JPH11242031A - O−157検出用測定チップ - Google Patents

O−157検出用測定チップ

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JPH11242031A
JPH11242031A JP4529398A JP4529398A JPH11242031A JP H11242031 A JPH11242031 A JP H11242031A JP 4529398 A JP4529398 A JP 4529398A JP 4529398 A JP4529398 A JP 4529398A JP H11242031 A JPH11242031 A JP H11242031A
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JP
Japan
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film
measurement chip
surface plasmon
plasmon resonance
resonance biosensor
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JP4529398A
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English (en)
Inventor
Ryohei Nagata
良平 永田
Hiroyuki Nakamura
洋之 中村
Yoshikazu Nakagawa
美和 中川
Kimiharu Sato
公治 佐藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Dai Nippon Printing Co Ltd
Original Assignee
Dai Nippon Printing Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 表面プラズモン共鳴バイオセンサー用の測定
チップにおいて、全血をそのまま使用することができ、
ノンラベルで簡便かつ迅速に測定できるとともに、固定
化するO−157に対する抗体が金属膜と強固にかつ容
易に結合する手段を見出すことにある。 【解決手段】 シランカップリング剤により形成された
有機ケイ素膜を形成する疎水結合或いは静電結合によ
り、透明基板上に配置される金属膜上にO−157に対
する抗体を固定化させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】抗原抗体反応に基づく表面プ
ラズモン共鳴バイオセンサー(SPRセンサー)用測定
チップを用いて、O−157を測定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、臨床試験等で免疫反応を利用した
測定が数多く行われているが、従来法では煩雑な操作や
標識物質を必要とするため、標識物質を必要とすること
なく、リガンドの変化を高感度に検出することのできる
表面プラズモン共鳴(SPR)を利用した免疫センサー
が使用されている。このような表面プラズモン共鳴を利
用した測定装置(表面プラズモン共鳴バイオセンサー)
で一般的に使用される測定チップは、図2に示すような
構造を有する。即ち、ガラス基板1’上に成膜された金
属膜2’の上に、多孔性材料5が形成されており、この
多孔性材料5の表面及び内部に酵素、抗体等の生理活性
物質4’が坦持又は固定されている。
【0003】この多孔性材料5としては、例えば合成繊
維、天然繊維、無機繊維等からなる織物、編物、不織布
や、多孔性の無機又は有機材料などが使用される(特開
平3−164195号公報参照)。また、市販品(BIAc
ore 2000用、ビアコア社製)では、この多孔性材料5と
してカルボキシメチルデキストランが用いられている。
しかしながら、測定対象物と実質的にかつ効率的に相互
作用する生理活性物質は、多孔性材料5の表面に存在す
るだけであるため、多孔性材料5の内部に坦持又は固定
されている生理活性物質は有効に機能せず、その分感度
が低下することとなる。
【0004】また、生理活性物質を金属膜に固定する方
法としては、LB(Langmuir-Blodgett)法が用いられ
る場合もあるが(特開平5−288672号公報参
照)、LB膜と金属膜との結合が弱く、LB膜が生理活
性物質と共に脱落するという問題がある。これに関し
て、本出願人は先に特願平9−73646号として出願
したが、更により生理活性物質が金属膜と、より強固に
かつ容易に結合する手段が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、表面
プラズモン共鳴バイオセンサー用の測定チップにおい
て、全血を全血をそのまま使用することができ、ノンラ
ベルで簡便かつ迅速に測定できるとともに、固定化する
O−157に対する抗体が金属膜と強固にかつ容易に結
合する手段を見出すことにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題に鑑み鋭意研究
の結果、本発明者は、疎水結合或いは静電結合により金
属膜上にO−157に対する抗体を固定化させることが
課題解決に有効であることを見出した。従来の金属表面
に反応性単分子膜を介してタンパク質を反応固定する方
法では、一端に反応性官能基を有し他端に金属表面上の
酸化膜と反応し吸着される活性基を有する有機分子を用
いて、金属表面に化学吸着法により反応性単分子膜を形
成した後、前記反応性官能基を化学処理して-OH基を付
加し、更にシアノブロマイド法やアルデヒド法を用い
て、単分子膜表面をタンパク質のアミノ基と反応する官
能基にタンパクのアミノ基を反応させて固定することを
構成要件としているので、タンパク質を固定するための
試薬が必要であり、その為に工程数が増え、反応に要す
る時間が多くかかるという欠点を有していた。そこで、
本発明では、化学結合(共有結合)に代えて疎水結合或
いは静電結合を起こさせることにより、この欠点を解消
させた。
【0007】すなわち、本発明は、(1)透明基板、該
透明基板上に配置される金属膜及び該金属膜上に疎水結
合あるいは静電結合で配置されるO−157に対する抗
体を備えていることを特徴とする表面プラズモン共鳴バ
イオセンサー用測定チップ、(2)前記疎水結合あるい
は静電結合が有機ケイ素膜を形成することを特徴とする
(1)に記載の表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測
定チップ、(3)前記有機ケイ素膜がシランカップリン
グ剤により形成された膜であることを特徴とする、
(2)に記載の表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測
定チップ、(4)透明基板上に配置される金属が金であ
ることを特徴とする(1)記載の表面プラズモン共鳴バ
イオセンサー用測定チップ、(5)疎水結合による膜が
金属とフッ素の化合物又は金属とフッ素の混合物を主成
分とすることを特徴とする(1)記載の表面プラズモン
共鳴バイオセンサー用測定チップ、(6)前記金属が金
であることを特徴とする(5)記載の表面プラズモン共
鳴バイオセンサー用測定チップ、(7)疎水結合による
膜が金属と炭素の化合物又は金属と炭素の混合物を主成
分とすることを特徴とする(1)記載の表面プラズモン
共鳴バイオセンサー用測定チップ、(8)前記金属が金
であることを特徴とする(7)記載の表面プラズモン共
鳴バイオセンサー用測定チップ、(9)疎水結合による
膜がフッ素系ガスを含むプラズマに曝すことにより形成
されることを特徴とする(1)記載の表面プラズモン共
鳴バイオセンサー用測定チップ、(10)疎水結合による
膜が炭素を含むプラズマに曝すことにより形成されるこ
とを特徴とする(1)記載の表面プラズモン共鳴バイオ
センサー用測定チップ、(11)疎水結合による膜がシロ
キサンを主成分とすることを特徴とする(1)記載の表
面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定チップ、(12)
疎水結合による膜がフッ素含有有機化合物を主成分とす
ることを特徴とする(1)記載の表面プラズモン共鳴バ
イオセンサー用測定チップ、(13)疎水結合あるいは静
電結合による膜がチオールであることを特徴とする
(1)記載の表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定
チップ、(14)前記チオール膜がアルカンチオールによ
って形成された膜であることを特徴とする(13)記載の
表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定チップ、(1
5)透明基板上に金属膜を配置した後、該金属膜の上に
疎水結合または静電結合により膜を形成し、次いで該膜
上にO−157に対する抗体を配置することを特徴とす
る、表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定チップの
製造方法、(16)(1)記載の測定用チップを用いてO
−157を測定する方法に関するものである。
【0008】疎水結合を起こさせる場合は、疎水表面を
最外層に有する必要があるので、飽和アルキル鎖末端あ
るいはフッ素原子を含む金化合物または金とフッ素の混
合物を用いる。疎水結合において、フッ素原子を含む金
化合物または金とフッ素の混合物を形成するためには、
従来の薄膜形成技術である、スパッタ法、真空蒸着法、
イオンプレーティング法、CVD法、プラズマ重合法、
ドライエッチング法、スピンコーティング法等が利用で
きる。疎水結合の固定化手順を図9に示す。
【0009】スパッタ法によってフッ素原子を含む金化
合物または金とフッ素の混合物を主成分とする薄膜を得
るためには、金又は表面をフッ素化させた金を主体とす
るターゲットを用い、アルゴン、ネオン、キセノン、ヘ
リウム、窒素等のスパッターガス単独又はこれらのスパ
ッターガスとフッ素、四フッ化炭素、六フッ化硫黄、三
フッ化窒素、三フッ化塩素等のフッ素源となるガスとを
組み合わせた雰囲気中で、直流又は高周波放電によりス
パッター成膜する。このとき、必要に応じて酸素、窒
素、炭酸ガス等の酸素源、窒素源、炭素源となるガスを
混合することもできる。ここで、雰囲気ガスの組成、圧
力、スパッター電力等の成膜条件を変えることにより、
膜の組成、組織、構造等を変え、疎水性、屈折率、消衰
係数を調整することができる。
【0010】真空蒸着法によってフッ素原子を含む金化
合物または金とフッ素の混合物を主成分とする薄膜を得
るためには、タングステン製バスケット、タングステン
メッキされたコイルまたはボート、カーボンるつぼ等に
よる抵抗加熱法、又は、電子線照射によるいわゆるEB
蒸着法により、金、又は予めフッ素化させた金を蒸着源
として用いる。
【0011】この際、フッ素、四フッ化炭素及びその他
のフッ化炭素化合物、六フッ化硫黄及びその他のフッ化
硫黄化合物、三フッ化窒素、三フッ化塩素等のフッ素源
となるガスと、必要に応じて、酸素、窒素、炭酸ガス等
の酸素源、窒素源、炭素源となるガスとの混合ガスを雰
囲気とすることができる。この場合も、蒸着条件を変え
ることにより、膜の組成、組織、構造等を変え、疎水
性、屈折率、消衰係数を調整することができる。
【0012】さらに、イオンプレーティング法によっ
て、フッ素原子を含む金化合物または金とフッ素の混合
物を主成分とする薄膜を得るためには、金、又は予めフ
ッ素化させた金を蒸着源として用い、フッ素、四フッ化
炭素、六フッ化硫黄、三フッ化窒素、三フッ化塩素等の
フッ素源となるガスと、必要に応じて、酸素、窒素、炭
酸ガス等の酸素源、窒素源、炭素源となるガスとの混合
ガスを雰囲気とすればよい。この場合も、成膜条件によ
り、疎水性、屈折率、消衰係数を調整することができ
る。
【0013】CVD法としては、金表面にシロキサン膜
を主成分とする薄膜を形成するために、ヘキサメチレン
ジシロキサン(HMDSO)等のシロキサンモノマーを
アルゴン等のキャリアーガスで導入し、酸素等の雰囲気
中で化学気相成長(CVD)法で成膜する。必要に応じ
て、フッ素含有シロキサンモノマーや四フッ化炭素等の
フッ素源となるガスを混合することもできるし、また、
シロキサンモノマーを入れずに、フッ素源ガス等を用い
てフッ素化合物(プラズマ重合膜)を形成することもで
きる。ここで、雰囲気ガスの組成、圧力、電力等の成膜
条件を変えることにより、膜の組成、組織、構造等を変
え、疎水性等を調整することができる。スピンコーティ
ング法としては、例えばアモルファスフッ素樹脂である
「サイトップ(アサヒガラス製)」を金属膜上に塗布す
ることにより、SPR基板として供することができる。
【0014】上記の説明は、フッ素原子を含む金化合物
または金とフッ素の混合物を対象に行ったが、フッ素の
代わりに炭素を用いても同様である。一方、疎水結合の
一つとして、有機ケイ素膜を、シランカップリング剤を
用いて、シランカップリング剤中の加水分解基を、金属
膜2中の金属原子と結合させ、末端はO−157に対す
る抗体と物理吸着による結合を生ぜしめる方法がある。
これにより金属膜2、有機ケイ素膜3及び生理活性物質
の三者は固定化される。有機ケイ素膜3とは、Si−O
及びSi−C結合を分子内に含む高分子からなる膜をい
う。
【0015】シランカップリング剤とは、その分子中に
ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基のよう
な有機材料と親和性のある有機官能基と、メトキシ基、
エトキシ基のような無機材料と親和性のある加水分解基
を有する有機ケイ素化合物のことをいう。本発明に使用
できるシランカップリング剤は、上記定義に該当するも
のであればいかなるものでもよく、構造式CF3(C
2)nSi(OCH33のトリフルオロメチルトリメ
トキシシラン、2、2、2−トリフルオロメチルトリメ
トキシシラン、3、3、3−トリフルオロプロピルトリ
メトキシシラン、4、4、4−トリフルオロブチルトリ
メトキシシラン、8、8、8−トリフルオロオクチルト
リメトキシシラン、18、18、18−トリフルオロオ
クタデシルトリメトキシシラン等、構造式CF3(C
2)nSi(OCH2CH33 のトリフルオロメチル
トリエトキシシラン、4、4、4−トリフルオロブチル
トリエトキシシラン、アミノプロピルジエトキシメチル
シラン、18、18、18−トリフルオロオクタデシル
トリエトキシシラン等、構造式CH3(CH2)nSi
(OCH33 のメチルトリメトキシシラン、エチルト
リメトキシシラン、プロピルルトリメトキシシラン、オ
クタデシルトリメトキシシラン等、構造式CH3(C
2)nSi(OCH2CH33のメチルトリエトキシシ
ラン、ペンチルトリエトキシシラン、オクタデシルトリ
メトキシシラン等を単独又は組み合わせて使用すること
ができる。なお、上記構造式のnはいずれも0〜17の
整数である。
【0016】次に、静電結合については、物理吸着法と
して金表面にO−157に対する抗体を固定化するため
に、両者の間に硫黄化合物を用いることが可能であり、
一般に硫黄化合物の中でも、操作性、緻密性、安定性な
どに鑑み、チオール、中でもアルカンチオールが本発明
の場合、特に適している。なお、チオール化合物の場合
疎水結合も可能である。
【0017】アルカンチオールとは、直鎖アルキル鎖
の、一方の末端にメチル基、アミノ基、メルカプト基、
トリフルオロ基のような有機材料と親和性のある有機官
能基と、他方の末端にSH基を有する有機硫黄化合物の
ことをいう。アルカンチオールとしては、疎水結合の場
合、1-プロパンチオール、1-ブタンチオール、1-ヘキサ
デカンチオール等CH3(CH2)nSH(n=1〜15)の
構造式を有するものである。また、静電結合の場合、メ
ルカプト酢酸、3-メルカプトプロピオン酸等HOOC
(CH2)nSH(n=1〜15)や、アミノエタンチオー
ル等H2N(CH2)nSH(n=1〜15)が挙げられる。
【0018】pHをアルカリ側に傾けることにより、末
端カルボキシル基がアニオンリッチとなり、これがO−
157に対する抗体のプラス荷電を有する官能基(例え
ばリジン残基中のアミノ基)と静電結合を形成する。ま
た、pHを酸性側に傾けることにより、カチオンリッチ
となり、これがO−157に対する抗体のマイナス荷電
を有する官能基(例えばアスパラギン酸残基中のカルボ
キシル基)と静電結合を形成する。
【0019】なお、静電結合による有機ケイ素膜の形成
も可能である。例えば、シランカップリング剤として、
構造式H2N(CH2)nSi(OCH33 のアミノメ
チルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリメトキ
シシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、4
−アミノブチルトリメトキシシラン、8−アミノオクチ
ルトリメトキシシラン、18−アミノオクタデシルトリ
メトキシシラン等、H2N(CH2)nSi(OC25
3 のアミノメチルトリエトキシシラン、2−アミノエチ
ルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキ
シシラン、5−アミノペンチルトリエトキシシラン、8
−アミノオクチルトリメトキシシラン、18−アミノオ
クタデシルトリメトキシシラン等を用いることにより、
pHを酸性側に傾け、末端のアミノ基がカチオンリッチ
となる。これに対して、マイナス荷電を有する官能基
(カルボキシル基、スルフォニル基等)と4級化アミノ
基が静電結合を形成する。なお、上記構造式のnはいず
れも0〜17の整数である。
【0020】静電結合の固定化手順を図10に示す。な
お、本発明の特徴の一つとしては、全血をそのまま使用
することができ、ノンラベルで簡便かつ迅速に測定でき
ることが挙げられる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において用いる表面プラズモン共鳴バイオセンサ
ー用測定チップ(以下、単に「測定チップ」という)と
は、表面プラズモン共鳴バイオセンサーに使用されるチ
ップであって、該センサーより照射された光を透過及び
反射する部分、並びにO−157に対する抗体及びそれ
を固定化する部分とを含む部材をいい、該センサーの本
体に固着されるものであってもよく、また脱着可能なも
のであってもよい。
【0022】本発明で用いる測定チップは、透明基板、
該透明基板上に配置される金属膜、該金属膜上に配置さ
れる疎水結合又は静電結合した膜、及び該膜上に配置さ
れるO−157に対する抗体を備えている。ここで、
「透明基板上に配置される金属膜」とは、金属膜が直接
接して透明基板上に配置されている場合のほか、金属膜
が透明基板に直接接することなく、他の層を介して配置
されている場合をも含む意である。「金属膜上に配置さ
れる疎水結合又は静電結合した膜」及び「該膜上に配置
されるO−157に対する抗体」も上記と同様の意味で
ある。本発明の一例による測定チップの断面概略図を、
有機ケイ素膜を形成する方法を例として図1に示す。
【0023】本実施例により用いられる測定チップは、
透明基板1と、透明基板1上に形成された金属膜2と、
金属膜2の上に形成された有機ケイ素膜3と、有機ケイ
素膜3の表面に固定化されたO−157に対する抗体と
を有する。透明基板1としては、通常表面プラズモン共
鳴バイオセンサー用の測定チップに使用されるものであ
ればどのようなものでもよく、一般的にはガラス、ポリ
エチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどのレー
ザー光等に対して透明な材料からなるものが使用でき、
偏光に対して異方性を示さず、かつ加工性の優れた材料
が望ましく、その厚さは0.1 〜20mm程度である。
【0024】金属膜2としては、表面プラズモン共鳴が
生じ得るようなものであれば特に限定されない。この金
属膜2に使用することのできる金属の種類としては、
金、銀、銅、アルミニウム、白金等が挙げられ、それら
を単独で又は組み合わせて使用することができる。ま
た、上記透明基板1への付着性を考慮して、透明基板1
と金、銀等からなる層との間にクロム等からなる介在層
を設けてもよい。金属膜2の膜厚は、100 〜2000Åであ
るのが好ましく、特に200 〜600 Åであるのが好まし
い。3000Åを超えると、媒質の表面プラズモン現象を十
分検出することができない。また、クロム等からなる介
在層を設ける場合、その介在層の厚さは、5〜50Åであ
るのが好ましい。
【0025】金属膜2の形成は常法によって行えばよ
く、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティン
グ法、電気めっき法、無電解めっき法等によって行うこ
とができる。これらの方法の中でもスパッタ法を用いる
のが好ましい。有機ケイ素膜3は、ケイ素原子が上下方
向に重ならない単分子層膜であることが好ましい。単分
子層膜にすることにより、O−157に対する抗体と相
互作用する測定対象物と、入射した光が反射する面との
距離を短くすることができ、良好な感度が得られるとと
もに、使用するシランカップリング剤の量を必要最小限
に抑え、コストの低減化を図ることができる。
【0026】また、有機ケイ素膜3は、最密充填構造を
とるのが好ましい。最密充填構造とは、有機ケイ素膜3
を構成するSi及びOの網目構造中に他の分子が貫入す
る余地のないほど、網目構造が緻密であることをいう。
最密充填構造をとることにより、O−157に対する抗
体を高い密度で均等に固定することができ、測定感度を
向上させることができる。有機ケイ素膜3が最密充填構
造をとるかどうかは、以下の方法により確認することが
できる。
【0027】プロピルエトキシシラン(シランカップリ
ング剤である3−アミノプロピルトリエトキシシランの
アミノ基を水素原子で置換した化合物)を用いて金属膜
2上に有機ケイ素膜3を形成させる。プロピルエトキシ
シランは、強い疎水性を有する化合物なので、有機ケイ
素膜2の表面の濡れ程度により、プロピルエトキシシラ
ンの密度(即ち、有機ケイ素膜3の細密充填の程度)を
知ることができる。即ち、シリンジにより蒸留水を滴下
した際に表面が一様に水滴を弾くのであれば有機ケイ素
膜3は細密充填構造をとっており、表面が部分的にしか
水を弾かないのであれば、細密充填構造をとっておら
ず、Si及びOの網目構造に空隙が存在することが推測
される。
【0028】有機ケイ素膜3は、例えば、シランカップ
リング剤を用いることにより形成させることができる。
具体的には、シランカップリング剤の飽和蒸気中に金属
膜2を一定時間暴露する方法(飽和蒸気法)、シランカ
ップリング剤を含む溶液中に金属膜2を一定時間浸漬す
る方法(浸漬法)、スピンコータを用いる方法(スピン
コーティング法)、グラビア印刷機を用いる方法(グラ
ビア法)などにより成膜することができる。本発明にお
いては、これらのいずれの方法を用いてもよいが、細密
充填構造をとる単分子層膜を形成させるためには、飽和
蒸気法を用いるのが好ましい。
【0029】飽和蒸気法においては、暴露時の温度、湿
度なども単分子層構造及び細密充填構造の形成に影響を
与えるが、暴露時間が最も重要な要素である。暴露時間
が長すぎると単分子層構造が得られず、また、暴露時間
が短すぎると細密充填構造が得られない。暴露時間は、
通常、1〜600 分とするのが好ましく、15〜90分とする
のが更に好ましい。
【0030】本発明における有機ケイ素膜3は、以下の
ような利点を有する。 O−157に対する抗体を金属膜2に極めて近い位
置に固定化することができるので、従来の測定チップを
使用する場合よりも大幅に測定感度を向上させることが
できる。 成膜が容易であり、また、一度に大量の成膜処理が
できる。 シランカップリング剤の種類を変えることにより、
物理吸着に適切な膜厚だけでなく、表面改質、官能基導
入などの化学修飾が可能となる。 本発明の測定チップは、有機ケイ素膜3に、直接O−1
57に対する抗体を固定して使用する。
【0031】通常は抗体4のFcフラグメントが有機ケ
イ素膜3の表面のみに固定化され、抗体は単分子層状態
に形成される。但し、抗体4のFabフラグメントが有
機ケイ素膜3から離れる程、感度や反応速度が低下する
ため、図3に示すようにFabフラグメント(図3(a)
)又はF(ab')2 フラグメント(図3(b) )を直接有
機ケイ素膜3に固定化して、感度や反応速度を向上させ
てもよい。O−157に対する抗体4の厚さは、使用す
るO−157に対する抗体自体の大きさにもよるが、10
0 〜3000Åであるのが好ましく、特に100 〜1000Åであ
るのが好ましい。
【0032】O−157に対する抗体の固定化方法は常
法によって行えばよく、例えば、所定量のO−157に
対する抗体を有機ケイ素膜3に所定時間接触させること
により固定化することができる。また、フローセル型の
表面プラズモン共鳴バイオセンサーに測定チップを設置
して一定流量のO−157に対する抗体を所定時間(所
定量)流すことによっても固定化できる。
【0033】抗体4のFabフラグメントを直接有機ケ
イ素膜3に固定化する場合には、パパインを用いて抗体
4を部分分解した後、同様の処理を行えばよい。一方、
抗体4のF(ab')2 フラグメントを直接有機ケイ素膜
3に固定化する場合には、ペプシンを用いて抗体4を部
分分解した後、同様の処理を行えばよい。このようにシ
ランカップリング剤に直接O−157に対する抗体を強
固に固定化することにより、当該測定チップを洗浄して
もO−157に対する抗体の固定化を維持できるため、
繰り返し測定に使用することができるという利点が得ら
れる。
【0034】本発明の測定チップは、例えば、図4に示
されるような表面プラズモン共鳴バイオセンサーに使用
することができる。この表面プラズモン共鳴バイオセン
サーは、カートリッジブロック7と、光源8と、検出器
9とを有し、カートリッジブロック7の上に本発明の測
定チップ10を設置して使用する。測定チップ10は、透明
基板が上になるように設置する。カートリッジブロック
7の上面には凹部が設けられており、この凹部と上記測
定チップ10とで測定セル71が構成される。測定セル71
は、流路72、73によりカートリッジブロック7の外部に
連通しており、試料は流路72を通じて測定セル71中に流
れ込み、測定に供された後流路73を通じて外部に排出さ
れる。光源8からは、測定チップ10の透明基板に向かっ
て単色光が照射され(入射光80)、測定チップ10の裏面
に設けられた金属膜で反射したその反射光90が、検出器
9に入光する。検出器9では、反射光90の強度を検出す
ることができる。
【0035】上記のような構造によって、ある入射角θ
に対して谷を形成する反射光強度曲線が得られる。反射
光強度曲線における谷は、表面プラズモン共鳴によるも
のである。即ち、光が測定チップ10の透明基板と外との
界面で全反射するときに、その界面にエバネッセント波
といわれる表面波が生じ、一方、金属膜にも表面プラズ
モンといわれる表面波が生じる。この2つの表面波の波
数が一致すると共鳴が起こり、光のエネルギーの一部が
表面プラズモンを励起するために使用され、反射光の強
度が低下する。ここで、表面プラズモンの波数は、金属
膜表面のごく近くにある媒質の屈折率の影響を受けるた
め、測定対象物質とO−157との相互作用により媒質
の屈折率が変化すると、表面プラズモン共鳴が生じる入
射角θが変化する。従って、反射光強度曲線の谷のずれ
によって、測定対象物質の濃度の変化を検知することが
できる。入射角θの変化量は共鳴シグナルといわれ、10
-4°の変化を1RUとして表す。
【0036】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に具体的に説
明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定される
ものではない。 〔実施例1〕本実施例では、図1に示されるような構成
を有する測定チップを作製した。透明基板としては、13
mm×18mm、厚さ0.17mmのカバーグラス(松浪硝子工業社
製)を使用した。この透明基板上に、スパッタリングに
よりクロムからなる層、次いで金からなる層を形成し
た。スパッタリングは、クロムについては100 W,30秒
間、金については100 W,150 秒間で行った。得られた
クロム層の厚さは32.2Åであり、金層の厚さは474 Åで
あった。
【0037】上記の金属膜を有する透明基板を、シラン
カップリング剤の飽和蒸気中に暴露し、金属膜上に有機
ケイ素膜を形成させた。まず、広口シャーレに原液のま
まのメチルトリエトキシシランを30ml 入れ、室温で24
時間放置し、シャーレ内部をプロピルトリエトキシシラ
ンの飽和蒸気で満たした。次に、上記で作製した透明基
板を金属膜部分が露出するようにステンレス製のマスク
(支持具)に固定し、このマスクをシャーレの開口部に
載せ、30分間放置し、カバーグラスの金属膜上に有機ケ
イ素膜を形成させ、続いてその上に8.2×10-3mg/mlの濃
度のO−157抗血清を70μl滴下し、120分静置した。
リンス後自然乾燥して測定チップを作製した。
【0038】この測定チップを、市販の表面プラズモン
共鳴バイオセンサー(ファルマシアバイオセンサー社
製、BIAcore2000 )のカートリッジブロック上に設置し
た。このセンサーは図4に示すような構造を有する。こ
の実施例において得られた、O−157濃度と共鳴シグ
ナルとの関係を、図5のグラフに示す。以上は、有機ケ
イ素膜を形成する方法を例にとって実施例を説明した
が、次に他の方法による金属膜の形成の実施例を説明す
る。
【0039】〔実施例2〕図8に示すように、厚さ45
0Åを金成膜されたガラス基板上に、スパッタリング法
で、以下に示す通りの条件で、金化合物膜を約50Åの
厚さに成膜し、その上にO−157に対する抗体を固定
化する。 成膜装置 ;プレーナー型DCマグネトロンスパッター
装置 ターゲット;金 ガス及び流量;アルゴンガス76sccm+六フッ化硫黄ガ
ス24sccm スパッター圧力;3ミリトール スパッター電流;6アンペア なお、ターゲットの金の代わりに、金属クロムを使用す
ることも可能である。
【0040】〔実施例3〕図9に示すように、ガラス基
板に金を500Å成膜後、ドライエッチング法で以下に
示す通りの方法で、金表面を処理し、その上にO−15
7に対する抗体を固定化する。 成膜装置 ;平行平板型RFドライエッチング装置 ガス及び流量;四フッ化炭素80sccm+酸素20sccm 処理圧力;50Pa 投入電力;500W なお、ガスとして炭酸ガス100sccmを使用してもよ
い。
【0041】〔実施例4〕図10に示すように、ガラス
基板上に金を500Å成膜後、CVD法で以下に示す通
りの方法で、シロキサン膜を形成後、その上にO−15
7に対する抗体を固定化する。 成膜装置 ;平行平板型RF方式CVD装置 ガス及び流量;HMDSO10sccm 酸素30sccm
アルゴン90sccm 成膜時圧力;200mTorr 投入電力;100W 静電結合の実施例を次に示す。
【0042】〔実施例5〕実施例1と同様に透明基板と
してカバーグラスを用い、この透明基板上にスパッタリ
ングによりクロム層、次いで金からなる層を形成した。
この金属膜を有する透明基板を、アルカンチオールのエ
タノール溶液に浸漬し、金属膜上にチオール膜を形成さ
せた。まず、30mlサンプルびんでアルカンチオール
をエタノールに溶かして1mMに調整する。次に、上記
で作製した透明基板をアルカンチオールエタノール溶液
中に1時間浸漬する。その後、透明基板を引き上げエタ
ノールでリンスした後、N2 または空気中で乾燥し、カ
バーグラスの金属膜上にチオール膜を形成させ、その上
に8.2×10-3mg/mlの濃度のO−157に対す
る抗体を50μl滴下し、90分静置した。リンス後自
然乾燥して測定チップを作製した。この測定チップを、
市販の表面プラズモン共鳴バイオセンサー(ファルマシ
アバイオセンサー社製、BIAcore2000 )のカートリッジ
ブロック上に設置した。このセンサーは図4に示すよう
な構造を有する。
【0043】
【発明の効果】本発明により、表面プラズモン共鳴バイ
オセンサー用の測定チップにO−157に対する抗体を
固定するに際して、全血をそのまま使用することがで
き、ノンラベルで簡便かつ迅速に測定できるとともに、
金属膜と強固にかつ容易に結合することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例による測定チップの概略断面図で
ある。
【図2】従来の測定チップの概略断面図である。
【図3】本発明の別の例による測定チップの概略断面図
である。
【図4】本発明の測定チップに使用する表面プラズモン
共鳴バイオセンサーの概念図である。
【図5】実施例1で得られた、O−157濃度と共鳴シ
グナルとの関係を示すグラフである。
【図6】スパッタリング法による膜形成を示す図であ
る。
【図7】ドライエッチング法による成膜構成を示す図で
ある。
【図8】CVD法による成膜構成図である。
【図9】物理吸着法(疎水結合)における抗体固定化手
順を示す。
【図10】静電結合における抗体固定化手順を示す。
【符号の説明】
1,1'…透明基板 2,2'…金属膜 3…有機ケイ素膜 4,4'…O−157に対する抗体 5…多孔性材料 6…共有結合膜 7…カートリッジブロック 71…測定セル 72,73…流路 8…光源 80…入射光 9…検出器 90…反射光 10…測定チップ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI G01N 33/569 G01N 33/569 F (72)発明者 佐藤 公治 東京都新宿区市谷加賀町一丁目1番1号 大日本印刷株式会社内

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 透明基板、該透明基板上に配置される金
    属膜及び該金属膜上に疎水結合あるいは静電結合で配置
    されるO−157に対する抗体を備えていることを特徴
    とする表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定チッ
    プ。
  2. 【請求項2】 前記疎水結合あるいは静電結合が有機ケ
    イ素膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の表
    面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定チップ。
  3. 【請求項3】 前記有機ケイ素膜がシランカップリング
    剤により形成された膜であることを特徴とする、請求項
    2に記載の表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定チ
    ップ。
  4. 【請求項4】 透明基板上に配置される金属が金である
    ことを特徴とする請求項1記載の表面プラズモン共鳴バ
    イオセンサー用測定チップ。
  5. 【請求項5】 疎水結合による膜が金属とフッ素の化合
    物又は金属とフッ素の混合物を主成分とすることを特徴
    とする請求項1記載の表面プラズモン共鳴バイオセンサ
    ー用測定チップ。
  6. 【請求項6】 前記金属が金であることを特徴とする請
    求項5記載の表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定
    チップ。
  7. 【請求項7】 疎水結合による膜が金属と炭素の化合物
    又は金属と炭素の混合物を主成分とすることを特徴とす
    る請求項1記載の表面プラズモン共鳴バイオセンサー用
    測定チップ。
  8. 【請求項8】 前記金属が金であることを特徴とする請
    求項7記載の表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定
    チップ。
  9. 【請求項9】 疎水結合による膜がフッ素系ガスを含む
    プラズマに曝すことにより形成されることを特徴とする
    請求項1記載の表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測
    定チップ。
  10. 【請求項10】 疎水結合による膜が炭素を含むプラズ
    マに曝すことにより形成されることを特徴とする請求項
    1記載の表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定チッ
    プ。
  11. 【請求項11】 疎水結合による膜がシロキサンを主成
    分とすることを特徴とする請求項1記載の表面プラズモ
    ン共鳴バイオセンサー用測定チップ。
  12. 【請求項12】 疎水結合による膜がフッ素含有有機化
    合物を主成分とすることを特徴とする請求項1記載の表
    面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定チップ。
  13. 【請求項13】 疎水結合あるいは静電結合による膜が
    チオールであることを特徴とする請求項1記載の表面プ
    ラズモン共鳴バイオセンサー用測定チップ。
  14. 【請求項14】 前記チオール膜がアルカンチオールに
    よって形成された膜であることを特徴とする請求項13
    記載の表面プラズモン共鳴バイオセンサー用測定チッ
    プ。
  15. 【請求項15】 透明基板上に金属膜を配置した後、該
    金属膜の上に疎水結合または静電結合により膜を形成
    し、次いで該膜上にO−157に対する抗体を配置する
    ことを特徴とする、表面プラズモン共鳴バイオセンサー
    用測定チップの製造方法。
  16. 【請求項16】 請求項1記載の測定用チップを用いて
    O−157を測定する方法。
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