JPH11233249A - 電磁誘導加熱装置 - Google Patents

電磁誘導加熱装置

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JPH11233249A
JPH11233249A JP2945598A JP2945598A JPH11233249A JP H11233249 A JPH11233249 A JP H11233249A JP 2945598 A JP2945598 A JP 2945598A JP 2945598 A JP2945598 A JP 2945598A JP H11233249 A JPH11233249 A JP H11233249A
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JP
Japan
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magnetic
curie temperature
temperature
metal material
magnetic metal
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Application number
JP2945598A
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English (en)
Inventor
Tetsuya Kaji
徹也 鍛冶
Akira Kataoka
章 片岡
Kazuichi Okada
和一 岡田
Ryuji Nagata
隆二 永田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 使い勝手や自己温度制御機能に優れる電磁誘
導加熱調装置を提供すること。 【解決手段】 所定のキュリー温度を有する磁性金属材
料に前記磁性金属材料中のいずれの構成成分よりも酸化
されやすい成分を配合させて調整した溶射材料を用いて
溶射を行うことにより、非磁性材料からなる調理容器1
の裏面に発熱層3を形成させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電磁誘導加熱装置
に関して、使い勝手が良く、特に自己温度制御機能を有
する電磁誘導加熱装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、電磁誘導加熱装置は、熱伝導の悪
いセラミックスのトッププレートの下側に、加熱コイル
を配置し、前記加熱コイルで生じた磁力線により前記ト
ッププレート上の電磁誘導加熱装置用の調理器具の底面
内に渦電流を起こし、発熱させるようになっている。こ
のような電磁誘導加熱装置用の調理器具としては、鉄、
ステンレスなどの磁性金属材料を加工したもの、または
前記磁性金属材料とアルミニウムの非磁性金属材料を2
層、3層とクラッド材として加工したもの、さらにはア
ルミニウムなどの非磁性金属材料またはセラミックス材
料を用いた調理容器の裏面に鉄やステンレスなどの磁性
金属材料をろう付け、圧接、溶湯鍛造、または溶射法な
どの方法により一体化したものなどが加熱に使用されて
いた。しかし、これらの場合、通常調理において調理器
具の電気特性は一定であるため、同一状態の火力で加熱
が続けられ、加熱防止や自動温度調節のためには前記ト
ッププレートを介して配置された温度検知手段であるサ
ーミスタの出力で誘導加熱出力を増減して制御してい
た。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような従
来の加熱出力制御では、熱伝導の悪いセラミックスのト
ッププレートの裏面に設置されたサーミスタにより調理
器具底面の温度を検知し、調理面の温度制御が行われる
構造になっているため、本体側のサーミスタの検知温度
と調理面温度に大幅なずれが生じ、加熱設定の温度を精
度良く求めることが困難である。特に使用する調理器具
底面のそりや変形が大きい場合や、空炊きなどの異常使
用状態では完全に温度制御することができず、前記傾向
がより顕著に見られ一層困難となる。また、従来の温度
検知手段では、予熱時につい目を離して温度が上昇し過
ぎているのを知らずに調理物を入れて焦げ付かせてしま
うなど使い勝手の面においても問題があった。また、従
来の電磁誘導加熱装置に使用できる調理器具で耐熱塗装
やフッ素樹脂を主成分とする非粘着層を形成しているも
のについては、電磁誘導加熱装置本体が前記構造をとっ
ているため、そり・変形が大きい場合は調理面の温度が
耐熱塗装やフッ素樹脂を主成分とする非粘着層の耐熱温
度以上に上がってしまい、塗装面および非粘着層が剥が
れてしまうなどの耐久性に問題があった。
【0004】このため本発明者らは、既に所定のキュリ
ー温度(磁性金属材料において、磁性体から非磁性体へ
と変化するときの物理定数)を有する磁性金属材料を用
いた電磁誘導加熱装置用の調理器具を電磁誘導加熱装置
で加熱すると、下記に示すメカニズムにより調理器具の
温度制御が可能となることを見い出した。すなわち、調
理器具の温度がキュリー温度以下では加熱コイルから放
射された交番磁束は磁性金属材料に流れるが、その透磁
率は例えば、(表1)に示すように高いので交番磁束に
より誘起された渦電流は高周波電流の表皮効果により調
理器具の底側に集中し、調理器具の電気抵抗は等価的に
大きくなり、渦電流によって発生するジュール熱が大き
く誘導加熱の発熱量は大きくなる。
【0005】
【表1】
【0006】一方、キュリー温度以上では磁性金属材料
は磁性を失うので、(表1)に示すように透磁率が低く
なり渦電流の浸透深さ(表面電流が一定率に下がるまで
の表面からの深さ)が深くなり、磁性金属材料の底側表
面にのみ流れていた渦電流は磁性金属材料(キュリー温
度を越えているので磁性は失くなっている)の内部にも
流れるようになり、その結果、電気抵抗値が大幅に低下
するのでジュール熱も大幅に低下し誘導加熱の発熱量は
小さくなる。また、前記磁性金属材料を非磁性金属材料
(SUS304、アルミニウム、銅など)で構成された
調理容器の少なくとも加熱コイルに対向した部分に一体
形成したり、クラッド材を用いて、加熱コイル側に前記
磁性金属材料がくるように構成することにより、上述し
た自己温度制御機能をより効果的に作用することが可能
となる。
【0007】すなわち、常温から加熱を開始した場合
は、外側の磁性金属材料がキュリー温度に達するまでは
同様に、内側の非磁性金属材料に影響されずに大きな発
熱量で加熱動作が行われるが、キュリー温度に達すると
内側の非磁性金属材料にも交番磁束による渦電流が流
れ、全体としては調理器具の底側全体の大きな断面積の
増加による等価的な電気抵抗の減少が一段と進み、調理
器具自体が自動的に特性を変化し、誘導加熱の発熱量を
極端に小さくすることができる。
【0008】そして、調理器具の温度が低下しキュリー
温度以下になると、磁性金属材料が再び磁性を取り戻
し、大きな発熱量での加熱を再開する。このようなメカ
ニズムにより、キュリー温度を有する磁性金属材料を用
いると、温度制御することが可能となる。さらに、内側
の非磁性金属材料として外側の磁性金属材料と比較して
より小さい電気抵抗(アルミニウム、銅など)のものを
選べば、キュリー温度前後での電気抵抗差がさらに大き
くなり、加熱量の制御幅をさらに大きくでき、より一層
効果的に作用させることができる。
【0009】しかし、前記調理容器に所定のキュリー温
度を有する磁性金属材料を一体化する方法として、本発
明者らは安価で、複雑な形状にも対応でき、調理容器の
反りが少なく、接合強度の信頼性も高い溶射法を提案し
てきたが、前記溶射法は大気中で行うため所定のキュリ
ー温度を有する磁性金属材料が溶射中に酸化されてしま
い、溶射後に温度に対して磁性が変化しない磁性酸化物
が生成され、素材そのものが持っている所定のキュリー
温度によって磁性から非磁性に変わる特性が鈍化するた
め、調理器具自体で温度制御する機能が低下し、また負
荷投入時の温度復帰が低下するという課題を有してい
た。
【0010】そこで本発明の目的は、調理性能と使い勝
手が良く、自己温度制御機能に優れる電磁誘導加熱装置
を品質良く、安価に提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明は、所定のキュリー温度を有する磁性金属材料
に前記磁性金属材料中のいずれの構成成分よりも酸化さ
れやすい脱酸素剤を配合させて調整した溶射材料を用い
て溶射等を行うことにより、非磁性材料からなる調理容
器に発熱層を形成させ、前記発熱層は少なくとも加熱コ
イルに対向する部分に形成されることによりなされるも
ので、溶射時に窒素などの不活性ガスを用いたものであ
っても微量な酸素により所定のキュリー温度を得るのに
必要な構成成分の酸化が生じ、キュリー温度の高い磁性
体が生成され、所定のキュリー温度よりも高い側にシフ
トしてしまい、所定のキュリー温度付近での磁性から非
磁性への特性の変化が鈍化する。例えばFe−Ni系合
金の場合、この酸化を前記いずれの構成成分よりも酸化
されやすい成分(珪素、マンガンなど)を配合すること
で、それ自体を酸化させて、Feの酸化による強磁性体
の生成(Fe34:マグネタイト)を抑制し、溶射時の
微量な酸素による酸化をキュリー温度を決定する構成成
分とは無関係な非磁性の酸化物(二酸化珪素、二酸化マ
ンガンなど)とし、溶射後における所定のキュリー温度
付近での磁性体から非磁性体への特性の変化が鈍化する
ことをなくすことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】請求項1、2記載の発明は、所定
のキュリー温度を有する磁性金属材料に前記磁性金属材
料中のいずれの構成成分よりも酸化されやすい脱酸素剤
を配合等させて調整した溶射材料を用いて溶射を行うこ
とにより、非磁性材料からなる調理容器に発熱層を形成
させ、前記発熱層は少なくとも加熱コイルに対向する部
分に形成させたもので、上述したように、溶射時の微量
な酸素による酸化をキュリー温度を決定する構成成分と
は無関係な非磁性の酸化物とし、溶射後における所定の
キュリー温度付近での磁性体から非磁性体への特性の変
化が鈍化することをなくすことができる。
【0013】請求項3記載の発明は、所定のキュリー温
度を有する磁性金属材料の構成成分のうち、脱酸素機
能、即ち、酸化されやすい成分が酸化されても磁気特性
に著しい影響を与えない成分を持たせた磁性金属材料か
らなる溶射材料を用いて溶射を行うことにより、非磁性
材料からなる調理容器に発熱層を形成させ、前記発熱層
は少なくとも加熱コイルに対向する部分に形成させたも
のであり、例えばFe−Ni−Cr系合金の場合、Fe
よりも酸化されやすいCrを含有させることで溶射粒の
表面に非磁性である酸化クロムの被膜を形成し、主成分
であるFeの酸化を抑制し、所定のキュリー温度付近で
の磁性体から非磁性体への特性の変化が鈍化することを
防ぐことができる。また、Ni−Cu系合金の場合に
は、構成成分であるCu、Niが酸化されてもキュリー
温度に影響を与えない非磁性体が形成されるだけである
ので、所定のキュリー温度付近での磁性体から非磁性体
への特性の変化が鈍化することを防ぐことができる。
【0014】請求項4記載の発明は、少なくとも溶射範
囲を不活性ガスに還元ガスを混入したガスで覆いなが
ら、所定のキュリー温度を有する磁性金属材料を用いて
溶射を行うことにより、非磁性材料からなる調理容器に
発熱層を形成させ、前記発熱層は少なくとも加熱コイル
に対向する部分に形成されたものであり、不活性ガス中
に混入させた還元ガスが先に酸化されることにより、所
定のキュリー温度を有する磁性金属材料の構成成分の酸
化を抑制することができ、所定のキュリー温度付近での
磁性体から非磁性体への特性の変化が鈍化することを防
ぐことができる。さらに還元ガスだけでなく、不活性ガ
スがあることにより、還元ガスのみでは生じる燃焼や爆
発の心配もなくなり安全である。
【0015】
【実施例】(実施例1)以下に本発明の第1の実施例を
図1から図4により説明する。
【0016】図1において、1は内径320mm、底厚約
5mmのアルミニウム合金からなるホットプレート形状の
調理容器で、2は一般的に融点が約327℃、連続最高
使用温度が260℃と言われているPTFE(四フッ化
エチレン樹脂)からなる非粘着層であり、3は前記調理
容器底部の裏面に磁性金属材料を窒素ガスを用いた不活
性ガス雰囲気中におけるアーク溶射法によりコイルに対
向する部分にのみ均一の厚みで形成した厚さ約1mmの発
熱層である。なお、前記発熱層である磁性金属材料のキ
ュリー温度は240℃であり、溶射材は前記磁性金属材
料に脱酸素剤として珪素とマンガンを従来よりも多く配
合した線材である。アーク溶射法による発熱層形成前の
脱酸素剤である珪素とマンガンが従来レベルの組成を
(表2)に示す。4は発熱層3の上に発熱層3と同様な
条件でアーク溶射法により形成させた亜鉛からなる防錆
層1であり、5はフッ素系耐熱塗料からなる防錆層2で
ある。6はセラミックスのトッププレートであり、7は
加熱コイルであり、8はセラミックスのトッププレート
6を介して調理容器底面の温度を検知するサーミスタで
ある。
【0017】
【表2】
【0018】このような構成の調理器具を用いて調理容
器底面の温度特性を調べる実験を行った。前記構成にお
いて溶射前の発熱層の組成に脱酸素剤である珪素とマン
ガンを従来の2倍、3倍、5倍としたもの溶射材とし、
窒素ガスを用いたアーク溶射法により作製したものをそ
れぞれ本発明品1、本発明品2および本発明品3とす
る。なお参考のために脱酸素剤を従来レベルにしたもの
を参考品1とし、また脱酸素剤が従来レベルのもので、
大気中においてアーク溶射を行ったものを参考品2とし
て作製し、実験を行った。実験方法は、市販の電磁誘導
加熱装置を用いて調理容器を加熱し、温度が安定するま
での調理容器内面の温度変化を記録する。本発明品1〜
3、および参考品1〜2の溶射前の素材である磁性金属
材料の組成を(表3)に示し、その時の実験結果を(表
4)に示す。またその時の温度変化と入力値の変化、お
よび温度−入力特性を図2、図3および図4に示す。
【0019】
【表3】
【0020】
【表4】
【0021】図2より明らかなように、従来レベルの脱
酸素剤を含むもので窒素ガスを使用して、アーク溶射を
行ったものである参考品1では、ある一定の温度で安定
しているが、発熱層形成前の所定のキュリー温度よりも
高めに制御され、磁性金属材料としての特性はあるもの
の、全く酸化されてないものと比較すると特性が鈍くな
っている。そのため、高精度を要求される温度制御が必
要なものについては優位性を示さない。このことは、図
3より安定時には、完全な非磁性体とはならずに、入力
が多く入って所定のキュリー温度よりも高くなって安定
していることからも、酸化による影響が明らかである。
さらに図4の温度−入力特性を見れば明らかであり、本
発明品1〜3においては構成成分であるFeの酸化が起
こっていないため、キュリー温度付近での磁性体から非
磁性体への変化がシャープにでており、安定時の温度で
ある放熱曲線との交点がほぼキュリー温度と一致してい
るが、参考品1においては、磁性体から非磁性体への変
化が鈍化している。
【0022】また、従来レベルの脱酸素剤を含むもの
で、大気中においてアーク溶射を行ったものである参考
品2においては、キュリー温度を越えても温度は安定せ
ずに、本体側のサーミスタにより温度制御がされてい
る。そのため最高温度が400℃近くにも達し、安定時
の平均温度も340〜360℃と高かった。これに対し
て本発明品である脱酸素剤である珪素とマンガンを従来
よりも多く含んだもので、窒素ガスを使用してアーク溶
射を行ったものについては最高温度と安定温度が同じで
あり、キュリー温度も240℃で制御され、参考品1お
よび参考品2との温度変化の比較で優位性を示してい
る。また、(表4)で明らかなように溶射時に形成され
る酸化物について、参考品1および参考品2では、わず
かに残留する酸素によりキュリー温度の高い磁性体の酸
化物(Fe34:マグネタイト)が一部生成されてお
り、このため一部の磁性体(酸化物)は所定のキュリー
温度に達しても非磁性体とはならずにさらに加熱され、
入力も本発明品1〜3よりも多く入り、調理器具として
は図4の放熱曲線との交点である受熱と放熱のバランス
のとれたところで安定しているため、Feが酸化されて
いない発熱層を有するものよりも安定温度が高めにシフ
トするとともに、磁性体から非磁性体への特性の変化が
鈍化していると考えられる。
【0023】しかし、本発明品1〜3においては、酸化
物は形成されているものの非磁性体の酸化物である二酸
化珪素および二酸化マンガンなどであるため、磁性金属
材料としての特性に影響は与えていないと考えられ、脱
酸素剤としての効果が現れている。また、構成成分であ
る珪素およびマンガンが酸化されずに過剰に残留して
も、所定のキュリー温度および磁性金属材料としての特
性に影響を与えるものではない。さらに、本実施例にお
いて、従来よりも脱酸素剤を少なくとも2倍以上含む構
成のものであれば酸化による磁性金属材料としての特性
が鈍くなることが防止され、十分な効果が得られてい
る。
【0024】(実施例2)以下に本発明の第2の実施例
を示す。
【0025】実施例1と同様な構成の調理器具で、異な
るのは実施例1において脱酸素剤である珪素とマンガン
を所定のキュリー温度を有する磁性金属材料中に配合し
て調整した溶射材ではなく、所定のキュリー温度を有す
る磁性金属材料の表面に前記脱酸素剤で被覆処理を施し
たものを溶射材として、発熱層を形成したものである。
【0026】上記のように構成された電磁誘導加熱装置
用器具では、被覆処理された脱酸素剤が所定のキュリー
温度を有する磁性金属材料よりも酸化されやすく、かつ
酸化物が形成されても非磁性体の酸化物である二酸化珪
素および二酸化マンガンなどであるため、磁性金属材料
としての特性に影響は与えない。さらに、磁性金属材料
中に脱酸素剤を配合するよりも簡単にかつ低コストで作
製することができ、実施例1よりも構成成分の酸化をよ
り確実に防ぐことができ、酸化による磁性金属材料とし
ての特性が鈍くなることが確実に防止することができ
る。
【0027】(実施例3)以下に本発明の第3の実施例
を示す。
【0028】実施例1と同様な構成の調理器具で、異な
るのは実施例1においてFe−Ni系合金(36%N
i、残りFe)からなる発熱層3である磁性金属材料を
Ni−Cr−Fe系合金(50%≧Ni、15%≧C
r、残りFe)からなる磁性金属材料を用いて溶射した
ものであり、これを本発明品4〜5とする。発熱層は、
窒素ガスを用いた不活性ガス雰囲気中におけるアーク溶
射法によりコイルに対向する部分にのみ均一な厚みで形
成した厚さ約1mmのものである。本発明品4〜5におけ
る発熱層の溶射前後における構成成分を分析した結果を
(表5)に示す。
【0029】
【表5】
【0030】上記のように構成された電磁誘導加熱装置
用器具について、CrはFeよりも酸化されやすく、か
つ脱酸素剤である珪素やマンガンよりも酸素と反応しや
すいため、素材に脱酸素剤を混入させる必要もなく、ま
た(表5)からわかるように、Crは溶射粒の表面に非
磁性体である酸化クロムの被膜を形成し主成分であるF
e、Niの酸化を抑制し所定のキュリー温度付近での磁
性体から非磁性体への特性の変化が鈍化することを防ぐ
ことができる。さらに、本発明品5においては、溶射素
材にあらかじめ酸素と反応する以上のCrを添加させる
ことで溶射時の酸化をCrを酸化させることでFeの酸
化を抑制し、かつその残留成分により、Fe−Ni−C
r系合金となり、溶射前のキュリー温度とは異なる発熱
層を得ることができる。
【0031】また、発熱層3である磁性金属材料をNi
−Cu系合金(50%≧Cu、残りNi)からなる磁性
金属材料を用いて同様に溶射したものについては、従
来、Fe−Ni系合金に見られるような磁性金属材料の
溶射時における酸化の問題は、主成分であるFeが酸化
され、キュリー温度が高い磁性体が生成されることであ
ったが、本発明においてはFeの代わりにCuを用いて
いる。磁性金属材料としてNi−Cu系合金は既に知ら
れているが、溶射時において主成分であるCuの酸化物
が生成しても非磁性体であるため所定のキュリー温度付
近での磁性体から非磁性体への特性の変化に影響を与え
ることはないため、溶射材としては適していることがわ
かる。さらに、脱酸素剤を添加することにより、Cuそ
のものの酸化も抑制することができる。
【0032】(実施例4)以下に本発明品の第4の実施
例を示す。
【0033】実施例1と同様な構成の調理器具で、異な
るのは実施例1においてFe−Ni系合金(36%N
i、残りFe)からなる発熱層3である磁性金属材料を
形成する際に、少なくとも溶射範囲を不活性ガスに還元
ガスを混入したガスで覆いながらアーク溶射法によりコ
イルに対向する部分にのみ均一な厚みで形成したもので
あり、厚さ約1mmのものである。還元ガスには水素を用
い窒素ガスと水素ガスとの比率は9:1である。
【0034】上記のように構成された電磁誘導加熱装置
用器具において、従来、酸化防止のために、脱酸素剤あ
るいはCrなどを添加していたが、本発明品において
は、還元ガスを先に酸化させることでFeの酸化を抑制
している。水素は酸素と反応することで水となるが、溶
射時の高温で気化し、発熱層には、酸化物としては何も
存在はすることはないため、溶射前後における構成成分
の変化が全くない。さらに、前記脱酸素剤およびCrを
溶射素材に添加する方法においては、前記添加成分が溶
射材料内に一様に分布しない場合もあり、溶射時の発熱
層に対する酸化抑制が不安定であるが、本発明において
は確実に所定のキュリー温度および必要とされる特性を
得ることができる。また、還元ガスだけでなく、不活性
ガスがあることにより、還元ガスのみでは生じる燃焼や
爆発の心配もなくなり安全である。
【0035】以上、本発明の実施例について示したが本
発明の実施例においては、金属製の調理容器としてアル
ミニウム合金を使用したが、特にこれに限定されるもの
ではなく他の非磁性ステンレス、銅およびガラスさらに
土鍋などでも良い。また本発明の実施例では、アーク溶
射法を用いたが、特にこれに限定されるものではなく、
ガスプラズマ溶射法あるいはガス溶射法でも良い。さら
に不活性ガスにおいても窒素ガスに限らず、アルゴン、
ヘリウムでもかまわない。さらに真空中であればなおさ
ら良い。また、溶射材料においても線材に限らず粉体材
料でも良い。また、加熱コイルに対向する部分に形成さ
せた発熱層は均一な厚みに限らず、少なくとも加熱コイ
ルに対向する部分であれば不均一な厚みでもかまわな
い。
【0036】
【発明の効果】以上のように、請求項1記載の発明によ
れば、所定のキュリー温度を有する磁性金属材料中のい
ずれの構成成分よりも酸化されやすい脱酸素剤を配合す
ることで、それ自体を酸化させ、所定のキュリー温度付
近での磁性体から非磁性体への特性の変化が鈍化する要
因の一つである酸化による強磁性体の生成を抑制し、溶
射時の微量な酸素による酸化をキュリー温度を決定する
構成成分とは無関係な非磁性の酸化物とし、溶射後にお
ける所定のキュリー温度付近での磁性体から非磁性体へ
の特性の変化が鈍化することをなくすことができるの
で、調理性能および負荷投入時の温度復帰性に優れ、か
つ安定温度のばらつきを抑えた高品質の自己温度制御機
能を有する電磁誘導加熱装置を提供することができる。
【0037】また、請求項2記載の発明によれば、所定
のキュリー温度を有する磁性金属材料中のいずれの構成
成分よりも酸化されやすい成分を溶射材に被覆処理する
ことで、それ自体を酸化させ、所定のキュリー温度付近
での磁性体から非磁性体への特性の変化が鈍化する要因
の一つである酸化による強磁性体の生成を抑制し、溶射
時の微量な酸素による酸化をキュリー温度を決定する構
成成分とは無関係な非磁性の酸化物とし、溶射後におけ
る所定のキュリー温度付近での磁性体から非磁性体への
特性の変化が鈍化することをなくすことができるので、
調理性能および負荷投入時の温度復帰性に優れ、かつ安
定温度のばらつきを請求項1記載の手段よりも確実に抑
えることのできる高品質の自己温度制御機能を有する電
磁誘導加熱装置を簡単にかつ低コストで提供することが
できる。
【0038】また、請求項3記載の発明によれば、所定
のキュリー温度を有する磁性金属材料中の構成成分のう
ち、酸化されやすい成分、例えば、Feよりも酸化され
やすいCrを含有させることで、溶射粒の表面に非磁性
である酸化クロムの被膜を形成し、主成分であるFeの
酸化を抑制し、所定のキュリー温度付近での磁性体から
非磁性体への特性の変化が鈍化することを防ぐことがで
き、また、Cu−Ni系合金のような場合には、構成成
分であるCu、Niが酸化されてもキュリー温度に影響
を与えない非磁性体が形成されるだけであるので、所定
のキュリー温度付近での磁性体から非磁性体への特性の
変化が鈍化することを防ぐことで、調理性能、負荷投入
時の温度復帰性および耐久性に優れ、かつ安定温度のば
らつきを抑えた高品質の自己温度制御機能を有する電磁
誘導加熱装置を提供することができる。
【0039】また、請求項4記載の発明によれば、不活
性ガス中に混入させた還元ガスが先に酸化されることに
より、所定のキュリー温度を有する磁性金属材料の構成
成分の酸化を抑制することができ、所定のキュリー温度
付近での磁性体から非磁性体への特性の変化が鈍化する
ことを防ぎ、さらに還元ガスだけでなく、不活性ガスが
あることにより、還元ガスのみでは生じる燃焼や爆発の
心配もなくなり安全性も向上することで、調理性能が優
れ、かつ安定温度のばらつきを抑えた高品質の自己温度
制御機能を有する電磁誘導加熱装置をCrや脱酸素剤を
用いたものよりも安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における電磁誘導加熱装置の要
部断面図
【図2】同、電磁誘導加熱装置の調理面における時間−
温度特性図
【図3】同、電磁誘導加熱装置の調理面における時間−
入力特性図
【図4】同、電磁誘導加熱装置の調理面における温度−
入力特性図
【符号の説明】
1 調理容器 2 非粘着層 3 発熱層 4 防錆層1 5 防錆層2 6 トッププレート 7 加熱コイル 8 サーミスタ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 永田 隆二 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被加熱物を収納する調理容器と、前記調
    理容器を誘導加熱するための加熱コイルとを備え、前記
    調理容器は、非磁性材料からなる層と、少なくとも前記
    加熱コイルに対向する部分に溶射された発熱層とを有
    し、前記溶射に用いられる材料は、所定のキュリー温度
    を有する磁性金属材料に脱酸素剤を配合して形成されて
    なる電磁誘導加熱装置。
  2. 【請求項2】 被加熱物を収納する調理容器と、前記調
    理容器を誘導加熱するための加熱コイルとを備え、前記
    調理容器は、非磁性材料からなる層と、少なくとも前記
    加熱コイルに対向する部分に溶射された発熱層とを有
    し、前記溶射に用いられる材料は、所定のキュリー温度
    を有する磁性金属材料を脱酸素剤で被覆処理して形成さ
    れてなる電磁誘導加熱装置。
  3. 【請求項3】 被加熱物を収納する調理容器と、前記調
    理容器を誘導加熱するための加熱コイルとを備え、前記
    調理容器は、非磁性材料からなる層と、少なくとも前記
    加熱コイルに対向する部分に溶射された発熱層とを有
    し、前記溶射に用いられる材料は、所定のキュリー温度
    を有する磁性金属材料自体に脱酸素機能を持たせて形成
    されてなる電磁誘導加熱装置。
  4. 【請求項4】 被加熱物を収納する調理容器と、前記調
    理容器を誘導加熱するための加熱コイルとを備え、前記
    調理容器は、非磁性材料からなる層と、少なくとも前記
    加熱コイルに対向する部分に溶射された発熱層とを有
    し、前記発熱層は、少なくとも溶射範囲を不活性ガスに
    還元ガスを混入したガスで覆いながら、所定のキュリー
    温度を有する磁性金属材料を溶射して形成されてなる電
    磁誘導加熱装置。
JP2945598A 1998-02-12 1998-02-12 電磁誘導加熱装置 Pending JPH11233249A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP4701558B2 (ja) * 2001-08-08 2011-06-15 パナソニック株式会社 電磁調理器用即席食品容器

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