JPH11225795A - 細胞障害マーカー - Google Patents

細胞障害マーカー

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JPH11225795A
JPH11225795A JP10046349A JP4634998A JPH11225795A JP H11225795 A JPH11225795 A JP H11225795A JP 10046349 A JP10046349 A JP 10046349A JP 4634998 A JP4634998 A JP 4634998A JP H11225795 A JPH11225795 A JP H11225795A
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Japan
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pgam
isozyme
cytotoxicity
reagent
measuring
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JP10046349A
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Yukio Iemori
幸男 家森
Katsumi Ikeda
克巳 池田
Koji Uchida
浩二 内田
Yoshiyuki Taniguchi
嘉之 谷口
Takeshi Matsuo
雄志 松尾
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Oriental Yeast Co Ltd
Original Assignee
Oriental Yeast Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 エノラーゼ、ピルビン酸キナーゼ、NA
DH、乳酸デヒドロゲナーゼを含有する試薬を用いて、
細胞培養液中のホスホグリセリン酸ムターゼ(PGA
M)濃度を測定する。 【効果】 各種細胞の障害マーカー及び/又は細胞毒性
マーカーとして有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、細胞障害及び/又
は細胞毒性の測定システムに関するものであって、例え
ば虚血障害等による細胞障害の判断や測定に利用するこ
とができる。
【0002】
【従来の技術】ホスホグリセリン酸ムターゼ(Phosphog
lyceric acid mutase)(PGAMということもある:
EC5.4.2.1)は、解糖系酵素の一つで、2,3
−ビスホスホグリセリン酸(2,3-bisphosphoglycerate
: Glycerate-2,3-P2)の存在下、2−ホスホグリセリ
ン酸(2-phosphoglycerate : Glycerate-2-P)と3−ホ
スホグリセリン酸(3-phosphoglycerate : Glycerate-3
-P)の相互交換を触媒する。
【0003】哺乳動物にはPGAMをコードする遺伝子
が二つ存在する。Mサブユニット(分子量約3万)の遺
伝子は成人の骨格筋、心筋で発現され、これらの組織で
はMMホモダイマー(M型PGAM、M−PGAM、P
GAM−MM、PGAM−M又はM型アイソザイムとも
いう)が存在する。Bサブユニット(分子量約3万)の
遺伝子は成人の脳、肝、腎および赤血球で発現され、こ
れらの組織ではBBホモダイマー(B型PGAM、B−
PGAM、PGAM−BB、PGAM−B又はB型アイ
ソザイムともいう)が存在する。従って、M型PGAM
は筋肉特異的アイソザイムに、またB型PGAMは非筋
肉型あるいは脳型アイソザイムに分類される。Mおよび
Bの両サブユニットの遺伝子は心筋で特異的に発現され
ており、この組織ではB型およびM型PGAMに加えて
MBヘテロダイマー(MB型PGAM、MB−PGA
M、PGAM−MB又はMB型アイソザイムともいう)
も存在する。
【0004】YatesらはPGAMアイソザイムを分別定
量できるisoelectric focusingを使って、正常血漿中の
PGAM活性が専らB型アイソザイムに由来することを
示した。また、Markertは正常ヒト胎児および成人の脳
では、主にPGAMのB型アイソザイムが存在するが、
脳腫瘍組織ではMB型およびM型アイソザイムが認めら
れ、発現レベルが腫瘍の悪性度と相関すること、それに
対して筋肉特異的酵素であるクレアチンキナーゼ(Crea
tine kinase:CK)ではそのような変化は認められないこ
とを示した。しかし、これまで、PGAMやそのアイソ
ザイムの利用についてはあまり研究が進行しておらず、
本発明者らが先に特許出願したB型PGAMの脳卒中マ
ーカー(血清試料)としての利用が報告されている程度
である(特開平8−322595)。また、本発明のよ
うに細胞レベルにおける酸素量とPGAMとの関連につ
いての報告もなく、ましてや細胞障害や細胞毒性マーカ
ーとしての利用に至っては全く何も知られていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】虚血等低酸素状態にな
ったり、pHや温度等の各種条件の変化によっても細胞
障害がひき起こされることが知られており、細胞障害や
細胞毒性を正確且つ迅速に測定するシステムの開発が強
く求められている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記した当業
界の要望に応える目的でなされたものであって、各方面
から研究の結果、低酸素状態では細胞培養液中のPGA
M値が上昇することをはじめて見出し、また、そのPG
AMの測定にあたり、全PGAMの測定のほか、そのア
イソザイムの測定によっても低酸素状態の測定が可能で
あって細胞の傷害度が判るだけでなく、各種条件の変化
による細胞の障害度が判るという新規にして有用な知見
を得、更に研究を行い、遂に完成されたものである。
【0007】すなわち、本発明者らは、PGAM(全P
GAM、B型PGAM、M型PGAM)が細胞の傷害マ
ーカーや細胞の毒性マーカーとして有用であることをは
じめて明らかにしただけでなく、細胞や細胞培養液中の
PGAMを測定することによって細胞の低酸素状態やそ
の他の条件の変化やそれによる傷害の程度を判定するこ
とができ、更に、PGAM、そのアイソザイムの測定方
法として、本発明者らが先に開発した方法(特開平8−
322595)が適用可能なことも確認して、本発明の
完成に至ったものである。
【0008】以下、本発明を詳しく説明するが、本発明
において、酸素、pH、温度、各種薬物等の各因子の変
化によって細胞が障害を受ける場合、これらの因子を細
胞毒性と総称する。したがって、細胞障害マーカーは間
接的に細胞毒性マーカーとなるものであって、両者は表
裏一体をなすものである。なお、本発明において、酸素
とは大気中の酸素含量未満〜無酸素の状態を指すもので
ある。
【0009】本発明に係るPGAMの測定方法を、先
ず、B型アイソザイムについて述べる。B型PGAMを
測定する方法は、サンプルをPGAM阻害剤によって処
理し、特定のアイソザイムを失活せしめた後、残存のP
GAM活性を測定することからなるものである。例えば
PGAM阻害剤として四チオン酸を用いた場合、M型ア
イソザイムはほぼ100%失活し、MB型は約50%失
活し、B型はほとんど失活しない。したがって、血清に
四チオン酸を添加してM型アイソザイムを失活させた
後、残存のPGAM活性を測定することにより、B型ア
イソザイムを分別定量することができるのである。
【0010】なお、PGAMの精製アイソザイムを用い
た阻害実験によれば、四チオン酸処理によってMB型は
50%しか失活せず、50%は活性が残存するが、現実
において、正常血清及び脳組織のPGAM活性のほとん
どは、B型アイソザイムによるものであるので、MB型
アイソザイムの残存活性は、生体サンプルにおいては、
これを無視することができる。
【0011】PGAM阻害剤としては、酸化剤、SH試
薬等PGAM又はそのアイソザイムの活性を選択的に阻
害しうる物質がすべて使用できる。その非限定例として
は、ポリチオン酸及び/又はその誘導体が挙げられる。
ポリチオン酸は、三〜六チオン酸がいずれも使用可能で
あって、その誘導体としてはカリウム塩、ナトリウム塩
等が使用可能であり、好適例のひとつとして、四チオン
酸カリウムが例示される。
【0012】本発明に係る測定方法は、試料に四チオン
酸カリウム等の阻害剤を作用させてPGAM−Mを失活
させ(PGAM−MBの活性は上記したように本生体測
定系においては無視できる)、残存のPGAM−Bを測
定試薬を用いて測定するものである。
【0013】その測定原理は、下記表1に記載したよう
に、M型PGAMアイソザイムの阻害剤である四チオン
酸カリウムを用いてM型アイソザイムを失活せしめた
後、次のようにして活性測定を行うことからなるもので
ある。すなわち、2,3−ビスホスホグリセリン酸(Gl
ycerate-2,3-P2)の存在下、PGAM−Bによって、3
−ホスホグリセリン酸(Glycerate-3-P)を2−ホスホ
グリセリン酸(Glycerate-2-P)とし、これをエノラー
ゼによりPEPとH2Oとする。次いでPEPを、AD
Pの存在下ピルビン酸キナーゼ(PK)によりピルビン
酸(Pyruvate)とATPとにし、得られたピルビン酸
に、NADHの存在下、乳酸デヒドロゲナーゼ(LD
H)を作用させ、NADHの減少をレートアッセイ(ra
te assay)するものである。
【0014】
【表1】
【0015】NADHの減少は市販の測定機器によって
容易に測定することができ、PGAM−Bが正確に且つ
迅速に測定できる(全PGAMも同様である)。しかも
後述する実施例からも明らかなように、細胞培養液サン
プル中のPGAM値は、高酸素よりも低酸素状態で培養
した細胞の培養液の方が高く、しかもこの現象は各種細
胞において広範に認められ且つそれぞれの細胞において
測定しやすいPGAM(全PGAM、B型PGAM、M
型PGAM又は他のアイソザイム)を選んでその値を測
定すればよいことから、PGAMの測定によって細胞の
低酸素状態(虚血性等)の測定が可能であることが判明
し、PGAMは細胞障害マーカー、特に、虚血障害ない
し低酸素障害を受けた細胞の障害マーカーとしてきわめ
て好適であることも実証された。このようなことは従来
全く知られておらず、PGAMは新規な細胞障害マーカ
ーと認められる。また、本発明によれば、低酸素以外の
各種細胞毒性に起因する細胞障害も測定できるので、極
めて広範な細胞障害マーカーとして利用できるし、この
マーカーは、換言すれば、細胞毒性マーカーとしても利
用できる。
【0016】また、本発明によれば、エノラーゼ、ピル
ビン酸キナーゼ(PK)、NADH、乳酸デヒドロゲナ
ーゼ(LDH)、PGAM阻害剤(四チオン酸カリウム
等:PGAM−B測定の場合のみ)を含有し、更に必要
に応じて、基質、緩衝液を含有したPGAM−B測定試
薬を提供することができ、これは低酸素状態測定用試薬
として利用できるだけでなく、低酸素以外の各種細胞毒
性測定用試薬として利用することもできる。本試薬は、
後記実施例に例示したように試薬1及び試薬2としてキ
ットとして市販することも可能である。
【0017】以上、PGAM−Bの測定について述べた
が、全PGAM(単にPGAM又はT−PGAMという
こともある)も、B型アイソザイムと同じ行動を示し、
T−PGAMやPGAM−MもPGAM−Bと全く同様
に低酸素状態の測定や、その他細胞に害作用を与える物
理的、化学的、生物的要因の測定(つまり細胞毒性の測
定)や、細胞障害及び/又は細胞毒性マーカーに利用す
ることができる。
【0018】T−PGAMの測定方法も、阻害剤を使用
しないだけで、他はB型アイソザイムの場合と全く同一
であって(その測定原理も、表1に示した測定原理の
内、阻害剤を使用する(1)を除き、そして(2)のP
GAM−BをT−PGAMに代えた点を除き、全く同一
である)、NADHの減少をレートアッセイ法で測定す
ればよく、B型アイソザイムの場合と同様に、T−PG
AMの測定も細胞の低酸素状態その他細胞毒性の測定に
利用することができる。この場合は、阻害剤を使用する
ことなく測定することができる。またM型アイソザイム
については、T−PGAM値からB−PGAM値を差し
引けばその値を得ることができる。
【0019】T−PGAMの測定試薬及び同キットにつ
いても、阻害剤を使用する点を除き、B型アイソザイム
の場合と全く同一であり、上記理由と同じ理由により、
これ(ら)も低酸素状態ないし細胞障害(毒性)の測定
用試薬として極めて有効に利用することができる。M−
PGAMの測定試薬及び同キットも同様である。
【0020】本発明を実施するには、細胞培養液及び/
又は細胞粉砕物あるいはその分離液について、上記した
方法にしたがってPGAMを測定すればよく、例えば次
のとおりである。
【0021】(平滑筋細胞の培養)雄性8〜10週齢S
HRSPの胸部大動脈よりエクスプラント法(explant
method)により平滑筋細胞を採取し、10%ウシ胎児血
清を含むDMEM培地で培養する。 (アストロサイトの培養)胎生15日齢SHRSPのラ
ット脳よりトリプシン消化法(trypsin digestion meth
od)により培養アストロサイトを採取し、10%ウシ胎
児血清を含むDMEM培地で培養する。
【0022】(低酸素実験)これらの細胞は、0.01
〜1%、好ましくは0.1%ウシ胎児血清にて12〜6
0時間程度(細胞によって異なるが、通常は48時間)
培養した後、各種酸素濃度雰囲気下で(例えば20%酸
素又は1%酸素下)一定期間(例えば2、4、8日間)
培養して培養液を得る。これらの培養液について、PG
AMの測定を行う。その場合、いずれの培養液について
も同一のPGAMを測定してもよいが、例えばアストロ
サイト培養液のように脳由来の細胞液の場合には、B型
アイソザイムを測定する等、それぞれの細胞に適したP
GAM、そのアイソザイムの種類を選択してもよい。以
下、本発明の実施例について述べる。
【0023】
【実施例1】雄性8〜10週齢SHRSPの胸部大動脈
よりエクスプラント法により平滑筋細胞を採取し、これ
を培養して培養平滑筋細胞を調製した。
【0024】(エクスプラント手順) (1)クリーンベンチ内に解剖道具をおき、60mmペ
トリ皿にPBSを分注した。 (2)ラットをペントバルビタール麻酔した後、腹部を
剃毛し、次いでTMSシート上に仰向けにおいた。 (3)腹部大動脈から脱血(シリンジによる採血)後、
胸腔を開き、大動脈を横隔膜上から大動脈弓に向かって
採取し、PBSの入った60mmペトリ皿に移した。
【0025】(クリーンベンチ内手順) (4)大動脈外膜のルーズ結合組織をピンセットにて除
き、小ハサミで縦に大動脈を切開した。 (5)付着した血液等を洗い落とした後、コラーゲナー
ゼ(1mg/ml)液が5ml入った15ml容試験管
に移してCO2インキュベーター内で20分間インキュ
ベートした(SP、SRは25分間、WKYは35分間
程度)。 (6)インキュベート終了後、大動脈をPBSの入った
ペトリ皿に移して軽く洗浄した。ペトリ皿の蓋の方に大
動脈を移し、内腔を上にして開いた。綿棒をPBSに浸
して内膜面を軽くこすり、内皮の残りをとった。一端に
メスで軽く切れ目を入れ、切れ目より時計鉗子にて内中
膜を外膜から剥離した(この作業は、組織を乾燥させな
いよう、手早くする必要があった)。
【0026】(7)中膜組織をメスにて1mm角程度に
細切した(この作業も、組織を乾燥させないように、手
早くする必要があった。) (8)綿棒の先に26G針で各組織片をひろい、25c
2フラスコの底にはりつけた。その際、1つのフラス
コに30片程度に組織片をはりつけた(この作業も手早
く行った)。 (9)組織片に培地がかからないように5mlのDME
M−F(+)培地を加えた。 (10)フラスコにキャップをし、組織片をフラスコ面
に接着させるため立てた状態でCO2インキュベーター
内においた。組織片が接着後(10〜20分後;組織片
の周囲のPBSが少なくなったら可)、フラスコをゆっ
くり横にして組織片を培地につけた(組織片が乾燥しな
いように注意した)。 (11)5〜7日間静置し、遊走状態を観察した。遊走
したものは培地を取りかえ、更に静置した。 (12)充分量の細胞が遊走、繁殖したら継代培養(pa
ssage)を行った(組織片は可及的に除去するのが良い
が、残っていても構わない。)。
【0027】
【実施例2】実施例1で調製した培養細胞(5〜10代
継代した細胞)を0.1%ウシ胎児血清にて48時間培
養した後、20%酸素又は1%酸素雰囲気下で、2、
4、8日間培養し、それぞれ培養液を得、試料とした。
これらの試料(各群ともにn=6)について、下記表2
の作業手順、条件にしたがい、全PGAM(T−PGA
M)値を日立7150自動分析器を用いて測定した。
【0028】
【表2】
【0029】測定試薬としては、下記組成を有する試薬
1(R−1)及び試薬2(R−2)を用いた。
【0030】 (試薬1):R−1 (ml) TEA緩衝液 (0.1mol/l、pH7.6) 40.32 MgSO4 (0.1mol/l) 0.54 NADH (14mmol/l) 0.90 ADP (21mmol/l) 1.80 G−2,3−P2 (7mmol/l) 0.90 LDH (5mg蛋白質/ml) 0.18 PK (2mg蛋白質/ml) 0.18 エノラーゼ (10mg蛋白質/ml) 0.18 (合計:45.00ml)
【0031】 (試薬2):R−2 (ml) G−3−P (95mmol/l) 3.00 TEA緩衝液 (0.1mol/l,pH7.6) 5.20 (合計:8.20ml)
【0032】試薬1(R−1)250μlと、培養液サ
ンプル5μlを混合し、5分間放置した。次いで試薬2
(R−2)を用いてPGAMの活性を測定した。試薬2
(R−2)にはグリセリン酸−3−リン酸(基質)が含
まれているので、試薬2を41μl添加することによっ
て反応を開始せしめた(基質スタート)。試薬2の添加
から約1.5分後に測定を開始した。
【0033】測定には日立7150自動分析装置を用
い、アッセイコードをRATE−A:32−39、測定
温度を37℃に設定し、約1.5分NADHの減少によ
る吸光度A340nmの減少を測定した。なお、副波長
は405nmで測定を行った。得られた結果を下記表3
に示す。なお、同時に、従来から知られている細胞障害
マーカーLDH(乳酸デヒドロゲナーゼ)の値も併記し
た。
【0034】
【表3】
【0035】上記したSHRSP由来培養平滑筋細胞を
用いた低酸素暴露における細胞障害試験の結果から明ら
かなように、低酸素暴露において全PGAM値(U/L
/mg蛋白質)は高酸素暴露の場合よりも高く、PGA
Mは、細胞障害におけるマーカーとして利用できること
が明らかとなり、むしろLDHよりも更に感度の高いマ
ーカーであることが確認された。
【0036】
【実施例3】胎生15日齢SHRSPのラット脳よりト
リプシン消化法によって培養アストロサイトを採取し、
これを培養して培養アストロサイト細胞を調製した。
【0037】(アルコール消毒下) (1)胎生15〜22日齢ラットの脳を取り出した。 (2)ペトリ皿内のPBS(−)の中に入れた。
【0038】(クリーンベンチ内処理) (3)硬膜をはがした。脳をきれいにした後、細切し
た。 (4)細切する過程でペトリ皿を3回程度取り換えてき
れいにした。 (5)抗生物質(ストレプトマイシン及びペニシリン)
を通常使用の10倍程度添加して5分間放置した(2
回)。 (6)細切片を0.25%トリプシン処理した(37
℃、5〜7分)。 (7)パスツールピペットを用いて組織片が崩れる程度
に(10〜20回)ピペッティングをした。 (8)12,000rpmで5分間遠心処理して、ペレ
ットを採取した。
【0039】(9)DMEM+10% FCS培地を加
え、トリプシン反応を止めた。 (10)12,000rpmで5分間遠心処理して、ペ
レットを採取した。 (11)脳1個あたり6ml培地で25cm2フラスコ
で培養した。
【0040】
【実施例4】上記細胞培養液についてB−PGAMの測
定を行うに先立ち、四チオン酸カリウムのPGAM−B
及びPGAM−Mに対する影響を自動分析法によって検
討した。試料としては、B型及びM型の標準品(いずれ
もプール血清ベース)を用い、生理食塩水で希釈して1
/1〜1/8のサンプルを用意した。これらのサンプル
に各種濃度の四チオン酸カリウムを添加し、5分間反応
させた後、B型及びM型PGAM量を自動分析法を利用
して測定した。
【0041】実施例2の試薬を用い、自動分析法によっ
てPGAM−B、PGAM−M量をそれぞれ測定し、下
記表4の結果を得た。その結果から明らかなように、四
チオン酸カリウムによってM型アイソザイムのみが特異
的に失活し、B型アイソザイムは全く影響されないこと
が判った。
【0042】
【表4】
【0043】
【実施例5】実施例3で調製した培養細胞(5〜10代
継代した細胞)を0.1%ウシ胎児血清にて48時間培
養した後、20%酸素又は1%酸素雰囲気下で、2、
4、8日間培養し、それぞれ培養液を得、試料とした。
【0044】この試料について、M型PGAMアイソザ
イム阻害剤として四チオン酸カリウムを用いて、PGA
M活性の測定を行った。測定試薬としては、実施例1で
使用したPGAM活性測定試薬(R−1)に2.25m
M(最終濃度1.9mM)となるように四チオン酸カリ
ウム(分子量302.4)を添加溶解し(R−1)試薬
22mlに四チオン酸カリウムを15mg溶解)、M型
を失活させ、B型PGAM活性測定試薬を調製した。
【0045】試薬1(R−1)に四チオン酸カリウムを
添加溶解した液250μlと、サンプル5μlを混合
し、5分間放置した。その間にサンプル中のM型(及び
MB型)PGAMが失活、阻害されるので、以下、試薬
2(R−2)を用いてB型PGAM値(U/L/mg蛋
白質)を測定し、得られた結果を表5に示した。
【0046】
【表5】
【0047】上記したSHRSP由来培養アストロサイ
ト細胞を用いた低酸素暴露における細胞障害試験の結果
から明らかなように、低酸素暴露においてB−PGAM
値は高酸素暴露の場合よりも高く、B−PGAMも細胞
障害におけるマーカーとして利用できることが明らかと
なった。なお、LDHについても測定を試みたが、あま
りにも低値であってマーカーとしては使用できなかっ
た。
【0048】
【発明の効果】本発明により、PGAM(T−PGA
M、B−PGAMその他のアイソザイムも包含する)を
測定することによって、低酸素状態を測定することがで
き、もって、細胞の障害、特に虚血性障害等の低酸素に
よる障害を測定することができ、また、PGAMは各種
細胞の障害マーカーとして広く利用することができる。
更に本発明によれば、低酸素以外の各種細胞毒性に起因
する細胞障害も広く測定でき、広範な細胞障害マーカー
(視点を変えれば、細胞毒性マーカー)として利用でき
る。
フロントページの続き (72)発明者 谷口 嘉之 東京都板橋区小豆沢三丁目6番10号 オリ エンタル酵母工業株式会社内 (72)発明者 松尾 雄志 東京都板橋区小豆沢三丁目6番10号 オリ エンタル酵母工業株式会社内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ホスホグリセリン酸ムターゼ(PGA
    M)又はそのアイソザイム測定試薬からなる細胞障害及
    び/又は細胞毒性測定用試薬。
  2. 【請求項2】 PGAMのアイソザイムがB型アイソザ
    イム又はM型アイソザイムであること、を特徴とする請
    求項1に記載の試薬。
  3. 【請求項3】 PGAM測定試薬が、エノラーゼ、ピル
    ビン酸キナーゼ、NADH、乳酸デヒドロゲナーゼを含
    有するものであること、を特徴とする請求項1又は2に
    記載の試薬。
  4. 【請求項4】 B型アイソザイム測定試薬がPGAM阻
    害剤を含有すること、を特徴とする請求項1〜3のいず
    れか1項に記載の試薬。
  5. 【請求項5】 PGAM阻害剤がポリチオン酸及び/又
    はその誘導体であること、を特徴とする請求項4に記載
    の試薬。
  6. 【請求項6】 PGAM阻害剤が四チオン酸のカリウム
    塩及び/又はナトリウム塩であること、を特徴とする請
    求項5に記載の試薬。
  7. 【請求項7】 請求項1〜3のいずれか1項に記載の試
    薬を用いて試料中のPGAMをレートアッセイ法によっ
    て測定すること、を特徴とする細胞障害及び/又は細胞
    毒性の測定方法。
  8. 【請求項8】 PGAM阻害剤を用いて材料を処理した
    後、PGAMアイソザイムをレートアッセイ法によって
    測定すること、を特徴とする細胞障害及び/又は細胞毒
    性の測定方法。
  9. 【請求項9】 PGAM又はそのアイソザイムからなる
    細胞障害又は細胞毒性マーカー。
  10. 【請求項10】 細胞障害が低酸素に起因する細胞障害
    であること、を特徴とする請求項9に記載の細胞障害又
    は細胞毒性マーカー。
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