汚泥層1内の活性汚泥量
(微生物量)が増加する様になるから、この増加分の汚
泥を系外に排出しなければならず、余剰汚泥をあまり低
減できない。そこで上述の様に有機性廃液由来余剰汚泥
量よりも多くの汚泥を、改質装置18において処理して
返送することにより、余剰汚泥として系外に排出する汚
泥量を非常に削減することができる。
【0035】即ち、例えば改質汚泥の1/3量が活性汚
泥層1内で無機化され、残る2/3量が活性汚泥として
残る場合には、有機性廃液由来余剰汚泥量の3倍量の汚
泥を改質装置18にて改質処理し、活性汚泥層1に返送
する様にすると、改質汚泥が分解処理される量と有機性
廃液由来余剰汚泥量が活性汚泥層1内で相殺され、系外
への余剰汚泥排出量が零となる。尚この場合においても
無機物となった汚泥の蓄積を避けるために、排出経路1
4から最小限の汚泥を排出する様にするのが望ましい。
次に改質装置18における高電圧パルス放電について更
に詳細に説明する。
【0036】図3は電極5への印加電圧の時間的変化を
表すグラフであり、縦軸Vが電極5の電極6に対する電
位差(kV)を示し、横軸tが時間(nsec. )を示す。
図中VLは放電が発生する下限の電圧を示している。ま
た図4は電極5,6間の放電の様子を表す模式斜視図で
ある。
【0037】電源4から数十ナノ秒という非常に急峻な
立上がりで電圧が印加されると(図3に示すt1 〜t
2 )、電極5,6に急速に電荷が搬送され、棒電極5の
長尺方向に均一に電荷が分布する。そしてこの印加電圧
がVL以上のときに、汚泥が絶縁破壊を引き起こし、電
極5,6間に放電が発生する。このとき上記の様に棒電
極5には長尺方向に均一に電荷が分布しているから、平
板電極6に対して一様に放電25が発生し、あたかも平
面状の放電となる(以下この様な放電を面放電と称する
ことがある)(図4)。尚放電は図3に示すt3 のとき
に発生し、t2 〜t3 間は十分に高い電圧が印加されて
から汚泥が絶縁破壊するまでのタイムラグである。
【0038】仮に両電極として通常の小球体の電極が用
いられる場合では、局所的な点と点を結ぶ尖状的な放電
となるが、上記の様に棒電極5と平板電極6を用いるこ
とにより、電極間をあたかも平面状に放電25が進む様
になる。
【0039】また仮に電圧の印加の立上がりが遅いと、
通常の線状の放電が生じることになるが、上記の様に急
峻な立上がりで電圧を印加すると、電極が棒状や平板状
の場合に面放電が生じる様になる。
【0040】この様に面放電を発生させた場合は線状の
放電の場合とは異なり、処理対象の汚泥に対して広範に
放電を作用させることができるから、効率的に高電圧パ
ルス放電処理することができる。
【0041】上記面放電25の状態は少なくとも数マイ
クロ秒間保持され、その後放電はある部位に集束する様
に線状の放電形態となる。この放電26の様子を表すの
が図5の模式斜視図である。この様に線状の放電26と
なると、汚泥の改質効果が低下するが、ここで電極5,
6への電圧の印加を止め(電極への電荷搬送を停止:図
3に示すt4 )、所定の時間経過後、再び上記と同様に
急峻な立上げで電極5,6への印加を行うと、面放電を
再度発生させることができる。従ってこの様に電圧の印
加と停止を繰り返すことにより、断続的ではあるが常時
面放電を発生させることができ、汚泥の改質処理を高効
率に行うことができる。
【0042】本発明においてはこの様な高電圧パルス放
電処理の他、電界パルス印加処理を汚泥に施す様にして
も良い。例えば上記VL(汚泥が絶縁破壊に至る電圧)
よりも印加電圧の設定が低い場合や、電極間隔が広く電
極間の容量が大きい場合等においては、放電現象が発生
しないが、この様な場合であっても汚泥中の個々の細胞
が破壊に至る程度の電圧(いわゆる臨界電圧)を印加し
て電極間に電界を形成すれば(電界パルス印加処理)、
汚泥が改質される。
【0043】尚改質装置18における高電圧パルス放電
処理や電界パルス印加処理は、バッチ式或いは連続式の
いずれで行っても良い。また高電圧パルス放電処理或い
は電界パルス印加処理を単独で行う場合だけでなく、こ
れらの処理を組み合わせて行っても良い。
【0044】高電圧パルス放電処理や電界パルス印加処
理に用いる電極の素材としては、+極にタングステン・
トリウム合金等が、−極にステンレス鋼等が推奨され、
また両電極を銅・タングステン合金等としても良い。
【0045】高電圧パルス放電処理装置や電界パルス印
加処理装置としては、電極間に印加するパルス状の直流
電圧の最大値を適宜調整できる構成であることが望まし
い。高電圧パルス放電処理,電界パルス印加処理の場合
において、改質層内の汚泥状態や、電極の表面積、電極
間隔等によって、高電圧パルス放電の形成が起こる印加
電圧値や、細胞破壊に至る電界の形成が起こる印加電圧
値が異なってくるからである。
【0046】<実験>図1に示す好気性処理装置を用い
て有機性廃液の処理実験を行った。有機性廃液として
は、ペプトン,酵母エキス,グルコースを主成分とする
BOD1000mg/リットルの人工廃水を用いた。活性汚泥
槽1には有効容積40リットルの塩化ビニール製角槽を
用い、沈澱装置2には容量10リットルの沈澱槽を用い
た。また活性汚泥槽1内の活性汚泥濃度を3000mg/
リットル、汚泥負荷を0.3kgBOD/kgSS・dとな
る様にして運転した。
【0047】実験No. 1においては、有機性廃液由来余
剰汚泥量と同量の沈澱汚泥10を、1日に1回、経路1
2を介して改質装置18に導入し、印加電圧100k
V,パルス間隔50Hzで5分間、高電圧パルス放電処
理を行って改質汚泥とした後、経路13から上記活性汚
泥槽1に返送した。尚改質装置18の+電極5にはタン
グステン・トリウム合金製の棒電極、−電極6にはステ
ンレス鋼製の平板電極を用い、これらの電極間隔を10
mmとした。
【0048】実験No. 2においては、有機性廃液由来余
剰汚泥量の3倍量の沈澱汚泥10を、1日に1回、経路
12を介して改質装置18に導入し、上記実験No. 1と
同様に印加電圧100kV,パルス間隔50Hzで5分
間、高電圧パルス放電処理を行って改質汚泥とした後、
経路13から上記活性汚泥槽1に返送した。尚電極5,
6の材料及び電極間隔は上記実験No. 1と同じである。
【0049】実験No. 3においては、1日に1回、有機
性廃液由来余剰汚泥量と同量の沈澱汚泥10を経路15
から余剰汚泥として系外に排出し(乾燥重量14〜18
gSS)、残りの沈澱汚泥10を高電圧パルス放電処理
せずに経路11から活性汚泥槽1に返送した。尚実験N
o. 3は図8に示す従来の処理法に相当する。
【0050】上記実験No. 1〜3について活性汚泥槽1
内の汚泥濃度の経日変化を図6に示す。尚図6において
縦軸はMLSS(混液浮遊物質)濃度、横軸は好気性処
理装置の運転日数を表している。図6のグラフから分か
る様に、実験No. 1〜3のいずれの系においても活性汚
泥槽1内の活性汚泥量は約3000mg/リットルに安定
していた。
【0051】また図7は系外に排出した余剰汚泥の積算
量を示すグラフであり、縦軸が積算した汚泥量、横軸が
好気性処理装置の運転日数を表している。図7に示す様
に、実験No. 1は実験No. 3に比べて積算汚泥量が少な
く、よって汚泥に高電圧パルス放電処理を施して改質を
行った実験No. 1は余剰汚泥が減容化していることが分
かる。更に実験No. 2においては余剰汚泥がほとんど生
成しておらず、高電圧パルス放電処理を施す汚泥量を多
くすることによって、系外に排出する余剰汚泥量を実質
的に零にすることが可能であることが分かる。
【0052】尚以上の様に本発明に係る有機性廃液の好
気性処理装置及び方法を、実施例を示す図面を参照しつ
つ具体的に説明したが、本発明はもとより上記例に限定
される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で
適当に変更を加えて実施することも可能であり、それら
はいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0053】例えば、活性汚泥槽(好気性処理槽)内に
改質装置の電極を配置し、活性汚泥槽内において高電圧
パルス放電処理を行う様にしても良い。この場合は活性
汚泥槽内において、好気性微生物による改質汚泥及び有
機性廃液の利用,分解が行われると共に、混合液の改質
処理が行われる。尚この場合は活性汚泥槽内で混合液が
循環する様に構成することが望ましい。またこの場合は
改質汚泥を活性汚泥槽に返送する工程が不要となり、装
置が簡素化される。
【0054】また上記高電圧パルス放電処理や上記電界
パルス印加処理が衝撃波の発生を伴うものであっても良
く、この衝撃波による物理的な作用によっても汚泥の細
胞破壊が引き起こされるので、一層良好に汚泥改質がな
される。
【0055】
【発明の効果】本発明に係る有機性廃液の好気性処理方
法やその装置によれば、系外に排出する余剰汚泥を非常
に低減することができ、場合によっては零とすることも
でき、しかも大型の装置とならず、またエネルギー消費
量もあまり多くなく、低コストで処理することができ
る。また残存オゾンの問題もない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る有機性廃液の好気性処理装置の一
例を示す模式図。
【図2】本発明に係る有機性廃液の好気性処理装置の他
の例を示す模式図。
【図3】電極への印加電圧の時間的変化を表すグラフ。
【図4】電極間に生じる平面状の放電の様子を表す模式
斜視図。
【図5】面放電が集束し線状の放電となった様子を表す
模式斜視図。
【図6】活性汚泥槽内の汚泥濃度の経日変化を表すグラ
フ。
【図7】系外に排出した余剰汚泥の積算量を示すグラ
フ。
【図8】従来の活性汚泥法における処理装置を示す模式
図。
【符号の説明】
1 活性汚泥槽 2 沈澱装置 3 改質槽 4 電源 5 棒電極 6 平板電極 7,8,9,12,15,21 経路 10 沈澱汚泥 11,13,22 返送経路 16,17,19 ポンプ 18 改質装置 20 上澄液 25,26 放電
フロントページの続き (72)発明者 浅原 一彦 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会 社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 (72)発明者 北岡 義久 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会 社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 (72)発明者 三浦 雅彦 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会 社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 好気性微生物の存在する汚泥を用いて有
    機性廃液を好気的に処理し、 該好気性処理で増殖された汚泥を、高電圧パルス放電処
    理及び/または電界パルス印加処理により改質し、 該改質によって生成した改質汚泥を、前記好気性処理で
    処理することを特徴とする有機性廃液の好気性処理方
    法。
  2. 【請求項2】 好気性微生物の存在する汚泥を用いて有
    機性廃液を好気的に処理する好気性処理工程と、 該好気性処理工程から抜き出される汚泥の全部または一
    部を、高電圧パルス放電処理及び/または電界パルス印
    加処理により改質する改質工程と、 該改質工程において生成した改質汚泥を、前記好気性処
    理工程に返送する返送工程とを備えたことを特徴とする
    有機性廃液の好気性処理方法。
  3. 【請求項3】 前記高電圧パルス放電は、電極間に平面
    的な放電を生じさせて行うものである請求項1または2
    に記載の有機性廃液の好気性処理方法。
  4. 【請求項4】 好気性微生物の存在下に有機性廃液を好
    気的に処理する好気性処理槽と、 該好気性処理槽から抜き出された汚泥の全部または一部
    を、高電圧パルス放電処理及び/または電界パルス印加
    処理により改質する改質装置と、 該改質装置において生成した改質汚泥を、前記好気性処
    理槽に返送する返送手段とを備えたことを特徴とする有
    機性廃液の好気性処理装置。
  5. 【請求項5】 前記高電圧パルス放電に用いる電極の一
    方が棒電極、他方が平板電極である請求項4に記載の有
    機性廃液の好気性処理装置。
  6. 【請求項6】 前記電界パルス印加処理に用いる電極の
    双方が平板電極である請求項4に記載の有機性廃液の好
    気性処理装置。
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