JPH11239887A - レーザ加工条件自動設定方法およびレーザ加工条件自動設定装置 - Google Patents

レーザ加工条件自動設定方法およびレーザ加工条件自動設定装置

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JPH11239887A
JPH11239887A JP10057465A JP5746598A JPH11239887A JP H11239887 A JPH11239887 A JP H11239887A JP 10057465 A JP10057465 A JP 10057465A JP 5746598 A JP5746598 A JP 5746598A JP H11239887 A JPH11239887 A JP H11239887A
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賢 古尾谷
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元泰 須賀
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貫夫 岩浪
Mitsuru Sato
満 佐藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 所望の微細形状を得るのに最適な加工条件を
的確かつ迅速に設定することにより、レーザ加工過程の
高効率化を図ることができるレーザ加工条件自動設定方
法および装置を提供すること。 【解決手段】 加工対象物の最終加工形状を示す設計図
面データを入力する設計図面データ入力手段17と、素
材入力手段18と、素材別の加工条件が蓄積された素材
別加工条件記憶手段19と、素材別の加工条件に基づい
て素材と最終加工形状とに応じた最適加工条件を決定す
る最適加工条件決定手段と、マスクデータが蓄積された
マスクデータ記憶手段20と、マスクデータに基づいて
最終加工形状に応じたマスクパラメータを決定するマス
クパラメータ決定手段と、加工速度データが蓄積された
加工速度データ記憶手段21と、加工速度データに基づ
いて最終加工形状、最適加工条件及びマスクパラメータ
に応じた加工速度プロファイルを決定する加工速度プロ
ファイル決定手段とを備えることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パルスレーザ光を
加工対象物に照射して微細な形状を現出させるレーザ加
工を行う前に、レーザ加工に最適な加工条件を自動的に
設定するレーザ加工条件自動設定方法およびレーザ加工
条件自動設定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、レーザ光を加工対象物に照射
することにより所定の形状を現出させるレーザ加工技術
が知られている。このレーザ加工技術は、微細形状の加
工に適しており、各種工業製品の小型化、高密度化の要
請が高まってきた今日、あらゆる分野に導入されてき
た。例えば、高い寸法精度が要求されるインクジェット
ヘッドを製造する工程にもレーザ加工技術は導入されつ
つあり、特開平1−294047号公報、特開平2−1
21845号公報には、紫外線レーザビーム(エキシマ
レーザ光)を用いてインクジェットヘッドのインク流路
を形成する技術が掲載されている。同様に、米国特許第
5,291,226号公報にも、樹脂テープにエキシマ
レーザ光を照射することで、インク流路等を形成する技
術が記載されている。
【0003】また、特開平8−118660号公報に
は、レーザー加工時に生じる副生成物が樹脂部材へ付着
することを防止するためにメカマスクを設け、このメカ
マスクを介してレーザ光を樹脂部材に照射し、インク流
路の加工形成を行う技術が掲載されている。さらに、特
開平7−304179号公報には、流路溝の幅方向の断
面をテーパ状に形成するために、エキシマレーザ光の照
射位置を移動させて断面を階段状に加工する技術が掲載
されている。
【0004】このように、レーザー加工技術を用いれ
ば、インクジェットヘッドを初めとする微細形状の各種
製品を作製することができる。
【0005】一方、技術の進歩に伴い、微細形状をなす
各種製品の小型化、高密度化の要請のみならず、レーザ
加工過程の高効率化、迅速化の要請も高まってきた。こ
のレーザ加工過程の高効率化、迅速化を図るには、実際
にレーザ照射を行う前段階において、マスクの形状、レ
ーザ出力等の加工条件を効率よく設定することが極めて
重要となる。即ち、設定された加工条件に従ってレーザ
加工が行われるが、所望の微細形状を得るのに最適な加
工条件を的確かつ迅速に設定することができれば、レー
ザ加工過程の高効率化、迅速化を図ることができる。
【0006】しかし、上記の何れの公報も、加工対象物
にレーザ光を照射する加工方法自体に特徴がある技術を
開示しているに過ぎず、レーザ照射を行う前段階におけ
る加工条件の設定方法については全く開示していない。
そのため、上記各公報の技術では、レーザ照射の前段階
における加工条件の設定作業効率を高めることにより、
レーザ加工過程の高効率化、迅速化を図ることは困難で
ある。
【0007】また、一般的に加工条件は、製品の設計図
面をもとに、オペレータの蓄積してきた経験や勘に基づ
いて設定されるものである。しかし、極めて高度な寸法
精度が要求される微細加工においては、必ずしも最適な
加工条件を設定できるとは限られず、オペレータが設定
した加工条件に従って実際に加工しても、所望の形状が
現出しない事態が多々発生する。所望の形状を得ること
ができなかった場合は、所望の形状が現出するまで何度
も加工条件を設定して加工し直す必要があり、加工時間
の増加や、マスクの制作費等の向上によるコスト高を引
き起こすことになる。
【0008】尚、微細加工過程の効率向上を図った技術
として、特開平7−302108号公報に記載されたコ
ンピュータシミュレーション付きNC制御微細加工方法
がある。この技術は、加工中に得られる加工音等の情報
に基づいてシミュレーションを行い、このシミュレーシ
ョンにより微細加工過程の効率向上を図るものである。
しかし、この技術は、あくまで加工途中で加工指令を修
正するためのものであり、この技術を用いても、加工開
始前に加工中のレーザ出力等の条件を最適に設定するこ
とはできない。また、この技術は、マスクの使用が必要
となるインクジェットヘッドの流路形成等は考慮してい
ないため、マスクの形状等の設定方法については何ら開
示されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
事情に鑑みてなされたものであり、加工対象物にレーザ
照射を行う前段階において、所望の微細形状を得るのに
最適な加工中の加工条件を的確かつ迅速に設定して、レ
ーザ加工過程の高効率化、迅速化を図ることができるレ
ーザ加工条件自動設定方法およびレーザ加工条件自動設
定装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、請求項1記載の発明は、マスクの開口を介してパル
スレーザ光を加工対象物に照射することにより加工を行
うレーザ加工の加工条件を設定する方法であって、加工
対象物の最終加工形状を示す設計図面データを入力する
工程と、加工対象物の素材を入力する工程と、加工対象
物の素材別の加工条件に基づいて、加工対象物の素材と
最終加工形状とに応じた最適加工条件を決定する工程
と、マスクの開口を特定するためのマスクデータに基づ
いて、最終加工形状に応じたマスクパラメータを決定す
る工程と、パルスレーザ光による加工対象物の加工速度
を制御するための加工速度データに基づいて、最終加工
形状、最適加工条件及び前記マスクパラメータに応じた
加工速度プロファイルを決定する工程とを備えることを
特徴とする。
【0011】請求項1記載の発明によれば、設計図面デ
ータとして入力された加工対象物の最終加工形状を基
に、レーザ加工を開始する前に加工中のレーザ出力等の
最適加工条件を設定することができ、さらに、マスクの
パラメータや、レーザ加工中におけるレーザ光の照射位
置と加工対象物との相対的な移動速度のプロファイルで
ある加工速度プロファイルをも自動的に設定することが
できるため、レーザ加工過程の高効率化を図ることが可
能となる。
【0012】また、請求項2記載の発明は、請求項1記
載の発明において、最適加工条件、マスクパラメータ及
び加工速度プロファイルに基づいて、加工対象物に加工
を施した場合の予想加工形状をシミュレーションにより
算出する工程と、最終加工形状と予想加工形状とを比較
して、誤差を算出する工程と、誤差が許容誤差値以内の
ときは、レーザ加工を開始させ、誤差が許容誤差値を越
えるときは、誤差に基づいて最適加工条件、マスクパラ
メータ又は加工速度プロファイルのうち少なくとも一つ
を再び決定する工程とを更に備えることを特徴とする。
【0013】請求項2記載の発明によれば、設計図面デ
ータとして入力された加工対象物の最終加工形状を基
に、レーザ加工を開始する前に加工中のレーザ出力等の
最適加工条件を設定することができ、さらに、マスクの
パラメータや、レーザ加工中におけるレーザと加工対象
物との相対的な移動速度のプロファイルである加工速度
プロファイルをも自動的に設定することができるため、
レーザ加工過程の高効率化を図ることが可能となる。
【0014】更に、実際にレーザ加工を行う前にシミュ
レーションで算出された予想加工形状と最終加工形状と
を比較することにより算出された誤差が、許容誤差以内
のときにのみレーザ加工を開始するので、寸法精度の高
いレーザ加工を行うことができる。また、算出された誤
差が許容誤差値を越えている場合はレーザ加工を開始せ
ず、誤差が許容誤差値以内になるまで最適加工条件、マ
スクパラメータ、加工速度プロファイル等を決定し直す
ため、レーザ加工を何度も行う事態を防止することがで
きる。
【0015】また、請求項1又は請求項2記載の発明に
おいて、マスクパラメータは、マスクの開口の形状、寸
法又は寸法公差の少なくとも一つから成ることが望まし
い。
【0016】また、請求項4記載の発明は、マスクの開
口を介してパルスレーザ光を加工対象物に照射すること
により加工を行うレーザ加工の加工条件を設定する装置
であって、加工対象物の最終加工形状を示す設計図面デ
ータを入力する設計図面データ入力手段と、加工対象物
の素材を入力する素材入力手段と、加工対象物の素材別
の加工条件が予め蓄積された素材別加工条件記憶手段
と、素材別加工条件記憶手段に蓄積された素材別の加工
条件に基づいて、加工対象物の素材と最終加工形状とに
応じた最適加工条件を決定する最適加工条件決定手段
と、マスクの開口を特定するためのマスクデータが予め
蓄積されたマスクデータ記憶手段と、マスクデータ記憶
手段に蓄積されたマスクデータに基づいて、最終加工形
状に応じたマスクパラメータを決定するマスクパラメー
タ決定手段と、パルスレーザによる加工対象物の加工速
度を制御するための加工速度データが予め蓄積された加
工速度データ記憶手段と、加工速度データ記憶手段に蓄
積された加工速度データに基づいて、最終加工形状、最
適加工条件及びマスクパラメータに応じた加工速度プロ
ファイルを決定する加工速度プロファイル決定手段とを
備えることを特徴とする。
【0017】請求項4記載の発明によれば、設計図面デ
ータとして入力された加工対象物の最終加工形状を基
に、レーザ加工を開始する前に加工中のレーザ出力等の
最適加工条件を設定することができ、さらに、マスクの
パラメータや、レーザ加工中におけるレーザ光の照射位
置と加工対象物との相対的な移動速度のプロファイルで
ある加工速度プロファイルをも自動的に設定することが
できるため、レーザ加工過程の高効率化を図ることが可
能となる。
【0018】また、請求項5記載の発明は、請求項4記
載の発明において、最適加工条件、マスクパラメータ及
び加工速度プロファイルに基づいて、加工対象物に加工
を施した場合の予想加工形状をシミュレーションにより
算出する予想加工形状算出手段と、最終加工形状と予想
加工形状とを比較して、誤差を算出する誤差算出手段
と、誤差の許容値である許容誤差値が予め蓄積された許
容誤差値記憶手段と、誤差が許容誤差値以内のときは、
レーザ加工を開始させ、誤差が許容誤差値を越えるとき
は、誤差に基づいて最適加工条件、マスクパラメータ又
は加工速度プロファイルのうち少なくとも一つを再び決
定する誤差判別手段とを更に備えることを特徴とする。
【0019】請求項5記載の発明によれば、設計図面デ
ータとして入力された加工対象物の最終加工形状を基
に、レーザ加工を開始する前に加工中のレーザ出力等の
最適加工条件を設定することができ、さらに、マスクの
パラメータや、レーザ加工中におけるレーザと加工対象
物との相対的な移動速度のプロファイルである加工速度
プロファイルをも自動的に設定することができるため、
レーザ加工過程の高効率化を図ることが可能となる。
【0020】更に、実際にレーザ加工を行う前にシミュ
レーションで算出された予想加工形状と最終加工形状と
を比較することにより算出された誤差が、許容誤差以内
のときにのみレーザ加工を開始するので、寸法精度の高
いレーザ加工を行うことができる。また、算出された誤
差が許容誤差値を越えている場合はレーザ加工を開始せ
ず、誤差が許容誤差値以内になるまで最適加工条件、マ
スクパラメータ、加工速度プロファイル等を決定し直す
ため、レーザ加工を何度も行う事態を防止することがで
きる。
【0021】また、請求項4又は請求項5記載の発明に
おいて、マスクパラメータは、マスクの開口の形状、寸
法又は寸法公差の少なくとも一つから成ることが望まし
い。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明のレーザ加工条件自
動設定方法およびレーザ加工条件自動設定装置の好適な
実施形態について詳細に説明する。
【0023】まず、図1を用いて、本実施形態の加工条
件自動設定方法およびレーザ加工条件自動設定装置が適
用されるレーザ加工装置について説明する。レーザ加工
装置の加工対象となる加工対象物10は、加工テーブル
11上に載置されている。加工対象物10を照射するレ
ーザ光の発生源として、レーザ発生制御部25による制
御に従ってパルスレーザ光を発生するレーザ発生装置1
が設けられている。尚、本実施形態では、レーザ発生装
置1としてエキシマレーザを用いたが、レーザの種類は
これに限定されない。そして、このレーザ発生装置1と
加工対象物10との間には、レーザ発生装置1で発生し
たパルスレーザ光を加工対象物10へ導くミラー2〜4
が配置されている。
【0024】ミラー2〜4の他、パルスレーザ光の光路
上には、絞り5、シャッター6、マスク7が、ミラー3
とミラー4との間に順に配置されており、更に、ミラー
4と加工対象物10との間にレンズ8が配置されてい
る。マスク7の開口の形状や寸法は、後述のように、形
成される形状に応じて制御部15により適宜設定され
る。レンズ8は、マスク7の開口を通過したパルスレー
ザ光を、マスク7の開口の形状で加工対象物10の加工
面に結像させるように焦点が合わされている。また、レ
ンズ8の焦点を合わせるために、レンズ8の焦点位置を
調節する焦点用駆動装置9が備えられている。尚、シャ
ッター6の開閉、焦点用駆動装置9の駆動は制御部15
により制御される。
【0025】加工対象物10を搭載する加工テーブル1
1は、加工テーブル駆動装置12によって、図中の左右
方向(Y方向)、上下方向(Z方向)、Y方向とZ方向
に直交するX方向、さらに、Z方向を中心軸とする回転
方向(θ方向)に移動される。尚、X方向やY方向を中
心軸として加工テーブル11を回転させても良い。加工
対象物10にパルスレーザ光を照射しながら加工テーブ
ル11をY方向又はX方向に移動させることにより、加
工対象物10の表面に一定幅の溝を形成することができ
る。また、加工テーブル11のZ方向の移動により、加
工対象物10上に形成される溝の幅を変化させることが
できる。例えば、幅の広い溝を形成したい場合は、加工
テーブル11を上方へ移動させ、反対に、幅の狭い溝を
形成したい場合は、加工テーブル11を下方へ移動させ
れば良い。
【0026】また、加工テーブル11の近傍には、加工
対象物10を撮像する計測カメラ13が設置されてい
る。さらに、計測カメラ13には、ピントを調整する焦
点用駆動装置14が備えられている。計測カメラ13で
撮像された加工対象物10の画像情報は、制御部15で
加工対象物10のX、Y方向の位置情報に変換される。
一方、焦点用駆動装置14で得られた焦点の情報は、制
御部15で加工対象物10表面のZ方向の位置情報に変
換される。即ち、計測カメラ13、焦点用駆動装置1
4、そして、制御部15によって、加工対象物10の原
点の位置決めがなされる。
【0027】また、本実施形態の制御部15は、上述し
た種々の機能の他、レーザ加工を開始する前に、加工中
のレーザ発生装置1のレーザ出力等の加工条件を最適な
ものに自動設定する機能も備えている。以下、制御部1
5の加工条件自動設定機能について説明する。
【0028】図2は、制御部15内のレーザ加工条件自
動設定装置を示す構成図である。所定の演算処理を行う
CPU16に、設計図面データ入力部17、素材入力部
18が接続されている。設計図面データ入力部17によ
り、加工対象物10の最終形状を示した設計図面のデー
タが入力される。また、素材入力部18により、加工対
象物10の素材が入力される。設計図面データ及び素材
の入力は、CADから直接情報を送ることにより行われ
る。尚、CADによらず、オペレータによるキーボード
操作でも入力することができる。レーザ加工条件自動設
定装置は、加工対象物10を、設計図面データ入力部1
7で入力された最終形状(以下、「最終加工形状」とい
う。)に限りなく近い形状に加工できるように、後述の
種々の加工条件を決定していく。
【0029】CPU16には、更に、素材別加工条件記
憶手段19、マスクデータ記憶手段20、加工速度デー
タ記憶手段21、そして、許容誤差値記憶手段22が接
続されている。
【0030】素材別加工条件記憶手段19には、加工対
象物10の素材別の加工条件データが予め蓄積されてい
る。この加工条件データとしては、レーザ出力と加工深
さの関係、フルエンス(fluence)と加工深さの
関係、パルスレーザ周波数と加工深さの関係等がある。
これらの加工条件データは、例えば、加工対象物10が
レーザ光を吸収しにくい素材の場合は、レーザ出力に対
する加工深さが浅いデータとなっており、反対に、加工
対象物10が紫外線を吸収し易い素材の場合は、レーザ
出力に対する加工深さが深いデータとなっている。そし
て、素材別加工条件記憶手段19に蓄積された加工条件
データの中から、上述の素材入力部18で入力された加
工対象物10の素材に対応した加工条件が選択される。
【0031】更に、この素材に対応した加工条件に基づ
いて、最終加工形状を現出させるために最も適したレー
ザ出力、フルエンス、パルスレーザ周波数等が、最適加
工条件としてCPU16により決定される。この最適加
工条件を決定する場合、まず、加工対象物10の最終加
工形状は、表面の傾斜角が変わる節々で区切られ、複数
の区分に分割される。そして、この分割された各区分ご
とに最適加工条件が決定される。
【0032】ここで、図3を参照して、最適加工条件の
決定方法の一例を示す。図3(a)は、設計図面データ
入力部17により入力された、ある加工対象物10の最
終形状を示す断面図である。この図において、加工対象
物10は、図面の左から右方向に移動し、パルスレーザ
は、図面上方から照射される。ます、最終加工形状を示
す断面図は、図3(b)のように、表面の傾斜角が変わ
る節々で区切られ、複数の区分A〜Hに分割される。そ
して、分割された各区分ごとに、最適なレーザ出力、フ
ルエンス、パルスレーザ周波数が決定される。例えば、
区分A,Hではレーザ照射を行う必要がないため、レー
ザ出力は0(J/cm2)になる。また、レーザ加工を
迅速に行うために、区分Bよりも深く加工する必要のあ
る区分Dにおいては、例えばレーザ出力やパルスレーザ
周波数を高く設定する。尚、加工深さの調整を後述の加
工速度だけで行う場合、区分B〜Gのレーザ出力等は全
て等しくされる。
【0033】次に、CPU16に接続されたマスクデー
タ記憶手段20について説明する。マスクデータ記憶手
段20には、マスク7の開口を特定するためのマスクデ
ータが予め蓄積されている。このマスクデータとして
は、マスク7の開口の形状、寸法、寸法公差などがあ
る。そして、上述のように傾斜角の違いで分割された最
終加工形状の各区分の形状に応じて、マスク7の開口形
状等のマスクパラメータがCPU16により決定され
る。
【0034】ここで、図4〜図6を参照して、マスクパ
ラメータの決定方法の一例を示す。例えば、図4(a)
のように、矩形溝を加工対象物10に形成する場合は、
図5(a)に示すように、マスク7の開口形状を正方形
もしくは長方形とする。また、図4(b)のように、底
部分の断面がU字状の溝を形成する場合は、図5(b)
に示すように、マスク7の開口形状を楕円形とする。さ
らに、図4(c)のように、底部分の断面がV字状の溝
を形成する場合は、図5(c)に示すように、マスク7
の開口形状を三角形にしたり、図5(d)に示すよう
に、五角形にすればよい。
【0035】これらのマスク7は、図6(a)のよう
に、回動可能な円盤状のマスク台23の外周に並設され
ている。円盤状のマスク台23が回動することにより、
最終加工形状を形成するのに最も適したマスクを選択す
ることが可能となる。尚、マスク7の選択方法は、図6
(a)のような回動式に限られない。例えば、図6
(b)のように、複数のマスク7を摺動させる方式でも
よい。
【0036】マスク7の開口の寸法は、加工対象物10
に一定の加工幅を形成する場合は、その加工幅に応じて
決定される。一方、加工対象物10の加工幅が変化する
加工を行う場合は、マスク7の開口の寸法は、最終加工
形状の最小の加工幅に応じて決定される。マスク7の開
口の幅がこれよりも大きいと、加工対象物10に最小の
加工幅を形成することができないためである。また、マ
スク7の開口の幅が最終加工形状の最小の加工幅に応じ
た寸法よりも小さい場合、最小の加工幅を形成すること
は可能であるが、デフォーカス状態で加工することにな
り、一部で加工精度が低下する可能性がある。尚、マス
ク7の開口の寸法は、例えば、パルスレーザ光を透過さ
せない仕切り板をマスクに設け、この仕切り板を摺動さ
せることで変化させることができる。
【0037】また、マスク7の開口の寸法公差も、マス
クデータ記憶手段20に予め蓄積されたマスクデータを
基に、最終加工形状と対応するように決定される。例え
ば、最終加工形状が、高度な寸法精度が要求される複雑
な形状の場合、マスク7の開口の寸法公差は、小さな値
に設定される。一方、最終加工形状が、寸法精度がさほ
ど要求されない簡略な形状の場合は、マスク7の開口の
寸法公差は、大きな値に設定される。
【0038】次に、CPU16に接続された加工速度デ
ータ記憶手段21について説明する。加工速度データ記
憶手段21には、加工対象物10の最終加工形状、レー
ザ出力等の最適加工条件及びマスクパラメータに対応し
た加工速度データが予め蓄積されている。そして、最終
加工形状等に応じて、加工速度のプロファイルがCPU
16により決定される。ここでいう加工速度とは、レー
ザ加工中におけるレーザ光の照射位置と加工対象物10
との相対的な移動速度を意味し、加工速度データには移
動加速度のデータも含まれる。本実施形態では、パルス
レーザ光の照射位置を固定した状態で加工テーブル11
を移動させるため、加工テーブル11の速度が加工速度
となる。尚、本実施形態とは反対に、加工テーブル11
を固定し、パルスレーザ光の照射位置のみを移動させる
ことも可能である。パルスレーザ光の照射位置を移動さ
せるには、ミラー2〜4,シャッター6,マスク7,レ
ンズ8等を移動させれば良い。この場合は、パルスレー
ザ光の照射位置の移動速度が加工速度となる。
【0039】ここで、図7を参照して、加工速度の高低
による加工結果の相違を説明する。図7は、4種類の異
なる加工速度で加工対象物10に溝を形成した場合の結
果を示している。この図において、左から順に加工対象
物10の移動速度を速くしている。尚、加工対象物10
の移動加速度は一定にしてある。この図から分かるよう
に、加工速度が遅い場合は、パルスレーザ光の照射時間
が長くなるため、深い溝が形成される。反対に、加工速
度が速い場合は、パルスレーザ光の照射時間が短くなる
ため、形成される溝は浅くなる。即ち、加工すべき深さ
に応じて加工速度を決定すればよいことが分かる。
【0040】更に、図8を参照して、加工中に加工深さ
を変化させた場合の効果を説明する。図8は、加工中
に、加工対象物10の移動速度を変化させた場合の加工
例を示す斜視図及び断面図である。ここでは、加工対象
物10の移動加速度を一定とし、移動速度が次第に速く
なるように制御している。加工対象物10の移動方向
は、図8(A)の奥から手前、図8(B)の右から左で
ある。移動速度が速くなるにつれて加工深さは次第に浅
くなり、図8に示すような底面が傾斜した溝が形成され
る。このとき、連続的に移動速度を変化させることによ
って、滑らかな傾斜面を得ることができる。
【0041】続いて、図9を参照して、加工対象物10
の初速度及び加速度と斜面の傾斜角度との関係を説明す
る。図9から分かるように、初速度が遅い場合は、同じ
加速度で移動速度を増加しても傾斜角度は大きくなり、
初速度が速い場合は、傾斜角度は小さくなる。また、同
じ初速度でも、加速度が大きいと加工深さの変化が大き
くなり、傾斜は急になる。また、この図から、加工中に
加速度を変化させると、傾斜角度が変化し、曲面が形成
されることが分かる。
【0042】以上のように、加工対象物10の移動速度
及び移動加速度を制御することによって加工深さを制御
することができ、更に、斜面や曲面などを形成すること
も可能となる。尚、最終加工形状の加工深さに基づい
て、レーザ出力、パルスレーザ周波数等は決定されてい
るが、加工速度を調整することによって一層加工対象物
10を最終加工形状に近づけることが可能となる。ま
た、マスクパラメータも既に決定されているため、マス
ク7の開口の形状、寸法等も考慮して加工速度のプロフ
ァイルが決定される。
【0043】尚、上記特開平7−304179号公報に
掲載された技術によれば階段状の流路溝を形成すること
ができるが、この公報の技術はあくまで流路溝の幅方向
の断面を階段状に形成するためのものであり、溝の延伸
方向に深さを変えることはできない。また、この技術で
は形成面は階段状となり滑らかな表面を形成することは
困難である。従って、溝の延伸方向に深さを変えること
ができる点、そして、形成面を階段状でなく滑らかにで
きる点で本実施形態のレーザ加工装置及びレーザ加工条
件自動設定装置は、上記の特開平7−304179号公
報等に掲載された技術と異なる。
【0044】次に、CPU16に接続された許容誤差値
記憶手段22について説明する。まず、上述のように決
定された最適加工条件、マスクパラメータ及び加工速度
プロファイルに基づいて加工対象物10を加工した場合
に現出する予想形状(以下、「予想加工形状」とい
う。)が、CPU16でのシミュレーションにより算出
される。このシミュレーションで算出された予想加工形
状は、必ずしも設計図面データ入力部17により入力さ
れた最終加工形状と一致するとは限られず、微小の誤差
が生じる。この誤差の算出はCPU16で行われ、誤差
が一定値以下のときはレーザ加工を開始し、誤差が一定
値を越えるときは再び最適加工条件、マスクパラメー
タ、加工速度プロファイル等を決定し直すことになる。
そして、誤差の比較対照となる一定値は、許容誤差値と
して許容誤差値記憶手段22に蓄積されている。
【0045】ここで、図10を参照して、予想加工形状
と最終加工形状との間の誤差と、許容誤差値との比較方
法の一例について説明する。図10(a)は、図3
(b)と同様に、ある加工対象物10の最終加工形状を
複数の区分A〜Hに分割した図である。予想加工形状と
最終加工形状の間の誤差と許容誤差値との比較は、最適
加工条件の決定の際に分割された各区分ごとに行われ
る。図10(b)は、シミュレーションにより算出され
た予想加工形状を示している。また、図10(c)は、
最終加工形状と予想加工形状とを重ね合わせた状態を示
しており、実線で表した図が最終加工形状で、破線で表
した図が予想加工形状である。この最終加工形状と予想
加工形状は、ディスプレイ等の表示手段24にも表示さ
れる(図2参照)。
【0046】図10(c)の実線と破線で囲まれた部分
の面積が、予想加工形状と最終加工形状の誤差に相当す
る。この図において、区分B,C,D,F,Gに誤差が
あることが分かる。この場合、区分Dの誤差は極めて小
さく、許容誤差値以下となっている。しかし、区分B,
C,F,Gの誤差が許容誤差値を越えているため、再び
最適加工条件、マスクパラメータ、加工速度プロファイ
ルを決定し直すことになる。最適加工条件等の再決定
は、最終加工形状と予想加工形状の誤差をなくすように
行われる。
【0047】例えば、区分B,Cでは最終加工形状に対
して予想加工形状が深くなり過ぎているため、この区分
における加工速度を速めたり、レーザ出力を低減させる
ことが必要となる。一方、区分F,Gでは最終加工形状
に対して予想加工形状が浅くなっているため、この区分
における加工速度を遅くしたり、レーザ出力を大きくす
ることが必要となる。尚、区分Dにおける誤差は許容誤
差値以内であるが、この区分の最適加工条件等も再び決
定するように設定することもできる。また、最終加工形
状をなす製品の性能上重要でないと判断される部分につ
いては、許容誤差値を大きく設定することができる。
【0048】最適加工条件等の再決定により全ての区分
の誤差が許容誤差値以下になった場合に、CPU16は
最適加工条件、マスクパラメータ及び加工速度プロファ
イルをレーザ加工装置のレーザ発生制御部25、マスク
7、加工テーブル駆動装置12に伝え、レーザ加工が開
始される。尚、本実施形態では、シミュレーションによ
り予想加工形状を算出したが、この工程を省くこともで
きる。この場合は、予想加工形状と最終加工形状とを比
較して誤差を算出することはできないが、予め蓄積され
た種々のデータに基づいて最適加工条件、マスクパラメ
ータ及び加工速度プロファイルを決定しているため最終
加工形状に極めて近い形状を現出させることができる。
【0049】また、本実施形態では、各区分における最
終加工形状と予想加工形状との面積の違いを誤差として
許容誤差値との比較を行ったが、比較方法はこの方法に
限定されない。例えば、区分ごとに判断せず、最終加工
形状の全体形状と予想加工形状の全体形状を比較するこ
とも可能である。更に、本実施形態では、レーザ加工装
置に装着された複数のマスクの中から最適なマスクを選
択する手法を用いたが、誤差が許容誤差値以下になった
後に、決定されたマスクパラメータに基づいてマスクを
別途製作してレーザ加工装置に取り付ける手法を用いて
もよい。
【0050】(動作例)次に、図11のフローチャート
を参照しながら、具体的なレーザ加工条件自動設定装置
の動作について説明する。ここでは、図12に示すポリ
サルフォン製のインクジェットヘッドの流路を図1のレ
ーザ加工装置で加工することを目的とする。尚、このイ
ンクジェットヘッドの流路は、レーザ光の照射位置を固
定し、加工対象物を図中右から左方向に移動させること
で形成される。
【0051】まず、図11のS1において、制御部15
の設計図面データ入力部17に設計図面データを入力す
る。ここでは、図面データと共に、加工対象物10の素
材も入力する。そして、CPU16は、この設計図面デ
ータに基づいて、加工対象物10に実際にレーザ加工を
施した場合に現出し得る目標加工形状を作成する(S
2)。例えば、溝のエッジ部分が完全に尖った加工品の
設計図面データが入力されたとしても、溝の形状によっ
ては、レーザ加工でエッジ部分を完全に尖らせることが
できない場合がある。このような場合、CPU16は、
溝のエッジ部分にアールを有する目標加工形状を作成す
る。そして、以下に述べる種々の加工条件は、加工対象
物10をこの目標加工形状に形成するために設定され
る。即ち、この場合、目標加工形状が最終加工形状に相
当することになる。
【0052】図13は、設計図面データに基づいて作成
された目標加工形状の断面図を示している。この図に示
されているように、傾斜角が変わる節目部分は、全て曲
線状に修正される。尚、この目標加工形状を作成する工
程は必ずしも必要ではなく、設計図面データ入力部17
に入力された設計図面データをそのまま最終加工形状と
することも当然可能である。また、目標加工形状を作成
する工程の前に、入力された素材を基に、加工対象物1
0がパルスレーザ光を照射して加工できる物質であるか
否かを判断し、その結果パルスレーザ光で加工できない
物質と判断された場合は最適加工条件の決定等を行わな
いという工程を含めることができる。尚、パルスレーザ
光で加工できない物質として、例えば、当該パルスレー
ザ光を吸収しない物質等がある。
【0053】続いて、CPU16は、素材別加工条件記
憶手段19からインクジェットヘッドの素材であるポリ
サルフォンに対応した加工条件を読み出す(S3)。加
工条件を読み出した後、CPU16は、この加工条件に
基づいて、目標加工形状を現出させるために最も適した
レーザ出力、フルエンス、パルスレーザ周波数を最適加
工条件として決定する(S4)。最適加工条件の決定に
際して、CPU16は、まず図14のように目標加工形
状を表面の傾斜角が変わる節々で区切り、複数の区分A
〜Iに分割する。そして、CPU16は、区分A〜Iの
各々について、レーザ出力、フルエンス、パルスレーザ
周波数を決定する。本実施形態では、加工深さは加工速
度で調節するため、加工中のレーザ出力、フルエンス、
パルスレーザ周波数は全て一定とした。尚、これらの具
体的値は、レーザ出力300mJ、フルエンス2.4J
/cm2、パルスレーザ周波数600Hzとした。
【0054】次に、CPU16は、マスクデータ記憶手
段20からマスクデータを読み出す(S5)。そして、
CPU16は、目標加工形状と最適加工条件に応じて、
マスク7の開口の形状、寸法、寸法公差等のマスクパラ
メータを決定する(S6)。図12のように、本実施形
態における目標加工形状の溝の底部分は平面であるた
め、マスク7の開口の形状は長方形となる。また、流路
の横幅、即ち、加工対象物の移動方向に垂直な方向の長
さが一定であるため、マスク開口の横幅は流路の横幅に
対応させ、加工中も変化させない。マスク開口の縦幅は
加工中に変化させてもよいが、本実施形態では、加工対
象物の移動方向の長さが最も短い区分Cの長さを越えな
い値に固定させる。
【0055】マスクパラメータを決定した後、CPU1
6は、加工速度データ記憶手段21から加工速度データ
を読み出す(S7)。そして、CPU16は、目標加工
形状、最適加工条件及びマスクパラメータに応じて、加
工対象物の移動速度を決定する(S8)。ここで、図1
5を用いて、加工速度のプロファイルの決定方法を説明
する。本実施形態では、上述のように加工中にレーザ出
力、フルエンス、パルスレーザ周波数を変化させず一定
とし、加工速度のみを変化させる。図15は、加工対象
物10の加工中の移動速度を示している。このような移
動速度で加工対象物を移動させることにより、図14に
示した目標加工形状を得ることができる。尚、図15中
のA〜Iは、図14中の区分A〜Iに対応している。
【0056】例えば、区分Cでは、図14のように加工
深さを深くする必要がある。そのため、図15のよう
に、区分Cでは加工対象物10を一定の低い速度で移動
させ、レーザ光の照射時間を長くする。これに対し、区
分Eでは、図14のように加工深さを浅くする必要があ
る。そのため、図15のように、区分Eでは加工対象物
を一定の高い速度で移動させ、レーザ光の照射時間を短
くする。また、区分Hでは、図14のように、図の左か
ら右に下る斜面を形成する必要がある。そのため、図1
5のように、区分Hでは加工対象物の移動速度を次第に
減速させ、レーザの照射時間を徐々に長くする。
【0057】加工速度プロファイルを決定した後、CP
U16は、最適加工条件、マスクパラメータ及び加工速
度プロファイルに基づいてシミュレーションを行い、予
想加工形状を算出する(S9)。そして、CPU16
は、予想加工形状と目標加工形状とを比較し、S4の最
適加工条件の決定の際に分割された区分ごとに面積誤差
を算出する(S10)。図16は、目標加工形状と予想
加工形状とを重ね合わせた状態を示しており、実線で表
した図が目標加工形状で、破線で表した図が予想加工形
状である。この図に示されているように、区分B〜Dで
は、目標加工形状の加工深さよりも予想加工形状の加工
深さの方が浅くなっており、誤差があることがわかる。
【0058】ここで、CPU16は、許容誤差値記憶手
段22から許容誤差値を読み出す(S11)。そして、
CPU16は、区分B〜Dにおける目標加工形状と予想
加工形状の誤差と、許容誤差値とを比較し、誤差が許容
誤差値以下であるか否かを判別する(S12)。その結
果、区分B〜D全ての誤差が許容誤差値以下であれば、
CPU16は、最適加工条件、マスクパラメータ及び加
工速度プロファイルをレーザ加工装置のレーザ発生制御
部25、マスク7、加工テーブル駆動装置12に伝え、
レーザ加工を開始する(S13)。反対に、区分B〜D
のいずれかに許容誤差値を越える誤差がある場合、レー
ザ加工は開始されず、CPU16は、全ての誤差が許容
誤差値以内になるまで最適加工条件、マスクパラメー
タ、加工速度プロファイルを決定し直す。本実施形態で
は、区分B〜Dにおける加工速度を遅くすることで予想
加工形状を目標加工形状に近づけることができる。最適
加工条件等の再決定により全ての区分の誤差が許容誤差
値以下になった場合に、CPU16は、レーザ発生制御
部25にレーザ出力開始指令を送る。
【0059】CPU16からレーザ発生制御部25にレ
ーザ出力開始指令が送られると、レーザ発生装置1か
ら、CPU16で決定されたレーザ出力、パルスレーザ
周波数から成るパルスレーザ光が出力される。レーザ発
生装置1から出力されたパルスレーザ光は、ミラー2,
3で反射され、絞り5、シャッター6を通過し、マスク
7に到達する。マスク7で、パルスレーザ光は、CPU
16で決定されたマスク開口の形状、寸法に形成され
る。マスク7の開口を通過したパルスレーザ光は、ミラ
ー4で反射され、レンズ8で加工対象物10上に集光さ
れる。レンズ8で、パルスレーザ光は、加工対象物10
上のフルエンスがCPU16で決定されたフルエンスに
なるように調整される。このとき加工テーブル駆動装置
12は、CPU16で決定された加工速度プロファイル
に従って加工テーブル11上に載置された加工対象物1
0を移動させる。そして、図12のようなインクジェッ
トヘッドの流路を精度良く形成することができる。
【0060】
【発明の効果】以上のように、本発明のレーザ加工条件
自動設定方法およびその装置によれば、設計図面データ
として入力された加工対象物の最終加工形状を基に、レ
ーザ加工を開始する前に加工中のレーザ出力等の最適加
工条件を設定することができ、さらに、マスクのパラメ
ータや、レーザ加工中におけるレーザと加工対象物との
相対的な移動速度のプロファイルである加工速度プロフ
ァイルをも自動的に設定することができるため、レーザ
加工過程の高効率化を図ることが可能となる。
【0061】更に、実際にレーザ加工を行う前にシミュ
レーションで算出された予想加工形状と最終加工形状と
を比較することにより算出された誤差が、許容誤差以内
のときにのみ、レーザ加工を開始するので、寸法精度の
高いレーザ加工を行うことができる。また、算出された
誤差が許容誤差値を越えている場合はレーザ加工を開始
せず、誤差が許容誤差値以内になるまで最適加工条件、
マスクパラメータ、加工速度プロファイル等を決定し直
すため、レーザ加工を何度も行う事態を防止することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のパルスレーザ照射型微細加工の加工
条件設定方法及びレーザ加工条件自動設定装置が適用さ
れるレーザ加工装置の構成図である。
【図2】 レーザ加工条件自動設定装置を示す構成図で
ある。
【図3】 最適加工条件の決定の際に分割された最終加
工形状を示す図である。
【図4】 加工対象物に形成される溝の例を示す図であ
る。
【図5】 図4の溝の形成に使用するマスクを示す図で
ある。
【図6】 マスクの選択例を示す図である。
【図7】 加工対象物の移動速度と加工深さの関係を説
明する図である。
【図8】 加工対象物の移動速度を加工中に変化させた
場合の加工例を示す斜視図及び断面図である。
【図9】 加工対象物の初速度及び加速度と形成される
面の傾斜角度との関係の一例を示すグラフである。
【図10】 予想加工形状と最終加工形状の誤差と許容
誤差値との比較方法の一例を示す図である。
【図11】 加工条件を自動的に設定する際の処理手順
を示すフローチャートである。
【図12】 本発明のレーザ加工条件自動設定装置が適
用されるレーザ加工装置の加工対象となるインクジェッ
トヘッドの部分断面斜視図である。
【図13】 目標加工形状の一例を示す図である。
【図14】 目標加工形状を複数の区分に分割した状態
を示す図である。
【図15】 図13に示す目標加工形状に対応した加工
速度プロファイル図である。
【図16】 予想加工形状と最終加工形状との誤差を算
出する工程を示した図である。
【符号の説明】
1…レーザ発生装置、2〜3…ミラー、5…絞り、6…
シャッター、7…マスク、8…レンズ、10…加工対象
物、11…加工テーブル、12…加工テーブル駆動装
置、13…計測カメラ、15…制御部、16…CPU、
17…設計図面データ入力部(設計図面データ入力手
段)、18…素材入力部(素材入力手段)、19…素材
別加工条件記憶手段、20…マスクデータ記憶手段、2
1…加工速度データ記憶手段、22…許容誤差値記憶手
段、23…マスク台、24…表示手段、25…レーザ発
生制御部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岩浪 貫夫 神奈川県海老名市本郷2274番地 富士ゼロ ックス株式会社内 (72)発明者 佐藤 満 神奈川県海老名市本郷2274番地 富士ゼロ ックス株式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マスクの開口を介してパルスレーザ光を
    加工対象物に照射することにより加工を行うレーザ加工
    の加工条件を設定する方法であって、 前記加工対象物の最終加工形状を示す設計図面データを
    入力する工程と、 前記加工対象物の素材を入力する工程と、 前記加工対象物の素材別の加工条件に基づいて、前記加
    工対象物の素材と前記最終加工形状とに応じた最適加工
    条件を決定する工程と、 前記マスクの開口を特定するためのマスクデータに基づ
    いて、前記最終加工形状に応じたマスクパラメータを決
    定する工程と、 前記パルスレーザ光による前記加工対象物の加工速度を
    制御するための加工速度データに基づいて、前記最終加
    工形状、前記最適加工条件及び前記マスクパラメータに
    応じた加工速度プロファイルを決定する工程と、 を備えることを特徴とするレーザ加工条件自動設定方
    法。
  2. 【請求項2】 前記最適加工条件、前記マスクパラメー
    タ及び前記加工速度プロファイルに基づいて、前記加工
    対象物に加工を施した場合の予想加工形状をシミュレー
    ションにより算出する工程と、 前記最終加工形状と前記予想加工形状とを比較して、誤
    差を算出する工程と、前記誤差が許容誤差値以内のとき
    は、レーザ加工を開始させ、前記誤差が前記許容誤差値
    を越えるときは、前記誤差に基づいて前記最適加工条
    件、前記マスクパラメータ又は前記加工速度プロファイ
    ルのうち少なくとも一つを再び決定する工程と、 を更に備えることを特徴とする請求項1記載のレーザ加
    工条件自動設定方法。
  3. 【請求項3】 前記マスクパラメータは、前記マスクの
    開口の形状、寸法又は寸法公差の少なくとも一つから成
    ることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のレーザ
    加工条件自動設定方法。
  4. 【請求項4】 マスクの開口を介してパルスレーザ光を
    加工対象物に照射することにより加工を行うレーザ加工
    の加工条件を設定する装置であって、 前記加工対象物の最終加工形状を示す設計図面データを
    入力する設計図面データ入力手段と、 前記加工対象物の素材を入力する素材入力手段と、 前記加工対象物の素材別の加工条件が予め蓄積された素
    材別加工条件記憶手段と、 前記素材別加工条件記憶手段に蓄積された前記素材別の
    加工条件に基づいて、前記加工対象物の前記素材と前記
    最終加工形状とに応じた最適加工条件を決定する最適加
    工条件決定手段と、 前記マスクの開口を特定するためのマスクデータが予め
    蓄積されたマスクデータ記憶手段と、 前記マスクデータ記憶手段に蓄積された前記マスクデー
    タに基づいて、前記最終加工形状に応じたマスクパラメ
    ータを決定するマスクパラメータ決定手段と、 前記パルスレーザによる前記加工対象物の加工速度を制
    御するための加工速度データが予め蓄積された加工速度
    データ記憶手段と、 前記加工速度データ記憶手段に蓄積された前記加工速度
    データに基づいて、前記最終加工形状、前記最適加工条
    件及び前記マスクパラメータに応じた加工速度プロファ
    イルを決定する加工速度プロファイル決定手段と、 を備えることを特徴とするレーザ加工条件自動設定装
    置。
  5. 【請求項5】 前記最適加工条件、前記マスクパラメー
    タ及び前記加工速度プロファイルに基づいて、前記加工
    対象物に前記加工を施した場合の予想加工形状をシミュ
    レーションにより算出する予想加工形状算出手段と、 前記最終加工形状と前記予想加工形状とを比較して、誤
    差を算出する誤差算出手段と、 前記誤差の許容値である許容誤差値が予め蓄積された許
    容誤差値記憶手段と、 前記誤差が前記許容誤差値以内のときは、レーザ加工を
    開始させ、前記誤差が前記許容誤差値を越えるときは、
    前記誤差に基づいて前記最適加工条件、前記マスクパラ
    メータ又は前記加工速度プロファイルのうち少なくとも
    一つを再び決定する誤差判別手段と、 を更に備えることを特徴とする請求項4記載のレーザ加
    工条件自動設定装置。
  6. 【請求項6】 前記マスクパラメータは、前記マスクの
    開口の形状、寸法又は寸法公差の少なくとも一つから成
    ることを特徴とする請求項4又は請求項5記載のレーザ
    加工条件自動設定装置。
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