JPH11244373A - 骨修復材およびその製造方法 - Google Patents

骨修復材およびその製造方法

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JPH11244373A
JPH11244373A JP10048357A JP4835798A JPH11244373A JP H11244373 A JPH11244373 A JP H11244373A JP 10048357 A JP10048357 A JP 10048357A JP 4835798 A JP4835798 A JP 4835798A JP H11244373 A JPH11244373 A JP H11244373A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】補綴箇所から脱落しにくく、また新生骨が密に
増生置換する骨修復材を提供する。また、トリミング時
に形態崩壊し難い、比較的大きな機械的強度を有する骨
修復材を提供する。 【解決手段】カルボキシルメチルキチンとリン酸カルシ
ウム系材料の顆粒を混合した多孔性ブロック体で骨修復
材を構成する。そして、乾燥状態の上記ブロック体を一
方向プレスによって1/2の体積に圧縮する初期強度を
0.2MPa〜5MPaとする。また、リン酸カルシウ
ム材料の顆粒を混和したカルボキチルメチルキチン水溶
液を液体窒素中に滴下することにより凍結した粒体を粉
砕して微粉末とし、該微粉末を金型内に充填してからプ
レス成形を行い、上記金型から取り出したこの成形物を
凍結乾燥した後、真空熱処理を施すことによって上記の
ような骨修復材を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、老齢、疾病、事故
などによって失われた骨欠損部を再建するために充填さ
れる骨修復材料、特に形態保持性があって機械的強度が
比較的大きく、トリミングしても形態崩壊しない骨修復
材およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、上記骨修復材として、リン酸
カルシウム系材料の顆粒が用いられてきた。この顆粒は
骨欠損部に顆粒状態のまま充填されるもので、顆粒周囲
に新生骨が早期に増生し、この新生骨が各顆粒を包含し
て、上記骨欠損部を充填修復することを期待するもので
あった。
【0003】
【従来技術の課題】しかしながら、上記従来技術には次
のような問題があった。すなわち、顆粒状態のまま充填
されるのでポケット形状をなす骨欠損部以外には使用が
極めて困難である。また、欠損部への固定が困難で、充
填、縫合後に湿潤する血液、生体液による流出が起こり
易く、この流出により、欠損部が軟組織に充満されてし
まったり、流出した顆粒により、二次的な炎症を励起す
る恐れがある。さらに、骨形成が進行したとしても、顆
粒が多量に存在することにより新生骨の占有密度が小さ
く構造的に脆弱な状態である。また骨修復後のインプラ
ント埋入を考える場合、ハイドロキシアパタイト(以
下、HAPと略称する)の存在や骨質の脆弱性の為、ド
リル等による後加工は実質上不可能であるという不具合
があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記従来技術の課題を解
決するため、本発明者は熱架橋処理によりカルボキシル
メチルキチン(以下、CMキチンと略称する)のブロッ
ク体中にリン酸カルシウム系材料の顆粒を担持した骨修
復材が、有用であることを見いだし、まず、リン酸カル
シウム材料の顆粒を混和したCMキチン水溶液を急速冷
凍してから凍結乾燥を行い、その後、真空熱処理を施す
ことを特徴とする製法により、スポンジ状の柔らかな骨
修復材を開発した。
【0005】この骨修復材は、はさみ等で用意にトリミ
ングができ、また、補綴箇所からの脱落も少ない良好な
ものであったが、他方で、機械的強度の不足によりトリ
ミング中に形態崩壊してしまったり、補綴箇所で形態崩
壊してしまう恐れもあった。
【0006】そこで、本発明者はさらに鋭意研究を続
け、上記方法に、リン酸カルシウム材料の顆粒を混和し
たCMキチン水溶液を液体窒素中に滴下することにより
凍結した粒体を粉砕して微粉末とし、該微粉末を金型内
に充填してからプレス成形を行うという工程を加えるこ
とにより、骨修復材の強度の問題を解決できることを見
いだした。
【0007】さらに、このようにして得られる骨修復材
の強度として、乾燥状態の上記ブロック体を一方向プレ
スによって1/2の体積(1/2V)にする初期強度
(初期圧縮強度値)が0.2MPa〜5MPaの範囲内
であることが好ましいことを見いだした。
【0008】具体的に、本発明の骨修復材は、次のよう
な方法で作製することが可能である。
【0009】まず、カルボキシメチル化度50〜80%
のCMキチン粉末を蒸留水に溶解し、水溶液を調製し、
上記水溶液の重量にHAP顆粒あるいはTCP顆粒を混
入した後、溶液中にHAP顆粒あるいはTCP顆粒が均
一に分散するようにスターラーを用い十分に攪拌する。
【0010】次に、CMキチン水溶液を液体窒素中へ滴
下し、凍結した粒体を、ブレンダーにて粉砕し、微粉末
にする。この微粉末を室温の下、金型(サイズ:径10
mm〜30mm)に詰め、1〜8kgf/cm2 の範囲
の圧力で適宜加圧する。
【0011】その後、加圧成形体を金型から取り出し、
12時間〜24時間の範囲で凍結乾燥し、さらに、14
0℃〜160℃の範囲で12時間〜14時間の真空熱架
橋を施す。
【0012】なお、上記製造方法における諸条件として
は以下の範囲であることが好ましい。
【0013】・CMキチン:CM化度40〜100%、
重量平均分子量10万〜50万 脱アセチル化度40%以下 ・HAP顆粒:粒径範囲50μm〜300μm ・TCP顆粒:粒径範囲10μm〜100μm ・CMキチン水溶液濃度:3重量%〜10重量% ・ポア径:3〜50μm ・リン酸カルシウム径化合物間の平均距離:50〜40
0μm
【0014】
【作用】本発明の骨修復材は、図1および図2に示すよ
うにCMキチンとHAP,TCP,AWGCなどのリン
酸カルシウムの顆粒を混合した多孔性ブロック体からな
り、充填する骨欠損部の形状に合わせて、はさみ等によ
り切り出し、所定箇所に詰め込む。この時、本発明の骨
修復材は比較的大きな機械的強度を有するので、形態保
持性があって補綴箇所の形状に適合させるべくトリミン
グしても形態崩壊せず、また、補綴箇所にての形態崩壊
も起こりにくい。機械的強度としては、乾燥状態の上記
ブロック体を一方向プレスによって1/2体積に圧縮す
る初期強度を指標とし、該初期強度が0.2MPa〜5
MPa、特に1MPa〜4MPaの範囲であることが好
ましい。すなわち、上記初期強度が0.2MPa未満で
は、柔らかすぎてトリミング時に形態崩壊が生じやす
く、また補綴箇所での形態崩壊が起こる恐れがあり、他
方、初期強度が5MPaを超える場合、硬くなり過ぎ
て、トリミングなどによる自由な形状調整が非常に難し
くなる恐れがあるためである。
【0015】ところで、本発明の製造方法によれば、多
孔性ブロック体(以下、ブロック体と略称する)のポー
ラスの平均孔径が3μm〜50μm程度と構造が密とな
る。
【0016】これは、リン酸カルシウム材料の顆粒を混
和したCMキチン水溶液を液体窒素中に滴下することに
より凍結した粒体を粉砕して微粉末とし、該微粉末を金
型内に充填してからプレス成形するという工程のためで
あると考えられる。これに対して、このような工程を加
えない場合、ブロック体のポーラスの平均孔径が数十μ
m〜100μm程度となる。なお、上記平均孔径が3μ
m未満の場合、硬くなり過ぎ、他方、50μmを超える
と、柔らかくなり過ぎる恐れがある。
【0017】この骨修復材は顆粒ではなく、生体内で極
めて安全で生体内分解性のCMキチンにリン酸カルシウ
ムの顆粒が分散せしめてあり且つブロック状であって、
上記詰め込みによって充填されるので、充填箇所から脱
落する恐れがない。従って、充填後、本格的な骨新生反
応が起こるまでの不安定な期間、CMキチンのスポンジ
体中によりリン酸カルシウム系材料の顆粒が保持された
状態で、CMキチンの透過吸収が可能で各種細胞が貯留
される環境を提供する。そして、この環境の下、リン酸
カルシウム系材料の顆粒が新生骨形成の起因となり、C
Mキチンの分解吸収窩に経時的に新生骨が形成されてい
く。以上から、新生骨増生のスペース、占有率が大き
く、効率的で天然骨の割合の多い骨修復が保証される。
【0018】
【実施例】以下、本発明を実施例によって詳細に説明す
る。
【0019】次のような順序で、前記骨修復材を作製し
た: 1)カルボキシメチル化度50〜80%のCMキチン粉
末を蒸留水に溶解し、水溶液を表1に示す濃度に調製し
た。 2)上記水溶液の重量に対して表1に示すような重量比
のHAP顆粒を混入し、溶液中にHAP顆粒が均一に分
散するようにスターラーを用い十分に攪拌した。
【0020】なお、HAPの粒径サイズ範囲は60〜1
50μm、CMキチン分子量分布範囲は10〜200万
とした。 3) 上記2)の混合溶液を液体窒素浴中に滴下し、凍
結した粒体を得る。 4) 上記3)の粒体をブレンダーにて粉砕し、微粉末
とした。 5) 上記4)の微粉末をφ2cm、高さ2cmの金型
に充填し、プレス機械で、表1に示す圧力で加圧した。 6) 上記5)の成形体を金型から取り出し、凍結乾燥
した。 7 上記6)の乾燥物を140℃〜160℃の温度
で、24時間、真空熱処理し、CMキチンを水難溶化
(熱固定)熱架橋させた。
【0021】
【表1】
【0022】このようにして作製した各試料について、
一方向圧縮のプレス加工を施し、体積を1/2にするの
に最低限必要な初期圧縮強度値を測定した。その結果を
表1に示す。また、プレス加工を行っていない試料を用
いてその平均孔径を測定し、また、カッターナイフやは
さみ等を用いて各試料から径4mm、高さ3mmの形状
と径4mm、高さ6mmの形状を切り出す作業を行い、
形態崩壊の発生の有無を確認した。その結果を表1に示
す。
【0023】なお、比較例として、次のような方法で作
製した試料を得た。
【0024】まず、カルボキシメチル化度50〜80%
でCMキチン粉末を蒸留水に溶解し、濃度5重量%の水
溶液を調製し、この上記水溶液の重量に対して等倍量の
HAP顆粒を混入し、溶液中にHAP顆粒が均一に分散
するようにスターラーを用い十分に攪拌した。なお、H
APの粒径サイズ範囲は60〜150μm、CMキチン
分子量分布範囲は10〜200万とした。この混合溶液
を金属製の容器中に注入し、ドライアイスエタノール浴
中(約マイナス40℃)でHAP顆粒が均一に分散して
いる間に冷凍させた。そして、上記容器ごと、凍結乾燥
処理を行い、乾燥物を140℃〜160℃の温度で、2
4時間、真空熱処理し、CMキチンを水難溶化(熱固
定)熱架橋させた。この比較例品についても、上記1)
〜7)のステップで作製した試料と同様に初期圧縮強度
値を測定し、平均孔径を測定し、トリミング時の形態崩
壊の発生の有無を確認した。その結果を表1に示す。
【0025】表1に示すように、本発明の範囲内、すな
わち、前記初期圧縮強度が0.2〜5MPaである試料
番号2〜10は、形態崩壊が無かったのに対して、試料
番号1および比較例品は形態崩壊が起こる場合があっ
た。なお、試料番号11は、トリミングが非常に困難で
あった。また、前記初期圧縮強度が1〜4MPaの範囲
内にある、試料番号4、5、6、8は特にトリミング作
業時の操作性が良好であった。
【0026】実験例1 次に、これらの骨修復材の固定性および骨修復能を観察
するべく、以下の動物実験を行った。まず、図3に示す
ように家兎R(雌)の頭蓋骨の骨膜2を剥離し、その状
態で歯科用バーを用いて約4mm径、深さ3mmの貫通
孔を正中の左右両側対称に各4つ形成し、これらの貫通
孔に円柱体に切り出した前記試料1〜4および比較例の
骨修復材のブロック体Nを埋入した後、上記、骨膜2を
縫合封鎖した。図4は、この埋入状態を示し、同図に示
すように脳硬膜3は損傷させずに既存骨4とともに残し
ておく。この状態で、2週、4週、8週経過させ、それ
ぞれの時点で上記家兎を屠殺して頭蓋骨から骨修復材及
び周囲組織を同時に採取した。そして、これらをエタノ
ール固定、脱水した後に樹脂包理し、薄切した切片をド
レイジンブルー染色を施して組織標本を作製した。
【0027】次に、この組織標本の顕微鏡写真を撮影
し、得られた写真から骨修復材の固定性および骨修復能
を観察した。
【0028】この実験の結果は次の通りであった。
【0029】試料番号2〜10は骨修復材の離脱や位置
ずれも一切なく、新生骨の密なる増生が確認できた。こ
れに対して、試料番号1と比較例品は一部に形態崩壊が
見られ、その部分については、新生骨の増生がやや疎で
あった。
【0030】実験例2 次に、実験例と補綴箇所、形態を変えた場合の骨修復材
の固定性および骨修復能を観察するべく、以下の動物実
験を行った。
【0031】まず、家兎脛骨内則面に径4mmのドリル
にて骨欠損孔を形成した後、径約3mm、長さ約6mm
の円柱状に成形した前記試料4〜7を上記形成孔から内
部に埋入し、骨膜、筋膜、上皮の順に縫合した。オペか
ら2週、4週、8週経過させ、それぞれの時点で上記家
兎を屠殺して試料埋入部の骨修復材及び周囲組織を同時
に採取した。そして、これらをエタノール固定、脱水し
た後に樹脂包理し、薄切した切片をドレイジンブルー染
色を施して組織標本を作製した。次に、この組織標本の
顕微鏡写真を撮影し、得られた写真から骨修復材の固定
性および骨修復能を観察した。
【0032】この実験の結果は次の通りであった。
【0033】試料番号2〜10は骨修復材の離脱や位置
ずれも一切なく、新生骨の密なる増生が確認できた。こ
れに対して、試料番号1と比較例品は一部に形態崩壊が
見られ、その部分については、新生骨の増生がやや疎で
あった。
【0034】
【発明の効果】叙上のように、本発明の骨修復材は、C
MキチンとHAP,TCP,AWGCなどのリン酸カル
シウムの顆粒を混合した多孔性ブロック体からなり、機
械的強度が比較的大きいので、形態保持性があって補綴
箇所の形状に適合させるべくトリミングしても形態崩壊
せず、また、補綴箇所から脱落しにくくて密なる新生骨
の増生を保証するという優れた効果を奏するものであ
る。
【0035】また、本発明の製造方法によれば、上記の
ような骨修復材を安定的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の骨修復材の斜視図である。
【図2】図1における領域Aの拡大図である。
【図3】実施例における動物実験の態様を示すもので家
兎の切開した頭部の上面図である。
【図4】図3のB−B線図である。
【符号の説明】
R 家兎 N ブロック体 2 骨膜 3 脳硬膜 4 既存骨 5 新生骨

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】カルボキシルメチルキチンとリン酸カルシ
    ウム系材料の顆粒とを混合した多孔性ブロック体からな
    り、且つ、乾燥状態の上記ブロック体を一方向プレスに
    よって1/2の体積に圧縮する初期強度が0.2MPa
    〜5MPaであることを特徴とする骨修復材。
  2. 【請求項2】上記ブロック体の平均孔径が3〜50μm
    であることを特徴とする前記請求項1記載の骨修復材。
  3. 【請求項3】リン酸カルシウム材料の顆粒を混和したカ
    ルボキチルメチルキチン水溶液を液体窒素中に滴下する
    ことにより凍結した粒体を粉砕して微粉末とし、該微粉
    末を金型内に充填してプレス成形を行い、上記金型から
    取り出したこの成形物を凍結乾燥した後、真空熱処理を
    施すことを特徴とする骨修復材の製造方法。
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JP2002011090A (ja) * 2000-06-30 2002-01-15 Kyocera Corp 吸収性生体材料とその製造方法
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