JPH11217783A - 樹脂分の少ないパルプの製造方法 - Google Patents

樹脂分の少ないパルプの製造方法

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JPH11217783A
JPH11217783A JP31812998A JP31812998A JPH11217783A JP H11217783 A JPH11217783 A JP H11217783A JP 31812998 A JP31812998 A JP 31812998A JP 31812998 A JP31812998 A JP 31812998A JP H11217783 A JPH11217783 A JP H11217783A
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Akio Onda
昭雄 御田
Shigesada Uenoyama
重禎 上野山
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 パルプ製造に際し植物原料に含まれ蒸解や漂
白を阻害する樹脂による障害を解決し、樹脂分の少ない
パルプの製造を可能とする方法を提供する。 【解決手段】 植物原料から機械パルプ、化学パルプ及
び半化学パルプを製造する際に水と任意の割合で混ざり
合う極性の有機溶剤を水または蒸解薬液に加えてパルプ
化処理する。これにより樹脂分を溶出させパルプ化を容
易にするとともに樹脂分含有量の少ないパルプを製造す
ることを可能とする方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はパルプの製造方法に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】セルロースは高等植物を構成する主要成
分であるが、これとともに多かれ少なかれ樹脂分(以下
樹脂、蝋及び油脂等アルコールベンゼン抽出物を総称す
る)を伴っている。パルプ工業はセルロース繊維を木材
及び非木材植物原料から抽出する工業であるが、通常、
原料中の樹脂分が微量のときはパルプの製造に障害とな
らないが、少量含まれていても機械パルプ製造の際には
樹脂障害が起こりやすい。通常量の樹脂分程度ではKP
法、AP法及びPA法(過酸化水素−アルカリ法)のよ
うにアルカリ性の蒸解薬液や、通常の多段漂白のように
アルカリ性の漂白液を用いれば分解除去されて、製造の
障害となったり製品の品質を損ねることは少なかった。
しかし、唐松、赤松、ユーカリ、ゴム廃材等のように樹
脂が多い木材や、バカス(砂糖きびの搾りかす)やバナ
ナの古木等のように表皮にワックスの多い非木材をパル
プ原料とするときは、パルプ化が阻害されるので、界面
活性剤を蒸解薬液や漂白液中に添加するなどして除去に
努めてきた。近年世界的な紙の需要の増加によりパルプ
原料が不足し、従来なら樹脂分が多くてパルプ原料とさ
れなかったものや、蒸解を阻害する樹脂分を含むため嫌
われてきた植物が混入するパルプ原料でも、パルプ工場
を受け入ざるを得なくなっている。原料中に含まれる樹
脂が蒸解や漂白を困難としたり、除去不充分な場合に
は、パルプに移行した樹脂分が抄紙工程でワイヤーやフ
ェルト等を汚して紙の生産性を著しく阻害するばかり
か、製品の紙に移行した樹脂分が著しく紙の商品価値を
損ねる例も多く、最近では一旦パルプとなったものを微
生物の生産する分解酵素を用いて処理し分解除去する方
法も報告されるようになった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、パルプ製造
に際し植物原料に含まれ蒸解や漂白を阻害する樹脂によ
る障害を解決し、樹脂分の少ないパルプの製造を可能と
する方法を提供する。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は前記課題を解
決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至
った。即ち本発明によれば、植物原料から機械パルプ、
化学パルプ及び半化学パルプを製造する際に水と任意の
割合で混ざり合う極性の有機溶剤を水または蒸解薬液に
加えてパルプ化処理する。これにより樹脂分を溶出させ
パルプ化を容易にするとともに樹脂分含有量の少ないパ
ルプを製造することを可能とする方法を提供する。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明で用いるパルプ化の原料は
植物系原料であり、広く木質系植物原料及び非木質系植
物原料を包括する。木質系植物原料としては、赤松、唐
松、樅等の針葉樹、白樺、水楢、ブナ等の広葉樹、ジャ
イヤントイピルイピル、ラワン等の熱帯樹等の各種の樹
木からの木材が挙げられる。非木質系植物原料として
は、コウゾ、ミツマタ、ガンピ、アバカ、パイナップル
等の葉繊維、綿花、カポック等の種毛、竹、稲わら、麦
わら、バガス(砂糖きびの搾り粕)、トウモロコシ等の
イネ科植物の幹茎およびその厚皮等が挙げられる。これ
らの植物系原料は所望により適当な寸法に切断してパル
プ原料となる。本発明では水と任意の割合で混ざり合う
極性の有機溶剤を、パルプ化に用いる水又は水溶液に添
加して使用する。即ち、以下一部の例として挙げる。機
械パルプにあっては水と任意の割合で混ざり合う極性の
有機溶剤を添加した水を解繊に使用する。半化学パルプ
化法のうちNSSC法(中性亜硫酸セミケミカル法)に
あっては水と任意の割合で混ざり合う極性の有機溶剤を
その蒸解薬液である亜硫酸ソーダと炭酸ソーダの水溶液
に添加したものを使用する。ASC法(アルカリ性セミ
ケミカル法)にあっては水と任意の割合で混ざり合う極
性の有機溶剤を苛性ソーダの水溶液に添加して使用す
る。化学パルプ化法にあっては水と任意の割合で混ざり
合う極性の有機溶剤を各種化学パルプ化法の蒸解薬液中
に添加して用いる。KP蒸解法にあっては水と任意の割
合で混ざり合う極性の有機溶剤を硫化ソーダとカセイソ
ーダの混合液に添加して使用する。PA蒸解法にあって
は水と任意の割合で混ざり合う極性の有機溶剤をPA蒸
解薬液(過酸化水素のアルカリ性溶液に所望により蒸解
助剤を加えた混合液)に添加して使用する。このように
本発明は実施が極めて容易であり、樹脂分の除去の効果
は大きく、樹脂分の含有量の小さい機械パルプ、半化学
パルプ及び化学パルプを得るのに適している。また樹脂
の除去により蒸解は促進され、精選パルプ収率の向上
を、化学パルプの蒸解にあっては粕率の低下とが期待で
きる。本発明でパルプの製造に用いる水と任意の割合で
混ざり合う極性の有機溶剤としては、アセトン、メチル
イソブチルケトン、ジメチルスルフォキシド、メトキシ
エタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ピリジ
ンメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジエチルセロ
ソルブ、ブチルセロソルブ、ノルマルアルキルピロリド
ン等が有効で、特にノルマルメチルロリドン(NMP)
は少量の添加でも効果が顕著である。かつNMPは構造
が単純であり合成が容易で資源的にも量産が可能であ
り、毒性がないため取扱が容易で工業的に取り入れやす
い。水と任意の割合で混ざり合う極性の有機溶剤、特に
NMPの添加の適量は原料植物中の樹脂含有量及びパル
プ化法によって異なる。機械パルプ化法にあっては対固
形分当たり水と任意の割合で混ざり合う極性の有機溶剤
の添加量が0.50〜10%、好ましくは1.0〜3.
0%で顕著な効果を示すが、NMPにあっては0.02
〜2.0%、好ましくは0.1〜1.0%と少ない添加
量で、樹脂分が少ないシーズニングを行った材例えばえ
ぞ松等にあっては添加量を少なくしてよい。その添加方
法はポケットグラインダー、又はマガジングラインダ
ー、若しくはシングル又はダブルディスクリファイナー
等で解繊する際に、NMPは使用する水に添加して用
い、排水は解繊用に循環利用することはNMPと水を有
効利用し節約するうえで好ましい。半化学パルプ及び化
学パルプの製造においては蒸解に際してNMPを添加し
た蒸解薬液を用いるが、その添加量は植物原料に対して
対固形分0.02〜2.0%、好ましくは0.1〜1.
0%で、樹脂分が多い、から松やゴム廃材等木質原料
や、ワックス分の多いバガス、稲わら、コットンリンタ
ー等の非木質原料にあっては多く、樹脂分の少ないシー
ズニングを行った材例えばえぞ松等の木質系の原料や麻
ぼろ、綿ぼろ等の非木質系の原料にあっては添加量は少
なくて良い。蒸解に際しては、それぞれの蒸解法に対応
する蒸解薬液にNMPを添加して従来法と同様条件で蒸
解処理すればよく、これによって樹脂が除去されるとと
もに蒸解の促進が認められ、精選パルプの収率の上昇
と、化学パルプ化法においては粕率の低下とが認められ
た。また原料の輸送貯蔵に際し、水と任意の割合で混ざ
り合う極性の有機溶剤、特にNMPを半化学パルプ及び
化学パルプの蒸解薬液に予め混合しておくことは、原料
の、樹脂分の除去と、保存性の向上と、蒸解の温和な進
行、精選パルプ収率の向上、及び粕率の低下をもたらす
ので望ましい。この際KP法においては、蒸解薬液が空
気中の酸素や炭酸ガスに触れることは硫化物を酸化した
り硫化水素が発生するため厳しい対策を必要とする。ま
た、中性亜硫酸法においては蒸解薬液が空気中の酸素に
触れて亜硫酸塩が酸化して蒸解能力を失うため気密にす
るなどの対策を必要としている。一方PA法においては
蒸解薬液は空気に触れても顕著な問題が起きないので厳
密な対策を必要としない。
【0006】
【実施例】次に、本発明を実施例により更に具体的に説
明するが、本発明はこの実施例によって限定されるもの
ではない。また、以下に記す%はいずれも対絶乾%であ
る。
【0007】実施例1 シーズニング処理をしていないエゾマツの丸太(リグニ
ン23.3%、ホロセルロース60.4%、灰分0.3
%、アルコールベンゼン抽出物4.1%)1,035k
gをパルプ原料とした。これにジオキサンを対固形分
7.0%を加えた水を3,500lを掛けながらポケッ
トグラインダーで機械処理し、砕木パルプ1,003k
gを得た。得られたパルプはアルコールベンゼン抽出物
0.7%、灰分0.05%、ハンター白色度44.6
%、裂断長1.6km、比破裂強さ1.6、比引き裂き
強さ49と樹脂分が少なく良質なパルプであった。
【0008】実施例2 ピス(髄質)を除去した湿潤バガス(砂糖きびの搾り
粕、固形分51.2%、ホロセルロース62.3%、リ
グニン18.4%、灰分0.7%、アルコールベンゼン
抽出物3.2%)200kgを半化学パルプ原料とし
た。これにNMPを対固形分0.2%を加えたPA蒸解
薬液(過酸化水素−アルカリ混合溶液)150lを加え
て混合撹拌したのち輸送し、屋根付きの工場土場でさら
に、1ヵ月貯蔵するとともに、緩和な化学反応を進行さ
せた。100℃、10分の熱処理の後ティスクリファイ
ナーで解繊処理を行い、未晒のCGP(ケミグランドパ
ルプ)を78%の収率で得た。得られたパルプはアルコ
ールベンゼン抽出物0.2%、灰分0.05%、ハンタ
ー白色度48.9%、裂断長3.8km、比破裂強さ
3.2、比引き裂き強さ68であった。
【0009】実施例3 砂糖きびのラインド(幹茎部の厚い皮部分:固形分8
5.2%、以下対固形分表示:アルコールベンゼン抽出
物2.4%、灰分0.9%、ホロセルロース68.2
%、リグニン17.4%、)にNPPを対固形分0.1
%を加えたPA蒸解薬液(以下対固形分表示で、NaO
HをNa2Oモル換算で16%、H22を3%、EDT
Aを0.3%、MgOを0.1%)を液比1.8l/k
gとなるように加え130℃で1.5時間の気相蒸解を
行い、粕率1.5%、精選未晒パルプ(化学パルプ)を
48.3%の収率で得た。得られた未晒パルプは灰分
0.05%、アルコールベンゼン抽出物0.03%、カ
ッパー価5、ハンター白色度48.9%、裂断長4.5
km、比破裂強さ2.8、比引き裂き強さ89であっ
た。
【0010】実施例4 アバカ(固形分85.2%、アルコールベンゼン抽出物
2.4%、灰分0.9%、ホロセルロース78.2%、
リグニン17.4%、)にNMPを対固形分0.1%を
加えたNSP(中性亜硫酸法)蒸解薬液(以下対固形分
表示で、Na2SO315%、Na2CO3を6%)を液比
6.5l/kgとなるように加え165℃で3.5時間
の気相蒸解を行い、粕率0.8%、精選未晒パルプ収率
は63.3%であった。得られた未晒パルプは灰分0.
02%、アルコールベンゼン抽出物0.05%、カッパ
ー価5.3、ハンター白色度68.9%、裂断長8.5
km、比破裂強さ5.8、比引き裂き強さ189の樹脂
分が少なく良質のパルプであった。
【0011】実施例5 シベリア唐松チップ(固形分85.1%、アルコールベ
ンゼン抽出物12.3%、灰分0.2%、ホロセルロー
ス60.9%、リグニン22.8%、)にNMPを対固
形分0.3%を加えたKP蒸解薬液(全アルカリNa2
Oとして23.2%、硫化度30%)で液比5.5l/
kg、最高温度172℃、同保持時間2.5時間で蒸解
を行った。粕率は1.9%で精選未晒パルプの収率は4
6.8%であった。同未晒パルプは灰分0.02%、ア
ルコールベンゼン抽出物0.08%、カッパー価28、
ハンター白色度16.3%、裂断長6.8km、比破裂
強さ4.3、比引き裂き強さ112と樹脂分が少なく優
れたパルプであった。
【0012】実施例6 赤松チップ(固形分86.3%、アルコールベンゼン抽
出物9.4%、灰分0.2%、ホロセルロース63.2
%、リグニン24.4%、)にNMPを対固形分0.2
%を加えたPA蒸解薬液(以下対固形分表示で、KOH
をNa2Oモル換算で20%、H22を3%、DTPA
を0.3%、MgOを0.1%)を液比1.6l/kg
となるように加え一週間保存後155℃で1.5時間の
気相蒸解を行い、未晒パルプを49.8%の収率で得
た。得られた未晒パルプは灰分0.02%、アルコール
ベンゼン抽出物0.04%、カッパー価25、ハンター
白色度38.3%、裂断長6.9km、比破裂強さ4.
7、比引き裂き強さ122であった。
【0013】比較例1 実施例1で示したパルプ化で、ジオキサンを加えず従来
法でパルプ化を行い得られたパルプを分析したところア
ルコールベンゼン抽出物量は2.6%であった。
【0014】比較例2 実施例3で示したPA法のパルプ化で、NMPを加えず
蒸解したが、粕率は3.8%で精選未晒パルプの収率は
48.3%であった。得られた精選未晒のアルコールベ
ンゼン抽出物0.9%であった。
【0015】比較例3 実施例4で示した溶剤を加えたNSP法によるアバカの
液相蒸解と比較のため、NMPを加えずに蒸解を行った
が、粕率は2.7%で精選未晒パルプの収率は61.5
%であった。また得られた精選パルプのアルコールベン
ゼン抽出物は1.1%であった。
【0016】比較例4 実施例5で示した、水と相互に溶解する極性の有機溶剤
を加えたKP法によるシベリア唐松チップのパルプ化と
比較のため、NMPを加えずに蒸解を行ったが、粕率は
3.8%で精選未晒パルプの収率は42.8%であっ
た。得られた精選パルプのアルコールベンゼン抽出物は
1.8%であった。
【0017】
【発明の効果】水と相互に溶解する極性の有機溶剤特
に、NMP(N−メチルピロリドン)を機械的、半化学
的及び化学的解繊によって植物繊維原料からパルプを得
る際に添加することにより、樹脂分の多い原料から樹脂
分の除去が可能となり、樹脂分の少ないパルプが得られ
るようになった。即ち、機械的解繊にあっては注加する
水に、半化学及び化学的解繊にあっては蒸解薬液中に対
セルロース原料比0.02〜5%を添加することによっ
て所期の目的が達成される他、樹脂分の多い原料でも蒸
解や解繊が容易に行われるようになり、精選パルプの収
率の向上、さらに化学パルプの製造にあっては粕率が低
下した。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 木材及び非木材セルロース原料から化学
    パルプ、械的パルプ及び半化学パルプ等の製造工程で、
    用いる水又は水溶液に、水と相互に溶解する極性の有機
    溶剤を添加することを特徴とする樹脂分の少ないパルプ
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 水と相互に溶解する極性の有機溶剤とし
    てノルマル−メチル−ピロリドン(NMP)を添加して
    セルロース原料を処理する請求項1の方法。
  3. 【請求項3】 化学パルプ又は半化学パルプを製造する
    際の、蒸解薬液に水と相互に溶解する極性の有機溶剤を
    添加して蒸解を行うことを特徴とする請求項1及び2の
    方法。
  4. 【請求項4】 水と相互に溶解する極性の有機溶剤を添
    加するPA法(過酸化水素−アルカリ法)の蒸解薬液に
    アントラキノン類、シュウ酸、酸素のうち少なくとも1
    種が含まれる請求項1及び2の方法。
  5. 【請求項5】 砕木パルプ、レファイナーパルプ、サー
    モメカニカルパルプ等機械パルプを製造する際に、注加
    水に水と相互に溶解する極性の有機溶剤を添加して解繊
    を行うことを特徴とする請求項1、及び2の方法。
  6. 【請求項6】 未晒パルプの漂白精製の工程で、漂白液
    に、水と相互に溶解する極性の有機溶剤を添加して漂白
    することを特徴とする請求項1、及び2の方法。
  7. 【請求項7】 未晒パルプ及び晒パルプの精選工程にお
    いて、工程で用いる処理水中に水と相互に溶解する極性
    の有機溶剤を添加して精選することを特徴とする請求項
    1、及び2の方法。
  8. 【請求項8】 パルプ廃液を濃縮燃焼し、得られる灰か
    らアルカリを回収し、蒸解薬液を再生してパルプ化に利
    用する請求項1、2、3及び4の方法。
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