JPH1124471A - 定着ローラ及びその製造方法 - Google Patents

定着ローラ及びその製造方法

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JPH1124471A
JPH1124471A JP17334397A JP17334397A JPH1124471A JP H1124471 A JPH1124471 A JP H1124471A JP 17334397 A JP17334397 A JP 17334397A JP 17334397 A JP17334397 A JP 17334397A JP H1124471 A JPH1124471 A JP H1124471A
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phase
temperature
change
fixing roller
layer
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JP17334397A
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English (en)
Inventor
Minoru Matsuo
稔 松尾
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Ricoh Co Ltd
Original Assignee
Ricoh Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 相転移の際に発生する熱エネルギーを利用し
て加熱促進が図れる定着ローラにおいて、相転移発熱材
料の熔融、結晶化サイクルを繰り返しても相転移発熱材
料の凝集が起こらない定着ローラとその容易な製造方法
を提供する。 【解決手段】 非晶質から結晶質への相転移の際に熱エ
ネルギーを発生する相転移発熱材料の粒子3が結着剤4
中に分散された相転移発熱層5を有する定着ローラであ
る。この粒子3は、真空蒸着により形成されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複写機、プリン
タ、ファクシミリ等の定着装置に使用される定着ローラ
及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、電子写真式の複写機、プリン
タ、ファクシミリなどでは、現像された画像の定着に、
定着ローラと加圧ローラとからなる定着装置を用いてい
る。この定着装置では、トナーが転写されて現像された
印刷用紙が定着ローラと加圧ローラとの間のローラ間に
挿通されるものである。これにより、画像を形成するト
ナーが加熱熔融(軟化)されて印刷用紙上に融着して定
着される。
【0003】この種の定着ローラとして、本件出願人
は、中空筒状の芯金の外周に、非晶質と結晶質との間で
相転移が可能な相転移発熱材料により相転移発熱層を設
け、その相転移発熱層を保護層で被覆する構成の定着ロ
ーラを提案した(例えば、特開平7−140823号公
報を参照)。この定着ローラによれば、主熱源からの加
熱による昇温を利用して定着ローラの外周面の温度が定
着に要求される温度(所定温度)に達するまでの間に、
非晶質から結晶質への相転移による熱エネルギー(結晶
化エネルギー)を発生させ、定着ローラ外周面の温度上
昇を主熱源のみの昇温よりも促進させている。この定着
ローラを用いれば、ウオーミングアップ時間の短縮が図
られ、また省電力化が図られるので期待されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような定着装置に
おいて、相転移発熱材料は融点以上に加熱され、融解さ
せなければならないが、相転移発熱材料は、融解すると
表面張力で凝集し易くなり、そのために相転移発熱層の
変形を生じる場合がある。それ故、相転移発熱材料を微
細化し、その微細化した相転移発熱材料が凝集しないよ
うに結着剤中に分散させて相互に孤立させておくことが
考えられる。
【0005】また、本件出願人は、相転移発熱材料は一
般的に固有の結晶化温度を有するが、微細化処理を行う
ことで本来の塊(バルク)の固有の結晶化温度よりも低
い第二の結晶化発熱温度を有する特性に改良できること
を見いだしている(特願平9−8607号明細書参
照)。また、この明細書によれば、Se等のカルコゲン
では、塊中での結晶成長形態は球晶であるが、しばしば
蒸着薄膜の結晶形態を観察すると、くらげ状あるいは茸
状の平面放射状の大きな結晶が認められ、蒸着薄膜では
塊中での成長よりも表面での結晶成長速度が速いと考え
られることが開示されている。
【0006】一方、本件出願人は、真空蒸着によれば、
条件の選択により、材料を微粒子として分散させること
ができることを見いだしている(例えば、平成7年4月
15日出願の本発明者らによる「トナー担持体及びその
製造方法」など参照)。
【0007】それ故、真空蒸着された相転移材料の粒子
では、微粒子化による表面積の増大により、結晶成長速
度を速めることができると考えられ、また、相転移発熱
材料を微粒子化することにより、相転移発熱材料の固有
の値である融点Tmやガラス転移点Tgは元のままで、
相転移の結晶化温度領域を拡大することができると考え
られる。
【0008】このような観点から、相転移発熱材料の微
細化された状態を保持することが望ましい。
【0009】この結着剤は、相転移発熱層中に相転移発
熱材料の粒子を均一に分散させると共に、熔融・結晶化
サイクルを繰り返しても相転移発熱材料粒子の凝集を起
こさないために、相転移発熱材料の融点以上の温度条件
でも、形態を保持できるように熱的に十分に安定でなけ
ればならない。さらに、この結着剤は、この繰り返しサ
イクルの間、相転移発熱材料とは化学的に反応しない
(耐薬品性がある)ものが望ましい。このような目的を
達成する結着剤として、フッ素樹脂やポリイミド樹脂、
エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらの樹脂は耐薬品
性は良好であるが、一般には、加工が困難である。
【0010】本発明は、上記の事情を考慮して為された
もので、相転移の際に発生する熱エネルギーを利用して
加熱促進が図れる定着ローラにおいて、相転移発熱材料
の熔融、結晶化サイクルを繰り返しても相転移発熱材料
の凝集が起こらない定着ローラとその容易な製造方法を
提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1の発明は、非晶質から結晶質への相転移の
際に熱エネルギーを発生する相転移発熱材料の粒子が結
着剤中に分散された相転移発熱層を有する定着ローラお
いて、前記粒子は、真空蒸着により形成されたことを特
徴とする。
【0012】請求項2の発明は、非晶質から結晶質への
相転移の際に熱エネルギーを発生する相転移発熱材料の
粒子を結着剤に分散させた相転移発熱層を有する定着ロ
ーラの製造方法において、前記粒子は、前記相転移発熱
層を担持する支持体の温度を前記相転移発熱材料の融点
近傍の温度にして真空蒸着して形成することを特徴とす
る。
【0013】請求項3の発明は、請求項2の定着ローラ
の製造方法において、前記支持体の温度は、前記相転移
発熱材料の融点以下であることを特徴とする。
【0014】請求項4の発明は、請求項2の定着ローラ
の製造方法において、前記結着剤は、前記粒子を真空蒸
着により形成した後に、前記支持体の温度を低下させて
真空蒸着して形成することを特徴とする。
【0015】請求項5の発明は、請求項4の定着ローラ
の製造方法において、前記結着剤は、結着材料としての
ポリイミドモノマーを蒸着して蒸着膜を形成する工程、
前記蒸着膜を前記相転移発熱材料の融点以下の温度で予
備加熱して、該蒸着膜を硬化する工程により付与される
ことを特徴とする。
【0016】請求項6の発明は、請求項5の定着ローラ
の製造方法において、前記相転移発熱層は、前記支持体
の温度を前記相転移発熱材料の融点近傍の温度にして真
空蒸着することにより相転移発熱材料の微粒子を蒸着す
る工程、前記支持体の温度を低下させてポリイミドモノ
マーを前記微粒子上に真空蒸着することによりポリイミ
ドモノマーの蒸着膜を付与する工程、前記蒸着膜を前記
相転移発熱材料の融点以下の温度で予備加熱して硬化膜
として形成する工程を繰り返すことを特徴とする。
【0017】請求項7の発明は、請求項6の定着ローラ
の製造法において、前記結着剤は、表面保護層を付与後
に前記相転移発熱層を加熱してイミド化して形成するこ
とを特徴とする。
【0018】請求項8の発明は、前記表面保護層は少な
くとも一端を開放して形成され、前記イミド化は前記開
放端から水分を除去しつつ行われることを特徴とする。
【0019】請求項1のように構成すれば、真空蒸着に
より形成された粒子が結着剤に散在された相転移発熱層
を有する定着ローラが得られる。この相転移発熱層は結
着剤により結着されているので、溶融結晶化が繰り返さ
れても相転移発熱材料の凝集が起こらない。
【0020】請求項2のように構成すれば、相転移発熱
材料は真空蒸着により支持体上に直接、微粒子状として
析出できる。これにより、機械的な粉砕をする必要がな
くなり製造が容易となる。
【0021】請求項3のように構成すれば、蒸着された
相転移発熱材料の粒子は、再蒸発されることがないの
で、相転移発熱材料の微粒子を効率よく作製できる。
【0022】請求項4のように構成すれば、結着剤は平
滑に蒸着されるので、相転移発熱材料の微細な粒子の表
面に結着剤を均一に付与することができる。またこれに
より相転移発熱層の製造工程が完全ドライプロセスとな
るので工程が簡略化される。
【0023】請求項5のように構成すれば、ポリイミド
はモノマー状で蒸着され、その蒸着膜は、融点以下の温
度で予備加熱され、これにより、相転移発熱材料の粒子
が融ける前にその粒子が凝集されないように蒸着膜を硬
化できる。
【0024】請求項6のように構成すれば、微粒子状の
相転移材料と結着剤とが交互に繰り返して蒸着される。
これにより、相転移材料の厚み方向の厚みを増大でき
る。また、微粒子状の相転移発熱材料は発熱温度範囲が
広いので、広い範囲で発熱される相転移発熱層が得られ
る。
【0025】一般に、ポリイミドモノマーは300度C
程度の高温度に曝してイミド化することにより、耐熱性
や化学的安定性を有するポリイミド結着剤とすることが
できる。請求項7のように構成すれば、相転移発熱材料
と結着剤は数回に亘って蒸着されるが、高温が必要なイ
ミド化は一工程で行われる。また、相転移発熱材料の融
点以上の温度に加熱されるので、相転移材料の蒸着粒子
は、結着剤内で溶融されて球晶の成長が早い球状に成形
される。ここで、ポリイミドモノマーの蒸着膜が予備加
熱により硬化されているので、蒸着粒子が相互に融着さ
れて凝集されることはない。
【0026】請求項8のように構成すれば、イミド化反
応により発生してくる水分は、開放端から除去され、保
護層を有する定着ローラが容易に製造される。これによ
り、相転移発熱層中に水分が残存することなく、また、
気泡などがない均一な相転移発熱層を得ることができ
る。また、この定着ローラによれば、ローラの成型時、
使用時の加熱により気泡発生等に基づく変形が少なくな
る。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明の定着ローラの実施
の形態を図を参照しつつ説明する。
【0028】本発明の定着ローラは、主熱源からの加熱
による昇温を利用して物質内部に蓄えられたエネルギー
を熱の形で放出することにより、主熱源のみの昇温より
も急速に表面温度を立ち上げられる原理を応用したもの
であり、加熱定着装置などの定着ローラとして利用され
る。
【0029】この定着ローラ1は、例えば、図1に示す
ように中空筒状の芯金2を有する。その芯金2の材料に
は例えばアルミニウム、その合金、ステンレスなどが使
用されている。芯金2の外周には、相転移発熱材料の微
粒子3がポリイミドなどの結着剤4中に分散された相転
移発熱層5が形成されている。この微粒子3は、真空蒸
着により形成されている。
【0030】相転移発熱層5の外周には保護層6が形成
されている。保護層6は相転移発熱層5を被覆封止して
相転移発熱材料の粒子3が熔融状態のときに流出するの
を防止している。この保護層6は、トナーなどとの粘着
を防止するための離型性を有する層であってもよい。こ
の定着ローラ1には接着層、通電発熱層、絶縁層などが
必要に応じて追加されていてもよい。
【0031】この定着ローラ1では、定着ローラ1の外
周を定着温度にまで昇温させ、結晶化した相転移発熱層
5を加熱して熔融させるための主熱源が配備されてい
る。この例では、芯金2内部の中空部7に、主熱源(図
示を省略する)が設けられる。この主熱源としては例え
ばハロゲンランプ、赤外線ランプ、ニクロム線などのヒ
ータが例示される。
【0032】一般に相転移発熱材料とは、相転移に伴い
発熱する材料である。この材料は、一般に熔融状態から
急冷により非晶質化するものであって、その非晶質化状
態の物質を昇温すると結晶化する、いわゆる非晶質化可
能領域のある物質である。これらの相転移発熱材料は非
晶質から結晶質への相転移の際に発熱するが、この結晶
化温度は物質に固有の温度であるので、結晶化の開始温
度と終了温度は使用する相転移発熱材料によって決まっ
てしまう。また、結晶化温度はエネルギー的に準安定状
態である非晶質相から、より安定な結晶相へ転移する温
度であり、物質によって決まる融点とガラス転移点との
間にある。この融点は、一度発熱させた物質を再度非晶
質化させて初期化させるために重要な特性であり、トナ
ーの軟化融着する定着温度以上であり、省エネルギーの
観点からなるべく低い温度である方が望ましい。
【0033】このような性質を有する相転移発熱材料と
して、無機系物質では、例えば、周期律表第III族〜
第VI族の多元系で非晶質化可能領域を有するものが例
示できる。その中でもSe(セレン)を主成分としたカ
ルコゲンやカルコゲナイド化合物は、急速に結晶化して
発熱し、また、結晶化の際の発熱エネルギーも大きいの
で好適な材料である。また、有機系物質では、例えば、
炭酸ジフェニルの誘導体、イソフタル酸ジフェニルの誘
導体、ビスフェノール誘導体等の低分子物質が例示され
る。PET(ポリエチレンテレフタレート)系やPBT
(ポリブチレンテレフタレート)系等のポリエステル類
のような結晶性熱可塑性樹脂などの高分子系物質でもよ
い。いずれの材料も、非晶質化され、結晶化に際しては
発熱する。
【0034】本発明に用いられる相転移材料の微粒子
は、これらの材料が真空蒸着により形成されたものであ
る。ここで、真空蒸着により形成されたものとは、上述
の相転移発熱材料を直接真空蒸着させたものはもちろん
のこと、原料、前駆体、モノマー、オリゴマーなどを真
空蒸着させる過程で相転移発熱材料となったもの、真空
状着後に加熱、減圧などの手法により反応させて相転移
材料となったものが含まれる。このような性能を有する
相転移発熱材料は、無機系物質はもちろんのこと、有機
系物質、高分子物質などからも広く選択可能である。
【0035】一般に、真空蒸着により生じた蒸発飛翔分
子は、基板温度を低く設定すると、そのまま次々と付着
した場所で積層していき、平坦ではあるがボソボソの膜
質となる。これに対して、基板温度を上げて、この基板
温度を、蒸発飛翔分子のガラス転移温度以上の温度に設
定すると、付着した分子が基板上でマイグレーション
(分子移動)を起こし、平滑な膜を形成する。
【0036】ところが、図2、図3に示すように、さら
に基板温度を上昇させて、蒸発飛翔分子の融点近傍の温
度に基板温度を設定すると、付着分子同士の凝集が起こ
り、基板12の表面12aに丸みのあるドーム状の凝集
丘13が斑点状(島状)に散在するようになる。この凝
集丘13は、飛翔分子の量が多くなるとさらに凝集して
液滴となり、基板12から落下する。また、物質によっ
ては再蒸発が激しくなって膜形成が行われなくなってし
まう。よく観察すると、この凝集丘13は基板温度が融
点以下の場合でも生じており、蒸着膜を厚く成膜しない
間は、この凝集丘13は、微小間隔dを開けて互いに分
離していることがわかった。融点以下の温度でもこの現
象が観測されるのは、蒸着後も、飛翔分子が蒸発による
熱エネルギーを有しているためと考えられる。この現象
は、高温多湿の部屋で、窓ガラスに水滴が斑点状に付着
する現象と同様である。
【0037】この性質を利用して、相転移発熱材料を散
在させた凝集丘を作成し、この凝集丘を結着剤により被
覆するならば、相転移発熱材料の凝集丘が結着剤中に分
散された構成とすることができる。しかしながら、真空
蒸着された相転移発熱材料の粒子を結着剤中に分散させ
る方法は極めて限られており、良好な膜を得るのが一般
的に非常に困難である。
【0038】本発明では、結着剤を相転移発熱材料の微
粒子と交互に蒸着させる方法を見いだした。また、この
結着剤としてはポリイミドのモノマーがよく、相転移発
熱材料の粒子をこのモノマーで均一に蒸着により被覆
後、このモノマーを重合させる方法がよいことも見いだ
した。
【0039】さらに本発明では、相転移材料を微粒子状
で蒸着付与する工程、ついでポリイミドモノマーを蒸着
付与する工程、ついでポリイミドモノマーの予備加熱に
より部分硬化する工程、の各工程を繰り返すことによ
り、相転移発熱材料を微粒子状で散在させても、相転移
発熱層の厚膜化ができることを見いだした。
【0040】また、この予備加熱後の結着剤が塑性変形
可能な状態で、相転移材料の融点以上で加熱することに
より、ドーム状の相転移材料の微粒子は、表面張力によ
りさらに凝集して球状に成形することができることを見
いだした。このような球状の凝集丘は、これらの相転移
発熱材料が一般に球晶の成長により発熱するので、非晶
化、結晶化のサイクルにおける結晶化に際して球晶の成
長が容易となり、発熱が早い。
【0041】図4、図5に、結着剤としてポリイミドを
用いた場合の真空蒸着による相転移発熱層を形成する工
程とその工程により得られる膜の構成を模式図として示
す。なお、用いられる真空蒸着装置としては特に限定は
ないが、例えば、真空槽内部に独立して温度制御可能な
抵抗加熱方式の複数の蒸着源と、この蒸着源から飛翔す
る蒸着分子を制御するシャッター機構と、排気系とを備
え、基板支持台として芯金を保持して回転させる回転機
構を備えたものが用いられる。
【0042】図4に示すように、支持体としての芯金2
は加熱され(S1)、相転移発熱材料の融点(Seでは
217度C)近傍の温度に保持される。全系を真空に保
った状態で相転移発熱材料が真空蒸着されると、図5の
(a)のように、芯金2上にドーム状に相転移発熱材料
の粒子3´が析出する(第1層蒸着付与:S2)。この
とき、芯金2の温度を融点以下にすれば、相転移発熱材
料は再蒸発されることなく、効率よく成膜することがで
きる。また、相転移材料の平面方向の粒子濃度は、真空
蒸着される材料の量を多くすることにより増大させるこ
とができるが、あまり多いと平滑膜となり、粒子状とは
ならない。
【0043】ついで、芯金2を常温まで冷却する(S
3)。別々の蒸発源からポリイミドモノマーとしての芳
香族カルボン酸無水物と芳香族ジアミン等をモル比が当
モルとなるように蒸発源の温度を調整して粒子3´表面
に共蒸着(S4)させ、成膜する。蒸着面の温度が低い
ので、モノマーの蒸着膜は薄膜となり、図5の(b)に
示すように、粒子3´の表面を均一に被覆する。
【0044】ついで、120度Cの温度で予備加熱する
と(S5)、モノマー蒸着膜は部分的に硬化されて比較
的安定な膜4´を得ることができる。ポリイミドモノマ
ー蒸着膜は、相転移発熱材料の融点以下の温度、例え
ば、120°C程度の温度で予備加熱すると比較的安定
な塗膜を得ることができる。この塗膜は、粒子が被覆さ
れた状態で、内部の相転移発熱材料を非晶質化させるた
めに相転移発熱材料を熔融させても、その塗膜が熔融さ
れたり、分解されたりしない。
【0045】このS1〜S5の操作を繰り返すことによ
り、相転移発熱材料は、幾層にも積層させることができ
る(S6)。このようにして、相転移材料と結着剤の真
空蒸着とを交互に行えば、相転移発熱層の厚さを増大さ
せることができる。図5(b)に示される結着剤モノマ
ー表面4aは、層を重ねることにより境界は不鮮明とな
る。やがて、図5(c)に2点鎖線で示す境界4a´
は、図5(d)で示すように消滅する。
【0046】結着剤による被覆する方法は上述の方法に
限定されないが、結着剤のモノマー、オリゴマー、前駆
体などを真空蒸着により形成すれば、薄い均一な皮膜が
得られるのでよい。この真空蒸着に際して、基板温度を
低下させれば、前述した理由によりモノマーは凝集丘を
被覆するように均一な塗膜として蒸着できる。
【0047】このように相転移材料が積層された後に、
保護層の付与などの任意の加工(S7)をし、ついで硬
化反応(イミド化反応)を完結することができる(S
8)。硬化完結に先立ち保護層を付与すれば、相転移発
熱材料の粒子が融ける前に相転移発熱層の固定化をする
ことができる。
【0048】イミド化反応は、脱水反応であることによ
り、発生ガスを除去することは必要である。これは加熱
中に減圧することで実現できる。保護層などの層を付与
(S7)後にイミド化反応を完結するには、減圧のため
に一端を開放することが必要となる。これにより、相転
移発熱層中に水分が残存することなく、また、内部に気
泡などがない相転移発熱層を得ることができる。また、
内部を減圧にしながら、開放端を封止すれば、内部に気
泡のない定着ローラが得られる。このような定着ローラ
は、ローラの成型時、使用時の加熱により気泡発生等に
基づく変形が少なくなる。また、このイミド化工程で相
転移発熱材料の融点以上の温度に加熱される(S8)の
で、相転移材料の蒸着粒子は、結着剤内で溶融されて図
5(e)に示すように、球晶の成長が早い球状に成形さ
れる。
【0049】ついで、S9により急冷することにより、
すぐに利用できる定着ローラが得られる(S10)。
【0050】この発熱層の形成工程で、相転移発熱層の
機能を向上させるためなどに、他の添加剤を含めてもよ
い。例えば、熱伝導性の材料の粒子を分散させることに
より、相転移発熱層の熱導電性が高められる。
【0051】以下に実施例により詳細に説明する。
【0052】実施例1 真空槽内部に独立して温度制御可能な抵抗加熱方式の三
つの蒸着源(A,B,C)と、この蒸着源(A,B,
C)から飛翔する蒸着分子を制御するシャッター機構
と、排気系とを備え、基板支持台として芯金を保持して
回転させる回転機構を備えた真空蒸着装置を用いた。
【0053】蒸着材料として加水溶解還元法で製造され
た融点が217度Cの高純度Se(99.99%)と、
融点60度Cの無水ピロメリット酸PMDAと、融点1
70度Cの4,4´ジアミノジフェニルエーテルODA
とをそれぞれ別々の蒸発源(A,B,C)に投入した。
【0054】基板支持台に保持された円筒形のアルミニ
ウムからなる芯金を蒸発源に外表面を向けつつ回転さ
せ、その表面温度を190度Cに加熱保持しながら、蒸
発源Aを300度Cに通電加熱し、10-4Torrの真空度
でSeの蒸着を行った。芯金の表面はくすんで無光沢と
なり、顕微鏡で観察すると微小の凸状の凝集膜(直径数
十μm)が斑点状に無数付着していた。参考までに芯金
の温度を常温で同様に蒸着したところ一面が平滑な膜が
形成された。
【0055】次に芯金の温度を常温にもどし、PMDA
の蒸着源Bを150度C、ODAの蒸着源Cの温度を2
00度Cに保ちながらPMDA、ODAの蒸着を行っ
た。このときのPMDA,ODAのモル比は1:1であ
る。その後、真空槽内を大気圧として芯金の温度を12
0度Cに保つことにより、ポリイミドの硬化反応を行
い、ポリイミドの略平滑な膜を形成した。
【0056】以上の相転移発熱材料と結着剤の付与操作
を5回繰り返した。得られた膜(相転移発熱層)の膜厚
は、0.1mmであった。
【0057】その後、その相転移発熱層にフッ素樹脂P
FAの熱収縮チューブを被せて一端を封止し、他端を開
放させた状態でその開放端からロータリーポンプで減圧
しながら徐々に300℃まで加熱し、イミド化を完了さ
せた。さらに、その開放端を封止し、毎分10℃以上の
冷却速度で急冷して定着ローラ(ローラA)を作成し
た。ローラ表面は良好な平滑面を有していた。
【0058】実施例2 相転移発熱材料として、実施例1のSeに代えて、融点
200度Cの炭酸ジフェニルの誘導体DCDを蒸発源A
に投入した。
【0059】芯金の温度を180度Cに保持した以外は
実施例1と同様にして、DCDの蒸着を行った。得られ
た芯金の表面は無色半透明で実施例と同様に顕微鏡によ
り観察すると、微小な凸型の凝集膜が斑点状に無数に付
着していた。参考までに芯金の温度を常温で同様に蒸着
したところ一面が平滑な膜が形成された。
【0060】ついで、実施例1と同様にしてポリイミド
のモノマーPMDA、ODAを共蒸着させ、120度C
に加熱させる操作を5回繰り返すことにより相転移発熱
層5を形成させた。
【0061】さらに、実施例1と同様に表面保護層6を
付与後、毎分30℃以上の冷却速度で急冷して定着ロー
ラ(ローラB)を作成した。
【0062】比較例1 Se蒸着時の芯金温度を加熱せずに常温で行った以外は
実施例1と全く同様にした。300℃まで加熱し、イミ
ド化を完了させたところ、ローラ表面は軸方向に多数の
ドーナツ状のリング模様に凹凸が発生した。これは、相
転移発熱材料が熔融するときに、凝集塊が発生したため
と思われる。 その後、その開放端を封止して、実施例
1と同様に毎分10℃以上の冷却速度で急冷して定着ロ
ーラ(ローラC)を作成した。
【0063】参考例1 加水溶解還元法で製造された融点が217度Cの高純度
Se(99.99%)の微粒子をポリイミド前駆体(東
レ製 トレニース#3000)30%希釈液に分散して
塗液とした。この塗液を用い、スプレー塗布でアルミニ
ウムからなる芯金2に塗布した。自然乾燥後、約120
℃で20分加熱して、溶剤の乾燥と共に予備的にイミド
化を行った。これにより、平滑な相転移発熱層が形成さ
れた。
【0064】その後、その相転移発熱層にフッ素樹脂P
FAの熱収縮チューブを被せて一端を封止し、他端を開
放させた状態でその開放端からロータリーポンプで減圧
しながら徐々に300℃まで加熱し、イミド化を完了さ
せた。その後その開放端は封止され、これにより定着ロ
ーラが得られる。ついで、この定着ローラを毎分10℃
以上の冷却速度で急冷して定着ローラ(ローラD)を作
成した。
【0065】これらの実施例1、2で得られたローラ
A,B及び参考例1のローラDを株式会社リコー製の電
子写真複写機M210の定着装置に組み込み、ヒータ電
力960Wで加熱しながらローラの表面温度の上昇状況
等を調べてみたが、いずれも良好な立ち上がり温度を示
した。
【0066】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
以下の効果が期待できる。
【0067】請求項1の発明によれば、機械的な粉砕を
することなく、微粒子状で結着剤に散在された相転移発
熱層を有する定着ローラが得られる。この定着ローラ
は、相転移発熱材料の熔融、結晶化サイクルを繰り返し
ても相転移材料の凝集が起こらない。
【0068】請求項2の発明によれば、相転移発熱材料
は、機械的な粉砕をすることなく、真空蒸着により直
接、微粒子状として析出できるので製造が容易である。
【0069】請求項3の発明によれば、効率よく相転移
発熱層を作製できる。
【0070】請求項4の発明によれば、相転移発熱層の
製造工程は、完全ドライプロセスとなるので工程が簡略
化される。
【0071】請求項5の発明によれば、ポリイミドモノ
マーは、容易に蒸着ができる。また、このモノマー蒸着
膜は、予備加熱により相転移発熱材料の粒子が融ける前
に硬化でき、粒子間の凝集が防げる。
【0072】請求項6の発明によれば、厚み方向にも相
転移材料の微粒子が分散され、相転移に基づく発熱量を
増大できる。得られた相転移発熱層の発熱温度範囲は広
い。
【0073】請求項7の発明によれば、高温が必要なイ
ミド化は一工程でよい。
【0074】請求項8の発明によれば、ローラの成型
時、使用時の加熱により気泡発生等に基づく変形が少な
い定着ローラが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の定着ローラの構成の一例を示す縦断
面図である。
【図2】 真空蒸着により形成された凝集丘の形態を説
明する模式断面図である。
【図3】 図2の凝集丘を上面より見た模式図である。
【図4】 定着ローラの製造工程例を説明する工程図で
ある。
【図5】 (a)から(e)は図4の各工程で製造され
る半製品の模式断面図である。
【符号の説明】
1…定着ローラ 2…芯金 3…相転移発熱材料の微粒子 4…結着剤 5…相転移発熱層 6…保護層

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非晶質から結晶質への相転移の際に熱エ
    ネルギーを発生する相転移発熱材料の粒子が結着剤中に
    分散された相転移発熱層を有する定着ローラおいて、前
    記粒子は、真空蒸着により形成されたことを特徴とする
    定着ローラ。
  2. 【請求項2】 非晶質から結晶質への相転移の際に熱エ
    ネルギーを発生する相転移発熱材料の粒子を結着剤に分
    散させた相転移発熱層を有する定着ローラの製造方法に
    おいて、 前記粒子は、前記相転移発熱層を担持する支持体の温度
    を前記相転移発熱材料の融点近傍の温度にして真空蒸着
    して形成することを特徴とする定着ローラの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記支持体の温度は、前記相転移発熱材
    料の融点以下であることを特徴とする請求項2に記載の
    定着ローラの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記結着剤は、前記粒子を真空蒸着によ
    り形成した後に、前記支持体の温度を低下させて真空蒸
    着して形成することを特徴とする請求項2に記載の定着
    ローラの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記結着剤は、結着材料としてのポリイ
    ミドモノマーを蒸着して蒸着膜を形成する工程、前記蒸
    着膜を前記相転移発熱材料の融点以下の温度で予備加熱
    して、該蒸着膜を硬化する工程により付与されることを
    特徴とする請求項4に記載の定着ローラの製造方法。
  6. 【請求項6】 前記相転移発熱層は、前記支持体の温度
    を前記相転移発熱材料の融点近傍の温度にして真空蒸着
    することにより相転移発熱材料の微粒子を蒸着する工
    程、前記支持体の温度を低下させてポリイミドモノマー
    を前記微粒子上に真空蒸着することによりポリイミドモ
    ノマーの蒸着膜を付与する工程、前記蒸着膜を前記相転
    移発熱材料の融点以下の温度で予備加熱して硬化膜とし
    て形成する工程を繰り返すことを特徴とする請求項5に
    記載の定着ローラの製造方法。
  7. 【請求項7】 前記結着剤は、表面保護層を付与後に前
    記相転移発熱層を加熱してイミド化して形成することを
    特徴とする請求項6に記載の定着ローラの製造方法。
  8. 【請求項8】 前記表面保護層は少なくとも一端を開放
    して形成され、前記イミド化は前記開放端から水分を除
    去しつつ行われることを特徴とする請求項6に記載の定
    着ローラの製造方法。
JP17334397A 1997-06-30 1997-06-30 定着ローラ及びその製造方法 Pending JPH1124471A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013101984A (ja) * 2009-12-14 2013-05-23 Samsung Display Co Ltd 有機発光装置の製造方法及び有機発光装置

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013101984A (ja) * 2009-12-14 2013-05-23 Samsung Display Co Ltd 有機発光装置の製造方法及び有機発光装置

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