JPH112189A - 粉末アルミニウム合金製ギアロータセットおよびその製造方法 - Google Patents

粉末アルミニウム合金製ギアロータセットおよびその製造方法

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JPH112189A
JPH112189A JP15713797A JP15713797A JPH112189A JP H112189 A JPH112189 A JP H112189A JP 15713797 A JP15713797 A JP 15713797A JP 15713797 A JP15713797 A JP 15713797A JP H112189 A JPH112189 A JP H112189A
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aluminum alloy
rotor
gear
tooth profile
rotor set
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JP15713797A
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Katsuyoshi Kondo
勝義 近藤
由重 ▲高▼ノ
Yoshie Kouno
Tsuyoshi Yukiyoshi
強士 行吉
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 良好な耐焼付き性および機械的強度を維持し
つつ、優れた経済性の下で製造できるギアロータセット
を提供する。 【解決手段】 アウタロータ2は、空孔率が3%以上1
5%以下である粉末アルミニウム合金からなる。インナ
ロータ3は、空孔率が1%以下である粉末アルミニウム
合金からなる。具体的には、アウタロータ2は、アルミ
ニウム合金粉末を型押・成形した後に加熱・焼結処理を
施した焼結アルミニウム合金からなる。インナロータ
は、高温での塑性変形加工によって相対密度を100%
に近づけた高強度粉末アルミニウム合金からなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、エンジン潤滑
用、オートマティックトランスミッション(AT)用、
または燃料供給用等のオイルポンプに使用される内接ギ
アタイプのアルミニウム合金製ギアロータセットに関
し、特に優れた経済性をもって製造することのできるア
ルミニウム合金製ギアロータセットに関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】図1は、ポンプケース1内に、アウタロ
ータ2とインナロータ3とからなるギアロータセットが
組込まれている状態を図示している。従来、エンジンや
オートマティックトランスミッションに用いられている
オイルポンプケースの材質として鋳鉄が適用され、また
ギアロータセットには鉄系焼結体が適用されている。近
年、軽量化の観点から、アルミニウム合金の適用が検討
されている。その際、ポンプの心臓部である鉄系ギアロ
ータについてもアルミニウム合金の適用が要求されてい
る。その理由として、熱膨張率の差が挙げられる。すな
わち、ポンプ内部には150℃を超える潤滑油が循環す
るので、ポンプ全体の温度が上昇する。その際に、ポン
プケースとギアロータとの材料の違いによる熱膨張率の
差が大きい場合、両者のクリアランスが増加し、ポンプ
の容積効率が低下するといった問題が生じる。したがっ
て、ポンプケース1にアルミニウム合金を使用する場合
には、熱膨張率を同等にするといった観点からギアロー
タ2、3についてもアルミニウム合金を適用する必要が
ある。
【0003】今までに、歯形形状がトロコイド曲線、イ
ンボリュート曲線、ハイポサイクロイド曲線のいずれか
を基調としたインナロータおよびアウタロータからなる
内接タイプのギアロータに対してアルミニウム合金を適
用するために、いくつかの焼結アルミニウム合金および
その製造方法が提案されている。代表的なものは、たと
えば、特開昭60−128983号公報、特開平2−1
69881号公報、特開平4−99204号公報などに
開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記先
行技術に開示されたアルミニウム合金製ギアロータセッ
トにおいては、次のような課題がある。
【0005】特開昭60−128983号公報は、ギア
ロータセット全体、すなわちインナロータおよびアウタ
ロータの両方を焼結アルミニウム合金で製造する方法を
提案している。なお、この明細書中で用いる「焼結アル
ミニウム合金」という用語は、所定の組成を有するアル
ミニウム合金粉末を型押・成形した後に加熱・焼結を施
したもの、または必要に応じてその焼結アルミニウム合
金にサイジングやコイニング等の再圧縮を施したものを
意味しており、後述する熱間鍛造法や熱間押出法といっ
た高温での塑性変形加工により相対密度をできる限り1
00%に近づけたアルミニウム合金とは区別する。
【0006】特開昭60−128983号公報に開示さ
れた焼結アルミニウム合金製ギアロータセットは、エン
ジン用潤滑ポンプのように低トルクが作用するポンプに
対して適用することができる。しかしながら、オートマ
ティックトランスミッション用オイルポンプのように高
い負荷が働く場合には、それらを適用することが困難で
ある。すなわち、インナロータは駆動軸(シャフト)に
より回転しており、その際にシャフトと接触するインナ
ロータの内径部分にはシャフトからの高い応力が働く。
この高い応力による摩耗損傷を防ぐために、インナロー
タには高強度・高硬度特性が要求される。したがって、
特開昭60−128983号公報に開示されたような低
い強度の焼結アルミニウム合金では、このような高トル
クが作用するポンプ用ギアロータセットへの適用は困難
である。また、アウタロータは、インナロータに対して
およびアルミニウム合金鋳物からなるポンプケースに対
して高速で摺動する関係になることから、アウタロータ
の外周部およびインナロータに摺接する歯先部では、相
手材との焼付き摩耗現象が生じやすいので、アウタロー
タには優れた耐焼付き性が要求される。
【0007】一方、熱間鍛造法や熱間押出法によって製
造した粉末アルミニウム合金は、高い強度を有するので
機械的特性の観点からは、オートマティックトランスミ
ッション用ポンプギアロータセットへの適用は十分可能
である。たとえば、特開平2−169881号公報、特
開平4−99204号公報などがそのような製造方法を
開示している。しかしながら、熱間鍛造法や熱間押出法
等によってギアロータセットを製造する場合、十分高い
寸法精度をもってインナロータおよびアウタロータを作
ることは非常に困難である。そのため、ロータの歯形形
状のすべてを、切削・研削加工、エンドミル加工、放電
加工、研磨等の機械加工によって作らざるを得ない。こ
の場合、インナロータおよびアウタロータの両方の歯形
部をすべて機械加工によって形成するので、経済性の面
において不利である。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、種々の実
験および検討を行なった結果、内接タイプのアルミニウ
ム合金製ギアロータセットを優れた経済性の下で製造で
きることを見出した。
【0009】具体的には、本発明者らは、ギアロータセ
ットにおいて、優れた耐焼付き性が要求されるアウタロ
ータに対しては、適切な空孔率を有する焼結アルミニウ
ム合金を適用することによりその空孔での含油効果によ
って耐焼付き性の改善を図ることができることを見出し
た。さらに、本発明者らは、駆動軸(シャフト)と接触
するインナロータの内径部分には高い応力が作用するの
に対し、アウタロータには高い応力が作用しないことに
着目した。
【0010】その結果、耐焼付き性が求められ、かつ高
い応力が作用しないアウタロータに対しては、粉末アル
ミニウム合金よりも比較的強度の低い多孔質の焼結アル
ミニウム合金を適用することが有効であるとの結論に至
った。高い強度が要求されるインナロータに対しては、
熱間鍛造法や熱間押出法等によって製造した高強度粉末
アルミニウム合金を適用する。こうして、本発明に従っ
たアルミニウム合金製ギアロータセットでは、アウタロ
ータとインナロータとが異なる材質のものから作られて
いる。
【0011】上記のように組合せれば、アウタロータに
おいては、機械加工なしでサイジングやコイニングとい
った寸法矯正法によってロータ歯形部の形状を作ること
ができるので、優れた経済性の下でアウタロータを製造
できる。なお、サイジングまたはコイニングは、焼結ア
ルミニウム合金素材を金型内で加圧・圧縮してその焼結
体を金型形状に沿うように塑性変形して寸法矯正するも
のである。
【0012】ポンプ性能の観点から見ても、上述したよ
うなアウタロータとインナロータとの組合せは優れてい
る。上述したような組合せによれば、インナロータの歯
形部分は機械加工による高い寸法精度を有しているの
で、インナロータおよびアウタロータの両者をサイジン
グ等による金型内での寸法矯正法で製造したギアロータ
セットと比較すると、インナロータの歯形部とアウタロ
ータの歯形部の間の歯先隙間(チップクリアランス)を
小さく管理することができる。その結果、その隙間から
漏れるオイル量を低減することが可能となり、ポンプの
容積効率が向上する。
【0013】本発明の好ましい構成は、以下のとおりで
ある。本発明の前提となるべき内接タイプのギアロータ
セットは、トロコイド曲線、インボリュート曲線および
ハイポサイクロイド曲線のうちのいずれかを基調とした
歯形形状を内周部に有するアウタロータと、トロコイド
曲線、インボリュート曲線およびハイポサイクロイド曲
線のうちのいずれかを基調とした歯形形状を外周部に有
するインナロータとを組合せている。このようなギアロ
ータセットにおいて、本発明では、アウタロータは、空
孔率が3%以上15%以下である粉末アルミニウム合金
からなる。インナロータは、空孔率が1%以下である粉
末アルミニウム合金からなる。
【0014】好ましくは、アウタロータを構成する粉末
アルミニウム合金中の空孔率は、7%以上10%以下で
ある。
【0015】好ましい実施例では、アウタロータは、ア
ルミニウム合金粉末を型押・成形した後に加熱・焼結処
理を施した焼結アルミニウム合金からなり、インナロー
タは、高温での塑性変形加工によって相対密度を100
%に近づけた高強度粉末アルミニウム合金からなる。相
対密度を100%に近づける塑性変形加工は、たとえ
ば、熱間鍛造法または熱間押出法である。アウタロータ
の歯形部は、望ましくは、焼結体を金型内で塑性加工に
よって寸法矯正することによって形成されている。ま
た、インナロータの歯形部は、望ましくは、高温での塑
性変形加工後に機械加工を施すことによって形成されて
いる。
【0016】この発明に従った粉末アルミニウム合金製
ギアロータセットの製造方法では、アウタロータは、ア
ルミニウム合金粉末を型押・成形した後に加熱・焼結す
ることによって作られている。インナロータは、アルミ
ニウム合金粉末を熱間鍛造または熱間押出することによ
って作られている。
【0017】好ましくは、アウタロータは、焼結後に、
金型内で塑性変形されて寸法矯正されている。1つの実
施例では、アウタロータの歯形部は、サイジングまたは
コイニングによって寸法矯正される。塑性変形前の金型
内の焼結体の温度は、好ましくは、100℃以上350
℃以下に保持される。同様に、金型内壁の温度は、好ま
しくは、100℃以上350℃以下に保持される。
【0018】好ましい実施例では、インナロータに対す
る熱間鍛造または熱間押出後に、インナロータの歯形部
を機械加工によって形成する。
【0019】本発明の特徴について、以下に詳細に説明
する。 (1) アウタロータの空孔率 アウタロータは、ポンプケースとの耐焼付き性を改善す
るために、適正量の空孔を保有する必要がある。空孔率
の適正範囲は3%以上15%以下であり、より望ましく
は、7%以上10%以下である。空孔率が3%未満の場
合、空孔による含油効果が十分でないために、ポンプケ
ースとの摺動時に、最も高速となるアウタロータの外周
部において、焼付き(凝着)摩耗を発生する恐れがあ
る。一方、空孔率が15%を超える場合には、焼結体の
強度が低下してアウタロータとして使用した際に、応力
が集中する歯形の谷間部に亀裂や割れが生じる。また、
成形体の強度も十分でないので、搬送過程での破損およ
び欠けといったハンドリング性の問題も生じる。したが
って、耐焼付き性と機械的特性(強度)とを両立させる
ために、必要な空孔率の適正範囲は3%以上15%以下
であり、より望ましくは7%以上10%以下である。
【0020】なお、空孔率は、成形体の密度、または焼
結体を金型内で加圧・圧縮によって塑性加工する際の塑
性変形量、または加圧力などによって制御することが可
能である。
【0021】(2) ギアロータの歯形部の成形方法 本発明の前提となるべき内接タイプのギアロータセット
は、図1に示すように、内周部にトロコイド曲線、イン
ボリュート曲線、ハイポサイクロイド曲線のうちのいず
れかを基調とした曲線からなる歯形部を有したアウタロ
ータ2と、外周部にトロコイド曲線、インボリュート曲
線、ハイポサイクロイド曲線のうちのいずれかを基調と
した曲線からなる歯形部を有するインナロータ3との組
合せによって構成されている。両ロータの歯先隙間、い
わゆるチップクリアランス(d)が、内接ギアロータセ
ットを用いたポンプの性能(たとえば、容積効率や回転
時の音・振動、さらには油圧変動)に大きな影響を与え
る。これらの性能を向上させるためには、チップクリア
ランスをできるだけ小さくすることが必要である。言い
換えれば、アウタロータ2とインナロータ3の歯形部の
寸法精度を管理することが重要である。
【0022】本発明では、先行技術における経済性の問
題と、歯形部の寸法精度と、インナロータに要求される
機械的特性との間でのバランスを考えている。このバラ
ンスの下で高性能なギアロータセットを製造するため
に、インナロータに対しては熱間粉末鍛造法や熱間粉末
押出法等により製造した高強度粉末アルミニウム合金を
適用し、かつその歯形部を機械加工によって成形する。
一方、アウタロータに対しては、焼結アルミニウム合金
を適用し、かつその歯形部をサイジングやコイニングと
いった、金型内で焼結体を塑性変形させる寸法矯正法に
よって成形する。上記組合せた方法によって製造したギ
アロータセットにおけるチップクリアランスは、従来の
サイジング等の金型内での寸法矯正法によって製造した
ギアロータセットに比べて、小さく管理することがで
き、ポンプ性能を改善できる。また、歯形部の加工領域
(長さ)がより短いインナロータの歯形部についてのみ
機械加工を施すため、加工費は、全歯形部を機械加工す
るものに比べて、1/2以下に削減することができる。
【0023】なお、本発明においては、アウタロータに
対して適用される焼結アルミニウム合金の組成、および
インナロータに対して適用される熱間粉末鍛造法または
熱間押出法によって製造された粉末アルミニウム合金の
組成に関しては、特に制約はない。典型的な合金組成
は、元素としてSi、Fe、Ni、Cr、Cu、Mg等
を含有し、残部がAlである。また、必要に応じて、A
lN、Al2 3 、SiC等の窒化物、酸化物、炭化物
の硬質粒子を含有する焼結体を適用してもよい。さら
に、アルミニウム合金製ポンプケースに関しても合金組
成および機械的特性上の制約はなく、ダイキャストなど
の量産工法により製造したポンプケースを適用すること
ができる。
【0024】(3) 金型内での寸法矯正によるアウタ
ロータ歯形部の成形 アウタロータの歯形部は、金型内で焼結アルミニウム合
金を加圧・圧縮し焼結体を金型形状に沿うように塑性変
形することによって形成される。上述の金型内での塑性
変形は、粉末冶金技術におけるサイジングまたはコイニ
ングである。この方法を適用するためには、焼結体中に
空孔が存在することが必要である。上記のように加圧・
圧縮により焼結体を塑性変形させる際、焼結体中の空孔
が変形または閉鎖することにより、焼結体全体が変形す
る。したがって、金型内での加圧・圧縮による寸法矯正
処理を施す前の焼結体素材は、適正量の空孔を有するこ
とが必要である。具体的には、焼結体中の空孔率として
は15%以下が望ましく、さらには10%以下がより好
ましい。空孔率が15%を超えると、サイジング処理後
の焼結体ロータの強度や硬さが不十分となり、アウタロ
ータとして要求される機械的特性や耐摩耗性を満足しな
い恐れがある。本発明において、サイジングやコイニン
グ等により焼結アルミニウム合金製アウタロータを寸法
矯正して高い寸法精度を有する歯形部を成形するために
は、焼結体中の空孔率を15%以下に管理する必要があ
る。また、焼結体の強度および硬度をより高くし、かつ
歯形部の寸法精度を確保するには、空孔率を8%以下に
管理することがより好ましい。
【0025】焼結アルミニウム合金製アウタロータを金
型内で加圧・圧縮して、その歯形部を寸法矯正する際、
金型内壁と素材表面との焼付きや素材の割れ・損傷とい
った問題を回避するためには、圧縮前の焼結体素材は金
型形状に可能な限り近い形状および寸法を有すること、
いわゆるニア・ネット・シェイプ(Near Net Shape)素
材であることが望ましい。金型内での焼結体素材の変形
量が大きい場合、塑性変形時に焼結体に亀裂が発生した
り、金型内壁との焼付き現象や齧りといった問題が生じ
やすくなる。
【0026】(4) 温間寸法矯正法 アウタロータを金型内で寸法矯正する際、より低い加圧
力で焼結体素材を塑性変形させるには、焼結体素材また
は金型のうちの少なくとも一方を適正な温度域に事前に
加熱しておくことが有効である。このような温間寸法矯
正法を採用すれば、金型寿命を向上でき、経済性の面で
の利点が得られる。具体的には、金型内で塑性変形する
直前の焼結体素材の温度を100℃以上350℃以下、
より好ましくは150℃以上250℃以下にするのが望
ましい。一方、焼結体素材と接触する金型内壁の温度は
150℃以上350℃以下であることが望ましい。この
ような範囲に限定した理由を以下に記載する。
【0027】 焼結体素材の温度 アルミニウム焼結体素材を100℃以上に加熱すると、
その素地が軟化し始めるため、加圧・圧縮において低い
加圧力によって容易に焼結体素材を塑性変形させること
ができる。ここで、金型内壁と焼結体素材との焼付き現
象を回避するために、通常、金型内壁または焼結体素材
の表面に潤滑剤を塗布する。ギアロータのように寸法矯
正した歯形部がそのまま製品として使用される場合にお
いては、その外観形状は重要視されており、潤滑剤によ
り黒色や灰色に変色することは好ましくない。そのため
に、潤滑剤の選定が重要となるわけであるが、焼結体素
材の温度が350℃を超える場合には焼付き現象の抑制
のため、より潤滑性の高いカーボンや二硫化モリブデン
等の黒色系潤滑剤が望まれる。したがって、ステアリン
酸や油脂系の白色潤滑剤を使用する目的から、焼結体素
材の温度は350℃以下に管理することが望ましい。な
お、金型との焼付き現象を生じることなく、より低い面
圧条件下で焼結体素材を加圧・圧縮して高い寸法精度と
密度を確保するためには、焼結体の温度は150℃以上
250℃以下がより望ましい。
【0028】素材である焼結アルミニウム合金がFe、
Ni、Cr等の元素を多量に含有する場合、その耐熱性
が向上するため、低い圧力下で塑性変形させるためには
焼結体素材の温度を350℃以上にする必要が生じる。
この場合、黒色系潤滑剤の使用が余儀なくされるが、そ
の際には、加圧・圧縮後の焼結体表面に付着した潤滑剤
被膜をビーズショット等の手法により除去することがで
きる。
【0029】 金型内壁の温度 金型内壁の温度を150℃以上に保持すれば、アルミニ
ウム焼結体が金型と接触した際に金型の熱が焼結体に伝
わり、その結果、焼結体素地が軟化し始める。したがっ
て、加圧・圧縮工程において、低い面圧力によって容易
に焼結体素材を塑性変形させることができる。また、上
述と同様に、白色系潤滑剤を使用するといった観点か
ら、金型内壁の温度を350℃以下に管理することが望
ましい。
【0030】
【発明の効果】本発明によれば、アウタロータに適正量
の空孔を分散させているので、含油効果によって耐焼付
き性を向上させることができ、かつサイジングやコイニ
ングなどの塑性加工によってロータ歯形部を成形するこ
とができ、経済性に優れるといった利点を奏する。イン
ナロータの歯形部は、機械加工によって作製するので、
ロータ間のチップクリアランスは、従来のサイジングや
コイニング等により製造していた内接ギアロータセット
に比べて、より小さく管理できる。
【0031】こうして、本発明によれば、ポンプの容積
効率を向上することができ、またこのことを実現するア
ルミニウム合金製ギアロータセットを、機械加工によっ
て歯形部すべてを作った場合に比べて、優れた経済性の
下で提供することができる。このような粉末アルミニウ
ム合金製ギアロータセットは、トランスミッション(A
T)用、または燃料供給用等のオイルポンプ本体のアル
ミニウム合金化に際して適用可能である。
【0032】
【実施例】
(実施例1)原料粉末としてアルミニウム合金粉末A
(組成:Al−17%Si−3.5%Cu−1%Mg−
0.5%Mn)と、アルミニウム合金粉末B(組成:A
l−12%Si−5%Fe−6%Ni−1%Cr)とを
準備し、歯数が10であるアウタロータ(外径φ90m
m、厚み10mm)には粉末Aを用い、また歯数が9で
あるインナロータ(厚み10mm)には粉末Bを用い
た。なお、合金組成は重量%で表示している。アウタロ
ータは、焼結法とサイジング法との組合せによって製造
し、インナロータは熱間鍛造法と機械加工の組合せによ
り製造した。
【0033】まず、本発明における焼結法とサイジング
法との組合せによるアウタロータの製造方法を説明す
る。粉末Aを所定の形状を有した成形用金型に給粉して
面圧7t/cm2 の条件下で圧粉成形し、続いてこの粉
末成形体を窒素雰囲気に制御した焼結炉内で540℃×
2hrの条件で加熱・保持した。得られた焼結体中の空
孔率は5%であった。この素材を、不活性ガス雰囲気中
で150℃に加熱した後、所定の寸法形状を有したサイ
ジング用金型(型の温度は常温)内に挿入し、面圧6t
/cm2 の条件下で加圧・圧縮してアウタロータを製造
した。なお、金型内壁には、メタノール溶媒にステアリ
ン酸を溶かした潤滑剤を塗布した。
【0034】次いで、本発明における熱間鍛造法と機械
加工の組合せによるインナロータの製法を記す。粉末B
を所定の形状を有した成形用金型に給粉して面圧6t/
cm 2 の条件下で圧粉成形し、続いてこの粉末成形体を
窒素雰囲気に制御した加熱炉内で530℃×30分の条
件で加熱・保持した後、直ちにこれを所定の寸法形状を
有した熱間鍛造用金型(型の温度は400℃)内に挿入
し、面圧8t/cm2の条件下で加圧・圧縮した。得ら
れたインナロータ用鍛造体素材について歯形形状を含め
て全面を機械加工により製造した。なお、熱間鍛造時の
金型内壁には、水にカーボンを溶かした潤滑剤を塗布し
た。
【0035】比較例として、上記の本発明の製法によっ
て得たギアロータセットと同一寸法および形状のアウタ
ロータおよびインナロータを、次のように製造した。比
較例1では、アウタロータおよびインナロータの両者と
も、焼結アルミニウム合金素材をサイジング法により加
圧・圧縮して製造した。比較例2では、アウタロータお
よびインナロータの両者とも、粉末成形体素材を加熱
後、熱間鍛造法により作製し、機械加工によって仕上げ
た。製造条件としては、上記の本発明による製法と同一
条件を選定した。
【0036】上記のように作製したギアロータセットに
ついて、ギアロータの歯先隙間(チップクリアランス)
の測定結果を、表1に示す。なお、チップクリアランス
については、各歯部についてその歯先隙間を測定し、そ
の平均値および変動幅(=最大値−最小値)を算出し
た。
【0037】表1からわかるように、本発明によるギア
ロータセットにおけるチップクリアランスは、その平均
値および変動幅が従来のサイジング法により作製したロ
ータセット(比較例1)に比べて小さい。また、その値
は、ロータの歯部形状を機械加工により作製したギアロ
ータセット(比較例2)と同等であるので、本発明の製
法によれば、高い寸法精度を有するギアロータセットを
作製できることが認められる。
【0038】
【表1】
【0039】(実施例2)実施例1で作製した各ギアロ
ータセットを、ADC12(Al−12%Siダイキャ
スト材)製オイルポンプに組込み、回転数:4500r
pm、油圧:1.5MPa、油温:120℃(AT
F)、時間:連続3hrの条件で性能評価試験を行なっ
た。その際、試験前後での各ギアロータセットの歯先隙
間(平均値)とポンプの容積効率とを測定した。その結
果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】表2からわかるように、本発明によるギア
ロータセットにおいては、アウタロータおよびインナロ
ータの各部位において摩耗損傷は見られず、また試験前
後での歯先部のチップクリアランスも大きく変化してい
ない。その結果、ポンプの容積効率も大きく変化せず、
75%以上と高い値を有していることが認められる。
【0042】従来のサイジング法により作製したロータ
セット(比較例1)においては、試験前の状態での歯先
部のチップクリアランスが大きいために、容積効率は6
4%と小さく、さらに、ポンプ試験中にインナロータの
歯形部分の摩耗損傷が発生したために試験後の歯先隙間
は大きく増加した。その結果、容積効率は約50%にま
で低下していることが認められる。また、駆動軸と接触
するインナロータの内径部は、軸からの攻撃により摩耗
していることも確認された。
【0043】機械加工により作製したギアロータセット
(比較例2)においては、試験前後で歯先部のチップク
リアランスは大きく変化しておらず、またロータの摩耗
損傷も発生せず、良好な結果が得られている。
【0044】なお、比較例1に見られるインナロータの
歯形部および内径部に生じた摩耗損傷は、焼結体からな
るロータの強度および硬度が十分でなかったためであ
り、逆に、本発明品および比較例2のように熱間鍛造素
材をインナロータに用いた場合、ロータの強度および硬
度が十分であるために摩耗損傷は生じていないことが認
められる。すなわち、高い油圧が負荷される場合や、駆
動軸から高い応力が負荷される場合においては、焼結ア
ルミニウム合金製素材をサイジング等の寸法矯正法によ
ってその歯部形状を作製したロータをインナロータ側に
適用することは困難であることがわかる。
【0045】(実施例3)原料粉末としてアルミニウム
合金粉末A(組成:Al−12%Si−3.5%Cu−
1%Mg−0.5%Mn)と、アルミニウム合金粉末B
(組成:Al−12%Si−5%Fe−6%Ni−1%
Cr)とを準備し、歯数が10であるアウタロータ(外
径φ90mm、厚み10mm)には粉末Aを用い、また
歯数が9であるインナロータ(厚み10mm)には粉末
Bを用いた。ただし、ここでは、アウタロータを焼結法
とサイジング法との組合せにより、またインナロータを
熱間鍛造法と機械加工の組合せにより、それぞれ作製し
た。
【0046】まず、本発明における焼結法とサイジング
法との組合せによるアウタロータの製造方法において、
サイジング処理後のロータ歯形部の寸法精度に及ぼす焼
結体中の空孔率の影響について検討する。粉末Aを所定
の形状を有した成形用金型に給粉して面圧5〜10t/
cm2 の各条件下で圧粉成形し、続いてこれらの粉末成
形体を窒素雰囲気に制御した焼結炉内で540℃×2h
rの条件で加熱・保持した。得られた各焼結体中の平均
空孔率は2〜28%であり、これらの素材を不活性ガス
雰囲気中で150℃に加熱した後、所定の寸法形状を有
したサイジング用金型(型の温度は常温)内に挿入し、
面圧6t/cm2 の条件下で加圧・圧縮し、アウタロー
タを作製した。なお、金型内壁には、メタノール溶媒に
ステアリン酸を溶かした潤滑剤を塗布した。
【0047】一方、本発明における熱間鍛造法と機械加
工の組合せによるインナロータは、実施例1の場合と同
一条件により作製した。粉末Bを所定の形状を有した成
形用金型に給粉して面圧6t/cm2 の条件下で圧粉成
形し、続いてこの粉末成形体を窒素雰囲気に制御した加
熱炉内で530℃×30分の条件で加熱・保持した後、
直ちにこれを所定の寸法形状を有した熱間鍛造用金型
(型の温度は400℃)内に挿入し、面圧8t/cm2
の条件下で加圧・圧縮した。得られたインナロータ用鍛
造体素材について歯形形状を含めて全面を機械加工によ
り作製した。なお、熱間鍛造時の金型内壁には、水にカ
ーボンを溶かした潤滑剤を塗布した。
【0048】金型内での加圧・圧縮による寸法矯正処理
(ここではサイジング法)を施す前の焼結体素材中の空
孔率と、サイジング処理後の各ギアロータセットにおけ
る歯先隙間の測定結果を表3に示す。なお、各歯形部に
ついてその歯先隙間を測定し、その平均値および変動幅
(=最大値−最小値)を算出した。
【0049】
【表3】
【0050】表3からわかるように、金型内での加圧・
圧縮による寸法矯正処理(ここでは、サイジング法)を
施す前の焼結体素材中の空孔率が、本発明で規定する適
正範囲(15%以下)を満足する場合(試料No.2、
3、4、5)においては、ギアロータセットの歯先隙間
は約30〜35μm程度と小さく管理することができ
る。
【0051】さらに、試料No.1〜4の各ギアロータ
セットについて、ADC12(Al−12%Siダイキ
ャスト材)製オイルポンプに組込み、回転数:4500
rpm、油圧:1.5MPa、油温:120℃(AT
F)、時間:連続3hrの条件で性能評価試験を行なっ
た。その際、試験前後での各ギアロータセットの歯先隙
間(平均値)とポンプの容積効率とを測定した。その結
果を表4に示す。
【0052】
【表4】
【0053】表4からわかるように、本発明によるギア
ロータセット(試料No.2、3、4)においては、ア
ウタロータおよびインナロータの各部位において摩耗損
傷は見られず、また試験前後での歯先部の歯先隙間も大
きく変化しておらず、その結果、ポンプの容積効率も大
きく変化せず、75%以上と高い値を有していることが
認められる。
【0054】一方、比較例である試料No.1において
は、焼結体素材の空孔率は22%と大きいため、サイジ
ング処理により歯形部の歯先隙間は小さくでき、ロータ
セットとして高い寸法精度を確保することは可能である
が、焼結体素材の強度が十分でないため、ポンプ試験中
にアウタロータの歯形部に摩耗損傷が発生し、その結
果、歯先隙間の増加による容積効率の低下が生じた。
【0055】(実施例4)原料粉末としてアルミニウム
合金粉末A(組成:Al−20%Si−3.5%Cu−
1%Mg−0.5%Mn)と、アルミニウム合金粉末B
(組成:Al−12%Si−5%Fe−6%Ni−1%
Cr)とを準備し、歯数が10であるアウタロータ(外
径φ90mm、厚み10mm)には粉末Aを用い、また
歯数が9であるインナロータ(厚み10mm)には粉末
Bを用いた。ただし、ここでは、アウタロータを焼結法
とサイジング法との組合せにより、またインナロータを
熱間鍛造法と機械加工との組合せにより、それぞれ作製
した。
【0056】まず、本発明による焼結法とサイジング法
との組合せによるアウタロータの製法を説明する。粉末
Aを所定の形状を有した成形用金型に給粉して面圧6t
/cm2 の条件下で圧粉成形し、続いてこの圧粉成形体
を窒素雰囲気に制御した焼結炉内で530℃×2hrの
条件で加熱・保持する。なお、得られた焼結体中の空孔
率は10%であった。続いて表5に示す条件の下で、焼
結体素材、あるいは所定の寸法形状を有したサイジング
用金型を加熱した状態で、その金型内に焼結体素材を挿
入し、種々の面圧で加圧・圧縮することによりアウタロ
ータを作製した。なお、焼結体の温度または金型温度が
350℃以下の場合には、金型内壁に塗布する潤滑剤と
して、メタノール溶媒にステアリン酸を溶かした潤滑剤
を使用し、一方、それらの温度が350℃を超える場合
には、水にカーボンを溶かした潤滑剤を使用した。
【0057】
【表5】
【0058】次いで、本発明における熱間鍛造法と機械
加工の組合せによるインナロータの製法を記す。粉末B
を所定の形状を有した成形用金型に給粉して面圧6t/
cm 2 の条件下で圧粉成形し、続いてこの粉末成形体を
窒素雰囲気に制御した加熱炉内で530℃×30分の条
件で加熱・保持した後、直ちにこれを所定の寸法形状を
有した熱間鍛造用金型(型の温度は400℃)内に挿入
し、面圧8t/cm2の条件下で加圧・圧縮した。得ら
れたインナロータ用鍛造体素材について歯形形状を含め
て全面を機械加工により作製した。なお、熱間鍛造時の
金型内壁には、水にカーボンを溶かした潤滑剤を塗布し
た。
【0059】本発明により作製したギアロータセットに
ついて、得られたギアロータの歯先隙間(各歯部の平均
値)の測定結果とアウタロータの空孔率および硬度を表
5に示す。
【0060】表5からわかるように、焼結体温度または
金型温度を本発明で規定する適正範囲内に設定した場合
(試料No.1〜4、6)、比較例(試料No.7、
8)に比べて、サイジング処理時において、より低い加
圧力によって高い寸法精度と高い硬度を有するアウタロ
ータを作製することができる。その結果、サイジング工
程における金型寿命を向上することができる。また、焼
結体温度または金型温度を本発明で規定する適正範囲内
に設定することにより、サイジング処理時に金型内壁に
塗布する潤滑剤として白色系潤滑剤を使用できるので、
比較例試料No.5のようにサイジング処理後のロータ
においてその外観を損なうことはない。
【0061】(実施例5)原料粉末としてアルミニウム
合金粉末A(組成:Al−15%Si−1%Mg)と、
アルミニウム合金粉末B(組成:Al−17%Si−
3.5%Cu−1%Mg)と、アルミニウム合金粉末C
(組成:Al−12%Si−5%Fe−6%Ni−1%
Cr)とを準備し、歯数が10であるアウタロータ(外
径φ90mm、厚み10mm)には、重量基準で粉末
A:30%、粉末B:70%となるように配合した混合
粉末を用い、歯数が9であるインナロータ(厚み10m
m)には粉末Cを用いた。アウタロータは、焼結法とサ
イジング法との組合せにより作製し、インナロータは、
熱間鍛造法と機械加工との組合せにより作製した。
【0062】まず、本発明における焼結法とサイジング
法との組合せによるアウタロータの製造方法について説
明する。上記の混合粉末を所定の形状を有した成形用金
型に給粉して面圧6.5t/cm2 の条件下で圧粉成形
し、続いてこの圧粉成形体を窒素雰囲気中に制御した焼
結炉内で550℃×4hrの条件で加熱・保持した。こ
れにより成形体中の粉末Aの表面においてアルミニウム
と窒素ガスとが反応して窒化アルミニウム(AlN)を
生成する。なお、この条件においては、焼結体中に分散
するAlNの生成量は3.5%であり、また焼結体の空
孔率は8%であることを確認した。この焼結体を不活性
ガス雰囲気中で180℃に加熱した後、所定の寸法形状
を有したサイジング用金型(型の温度は130℃)内に
挿入し、面圧6t/cm2 の条件下で加圧・圧縮するこ
とによりアウタロータを作製した。なお、金型内壁に
は、メタノール溶液にステアリン酸を溶かした潤滑剤を
塗布した。
【0063】次いで、本発明における熱間鍛造法と機械
加工の組合せによるインナロータの製造方法について説
明する。粉末Cを所定の形状を有した成形用金型に給粉
して面圧6t/cm2 の条件下で圧粉成形し、続いてこ
の圧粉成形体を窒素雰囲気中に制御した加熱炉内で53
0℃×30分の条件で加熱・保持した後、直ちにこれを
所定の寸法形状を有した熱間鍛造用金型(型の温度は4
00℃)内に挿入し、面圧8t/cm2 の条件下で加圧
・圧縮した。得られたインナロータ用鍛造体素材につい
て歯形形状を含めて全面を機械加工により作製した。な
お、熱間鍛造時の金型内壁には、水にカーボンを溶かし
た潤滑剤を塗布した。
【0064】比較例として、同一寸法および形状のギア
ロータセットを、焼結アルミニウム合金素材をサイジン
グ法によって作製する方法(比較例1)と、熱間鍛造素
材から機械加工により作製する方法(比較例2)とによ
り作製した。ただし、製造条件は、上記の本発明の製法
と同一条件とした。
【0065】本発明により作製したギアロータセットに
ついて、得られたギアロータの歯先隙間の測定結果(平
均値および変動幅(=最大値−最小値))を比較例と併
せて表6に示す。
【0066】
【表6】
【0067】表6からわかるように、本発明による製法
においては、たとえサイジング処理前の焼結体素材が硬
質粒子であるAlNを含む場合であっても、得られたギ
アロータセットにおける歯先隙間の平均値および変動幅
は、従来のサイジング法により作製したロータセット
(比較例1)よりも小さく、またロータの歯部形状を機
械加工により作製したギアロータセット(比較例2)と
同等であり、高い寸法精度を有するギアロータセットを
作製することができることが認められる。
【0068】(実施例6)原料粉末としてアルミニウム
合金粉末A(組成:Al−15%Si−1%Mg)と、
アルミニウム合金粉末B(組成:Al−12%Si−5
%Fe−6%Ni−1%Cr)とを準備し、歯数が10
であるアウタロータ(外径φ90mm、厚み10mm)
には、重量基準で粉末Aを用い、また歯数が9であるイ
ンナロータ(厚み10mm)には粉末Bを用いた。ただ
し、ここでは、アウタロータを焼結法とサイジング法と
の組合せにより作製し、インナロータを熱間鍛造法と機
械加工との組合せにより作製した。
【0069】以下に示す表7に記載のように、空孔率を
変更させたアウタロータおよびインナロータを作製し、
各ギアロータセットについて、ADC12(Al−12
%Siダイキャスト材)製オイルポンプに組込み、回転
数:4500rpm、油圧:1.5MPa、油温:12
0℃(ATF)、時間:連続3hrの条件で性能評価試
験を行なった。
【0070】
【表7】
【0071】表7からわかるように、本発明例(試料N
o.1〜5)においては、アウタロータ、インナロータ
ともに摩耗(音が入っていません)等がなく、良好な結
果が得られた。
【0072】一方、比較例においては次のような問題が
生じた。 試料No.6:インナロータの空孔が多いために、強度
が低下し、シャフトの攻撃により摩耗が発生した。
【0073】試料No.7:インナロータの空孔が多い
ために、強度が低下し、シャフトの攻撃により摩耗が発
生した。
【0074】試料No.8:アウタロータの空孔が少な
いために、十分な含油効果が得られず、ケースとの凝着
摩耗が発生した。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポンプケースに組込まれたアウタロータとイン
ナロータとからなるギアロータセットを示す断面図であ
る。
【符号の説明】
1 ポンプケース 2 アウタロータ 3 インナロータ

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 トロコイド曲線、インボリュート曲線お
    よびハイポサイクロイド曲線のうちのいずれかを基調と
    した歯形形状を内周部に有するアウタロータと、トロコ
    イド曲線、インボリュート曲線およびハイポサイクロイ
    ド曲線のうちのいずれかを基調とした歯形形状を外周部
    に有するインナロータとを組合せた内接タイプのギアロ
    ータセットにおいて、 前記アウタロータは、空孔率が3%以上15%以下であ
    る粉末アルミニウム合金からなり、 前記インナロータは、空孔率が1%以下である粉末アル
    ミニウム合金からなることを特徴とする、粉末アルミニ
    ウム合金製ギアロータセット。
  2. 【請求項2】 前記アウタロータを構成する粉末アルミ
    ニウム合金中の空孔率が、7%以上10%以下である、
    請求項1に記載の粉末アルミニウム合金製ギアロータセ
    ット。
  3. 【請求項3】 前記アウタロータは、アルミニウム合金
    粉末を型押・成形した後に加熱・焼結処理を施した焼結
    アルミニウム合金からなり、 前記インナロータは、高温での塑性変形加工によって相
    対密度を100%に近づけた高強度粉末アルミニウム合
    金からなる、請求項1または2に記載の粉末アルミニウ
    ム合金製ギアロータセット。
  4. 【請求項4】 相対密度を100%に近づける前記塑性
    変形加工は、熱間鍛造法または熱間押出法である、請求
    項3に記載の粉末アルミニウム合金製ギアロータセッ
    ト。
  5. 【請求項5】 前記アウタロータの歯形部は、焼結体を
    金型内で塑性加工によって寸法矯正することによって形
    成されている、請求項3に記載の粉末アルミニウム合金
    製ギアロータセット。
  6. 【請求項6】 前記インナロータの歯形部は、高温での
    塑性変形加工後に機械加工を施すことによって形成され
    ている、請求項3に記載の粉末アルミニウム合金製ギア
    ロータセット。
  7. 【請求項7】 トロコイド曲線、インボリュート曲線お
    よびハイポサイクロイド曲線のうちのいずれかを基調と
    した歯形形状を内周部に有するアウタロータと、トロコ
    イド曲線、インボリュート曲線およびハイポサイクロイ
    ド曲線のうちのいずれかを基調とした歯形形状を外周部
    に有するインナロータとを組合せた内接タイプのギアロ
    ータセットの製造方法において、 前記アウタロータは、アルミニウム合金粉末を型押・成
    形した後に加熱・焼結することによって作られ、 前記インナロータは、アルミニウム合金粉末を熱間鍛造
    または熱間押出することによって作られていることを特
    徴とする、粉末アルミニウム合金製ギアロータセットの
    製造方法。
  8. 【請求項8】 前記アウタロータは、焼結後に、金型内
    で塑性変形されて寸法矯正される、請求項7に記載の粉
    末アルミニウム合金製ギアロータセットの製造方法。
  9. 【請求項9】 前記アウタロータの歯形部は、サイジン
    グまたはコイニングによって寸法矯正される、請求項8
    に記載の粉末アルミニウム合金製ギアロータセットの製
    造方法。
  10. 【請求項10】 前記塑性変形前の金型内の焼結体の温
    度は、100℃以上350℃以下に保持される、請求項
    8または9に記載の粉末アルミニウム合金製ギアロータ
    セットの製造方法。
  11. 【請求項11】 前記金型内壁の温度は、100℃以上
    350℃以下に保持される、請求項8〜10のいずれか
    に記載の粉末アルミニウム合金製ギアロータセットの製
    造方法。
  12. 【請求項12】 前記インナロータに対する熱間鍛造ま
    たは熱間押出後に、インナロータの歯形部を機械加工に
    よって形成する、請求項7〜11のいずれかに記載の粉
    末アルミニウム合金製ギアロータセットの製造方法。
JP15713797A 1997-06-13 1997-06-13 粉末アルミニウム合金製ギアロータセットおよびその製造方法 Withdrawn JPH112189A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7459032B2 (en) 2001-06-13 2008-12-02 Kabushiki Kaisha Toyota Chuo Kenkyusho Pressurizing forming process and pressurized-and-formed member
CN102953981A (zh) * 2012-11-22 2013-03-06 无锡惠山泵业有限公司 油泵转子

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US7459032B2 (en) 2001-06-13 2008-12-02 Kabushiki Kaisha Toyota Chuo Kenkyusho Pressurizing forming process and pressurized-and-formed member
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