JPH11236934A - ビスカスカップリングおよびビスカスカップリングの製造方法ならびにビスカスカップリング用添加剤 - Google Patents

ビスカスカップリングおよびビスカスカップリングの製造方法ならびにビスカスカップリング用添加剤

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JPH11236934A
JPH11236934A JP5600598A JP5600598A JPH11236934A JP H11236934 A JPH11236934 A JP H11236934A JP 5600598 A JP5600598 A JP 5600598A JP 5600598 A JP5600598 A JP 5600598A JP H11236934 A JPH11236934 A JP H11236934A
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fluid chamber
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viscous
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JP5600598A
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Inventor
Tatsuya Matsunami
辰哉 松波
Masao Kawase
昌男 川瀬
Yasushi Nishikuma
靖 西隈
Toshiaki Ozaki
俊昭 尾崎
Koichi Inasawa
幸一 稲澤
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Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ビスカスカップリングが全体として一体的に
回転する場合の半径方向のバランス精度を向上させる。 【解決手段】 同一の軸線を中心として相対回転可能に
配置されたケーシングK1およびハブ22と、ケーシン
グK1とハブ22との間に形成された粘性流体室B1
と、粘性流体室B1に配置され、かつ、ケーシングK1
に取り付けられた複数のアウタープレート38と、アウ
タープレート38同士の間に配置された複数のスペーサ
リング42と、アウタープレート38と対向して配置さ
れ、かつ、ハブ22に取り付けられた複数のインナープ
レート45とを備え、複数のスペーサリング42に半径
方向の切欠部43が形成されているビスカスカップリン
グ12において、少なくとも2つのスペーサリング42
が、切欠部43同士の円周方向の位相を異ならせて配置
されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車両のトルク伝
達経路に配置されるビスカスカップリングおよびビスカ
スカップリングの製造方法、ならびにビスカスカップリ
ング用添加剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の四輪駆動車などに用いられている
ビスカスカップリングの一例が特開平4−282034
号公報に記載されている。この公報に記載されたビスカ
スカップリングは、同一の軸線を中心として相対回転可
能に配置された第1軸(第1回転部材)および第2軸
(第2回転部材)とを備えている。第1軸にはドラム形
状のケーシング(第1回転部材)が固定されており、ケ
ーシングの内部には粘性流体室が形成されている。この
粘性流体室にはシリコンオイル(粘性流体)が封入され
ているとともに、第2軸の一部が粘性流体室に配置され
ている。
【0003】また、粘性流体室には複数の第1プレート
(第1トルク伝達部材)が配置されており、この複数の
第1プレートが、ケーシングの内周にスプライン嵌合さ
れている。さらに、第1プレートと交互に複数の第2プ
レート(第2トルク伝達部材)が配置されており、複数
の第2プレートが、第2軸の外周にスプライン嵌合され
ている。さらにまた、ケーシングの内周には複数のスペ
ーサリングが取り付けられており、各スペーサリングが
各第1プレート同士の間に配置されている。各スペーサ
リングにより、第1プレート同士の隙間が所定値に以上
に設定されている。
【0004】このスペーサリングは、ばね鋼を円形に屈
曲して製造したものであるため、スペーサリングの円周
方向の一部には切欠部(重量偏在部)が形成されてい
る。このため、スペーサリングにおける円周方向の単位
長さあたりの重量が、切欠部の付近と、切欠部の付近以
外位外の部分とでは異なっている。
【0005】上記構成のビスカスカップリングにおい
て、第1回転部材と第2回転部材との回転数が等しい場
合には、第1回転部材と第2回転部材との間でトルクの
伝達が行われない。この場合、ビスカスカップリング全
体が一体的に回転する。一方、第1回転部材と第2回転
部材とに差動回転が生じた場合は、複数の第1プレート
と複数の第2プレートとが差動回転し、その回転差に応
じてシリコンオイルにせん断力が発生し、第1回転部材
と第2回転部材との間でトルクの伝達が行われる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
ビスカスカップリングは、各スペーサリングが、その切
欠部同士が円周方向において同一位相となる状態で、ケ
ーシングの内周に取り付けられている。このため、ビス
カスカップリングが全体として一体的に回転する場合
に、半径方向のバランス、つまり動的釣り合い精度が低
下することがあった。その結果、車両の走行中に、ビス
カスカップリングが振動して乗り心地が低下したり、騒
音が生じる可能性があった。
【0007】この発明は、上記事情を背景としてなされ
たもので、ビスカスカップリングが全体として一体的に
回転する場合の半径方向のバランス精度を向上させるこ
との可能なビスカスカップリングを提供することを目的
としている。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用】上記目的
を達成するため請求項1の発明は、相対回転可能に配置
された第1回転部材および第2回転部材と、この第1回
転部材と第2回転部材との間に形成された粘性流体室
と、この粘性流体室に配置され、かつ、前記第1回転部
材と一体回転する複数の第1トルク伝達部材と、前記複
数の第1トルク伝達部材と対向して配置され、かつ、前
記第2回転部材と一体回転する第2トルク伝達部材と、
前記第1トルク伝達部材同士の間に配置された複数のス
ペーサリングとを備え、前記複数のスペーサリングの円
周方向の一部に、円周方向における単位長さあたりの重
量が他の部位とは異なる重量偏在部が形成されているビ
スカスカップリングにおいて、少なくとも2つのスペー
サリングが、前記重量偏在部同士の円周方向の位相を異
ならせて配置されていることを特徴とする。
【0009】請求項1の発明によれば、各スペーサリン
グを、その重量偏在部の円周方向における位相を異なら
せて配置することにより、各スペーサリング全体として
半径方向のバランス精度が向上する。
【0010】請求項2の発明は、相対回転可能に配置さ
れた第1回転部材および第2回転部材と、この第1回転
部材と第2回転部材との間に形成された粘性流体室と、
この粘性流体室に配置され、かつ、前記第1回転部材と
一体回転する第1トルク伝達部材と、前記第1トルク伝
達部材と対向して配置され、かつ、前記第2回転部材と
一体回転する第2トルク伝達部材とを備えたビスカスカ
ップリングにおいて、前記第1回転部材または前記第2
回転部材の少なくとも一方に、前記粘性流体室の内部側
に延ばされて前記トルク伝達部材同士の間に到達し、か
つ、外気に連通する通路が形成されていることを特徴と
する。
【0011】請求項2の発明によれば、粘性流体が発熱
した場合は、粘性流体室の内周側の熱が、第1回転部材
または第2回転部材を介して通路に放熱され、粘性流体
の温度上昇が抑制される。また、第1回転部材または第
2回転部材の一部が放熱機構として機能するため、粘性
流体を冷却するために格別の構成部品を設ける必要がな
い。
【0012】請求項3の発明は、相対回転可能に配置さ
れた第1回転部材および第2回転部材と、この第1回転
部材と第2回転部材との間に形成された粘性流体室と、
この粘性流体室に配置され、かつ、前記第1回転部材と
一体回転する第1トルク伝達部材と、前記第1トルク伝
達部材と対向して配置され、かつ、前記第2回転部材と
一体回転する第2トルク伝達部材と、前記第1回転部材
および第2回転部材の周囲を取り囲み、かつ、外気に露
出する状態で最も外周側に配置された外殻部材とを備え
たビスカスカップリングにおいて、前記第1回転部材ま
たは前記第2回転部材の内の少なくとも一方と前記外殻
部材との間に形成された第2粘性流体室と、前記粘性流
体室と前記第2粘性流体室とを連通する通路とを備えて
いることを特徴とする。
【0013】請求項3の発明によれば、粘性流体室の粘
性流体が通路を介して第2粘性流体室に移動し、その熱
が外殻部材を介して外気中に放熱される。このため、粘
性流体室の粘性流体の温度上昇が抑制されるとともに、
外殻部材の内部に熱がこもることがない。
【0014】また、請求項3の発明によれば、粘性流体
室から第2粘性流体室に伝導された熱を、外殻部材自体
の外表面から外気中に放熱して粘性流体室を冷却する構
成になっている。このため、粘性流体室を冷却するため
に格別の構成部品を必要としない。
【0015】請求項4の発明は、相対回転可能に配置さ
れた第1回転部材および第2回転部材と、この第1回転
部材と第2回転部材との間に形成された粘性流体室と、
この粘性流体室に配置され、かつ、前記第1回転部材と
一体回転する第1トルク伝達部材と、前記第1トルク伝
達部材と対向して配置され、かつ、前記第2回転部材と
一体回転する第2トルク伝達部材とを備えたビスカスカ
ップリングにおいて、遠心力に基づいて動作することに
より、前記粘性流体室の容積を拡大する可動部材を設け
たことを特徴とする。
【0016】請求項4の発明によれば、ビスカスカップ
リングの回転数が増大して遠心力が増加した場合は、粘
性流体室の容積が拡大される。このため、粘性流体が粘
性流体室内で分散し易くなり、トルク伝達部材同士の間
に存在する粘性流体の量が減少する。したがって、トル
クの伝達面積が減少する。
【0017】請求項5の発明は、相対回転可能に配置さ
れた第1回転部材および第2回転部材と、この第1回転
部材と第2回転部材との間に形成された粘性流体室と、
この粘性流体室に配置され、かつ、前記第1回転部材と
一体回転する第1トルク伝達部材と、前記第1トルク伝
達部材と対向して配置され、かつ、前記第2回転部材と
一体回転する第2トルク伝達部材とを備えたビスカスカ
ップリングにおいて、前記粘性流体室に臨む内壁の一部
に、前記内壁の他の部位に対する取付位置に基づいて前
記粘性流体室の容積を変更し、かつ、前記内壁の他の部
位に固定された状態で前記粘性流体室の容積を固定させ
る容積調整壁を備えていることを特徴とする。
【0018】請求項5の発明によれば、粘性流体室に臨
む内壁に対して容積調整壁を取り付ける場合には、粘性
流体室の容積を変更することができる。また、内壁に対
して容積調整壁を固定した場合は、粘性流体室の容積が
固定される。
【0019】請求項6の発明によれば、相対回転可能に
配置された第1回転部材と第2回転部材との間に形成さ
れた粘性流体室に相対回転可能に配置される板状のトル
ク伝達部材を、金属板をプレス加工することにより成形
するビスカスカップリングの製造方法において、プレス
加工されたトルク伝達部材同士を重ね合わせ、重ね合わ
せたトルク伝達部材同士を、その平面方向に相対移動す
ることにより、トルク伝達部材の厚さ方向に突出してい
る突出部の高さを低減させることを特徴とする。
【0020】請求項6の発明によれば、ビスカスカップ
リングの製造過程において、プレートに形成されている
厚さ方向の突出部の高さを減少させることができる。こ
のため、ビスカスカップリングの製品状態において、各
トルク伝達部材が接触した状態で差動回転が生じた場合
においても、トルク伝達部材の摩耗量が可及的に低減さ
れる。
【0021】請求項7の発明は、複数の第1トルク伝達
部材を有する第1回転部材と、この第1回転部材と相対
回転可能に配置され、かつ、前記第1トルク伝達部材と
対向する第2トルク伝達部材を有する第2回転部材と、
前記第1トルク伝達部材および前記第2トルク伝達部材
が配置される粘性流体室とを有するビスカスカップリン
グを用意し、前記粘性流体室に粘性流体を注入するビス
カスカップリングの製造方法において、前記粘性流体室
に粘性流体を注入した状態で前記第1回転部材と前記第
2回転部材とを相対回転させるとともに、前記粘性流体
の温度と、前記第1回転部材と前記第2回転部材との間
で伝達されるトルクとに基づいて、前記粘性流体室の粘
性流体の注入量を設定することを特徴とする。
【0022】請求項7の発明によれば、第1回転部材と
第2回転部材との間で伝達されるトルクと、粘性流体の
温度とに基づいて、粘性流体の注入量が設定される。こ
のため、粘性流体が所定温度にある場合に、所定のトル
クを伝達することが可能となる状態に、粘性流体室に対
する粘性流体の充填率を設定することができる。
【0023】請求項8の発明は、複数の第1トルク伝達
部材を有する第1回転部材と、この第1回転部材と相対
回転可能に配置され、かつ、前記第1トルク伝達部材と
対向する第2トルク伝達部材を有する第2回転部材と、
前記第1トルク伝達部材および前記第2トルク伝達部材
が配置される粘性流体室とを有するビスカスカップリン
グを用意し、前記粘性流体室に粘性流体を注入するビス
カスカップリングの製造方法において、前記粘性流体室
に粘性流体を注入した状態で前記第1回転部材と前記第
2回転部材とを相対回転させるとともに、この第1回転
部材と第2回転部材との間で伝達されるトルクと、前記
粘性流体室に対する粘性流体の充填率とに基づいて、前
記粘性流体室に追加する粘性流体の粘度を設定すること
を特徴とする。
【0024】請求項8の発明によれば、ビスカスカップ
リングの製造工程で粘性流体室に粘性流体を注入する途
中で、伝達トルクと充填率との関係に基づいて、粘性流
体室に追加する粘性流体の粘度が設定される。
【0025】このため、単一のビスカスカップリングに
おいて、粘性流体室に充填する粘性流体の充填率と、第
1回転部材と第2回転部材とに所定の相対回転可が生じ
た状態における伝達トルクとの両方を、高精度に調整す
ることができ、製品品質が向上する。また、複数のビス
カスカップリングを製造した場合に、各ビスカスカップ
リングのトルクのバラツキ、および充填率のバラツキが
抑制される。
【0026】請求項9の発明によれば、金属板をプレス
加工することにより、回転部材に対して同心状に取り付
けられるトルク伝達部材を成形し、成形されたトルク伝
達部材に熱処理が施されるビスカスカップリングの製造
方法において、前記トルク伝達部材のうち、前記プレス
加工により残留応力が発生している部分を除去した後
に、前記熱処理を行うことを特徴とする。
【0027】請求項9の発明によれば、トルク伝達部材
のうち、プレス加工の荷重により残留応力が発生してい
る部分が除去される。このため、トルク伝達部材に熱処
理を施した場合に、トルク伝達部材の歪みや変形が抑制
され、トルク伝達部材の寸法精度(言い換えれば、加工
精度)が向上する。
【0028】請求項10の発明は、粘性流体室に注入さ
れる粘性流体に添加されるビスカスカップリング用添加
剤において、熱反応性の異なる組成成分を、内外周に複
数層形成してなる粒子を有することを特徴とする。
【0029】請求項10の発明によれば、熱反応性の高
い組成成分が初期段階で作用して所定の機能を果たす。
その後、熱反応性の低い組成成分が作用し、継続的に所
定の機能を果たす。
【0030】
【発明の実施の形態】つぎに、この発明を添付図面に基
づいて詳細に説明する。図1は、この発明のビスカスカ
ップリングを、スタンバイ四輪駆動車1の動力伝達装置
として適用した場合を示す模式図である。スタンバイ四
輪駆動車1の前部にはエンジン2が搭載され、このエン
ジン2の出力側にはトランスミッション3が連結されて
いる。また、トランスミッション3の出力側には、フロ
ントデファレンシャル4が配置され、フロントデファレ
ンシャル4の出力側には、一対のフロントドライブシャ
フト5を介して一対の前輪6が連結されている。さら
に、フロントデファレンシャル4にはトランスファー7
が接続され、このトランスファー7の出力側にはプロペ
ラシャフト8が連結されている。
【0031】一方、スタンバイ四輪駆動車1の後部には
リヤデファレンシャル9が搭載されており、リヤデファ
レンシャル9の出力側には、一対のリヤドライブシャフ
ト10を介して一対の後輪11が接続されている。ま
た、リヤデファレンシャル9の入力側にはビスカスカッ
プリング12が設けられており、前記プロペラシャフト
8の後端が、ビスカスカップリング12の入力側に接続
されている。以下、上記ビスカスカップリング12の各
種の構成例およびビスカスカップリング12の製造方法
ならびにシリコンオイルの注入方法、さらにはビスカス
カップリング用添加剤を説明する。
【0032】(第1実施例)図2は、請求項1に対応す
るビスカスカップリング12の一実施例を示す平面断面
図である。前記プロペラシャフト8の後端には、フック
ジョイント13を介してコンパニオンフランジ14が取
り付けられている。
【0033】一方、リヤデファレンシャル9の外殻を構
成するデファレンシャルキャリヤ15の内部にはドライ
ブピニオンシャフト16が配置されている。なお、デフ
ァレンシャルキャリヤ15の内部には、オイル(図示せ
ず)が注入されている。また、デファレンシャルキャリ
ヤ15の開口端には、円筒形状のカバー17が取り付け
られている。このカバー17と、デファレンシャルキャ
リヤ15とは、ボルト18により締め付け固定されてい
る。そして、カバー17の内部からデファレンシャルキ
ャリヤ15の内部に亘り、ビスカスカップリング12が
配置されている。カバー17は金属材料を鍛造および機
械加工して成形されている。
【0034】ビスカスカップリング12は、ケーシング
K1とハブ22とを備えており、ケーシングK1とハブ
22とが、同一の軸線A1を中心として相対回転可能に
配置されている。このケーシングK1は、円筒部材19
と、環状のフロントカバー20と、円筒形状のリヤカバ
ー21と、円筒形状のハブ22とから構成されている。
環状のフロントカバー20は、円筒部材19におけるプ
ロペラシャフト8側の開口端部に溶接固定され、リヤカ
バー21は、円筒部材19におけるデファレンシャルキ
ャリヤ15側の開口端部に溶接固定されている。なお、
ハブ22は、ケーシングK1の内部に配置されている。
【0035】また、フロントカバー20の外周にはフラ
ンジ23が形成され、フランジ23の外周端と、円筒部
材19の開口端とが溶接されている。また、カバー17
の内周におけるプロペラシャフト8側の端部には、ラジ
アル軸受24が固定されている。このラジアル軸受24
により、フロントカバー20が回転可能に保持されてい
る。
【0036】さらに、フロントカバー20の外周におい
て、ラジアル軸受24よりもプロペラシャフト8側の位
置には、環状のダストシール25が取り付けられてい
る。このダストシール25は、カバー17の外部のダス
トが、カバー17のプロペラシャフト8側の開口部から
内部に侵入することを防止するための機構である。さら
に、フロントカバー20におけるプロペラシャフト8側
の端面には、ボルト26によりコンパニオンフランジ1
4が固定されている。また、フロントカバー20の外端
面には、複数の雌ねじ部112が形成されている。
【0037】前記リヤカバー21の外周にはフランジ2
7が形成されており、フランジ27の外周端と、円筒部
材19の開口端とが溶接されている。一方、デファレン
シャルキャリヤ15の内周にはラジアル軸受28が取り
付けられており、ラジアル軸受28により、リヤカバー
21が回転可能に保持されている。また、フランジ27
には、その厚さ方向に貫通する注入孔29が形成され、
注入孔29がボール30により液密に封止されている。
【0038】この注入孔29は、ビスカスカップリング
12の製造工程において、シリコンオイル(粘性流体)
をビスカスカップリング12の内部に注入したり、内部
に注入されているシリコンオイルを抜き取ったりするた
めの機構である。なお、ケーシングK1には、シリコン
オイルを注入する場合に、粘性流体室(後述)を減圧す
るための排気孔(図示せず)が形成されている。シリコ
ンオイルは、ジメチルシリコンなどを主成分とし、所定
の添加剤が添加されている。この添加剤としては、アウ
タープレート38およびインナープレート45の摩耗を
抑制する摩耗剤が例示される。
【0039】前記ハブ22の内周にはドライブピニオン
シャフト16の先端がスプライン嵌合されている。一
方、フロントカバー20の内周には円筒形状のブッシュ
31が固定され、リヤカバー21の内周には円筒形状の
ブッシュ32が固定されている。そして、ブッシュ3
1,32により、ハブ22が回転可能に保持されてい
る。このブッシュ31,32により、ケーシングK1と
ハブ22とが相対回転可能に構成され、かつ、半径方向
に位置決めされている。
【0040】また、前記フロントカバー20の内周には
蓋体33が嵌合固定され、デファレンシャルキャリヤ1
5の内部に存在するオイルが、フロントカバー20側か
ら漏れることを防止している。さらに、デファレンシャ
ルキャリヤ15とリヤカバー21との間にオイルシール
34が設けられており、デファレンシャルキャリヤ15
の内部に存在するオイルが、デファレンシャルキャリヤ
15とリヤカバー21との間を介して、デファレンシャ
ルキャリヤ15の外部に漏れることを防止している。
【0041】さらに、前記フロントカバー20の内周に
おけるブッシュ31よりもリヤカバー21側の位置に
は、Xリング35が装着されている。このXリング35
によりハブ22とフロントカバー20との間が液密にシ
ールされている。さらに、リヤカバー21の内周におけ
るブッシュ32よりもフロントカバー20側の位置に
は、Xリング36が装着されている。このXリング36
により、ハブ22とリヤカバー21との間が液密にシー
ルされている。
【0042】つまり、ケーシングK1とハブ22との間
の空間を、Xリング35およびXリング36により液密
にシールすることにより、環状の粘性流体室B1を形成
している。粘性流体室B1内には粘性流体としてのシリ
コンオイル(図示せず)が充填されている。ここで、シ
リコンオイルは、粘性流体室B1の容積の70ないし9
0%程度の充填率で充填されている。なお、粘性流体室
B1の容積のうち、シリコンオイルの占有空間以外の空
間には空気が充填されている。
【0043】前記円筒部材19の内周、つまり粘性流体
室B1に対面する位置には内歯37が形成されている。
また、粘性流体室B1には環状(円板形状)のアウター
プレート38が複数配置されている。図3は、アウター
プレート38の側面図であり、アウタープレート38の
外周には外歯39が形成されている。この外歯39が内
歯37に対してスプライン嵌合されている。各アウター
プレート38の内径は、ハブ22の外径よりも大きく設
定されている。さらに、各アウタープレート38には、
その内周端から外側に延びたスリット40が複数形成さ
れている。各スリット40は、アウタープレート38の
円周方向にほぼ等間隔おきに配置されている。また、ア
ウタープレート38には、厚さ方向、つまり、軸線方向
に貫通する孔41が複数形成されている。各孔41は、
アウタープレート38の同一円周上に、ほぼ等間隔おき
に配置されている。
【0044】前記円筒部材19の内周には、複数のスペ
ーサリング42が取り付けられている。そして、各スペ
ーサリング42が各アウタープレート38同士の間に配
置されている。図4は、図2に示されたビスカスカップ
リング12を、IV−IV線で破断した場合の側面断面図で
ある。スペーサリング42の円周方向の一部には切欠部
43が形成されている。
【0045】このため、スペーサリング42は、円周方
向における単位長さあたりの重量が、切欠部43を含む
部分の重量よりも、切欠部43を含まない部分の重量の
方が重く設定されている。また、軸線A1を含む平面内
における各スペーサリング42の断面形状がほぼ円形に
構成されている。スペーサリング42の線径は、アウタ
ープレート38の軸線方向の厚さよりも大きく設定され
ている。
【0046】そして、各スペーサリング42は、円筒部
材19の内周に取り付けられた状態では、その弾性力に
より円筒部材19の内周、具体的には各内歯37の歯先
に押し付けられている。つまり、各スペーサリング42
は、その弾性力により、ケーシングK1に対する円周方
向の位置決め、言い換えれば各スペーサリング42同士
の円周方向の位置決めが行われている。
【0047】そして、少なくとも2つのスペーサリング
42が、切欠部43同士の円周方向の位相が異なるよう
に位置決めされている。すなわち、図4の実施例におい
ては、隣接するスペーサリング42の切欠部43同士の
円周方向の位相が、180度ずつ異なる状態で固定され
ている。なお、各切欠部43同士の位相を90度間隔で
異ならせたり、または、360度をスペーサリング42
の枚数で除し、得られた角度ずつ切欠部43の位相が全
周方向に分散するように、スペーサリング42を位置決
めすることも可能である。上記構成のスペーサリング4
2により、各アウタープレート38同士の軸線方向の間
隔が所定値以上に設定されている。
【0048】一方、前記ハブ22の外周、つまり粘性流
体室B1に対面する位置には外歯44が形成されてい
る。また、粘性流体室B1には環状(円板形状)のイン
ナープレート45が複数配置されている。図5は、イン
ナープレート45の側面図であり、インナープレート4
5の内周には内歯46が形成されている。この内歯46
が外歯44に対してスプライン嵌合されている。
【0049】各インナープレート45の外径は、円筒部
材19に取り付けられた状態のスペーサリング42の内
径よりも小さく設定されている。そして、各インナープ
レート45と各アウタープレート38とが、軸線方向に
交互に(1枚おきに)配置されている。このため、各イ
ンナープレート45の側面と、アウタープレート38の
側面とが対向している。また、各インナープレート45
には、外周端から内側に延びた複数のスリット47が形
成されている。各スリット47は、インナープレート4
5の円周方向にほぼ等間隔で配置されている。
【0050】なお、インナープレート47の軸線方向の
厚さは、スペーサリング42の線径よりも小さく設定さ
れている。さらに、前記リヤカバー21のフランジ27
と、フランジ27に対面するアウタープレート38との
間には、環状の受圧板48が配置されている。
【0051】ここで、第1実施例の構成と請求項1の構
成との対応関係を説明する。すなわち、ケーシングK1
が請求項1の第1回転部材に相当し、ハブ22が請求項
1の第2回転部材に相当する。また、アウタープレート
38が請求項1の第1トルク伝達部材に相当し、インナ
ープレート45が請求項1の第2トルク伝達部材に相当
する。さらに、スペーサリング42の切欠部43自体、
またはスペーサリング42において、切欠部43を含む
円周方向の所定長さ部分が、請求項1の重量偏在部に相
当する。
【0052】つぎに、上記構成のビスカスカップリング
12の製造方法について説明する。まず、炭素鋼または
クロムモリブデン鋼などの鍛造素材を機械加工すること
により、円筒部材19およびフロントカバー20および
リヤカバー21およびハブ22が製造される。ここで、
円筒部材19およびフロントカバー20およびリヤカバ
ー21およびハブ22において、ビスカスカップリング
12の動作中に摺動する箇所には、焼き入れ処理や軟窒
化処理を施して、耐摩耗性および剛性を向上している。
また、アウタープレート38およびインナープレート4
5は、鋼材コイルをプレス機により打ち抜き加工した
後、所定の熱処理を施して耐摩耗性および剛性を向上し
ている。さらに、スペーサリング42は、ばね鋼ワイヤ
ーをほぼ円形に屈曲して製造されている。
【0053】つぎに、ビスカスカップリング12の組立
手順の一例を、図6のフローチャートに基づいて説明す
る。この図6のフローチャートは、円筒部材19を回転
させながらビスカスカップリング12を組み立てる場合
の手順である。まず、円筒部材19とフロントカバー2
0とを溶接するとともに、円筒部材19およびフロント
カバー20を非回転の状態に固定する。また、円筒部材
19およびフロントカバー20の内部にハブ22を挿入
する。
【0054】つぎに、1枚のアウタープレート38を円
筒部材19の内周にスプライン嵌合して取り付けるとと
もに(ステップ1)、1本のスペーサリング42を円筒
部材19の内周に取り付ける(ステップ2)。つぎに、
1枚のインナープレート45をハブ22の外周にスプラ
イン嵌合して取り付けるとともに(ステップ3)、つぎ
のアウタープレート38を円筒部材19の内周にスプラ
イン嵌合して取り付ける(ステップ4)。
【0055】そして、円筒部材19およびフロントカバ
ー20を、軸線A1を中心として角度θだけ所定方向に
回転させる(ステップ5)。その後、アウタープレート
38およびインナープレート45およびスペーサリング
42を、全個数取り付けたか否かが判断され(ステップ
6)、ステップ6で否定判断された場合はステップ2な
いしステップ5の動作を繰り返す。一方、ステップ6で
肯定判断された場合は、図6の作業を終了する。
【0056】すなわち、図6のフローチャートにおいて
は、ステップ5で円筒部材19が所定角度θだけ回転さ
れることにより、少なくとも2つのスペーサリング42
の切欠部43の円周方向の位相が異なる状態で位置決め
される。また、ステップ5で円筒部材19およびフロン
トカバー20を回転させることにより、既に取り付けら
れているアウタープレート38の円周方向の位相と、新
たに取り付けられるアウタープレート38の円周方向の
位相とが異なる状態になる。また、既に取り付けられて
いるインナープレート45の円周方向の位相と、新たに
取り付けられるインナープレート45の円周方向の位相
とが異なる状態になる。
【0057】このようにして、アウタープレート38お
よびインナープレート45ならびにスペーサリング42
を取り付けた後、円筒部材19に対してリヤカバー21
を溶接固定する。ついで、注入孔29からシリコンオイ
ルを粘性流体室B1に充填し、注入孔29をボール30
により封止して、ビスカスカップリング12の組立作業
が完了する。
【0058】つぎに、ビスカスカップリング12の他の
組立例を、図7のフローチャートに基づいて説明する。
この図7のフローチャートは、アウタープレート38お
よびインナープレート45ならびにスペーサリング42
を回転させながらビスカスカップリング12を組み立て
る場合の手順である。
【0059】まず、1枚のアウタープレート38を円筒
部材19の内周にスプライン嵌合して取り付けるととも
に、1本のスペーサリング42を円筒部材19の内周に
取り付ける。さらに、1枚のインナープレート45をハ
ブ22の外周にスプライン嵌合して取り付けるととも
に、つぎのアウタープレート38を円筒部材19の内周
に取り付ける(ステップ11)。
【0060】さらにまた、つぎのスペーサリング42を
円筒部材19の内周にスプライン嵌合して取り付ける
(ステッ12)。このステップ12で取り付けるスペー
サリング42は、取付済みのスペーサリング42に対し
て、軸線A1を中心として所定角度θだけ回転して取り
付けられる。そして、つぎのインナープレート45が取
り付けられる(ステップ13)。このステップ13で取
り付けるインナープレート45は、取付済みのインナー
プレート45に対して、軸線A1を中心として所定角度
θだけ回転して取り付けられる。
【0061】さらに、つぎのアウタープレート38が取
り付けられる(ステップ14)。このステップ14で取
り付けるアウタープレート38は、取付済みのアウター
プレート38に対して、軸線A1を中心として所定角度
θだけ回転して取り付けられる。その後、アウタープレ
ート38およびインナープレート45ならびにスペーサ
リング42が全枚数取り付けられたか否かが判断される
(ステップ15)。ステップ15で否定判断された場合
はステップ12に戻り、ステップ15で肯定判断された
場合は、図7の作業を終了する。
【0062】このように、図7のフローチャートにおい
ては、ステップ12でスペーサリング42を回転させる
ことにより、取付済みのスペーサリング42の切欠部4
3の円周方向の位相と、新たに取り付けられるスペーサ
リング42の切欠部43の円周方向の位相とが異なる状
態になる。また、ステップ13により、取付済みのイン
ナープレート45の円周方向の位相と、新たに取り付け
られるインナープレート45の円周方向の位相とが異な
る状態になる。また、ステップ14により、取付済みの
アウタープレート38の円周方向の位相と、新たに取り
付けられるアウタープレート38の円周方向の位相とが
異なる状態になる。
【0063】つぎに、第1実施例のビスカスカップリン
グ12を、図1に示すスタンバイ四輪駆動車1に取り付
けて走行する場合の動作を説明する。まず、エンジン2
から出力されたトルクが、トランスミッション3を介し
てフロントデファレンシャル4に伝達される。フロント
デファレンシャル4に伝達されたトルクの一部は、フロ
ントドライブシャフト5を介して前輪6に伝達され、前
輪6の駆動力によりスタンバイ四輪駆動車1が走行す
る。
【0064】また、フロントデファレンシャル4に伝達
されたトルクの一部は、トランスファー7を介してプロ
ペラシャフト8に伝達されている。プロペラシャフト8
に伝達されたトルクは、ケーシングK1に伝達されてい
る。
【0065】一方、スタンバイ四輪駆動車1の走行中
は、後輪11から入力されるトルクが、リヤデファレン
シャル9を介してハブ22に伝達されている。そして、
ケーシングK1の回転数と、ハブ22の回転数とが等し
い場合は、各アウタープレート38の回転数と、各イン
ナープレート45の回転数とが等しく、プロペラシャフ
ト8のトルクは後輪11には伝達されない。つまり、ス
タンバイ四輪駆動車1は二輪駆動(前輪駆動)により走
行する。
【0066】さらに、前輪6がスリップして、ケーシン
グK1とハブ22とが差動回転した場合は、各アウター
プレート38と各インナープレート45とに差動回転が
生じ、その回転差に応じてシリコンオイルにせん断力が
発生する。すると、プロペラシャフト8からケーシング
K1に伝達されたトルクが、このせん断力によりハブ2
2に伝達されるとともに、リヤデファレンシャル9を介
して後輪11に伝達され、四輪駆動状態になる。
【0067】ところで、アウタープレート38とインナ
ープレート45とが差動回転した場合は、スリット4
0,47および孔41により、粘性流体室B1のシリコ
ンオイルの循環が促進される。また、スリット40,4
7および孔41により、アウタープレート38およびイ
ンナープレート45に生じる熱的応力および機械的応力
が逃がされる。さらに、スリット40,47により、ア
ウタープレート38とインナープレート45との間にシ
リコンオイルを導入する作用が促進される。
【0068】また、シリコンオイルのせん断力によるト
ルク伝達状態が長時間継続された場合は、シリコンオイ
ルおよび空気が熱膨張して粘性流体室B1の内圧が上昇
し、各インナープレート45の両側面付近で圧力差が生
じる。その結果、インナープレート45が軸線方向に移
動して、アウタープレート38とインナープレート45
とが直結される、いわゆるハンプ現象が生じる。
【0069】アウタープレート38とインナープレート
45とが直結されると、シリコンオイルによるエネルギ
ーの吸収が解消されて温度上昇が停止し、粘性流体室B
1の熱がケーシングK1の外部に放熱される。そして、
シリコンオイルの熱が充分放熱されると、粘性流体室B
1の内圧が低下して、アウタープレート38とインナー
プレート45との直結状態が解除され、せん断力による
トルクの伝達状態に復帰する。
【0070】そして、この第1実施例においては、ビス
カスカップリング12の各スペーサリング42が、各切
欠部43の円周方向の位相が異なるように配置されてい
るため、各スペーサリング42全体としての半径方向の
バランス精度が向上する。したがって、ビスカスカップ
リング12の全体が一体的に回転している二輪駆動状態
において、ビスカスカップリング12の振動が抑制され
て、スタンバイ四輪駆動車1の挙動が安定して乗り心地
が向上するとともに、騒音が抑制されて静粛性を向上さ
せることができる。
【0071】また、図6または図7に示す手順により、
ビスカスカップリング12を組み立てた場合は、各アウ
タープレート38の円周方向の位相が異なる状態にな
り、かつ、各インナープレート45の円周方向の位相が
異なる状態になる。このため、各アウタープレート35
および各インナープレート45の形状や加工精度に起因
する固有のアンバランスについても、図6または図7の
組立手順を行うことにより、そのバランス精度を向上す
ることができる。したがって、ビスカスカップリング1
2の振動および騒音抑制機能が一層向上する。
【0072】ここで、第1実施例に開示した特徴的な構
成を記載すれば、以下の通りである。すなわち、粘性流
体室を形成する第1回転部材と第2回転部材とを、相対
回転可能に配置した後、前記第1回転部材と前記第2回
転部材との間に、前記第1回転部材と一体回転する複数
の第1プレートと、前記第2回転部材と一体回転する第
2プレートとを対向して配置するとともに、前記第1プ
レート同士の間に、円周方向における単位長さあたりの
重量を異ならせた重量偏在部を有するスペーサリングを
それぞれ配置するビスカスカップリングの製造方法(組
立方法)において、少なくとも2つのスペーサリング
を、前記重量偏在部同士の円周方向の位相を異ならせて
配置することを特徴とするビスカスカップリングの製造
方法。
【0073】(第2実施例)つぎに、この発明の第2実
施例を説明する。従来、スタンバイ四輪駆動車において
は、前輪と後輪との差動回転を抑制するための機構とし
て、ビスカスカップリングを用いる場合がある。このビ
スカスカップリングは、相対回転可能に配置されたケー
シング(第1回転部材)および軸部材(第2回転部材)
を備えている。ここで、ケーシングはプロペラシャフト
を介してフロントデファレンシャルに接続されている。
一方、軸部材は、リヤデファレンシャルを介して後輪に
接続されている。
【0074】また、ケーシングと軸部材との間に環状の
粘性流体室が形成され、粘性流体室にはシリコンオイル
(粘性流体)が充填されている。さらに、粘性流体室に
は複数のアウタープレート(第1トルク伝達部材)およ
び複数のインナープレート(第2トルク伝達部材)が交
互に配置されている。ここで、複数のアウタープレート
がケーシングに取り付けられ、複数のインナープレート
が軸部材に取り付けられている。
【0075】そして、エンジンから出力されたトルク
が、フロントデファレンシャルを介して前輪に伝達さ
れ、前輪の駆動力により車両が走行する。ここで、前輪
の回転数と後輪の回転数、言い換えれば、ケーシングの
回転数と軸部材の回転数とが等しい場合は、アウタープ
レートの回転数とインナープレートの回転数とが等しく
なる。このため、ケーシングと軸部材との間でトルクの
伝達が行われず、前輪駆動(二輪駆動)状態に維持され
る。
【0076】一方、前輪がスリップしてケーシングと軸
部材とに差動回転が生じた場合は、アウタープレートと
インナープレートとに差動回転が生じる。すると、この
差動回転に応じてシリコンオイルにせん断力が生じ、こ
のせん断力により、ケーシングと軸部材との間でトルク
の伝達が行われる。つまり、四輪駆動状態になる。
【0077】また、アウタープレートとインナープレー
トとの差動回転が継続的に行われた場合は、摩擦抵抗に
よりシリコンオイルの温度が上昇して粘度が変化(低
下)する。その結果、ビスカスカップリングにより伝達
されるトルクが不安定になり、車両の走行性能が低下す
る可能性があった。また、シリコンオイルが劣化して耐
久性が損なわれる問題があった。
【0078】そこで、シリコンオイルの温度上昇を抑制
することの可能なビスカスカップリングの一例が、特開
昭62−184236号公報に記載されている。この公
報にに記載されたビスカスカップリングは、ケーシング
の外周側にパイプが螺旋状に設けられている。そして、
ポンプにより冷却媒体を輸送し、この冷却媒体をパイプ
に供給することで、粘性流体室を外周側から強制的に冷
却し、シリコンオイルの温度上昇を抑制している。
【0079】しかしながら、上記公報に記載された従来
例においては、粘性流体室を外周側から冷却することは
できるが、粘性流体室の内周側に存在するシリコンオイ
ルの熱が放熱されずにこもってしまい、その冷却機能が
充分であるとはいえなかった。また、ビスカスカップリ
ングを冷却するために格別の構成部品、すなわち、ポン
プおよびパイプなどを必要としていた。このため、部品
点数の増加により、ビスカスカップリングの大型化およ
び大重量化を招くとともに、製造コストが上昇する問題
があった。
【0080】第2実施例は、上記事情を背景としてなさ
れたもので、粘性流体室の内周側に対する冷却性能を向
上するとともに、格別の構成部品を用いることなく粘性
流体室を冷却することの可能なビスカスカップリングを
提供することを目的としている。
【0081】図8は、ビスカスカップリング12の第2
実施例を示す断面図である。図8のビスカスカップリン
グ12も、図1に示されたスタンバイ四輪駆動車4に適
用される。図8に示されたビスカスカップリング12に
おいて、第1実施例のビスカスカップリング12と同様
の構成部分については、第1実施例と同一の符号を付与
し、その説明を省略する。図8に示されたビスカスカッ
プリング12は、ケーシングK2とハブ22とを備えて
いる。ケーシングK2とハブ22とは、同一の軸線A1
を中心として相対回転可能に配置されている。第2実施
例においては、ケーシングK2の構成が、第1実施例の
ケーシングK1の構成と相違する。
【0082】以下、ケーシングK2の構成を具体的に説
明する。ケーシングK2は、フロントカバー20および
リヤカバー27と、3個の円筒部材49および2個の環
状部材50とにより構成されている。円筒部材49およ
び環状部材50は、鍛造素材を機械加工して製造されて
いる。各円筒部材49は、その外径および内径がほぼ同
一に設定されている。そして、フロントカバー20側に
位置する円筒部材49の開口端と、フロントカバー20
のフランジ23の外周端とが溶接されている。また、リ
ヤカバー21側に位置する円筒部材49の開口端と、リ
ヤカバー21のフランジ27の外周端とが溶接されてい
る。さらに、各円筒部材49の内周には内歯51が形成
されている。
【0083】一方、2個の環状部材50がハブ22の外
側に配置されている。2個の環状部材50は、円筒部5
2と、円筒部52の外周に形成された一対のフランジ5
3とを備えている。すなわち、軸線A1を含む平面内に
おける環状部材50の断面形状は、ほぼU字形状に構成
されており、その外周に環状溝(言い換えれば、窪みま
たは凹部)54が形成されている。また、円筒部52の
外径が、円筒部材49の内径未満に設定され、一対のフ
ランジ52の外径と、円筒部材49の外径とがほぼ同一
に設定されている。そして、2個の環状部材50の開口
端と、円筒部材49の開口端とが溶接されている。
【0084】上記構成のケーシングK2とハブ22とに
より取り囲まれた空間を、Xリング35,36により液
密にシールして環状の粘性流体室B1が形成されてい
る。そして、粘性流体室B1の内部、具体的には、フロ
ントカバー20と環状部材50との間、および環状部材
50同士の間、ならびに環状部材50とリヤカバー21
との間には、複数のアウタープレート38および複数の
インナープレート45がそれぞれ配置されている。そし
て、複数のアウタープレート38と複数のインナープレ
ート45とが交互に配置されている。
【0085】ここで、アウタープレート38は図3に示
す構成を備えており、インナープレート45は図5に示
す構成を備えている。そして、アウタープレート38の
外歯39が、円筒部材49の内歯51にスプライン嵌合
され、インナープレート45の内歯46が、ハブ22の
外歯44にスプライン嵌合されている。また、各円筒部
材49の内周には複数のスペーサリング42が取り付け
られており、各スペーサリング42はアウタープレート
38同士の間に配置されている。
【0086】そして、上記環状部材50の内径は、アウ
タープレート38の内径とほぼ同一に設定されており、
2個の環状部材50がアウタープレート38同士の間に
配置されている。つまり、環状部材50は、ケーシング
K2における粘性流体室B1に臨む位置に、半径方向に
突出して形成され、その内周端が、粘性流体室B1の内
周側まで到達している。また、環状部材50の外周に形
成された環状溝54が、ケーシングK2の外部と、軸線
方向におけるアウタープレート38の投影領域の一部と
を連通している。
【0087】ここで、第2実施例の構成と請求項2との
対応関係を説明する。すなわち、ケーシングK2が請求
項2の第1回転部材に相当し、ハブ22が請求項2の第
2回転部材に相当し、環状溝54が請求項2の通路に相
当する。また、アウタープレート38が請求項2の第1
トルク伝達部材に相当し、インナープレート45が請求
項2の第2トルク伝達部材に相当する。
【0088】つぎに、図8に示されたビスカスカップリ
ング12の動作を説明する。図8に示されたビスカスカ
ップリング12において、図2に示された構成と同様の
構成部分については同様の作用が生じる。また、図8の
ビスカスカップリング12において、アウタープレート
38とインナープレート45が差動回転すると、摩擦抵
抗によりシリコンオイルの温度が上昇する。粘性流体室
B1の外周側のシリコンオイルの熱の殆どは、円筒部材
49を介して外部に放熱される。一方、粘性流体室B1
の内周側のシリコンオイルの熱は、環状部材50を介し
て環状溝54に放熱される。したがって、粘性流体室B
1の内周側に熱がこもることはない。つまり、第2実施
例においては、粘性流体室B1を取り囲むケーシングK
2自体の外周形状を、放熱フィンに近似する形状に構成
することで放熱面積を可及的に拡大している。言い換え
れば、ケーシングK2自体が放熱機構(ヒートシンク)
としての機能している。
【0089】このように、第2実施例においては、環状
部材50がアウタープレート38同士の間に突出して配
置され、環状溝54が、ビスカスカップリング12の外
部と、軸線方向におけるアウタープレート38の投影領
域に対応する空間とを連通しているため、粘性流体室B
1の内周側のシリコンオイルの熱を充分に放熱し、冷却
することができる。つまり、粘性流体室B1の内部のシ
リコンオイルの温度が、ケーシングK2の外部の雰囲気
温度に近い値に制御される。
【0090】その結果、粘性流体室B1の内部の温度変
化が抑制され、シリコンオイルの粘度がほぼ一定に維持
される。このため、ビスカスカップリング12により伝
達されるトルクが安定し、スタンバイ四輪駆動車1の走
行性能を良好に維持することができる。また、アウター
プレート38とインナープレート45とが長期間に亘っ
て差動回転した場合においても、シリコンオイルの粘度
低下(劣化)が抑制され、シリコンオイルの耐久性が向
上する。
【0091】また、第2実施例においては、ケーシング
K2自体の放熱機能により、粘性流体室B1の熱が放熱
される構成になっており、粘性流体室B1を冷却するた
めに格別の構成部品を必要としない。したがって、部品
点数が抑制されてビスカスカップリング12の小型化お
よび軽量化に寄与でき、かつ、製造コストの上昇を抑制
できる。
【0092】なお、第2実施例においては、カバー17
とケーシングK2との間に密封装置を装着するととも
に、密封装置により密封された空間にオイルなどの冷却
媒体を封入することも可能である。この構成を採用した
場合は、粘性流体室B1の熱が冷却媒体により冷却され
るため、粘性流体室B1に対する冷却機能が一層向上す
る。
【0093】また、第2実施例においては、各円筒部材
49が同一形状に構成され、各環状部材50が同一形状
に構成されている。このため、ケーシングK2の部品の
種類数が低減され、製造コストを抑制することができ
る。
【0094】また、図8の実施例においては、アウター
プレート38同士の間に突出部を形成しているが、アウ
タープレート38とインナープレート45との間に突出
部を形成することも可能である。
【0095】また、第2実施例においては、ケーシング
の内周面における円周方向の一部に、ハブ側に向けて突
出する突出部を形成し、この突出部に、ケーシングの外
部と、軸線方向におけるプレート同士の投影領域の一部
とを連通する凹部(通路)を形成することも可能であ
る。また、第2実施例において、円筒形状のケーシング
の内周側に、プレート同士の間に配置されるフランジを
形成し、ケーシングおよびフランジに、ケーシングの半
径方向の断面内において弦方向に貫通する通路を形成す
ることも可能である。
【0096】(第3実施例)つぎに、この発明の第3実
施例を説明する。従来、スタンバイ四輪駆動車において
は、前輪と後輪との差動回転を抑制するための機構とし
て、ビスカスカップリングを用いる場合がある。このビ
スカスカップリングは、相対回転可能に配置されたケー
シング(第1回転部材)および軸部材(第2回転部材)
を備えている。ここで、ケーシングはプロペラシャフト
を介してフロントデファレンシャルに接続されている。
一方、軸部材は、リヤデファレンシャルを介して後輪に
接続されている。
【0097】また、ケーシングと軸部材との間に環状の
粘性流体室が形成され、粘性流体室にはシリコンオイル
(粘性流体)が充填されている。さらに、粘性流体室に
は複数のアウタープレート(第1トルク伝達部材)およ
び複数のインナープレート(第2トルク伝達部材)が交
互に配置されている。ここで、複数のアウタープレート
がケーシングに取り付けられ、複数のインナープレート
が軸部材に取り付けられている。
【0098】そして、エンジンから出力されたトルク
が、フロントデファレンシャルを介して前輪に伝達さ
れ、前輪の駆動力により車両が走行する。ここで、前輪
の回転数と後輪の回転数、言い換えれば、ケーシングの
回転数と軸部材の回転数とが等しい場合は、アウタープ
レートの回転数とインナープレートの回転数とが等しく
なる。このため、ケーシングと軸部材との間でトルクの
伝達が行われず、前輪駆動(二輪駆動)状態に維持され
る。
【0099】一方、前輪がスリップしてケーシングと軸
部材とに差動回転が生じた場合は、アウタープレートと
インナープレートとに差動回転が生じる。すると、この
差動回転に応じてシリコンオイルにせん断力が生じ、こ
のせん断力により、ケーシングと軸部材との間でトルク
の伝達が行われる。つまり、四輪駆動状態になる。
【0100】また、アウタープレートとインナープレー
トとの差動回転が継続的に行われた場合は、摩擦抵抗に
よりシリコンオイルの温度が上昇して粘度が変化する。
その結果、ビスカスカップリングにより伝達されるトル
クが不安定になり、車両の走行性能が低下する可能性が
あった。また、シリコンオイルが劣化(粘度が低下)し
て耐久性が損なわれる問題があった。
【0101】そこで、シリコンオイルの温度上昇を抑制
することの可能なビスカスカップリングの一例が、特開
昭62−184236号公報および実開昭62−155
234号公報に記載されている。特開昭62−1842
36号公報に記載されたビスカスカップリングは、ケー
シングの外周側にパイプが螺旋状に設けられている。そ
して、ポンプにより冷却媒体を輸送し、この冷却媒体を
パイプに供給することで、粘性流体室を外周側から強制
的に冷却し、シリコンオイルの温度上昇を抑制してい
る。
【0102】また、実開昭62−155234号公報に
記載されたビスカスカップリングにおいては、ビスカス
カップリングがデファレンシャル装置の外殻部材の内部
に配置されている。そして、ビスカスカップリングのケ
ーシングの外周面に凹部が形成されている。このビスカ
スカップリングにおいては、シリコンオイルの温度が上
昇した場合は、その熱がケーシングの外部に放熱される
ことで、粘性流体室が冷却されるとされている。
【0103】しかしながら、特開昭62−184236
号公報に記載されたビスカスカップリングにおいては、
粘性流体室を冷却するために格別の構成部品、すなわ
ち、ポンプおよびパイプなどを必要としていた。このた
め、部品点数の増加により、ビスカスカップリングの大
型化および大重量化を招くとともに、製造コストが上昇
する問題があった。また、実開昭62−155234号
公報のビスカスカップリングにおいては、格別の部品を
設けることなく粘性流体室を冷却することができるもの
の、ケーシングの周囲が外殻部材により囲まれているた
め、ケーシングの外部に放熱された熱が外殻部材の内部
にこもることになり、結果的にビスカスカップリングに
対する冷却機能が不十分であった。
【0104】第3実施例は、上記事情を背景としてなさ
れたもので、格別の構成部品を用いることなく、粘性流
体室に対する冷却機能を可及的に向上することの可能な
ビスカスカップリングを提供することを目的としてい
る。
【0105】図9は、ビスカスカップリング12の第3
実施例を示す平面断面図、図10は、図9のX−X線に
おける側面断面図である。第3実施例のビスカスカップ
リング12において、第1実施例のビスカスカップリン
グ12と同様の構成部分については、第1実施例と同一
の符号を付与し、その説明を省略する。図9に示された
ビスカスカップリング12は、ケーシングK3とハブ2
2とを備えている。ケーシングK3とハブ22とは、同
一の軸線A1を中心として相対回転可能に配置されてい
る。
【0106】また、カバー17と、円筒部材19におけ
るデファレンシャルキャリヤ15側の端部との間には、
オイルシール55が取り付けられている。さらに、カバ
ー17とフロントカバー20との間において、ラジアル
軸受24よりもデファレンシャルキャリヤ15側の位置
には、別のオイルシール56が設けられている。このよ
うにして、カバー17とケーシングK3との間の空間を
オイルシール55,56により液密にシールすることに
より、第2粘性流体室B2が形成されている。ここで、
カバー17はケーシングK3を取り囲み、かつ、外気中
に露出する状態で最も外周側に配置されている。
【0107】さらに、カバー17を半径方向に貫通し、
かつ、第2粘性流体室B2に連通する注入孔57が形成
されている。この注入孔57は、第2粘性流体室B2に
シリコンオイル(粘性流体)を注入したり、第2粘性流
体室B2からシリコンオイルを抜き取ったりするための
構成である。この注入孔57は、ボール58により封止
されている。なお、図9に示すリヤカバー21には、図
2に示すリヤカバー21の注入孔29およびボール30
に相当する構成は設けられていない。
【0108】前記円筒部材19には、半径方向に貫通す
る通路59,60が形成されている。具体的には、ケー
シングK3の複数(例えば3箇所)の円周上に通路5
9,60がそれぞれ形成されている。各通路59,60
は円周方向に交互に配置されている。また、図10に示
すように、通路59,60はケーシング19の円周方向
に傾斜している。なお、通路59の傾斜方向と、通路6
0の傾斜方向とが逆に設定されている。この通路59,
60により、粘性流体室B1と第2粘性流体室B2とが
連通されている。したがって、第2粘性流体室B2に注
入されたシリコンオイルが、通路56,60を介して粘
性流体室B1にも充填されている。ここで、粘性流体室
B1および通路59,60ならびに第2粘性流体室B2
に対して、全容積の70ないし90%の充填率で、シリ
コンオイルが充填されている。
【0109】つぎに、第3実施例のビスカスカップリン
グ12をデファレンシャルキャリヤ15に取り付ける手
順を説明する。まず、カバー17の内部にビスカスカッ
プリング12を組み付けることにより、カバー17とケ
ーシングK3との間に第2粘性流体室B2を形成する。
つぎに、注入孔57からシリコンオイルを注入し、第2
粘性流体室B2および粘性流体室B1に充填する。その
後、カバー17およびビスカスカップリング12を一括
してデファレンシャルキャリヤ15側に取り付ける。こ
こで、第3実施例の構成と請求項3の構成との対応関係
を説明する。すなわち、ケーシングK3が請求項3の第
1回転部材に相当し、ハブ22が請求項3の第2回転部
材に相当し、カバー17が請求項3の外殻部材に相当す
る。また、アウタープレート38が請求項3の第1トル
ク伝達部材に相当し、インナープレート45が請求項3
のトルク伝達部材に相当する。
【0110】第3実施例のビスカスカップリング12に
おいて、トルクの伝達および遮断動作は、第1実施例と
同様である。また、第3実施例においては、粘性流体室
B1と第2粘性流体室B2とが通路59,60により連
通されている。このため、アウタープレート38とイン
ナープレート45とが差動回転して粘性流体室B1側の
シリコンオイルの温度が上昇した場合においても、第2
粘性流体室B2および粘性流体室B1に充填されている
シリコンオイルがケーシング19の回転により撹拌さ
れ、粘性流体室B1側のシリコンオイルが第2粘性流体
室B2側に移行する。そして、粘性流体室B1から第2
粘性流体室B2に移行したシリコンオイルの熱が、カバ
ー17を介して外気中に放熱される。すなわち、カバー
17の内部に熱がこもることがない。
【0111】特に、第3実施例においては、通路59,
60が逆方向に傾斜している。このため、図10に示す
ようにケーシングK3が時計方向に回転した場合、粘性
流体室B1のシリコンオイルが遠心力により通路60を
介して第2粘性流体室B2側に移動し易くなっている。
一方、第2粘性流体室B2側のシリコンオイルが、ケー
シングK3における通路59に面するエッジ部分の楔作
用により、粘性流体室B1側に強制的に移動させられ
る。その結果、第2粘性流体室B2と粘性流体室B1と
の間におけるシリコンオイルの循環が促進される。
【0112】上記動作により、粘性流体室B1内のシリ
コンオイルの温度上昇が抑制され、シリコンオイルの粘
度がほぼ一定に維持される。したがって、ビスカスカッ
プリング12により伝達されるトルクが安定し、スタン
バイ四輪駆動車の走行性能を良好に維持することができ
る。また、アウタープレート38とインナープレート4
5とが長期間に亘って差動回転した場合においても、シ
リコンオイルの粘度低下(劣化)が抑制され、シリコン
オイルの耐久性が向上する。
【0113】また、第3実施例においては、粘性流体室
B1から第2粘性流体室B2に伝導された熱を、カバー
17自体の外表面から外気中に放熱して粘性流体室B1
を冷却する構成になっている。このため、粘性流体室B
1を冷却するために格別の構成部品を必要としない。し
たがって、部品点数が抑制されてビスカスカップリング
12の小型化および軽量化に寄与でき、かつ、製造コス
トの上昇を抑制できる。さらに、第3実施例において
は、粘性流体室B1の外周側に第2粘性流体室B2を設
けることで、シリコンオイルの充填容積が可及的に拡大
され、シリコンオイルの熱容量が増大している。したが
って、シリコンオイルの発熱が一層抑制される。さら
に、シリコンオイルの単位容積あたりの仕事量がが減少
し、シリコンオイルの低粘度化(劣化)が抑制され、シ
リコンオイルの耐久性が向上する。
【0114】ここで、第3実施例に開示した特徴的な構
成を記載すれば以下の通りである。回転可能に配置され
たケーシングと、このケーシングと同一の軸線を中心と
して回転可能に構成され、かつ、前記ケーシングの内部
に配置された軸部材(ハブ)と、前記ケーシングと前記
軸部材との間に形成され、かつ、粘性流体が充填される
粘性流体室と、この粘性流体室の内部に配置され、か
つ、前記ケーシングに取り付けられた第1プレートと、
前記軸部材に取り付けられ、かつ、前記第1プレートと
対向して配置された第2プレートと、前記ケーシングの
外側を取り囲み、かつ、外気に露出する状態で最も外周
側に配置された外殻部材とを備えたビスカスカップリン
グにおいて、前記ケーシングと前記外殻部材との間に形
成された第2粘性流体室と、前記ケーシングを半径方向
に貫通して形成され、かつ、前記粘性流体室と前記第2
粘性流体室とを連通する複数の通路とを備え、前記複数
の通路が、前記ケーシングの円周方向に逆向きに傾斜し
ていることを特徴とするビスカスカップリング。
【0115】(第4実施例)つぎに、この発明の第4実
施例を説明する。従来、車両の動力伝達経路に配置され
ているビスカスカップリングの一例が、特開平2−27
5124号公報に記載されている。この公報に記載され
たビスカスカップリングは、相対回転可能に配置された
第1回転部材および第2回転部材と、第1回転部材と第
2回転部材との間に形成された粘性流体室とを備えてい
る。また、粘性流体室には分離ブレードが配置されてお
り、分離ブレードが第1回転部材の内周にスプライン嵌
合されている。このようにして、粘性流体室が、分離ブ
レードにより第1の空間と第2の空間とに分離されてい
る。
【0116】そして、第1の空間には、複数のアウター
プレート(第1トルク伝達部材)と複数のインナープレ
ート(第2トルク伝達部材)とが交互に配置されてい
る。各アウタープレートは第1回転部材に取り付けら
れ、各インナープレートは第2回転部材に取り付けられ
ている。さらに分離ブレードには、厚さ方向に開口部が
形成されているとともに、分離ブレードには遠心力によ
り動作して開口部を開放するシャッタが取り付けられて
いる。
【0117】上記構成において、ビスカスカップリング
全体が低速回転している場合は、シャッタにより開口部
が閉じられている。そして、アウタープレートとインナ
ープレートとに差動回転が生じた場合は、シリコンオイ
ル(粘性流体)のせん断力により、第1の回転部材と第
2の回転部材との間でトルクの伝達が行われる。一方、
ビスカスカップリングが高速回転した場合は、遠心力に
よりシャッタが外側に移動し、開口部が開放されて、第
1の空間と第2の空間とが連通する。このため、アウタ
ープレートとインナープレートとに差動回転が生じて、
第1の空間の圧力が上昇した場合は、第1の空間のシリ
コンオイルが開口部を通過して第2の空間に移動するこ
とで、第1の空間の圧力上昇が抑制される。
【0118】したがって、アウタープレートとインナー
プレートとが高差動回転し、シリコンオイルの圧力上昇
によりアウタープレートとインナープレートとが直結さ
れる、いわゆるハンプ現象を回避することができるとさ
れている。その後、ビスカスカップリングの回転数が低
下した場合は、シャッタが内側に動作して開口部が閉じ
られるとともに、第2の空間側のシリコンオイルが、分
離ブレードと第2回転部材との隙間を通過して第1の空
間に戻る。
【0119】しかしながら、上記公報に記載されたビス
カスカップリングにおいては、シャッタにより開口部が
閉じられている状態においても、第1の空間と第2の空
間とが、分離ブレードと第2回転部材との隙間を介して
連通している。このため、第2の空間側の圧力上昇が隙
間を介して第1の空間側にも伝達される可能性があり、
第1の空間の圧力が抑制されにくく、トルクを充分に抑
制することができなかった。
【0120】第4実施例は、上記事情を背景としてなさ
れたもので、粘性流体室の内部の圧力上昇を抑制する機
能を確実に向上させることのできるビスカスカップリン
グを提供することを目的としている。
【0121】この第4実施例は、請求項4に対応する実
施例である。図11は、第4実施例のビスカスカップリ
ング12のうち、第1の構成例を示す半断面図である。
図11の構成において、図2および図3ならびに図5と
同様の構成部分については、図2および図3ならびに図
5と同様の符号を付し、その説明を省略する。図11の
ビスカスカップリング12は、軸線A1を中心として相
対回転可能なケーシングK4とハブ22とを備えてい
る。ケーシングK4は、フロントカバー20と円筒部材
61とリヤカバー21とから構成されている。円筒部材
61の一端側がフロントカバー20に溶接され、円筒部
材61の他端側がリヤカバー21に溶接されている。
【0122】このケーシングK4とハブ22との間に形
成された空間がXリング35,36により液密にシール
されて、環状の粘性流体室B1が形成されている。この
粘性流体室B1に、複数のアウタープレート38と、複
数のインナープレート45とが交互に配置されている。
【0123】図12は、図11のXII−XII線における
側面断面図である。円筒部材61には、その一部を外周
側に向けて突出した突出部62が形成されている。この
突出部62は、円筒部材61の軸線方向におけるほぼ中
央に配置されている。また、突出部62は、円筒部材6
1の外周側に、円周方向に所定間隔で複数設けられてい
る。なお、図12においては、便宜上1つの突出部62
のみを図示している。そして、突出部62の内周には円
柱形状のシリンダ63が形成されている。このシリンダ
63は、前記粘性流体室B1に連通している。
【0124】シリンダ63内には円柱形状のピストン6
4が配置されている。このピストン64はシリンダ63
内をケーシングK4の半径方向に移動可能に構成されて
いる。すなわち、ピストン64は、粘性流体室B1の外
周側に位置している。ピストン64における粘性流体室
B1側の端面は、円筒部材61の内周面形状に近似する
形状に湾曲している。また、ピストン64の外周にはO
リング65が装着されている。
【0125】そして、シリンダ63内には、ピストン6
4により粘性流体室B1から隔てられた副室66が形成
されている。この副室66には空気が封入されている。
この副室66には圧縮ばね67が収納されており、圧縮
ばね67の弾性力によりピストン64が粘性流体室B1
側に向けて押圧されている。なお、粘性流体室B1と副
室66との間は、Oリング65により液密にシールされ
ている。
【0126】また、前記円筒部材61の内周面における
シリンダ63と同一円周上には、シリンダ63に臨むス
トッパ68が設けられている。そして、圧縮ばね67に
より押圧されたピストン64の端部がストッパ68に当
接して、ピストン64が停止している。上記突出部62
およびシリンダ64ならびに圧縮ばね67の数、および
円周方向の配置位置は、ケーシングK4の半径方向の動
的バランス精度を維持できるように設定することが好ま
しい。
【0127】一方、前記円筒部材61の内周面のうち、
シリンダ63以外の部位には内歯37が形成されてい
る。また、アウタープレート38およびインナープレー
ト45は、第1実施例と同様に、図3および図5に示す
構成を備えている。そして、アウタープレート38の外
歯39が内歯37にスプライン嵌合されている。また、
インナープレート45の内歯46が、ハブ22の外歯4
4にスプライン嵌合されている。
【0128】さらに、円筒部材61の内周面におけるシ
リンダ63に臨む箇所には、受圧板(図示せず)が設け
られており、アウタープレート38がシリンダ63側に
移動する量を規制している。なお、ストッパ68によ
り、この受圧板の機能を兼備させることも可能である。
【0129】ここで、図11ないし図13の実施例の構
成と、請求項4の構成との対応関係を説明する。すなわ
ち、ケーシングK4が請求項4の第1回転部材に相当
し、ハブ22が請求項4の第2回転部材に相当し、ピス
トン64および圧縮ばね67が請求項4の可動部材に相
当する。なた、アウタープレート38が請求項4の第1
トルク伝達部材に相当し、インナープレート45が請求
項4の第2トルク伝達部材に相当する。
【0130】つぎに、図11ないし図13に示すビスカ
スカップリング12の動作を説明する。このビスカスカ
ップリング12が、図1に示すスタンバイ四輪駆動車1
に適用された場合、第1実施例と同様にしてトルクの伝
達・遮断が行われる。そして、図11ないし図13のビ
スカスカップリング12は、シリコンオイルのせん断力
によりトルクが伝達されている状態では、軸線A1に直
交する平面内におけるトルクの伝達面積が、アウタープ
レート38の内径およびインナープレート45の外径
と、粘性流体室B1に対するシリコンオイルの充填率と
に基づいて決定される。
【0131】一方、図11ないし図13の実施例におい
ては、圧縮ばね67の弾性力により、ピストン64が粘
性流体室B1側に押圧されている。このため、スタンバ
イ四輪駆動車1の走行時に、ビスカスカップリング12
が全体回転してピストン64に遠心力が作用した場合で
も、遠心力が所定値以下の状態では、図12に示すよう
に、ピストン64の端部がストッパ68に当接した状態
に維持される。つまり、粘性流体室B1の容積が最少の
状態に制御される。
【0132】スタンバイ四輪駆動車1の車速が増大した
場合は、ビスカスカップリング12の全体回転数が増大
して、ピストン64に作用する遠心力が所定値を超える
場合がある。この場合は、図13に示すように、圧縮ば
ね67および副室66の空気が圧縮されてピストン64
が外側に移動し、副室66の容積が縮小される。つま
り、シリンダ63のうち、ピストン64の移動量に相当
する容積が、粘性流体室B1の容積に付加される。すな
わち、粘性流体室B1の容積が実質的に拡大される。そ
して、副室66の空気および圧縮ばね67の圧縮限界に
到達した時点、または、ピストン64に作用する遠心力
が、一定の値に維持された時点でピストン63が停止す
る。
【0133】ところで、ビスカスカップリング12が全
体回転した場合は、シリコンオイルに遠心力が作用し
て、シリコンオイルが粘性流体室B1の外周側に移動す
る。しかし、前述のように、粘性流体室B1の容積が拡
大した場合は、シリコンオイルの一部がシリンダ63側
に移動する。つまり、ピストン64がストッパ68に当
接して停止している状態から、ピストン64が外側に移
動すると、シリコンオイルのうちトルク伝達作用を生じ
る領域の外径は変化しないが、内径が大きくなる。その
結果、トルクの伝達面積が減少する。具体的には、この
場合のトルクの伝達面積T1は、次式によって表され
る。
【0134】 T1=π/4×(D02−D12)・・・・・(1) (1)式において、D0は、シリコンオイルのうちトル
ク伝達作用を生じる領域の外径(インナープレート45
の外径)であり、D1は、シリコンオイルのうちトルク
伝達作用を生じる領域の内径である。
【0135】ここで、粘性流体室の容積が固定された比
較例のビスカスカップリング(図示せず)と、図11な
いし図13のビスカスカップリング12とを比較する。
すなわち、比較例のビスカスカップリングのトルクの伝
達面積T2は、次式(2)によって表される。
【0136】 T2=π/4×(D02−D22)・・・・・(2) (2)式において、D0は、シリコンオイルのうちトル
ク伝達作用を生じる領域の外径(インナープレートの外
径)であり、D2は、シリコンオイルのうちトルク伝達
作用を生じる領域の内径である。そして、比較例のビス
カスカップリングにおいては、粘性流体室の容積が固定
されているため、比較例の内径D2と、第4実施例の内
径D1とを比較すると、D1>D2の関係になる。した
がって、図11ないし図13のビスカスカップリング1
2のトルク伝達面積T1と、比較例におけるトルク伝達
面積T2とを比較すると、T1<T2の関係になること
がわかる。
【0137】なお、スタンバイ四輪駆動車1の車速が低
下した場合は、ピストン64に作用する遠心力の減少に
基づいて、前述とは逆の動作によりピストン64が内側
に移動して粘性流体室B1の容積が減少する。
【0138】以上のように、図11ないし図13の実施
例においては、スタンバイ四輪駆動車1の走行中に、ピ
ストン64に作用する遠心力が所定値を超えた場合は、
ピストン64が外側に移動する。その結果、粘性流体室
B1の容積が拡大され、シリコンオイルが遠心力により
インナープレート45およびアウタープレート38との
対向面よりも外周側に移動して、トルクの伝達面積T1
が減少する。このため、スタンバイ四輪駆動車1の高速
走行中に、アウタープレート38とインナープレート4
5とに低差動回転が生じた場合でも、ケーシングK4と
ハブ22との間で伝達されるトルクの増大を抑制するこ
とができる。
【0139】したがって、シリコンオイルの発熱および
温度上昇が抑制され、シリコンオイルの劣化が防止され
て、耐久性を向上することができる。また、リヤデファ
レンシャル9およびリヤドライブシャフト10などのド
ライブトレーンの構成部品に対して、過大な負荷が加わ
ることが抑制される。したがって、ドライブトレーンの
構成部品の疲労が軽減され、その寿命を向上させること
ができる。言い換えれば、ドライブトレーンの構成部品
の限界強度を高める必要が無く、比較的低強度の構成部
品を用いることができる。
【0140】さらに、粘性流体室B1の容積の拡大量を
制御することで、スタンバイ四輪駆動車1の高速走行時
におけるトルク伝達特性、言い換えれば、走行性能を任
意に変更することができる。さらにまた、粘性流体室B
1の容積が拡大されることで内圧の上昇が抑制され、ア
ウタープレート38とインナープレート45とが直結す
る、いわゆるハンプ現象を抑制することができる。した
がって、ケーシングK4とハブ22との間で伝達される
トルクが抑制され、ドライブトレーンを構成する部品の
耐久性を向上することができる。
【0141】なお、上記動作中、アウタープレート38
とインナープレート45とが差動回転し、かつ、粘性流
体室B1の容積が拡大した場合は、粘性流体室B1の空
気およびシリコンオイルが熱膨張して粘性流体室B1の
内圧が上昇しようとする。しかしながら、粘性流体室B
1の容積の拡大に対応して内圧の上昇が抑制される。そ
の後、ピストン64に作用する遠心力が減少し、かつ、
アウタープレート38とインナープレート45との差動
回転数が減少した場合は、温度の低下に伴って空気およ
びシリコンオイルが収縮し、粘性流体室B1の内圧が下
降しようとするる。しかし、ピストン64が内側に移動
して粘性流体室B1の容積が縮小するため、内圧の下降
が抑制される。
【0142】ところで、特開平2−275124号公報
に記載されたビスカスカップリングにおいては、分離ブ
レードと第2回転部材との隙間を介して粘性流体が収納
室に戻るように構成されている。このため、粘性流体が
隙間を通過する場合の抵抗により、粘性流体が副室から
収納室に復帰するために長時間を要する。したがって、
ビスカスカップリングの全体回転速度が低下した場合に
は、収納室側のシリコンオイルの圧力が所期の値に復帰
しにくく、伝達トルクが不十分になる可能性があった。
【0143】これに対して、図11ないし図13の実施
例によれば、ピストン64に作用する遠心力が所定値以
下になった場合は、圧縮ばね67の弾性力によりピスト
ン64が内側に移動して粘性流体室B1の容積が縮小
し、かつ、図12の初期状態に復帰する。このため、粘
性流体室B1の容積の縮小が円滑、かつ、迅速に行われ
る。したがって、ビスカスカップリング12の全体回転
速度が減少した場合において、粘性流体B1の容積の縮
小が短時間で行われ、伝達トルクを充分に確保すること
ができる。
【0144】なお、図11ないし図13の実施例におい
ては、圧縮ばね67のばね定数(言い換えれば強度)を
変更することにより、粘性流体室B1の容積の変化程度
を制御することが可能である。また、突出部62の一部
に、副室66とケーシングK4の外部とを連通する通路
(図示せず)を形成することも可能である。この通路を
設けた場合は、ピストン64が外側に移動する際に、副
室66の空気の圧縮抵抗が軽減される。このため、ピス
トン64に作用する遠心力が比較的小さい状態において
も、粘性流体室B1の容積が拡大される。
【0145】また、図11ないし図13の実施例におい
ては、円筒部材61の軸線方向のほぼ中央に突出部62
およびシリンダ63が形成されているが、円筒部材61
の軸線方向の全域に亘って、突出部およびシリンダを形
成し、このシリンダの内部に、円筒部材の半径方向に移
動するピストンを配置することも可能である。さらに、
シリンダおよびピストンを、円筒部材の異なる円周上
に、それぞれ配置することも可能である。
【0146】図14は、請求項4に対応するビスカスカ
ップリング12の他の構成例を示す平面断面図である。
図14のビスカスカップリング12において、図2およ
び図3ならびに図5のビスカスカップリング12と同様
の構成部分については、図2および図3ならびに図5と
同様の符号を付してその説明を省略する。図14のビス
カスカップリング12においては、ケーシングK5を構
成するリヤカバー69の構成に特徴がある。
【0147】すなわち、リヤカバー69には、粘性流体
室B1に臨むシリンダ70が形成されている。シリンダ
70は軸線A1を中心として環状に構成されている。こ
のシリンダ70内には、ピストン71が配置されてい
る。ピストン71は、軸線A1を中心とする環状に構成
され、ピストン71は、シリンダ70内において軸線方
向に移動可能に構成されている。このようにして、シリ
ンダ70内に、ピストン71により粘性流体室B1から
隔てられた副室73が形成されている。
【0148】そして、ピストン71における副室73側
の端面72には、粘性流体室B1側からデファレンシャ
ルキャリヤ15側に向けて縮径する方向のテーパが付与
されている。そして、端面72と副室73の奥端面とが
引っ張りばね74により接続されている。引っ張りばね
74は、副室73の内部に円周方向にほぼ等間隔で複数
配置されている。この引っ張りばね74の弾性力によ
り、ピストン71が軸線方向、具体的にはデファレンシ
ャルキャリヤ15側に向けて引かれている。
【0149】また、ピストン71の内周にはOリング7
5が取り付けられ、ピストン71の外周にはOリング7
6が取り付けられている。このOリング75,76によ
り、粘性流体室B1と副室73とが液密にシールされて
いる。そして、副室73には空気が封入されている。さ
らに、副室73には、円周方向に所定間隔で複数のウェ
イト77が配置されている。各ウェイト77におけるピ
ストン71側の端面78には、ピストン71の端面72
と同じ方向のテーパが付与されている。
【0150】一方、各ウェイト77とシリンダ70の内
周面とが引っ張りばね79によりそれぞれ接続され、引
っ張りばね79の弾性力により、各ウェイト77が内側
に引かれている。その結果、ピストン71の端面72
と、各ウェイト77の端面78とが密着している。
【0151】つまり、ビスカスカップリング12が回転
していない状態では、引っ張りばね79の弾性力により
各ウェイト77が内側に引かれて、ピストン71が粘性
流体室B1側に押圧されている。そして、この押圧力
と、引っ張りばね74の弾性力との釣り合いにより、ピ
ストン71が軸線方向の所定位置に停止している。した
がって、引っ張りばね74の強度(ばね定数)は、前記
押圧力が減少した場合に、副室73の空気を圧縮して、
副室73の容積を縮小させる値に設定されている。
【0152】なお、シリンダ70の内周面におけるピス
トン71よりも粘性流体室B1側の位置にストッパ(図
示せず)を設けておくことも可能である。この構成によ
り、ピストン71が粘性流体室B1側に押圧された場合
に、ピストン71がストッパに当接して所定位置に停止
する。この場合は、引っ張りばね79の弾性力を、引っ
張りばね74の弾性力よりも強く設定することが可能で
ある。なお、上記ウェイト77および引っ張りばね7
4,79の配置位置および配置数は、ケーシングK5の
半径方向の動的バランスを維持できる状態に設定するこ
とが好ましい。
【0153】また、この実施例では、フロントカバー2
0に、粘性流体室B1と外部とを連通する注入孔80が
形成されている。注入孔80は、粘性流体室B1シリコ
ンオイルを注入したり、粘性流体室B1内のシリコンオ
イルを抜き取ったりするための機構である。この注入孔
80はボール81により封止されている。
【0154】ここで、図14の実施例の構成と、請求項
4の構成との対応関係を説明する。すなわち、ケーシン
グK5が請求項4の第1回転部材に相当し、ハブ22が
請求項4の第2回転部材に相当し、ウェイト77および
ピストン71および引っ張りばね74,79が請求項4
の可動部材に相当する。また、アウタープレート38が
請求項4の第1トルク伝達部材に相当し、インナープレ
ート45が請求項4の第2トルク伝達部材に相当する。
【0155】つぎに、図14の実施例の動作を説明す
る。図14に示されたビスカスカップリング12が、図
1に示すスタンバイ四輪駆動車1に適用された場合は、
第1実施例と同様にして、トルクの伝達・遮断が行われ
る。そして、図14に示すビスカスカップリング12が
全体回転すると、ウェイト77に遠心力が作用する。遠
心力が所定値以下にある場合は、図14に示すように、
各ウェイト77が最も内周側に停止している。このた
め、ピストン71が、最も粘性流体室B1に近い位置に
停止し、粘性流体室B1の容積が最も少ない状態に制御
される。
【0156】一方、ビスカスカップリング12の全体回
転数の増大により、各ウェイト77に作用する遠心力が
所定値を超えた場合は、図15に示すように、各ウェイ
ト77が引っ張りばね79の弾性力に抗して外側に移動
する。すると、引っ張りばね74の弾性力によりピスト
ン72がデファレンシャルキャリヤ15側に移動し、副
室73の容積が縮小される。その結果、ピストン72の
移動量に相当する容積が、粘性流体室B1の容積に追加
され、粘性流体室B1の容積が拡大される。すなわち、
粘性流体室B1内のシリコンオイルが、シリンダ70の
内部に進入することが可能な状態になる。
【0157】なお、ビスカスカップリング12の全体回
転数が低下して、各ウェイト77に作用する遠心力が低
下した場合は、前述と逆の動作により各ウェイト77が
内側に移動する。その結果、各ウェイト77の端面78
からピストン71の端面72に対して押圧力が作用す
る。この押圧力によりピストン71が粘性流体室B1側
に押圧され、粘性流体室B1の容積が縮小される。
【0158】以上のように、図14および図15に示す
実施例においても、ビスカスカップリング12の回転数
が増大して、各ウェイト77に作用する遠心力が所定値
を超えた場合は、ピストン71がデファレンシャルキャ
リヤ15側に移動することで、粘性流体室B1の容積が
拡大される。このため、粘性流体室B1内のシリコンオ
イルがピストン71側に移動し易くなり、アウタープレ
ート38とインナープレート45との間に存在するシリ
コンオイルの量が減少する。すなわち、トルクの伝達面
積が減少する。したがって、アウタープレート38とイ
ンナープレート45とに差動回転が生じた場合は、図1
1ないし図13の実施例と同様の効果を得られる。
【0159】なお、図14および図15の実施例におい
て、フロントカバー20側にも、前述したシリンダ70
およびピストン71およびウェイト77および引っ張り
ばね74,79に相当する構成、すなわち、粘性流体室
B1の容積拡大機構を設けることも可能である。このよ
うに、フロントカバー20およびリヤカバー21の両方
に、上記構成の容積拡大機構を設けた場合は、粘性流体
室B1の容積を拡大する機能が倍増され、一層効果的で
ある。
【0160】なお、図14ないし図15の実施例におい
ては、引っ張りばね74,79のばね定数(言い換えれ
ば強度)を変更することにより、粘性流体室B1の容積
の変化程度を制御することが可能である。また、リヤカ
バー21の一部に、副室73とケーシングK5の外部と
を連通する通路(図示せず)を形成することも可能であ
る。この通路を設けた場合は、ピストン71がデファレ
ンシャルキャリヤ15側に移動する際に、副室73の空
気の圧縮抵抗が軽減される。このため、ピストン71の
作動抵抗が減少し、粘性流体室B1の容積拡大機能が向
上する。
【0161】ここで、第4実施例に開示された特徴的な
構成を記載すれば以下の通りである。相対回転可能に配
置された第1回転部材および第2回転部材と、この第1
回転部材と第2回転部材との間に形成され、かつ、粘性
流体が充填される粘性流体室と、この粘性流体室に配置
され、かつ、前記第1回転部材と一体回転する第1トル
ク伝達部材と、前記第1トルク伝達部材に対向して配置
され、かつ、第2回転部材と一体回転する第2トルク伝
達部材とを備えたビスカスカップリングにおいて、前記
粘性流体室に隣接する副室と、前記粘性流体室と前記副
室とを液密に隔てる隔壁と、遠心力の作用に基づいて前
記隔壁を前記副室側に移動させることにより、前記副室
の容積を縮小させ、かつ、前記粘性流体室の容積を拡大
させる動作機構とを設けたことを特徴とするビスカスカ
ップリング。
【0162】すなわち、図11ないし図13の実施例の
ピストン64が隔壁に相当し、圧縮ばね67が動作機構
に相当する。また、図14および図15の実施例のピス
トン71が隔壁に相当し、ウェイト77および引っ張り
ばね74,79が、動作機構に相当する。
【0163】(第5実施例)従来、車両用の動力伝達装
置、または差動装置、または差動制限装置としてビスカ
スカップリングが用いられる場合がある。このビスカス
カップリングは、相対回転可能に配置された第1回転部
材および第2回転部材を備えている。また、第1回転部
材と第2回転部材との間には、環状の粘性流体室が形成
され、この粘性流体室にはシリコンオイル(粘性流体)
が封入されている。
【0164】さらに、粘性流体室には複数のアウタープ
レート(トルク伝達部材)が配置されており、この複数
のアウタープレートが、第1回転部材に取り付けられて
いる。さらに、粘性流体室には複数のインナープレート
(トルク伝達部材)が配置されており、複数のインナー
プレートが、第2回転部材に取り付けられている。そし
て、各インナープレートと各アウタープレートとが交互
に配置されている。
【0165】上記構成のビスカスカップリングにおい
て、第1回転部材と第2回転部材との回転数が等しい場
合には、第1回転部材のトルクは第2には伝達されな
い。この場合、ビスカスカップリング全体が一体的に回
転する。一方、第1回転部材と第2回転部材とに差動回
転が生じた場合は、複数のアウタープレートと複数のイ
ンナープレートとが差動回転し、その回転差に応じてシ
リコンオイルにせん断力が発生し、第1回転部材と第2
回転部材との間でトルクの伝達が行われる。
【0166】また、アウタープレートとインナープレー
トとの差動回転数が所定の値まで増大した場合は、シリ
コンオイルの温度上昇により粘性流体室の内圧が増大す
る。その結果、アウタープレートとインナープレートと
が直結する、いわゆるハンプ現象が生じ、アウタープレ
ートとインナープレートとの間で直接トルクが伝達され
る。
【0167】一方、ビスカスカップリングの製造過程に
おいて、上記アウタープレートおよびインナープレート
は、金属板をプレス加工して所定の形状に成形され、そ
の後、所定の熱処理が施されて耐摩耗性および耐熱性が
付与されている。このように、金属板をプレス加工する
ことにより、アウタープレートおよびインナープレート
を製造した場合は、プレートの切断面にバリが発生する
可能性がある。
【0168】上記のように、バリのあるアウタープレー
トまたはインナープレートを粘性流体室に配置した場
合、後工程において、粘性流体室に注入されるシリコン
オイルの移動が、前記バリにより阻害される。その結
果、シリコンオイルがアウタープレートとインナープレ
ートとの間に、均一に流入しない可能性があり、ビスカ
スカップリングの製品状態におけるトルク伝達性能に影
響を及ぼしていた。
【0169】この問題を解消することの可能なビスカス
カップリングの一例が、特開平4−64731号公報に
記載されている。この公報に記載されたビスカスカップ
リングにおいては、各プレートの成形時に生じた突出部
(バリ)が、一方向に規制された状態で各プレートが組
み付けられている。具体的には、突出部の方向が粘性流
体室にシリコンオイルを注入する注入口に対して反対方
向に向けられている。このため、注入口からシリコンオ
イルを粘性流体室に注入した場合に、シリコンオイルの
流入が突出部に阻害されることなく円滑に行われる。し
たがって、ビスカスカップリングの製品状態において、
安定したトルク伝達性能を得られるとされている。
【0170】しかしながら、上記従来例においては、粘
性流体室に対するシリコンオイルの充填率の精度を向上
させることはできるが、バリ自体はそのまま残ることに
なる。このため、一方のプレートと他方のプレートとが
接触した状態で差動回転した場合は、バリが摩耗する可
能性があった。この摩耗粉が生じる過程においては、シ
リコンオイルの分子の切断・重合が促進され、シリコン
オイルの粘度が高められる。したがって、ビスカスカッ
プリングのトルク伝達特性が経時的に変化(増大)し、
車両の走行性能に影響を及ぼす可能性があった。また、
シリコンオイルの温度が上昇してシリコンオイルの劣化
を招き、耐久性が低下する可能性があった。
【0171】第5実施例は、上記事情を背景としてなさ
れたもので、粘性流体室に各プレートが取り付けられた
状態において、プレートに形成されている厚さ方向の突
出部の摩耗を可及的に抑制することの可能なビスカスカ
ップリング用トルク伝達部材の製造方法を提供すること
を目的としている。
【0172】この第5実施例は、請求項6に対応する実
施例である。そして、第5実施例においては、図1およ
び図2に示すスタンバイ四輪駆動車1のビスカスカップ
リング12のトルク伝達部材を対象として、その製造方
法を説明する。図16は、アウタープレート(トルク伝
達部材)38およびインナープレート(トルク伝達部
材)45を製造するための工程図である。まず、アウタ
ープレート用の金属板(冷間圧延鋼板)、およびインナ
ープレート用の金属板(冷間圧延鋼板)を別個に用意す
る。そして、これらの金属板をプレス加工して、図3お
よび図5に示す構成のアウタープレート38およびイン
ナープレート45を成形する(ステップ21,22)。
つぎに、プレス加工されたアウタープレート38および
インナープレート45を熱処理し、その耐摩耗性および
強度を向上させる(ステップ23,24)。このステッ
プ23,24で行われる熱処理には、焼き入れ処理およ
び軟窒化処理が含まれる。
【0173】一方、アウタープレート38およびインナ
ープレート45には、プレス加工時の荷重により、残留
応力が存在しており、プレートに歪みや変形が生じてそ
の平面度が損なわれている。そこで、アウタープレート
38およびインナープレート45の平面度を矯正する処
理が行われる(ステップ25,26)。このステップ2
5,26においては、アウタープレート38同士、イン
ナープレート45同士を重ね合わせ、その厚さ方向に加
圧しながら焼き戻し処理を行うことにより残留応力を除
去し、アウタープレート38およびインナープレート3
8の平面度が矯正される。
【0174】ところで、アウタープレート38およびイ
ンナープレート45は、金属板をプレス加工して製造し
た製品である。このため、アウタープレート38および
インナープレート45の外周縁、またはスリットの縁
部、または孔の縁部には、厚さ方向のバリ(突出部)が
形成されている可能性がある。そこで、ステップ27に
よりバリを除去する作業が行われる。
【0175】図17は、ステップ27のバリ除去作業に
用いられるバリ除去装置82の概略構成を示す断面図で
ある。バリ除去装置82は、固定ハウジング83と、固
定ハウジング83に取り付けられたアウターケース84
と、固定ハウジング83の内部からアウターケース84
の内部に亘って配置されたインナーシャフト85と、押
圧機86とを備えている。
【0176】固定ハウジング83には軸孔87が形成さ
れており、軸孔87内にインナーシャフト85が配置さ
れている。そして、固定ハウジング83側には、電動モ
ータなどの駆動機構M1が設けられており、駆動機構M
1から伝達される動力により、インナーシャフト85が
軸線C1を中心として回転する構成になっている。ま
た、インナーシャフト85におけるアウターケース84
の内部側の外周には外歯88が形成されている。つま
り、インナーシャフト85の外周形状は、図2に示され
たハブ22の外周形状とほぼ同一に構成されている。
【0177】一方、アウターケース84はほぼ円筒形状
に構成され、ボルト89により固定ハウジング83に対
して固定されている。アウターケース84は、軸線C1
を中心として配置されており、アウターケース84の内
周にはフランジ90が形成されている。また、アウター
ケース84の内周において、インナーシャフト85の外
歯88と対向する位置には、内歯91が形成されてい
る。つまり、アウターケース84の内周形状は、図2に
示された円筒部材19の外周形状とほぼ同一に構成され
ている。
【0178】前記押圧機86は、油圧シリンダまたは空
気圧シリンダなどのアクチュエータ(図示せず)によ
り、軸線方向に移動する構成になっている。また、押圧
機86における固定ハウジング83側の端部には、押圧
ヘッド92が形成されている。この押圧ヘッド92は、
アウターケース84とインナーシャフト85との間に挿
入可能な形状を備えている。この押圧ヘッド92は、イ
ンナープレート45およびアウタープレート38を、全
周に亘ってほぼ均一に、かつ、厚さ方向に加圧するため
の構成である。したがって、押圧ヘッド92は、環状に
構成されているか、または、円周方向にほぼ等間隔で複
数形成されている。
【0179】つぎに、バリ除去装置82により、アウタ
ープレート38およびインナープレート45のバリを除
去する動作を説明する。まず、アウターケース84とイ
ンナーシャフト85とにより形成された環状の空間に、
複数のアウタープレート38と、複数のインナープレー
ト45とを挿入する。この場合、アウタープレート38
とインナープレート45とを交互に配置する。また、ア
ウタープレート38の外歯39を、アウターケース84
の内歯91にスプライン嵌合し、インナープレート45
の内歯46を、インナーシャフト85の外歯88にスプ
ライン嵌合する。
【0180】その後、押圧機86をフランジ90側に移
動して、押圧ヘッド92とフランジ90とにより、各ア
ウタープレート38および各インナープレート45を挟
持するとともに、インナーシャフト85を所定の回転数
(例えば25rpm 程度)で回転させる。ここで、押圧機
86からアウタープレート38およびインナープレート
45に作用する押圧力は、例えば、5N・m以下に設定
される。すると、アウタープレート38とインナープレ
ート45とが軸線C1を中心として相対回転し、その対
向面が摺動する。
【0181】このようにして、アウタープレート38と
インナープレート45とが相対回転されると、アウター
プレート38またはインナープレート45に形成されて
いるバリと、対向するプレートとが摺動する。その結
果、バリが摩耗し、プレートの厚さ方向におけるバリの
高さ(突出量)が減少する。例えば図18に示すよう
に、アウタープレート38の孔41の周囲にバリ93が
形成されていた場合は、図19に示すようにバリ93の
高さが減少する。なお、インナープレート45にバリが
形成されていた場合も、同様の作用によりその高さが減
少する。
【0182】なお、バリ除去作業中においては、バリ除
去装置82のアウターケース84の内部空間、すなわ
ち、アウタープレート38およびインナープレート45
が配置される空間を、乾燥状態または湿潤状態の何れに
維持してもよい。なお、上記空間を湿潤状態に維持する
場合は、上記空間が密封装置により液密になるように構
成し、この空間に対してオイルなどを供給すればよい。
【0183】ステップ27が行われた後は、アウタープ
レート38およびインナープレート45をバリ除去装置
82から取り外す。そして、アウタープレート38およ
びインナープレート45を洗浄し、アウタープレート3
8およびインナープレート45に付着している摩耗粉が
除去される(ステップ28)。
【0184】一方、図2に示されたケーシングK1およ
びハブ22は、第1実施例で説明したように、アウター
プレート38およびインナープレート45とは別の工程
により製造されている。そして、第1実施例と同様の手
順によりアウタープレート38およびインナープレート
45を、円筒部材19およびハブ22に対して交互に取
り付けた後、リヤカバー21と円筒部材19とを溶接す
る(ステップ29)。ついで、注入孔29からシリコン
オイルを粘性流体室B1内に注入するとともに(ステッ
プ30)、注入孔29をボール30により封止してビス
カスカップリング12の組立が完了する。このシリコン
オイルには、アウタープレート38およびインナープレ
ート45の摩耗を防止する耐摩耗剤が添加されている。
そして、トルク測定器により、ビスカスカップリング1
2のトルク伝達性能を測定した後、出荷されることにな
る。
【0185】以上のように、ビスカスカップリング12
の製造過程において、アウタープレート38とインナー
プレート45とを相互に重ね合わせて摺動させる動作が
行われる。この動作により、アウタープレート38また
はインナープレート45に形成されているバリの高さを
減少させることができる。具体的には、アウタープレー
ト38とインナープレート45とを、ビスカスカップリ
ング12の製品状態とほぼ同じ状態で配置し、各プレー
トに形成されているバリの高さを低減させることができ
る。つまり、ビスカスカップリング12の製品状態にお
ける、アウタープレート38とインナープレート45と
の接触部分のなじみ性を、ビスカスカップリング12の
製造過程で向上させることができる。
【0186】このため、図1に示すスタンバイ四輪駆動
車1の走行中に、アウタープレート38とインナープレ
ート45とが接触した状態で差動回転が生じた場合にお
いても、各プレートの摩耗量、具体的には摩耗粉の発生
量が低減される。その結果、シリコンオイルの分子の切
断・重合が抑制され、シリコンオイルの粘度の変化(高
まり)が抑制される。
【0187】したがって、ビスカスカップリング12に
より伝達されるトルクを可及的に低く維持し、かつ、経
時的なトルク変動を抑制して安定化させることができ、
スタンバイ四輪駆動車1の走行性能を良好に維持するこ
とができる。また、シリコンオイルの劣化が抑制され、
シリコンオイルの耐久性を向上することができる。さら
に、予めアウタープレート38およびインナープレート
45のバリの高さを減少させておくため、初期使用時に
おいては、各ビスカスカップリング12毎に、トルクの
伝達特性のバラツキが抑制されて製品品質が向上する。
【0188】ここで、図16に示す工程により製造した
ビスカスカップリング12と、バリを除去していないア
ウタープレートおよびインナープレートを取り付けたビ
スカスカップリング(比較例)とを用意し、実施例およ
び比較例について、各プレートの摩耗粉量、および粘性
流体室のシリコンオイルに添加した耐摩耗剤の残量、お
よびシリコンオイルの粘度、およびシリコンオイルのせ
ん断力により伝達されるトルクを、それぞれ経時的に測
定する試験を行った。この試験結果が、図20のグラフ
図に示されている。
【0189】まず、第5実施例に対応するプレートは、
使用開始時から所定期間は、ほぼ一定で、かつ、低い摩
耗粉量に維持され、その後、徐々に増大する傾向を示し
ている。一方、比較例に対応するプレートは、バリが高
いため、使用開始直後から摩耗粉量が急激に増大し、そ
の後、一定期間は、高い摩耗粉量が維持され、さらに所
定期間後に摩耗粉量が一層増大する傾向を示している。
この試験結果から、実施例によれば、比較例に比べて摩
耗粉量が少ない状態が長期間に亘って継続されることが
わかる。
【0190】つぎに、耐摩耗剤の残量の変化試験につい
て説明する。この試験においては、実施例および比較例
共に、各々ビスカスカップリングを2個用意し、各ビス
カスカップリングのシリコンオイルに、2種類の耐摩耗
剤を別々に添加してその残量を測定している。耐摩耗剤
は、各プレートの接触により生じる摩擦熱で熱分解さ
れ、摩耗防止機能を発揮する化学的特性を備えている。
ここで、耐摩耗剤D1は、摩耗防止効果(反応性)は低
いが、その摩耗防止効果が長期的に継続的に発揮される
特性を備えている。また、耐摩耗剤D2は、摩耗防止効
果(反応性)は高いが、その摩耗防止効果が短期間で終
了する特性を備えている。
【0191】そして、実施例に対応するプレートは、前
述したように長期間に亘って摩耗粉量が少ない値に維持
される。このため、2個のビスカスカップリング12に
別々に注入した耐摩耗剤D1および耐摩耗剤Dは、いず
れもその残量が徐々に減少し、長期間に亘って摩耗防止
効果が継続する傾向を示している。この試験結果から、
実施例のプレートによれば、耐摩耗剤D1または耐摩耗
剤D2のいずれを使用した場合でも、プレートの摩耗を
長期間に亘って防止することができることがわかる。
【0192】これに対して、比較例のプレートは、耐摩
耗剤D1を使用した場合は、その特性により徐々に残量
が減少する傾向を示している。しかし、比較例において
は、前述したように摩耗粉量が急激に増大するため、耐
摩耗剤D2については、急激に減少してしまい、その摩
耗防止効果が消滅する傾向してしている。すなわち、比
較例のプレートに対して耐摩耗剤D2を使用した場合
は、摩耗防止効果を所定期間継続できなくなることがわ
かる。
【0193】さらに、シリコンオイルの粘度変化の試験
について説明する。実施例の製造方法により製造された
プレートを使用した場合は、前述したように摩耗粉が生
成されにくいため、シリコンオイルの温度上昇が抑制さ
れる。このため、シリコンオイルの粘度の変化率が、長
期間に亘って低い値に維持され、その後、徐々に変化率
が増大する傾向を示している。
【0194】これに対して、比較例においては、前述し
たように初期段階から摩耗粉が急激に生成されるため、
実施例よりも早い時期から粘度変化率が高い値に変化す
る傾向を示している。この試験結果から、実施例のプレ
ートを配置した粘性流体室に充填されるシリコンオイル
の方が、比較例のプレートを配置した粘性流体室に充填
されるシリコンオイルよりも、劣化しにくく、その耐久
性が優れていることがわかる。
【0195】さらにまた、各プレートが差動回転した場
合のせん断力により伝達されるトルクの変化試験につい
て説明する。前述したように、第5実施例では、シリコ
ンオイルの粘度変化が長期間に亘って低い値に維持され
る。このため、伝達されるトルクの変化割合が、長期間
に亘って比較的低い値に維持される。これに対して、比
較例においては、シリコンオイルの粘度の変化割合が短
期間で増大している。このため、伝達されるトルクの変
化割合が、短期間で増大する傾向を示している。すなわ
ち、第5実施例と比較例とを比較した場合、第5実施例
の方が、長期間に亘って、ビスカスカップリングのトル
ク伝達性能が安定することがわかる。
【0196】なお、第5実施例に適用されるバリ除去装
置82の構成としては、アウターケース84および押圧
治具86を回転させ、インナーシャフト85を固定する
構成を採用することも可能である。また、第5実施例に
おいては、アウタープレート38同士、またはインナー
プレート45同士を重ね合わせて平面方向に相対回転さ
せ、バリの除去を行うことも可能である。
【0197】ここで、第5実施例に開示された特徴的な
構成を記載すれば以下の通りである。すなわち、相対回
転可能に配置された第1回転部材と第2回転部材との間
に形成される粘性流体室に相対回転可能に配置される複
数のアウタープレートおよび複数のインナープレート
を、金属板をプレス加工することにより成形するビスカ
スカップリング用トルク伝達部材の製造方法において、
プレス加工されたアウタープレートとインナープレート
とを交互に重ね合わせ、アウタープレートとインナープ
レートとをその平面方向に相対回転することにより、各
プレートの厚さ方向に突出している突出部の高さを低減
することを特徴とするビスカスカップリング用トルク伝
達部材の製造方法。
【0198】また、ビスカスカップリングの粘性流体室
に同心状に配置される複数の第1プレートを保持する第
1保持機構と、前記複数の第1プレートと交互に配置さ
れ、かつ、複数の第2プレートを同心状に保持する第2
保持機構と、前記複数の第1プレートと第2プレートと
を同一軸線を中心として相対回転させるとともに、前記
第1プレートおよび第2プレートに厚さ方向の加圧力を
与えて相互に摺動させることにより、プレートの厚さ方
向に突出しているバリの高さを低減させる回転加圧機構
とを備えていることを特徴とするビスカスカップリング
用プレートのバリ除去装置。ここで、第5実施例のアウ
ターケース84が第1保持機構に相当し、インナーシャ
フト85が第2保持機構に相当し、押圧機86および駆
動機構M1ならびにフランジ90が、回転加圧機構に相
当する。
【0199】(第6実施例)従来の四輪駆動車などに用
いられているビスカスカップリングの一例が特開平4−
25646号公報に記載されている。この公報に記載さ
れたビスカスカップリングは、相対回転可能に配置され
た環状の第1回転部材および環状の第2回転部材を備え
ている。第1回転部材の内周には環状の凹部が形成され
ており、この凹部に、第2回転部材が配置されている。
ここで、第1回転部材と第2回転部材とは、軸線方向に
所定量を相対移動することが可能になっている。そし
て、第1回転部材と第2回転部材との間には粘性流体室
が形成され、この粘性流体室にはシリコンオイル(粘性
流体)が封入されている。ここで、シリコンオイルは、
その熱膨張を考慮して、粘性流体室の容積に対して、7
0ないし90%程度の充填率で充填されている。
【0200】また、粘性流体室には、環状の第1プレー
ト(第1トルク伝達部材)が複数配置されており、この
複数の第1プレートが、第1回転部材の内周にスプライ
ン嵌合されている。さらに、第1プレートと交互に環状
の第2プレート(第2トルク伝達部材)が複数配置され
ており、複数の第2プレートが、第2回転部材の外周に
スプライン嵌合されている。
【0201】さらにまた、第1回転部材に形成された凹
部の一方の壁面と、第2回転部材の側面との間には弾性
部材が配置されている。この弾性部材の弾性力により、
第2回転部材が、凹部の他方の壁面側に押圧されてい
る。
【0202】上記公報に記載されたビスカスカップリン
グにおいては、第1プレートと第2プレートとに差動回
転が生じた場合は、その差動回転数に応じてシリコンオ
イルにせん断力が生じ、このせん断力により、第1プレ
ートと第2プレートとの間でトルクの伝達が行われる。
そして、第1プレートと第2プレートとの差動回転数の
増大により粘性流体室の内圧が上昇し、この内圧が所定
値以上になる場合がある。この場合は、第2回転部材
が、弾性部材の押圧力に抗して一方の壁面側に移動す
る。その結果、粘性流体室の容積が拡大されて内圧の急
激な上昇が抑制され、トルクの伝達性能を所定の状態に
維持できるとされている。すなわち、この公報に記載さ
れたビスカスカップリングにおいては、粘性流体室の圧
力変動に応じて粘性流体室の容積を変化させることによ
り、粘性流体室に対するシリコンオイルの充填率を制御
しているのである。
【0203】上記のように、ビスカスカップリングは、
シリコンオイルのせん断力によりトルクが伝達される構
成になっている。このため、ビスカスカップリングの粘
性流体室に臨んで配置される部品の加工精度が低下して
いた場合は、粘性流体室の容積に対するシリコンオイル
の充填率を所定値に設定することができず、トルク伝達
性能が低下する可能性がある。
【0204】しかしながら、上記公報に記載されたビス
カスカップリングは、粘性流体室の圧力変動に対応して
粘性流体室の容積を拡大し、トルクの伝達性能を制御す
ることは可能であるが、ビスカスカップリングの部品の
加工精度に応じてトルク伝達性能を調整することは困難
であり、上記問題に対処することはできなかった。
【0205】したがって、ビスカスカップリングの製品
品質が低下して、歩留まりが低下する可能性があった。
従来は、製造したビスカスカップリングにより、所定の
トルク伝達性能を得られない場合は、ビスカスカップリ
ングを分解して部品の再加工や部品の取り替えを行った
り、若しくはビスカスカップリング全体を処分しなけれ
ばならず、製造コストの上昇を招いていた。さらに、複
数のビスカスカップリング毎に、部品の加工精度にバラ
ツキが生じていた場合は、この加工精度のバラツキに基
づいて、各ビスカスカップリングのトルク伝達性能にバ
ラツキが生じる可能性があった。
【0206】第6実施例は上記事情を背景としてなされ
たもので、粘性流体室を構成する部品、または複数の第
1トルク伝達部材および第2トルク伝達部材の加工精度
に基づいて、トルク伝達性能を調整することの可能なビ
スカスカップリングを提供することを目的としている。
【0207】第6実施例は請求項5に対応するもので、
図1に示すスタンバイ四輪駆動車1に適用されるビスカ
スカップリング12を対象として説明する。図21は、
図1に示されたビスカスカップリング12の構成例を示
す半断面図である。図21において、図2のビスカスカ
ップリング12と同様の構成部分については、図2と同
様の符号を付し、その説明を省略する。
【0208】図21に示すビスカスカップリング12
は、ケーシングK6とハブ22とを備えている。このケ
ーシングK6とハブ22とは、軸線A1を中心として相
対回転可能に配置されている。ケーシングK6は円筒形
状に構成され、ケーシングK6は、内筒部94と、内筒
部94の外周にフランジ95を介して接続された外筒部
96とから構成されている。
【0209】一方、カバー17の内部にはラジアル軸受
24,97が設けられており、ラジアル軸受24,97
により、ケーシングK6が回転可能に保持されている。
なお、外筒部94には、ボルト(図示せず)によりプロ
ペラシャフト8が連結される。外筒部94には、ボルト
をねじ込むための雌ねじ部112が、複数形成されてい
る。また、外筒部96の内周には内歯37が形成され、
内歯37よりもデファレンシャルキャリヤ15側の内周
には、雌ねじ部98が形成されている。さらに内筒部9
4の内周にはXリング35が取り付けられている。Xリ
ング35により、ハブ22と内筒部94との間が液密に
シールされている。
【0210】一方、ハブ22の外周には外歯44が形成
され、ハブ22における外歯44よりもデファレンシャ
ルキャリヤ15側の外周面と、前記雌ねじ部98との間
の空間には、環状の可動壁99が固定されている。この
可動壁99は軸線A1を中心として配置され、可動壁9
9の外周には雄ねじ部100が形成されている。そし
て、雄ねじ部100が雌ねじ部98にねじ込まれた状態
で、可動壁99とケーシングK6とが、溶接またはカシ
メなどの手段により固定されている。
【0211】また、可動壁99における雄ねじ部98よ
りも外歯37側の位置には、Oリング101が取り付け
られている。このOリング101により、外筒部96の
内周と、可動壁99の外周との間が液密にシールされて
いる。さらに、可動壁99の内周にはXリング102が
取り付けられており、Xリング102により、可動壁9
9の内周と、ハブ22の外周との間が液密にシールされ
ている。
【0212】前記ハブ22はケーシングK6の内部に配
置されており、ハブ22とケーシングK6と可動壁99
とにより取り囲まれた環状の空間を形成している。この
環状の空間をXリング35,102、およびOリング1
01により液密にシールすることにより、粘性流体室B
1が構成されている。なお、フランジ95には、粘性流
体室B1にシリコンオイルを注入するための孔105が
形成され、孔105がボール106により封止されてい
る。
【0213】前記粘性流体室B1には、複数のアウター
プレート35および複数のインナープレート45が交互
に配置されている。アウタープレート35およびインナ
ープレート45は、図3および図5に示されたものと同
様に構成されている。また、アウタープレート35は、
ケーシングK6の内歯37に対してスプライン嵌合され
ている。また、インナープレート45は、ハブ22の外
歯44に対してスプライン嵌合されている。さらに、外
筒部96の内周にはスペーサリング42が複数取り付け
られており、このスペーサリング42がアウタープレー
ト38同士の間に配置されている。このスペーサリング
42により、アウタープレート38同士の間隔が所定値
以上に設定されている。
【0214】上記のように、図21のビスカスカップリ
ング12においては、各アウタープレート38および各
インナープレート45の軸線方向の両側に、フランジ9
5と可動壁99とが配置されている。なお、可動壁99
における粘性流体室B1とは反対側の側面には、軸線A
1を中心とする環状溝110が形成されている。そし
て、軸線A1に直交する平面における環状溝110の平
面形状は、非円形に構成されている。たとえば、環状溝
110の平面形状は、6角形、またはトラック形状など
に構成されている。なお、図21に示されたビスカスカ
ップリング12の動作は、図2に示されたビスカスカッ
プリング12とほぼ同様である。そして、図21に示さ
れたビスカスカップリング12においては、ケーシング
K6と可動壁99とが一体回転する。
【0215】ここで、第6実施例の構成と、請求項5の
構成との対応関係を説明する。すなわち、ケーシングK
6が請求項5の第1回転部材に相当し、ハブ22が請求
項5の第2回転部材に相当する。また、アウタープレー
ト38が請求項5の第1トルク伝達部材に相当し、イン
ナープレート45が請求項5の第2トルク伝達部材に相
当する。さらに、ケーシングK6およびハブ22が請求
項5の内壁に相当し、可動壁99が請求項5の容積調整
壁に相当する。
【0216】つぎに、図21に示されたビスカスカップ
リング12の製造過程の一例を、図22に示すフローチ
ャートに基づいて説明する。まず、炭素鋼またはクロム
モリブデン鋼などの鍛造素材を機械加工することによ
り、ケーシングK6およびハブ22ならびに可動壁99
が製造される。また、鋼材コイルをプレス機により打ち
抜き加工することにより、アウタープレート38および
インナープレート47が製造される。さらに、ばね鋼ワ
イヤーをほぼ円形に屈曲することにより、スペーサリン
グ42が製造される。
【0217】ついで、上記部品を相互に組み付ける作業
が行われる(ステップ41)。このステップ41の組み
付け動作は以下のようにして行われる。まず、ケーシン
グK6の内周にアウタープレート38およびインナープ
レート45を交互に挿入し、アウタープレート38とケ
ーシングK6とをスプライン嵌合させる。つぎに、ケー
シングK6の内部にハブ22を挿入して、ハブ22とイ
ンナープレート45とをスプライン嵌合させる。その
後、ケーシングK6とハブ22との間に可動壁99が挿
入される。そして、後述する調整治具により、可動壁9
9を回転して締め付ける。そして、可動壁99とケーシ
ングK6とが、軸線方向の所定の相対位置関係になった
状態で可動壁99の回転を停止する。さらに、注入孔1
05から粘性流体室B1の内部にシリコンオイルを注入
し、注入孔105をボール106により封止する。つい
で、ビスカスカップリング12のトルク測定を行う(ス
テップ42)。
【0218】ステップ42のトルク測定に用いられる測
定装置の構成、および測定動作を図23に基づいて説明
する。この測定装置は、ハブ22の内周にスプライン嵌
合される駆動シャフト107を備えている。このシャフ
ト107は、電動モータなどの駆動機構108により回
転される。駆動シャフト107の外周には外歯115が
形成されている。また、可動壁98を回転させる調整治
具109が設けられている。この調整治具109は環状
に構成され、調整治具109は駆動シャフト107の外
周側に配置されている。調整治具109の先端が、環状
溝110の内部に挿入可能な形状を備えている。そし
て、調整治具109を環状溝110に挿入した状態で
は、調整治具109と可動壁98とが一体回転する。
【0219】一方、ケーシングK6側にはトルク測定機
111が接続される。このトルク測定機111は、ケー
シングK6の雌ねじ部112に挿入される複数のピン1
13を備えている。そして、ピン113には、トルク測
定センサー114が接続されている。このトルク測定セ
ンサー114としては、ロードセルなどが例示される。
そして、トルク測定機111は、トルク測定センサー1
14により検出されたトルクを表示する表示機構(図示
せず)を備えている。
【0220】つぎに、ビスカスカップリング12のトル
ク測定動作を説明する。まず、ピン113をケーシング
K6の雌ねじ部112に挿入するとともに、調整治具1
09を環状溝110に挿入し、ケーシングK6および可
動壁99の回転を防止する。そして、駆動シャフト10
7をハブ22の内周にスプライン嵌合するとともに、駆
動シャフト107を所定の回転速度で回転させる。
【0221】すると、駆動シャフト107の回転がハブ
22に伝達され、アウタープレート38とインナープレ
ート45とが相対回転する。そして、アウタープレート
38とインナープレート45との差動回転数に応じて、
シリコンオイルにせん断力が生じる。このせん断力によ
り、インナープレート45からアウタープレート38に
トルクが伝達され、このトルクがケーシングK6に伝達
される。ケーシングK6に伝達されたトルクは、トルク
測定センサー114により検出され、かつ、表示機構に
より表示される。
【0222】一方、駆動シャフト107の回転速度に基
づいて、ビスカスカップリング12により伝達すべきト
ルク、すなわち、基準値(規格)が予め設定されてい
る。そして、ステップ42で検出されたトルクの測定値
が、規格内にあるか否かを判断する(ステップ43)。
そして、粘性流体室B1の容積に対するシリコンオイル
の充填率が、所定の差動回転数に応じて所定のせん断力
を生じさせるのに適合する状態にあれば、ステップ43
で肯定判断される。つまり、粘性流体室B1の容積が、
上記基準値を達成するのに適合する状態であることを意
味している。
【0223】ステップ43で肯定判断された場合は、ケ
ーシングK6と可動壁99とをそのままの状態で固定す
ることにより、粘性流体室B1の容積を固定させ(ステ
ップ44)、作業ルーチンを終了する。
【0224】前記ステップ43で否定判断された場合
は、検出されたトルクが、基準値よりも低いか否かが判
断される(ステップ45)。そして、インナープレート
45が所定回転数で回転している場合に、アウタープレ
ート38とインナープレート45との差動回転により生
じるシリコンオイルのせん断力、つまり伝達トルクが不
充分である場合は、ステップ45で否定判断される。つ
まり、粘性流体室B1に対するシリコンオイルの充填率
が、基準値を達成することの可能な充填率よりも低いこ
とになる。
【0225】ステップ45で否定判断された場合は、調
整治具109を回転させて、可動壁99を締め付ける方
向に回転させる。その結果、可動壁99が図23の左方
向に移動して、可動壁99の端面104と、端面104
に最も近い位置に配置されているプレートとの隙間D1
が狭められ、粘性流体室B1の容積が縮小する(ステッ
プ46)。その結果、シリコンオイルの充填量を変更す
ることなく、粘性流体室B1に対するシリコンオイルの
充填率が高められる。つまり、アウタープレート38と
インナープレート45との差動回転数に応じて生じるせ
ん断力が増大する。そして、ステップ46の作業が行わ
れた後、ステップ42に戻る。
【0226】また、測定されるトルクが規格を超えてい
る場合は、ステップ45で否定判断される。つまり、ア
ウタープレート38とインナープレート45との差動回
転により生じるシリコンオイルのせん断力が過剰である
ことになる。そこで、ステップ45で否定判断された場
合は、調整治具109を所定方向に回転して可動壁99
を緩めて図23の右方向に移動する。
【0227】すると、隙間D1が広げられ、粘性流体室
B1の容積が拡大される(ステップ47)。その結果、
シリコンオイルの充填量を変更することなく、粘性流体
室B1に対するシリコンオイルの充填率が低下し、アウ
タープレート38とインナープレート45との差動回転
数に応じて生じるせん断力が低下する。ステップ47の
作業が行われた後は、ステップ42に戻る。
【0228】なお、図22の作業ルーチンにおいては、
可動壁99を移動して粘性流体室B1の容積を変更(拡
大・縮小)させた後に、再度トルク測定を行っている
が、可動壁99を移動して粘性流体室B1の容積を拡大
・縮小さる動作と、再度トルク測定を行う動作とを並行
して(同時に)行うことも可能である。
【0229】図24の線図には、可動壁99の移動によ
り調整される隙間D1と、ビスカスカップリング12の
伝達トルクとの関係が示されている。図24の線図に
は、4つの異なるビスカスカップリングに相当する測定
対象1ないし4のトルク伝達特性が示されている。図2
4の線図から、隙間D1の増大に伴ってトルクが減少す
ることがわかる。
【0230】このように、第6実施例においては、ビス
カスカップリング12の製造過程において、トルク測定
機111により検出されるビスカスカップリング12の
トルクが、基準値から外れていた場合は、可動壁99を
軸線方向に移動することにより、粘性流体室B1の容積
を拡大・縮小することができる。つまり、シリコンオイ
ルの充填量を変更することなく、粘性流体室B1に対す
るシリコンオイルの充填率を増減することができる。そ
の結果、差動回転数に対応するシリコンオイルのせん断
力が増減する。そして、粘性流体室B1の容積が、所定
のトルクを伝達することの可能な状態になった場合に、
固定機構により可動壁99を固定することで、粘性流体
室B1の容積を確定することができる。
【0231】つまり、図22の作業ルーチンによれば、
ビスカスカップリング12の製造過程において、ケーシ
ングK6、またはハブ22、またはアウタープレート3
8、またはインナープレート45などの部品の加工精
度、特に、軸線方向の加工精度が低下していた場合で
も、ビスカスカップリング12の製造過程で粘性流体室
B1の容積を拡大・縮小することで、ビスカスカップリ
ング12のトルク伝達性能を調整することができる。
【0232】このため、ビスカスカップリング12を構
成する部品の加工精度に関わりなく、所定のトルク伝達
性能を得ることができ、製品品質が向上する。したがっ
て、組立の完了したビスカスカップリング12を分解し
て部品の再加工や部品の取り替えを行ったり、若しくは
ビスカスカップリング全体を処分する必要が無く、製品
の歩留まりが向上する上、製造コストを抑制することが
できる。また、所定の差動回転数に対して所期のトルク
伝達性能を得られ、スタンバイ四輪駆動車1の走行性能
が向上する。
【0233】さらに、複数のビスカスカップリング12
毎に、その部品の加工精度にバラツキがあり、この加工
精度のバラツキに基づいて、各ビスカスカップリング1
2毎にトルク伝達性能にバラツキが生じた場合でも、可
動壁99の移動により粘性流体室B1の容積を調整し
て、各ビスカスカップリング12のトルク伝達性能のバ
ラツキを解消することができる。
【0234】なお、第6実施例においては、粘性流体室
B1に臨む位置に、半径方向に移動する可動壁(図示せ
ず)を設け、この可動壁の移動により粘性流体室の容積
を拡大・縮小する構成を採用することも可能である。ま
た、図21に示されたビスカスカップリング12におい
ては、カバー17の内部に設けられたラジアル軸受97
により、ケーシングK6の一端を保持しているが、他の
構成を採用することも可能である。例えば、デファレン
シャルキャリヤ15の内周に、軸線A1を中心とする円
筒部(図示せず)を形成し、この円筒部の外周にラジア
ル軸受(図示せず)を取り付け、このラジアル軸受によ
り可動壁99の内周面を嵌合保持する構成を採用するこ
とができる。
【0235】また、図23に示されたトルク測定装置に
おいては、トルクの測定結果に基づいて、調整治具10
9を回転させる動作は、手動で行っても良いし、自動的
に行うことも可能である。調整治具109を自動的に動
作させて粘性流体室B1の容積を調整する場合は、例え
ば、以下のような構成を採用することにより達成され
る。
【0236】すなわち、演算部および記憶部ならびに入
出力インターフェースを備えたマイクロコンピュータ
(制御装置)を設ける。そして、この制御装置に対し
て、駆動機構108およびトルク測定センサーならびに
調整治具109を、電気的に接続する。そして、トルク
センサー114により検出されるトルクに基づいて、制
御装置により調整治具109の移動量(つまり回転量)
を演算するとともに、制御装置から出力される信号に基
づいてステップモータなどを駆動し、自動的に調整治具
109を回転させて可動壁99を移動させればよい。
【0237】(第7実施例)従来、車両の動力伝達装
置、または差動装置、または差動制限装置として、ビス
カスカップリングが適用される場合がある。このビスカ
スカップリングは、相対回転可能に配置された第1回転
部材および第2回転部材とを備えている。また、第1回
転部材と第2回転部材との間には、粘性流体室が形成さ
れている。粘性流体室には、第1回転部材と一体回転す
る複数の第1トルク伝達部材と、第2回転部材と一体回
転する複数の第2トルク伝達部材とが配置されている。
そして、第1トルク伝達部材と第2トルク伝達部材とが
交互に配置されている。
【0238】また、ビスカスカップリングの一部を構成
するケーシングには、注入孔が形成されている。そし
て、ビスカスカップリングの製造工程においては、注入
孔を介して粘性流体室にシリコンオイル(粘性流体)が
充填される。そして、ビスカスカップリングを車両に搭
載した状態において、第1回転部材と第2回転部材とが
差動回転した場合は、差動回転数に応じてシリコンオイ
ルにせん断力が生じる。このせん断力により、第1回転
部材と第2回転部材との間でトルクの伝達が行われる。
【0239】ところで、粘性流体室には、複数の第1回
転部材と複数の第2回転部材とが交互に配置されてお
り、前記せん断力を生じさせるために、各部材同士の隙
間がきわめて狭い状態に設定されている。一方、粘性流
体室に注入されるシリコンオイルは高粘度である。した
がって、シリコンオイルを粘性流体室に注入する場合
に、各部材同士の隙間の狭さに応じてシリコンオイルの
流動抵抗が増大し、シリコンオイルの充填率が所定値に
到達するまでに長時間を要する問題がある。
【0240】このような事態に対処することの可能な、
ビスカスカップリングの粘性流体注入方法の一例が、特
開昭62−135195号公報に記載されている。この
公報に記載された粘性流体注入方法は、第1回転部材と
第2回転部材とを相対回転させつつ粘性流体室に粘性流
体を注入するものである。この注入方法によれば、複数
の第1トルク伝達部材と、複数の第2トルク伝達部材と
の相対回転によってシリコンオイルの流入が促進され、
所定の充填率に到達するまでの時間を短縮できる。ま
た、各ビスカスカップリング毎に、シリコンオイルの充
填率のバラツキを解消することができるとされている。
【0241】ところで、ビスカスカップリングの構成部
品である第1回転部材および第2回転部材は、鍛造素材
を機械加工して製造された後、熱処理が施されている。
また、第1トルク伝達部材および第2トルク伝達部材
は、鋼板コイルをプレス加工して成形された後、熱処理
が施されている。このため、各種の構成部品は、機械加
工時の加工精度に加えて、熱処理により歪みや変形が生
じ、寸法精度が低下する可能性がある。また、複数のビ
スカスカップリングを製造した場合は、各ビスカスカッ
プリングにおける部品の寸法精度にバラツキが生じる可
能性がある。一方、第1回転部材と第2回転部材との間
のトルク伝達媒体となる粘性流体は、温度に応じて粘度
が変化する特性を備えている。
【0242】したがって、ビスカスカップリングにおい
ては、各種の構成部品の寸法精度、およびビスカスカッ
プリングの使用環境における温度変化に基づいて、トル
ク伝達性能が変化する。その結果、ビスカスカップリン
グにおけるトルク伝達性能の管理精度を高めたり、各ビ
スカスカップリングのトルク伝達性能のバラツキを抑制
することが困難であった。
【0243】しかしながら、上記公報に記載された注入
方法は、粘性流体室にシリコンオイルを注入する場合の
注入作業性を向上させる発明であり、ビスカスカップリ
ングを構成する部品の寸法精度、または、シリコンオイ
ルの温度については何ら考慮がなされていなかった。し
たがって、公報に記載された技術に基づいて、ビスカス
カップリングを製造した場合でも、依然として前述した
問題が発生する可能性があった。
【0244】第7実施例は上記事情を背景としてなされ
たもので、トルクの伝達に関与する部品の寸法精度、お
よびビスカスカップリングの使用環境の温度に対応し
て、トルク伝達性能の管理精度を向上させることの可能
なビスカスカップリングの粘性流体注入方法を提供する
ことを目的としている。
【0245】第7実施例は、請求項7に対応するもので
あり、第7実施例では、図1および図2に示すビスカス
カップリング12を対象として説明する。図25は、第
7実施例に用いられるシリコンオイル注入装置116の
構成を示す概略図、図26は、図25のシリコンオイル
注入装置116によりシリコンオイルを注入するビスカ
スカップリング12の半断面図である。シリコンオイル
注入装置116は、トルク検出装置117と駆動装置1
18と制御装置119と固定装置120とバルブ121
と温度センサ123と減圧ポンプP1と供給ポンプP2
とシリコンオイルを貯留したオイルタンク127とを備
えている。
【0246】まず、駆動装置118は、ビスカスカップ
リング12のケーシングK1とハブ22とを相対回転さ
せるための構成である。駆動装置118は電動モータな
どにより構成され、ハブ22の内周にスプライン嵌合す
ることの可能な出力軸122を備えている。また、固定
装置120はケーシングK1の外周側を保持して、ケー
シングK1の回転を防止するための機構である。
【0247】供給ポンプP2は、注入孔29とオイルタ
ンク127とを接続する配管中に設けられており、オイ
ルタンク127のシリコンオイルを粘性流体室B1側に
輸送するための構成である。この供給ポンプP2として
は、加圧ポンプまたは定量供給ポンプが用いられる。バ
ルブ121は、供給ポンプP2と粘性流体室B1との間
の配管に配置されており、この配管を通過するシリコン
オイル量を制御するための機構である。
【0248】また、真空ポンプP1は、粘性流体室B1
にシリコンオイルを注入する場合に、粘性流体室B1の
空気を外部に排気して減圧するための構成である。この
真空ポンプP1は、ケーシングK1に設けられた排気孔
(図示せず)に接続されている。また、温度センサー1
23は、シリコンオイルの温度を、ケーシングK1の外
部から間接的に検出するための構成である。具体的に
は、ケーシングK1の表面温度を検出する。なお、ケー
シングK1に温度検出用の孔を形成しておき、この孔か
ら温度検出センサーを粘性流体室B1の内部に挿入する
ことにより、シリコンオイルの温度を直接検出する構成
も、請求項7の発明に含まれる。
【0249】トルク検出装置117は、ケーシングK1
とハブ22との相対回転により、ハブ22からケーシン
グK1に伝達されるトルクを検出するための機構であ
る。トルク検出装置117は、検出軸124を備えてお
り、検出軸124の先端には、ケーシングK1の雌ねじ
部112に挿入される複数のピン125が形成されてい
る。また、トルク検出装置117は、検出軸124に伝
達されるトルクを検出するトルクセンサー126を備え
ている。このトルクセンサー126は、ロードセルなど
の公知のものである。
【0250】制御装置119は、シリコンオイル注入装
置116全体を制御するためのものであり、制御装置1
19は、記憶装置(ROM,RAM)および演算装置な
らびに入出力インターフェースを備えたマイクロコンピ
ュータにより構成されている。そして、制御装置119
から出力される制御信号に基づいて、駆動装置118の
駆動が制御される。
【0251】また、温度センサー123の検出信号と、
トルクセンサー126の検出信号とが、制御装置119
に入力されている。そして、制御装置119は、トルク
センサー126の検出信号と、温度センサー123の検
出信号とに基づいて、粘性流体室B1に注入するシリコ
ンオイルの注入量(言い換えれば充填率)を演算し、こ
の演算結果に基づいてバルブ121を制御する制御信号
を出力する機能を備えている。また、真空ポンプP1、
供給ポンプP2も、制御装置119により制御されてい
る。
【0252】ここで、ビスカスカップリング12の構成
と、請求項7の構成との対応関係を説明する。すなわ
ち、ケーシングK1が請求項7の第1回転部材に相当
し、ハブ22が請求項7の第2回転部材に相当する。ま
た、アウタープレート38が請求項7の第1トルク伝達
部材に相当し、インナープレート45が請求項7の第2
トルク伝達部材に相当する。
【0253】上記構成のシリコンオイル注入装置116
においては、出力軸122から伝達されたトルクにより
ハブ22が回転する。すると、ケーシングK1が固定装
置120により固定されているため、ハブ22とケーシ
ングK1とが相対回転する。すなわち、ビスカスカップ
リング12を車両に搭載し、かつ、インナープレート4
5とアウタープレート38とに差動回転が生じたことと
同じ状態になる。すると、相対回転数に応じてシリコン
オイルにせん断力が生じ、このせん断力に応じたトルク
がアウタープレート38に伝達される。アウタープレー
ト38に伝達されたトルクは、ケーシングK1を介して
トルク検出装置117に伝達され、トルクセンサー12
6により検出される。
【0254】上記シリコンオイル注入装置116によ
り、ビスカスカップリング12に対するシリコンオイル
の注入作業を行う前の準備作業を説明する。この準備作
業もシリコンオイル注入装置116を用いて行われる。
まず、図2のビスカスカップリング12と同一の構成を
備えた基準ビスカスカップリングを用意し、基準ビスカ
スカップリングの粘性流体室に所定の充填率でシリコン
オイルを充填する。ついで、基準ビスカスカップリング
のハブに所定の回転速度を与えるとともに、粘性流体室
の温度を、初期温度から10℃間隔、好ましくは5℃間
隔で区分し、各温度区分において、ハブからケーシング
に伝達されたトルクを検出する。このようにして、粘性
流体室の温度と目標トルクとの関係を示す特性線をマッ
プ化し、制御装置119に記憶しておく。
【0255】つぎに、シリコンオイル注入装置116に
より、ビスカスカップリング12にシリコンオイルを注
入する作業を図27のフローチャートに基づいて説明す
る。まず、真空ポンプP1を駆動させて粘性流体室B1
内を減圧するとともに、供給ポンプP2を駆動させる。
また、バルブ121を開放し、所定量のシリコンオイル
を粘性流体室B1に注入する(ステップ51)。
【0256】ステップ51において、粘性流体室B1に
注入するシリコンオイルの量は、ビスカスカップリング
12のインナープレート45とアウタープレート38と
に、所定の差動回転を与えた状態において、トルク検出
装置117により検出される測定トルクが、所定温度に
対応する目標トルクを超える値になるように、多めのシ
リコンオイルを注入する。
【0257】ステップ51についで、真空ポンプP1お
よび供給ポンプP2を停止させ、一旦バルブ121を閉
じるとともに、ケーシングK1の表面温度を検出する
(ステップ52)。そして、制御装置119により、検
出温度に対応する目標トルクが演算される(ステップ5
3)。具体的には、図28の線図に示すように、検出さ
れた表面温度t0に相当する特性線E1と、制御装置1
19に記憶されているマップとを対照し、検出された温
度t0よりも1区分低い温度t1の特性線E2、および
1区分高い温度t2の特性線E3により、検出された表
面温度t0に対応する目標トルクを補間して演算する。
【0258】その後、駆動装置118を駆動させてハブ
22を回転させ、ハブ22とケーシングK1とを相対回
転させる(ステップ54)。すなわち、図1に示された
スタンバイ四輪駆動車1の走行中に、アウタープレート
38とインナープレート45とに差動回転が生じた状態
と同じ状態になる。ついで、バルブ121を開放させる
とともに(ステップ55)、ケーシングK1に伝達され
るトルク(T)を検出し、かつ、ケーシングK1の表面
温度(t)を検出する(ステップ56)。
【0259】上記のように、アウタープレート38とイ
ンナープレート45とが相対回転すると、摩擦熱により
シリコンオイルの温度が上昇する。すると、粘性流体室
B1内のシリコンオイルおよび空気が膨張して内圧が上
昇し、粘性流体室B1のシリコンオイルが注入孔29を
介して外部に流出する。このため、粘性流体室B1にお
けるシリコンオイルの充填率が減少する。この減少に伴
ってハブ22からケーシングK1に伝達されるトルク
が、図29の線図に示すように、シリコンオイルが流出
する前の初期トルクから徐々に減少する。
【0260】そして、検出された表面温度(t)におけ
る検出トルク(T)と、所定温度(t)における目標ト
ルク(T0)とが等しくなった否かが判断される(ステ
ップ57)。ここで、検出トルク(T)が目標トルク
(T0)よりも高い場合は、ステップ57で否定判断さ
れてステップ56に戻り、シリコンオイルの抜き取りを
続行する。
【0261】一方、検出トルク(T)と目標トルク(T
0)とが等しくなった場合は、ステップ57で肯定判断
され、バルブ121を閉じる制御が行われる(ステップ
58)。その結果、粘性流体室B1からのシリコンオイ
ルの流出が終了し、粘性流体室B1に対するシリコンオ
イルの充填率が、所定の作動回転数において、所定温度
(t)で目標トルク(T0)を得ることの可能な状態に
設定される。その後、駆動装置118を停止することに
より、ハブ22とケーシングK1との相対回転が解消さ
れ(ステップ59)、シリコンオイルの注入作業を終了
する。
【0262】このように、図27に示すフローチャート
においては、アウタープレート38とインナープレート
45とを相対回転させ、かつ、粘性流体室B1の表面温
度と、ケーシングK1に伝達されるトルクとを検出し、
検出されるトルクが、所定温度に対応する目標トルクと
等しくなるまで、粘性流体室B1のシリコンオイルの抜
き取りを続行し、粘性流体室B1のシリコンオイルの充
填率を減少させる作業が行われる。そして、検出される
トルクが、所定温度に対応する目標トルクと等しくなっ
た時点で、粘性流体室B1におけるシリコンオイルの抜
き取りを終了して、粘性流体室B1におけるシリコンオ
イルの充填率を確定させる。
【0263】このため、ビスカスカップリング12を構
成する部品のうち、トルクの伝達に関与する部品、具体
的には、アウタープレート38またはインナープレート
45またはスペーサリング42またはケーシングK1ま
たはハブ22が、その製造過程で寸法精度が低下してい
た場合においても、寸法精度に関わりなく、ビスカスカ
ップリング12におけるトルク伝達性能の管理精度を高
めることができ、製品品質が向上する。上記寸法精度に
は、機械加工による加工誤差、または熱処理による歪み
および変形が含まれる。
【0264】したがって、ビスカスカップリング12を
搭載したスタンバイ四輪駆動車1の走行性能を、所期の
状態に設定することができる。また、複数のビスカスカ
ップリング12を製造した場合に、各ビスカスカップリ
ング12毎に、その構成部品の寸法精度にバラツキがあ
った場合においても、寸法精度のバラツキに関わりな
く、各ビスカスカップリング12のトルク伝達性能をほ
ぼ均一に維持することができる。
【0265】また、複数のビスカスカップリング12に
注入されるシリコンオイルの粘度にバラツキがあった場
合においても、シリコンオイルの粘度のバラツキに関わ
りなく、各ビスカスカップリング12のトルク伝達性能
をほぼ均一に維持することができる。
【0266】つまり、第7実施例によれば、ビスカスカ
ップリング12の製造工程の最終工程において、ビスカ
スカップリング12のトルク伝達性能が調整されるた
め、各種の部品の寸法精度を高精度に維持する必要性が
無いとともに、粘性流体室B1の内容積の測定精度、お
よびシリコンオイルの充填率測定の精度も高精度が要求
されず、ビスカスカップリング12の製造コストを抑制
することができる。
【0267】さらに、図27のフローチャートにおいて
は、粘性流体室B1の温度を測定しながらビスカスカッ
プリング12のトルク伝達性能を調整するため、温度の
低下に伴うシリコンオイルの粘度低下によりトルクが低
下する場合と、粘性流体室B1におけるシリコンオイル
の充填率の低下によりトルクが低下する場合とを区別し
て判断することが可能である。したがって、ビスカスカ
ップリング12のトルク伝達性能の管理精度が一層向上
する。さらにまた、ビスカスカップリング12のトルク
測定作業と、シリコンオイルの抜き取り作業とを並行し
て行っているため、作業時間が短縮され、トルク調整作
業を迅速に行うことができる。
【0268】さらに、図27の作業例においては、予め
目標トルクを超えるトルクが生じる量のシリコンオイル
を粘性流体室B1に注入しておき、シリコンオイルの温
度上昇による空気およびシリコンオイルの膨張により、
シリコンオイルを抜き取る作業を行っている。このた
め、粘性流体室B1のシリコンオイルの充填率を減少さ
せるために格別の動力機構を設ける必要が無く、シリコ
ンオイルの注入作業コストを抑制することができる。
【0269】なお、図27に示すフローチャートにおい
ては、検出された温度に基づいて、目標トルクを補間す
る演算処理を行っているが、ステップ51から直接ステ
ップ54に進む注入作業を行うことも可能である。この
注入作業を行う場合は、制御装置119に固定的に記憶
されている目標トルクが得られるように、バルブ121
の制御を行えばよい。
【0270】図30は、シリコンオイル注入装置116
による他のシリコンオイル注入作業を示すフローチャー
トである。図30のフローチャートにおいては、シリコ
ンオイルの注入に際して、粘性流体室B1の温度を考慮
しない点が、図27のフローチャートと相違している。
図30のフローチャートを実行する場合は、制御装置1
19には、所定の差動回転数に対応する目標トルクが予
め記憶されている。また、図31は、図30のフローチ
ャートを行った場合において、ビスカスカップリング1
2により伝達されるトルクと、バルブ121の状態との
関係を示すタイムチャートである。
【0271】図30において、ステップ61の内容は、
前述したステップ51と同様の内容である。また、ステ
ップ62,63の内容は、前述したステップ54,55
と同様の内容である。そして、アウタープレート38と
インナープレート45とが相対回転している状態におい
て、図31に示すようにバルブ121が開放されると、
前述と同様に理由により、粘性流体室B1のシリコンオ
イルが粘性流体室B1の外部に流出する。このため、ケ
ーシングK1に伝達されるトルクが徐々に減少する。
【0272】そして、ステップ65においては、検出ト
ルクと目標トルクとが等しくなったか否かが判断され
る。ここで、検出トルクが、未だに目標トルクよりも高
い場合は、ステップ65で否定判断されてステップ64
に戻り、シリコンオイルの抜き取りが続行される。
【0273】一方、検出トルクとが目標トルクとが等し
くなった場合はステップ65で肯定判断され、ステップ
66,67が行われて注入作業を終了する。ステップ6
6,67の内容は、前述したステップ58,59と同様
である。
【0274】このように、図30に示すフローチャート
においては、アウタープレート38とインナープレート
45とに差動回転を与え、かつ、ケーシングK1に伝達
されるトルクとを検出し、検出されるトルクが目標トル
クと等しくなるまで、粘性流体室B1のシリコンオイル
の抜き取りを続行し、粘性流体室B1のシリコンオイル
の充填率を減少させる作業が行われる。そして、検出さ
れるトルクが目標トルクと等しくなった時点において、
粘性流体室B1におけるシリコンオイルの抜き取りを終
了して、粘性流体室B1におけるシリコンオイルの充填
率を確定させる。このため、図27のフローチャートと
同様の効果を得られる。
【0275】なお、図27および図30のフローチャー
トにおいては、予め目標トルクを超えるトルクが生じる
量のシリコンオイルを粘性流体室に注入しておき、シリ
コンオイルを減少させながら目標トルクを達成する作業
を行っているが、粘性流体室に注入するシリコンオイル
を増加させながら目標トルクを達成させる作業を行うこ
とも可能である。
【0276】ここで、第7実施例に開示された特徴的な
構成を記載すれば以下の通りである。すなわち、第1ト
ルク伝達部材を有する第1回転部材と、この第1回転部
材と相対回転可能に配置され、かつ、前記第1トルク伝
達部材と対向して配置される第2トルク伝達部材を有す
る第2回転部材と、前記第1トルク伝達部材および前記
第2トルク伝達部材が配置される粘性流体室とを有する
ビスカスカップリングを用意し、前記粘性流体室に粘性
流体を注入するビスカスカップリングの粘性流体注入方
法において、前記第1回転部材と前記第2回転部材とを
相対回転させるとともに、所定温度状態で前記第1回転
部材と第2回転部材との間で伝達されるトルク検出し、
この検出トルクと、所定温度に対応して予め設定されて
いる目標トルクとを比較して、検出トルクが目標トルク
に到達した場合に、粘性流体室からの粘性流体の抜き取
りを終了することを特徴とするビスカスカップリングの
粘性流体注入方法。
【0277】また、第1トルク伝達部材を有する第1回
転部材と、この第1回転部材と相対回転可能に配置さ
れ、かつ、前記第1トルク伝達部材に対向して配置され
る第2トルク伝達部材を有する第2回転部材と、前記第
1トルク伝達部材および前記第2トルク伝達部材が配置
される粘性流体室とを有するビスカスカップリングを用
意し、前記粘性流体室に粘性流体を注入するビスカスカ
ップリングの粘性流体注入装置において、前記第1回転
部材と前記第2回転部材とを相対回転させる駆動装置
と、粘性流体の温度を検出する温度測定装置と、所定温
度で前記第1回転部材と第2回転部材との間で伝達され
るトルク検出するトルク検出装置と、所定温度で検出さ
れた検出トルクと、所定温度に対応して予め設定されて
いる目標トルクとを比較して、検出トルクが目標トルク
に到達した場合に、粘性流体室からの粘性流体の抜き取
りを終了する制御装置とを有することを特徴とするビス
カスカップリングの粘性流体注入装置。
【0278】(第8実施例)従来、車両の動力伝達装
置、または差動装置、または差動制限装置として、ビス
カスカップリングを搭載する場合がある。このビスカス
カップリングは、相対回転可能に配置された第1回転部
材および第2回転部材とを備えている。また、第1回転
部材と第2回転部材との間には、粘性流体室が形成され
ている。粘性流体室には、第1回転部材と一体回転する
複数の第1トルク伝達部材と、第2回転部材と一体回転
する複数の第2トルク伝達部材とが配置されている。そ
して、第1トルク伝達部材と第2トルク伝達部材とが交
互に配置されている。さらに、粘性流体室には、シリコ
ンオイルが所定の充填率で充填されている。
【0279】そして、車両の走行中に第1回転部材と第
2回転部材とが差動回転した場合は、差動回転数に応じ
てシリコンオイルにせん断力が生じる。このせん断力に
より、第1回転部材と第2回転部材との間でトルクの伝
達が行われる。また、第1トルク伝達部材と第2トルク
伝達部材との差動回転数が所定の値まで増大した場合
は、粘性流体室の温度上昇によりシリコンオイルおよび
空気が膨張し、粘性流体室の内圧が増大する。その結
果、第1トルク伝達部材と第2トルク伝達部材とが直結
する、いわゆるハンプ現象が生じ、第1トルク伝達部材
と第2トルク伝達部材との間で直接トルクが伝達され
る。このように、ビスカスカップリングはシリコンオイ
ルのせん断力にトルクを伝達する第1のトルク伝達状態
と、ハンプ現象により直接トルクを伝達する第2のトル
ク伝達状態とを備えている。
【0280】一方、粘性流体室には第1トルク伝達部材
と第2トルク伝達部材とが、きわめて狭い間隔で交互に
配置されているとともに、粘性流体が高粘度を備えてい
る。このため、ビスカスカップリングの製造過程におい
て、粘性流体室にシリコンオイルを注入する場合に、シ
リコンオイルの流動抵抗が大きく、その流動が阻害され
る可能性がある。その結果、粘性流体室に対するシリコ
ンオイルの充填率を、高精度に管理することが困難であ
った。
【0281】このような問題を解消することの可能な発
明が、特開昭62−135195号公報に記載されてい
る。この公報に記載された粘性流体注入方法は、第1回
転部材と第2回転部材とを相対回転させつつ粘性流体室
に粘性流体を注入するものである。この注入方法によれ
ば、複数の第1トルク伝達部材と、複数の第2トルク伝
達部材との相対回転によってシリコンオイルの流入が促
進され、シリコンオイルの充填率を高精度に調整できる
とされている。
【0282】ところで、従来、ビスカスカップリングの
製造工程において、シリコンオイルの充填率によりトル
ク伝達性能を調整する場合は、まず、所定量のシリコン
オイルを粘性流体室に注入した状態でトルクを検出して
いる。そして、検出されたトルクが規格トルクよりも低
い場合は、シリコンオイルを追加することにより、トル
クを増大させ、規格トルクを達成する作業を行ってい
る。
【0283】しかしながら、上記公報に記載された発明
においては、シリコンオイルの充填率と、トルク伝達性
能との関係が何ら考慮されていない。このため、第1の
トルク伝達状態におけるトルク伝達性能を確保するため
にシリコンオイルを追加した場合は、第2のトルク伝達
状態に対応する充填率の規格外になる可能性があった。
この場合にはビスカスカップリング自体を処分しなけれ
ばならず、材料資源の無駄および製造コストの上昇を招
いていた。また、複数のビスカスカップリングを製造す
る場合は、各ビスカスカップリング毎に部品の寸法精度
が異なる可能性があり、同じトルク伝達性能を得るため
の充填率にバラツキが生じる問題があった。
【0284】第8実施例は上記事情を背景としてなされ
たもので、所定の充填率の範囲内において、トルクの伝
達性能を調整でき、かつ、複数のビスカスカップリング
を製造する場合にも、各ビスカスカップリングの粘性流
体室に対する粘性流体の充填率のバラツキを抑制するこ
との可能なビスカスカップリングの粘性流体注入方法を
提供することを目的としている。
【0285】第8実施例は、請求項8に対応するもので
あり、第8実施例では、図1および図2に示すビスカス
カップリング12を対象として説明する。図32は、第
87実施例に用いられるシリコンオイル注入装置128
の構成を示す概略図である。このシリコンオイル注入装
置128において、図25に示されたシリコンオイル注
入装置116と同一の構成部分については同一の符号を
付してその説明を省略する。また、図32のシリコンオ
イル注入装置128に対して、ビスカスカップリング1
2を取り付けた状態は、前述の図26と同様である。
【0286】図32のシリコンオイル注入装置128に
おいては、バルブ121を設けた配管が途中から3本に
分岐されている。この分岐点には、3本の配管とバルブ
121側に接続された配管とを選択的に切り換える切換
バルブ129が設けられている。そして、3本の配管は
3個のオイルタンク130,131,132に別個に接
続されている。オイルタンク130,131,132に
は、粘度の異なるシリコンオイルが貯留されている。こ
の実施例においては、オイルタンク131のシリコンオ
イルの粘度が、オイルタンク130のシリコンオイルの
粘度よりも高く設定され、オイルタンク132のシリコ
ンオイルの粘度が、オイルタンク131のシリコンオイ
ルの粘度よりも高く設定されている。
【0287】さらに、切換バルブ129と各オイルタン
ク130,131,132とを接続する3本の配管途中
には、供給ポンプP2,P3,P4がそれぞれ配置され
ている。この供給ポンプP2,P3,P4としては、加
圧ポンプまたは定量供給ポンプが用いられる。供給ポン
プP2,P3,P4および切換バルブ129は、制御装
置119により制御されている。したがって、シリコン
オイル注入装置128においては、切換バルブ129の
切換制御により、粘性流体室B1とオイルタンク13
0,131,132の何れか一つとを連通させることに
より、粘度の異なるシリコンオイルを粘性流体室B1に
注入することが可能である。
【0288】また、この第8実施例においては、アウタ
ープレート38とインナープレート45とに所定の相対
回転を与えた状態において、要求される目標トルクと、
所定の条件下でハンプ現象を生じさせるためのシリコン
オイルの目標充填率とを対応させたマップが、制御装置
119に記憶されている。そして、ビスカスカップリン
グ12にシリコンオイルを注入する場合に、所定のトル
クおよび充填率を達成するために、制御装置119は、
既にビスカスカップリング12に充填されているシリコ
ンオイルの充填率および粘度に基づいて、その後に充填
するべきシリコンオイルの粘度および充填量を判断し、
切換バルブ129および供給ポンプP2,P3,P4を
制御する機能を備えている。
【0289】ここで、ビスカスカップリング12の構成
と、請求項8の構成との対応関係を説明する。すなわ
ち、ケーシングK1が請求項8の第1回転部材に相当
し、ハブ22が請求項8の第2回転部材に相当する。ま
た、アウタープレート38が請求項7の第8トルク伝達
部材に相当し、インナープレート45が請求項8の第2
トルク伝達部材に相当する。
【0290】つぎに、ビスカスカップリング12の製造
工程において、シリコンオイル注入装置128により、
粘性流体室B1にシリコンオイルを注入する動作を、図
33のフローチャートに基づいて説明する。まず、真空
ポンプP1を駆動させて粘性流体室B1内を減圧すると
ともに、供給ポンプP3を駆動させる。さらに、切換バ
ルブ129を制御して、オイルタンク131に連通する
配管を開放し、かつ、バルブ121を開放する。このよ
うにして、オイルタンク131のシリコンオイルを、粘
性流体室B1に注入し(ステップ71)、一旦、シリコ
ンオイルの注入を中断する。ステップ71で注入される
シリコンオイルの注入量は、粘性流体室B1の目標充填
率の規格幅の下限側に制御される。その理由は、後工程
でシリコンオイルを追加して、ビスカスカップリング1
2のトルク伝達性能を調整する可能性があるからであ
る。
【0291】ついで、駆動装置118を駆動させ、第7
実施例と同様の作用により、アウタープレート38とイ
ンナープレート45とを相対回転させる。さらに、ケー
シングK1に伝達されるトルクを、トルク検出装置11
7により検出する(ステップ72)。
【0292】そして、制御手段119により、ステップ
72で検出されたトルクと、目標とする規格トルクとが
比較され、検出トルクが規格トルクの範囲内にあるか否
かが判断される(ステップ73)。この規格トルクは、
スタンバイ四輪駆動車1の走行中に、アウタープレート
38とインナープレート45とが差動回転した場合に、
スタンバイ四輪駆動車1の走行性能を所定の状態に維持
することの可能な範囲に設定されている。
【0293】ステップ83で肯定判断された場合は、ス
テップ71で注入されたシリコンオイルの充填率によ
り、所定の相対回転数において、目標とするトルクが得
られ、かつ、目標充填率の規格を達成している状態であ
るため、そのまま注入作業を終了する。
【0294】一方、ステップ73で否定判断された場合
は、制御装置119により、ステップ71で注入された
シリコンオイルと同一の粘度のシリコンオイルを基準と
して、規格トルクに到達するまでの追加充填量が演算さ
れる(ステップ74)。そして、制御装置119によ
り、ステップ74で演算された量のシリコンオイルを粘
性流体室B1に追加した後の充填率が、目標充填率の規
格内に設定されるか否かが判断される(ステップ7
5)。
【0295】この目標充填率の規格は、所定の条件下に
おいて、シリコンオイルおよび空気が膨張して粘性流体
室B1の内圧が上昇し、インナープレート45とアウタ
ープレート38とが直結される、いわゆるハンプ現象を
実現することの可能な範囲に設定される。すなわち、粘
性流体室B1の容積に対して、例えば、シリコンオイル
の充填率が70ないし90%程度に設定されている。
【0296】ステップ75で肯定判断された場合は、ス
テップ71で注入されたシリコンオイルと同一の粘度の
シリコンオイルを追加し(ステップ76)、ステップ7
2に戻る。なお、ステップ76で追加されるシリコンオ
イルの注入量は、ステップ74で演算した値に制御され
る。
【0297】一方、ステップ71でシリコンオイルを充
填した時点において、トルクおよび充填率が図34に示
す線図の点F1に設定されている場合がある。つまり、
この点F1においては、充填率は目標充填率の規格内に
設定されているが、トルクが目標トルクよりも不足して
いることになる。そして、点F1の状態から、目標とな
る規格トルクを達成するために同一粘度のシリコンオイ
ルを追加すると、点F1から点F2に移動し、充填率が
規格外になることが予想される。このため、ステップ7
5の判断時点において、トルクおよび充填率が点F1に
設定されている場合は否定判断され、高粘度のシリコン
オイルを追加する制御が行われ(ステップ77)、ステ
ップ72に戻る。
【0298】具体的には、切換バルブ129の動作によ
り、オイルタンク132に接続された配管と粘性流体室
B1とが接続され、既に注入されているシリコンオイル
よりも高粘度シリコンオイルが追加される。シリコンオ
イルは粘度の増大に伴って伝達トルクが増大する特性を
備えているため、同一粘度のシリコンオイルを追加する
場合に比べて、充填率の増大割合が小さく、かつ、トル
クの増大割合が大きくなる傾向を示す。このため、ステ
ップ77の制御が行われた場合は、トルクおよび充填率
が、点F1から、目標充填率の規格内にある点F3に向
けて調整される。
【0299】なお、図32においては、オイルタンクが
3個設けられているが、粘度の異なるオイルタンクを4
個以上設けておき、ステップ77の実行回数が増加する
毎に、シリコンオイルの粘度をさらに高める注入作業を
行うことも可能である。また、図33のフローチャート
において、ステップ73で否定判断された場合に、注入
済みのシリコンオイルの粘度に比べて、追加するシリコ
ンオイルの粘度を低くすることも可能である。つまり、
粘性流体室にシリコンオイルを注入した状態において、
トルクは目標トルクの規格内にあるが、充填率が目標充
填率の規格未満である場合には、注入済みのシリコンオ
イルと同一の粘度、または注入済みのシリコンオイルよ
りも高粘度のシリコンオイルを追加すると、充填率が増
大して目標充填率の規格内に設定されるものの、トルク
が目標トルクの規格を超えてしまう可能性がある。そこ
で、注入済みのシリコンオイルの粘度よりも低粘度のシ
リコンオイルを追加すると、充填率の増大割合が同一で
あっても、トルクの増大を抑制することが可能である。
したがって、シリコンオイルの充填率の目標規格、およ
び伝達トルクの目標規格を両方達成することができる。
【0300】以上のように、第8実施例によれば、ビス
カスカップリング12の製造工程で粘性流体室B1にシ
リコンオイルを注入する途中で、伝達トルクと充填率と
の関係に基づいて、その後に、粘性流体室B1に追加す
るシリコンオイルの粘度が設定される。
【0301】このため、粘性流体室B1に充填するシリ
コンオイルの充填率の目標規格と、アウタープレート3
8とインナープレート45に所定の相対回転を与えた場
合の伝達トルクの目標規格とを、両方高精度に管理・調
整することができる。つまり、単一のビスカスカップリ
ング12において、シリコンオイルのせん断力により伝
達されるトルクを高精度に管理することができ、かつ、
アウタープレート38とインナープレート45とが直結
状態になる、いわゆるハンプ現象を生じさせる条件など
を高精度に管理することができ、ビスカスカップリング
12の製品品質が向上する。
【0302】したがって、ビスカスカップリング12を
搭載したスタンバイ四輪駆動車1の走行性能が所期の状
態に維持される。また、ビスカスカップリング12の材
料資源の無駄や、再加工の必要性が無くなり、製造コス
トが抑制される。さらには、複数のビスカスカップリン
グ12を製造した場合に、各ビスカスカップリング12
の部品の寸法精度にバラツキがあった場合においても、
各ビスカスカップリング12のトルクのバラツキ、およ
び充填率のバラツキが抑制される。この部品の寸法精度
には、鍛造素材を機械加工した場合の加工精度、および
熱処理を行った場合の歪みや変形が含まれる。
【0303】ここで、第8実施例に開示されたこの発明
の特徴的な構成を記載すれば以下の通りである。すなわ
ち、第1トルク伝達部材を有する第1回転部材と、この
第1回転部材と相対回転可能に配置され、かつ、前記第
1トルク伝達部材に対向する第2トルク伝達部材を有す
る第2回転部材と、前記第1トルク伝達部材および前記
第2トルク伝達部材が配置される粘性流体室とを有する
ビスカスカップリングを用意し、前記粘性流体室に粘性
流体を注入するビスカスカップリングの粘性流体注入方
法において、前記粘性流体室にシリコンオイルを注入し
た後に、前記第1回転部材と前記第2回転部材とを相対
回転させ、この第1回転部材と第2回転部材との間で伝
達されるトルクを検出するとともに、この伝達トルクの
検出結果に基づいて、前記粘性流体室に粘性流体を追加
する場合に、既に注入されている粘性流体と同一の粘度
を有する粘性流体の注入により、追加後における粘性流
体室の充填率が所定の範囲内に設定されるか否かを判断
し、その判断結果に基づいて、既に注入されている粘性
流体の粘度と、追加する粘性流体の粘度とを異ならせる
ことを特徴とするビスカスカップリングのシリコンオイ
ル注入方法(ビスカスカップリングのトルク調整方
法)。
【0304】(第9実施例)従来の四輪駆動車などに用
いられているビスカスカップリングの一例が特開平4−
282034号公報に記載されている。この公報に記載
されたビスカスカップリングは、同一の軸線を中心とし
て相対回転可能に配置された第1回転部材および第2回
転部材を備えている。第1回転部材にはドラム形状のケ
ーシングが固定されており、ケーシングの内部には粘性
流体室が形成されている。この粘性流体室にはシリコン
オイル(粘性流体)が封入されているとともに、第2回
転部材の一部が粘性流体室に配置されている。
【0305】また、粘性流体室には板形状の第1トルク
伝達部材が複数配置されており、この複数の第1トルク
伝達部材が、ケーシングの内周にスプライン嵌合されて
いる。さらに、粘性流体室には、板形状の第2トルク伝
達部材が複数配置されており、複数の第2トルク伝達部
材が、第2回転部材の外周にスプライン嵌合されてい
る。そして、第1トルク伝達部材と第2トルク伝達部材
とが交互に配置されている。さらにまた、ケーシングの
内周には複数のスペーサリングが取り付けられており、
各スペーサリングが各第1トルク伝達部材同士の間に配
置されている。
【0306】上記構成のビスカスカップリングにおい
て、第1回転部材と第2回転部材との回転数が等しい場
合には、第1回転部材のトルクと第2回転部材との間で
トルクの伝達が行われない。この場合、ビスカスカップ
リング全体が一体的に回転する。一方、第1回転部材と
第2回転部材とに差動回転が生じた場合は、第1トルク
伝達部材と第2トルク伝達部材とが差動回転し、その回
転差に応じてシリコンオイルにせん断力が発生し、第1
回転部材と第2回転部材との間でトルクの伝達が行われ
る。
【0307】ところで、ビスカスカップリングは、つぎ
のようにして製造されている。すなわち、第1回転部材
および第2回転部材は、鍛造素材を機械加工して所定の
形状に成形されている。また、第1トルク伝達部材およ
び第2トルク伝達部材は、金属板をプレス加工により円
板形状に打ち抜いて成形される。その後、第1トルク伝
達部材および第2トルク伝達部材には、熱処理を施して
強度および耐摩耗性を向上させている。
【0308】しかしながら、従来のビスカスカップリン
グの製造工程においては、金属板をプレス加工した場合
の荷重により、残留応力が発生している。このため、プ
レス加工されたトルク伝達部材に熱処理を施した場合
に、残留応力部分の歪みや変形が増大され、トルク伝達
部材の寸法精度(言い換えれば加工精度)が低下する可
能性があった。
【0309】すると、回転部材に対してトルク伝達部材
を取り付けた場合に、回転部材とトルク伝達部材との取
付部分の隙間が増大して、両者の同心度が低下する。そ
の結果、ビスカスカップリングが全体として一体的に回
転する場合に、半径方向のバランス、つまり動的釣り合
い精度が低下することがあった。その結果、ビスカスカ
ップリングが振動して騒音が生じる可能性があった。
【0310】第9実施例は、上記事情を背景としてなさ
れたもので、ビスカスカップリングのトルク伝達部材の
寸法精度(言い換えれば加工精度)を精度を向上させる
ことの可能なビスカスカップリング用トルク伝達部材の
製造方法を提供することを目的としている。
【0311】この第9実施例においては、図1および図
2に示されたビスカスカップリング12に取り付けられ
ているトルク伝達部材、特に、図5に示されているイン
ナープレート45の製造方法を説明する。図35は、イ
ンナープレート45の製造方法を示す工程図である。ま
ず、金属板(鋼板)を用意する(ステップ81)ととも
に、この金属板をプレス機(図示せず)により打ち抜き
加工してインナープレート45を成形する(ステップ8
2)。プレス機は公知の構造のものであり、ステップ8
2により、スリット47および内歯46が形成される。
また、ステップ82により形成されるインナープレート
45の内径、具体的には、内歯46のピッチ円直径は、
最終目標とするピッチ円直径未満に設定されている。
【0312】つぎに、ステップ82で成形されたインナ
ープレート45をブローチ加工する(ステップ83)。
図36に基づいて、ステップ83のブローチ加工に用い
るブローチ盤133の構成、および具体的な加工方法を
説明する。ブローチ盤133は、ベース部134と押え
部材135とブローチ136とを有する。ベース部13
4と押え部材135とは、油圧機構などのアクチュエー
タ(図示せず)により図36の上下方向に相対移動し、
相互の間隔が制御される。ベース部134には孔137
が形成され、押え部材134には孔138が形成されて
いる。
【0313】また、ブローチ136の外周には、長手方
向に複数の歯列139が形成されている。各歯列139
は、円周方向に配置された複数の歯により構成されてい
る。さらに、各歯列139の歯先円の直径が、図36に
おいて下方から上方に向けて大きくなるように設定され
ている。そして、ブローチ136は油圧機構などのアク
チュエータ(図示せず)により、図36の上下方向に移
動する。
【0314】ブローチ盤133によりインナープレート
45をブローチ加工する場合は、まず、インナープレー
ト45を厚さ方向に複数枚重ね合わせた状態でベース部
134上に載せる。ここで、各インナープレート45は
同心状に重ね合わされ、かつ、プレス加工により形成さ
れている内歯46の各々が、円周方向の同一位相に配置
されるように、各インナープレート45同士が位置決め
されている。
【0315】つぎに、ベース部134と押え部材135
との間隔を狭めて、ベース部134と押え部材135と
の間に、複数枚のインナープレート45を挟持する。そ
して、ブローチ136を下降すると、各歯列139によ
りインナープレート45の内歯46が切削される。各歯
列139の歯先円の外径は、図36の下方から上方に向
けて大きくなるように設定されているため、各歯列13
9により内歯46が複数段階に分けて徐々に切削され
る。
【0316】その結果、図37に示すように、インナー
プレート45のうち、プレス加工時の荷重により残留応
力が発生している部分G1が、ブローチ加工により除去
される。また、各歯列139の寸法が下方から上方に向
けて徐々に大きくなるように設定されているため、内歯
46をブローチ加工した場合に、残留応力が生じにく
い。このようにして、インナープレート45がブローチ
加工されて、内歯46のピッチ円直径が最終目標とする
値に加工される。
【0317】その後、ブローチ136を上方に移動させ
るとともに、ベース部134と押え部材135とを相対
移動して、各インナープレート45に対する挟持力を解
除する。そして、各インナープレート45をブローチ盤
133から取り外すとともに、各インナープレート45
に熱処理が施され(ステップ84)、強度および耐久性
が向上される。ステップ84で行われる熱処理には、焼
き入れおよび軟窒化処理が含まれる。さらに、各インナ
ープレート45同士を厚さ方向に重ね合わせ、かつ、厚
さ方向の両側から加圧した状態で、各インナープレート
45の平面度を矯正する加熱処理が行われる(ステップ
85)。ステップ85の加熱処理としては焼き戻しが例
示される。なお、アウタープレート38およびケーシン
グK1およびハブ22は、第1実施例と同様にして製造
され、これらの部品が第1実施例と同様にして組み付け
られてビスカスカップリング12が完成する。
【0318】このように、第9実施例においては、イン
ナープレート45の製造過程において、プレス加工によ
りインナープレート45を成形した後、プレス加工時の
荷重により残留応力が発生している部分G1を、ブロー
チ加工により除去する工程が行われる。その後、インナ
ープレート45を熱処理する工程が行われる。このた
め、インナープレート45を熱処理する工程において、
内歯46の歪みや変形が抑制され、内歯46の寸法精度
(言い換えれば加工精度)が向上する。
【0319】本出願人は、第9実施例により製造された
複数のインナープレート45と、プレス加工後にそのま
ま熱処理を行った複数のインナープレート(比較例)と
に対して、オーバーボールダイヤ(OBD)手法を適用
し、各プレートの内歯の歯厚を測定した。オーバーボー
ルダイヤ手法とは、内歯の相互に向かい合った2つの歯
溝に2個のボールを入れ、最大の外側寸法を測定する歯
厚管理手法である。その結果、第9実施例により製造し
た各インナープレートの歯厚のバラツキの方が、比較例
の各インナープレートの歯厚のバラツキよりも少ないこ
とが確認されている。
【0320】このため、図35の製造工程により製造さ
れたインナープレート45をハブ22にスプライン嵌合
することにより、インナープレート45とハブ22との
嵌合部分の隙間を可及的に狭く設定することが可能であ
る。ここで、インナープレート45の内歯46と、ハブ
22の外歯44との噛み合い状態を、図38に基づいて
説明する。
【0321】すなわち、外歯44のピッチ円H1上にお
ける外歯44の歯面と内歯46の歯面との間に、歯面隙
間J1が設定されている。また、ピッチ円H1に対する
圧力角θ1を形成する線分M1に対して、ほぼ平行な方
向の隙間L1が設定されている。そして、インナープレ
ート45とハブ22とがスプライン嵌合された場合は、
隙間L1に対応して、インナープレート45の中心と、
ハブ22の中心との心ずれ範囲が決定される。すなわ
ち、歯面隙間J1が増大するほど、インナープレート4
5の中心と、ハブ22の中心との心ずれが増大する傾向
を示す。
【0322】そして、第9実施例においては、インナー
プレート45の寸法精度が可及的に向上するため、前記
歯面隙間J1を可及的に狭く設定することが可能であ
る。このため、ハブ22に対してインナープレート45
をスプライン嵌合した状態において、ハブ22の中心と
インナープレート45の中心との心ずれを可及的に小さ
くすることができる。
【0323】したがって、ビスカスカップリング12の
製品状態において、半径方向のバランス精度が向上す
る。つまり、ビスカスカップリング12の全体が一体的
に回転している二輪駆動状態において、ビスカスカップ
リング12の振動が抑制されて、スタンバイ四輪駆動車
1の挙動が安定して乗り心地が向上するとともに、騒音
が抑制されて静粛性を向上させることができる。
【0324】また、図35に示す工程図においては、一
枚のインナープレート45の内歯46の部分G1を、ブ
ローチ加工により全周に亘って一回の切削動作により除
去しているため、円周方向における切削量がほぼ均等に
なり、一枚のインナープレート45における各歯毎の寸
法精度のバラツキが抑制される。
【0325】さらに、内歯46の部分G1を除去する場
合には、立削り盤(言い換えればスロッタ)を用いるこ
とも可能である。この立削り盤を用いて部分G1を除去
する場合は、切削工具により、内歯46を円周方向の一
歯毎に別個に切削することになる。
【0326】なお、第9実施例の製造方法は、アウター
プレート38を製造する場合にも適用可能である。すな
わち、プレス加工によりアウタープレート38を成形し
た後、外歯39をブローチ盤または立削り盤により切削
する。なお、この場合は、プレス加工により成形される
外歯39の寸法(ピッチ円)は、最終目標とするピッチ
円よりも大きく設定されていることは勿論である。
【0327】このようにして、アウタープレート38を
プレス加工した時の荷重により発生した応力の残留して
いる部分を除去すれば、アウタープレート38を熱処理
する場合に生じる変形や歪みを抑制することが可能にな
る。このため、アウタープレート38の寸法精度(言い
換えれば加工精度)が向上し、アウタープレート38を
ケーシングK1にスプライン嵌合した状態において、内
歯37と外歯39との隙間を可及的に狭くすることがで
きる。したがって、ビスカスカップリング12の製品状
態においては、前述と同様の効果を得られる。
【0328】ここで、第9実施例の構成と請求項9の構
成との関係を説明する。すなわち、ケーシングK1が第
1回転部材に相当し、ハブ22が第2回転部材に相当
し、アウタープレート38およびインナープレート45
が回転部材に相当する。
【0329】(第10実施例)従来の四輪駆動車などに
用いられているビスカスカップリングの一例が特開平4
−282034号公報に記載されている。この公報に記
載されたビスカスカップリングは、同一の軸線を中心と
して相対回転可能に配置された第1回転部材および第2
回転部材とを備えている。第1回転部材にはドラム形状
のケーシングが固定されており、ケーシングの内部には
粘性流体室が形成されている。この粘性流体室にはシリ
コンオイル(粘性流体)が封入されているとともに、第
2回転部材の一部が粘性流体室に配置されている。
【0330】また、粘性流体室には環状の第1トルク伝
達部材が複数配置されており、この複数の第1トルク伝
達部材が、ケーシングの内周にスプライン嵌合されてい
る。さらに、粘性流体室には第2トルク伝達部材が複数
配置されており、各第2トルク伝達部材が、第2回転部
材の外周にスプライン嵌合されている。そして、第1ト
ルク伝達部材と第2トルク伝達部材トルク伝達部材と
が、交互に配置されている。
【0331】上記構成のビスカスカップリングにおい
て、第1回転部材の回転数と、第2回転部材の回転数と
が等しい場合には、第1回転部材と第2回転部材との間
でトルクの伝達が行われない。この場合、ビスカスカッ
プリング全体が一体的に回転する。一方、第1回転部材
と第2回転部材とに差動回転が生じた場合は、複数の第
1トルク伝達部材と、複数の第2トルク伝達部材とが差
動回転し、その回転差に応じてシリコンオイルにせん断
力が発生し、第1回転部材と第2回転部材との間でトル
クの伝達が行われる。
【0332】ところで、ビスカスカップリングの製造工
程において、第1トルク伝達部材および第2トルク伝達
部材は、金属板をプレス加工して成形されている。この
ため、第1トルク伝達部材および第2トルク伝達部材に
は、バリが存在している。このため、ビスカスカップリ
ングの製品状態において、第1トルク伝達部材と第2ト
ルク伝達部材とが差動回転した場合は、バリの摩耗粉が
発生する。ここで、ビスカスカップリングの初期使用時
には、バリの高さが高いため多量の摩耗粉が発生する。
また、所定の使用期間が経過した後は、バリの高さが低
くなって各トルク伝達部材のなじみ性が良好になるた
め、摩耗粉が減少する。
【0333】上記のような摩耗粉の発生過程において
は、シリコンオイルの分子の切断および重合が繰り返さ
れ、シリコンオイルの粘度が高められる。その結果、ビ
スカスカップリングにより伝達されるトルクが経時的に
変化(増大)し、かつ、耐久性が低下する問題がある。
【0334】そこで、従来は、シリコンオイルに耐摩耗
剤(添加剤)を添加することにより、トルク伝達部材の
摩耗を抑制し、上記問題に対処している。また、摩耗粉
の発生傾向は、経時的に減少するため、複数種類の耐摩
耗剤を、シリコンオイルに添加している。すなわち、初
期段階で急激に反応して摩耗を抑制する耐摩耗剤と、徐
々に反応して摩耗を抑制する耐摩耗剤とを添加してい
る。
【0335】しかしながら、耐摩耗剤は熱分解されて酸
性物質になる特性を備えており、この酸性物質により、
シリコンオイルの分子が分解される。その結果、シリコ
ンオイルの粘度が低下して、ビスカスカップリングによ
り伝達されるトルクが経時的に変化(減少)し、かつ、
耐久性が低下する問題があった。
【0336】第10実施例は上記事情を背景としてなさ
れたもので、所定の機能を継続的に発揮でき、かつ、シ
リコンオイルの粘度変化を抑制することの可能なビスカ
スカップリング用添加剤を提供することを目的としてい
る。
【0337】第10実施例は、請求項10の発明に対応
する実施例であり、第10実施例においては、図1およ
び図2に示されたビスカスカップリング12を対象とし
て具体的に説明する。なお、図2に示されたアウタープ
レート38およびインナープレート45が、図3および
図5に示す構成を備えていることは、第1実施例と同様
である。
【0338】そして、ビスカスカップリング12の粘性
流体室B1に充填されるシリコンオイルは、ジメチルシ
リコンを主成分とし、耐摩耗剤(添加剤)が添加されて
いる。具体的には、シリコンオイル全体に対して、耐摩
耗剤が0.03ないし0.1重量%の割合で添加されて
いる。この耐摩耗剤は、アウタープレート38およびイ
ンナープレート45の摩耗を抑制する機能を備えてい
る。
【0339】図39は、耐摩耗剤の粒子140を示す拡
大断面図である。粒子140の粒子径は、6ないし10
μm程度に設定され、かつ、ほぼ球状に成形されてい
る。そして、粒子140は、その外周側を構成する外側
組成成分層141と、外側組成成分層141の内部に配
置された内側組成成分層142とから構成されている。
つまり、粒子140は二重構造になっている。また、外
側組成成分層141と内側組成成分層142との重量比
率は、例えば、1:4程度に設定されている。
【0340】そして、外側組成成分層141の摩耗防止
機能(熱反応性)の方が、内側組成成分層142の摩耗
防止機能よりも高い特性を備えている。つまり、外側組
成成分層141の方が、内側組成成分層142よりも耐
熱性が低い。言い換えれば、外側組成成分層141は即
効性に優れており、内側組成成分層142の持続性に優
れている。外側組成成分層141を構成する組成成分と
しては、ジオクチルジスルフィドチアジアゾールが例示
される。また、内側組成成分層142を構成する組成成
分としては、トリフェニルフォスフォロチオエートが例
示される。上記構成を備えた粒子140は、例えば、I
n−Situ(インサイチュ)重合法、または界面重合
法などの製造方法により、二重構造に構成されている。
【0341】つぎに、ビスカスカップリング12の動作
中における耐摩耗剤の機能を説明する。まず、ビスカス
カップリング12の製造工程において、アウタープレー
ト38およびインナープレート45は、金属板をプレス
加工して成形されている。このため、アウタープレート
38およびインナープレート45には、その厚さ方向に
突出したバリ(図示せず)が生じている。
【0342】バリのあるアウタープレート38およびイ
ンナープレート45をビスカスカップリング12に用い
た場合、アウタープレート38とインナープレート45
とが接触した状態で相互に差動回転すると、図40に示
すように、初期使用時は摩耗粉(鉄粉)の発生割合が急
激に増大する傾向を示す。そして、アウタープレート3
8とインナープレート45との差動および同期回転を繰
り返して所定の使用期間(サイクル数)が経過すると、
バリの高さが減少してアウタープレート38とインナー
プレート45とのなじみ性が良好になり、摩耗粉の発生
割合がほぼ一定になる傾向を示す。すなわち、定常摩耗
状態になる。
【0343】ところで、図39に示された耐摩耗剤の粒
子140は、外側組成成分層141の摩耗防止機能の方
が、内側組成成分層142の摩耗防止機能よりも高い特
性を備えている。このため、まず、摩耗粉の発生割合が
急激に増大する初期摩耗時には、外側組成成分層141
が作用して、摩耗粉の発生を抑制する。このため、図4
1に示すように、シリコンオイル中における外側組成成
分層141の残存量(破線)は、サイクル数の初期段階
から急激に減少する。したがって、外側組成成分層14
1による摩耗防止機能は、初期摩耗段階の終了にほぼ同
期して終了する。
【0344】一方、内側組成成分層142は耐熱性に優
れており、かつ、外側組成成分層141よりも内周側に
配置されている。このため、内側組成成分層142は、
初期摩耗段階における熱分解が抑制され、外側組成成分
層141が所定の残存量まで減少した時点から、内側組
成成分層142の熱分解が行われる。また、定常摩耗の
サイクル数が増大しても、その摩耗防止機能が持続す
る。すなわち、図41に示すように、シリコンオイル中
における内側組成成分層142の残存量(実線)は、サ
イクル数の増加に伴って徐々に減少する。
【0345】このように、第10実施例においては、ア
ウタープレート38およびインナープレート45にバリ
があった場合においても、耐摩耗剤により摩耗粉の発生
が抑制される。したがって、シリコンオイルの分子の切
断および重合が抑制され、粘度の高まりを防止できる。
したがって、ビスカスカップリング12により伝達され
るトルクの増大を抑制でき、安定したトルク伝達性能が
維持され、かつ、耐久性が向上する。
【0346】また、第10実施例においては、耐摩耗剤
の粒子140が、外側組成成分層141と内側組成成分
層142とにより構成され、初期摩耗段階においては外
側組成成分層141が熱分解されて摩耗防止機能が発生
し、外側組成成分層141の残存量が所定値まで減少し
てから内側組成成分層142が熱分解されて、定常摩耗
段階で摩耗防止機能が継続的に発生する。つまり、シリ
コンオイル中における耐摩耗剤の見かけ濃度が低く設定
されていることになる。
【0347】このため、単位時間あたりにおける耐摩耗
剤の熱分解割合が抑制され、酸性物質の発生を減少させ
ることができる。その結果、酸性物質によるシリコンオ
イルの分子の分解が抑制され、シリコンオイルの粘度変
化(低下)を防止することができる。したがって、ビス
カスカップリング12のトルク伝達性能が安定し、か
つ、シリコンオイルの耐久性が向上する。
【0348】図42は、シリコンオイル中における耐摩
耗剤の濃度とサイクル数との関係を示す線図である。す
なわち、第10実施例においては、外側組成成分層14
1の熱分解時期と、内側組成成分層142の熱分解時期
とに差があるため、見かけ上の濃度比較的低く、その変
化量も小さい。
【0349】これに対して、破線で示す比較例は、摩耗
防止機能(反応性)の異なる2種類の耐摩耗剤を、別々
にシリコンオイルに添加した場合を示している。比較例
においては、2種類の耐摩耗剤がほぼ同時期に熱分解さ
れ始めるため、シリコンオイル中における濃度が、実施
例の濃度よりも高く設定されている。また、比較例にお
いては、サイクル数の増大に伴って摩耗防止機能の高い
耐摩耗剤が急激に熱分解されるため、濃度が急激に減少
する傾向を示しているこ。なお、第10実施例で、耐摩
耗剤が二重構造に構成されているが、反応特性の異なる
組成成分層を3層以上備えた添加剤を構成することも可
能である。また、第10実施例においては、異なる機能
を備えた組成成分層を複数形成することも可能である。
【0350】なお、第1実施例ないし第10実施例に記
載されたビスカスカップリングは、車両の差動装置また
は、差動制限装置に適用することも可能である。また、
第1実施例ないし第10実施例は、特開平4−3530
26号公報に記載された構成のビスカスカップリングに
も適用可能である。すなわち、この公報においては、半
径が異なり、かつ、同心状に配置された複数の円筒部材
(第1トルク伝達部材)が第1回転部材に設けられてい
る。また、半径が異なり、かつ、同心状に配置された複
数の円筒部材(第2トルク伝達部材)が第2回転部材に
設けられている。そして、第1回転部材に設けられた円
筒部材と、第2回転部材に設けられた円筒部材とが、半
径方向に交互に配置されている。
【0351】また、第2実施例ないし第10実施例にお
いては、第1実施例で開示している図1または図2また
は図3または図5と同様の構成部分については、説明を
省略している。したがって、第2実施例ないし第10実
施例において、図1または図2または図3または図5と
同様の構成部分については、同様の作用効果が生じるこ
とは勿論である。
【0352】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、ビスカスカッ
プリングの各スペーサリングが、各切欠部の円周方向の
位相が異なるように配置されているため、各スペーサリ
ング全体としての半径方向のバランス精度が向上する。
したがって、ビスカスカップリングの全体が一体的に回
転している状態において、ビスカスカップリングの振動
および騒音が抑制される。
【0353】請求項2の発明によれば、突出部が複数の
伝達部材同士の間に突出して配置され、通路が、ビスカ
スカップリングの外部と、各トルク伝達部材同士の配置
方向の投影領域に対応する空間とを連通しているため、
粘性流体室の内周側を十分に冷却することができる。つ
まり、粘性流体室の内部の温度が、第1トルク伝達部材
の外部の雰囲気温度に近い値に制御される。
【0354】その結果、粘性流体室の内部の温度変化が
抑制され、粘性流体の粘度がほぼ一定に維持される。こ
のため、ビスカスカップリングにより伝達されるトルク
が安定し、トルク伝達性能を良好に維持することができ
る。また、ビスカスカップリングが長期間に亘って動作
した場合においても、粘性流体の粘度低下(劣化)が抑
制され、粘性流体の耐久性が向上する。
【0355】また、第1回転部材自体の放熱機能によ
り、粘性流体室の全体が冷却される構成になっており、
粘性流体室を冷却するために格別の構成部品を必要とし
ない。したがって、部品点数が抑制されてビスカスカッ
プリングの小型化および軽量化に寄与でき、かつ、製造
コストの上昇を抑制できる。
【0356】請求項3の発明によれば、粘性流体室と第
2粘性流体室とが通路により連通されている。このた
め、第1トルク伝達部材と第2特伝達部材とが差動回転
して粘性流体室側の粘性流体の温度が上昇した場合にお
いても、第2粘性流体室および粘性流体室に充填されて
いる粘性流体が第1回転部材の回転により撹拌され、粘
性流体室側の粘性流体が第2粘性流体室側に移行する。
そして、粘性流体室から第2粘性流体室に移行した粘性
流体の熱が、外殻部材を介して外気中に放熱され、粘性
流体室を充分に冷却することができる。したがって、粘
性流体室を冷却するために格別の構成部品を必要とせ
ず、その部品点数が抑制されてビスカスカップリングの
小型化および軽量化に寄与でき、かつ、製造コストの上
昇を抑制できる。
【0357】請求項4の発明によれば、可動部材に作用
する遠心力が所定値を超えた場合は、可動部材が移動し
て粘性流体室の容積が拡大される。そして、この容積の
拡大に伴って粘性流体が分散し易くなり、第1トルク伝
達部材と第2トルク伝達部材とに接触する粘性流体の面
積、すなわちトルク伝達面積が減少する。このため、第
1トルク伝達部材と第2トルク伝達部材とに差動回転が
生じた場合においても、第1回転部材と第2回転部材と
の間で伝達されるトルクの増大を抑制することができ
る。したがって、ビスカスカップリングのトルク伝達性
能が安定する。
【0358】請求項5の発明によれば、ビスカスカップ
リングの製造過程において、粘性流体室に臨む内壁に対
する容積調整壁の取付位置に基づいて、粘性流体室の容
積を変更することができる。つまり、粘性流体の充填量
を変更することなく、粘性流体室に対する粘性流体の充
填率を増減することができる。その結果、第1トルク伝
達部材と第2トルク伝達部材の差動回転数に対応する粘
性流体のせん断力が増減する。そして、粘性流体室の容
積が、所定のトルクを伝達することの可能な状態になっ
た場合に、内壁と容積調整壁とを固定することで、粘性
流体室の容積が固定される。
【0359】つまり、ビスカスカップリングの製造過程
において、トルク伝達に関与する部品の部品の加工精度
が低下していた場合でも、ビスカスカップリングの製造
過程で粘性流体室の容積を変更することで、ビスカスカ
ップリングのトルク伝達性能を調整することができる。
【0360】このため、ビスカスカップリングを構成す
る部品の加工精度に関わりなく、所定のトルク伝達性能
を得ることができ、製品品質が向上する。したがって、
組立の完了したビスカスカップリングを分解して部品の
再加工や部品の取り替えを行ったり、若しくはビスカス
カップリング全体を処分する必要が無く、製品の歩留ま
りが向上する上、製造コストを抑制することができる。
また、所定の差動回転数に対して所期のトルク伝達性能
を得られ。
【0361】さらに、複数のビスカスカップリング毎
に、その部品の加工精度にバラツキがあり、この加工精
度のバラツキに基づいて、各ビスカスカップリング毎に
トルク伝達性能にバラツキが生じた場合でも、内壁に対
する容積調整壁の取付位置に基づいて粘性流体室の容積
を調整して、各ビスカスカップリングのトルク伝達性能
のバラツキを解消することができる。
【0362】請求項6の発明によれば、ビスカスカップ
リングの製造過程において、板状のトルク伝達部材を相
互に重ね合わせて平面方向に相対移動させる動作が行わ
れる。この動作により、トルク伝達部材に形成されてい
る突出部の高さを減少させることができる。このため、
ビスカスカップリングの使用中に、トルク伝達部材同士
が接触した状態で差動回転が生じた場合においても、各
トルク伝達部材の摩耗量、具体的には摩耗粉の発生量が
低減される。その結果、粘性流体の分子の切断・重合が
抑制され、粘性流体の粘度の変化(高まり)が防止され
る。
【0363】したがって、ビスカスカップリングにより
伝達されるトルクを可及的に低く維持し、かつ、経時的
なトルク変動を抑制して安定化させることができる。ま
た、粘性流体の劣化が抑制され、粘性流体の耐久性を向
上することができる。さらに、予めトルク伝達部材の突
出部の高さを減少させておくため、初期使用時において
は、各ビスカスカップリング毎に、トルクの伝達特性の
バラツキが抑制されて製品品質が向上する。
【0364】請求項7の発明によれば、粘性流体の温度
と、第1回転部材と第2回転部材との間で伝達されるト
ルクとの関係に基づいて、シリコンオイルの注入量を設
定する。このため、ビスカスカップリングを構成する部
品のうち、トルクの伝達に関与する部品が、その製造過
程で寸法精度が低下していた場合においても、寸法精度
に関わりなく、ビスカスカップリングにおけるトルク伝
達性能の管理精度を高めることができ、製品品質が向上
する。したがって、ビスカスカップリングのトルク伝達
性能を、所期の状態に設定することができる。
【0365】また、複数のビスカスカップリングを製造
した場合に、各ビスカスカップリング毎に、その構成部
品の寸法精度にバラツキがあった場合においても、寸法
精度のバラツキに関わりなく、各ビスカスカップリング
のトルク伝達性能をほぼ均一に維持することができる。
【0366】また、複数のビスカスカップリングに注入
される粘性流体の粘度にバラツキがあった場合において
も、粘性流体の粘度のバラツキに関わりなく、各ビスカ
スカップリングのトルク伝達性能をほぼ均一に維持する
ことができる。
【0367】つまり、ビスカスカップリングの製造工程
の最終工程において、ビスカスカップリングのトルク伝
達性能が調整されるため、各種の部品の寸法精度を高精
度に維持する必要性が無いとともに、粘性流体室の内容
積の測定精度、およびシリコンオイルの充填率測定の精
度も高精度が要求されず、ビスカスカップリングの製造
コストを抑制することができる。
【0368】請求項8の発明によれば、ビスカスカップ
リングの製造工程で粘性流体室に粘性流体を注入する途
中で、伝達トルクと充填率との関係に基づいて、粘性流
体室に追加する粘性流体の粘度が設定される。このた
め、単一のビスカスカップリングにおいて、粘性流体室
に充填する粘性流体の充填率と、第1回転部材と第2回
転部材とに所定の相対回転可が生じた状態における伝達
トルクとを、両方高精度管理・に調整することができ、
製品品質が向上する。
【0369】また、ビスカスカップリングの材料資源の
無駄や、再加工の必要性が無くなり、製造コストが抑制
される。さらには、複数のビスカスカップリングの製造
過程において、各ビスカスカップリングの部品に寸法精
度のバラツキが生じた場合で、各ビスカスカップリング
のトルクのバラツキ、および充填率のバラツキが抑制さ
れる。
【0370】請求項9の発明によれば、プレス加工によ
りトルク伝達部材を成形した後、プレス加工時の荷重に
より残留応力が発生している部分が除去される。その
後、トルク伝達部材を熱処理する工程が行われる。この
ため、トルク伝達部材を熱処理した場合に生じる歪みや
変形が抑制され、トルク伝達部材の寸法精度(言い換え
れば加工精度)が向上する。このため、回転部材に対し
てトルク伝達部材を取り付けた状態において、回転部材
とトルク伝達部材との隙間を可及的に狭く設定すること
ができ、回転部材とトルク伝達部材との心ずれを可及的
に小さくすることができる。したがって、ビスカスカッ
プリングの製品状態において、半径方向のバランス精度
が向上し、振動および騒音が抑制される。
【0371】請求項10の発明によれば、まず、添加剤
を構成する成分のうち、熱反応性の高い組成成分が初期
段階で作用して所定の機能を果たし、その後、熱反応性
の低い組成成分が作用して所定の機能を果たす。このた
め、添加剤の機能によるシリコンオイルの粘度変化が抑
制される。したがって、ビスカスカップリングのトルク
伝達性能が安定し、かつ、シリコンオイルの耐久性が向
上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明のビスカスカップリングの適用対象
の一例であるスタンバイ四輪駆動車の概念図である。
【図2】 この発明のビスカスカップリングの第1実施
例を示す平面断面図である。
【図3】 図2のビスカスカップリングに取り付けられ
るアウタープレートの側面図である。
【図4】 図2のビスカスカップリングを、IV−IV線で
破断した場合を示す側面断面図である。
【図5】 図2のビスカスカップリングに取り付けられ
るインナープレートの側面図である。
【図6】 図2に示すビスカスカップリングの組立手順
を示すフローチャートである。
【図7】 図2に示すビスカスカップリングの他の組立
手順を示すフローチャートである。
【図8】 この発明のビスカスカップリングの第2実施
例を示す平面断面図である。
【図9】 この発明のビスカスカップリングの第3実施
例を示す平面断面図である。
【図10】 図9のX−X線における側面断面図であ
る。
【図11】 この発明のビスカスカップリングの第4実
施例を示す平面断面図である。
【図12】 図10のXII−XII線における側面断面図
である。
【図13】 図12に示されたピストンの動作を示す側
面断面図である。
【図14】 この発明のビスカスカップリングの第4実
施例の他の構成例を示す平面断面図である。
【図15】 図14のビスカスカップリングの要部を示
す拡大断面図である。
【図16】 この発明の第5実施例におけるビスカスカ
ップリング用トルク伝達部材の製造方法の一例を示すを
工程図である。
【図17】 第5実施例に用いられるバリ除去装置の概
略構成を示す断面図である。
【図18】 第5実施例においては、バリの高さが減少
される前のアウタープレートの形状を示す拡大断面図で
ある。
【図19】 第5実施例においては、バリの高さが減少
された後のアウタープレートの形状を示す拡大断面図で
ある。
【図20】 第5実施例により製造したインナープレー
トおよびアウタープレートと、比較例により製造された
アウタープレートおよびインナープレートについて、各
プレートの摩耗量、および粘性流体室のシリコンオイル
に添加した添加剤の残存量、およびシリコンオイルの粘
度、およびビスカスカップリングの伝達トルクの経時的
な変化を比較するグラフ図である。
【図21】 第6実施例に対応するビスカスカップリン
グの構成を示す半断面図である。
【図22】 第6実施例のビスカスカップリングを組み
立てる作業ルーチンの一例を示すフローチャートであ
る。
【図23】 図22のフローチャートで用いるトルク装
置の構成、およびビスカスカップリングの構成を示す半
断面図である。
【図24】 図22のフローチャートで測定されるビス
カスカップリングのトルク変動特性を示す線図である。
【図25】 第7実施例で用いられるシリコンオイル注
入装置の構成を示す概略図である。
【図26】 図25に示すシリコンオイル注入装置に、
ビスカスカップリングを取り付けた状態の半断面図であ
る。
【図27】 第7実施例に相当するシリコンオイルの注
入作業過程を示すフローチャートである。
【図28】 第7実施例において、シリコンオイルの目
標トルクを設定する場合に用いる線図である。
【図29】 第7実施例において、シリコンオイルの注
入量を設定する場合に用いる線図である。
【図30】 この発明に実施例において、シリコンオイ
ルの他の注入作業過程を示すフローチャートである。
【図31】 図30のフローチャートを用いた場合にお
いて、バルブの状態と、トルクの変化状態とを示す線図
である。
【図32】 第8実施例で用いられるシリコンオイル注
入装置の構成を示す概略図である。
【図33】 第8実施例に相当するシリコンオイルの注
入作業過程を示すフローチャートである。
【図34】 第8実施例でシリコンオイルの注入作業を
行う場合に、トルクの規格と充填率の規格との関係を示
す線図である。
【図35】 第9実施例に相当するトルク伝達部材の製
造方法を示す工程図である。
【図36】 第9実施例で行われるブローチ加工動作の
断面図である。
【図37】 第9実施例において、ブローチ加工される
インナープレートの内歯を示す拡大図である。
【図38】 第9実施例において、インナープレートと
ハブとの噛み合い部分を示す拡大図である。
【図39】 第10実施例における耐摩耗剤の粒子を示
す拡大断面図である。
【図40】 第10実施例において、ビスカスカップリ
ングのトルク伝達部材の摩耗量の経時変化を示す線図で
ある。
【図41】 第10実施例において、耐摩耗剤の残存量
の経時変化を示す線図である。
【図42】 第10実施例において、実施例および比較
例の、耐摩耗剤濃度の経時変化を示す線図である。
【符号の説明】
12…ビスカスカップリング、 17…カバー、 22
…ハブ、 38…アウタープレート、 42…スペーサ
リング、 43…切欠部、 45…インナープレート、
49…円筒部材、 50…環状部材、 54,59,
60…通路、64,71…ピストン、 67…圧縮ば
ね、 74,79…引っ張りばね、 77…ウェイト、
99…可動壁、 140…粒子、 141…内側組成
成分層、142…外側組成成分層、 A1…軸線、 B
1…粘性流体室、 K1,K2,K3,K4,K5,K
6…ケーシング。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI F16D 35/00 631C 631D (72)発明者 尾崎 俊昭 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 稲澤 幸一 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 相対回転可能に配置された第1回転部材
    および第2回転部材と、この第1回転部材と第2回転部
    材との間に形成された粘性流体室と、この粘性流体室に
    配置され、かつ、前記第1回転部材と一体回転する複数
    の第1トルク伝達部材と、前記複数の第1トルク伝達部
    材と対向して配置され、かつ、前記第2回転部材と一体
    回転する第2トルク伝達部材と、前記第1トルク伝達部
    材同士の間に配置された複数のスペーサリングとを備
    え、前記複数のスペーサリングの円周方向の一部に、円
    周方向における単位長さあたりの重量が他の部位とは異
    なる重量偏在部が形成されているビスカスカップリング
    において、 少なくとも2つのスペーサリングが、前記重量偏在部同
    士の円周方向の位相を異ならせて配置されていることを
    特徴とするビスカスカップリング。
  2. 【請求項2】 相対回転可能に配置された第1回転部材
    および第2回転部材と、この第1回転部材と第2回転部
    材との間に形成された粘性流体室と、この粘性流体室に
    配置され、かつ、前記第1回転部材と一体回転する第1
    トルク伝達部材と、前記第1トルク伝達部材と対向して
    配置され、かつ、前記第2回転部材と一体回転する第2
    トルク伝達部材とを備えたビスカスカップリングにおい
    て、 前記第1回転部材または前記第2回転部材の少なくとも
    一方に、前記粘性流体室の内部側に延ばされて前記トル
    ク伝達部材同士の間に到達し、かつ、外気に連通する通
    路が形成されていることを特徴とするビスカスカップリ
    ング。
  3. 【請求項3】 相対回転可能に配置された第1回転部材
    および第2回転部材と、この第1回転部材と第2回転部
    材との間に形成された粘性流体室と、この粘性流体室に
    配置され、かつ、前記第1回転部材と一体回転する第1
    トルク伝達部材と、前記第1トルク伝達部材と対向して
    配置され、かつ、前記第2回転部材と一体回転する第2
    トルク伝達部材と、前記第1回転部材および第2回転部
    材の周囲を取り囲み、かつ、外気に露出する状態で最も
    外周側に配置された外殻部材とを備えたビスカスカップ
    リングにおいて、 前記第1回転部材または前記第2回転部材の内の少なく
    とも一方と前記外殻部材との間に形成された第2粘性流
    体室と、前記粘性流体室と前記第2粘性流体室とを連通
    する通路とを備えていることを特徴とするビスカスカッ
    プリング。
  4. 【請求項4】 相対回転可能に配置された第1回転部材
    および第2回転部材と、この第1回転部材と第2回転部
    材との間に形成された粘性流体室と、この粘性流体室に
    配置され、かつ、前記第1回転部材と一体回転する第1
    トルク伝達部材と、前記第1トルク伝達部材と対向して
    配置され、かつ、前記第2回転部材と一体回転する第2
    トルク伝達部材とを備えたビスカスカップリングにおい
    て、 遠心力に基づいて動作することにより、前記粘性流体室
    の容積を拡大する可動部材を設けたことを特徴とするビ
    スカスカップリング。
  5. 【請求項5】 相対回転可能に配置された第1回転部材
    および第2回転部材と、この第1回転部材と第2回転部
    材との間に形成された粘性流体室と、この粘性流体室に
    配置され、かつ、前記第1回転部材と一体回転する第1
    トルク伝達部材と、前記第1トルク伝達部材と対向して
    配置され、かつ、前記第2回転部材と一体回転する第2
    トルク伝達部材とを備えたビスカスカップリングにおい
    て、 前記粘性流体室に臨む内壁の一部に、前記内壁の他の部
    位に対する取付位置に基づいて前記粘性流体室の容積を
    変更し、かつ、前記内壁の他の部位に固定された状態で
    前記粘性流体室の容積を固定させる容積調整壁を備えて
    いることを特徴とするビスカスカップリング。
  6. 【請求項6】 相対回転可能に配置された第1回転部材
    と第2回転部材との間に形成された粘性流体室に相対回
    転可能に配置される板状のトルク伝達部材を、金属板を
    プレス加工することにより成形するビスカスカップリン
    グの製造方法において、 プレス加工されたトルク伝達部材同士を重ね合わせ、重
    ね合わせたトルク伝達部材同士を、その平面方向に相対
    移動することにより、トルク伝達部材の厚さ方向に突出
    している突出部の高さを低減させることを特徴とするビ
    スカスカップリングの製造方法。
  7. 【請求項7】 複数の第1トルク伝達部材を有する第1
    回転部材と、この第1回転部材と相対回転可能に配置さ
    れ、かつ、前記第1トルク伝達部材と対向する第2トル
    ク伝達部材を有する第2回転部材と、前記第1トルク伝
    達部材および前記第2トルク伝達部材が配置される粘性
    流体室とを有するビスカスカップリングを用意し、前記
    粘性流体室に粘性流体を注入するビスカスカップリング
    の製造方法において、 前記粘性流体室に粘性流体を注入した状態で前記第1回
    転部材と前記第2回転部材とを相対回転させるととも
    に、前記粘性流体の温度と、前記第1回転部材と前記第
    2回転部材との間で伝達されるトルクとに基づいて、前
    記粘性流体室の粘性流体の注入量を設定することを特徴
    とするビスカスカップリングの製造方法。
  8. 【請求項8】 複数の第1トルク伝達部材を有する第1
    回転部材と、この第1回転部材と相対回転可能に配置さ
    れ、かつ、前記第1トルク伝達部材と対向する第2トル
    ク伝達部材を有する第2回転部材と、前記第1トルク伝
    達部材および前記第2トルク伝達部材が配置される粘性
    流体室とを有するビスカスカップリングを用意し、前記
    粘性流体室に粘性流体を注入するビスカスカップリング
    の製造方法において、 前記粘性流体室に粘性流体を注入した状態で前記第1回
    転部材と前記第2回転部材とを相対回転させるととも
    に、この第1回転部材と第2回転部材との間で伝達され
    るトルクと、前記粘性流体室に対する粘性流体の充填率
    とに基づいて、前記粘性流体室に追加する粘性流体の粘
    度を設定することを特徴とするビスカスカップリングの
    製造方法。
  9. 【請求項9】 金属板をプレス加工することにより、回
    転部材に対して同心状に取り付けられるトルク伝達部材
    を成形し、成形されたトルク伝達部材に熱処理が施され
    るビスカスカップリングの製造方法において、 前記トルク伝達部材のうち、前記プレス加工により残留
    応力が発生している部分を除去した後に、前記熱処理を
    行うことを特徴とするビスカスカップリングの製造方
    法。
  10. 【請求項10】 粘性流体室に注入される粘性流体に添
    加されるビスカスカップリング用添加剤において、 熱反応性の異なる組成成分を、内外周に複数層形成して
    なる粒子を有することを特徴とするビスカスカップリン
    グ用添加剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007278519A (ja) * 2007-07-27 2007-10-25 Jtekt Corp 駆動力伝達装置の製造方法

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