JPH09273092A - オイルパーム葉柄のパルプ化における前処理方法 - Google Patents
オイルパーム葉柄のパルプ化における前処理方法Info
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- JPH09273092A JPH09273092A JP8548596A JP8548596A JPH09273092A JP H09273092 A JPH09273092 A JP H09273092A JP 8548596 A JP8548596 A JP 8548596A JP 8548596 A JP8548596 A JP 8548596A JP H09273092 A JPH09273092 A JP H09273092A
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- bleaching
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 オイルパーム葉柄から、上質紙用の高白色度
で強度が高く、かつ退色性に優れたパルプを製造する際
に、蒸解を効果的に行うための前処理方法の提供。 【解決手段】 オイルパーム葉柄を、クラフト蒸解し、
得られるパルプを酸素脱リグニンした後、塩素と次亜塩
素酸塩を含まない漂白薬品からなる多段漂白により漂白
して高白色度のパルプを製造する方法であって、蒸解に
先立ち、前記オイルパーム葉柄を水或いはペクチン分解
酵素を含む水溶液で浸漬処理する。この処理は、液比6
〜20、温度20〜60℃、1〜10時間で行う。
で強度が高く、かつ退色性に優れたパルプを製造する際
に、蒸解を効果的に行うための前処理方法の提供。 【解決手段】 オイルパーム葉柄を、クラフト蒸解し、
得られるパルプを酸素脱リグニンした後、塩素と次亜塩
素酸塩を含まない漂白薬品からなる多段漂白により漂白
して高白色度のパルプを製造する方法であって、蒸解に
先立ち、前記オイルパーム葉柄を水或いはペクチン分解
酵素を含む水溶液で浸漬処理する。この処理は、液比6
〜20、温度20〜60℃、1〜10時間で行う。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、オイルパームの葉
柄部からパルプを製造する際に蒸解を効果的に行うため
の前処理方法に関する。
柄部からパルプを製造する際に蒸解を効果的に行うため
の前処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、熱帯或いは亜熱帯地方で栽培され
るオイルパーム材(単子葉植物網、やし目、やし科、ア
ブラヤシ属)の実からは、パームオイルが採取されてい
る。このパームオイルは、生分解性があることから、近
年、食用油や洗剤原料として多量に使用されるようにな
った。しかしながら、パームオイルの生産量の増大に伴
い、油を絞った後の空果房(Empty Fruit Bunch)、実
を取る際に切断される葉柄及び25年周期で伐採される
幹が、副産物として大量に排出されるが、これらの副産
物は、有効利用されることなく、そのほとんどは廃棄さ
れているのが現状である。特に、葉柄部分は実を収穫す
る際に大量に排出されること、しかも重量があるので、
排出量としてはオイルパーム副産物の中では最も量が多
く、その有効利用法が切望されている。
るオイルパーム材(単子葉植物網、やし目、やし科、ア
ブラヤシ属)の実からは、パームオイルが採取されてい
る。このパームオイルは、生分解性があることから、近
年、食用油や洗剤原料として多量に使用されるようにな
った。しかしながら、パームオイルの生産量の増大に伴
い、油を絞った後の空果房(Empty Fruit Bunch)、実
を取る際に切断される葉柄及び25年周期で伐採される
幹が、副産物として大量に排出されるが、これらの副産
物は、有効利用されることなく、そのほとんどは廃棄さ
れているのが現状である。特に、葉柄部分は実を収穫す
る際に大量に排出されること、しかも重量があるので、
排出量としてはオイルパーム副産物の中では最も量が多
く、その有効利用法が切望されている。
【0003】有効利用の一つの方法として、オイルパー
ム副産物をパルプ化してパルプを製造し、それから紙を
製造する方法がある。この有効利用方法は、オイルパー
ム材を産出する国における紙の需要を満たす一助になる
ばかりではなく、廃棄処分による環境汚染を防ぐことが
できる。パルプ化法としては、苛性ソーダ(ソーダ蒸
解)、苛性ソーダと硫化ソーダ(クラフト蒸解)等の薬
品を用いてパルプ化する化学パルプ化法や苛性ソーダの
ような薬品を併用して、或いは併用せずに機械的に磨砕
する機械パルプ化法が知られている。特開昭62−28
2089号公報及び特開平4−65591号公報には、
オイルパームの葉柄に薬剤を添加した後、機械パルプ化
する方法が開示されているが、未晒パルプの白色度は2
6%以下と低く、上質紙原料としては利用できないこと
が記載されている。
ム副産物をパルプ化してパルプを製造し、それから紙を
製造する方法がある。この有効利用方法は、オイルパー
ム材を産出する国における紙の需要を満たす一助になる
ばかりではなく、廃棄処分による環境汚染を防ぐことが
できる。パルプ化法としては、苛性ソーダ(ソーダ蒸
解)、苛性ソーダと硫化ソーダ(クラフト蒸解)等の薬
品を用いてパルプ化する化学パルプ化法や苛性ソーダの
ような薬品を併用して、或いは併用せずに機械的に磨砕
する機械パルプ化法が知られている。特開昭62−28
2089号公報及び特開平4−65591号公報には、
オイルパームの葉柄に薬剤を添加した後、機械パルプ化
する方法が開示されているが、未晒パルプの白色度は2
6%以下と低く、上質紙原料としては利用できないこと
が記載されている。
【0004】また、CELLULOSE CHEMISTRY AND THECHNOL
OGY、21、(1987)191〜197頁には、サー
モメカニカルパルプ(TMP)としては漂白し易い空果
房からのパルプを用いた過酸化水素晒が検討されている
が、過酸化水素を絶乾パルプ当り10%添加した一段漂
白により白色度は30%から55%に到達するに過ぎな
いことが開示されている。一方、薬品を用いて蒸解する
ことによるパルプ化については、オイルパーム副産物の
内、空果房と幹は、易蒸解性で、得られたパルプ繊維も
易漂白性であり、これらの副産物からのパルプ繊維で上
質の紙を製造することは格別の困難性を伴わない。
OGY、21、(1987)191〜197頁には、サー
モメカニカルパルプ(TMP)としては漂白し易い空果
房からのパルプを用いた過酸化水素晒が検討されている
が、過酸化水素を絶乾パルプ当り10%添加した一段漂
白により白色度は30%から55%に到達するに過ぎな
いことが開示されている。一方、薬品を用いて蒸解する
ことによるパルプ化については、オイルパーム副産物の
内、空果房と幹は、易蒸解性で、得られたパルプ繊維も
易漂白性であり、これらの副産物からのパルプ繊維で上
質の紙を製造することは格別の困難性を伴わない。
【0005】しかしながら、葉柄の蒸解と漂白につい
て、CELLULOSE CHEMISTRY AND TECHNOLOGY、22、(1
988)、449〜456頁には、葉柄をクラフト蒸解
した後、次亜塩素酸塩のみで漂白する方法が開示されて
いるが、未晒パルプのハンター白色度はおよそ20%
で、水洗して水可溶性の着色物質を除去すると26%に
なるが極めて低い水準にある。一段漂白で次亜塩素酸塩
を絶乾パルプ重量当り3%(有効塩素として)添加する
と、白色度は60%となり、10%の有効塩素でも白色
度80%がやっと達成できるに過ぎない。これに対し、
二段漂白では、(1+1)%有効塩素で65%の白色度
になり、多段漂白の方が優れている。葉柄パルプより空
果房パルプの方が漂白し易いが、これは未晒パルプの残
留リグニンの量が空果房のものが1%に対して葉柄のも
のが5%という違いにあり、針葉樹クラフト未晒パルプ
と同じ程度の漂白性であるといわれている。
て、CELLULOSE CHEMISTRY AND TECHNOLOGY、22、(1
988)、449〜456頁には、葉柄をクラフト蒸解
した後、次亜塩素酸塩のみで漂白する方法が開示されて
いるが、未晒パルプのハンター白色度はおよそ20%
で、水洗して水可溶性の着色物質を除去すると26%に
なるが極めて低い水準にある。一段漂白で次亜塩素酸塩
を絶乾パルプ重量当り3%(有効塩素として)添加する
と、白色度は60%となり、10%の有効塩素でも白色
度80%がやっと達成できるに過ぎない。これに対し、
二段漂白では、(1+1)%有効塩素で65%の白色度
になり、多段漂白の方が優れている。葉柄パルプより空
果房パルプの方が漂白し易いが、これは未晒パルプの残
留リグニンの量が空果房のものが1%に対して葉柄のも
のが5%という違いにあり、針葉樹クラフト未晒パルプ
と同じ程度の漂白性であるといわれている。
【0006】一方、オイルパームに似たラフィアパーム
の葉柄のクラフト蒸解については、CELLULOSE CHEMISTR
Y AND TECHNOLOGY、20、(1986)73〜82頁に
開示されているが、蒸解後(有効アルカリ添加率、18
%対チップ、asNaOH、最高温度170℃、保持時
間60分、全収率47.7%、ペントザン含有率21%
対絶乾パルプ)のパルプのカッパー価は29と高く、難
蒸解性である。又、同引例の20巻、(1986)86
9〜878頁には、ラフィアパームの葉柄をクラフト蒸
解してパルプのカッパー価を15〜22に低下させた
後、C/D−E−H−D(Cは塩素化、Eはアルカリ抽
出、Hは次亜塩素酸塩漂白、Dは二酸化塩素漂白を示
す)の多段漂白シーケンスで漂白した結果、晒薬品添加
率を有効塩素換算で対絶乾パルプ5.9〜6.5%と多
量に添加すれば、白色度は87〜89%に達するもの
の、PC価は、上質用パルプとして汎用されている広葉
樹晒パルプに較べて大きく、パルプの退色性に問題があ
ることが報告されている。このラフィアパーム葉柄から
の晒パルプの強度も、広葉樹晒パルプのものに較べて低
い。
の葉柄のクラフト蒸解については、CELLULOSE CHEMISTR
Y AND TECHNOLOGY、20、(1986)73〜82頁に
開示されているが、蒸解後(有効アルカリ添加率、18
%対チップ、asNaOH、最高温度170℃、保持時
間60分、全収率47.7%、ペントザン含有率21%
対絶乾パルプ)のパルプのカッパー価は29と高く、難
蒸解性である。又、同引例の20巻、(1986)86
9〜878頁には、ラフィアパームの葉柄をクラフト蒸
解してパルプのカッパー価を15〜22に低下させた
後、C/D−E−H−D(Cは塩素化、Eはアルカリ抽
出、Hは次亜塩素酸塩漂白、Dは二酸化塩素漂白を示
す)の多段漂白シーケンスで漂白した結果、晒薬品添加
率を有効塩素換算で対絶乾パルプ5.9〜6.5%と多
量に添加すれば、白色度は87〜89%に達するもの
の、PC価は、上質用パルプとして汎用されている広葉
樹晒パルプに較べて大きく、パルプの退色性に問題があ
ることが報告されている。このラフィアパーム葉柄から
の晒パルプの強度も、広葉樹晒パルプのものに較べて低
い。
【0007】蒸解条件や漂白条件を厳しくするのではな
く、蒸解に先立ち前記葉柄に前処理を施し、蒸解性と漂
白性を向上させる方法も種々提案されている。特にマニ
ラ麻のような葉繊維、楮、三椏等の靭皮繊維等の非木材
系セルロース物質に関しては、発酵精錬と呼ばれる前処
理を施すパルプ化法が行われていることが、非木材紙普
及協会発行のジェルバレポート(1995 Vol.
1,No.2、10〜12頁)に開示されている。この
方法で用いられている前処理は、蒸解に先立ち、繊維束
中の繊維間中に存在する三次元化し、リグニン化したペ
クチン質を、自然界に存在する黴や細菌を用いて発酵分
解し、ペクチンを破壊して水溶化させ、蒸解性と漂白性
を改善するための技術である。精錬発酵のなかで一般的
な露滴発酵精錬工程では、前処理液中に非木材繊維を浸
漬して放置するが、この期間には数週間かかり、しかも
この間試料を度々ひっくり返さなければならない等の手
間と時間がかかる。更に、このような前処理は天候に左
右され、その精錬度を進ませ過ぎると、細菌によるセル
ロース繊維の損傷が発生し、品質、特にパルプ強度が顕
著に劣化するという欠点がある。
く、蒸解に先立ち前記葉柄に前処理を施し、蒸解性と漂
白性を向上させる方法も種々提案されている。特にマニ
ラ麻のような葉繊維、楮、三椏等の靭皮繊維等の非木材
系セルロース物質に関しては、発酵精錬と呼ばれる前処
理を施すパルプ化法が行われていることが、非木材紙普
及協会発行のジェルバレポート(1995 Vol.
1,No.2、10〜12頁)に開示されている。この
方法で用いられている前処理は、蒸解に先立ち、繊維束
中の繊維間中に存在する三次元化し、リグニン化したペ
クチン質を、自然界に存在する黴や細菌を用いて発酵分
解し、ペクチンを破壊して水溶化させ、蒸解性と漂白性
を改善するための技術である。精錬発酵のなかで一般的
な露滴発酵精錬工程では、前処理液中に非木材繊維を浸
漬して放置するが、この期間には数週間かかり、しかも
この間試料を度々ひっくり返さなければならない等の手
間と時間がかかる。更に、このような前処理は天候に左
右され、その精錬度を進ませ過ぎると、細菌によるセル
ロース繊維の損傷が発生し、品質、特にパルプ強度が顕
著に劣化するという欠点がある。
【0008】この前処理の改良法として、タンクのよう
な密閉容器内でセルロース物質を水浸漬する発酵精錬が
ある。これはタンク中でペクチン分解酵素の存在下に嫌
気性発酵を起こさせ、温度が15〜18℃で12〜14
日間かかるが、温度を30℃にすると5日に減少できる
というものである。しかしながら、この方法でも前処理
に非常に長い時間を必要とし、オイルパーム葉柄部から
上質紙の原料としてパルプを得る前処理方法としては現
実的ではなく、又、このような方法をオイルパーム葉柄
の処理のために適用した前例もない。前記したように、
今まで廃棄処理されていたオイルパームの葉柄部を有効
利用することは、地球環境の点でも好ましいが、雑誌、
書籍等の上質紙用に使用可能な品質を有するパルプを得
るために、大量の薬品とエネルギーを使用することは、
特に漂白工程でパルプの白色度を高めるために多量の塩
素系薬品を使用することは地球環境の観点からも望まし
くない。又、パルプ化のための前処理として、相当な手
間や時間をかけることは、パルプの製造コストを高騰さ
せることにもなり、好ましい方法とはいえない。
な密閉容器内でセルロース物質を水浸漬する発酵精錬が
ある。これはタンク中でペクチン分解酵素の存在下に嫌
気性発酵を起こさせ、温度が15〜18℃で12〜14
日間かかるが、温度を30℃にすると5日に減少できる
というものである。しかしながら、この方法でも前処理
に非常に長い時間を必要とし、オイルパーム葉柄部から
上質紙の原料としてパルプを得る前処理方法としては現
実的ではなく、又、このような方法をオイルパーム葉柄
の処理のために適用した前例もない。前記したように、
今まで廃棄処理されていたオイルパームの葉柄部を有効
利用することは、地球環境の点でも好ましいが、雑誌、
書籍等の上質紙用に使用可能な品質を有するパルプを得
るために、大量の薬品とエネルギーを使用することは、
特に漂白工程でパルプの白色度を高めるために多量の塩
素系薬品を使用することは地球環境の観点からも望まし
くない。又、パルプ化のための前処理として、相当な手
間や時間をかけることは、パルプの製造コストを高騰さ
せることにもなり、好ましい方法とはいえない。
【0009】したがって、安価で且つ簡便な前処理によ
って、オイルパーム葉柄部の蒸解性と漂白性を容易にし
得る方法、即ち前記葉柄部を簡便な前処理法を施すこと
により、通常のアルカリ添加率でクラフト蒸解して、パ
ルプカッパー価を低くし、それによって塩素や次亜塩素
酸塩のようなAOXを発生し、環境汚染を引き起こす塩
素系漂白薬品を使用しなくとも、白色度と強度を、少な
い漂白薬品量で高くし、しかも退色性に優れるパルプの
製造を可能にする前処理方法が強く望まれている。
って、オイルパーム葉柄部の蒸解性と漂白性を容易にし
得る方法、即ち前記葉柄部を簡便な前処理法を施すこと
により、通常のアルカリ添加率でクラフト蒸解して、パ
ルプカッパー価を低くし、それによって塩素や次亜塩素
酸塩のようなAOXを発生し、環境汚染を引き起こす塩
素系漂白薬品を使用しなくとも、白色度と強度を、少な
い漂白薬品量で高くし、しかも退色性に優れるパルプの
製造を可能にする前処理方法が強く望まれている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】オイルパームからの副
産物のうち、排出量が最も多い葉柄をパルプ原料として
用いた場合、機械パルプとし、これを漂白しても白色度
と強度の高い晒パルプを得ることは困難であった。一
方、前記葉柄をクラフト蒸解しても、得られる未晒パル
プのカッパー価は高く、白色度は非常に低く、そのまま
の状態では段ボール中芯のように低白色度でも使用でき
る用途にしか向けられない。仮に、その未晒パルプを多
段漂白シーケンスで漂白しても塩素系の漂白薬品を大量
に使用しないと、或いは使用しても上質紙に適するパル
プ品質を得ることは非常に困難である。又、未晒パルプ
の白色度を高くする目的で、蒸解工程でアルカリ添加率
を高くする等の蒸解条件を強化して脱リグニンを進める
と、未晒パルプのカッパー価は低下し、白色度は上昇す
るものの、パルプ収率が大幅に低下し、強度損失も激し
いので、蒸解条件だけの工夫では、パルプの白色度が高
く、強度の優れた上質紙用のパルプを得ることは不可能
であった。
産物のうち、排出量が最も多い葉柄をパルプ原料として
用いた場合、機械パルプとし、これを漂白しても白色度
と強度の高い晒パルプを得ることは困難であった。一
方、前記葉柄をクラフト蒸解しても、得られる未晒パル
プのカッパー価は高く、白色度は非常に低く、そのまま
の状態では段ボール中芯のように低白色度でも使用でき
る用途にしか向けられない。仮に、その未晒パルプを多
段漂白シーケンスで漂白しても塩素系の漂白薬品を大量
に使用しないと、或いは使用しても上質紙に適するパル
プ品質を得ることは非常に困難である。又、未晒パルプ
の白色度を高くする目的で、蒸解工程でアルカリ添加率
を高くする等の蒸解条件を強化して脱リグニンを進める
と、未晒パルプのカッパー価は低下し、白色度は上昇す
るものの、パルプ収率が大幅に低下し、強度損失も激し
いので、蒸解条件だけの工夫では、パルプの白色度が高
く、強度の優れた上質紙用のパルプを得ることは不可能
であった。
【0011】本発明者等は、かかる現状に鑑み、この原
因について多角的に検討した結果、蒸解性と漂白性が悪
いのは、オイルパームの葉柄部に多く含まれ、且つペク
チンが主成分である柔細胞の影響が大きいことにあると
の結論を得、葉柄を蒸解前に水又はペクチン分解酵素を
含む水溶液に短時間浸漬して前処理し、柔細胞を除去す
れば、その後の蒸解段における脱リグニン性が顕著に改
善されて、パルプ繊維を損傷させることなく低いカッパ
ー価が得られ、それに続く塩素や次亜塩素酸塩を含まな
い非塩素系漂白薬品による多段漂白シーケンスでの脱リ
グニン性や漂白性も改善でき、しかも得られるパルプの
退色性が顕著に改善されると言う驚くべき事実を見出
し、本発明を完成するに至った。本発明の目的は、オイ
ルパーム葉柄からの未晒クラフトパルプのカッパー価が
高く、白色度が低いといった欠点を克服し、その後の漂
白において塩素と次亜塩素酸塩を用いない多段漂白シー
ケンスの使用を可能にしたために、AOX(塩化有機
物)の排出が比較的少なく、更にクロロホルムを生成す
ることもなく、白色度が高く、退色性の少ない上質紙の
ために使用できる漂白パルプが得られる前処理方法を提
供することにある。
因について多角的に検討した結果、蒸解性と漂白性が悪
いのは、オイルパームの葉柄部に多く含まれ、且つペク
チンが主成分である柔細胞の影響が大きいことにあると
の結論を得、葉柄を蒸解前に水又はペクチン分解酵素を
含む水溶液に短時間浸漬して前処理し、柔細胞を除去す
れば、その後の蒸解段における脱リグニン性が顕著に改
善されて、パルプ繊維を損傷させることなく低いカッパ
ー価が得られ、それに続く塩素や次亜塩素酸塩を含まな
い非塩素系漂白薬品による多段漂白シーケンスでの脱リ
グニン性や漂白性も改善でき、しかも得られるパルプの
退色性が顕著に改善されると言う驚くべき事実を見出
し、本発明を完成するに至った。本発明の目的は、オイ
ルパーム葉柄からの未晒クラフトパルプのカッパー価が
高く、白色度が低いといった欠点を克服し、その後の漂
白において塩素と次亜塩素酸塩を用いない多段漂白シー
ケンスの使用を可能にしたために、AOX(塩化有機
物)の排出が比較的少なく、更にクロロホルムを生成す
ることもなく、白色度が高く、退色性の少ない上質紙の
ために使用できる漂白パルプが得られる前処理方法を提
供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の第一は、オイル
パーム葉柄を、クラフト蒸解し、得られるパルプを酸素
脱リグニンした後、塩素と次亜塩素酸塩を含まない漂白
薬品からなる多段漂白により漂白して高白色度のパルプ
を製造する際に、蒸解に先立ち、前記オイルパーム葉柄
部を水に浸漬することを特徴とするオイルパーム葉柄の
パルプ化における前処理方法である。本発明の第二は、
前記オイルパーム葉柄をペクチン分解酵素を含有する水
溶液に浸漬することを特徴とする本発明第一に記載のオ
イルパーム葉柄のパルプ化における前処理方法である。
本発明の第三は、前記前処理が、液比6〜20、温度2
0〜60℃、1〜10時間で浸漬することからなること
を特徴とする本発明第一又はニに記載のオイルパーム葉
柄のパルプ化における前処理方法である。本発明の第四
は、ペクチン分解酵素が、エルビニア(Erwinia)、シュ
ードモナス(Pseudomonas)、バチルス(Bacillus)、シ
トファーガ(Cytophaga)、クラドスポリウム(Cladospo
rium)、ムコール(Mucor)及びアスペルギルス(Asperg
illus)から選ばれたいずれか一つ又は複数の微生物よ
り得られることを特徴とする本発明第二に記載のオイル
パーム葉柄のパルプ化における前処理方法である。
パーム葉柄を、クラフト蒸解し、得られるパルプを酸素
脱リグニンした後、塩素と次亜塩素酸塩を含まない漂白
薬品からなる多段漂白により漂白して高白色度のパルプ
を製造する際に、蒸解に先立ち、前記オイルパーム葉柄
部を水に浸漬することを特徴とするオイルパーム葉柄の
パルプ化における前処理方法である。本発明の第二は、
前記オイルパーム葉柄をペクチン分解酵素を含有する水
溶液に浸漬することを特徴とする本発明第一に記載のオ
イルパーム葉柄のパルプ化における前処理方法である。
本発明の第三は、前記前処理が、液比6〜20、温度2
0〜60℃、1〜10時間で浸漬することからなること
を特徴とする本発明第一又はニに記載のオイルパーム葉
柄のパルプ化における前処理方法である。本発明の第四
は、ペクチン分解酵素が、エルビニア(Erwinia)、シュ
ードモナス(Pseudomonas)、バチルス(Bacillus)、シ
トファーガ(Cytophaga)、クラドスポリウム(Cladospo
rium)、ムコール(Mucor)及びアスペルギルス(Asperg
illus)から選ばれたいずれか一つ又は複数の微生物よ
り得られることを特徴とする本発明第二に記載のオイル
パーム葉柄のパルプ化における前処理方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明は、オイルパーム葉柄をク
ラフト蒸解する前に、水又はペクチン分解酵素を含む水
溶液で前記葉柄を浸漬処理することによって、葉柄中に
含まれる柔細胞を水に溶出させて除き、その後葉柄をク
ラフト蒸解し、酸素による脱リグニンを行い、更に塩素
と次亜塩素酸塩を含まない漂白薬品からなる多段漂白シ
ーケンスで漂白することを特徴とする、オイルパーム葉
柄のパルプ化のための前処理方法である。本発明で使用
されるオイルパーム葉柄は、オイルパームの木の実から
採取された油を製品とするためにマレーシア、インドネ
シア等の東南アジア地域で広く栽培、植林されているオ
イルパーム(ヤシ)の葉である。本発明の水処理におい
ては、水の種類は特に限定されず、水道水、河川水、ろ
過清水、その他の工業用水、イオン交換水等、通常工場
で用いられる清水であれば種類を問わない。
ラフト蒸解する前に、水又はペクチン分解酵素を含む水
溶液で前記葉柄を浸漬処理することによって、葉柄中に
含まれる柔細胞を水に溶出させて除き、その後葉柄をク
ラフト蒸解し、酸素による脱リグニンを行い、更に塩素
と次亜塩素酸塩を含まない漂白薬品からなる多段漂白シ
ーケンスで漂白することを特徴とする、オイルパーム葉
柄のパルプ化のための前処理方法である。本発明で使用
されるオイルパーム葉柄は、オイルパームの木の実から
採取された油を製品とするためにマレーシア、インドネ
シア等の東南アジア地域で広く栽培、植林されているオ
イルパーム(ヤシ)の葉である。本発明の水処理におい
ては、水の種類は特に限定されず、水道水、河川水、ろ
過清水、その他の工業用水、イオン交換水等、通常工場
で用いられる清水であれば種類を問わない。
【0014】葉柄に水処理を施すための容器或いは装置
についても特に限定はしないが、葉柄に水を含浸させ、
水が満遍なく行きわたるように撹拌機、ミキサー、回流
ポンプ等を備えたタンク、チェスト、タワー等の容器で
あれば良い。葉柄部は嵩高であり、原料を充分に処理す
るには、多量の水が必要であるが、原料の絶乾重量に対
する水又は水溶液の重量で定義される液比は高いほど、
柔細胞の除去には効率が良い。しかし、液量が多いと排
水量も多くなるので、実機を想定すると液比は6〜2
0、好ましくは10〜15の範囲である。温度は、高い
ほど保持時間は短くてすむが、20〜60℃、好ましく
は30〜40℃である。温度が60℃を超えると、パル
プ繊維の損傷が生じ、温度が20℃未満では柔細胞の除
去に時間を要する。保持時間は長いほど柔細胞を除去す
る効果に優れるが、実機での生産性を考慮すると1〜1
0時間、好ましくは2〜6時間の範囲である。
についても特に限定はしないが、葉柄に水を含浸させ、
水が満遍なく行きわたるように撹拌機、ミキサー、回流
ポンプ等を備えたタンク、チェスト、タワー等の容器で
あれば良い。葉柄部は嵩高であり、原料を充分に処理す
るには、多量の水が必要であるが、原料の絶乾重量に対
する水又は水溶液の重量で定義される液比は高いほど、
柔細胞の除去には効率が良い。しかし、液量が多いと排
水量も多くなるので、実機を想定すると液比は6〜2
0、好ましくは10〜15の範囲である。温度は、高い
ほど保持時間は短くてすむが、20〜60℃、好ましく
は30〜40℃である。温度が60℃を超えると、パル
プ繊維の損傷が生じ、温度が20℃未満では柔細胞の除
去に時間を要する。保持時間は長いほど柔細胞を除去す
る効果に優れるが、実機での生産性を考慮すると1〜1
0時間、好ましくは2〜6時間の範囲である。
【0015】本発明において、酵素を含有する水溶液で
処理する場合には、酵素はオイルパーム葉柄中に多く含
まれる柔細胞の主成分であるペクチンを分解するする酵
素を産出する、エルビニア(Erwinia)、シュードモナ
ス(Pseudomonas)、バチルス(Bacillus)、シトファ
ーガ(Cytophaga)、クラドスポリウム(Cladosporiu
m)、ムコール(Mucor)、アスペルギルス(Aspergillu
s)等から選ばれた微生物のいずれか一種或いは複数種
の培養液を直接用いるか、或いはこれらの培養液から得
られたペクチン分解酵素を用いて、それぞれの酵素に適
した下記に示す条件で葉柄を処理する。例えば、エルビ
ニア(Erwinia)、シュードモナス(Pseudomonas)及び
バチルス(Bacillus)のペクチン分解酵素を用いる場
合、酵素添加量は葉柄の絶乾重量(1g)当り500〜
2000U、好ましくは1000〜1800Uの範囲で
ある。この場合、水溶液のpHは酵素が反応し易い7〜
11、好ましくは8〜10の範囲で用いられる。一方、
アスペルギルス(Aspergillus)のようなかびから得ら
れるペクチン分解酵素を用いる場合、水溶液のpHは4
〜7の範囲が好ましい。
処理する場合には、酵素はオイルパーム葉柄中に多く含
まれる柔細胞の主成分であるペクチンを分解するする酵
素を産出する、エルビニア(Erwinia)、シュードモナ
ス(Pseudomonas)、バチルス(Bacillus)、シトファ
ーガ(Cytophaga)、クラドスポリウム(Cladosporiu
m)、ムコール(Mucor)、アスペルギルス(Aspergillu
s)等から選ばれた微生物のいずれか一種或いは複数種
の培養液を直接用いるか、或いはこれらの培養液から得
られたペクチン分解酵素を用いて、それぞれの酵素に適
した下記に示す条件で葉柄を処理する。例えば、エルビ
ニア(Erwinia)、シュードモナス(Pseudomonas)及び
バチルス(Bacillus)のペクチン分解酵素を用いる場
合、酵素添加量は葉柄の絶乾重量(1g)当り500〜
2000U、好ましくは1000〜1800Uの範囲で
ある。この場合、水溶液のpHは酵素が反応し易い7〜
11、好ましくは8〜10の範囲で用いられる。一方、
アスペルギルス(Aspergillus)のようなかびから得ら
れるペクチン分解酵素を用いる場合、水溶液のpHは4
〜7の範囲が好ましい。
【0016】液比は水で処理する場合と同様に、6〜2
0、好ましくは10〜15の範囲である。処理温度も水
で処理する場合と同様、20〜60℃、好ましくは30
〜40℃の範囲である。維持時間は、2〜6時間、好ま
しくは3〜5時間の範囲である。塩化カルシウム(Ca
Cl2)溶液を補助剤として少量併用すると効果が促進
される。又、これらのペクチン分解酵素は、セルラーゼ
活性を全く含まないか或いは含んでいても活性ができる
限り低いことが望ましい。本発明におけるペクチン分解
酵素の活性は、リンゴ製ペクチンを基質とし、基質0.
25重量%、CaCl2を1ミリモル/リットル、Tr
is−HCl(トリス塩酸緩衝液、pH8.0)を10
ミリモル/リットル含む反応液中で、30℃で反応さ
せ、1分間に紫外線235nmの吸光度を0.01上昇
させる活性を1単位と定義され、Uで示す。
0、好ましくは10〜15の範囲である。処理温度も水
で処理する場合と同様、20〜60℃、好ましくは30
〜40℃の範囲である。維持時間は、2〜6時間、好ま
しくは3〜5時間の範囲である。塩化カルシウム(Ca
Cl2)溶液を補助剤として少量併用すると効果が促進
される。又、これらのペクチン分解酵素は、セルラーゼ
活性を全く含まないか或いは含んでいても活性ができる
限り低いことが望ましい。本発明におけるペクチン分解
酵素の活性は、リンゴ製ペクチンを基質とし、基質0.
25重量%、CaCl2を1ミリモル/リットル、Tr
is−HCl(トリス塩酸緩衝液、pH8.0)を10
ミリモル/リットル含む反応液中で、30℃で反応さ
せ、1分間に紫外線235nmの吸光度を0.01上昇
させる活性を1単位と定義され、Uで示す。
【0017】本発明の前処理方法で処理されたオイルパ
ームの葉柄は、脱液を行い、その後クラフト蒸解が行わ
れる。このクラフト蒸解は、木材チップを蒸解する通常
の蒸解条件の範囲から適宜選択して用いられる。葉柄の
容積重は、300〜400kg/m3であり、木材チッ
プの針葉樹330〜480kg/m3、広葉樹450〜
700kg/m3に較べると、針葉樹並で、ポプラやア
スペンのような材種を除く広葉樹より低いことから、液
比は2〜15、好ましくは5〜10とされ、クラフト蒸
解白液の硫化度は5〜40%、好ましくは10〜30
%、有効アルカリの添加率は、絶乾チップ重量当り5〜
40重量%、好ましくは10〜30重量%である。蒸解
温度は110〜180℃、好ましくは130〜170℃
である。蒸解法はクラフト法であれば、方法は特に限定
しないが、多硫化ソーダや公知のアントラキノンに代表
される環状ケト化合物をクラフト白液に添加しても良
く、カミヤ連続蒸解釜、パンディア連続蒸解釜、M&D
連続蒸解釜等による連続式の蒸解法或いはバッチ釜によ
るバッチ式蒸解法であっても良い。又、蒸解液を多点で
添加する修正アルカリ蒸解法等の改良されたクラフト蒸
解法(MCC)でも良い。
ームの葉柄は、脱液を行い、その後クラフト蒸解が行わ
れる。このクラフト蒸解は、木材チップを蒸解する通常
の蒸解条件の範囲から適宜選択して用いられる。葉柄の
容積重は、300〜400kg/m3であり、木材チッ
プの針葉樹330〜480kg/m3、広葉樹450〜
700kg/m3に較べると、針葉樹並で、ポプラやア
スペンのような材種を除く広葉樹より低いことから、液
比は2〜15、好ましくは5〜10とされ、クラフト蒸
解白液の硫化度は5〜40%、好ましくは10〜30
%、有効アルカリの添加率は、絶乾チップ重量当り5〜
40重量%、好ましくは10〜30重量%である。蒸解
温度は110〜180℃、好ましくは130〜170℃
である。蒸解法はクラフト法であれば、方法は特に限定
しないが、多硫化ソーダや公知のアントラキノンに代表
される環状ケト化合物をクラフト白液に添加しても良
く、カミヤ連続蒸解釜、パンディア連続蒸解釜、M&D
連続蒸解釜等による連続式の蒸解法或いはバッチ釜によ
るバッチ式蒸解法であっても良い。又、蒸解液を多点で
添加する修正アルカリ蒸解法等の改良されたクラフト蒸
解法(MCC)でも良い。
【0018】クラフト蒸解によって、蒸解され、解繊さ
れた葉柄の未精選パルプは、蒸解済み廃液(黒液)と分
離され、続いて洗浄され、更にスクリーンにより未蒸解
物が除去されて或いは未蒸解物を含んだまま酸素脱リグ
ニン(酸素漂白)が行われる。この酸素脱リグニンにお
いては、アルカリの存在下に酸素により蒸解済み葉柄ク
ラフトパルプの脱リグニンが行われ、前記パルプに含有
されているリグニンの40〜65%が除去される。本発
明の前処理が施され、クラフト蒸解された酸素漂白工程
に入る前のオイルパーム葉柄からのパルプのカッパー価
は12〜20、好ましくは14〜18の範囲となるよう
に前処理の条件とクラフト蒸解の条件を選ぶ必要があ
る。カッパー価が12未満では、漂白工程での薬品が少
なくてハンター白色度84〜85%を容易に達成できる
が、パルプ粘度が著しく低下し、パルプの強度が損なわ
れるので適さない。これに対しカッパー価が20を超え
ると漂白工程での薬品添加量を多くする必要があり、漂
白薬品費が高くなり、パルプ強度の低下も免れない。
れた葉柄の未精選パルプは、蒸解済み廃液(黒液)と分
離され、続いて洗浄され、更にスクリーンにより未蒸解
物が除去されて或いは未蒸解物を含んだまま酸素脱リグ
ニン(酸素漂白)が行われる。この酸素脱リグニンにお
いては、アルカリの存在下に酸素により蒸解済み葉柄ク
ラフトパルプの脱リグニンが行われ、前記パルプに含有
されているリグニンの40〜65%が除去される。本発
明の前処理が施され、クラフト蒸解された酸素漂白工程
に入る前のオイルパーム葉柄からのパルプのカッパー価
は12〜20、好ましくは14〜18の範囲となるよう
に前処理の条件とクラフト蒸解の条件を選ぶ必要があ
る。カッパー価が12未満では、漂白工程での薬品が少
なくてハンター白色度84〜85%を容易に達成できる
が、パルプ粘度が著しく低下し、パルプの強度が損なわ
れるので適さない。これに対しカッパー価が20を超え
ると漂白工程での薬品添加量を多くする必要があり、漂
白薬品費が高くなり、パルプ強度の低下も免れない。
【0019】前記酸素脱リグニンは、パルプ濃度1〜2
0重量%、好ましくは5〜15重量%、酸素圧力は、高
い圧力ほど脱リグニンは進むが、耐圧容器の設計を考慮
するリアクターの頂部で全圧力が10kg/cm2(ゲ
ージ圧力)を超えない範囲とし、反応温度は70〜13
0℃、好ましくは80〜110℃の範囲、反応時間は1
0〜120分、好ましくは20〜60分の範囲、アルカ
リは苛性ソーダ或いは酸化白液をNaOHとして絶乾パ
ルプ重量当り酸素漂白入り口のパルプのカッパー価×
0.12〜0.17%の範囲で添加して行われる。用い
られる酸素は、80容量%以上の酸素濃度のものが好ま
しく、PSA(Pressure Swing Adsortion)酸素、VS
A(Vacuum Swing Adsortion)酸素、深冷法酸素等工業
的規模で使用が可能なものならば製造法は特に限定しな
い。酸素の添加は一回だけでも、数度に分けて分割添加
してもよい。
0重量%、好ましくは5〜15重量%、酸素圧力は、高
い圧力ほど脱リグニンは進むが、耐圧容器の設計を考慮
するリアクターの頂部で全圧力が10kg/cm2(ゲ
ージ圧力)を超えない範囲とし、反応温度は70〜13
0℃、好ましくは80〜110℃の範囲、反応時間は1
0〜120分、好ましくは20〜60分の範囲、アルカ
リは苛性ソーダ或いは酸化白液をNaOHとして絶乾パ
ルプ重量当り酸素漂白入り口のパルプのカッパー価×
0.12〜0.17%の範囲で添加して行われる。用い
られる酸素は、80容量%以上の酸素濃度のものが好ま
しく、PSA(Pressure Swing Adsortion)酸素、VS
A(Vacuum Swing Adsortion)酸素、深冷法酸素等工業
的規模で使用が可能なものならば製造法は特に限定しな
い。酸素の添加は一回だけでも、数度に分けて分割添加
してもよい。
【0020】酸素脱リグニンが施されたオイルパーム葉
柄クラフトパルプは、次いで塩素と次亜塩素酸塩を用い
ない漂白薬品からの多段漂白シーケンス、例えばD−
P、D―Eo―P、O―D―P、D−P−P、D―Pー
D、Ez―D―P、D−P−D−P等から選ばれた漂白
シーケンスでハンター白色度84〜85%に仕上げられ
る。但し、Dは二酸化塩素、Pは過酸化水素、Eoはア
ルカリ抽出段に酸素を添加、Oは酸素脱リグニン、Ez
はキシラナーゼ酵素、―は洗浄を示す。前記の非塩素系
漂白薬品の他にも、オゾン、過酸化水素以外の過酸化
物、還元漂白剤等も本発明に使用可能であるが、最も好
適に使用できる漂白薬品は二酸化塩素と過酸化水素の組
み合わせである。本発明においては、二酸化塩素段の条
件は、公知のものをそのまま適用できるが、例えば、パ
ルプ濃度は5〜15重量%、好ましくは8〜12重量
%、反応温度は50〜80℃、好ましくは60〜70℃
の範囲である。更に、反応時間は45〜180分、二酸
化塩素の添加率は残留リグニン及び漂白シーケンスによ
り絶乾パルプ重量当り0.3〜2.0重量%、好ましく
は0.5〜1.5重量%(asClO2)の範囲から選
ばれる。
柄クラフトパルプは、次いで塩素と次亜塩素酸塩を用い
ない漂白薬品からの多段漂白シーケンス、例えばD−
P、D―Eo―P、O―D―P、D−P−P、D―Pー
D、Ez―D―P、D−P−D−P等から選ばれた漂白
シーケンスでハンター白色度84〜85%に仕上げられ
る。但し、Dは二酸化塩素、Pは過酸化水素、Eoはア
ルカリ抽出段に酸素を添加、Oは酸素脱リグニン、Ez
はキシラナーゼ酵素、―は洗浄を示す。前記の非塩素系
漂白薬品の他にも、オゾン、過酸化水素以外の過酸化
物、還元漂白剤等も本発明に使用可能であるが、最も好
適に使用できる漂白薬品は二酸化塩素と過酸化水素の組
み合わせである。本発明においては、二酸化塩素段の条
件は、公知のものをそのまま適用できるが、例えば、パ
ルプ濃度は5〜15重量%、好ましくは8〜12重量
%、反応温度は50〜80℃、好ましくは60〜70℃
の範囲である。更に、反応時間は45〜180分、二酸
化塩素の添加率は残留リグニン及び漂白シーケンスによ
り絶乾パルプ重量当り0.3〜2.0重量%、好ましく
は0.5〜1.5重量%(asClO2)の範囲から選
ばれる。
【0021】同様に、本発明における過酸化水素段の条
件は、公知のものをそのまま適用できるが、例えば、パ
ルプ濃度は5〜15重量%、好ましくは8〜12重量%
の範囲、反応温度は70〜120℃、好ましくは50〜
90℃の範囲である。反応時間は過酸化水素が完全に消
費されると白色度が低下するので、過酸化水素の添加率
に応じて、90〜180分の範囲から選択される。過酸
化水素の添加率は、残留リグニン量或いは目標とする最
終パルプの白色度によって、絶乾パルプ重量当り0.1
〜5重量%、好ましくは0.2〜2重量%(asH
2O2)の範囲から選ばれる。過酸化水素漂白の際、アル
カリ、例えば苛性ソーダを添加して終期pHを9〜11
の範囲となるように調整する。本発明では多段漂白シー
ケンスに二酸化塩素と過酸化水素のように酸化系の漂白
薬品を用いることによって白色度が安定し、退色し難く
なるが、その理由は、退色に関与するセルロース中のカ
ルボニル基が二酸化塩素や過酸化水素のような酸化系薬
品によって、退色に関与しないカルボキシル基に変換さ
れるためと考えられる。
件は、公知のものをそのまま適用できるが、例えば、パ
ルプ濃度は5〜15重量%、好ましくは8〜12重量%
の範囲、反応温度は70〜120℃、好ましくは50〜
90℃の範囲である。反応時間は過酸化水素が完全に消
費されると白色度が低下するので、過酸化水素の添加率
に応じて、90〜180分の範囲から選択される。過酸
化水素の添加率は、残留リグニン量或いは目標とする最
終パルプの白色度によって、絶乾パルプ重量当り0.1
〜5重量%、好ましくは0.2〜2重量%(asH
2O2)の範囲から選ばれる。過酸化水素漂白の際、アル
カリ、例えば苛性ソーダを添加して終期pHを9〜11
の範囲となるように調整する。本発明では多段漂白シー
ケンスに二酸化塩素と過酸化水素のように酸化系の漂白
薬品を用いることによって白色度が安定し、退色し難く
なるが、その理由は、退色に関与するセルロース中のカ
ルボニル基が二酸化塩素や過酸化水素のような酸化系薬
品によって、退色に関与しないカルボキシル基に変換さ
れるためと考えられる。
【0022】本発明は、オイルパーム葉柄からクラフト
蒸解、酸素脱リグニン及び塩素と次亜塩素酸塩を含まな
い漂白薬品からなる多段漂白シーケンスで漂白を行い、
ハンター白色度84〜85%のパルプを得るために、蒸
解の前に水或いはペクチン分解酵素を含有する水溶液で
前記葉柄を前処理することによって、前処理を行わない
場合よりも、蒸解後のカッパー価が低く、白色度の高い
未晒パルプを得ることができ、更に酸素脱リグニンによ
り残留リグニンの40〜65%を除去することによっ
て、その後の多段漂白工程において塩素や次亜塩素酸塩
を用いずに少ない薬品使用量で、AOXの排出を実質的
に環境問題の立場から全く問題のない程度まで減少させ
て、強度の高い上質紙の原料として好適なパルプを製造
することができる。
蒸解、酸素脱リグニン及び塩素と次亜塩素酸塩を含まな
い漂白薬品からなる多段漂白シーケンスで漂白を行い、
ハンター白色度84〜85%のパルプを得るために、蒸
解の前に水或いはペクチン分解酵素を含有する水溶液で
前記葉柄を前処理することによって、前処理を行わない
場合よりも、蒸解後のカッパー価が低く、白色度の高い
未晒パルプを得ることができ、更に酸素脱リグニンによ
り残留リグニンの40〜65%を除去することによっ
て、その後の多段漂白工程において塩素や次亜塩素酸塩
を用いずに少ない薬品使用量で、AOXの排出を実質的
に環境問題の立場から全く問題のない程度まで減少させ
て、強度の高い上質紙の原料として好適なパルプを製造
することができる。
【0023】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、本発明は勿論これらに限定されるものでは
ない。なお、以下に示す実施例及び比較例においては、
%は特に断らない限り重量%を示す。又、オイルパーム
葉柄の前処理の操作、クラフト蒸解の操作、酸素脱リグ
ニンの操作、二酸化塩素と過酸化水素による漂白の操作
及び漂白済みパルプの物理的と光学的性質の測定は、特
に示さない限り次の操作手段によった。 (1)水による前処理 本発明に用いた葉柄チップは、マレーシア産オイルパー
ムの葉を除いた葉柄を、チッパーで処理し、風乾したた
後、磨砕ミルを用いて厚み約5mm、幅約10mm、長
さ約20mmの大きさに小片化したものである。このチ
ップ200g(絶乾)を400メッシュのステンレス製
袋かごに詰め、液比が15になるようにイオン交換水を
加え、35℃で6時間処理した。処理後、チップを袋か
ごから取り出し、脱水した後、クラフト蒸解に供した。
説明するが、本発明は勿論これらに限定されるものでは
ない。なお、以下に示す実施例及び比較例においては、
%は特に断らない限り重量%を示す。又、オイルパーム
葉柄の前処理の操作、クラフト蒸解の操作、酸素脱リグ
ニンの操作、二酸化塩素と過酸化水素による漂白の操作
及び漂白済みパルプの物理的と光学的性質の測定は、特
に示さない限り次の操作手段によった。 (1)水による前処理 本発明に用いた葉柄チップは、マレーシア産オイルパー
ムの葉を除いた葉柄を、チッパーで処理し、風乾したた
後、磨砕ミルを用いて厚み約5mm、幅約10mm、長
さ約20mmの大きさに小片化したものである。このチ
ップ200g(絶乾)を400メッシュのステンレス製
袋かごに詰め、液比が15になるようにイオン交換水を
加え、35℃で6時間処理した。処理後、チップを袋か
ごから取り出し、脱水した後、クラフト蒸解に供した。
【0024】(2)酵素水溶液による前処理 下記に示すペクチン分解酵素328U/mlを含む粗酵
素液1リットルに、Tris−HCl(トリス塩酸緩衝
液)を10ミリモル/リットル加え、溶液のpHを8に
し、更にCaCl2を1ミリモル/リットル添加して撹
拌し、イオン交換水を添加して全容量を3リットルに希
釈し、酵素を含有する水溶液とした。ペクチン分解酵素
を含む溶液による葉柄の処理では、水による前処理の場
合と同様のチップ200g(絶乾)を400メッシュの
ステンレス製かごに詰め、前記水溶液3リットル(液比
15)に浸漬し、35℃で4時間処理した。ペクチン分
解酵素は1640U/gチップであった。処理後、チッ
プを袋かごから取り出し、脱水した後クラフト蒸解に供
した。尚、ペクチン分解酵素の調製は、エルビニア・カ
ロトボラ(Erwinia carotovora)AMS6082株をペクチン-
M9-カザミノ酸培地(ペクチン20g、Na2HPO4・
7H2O64g、KH2PO415g、NaCl2.5
g、NH4Cl5g、カザミノ酸5g、脱イオン水1リ
ットル)で30℃、24時間浸透培養し、その遠心上澄
みを粗酵素液とした。
素液1リットルに、Tris−HCl(トリス塩酸緩衝
液)を10ミリモル/リットル加え、溶液のpHを8に
し、更にCaCl2を1ミリモル/リットル添加して撹
拌し、イオン交換水を添加して全容量を3リットルに希
釈し、酵素を含有する水溶液とした。ペクチン分解酵素
を含む溶液による葉柄の処理では、水による前処理の場
合と同様のチップ200g(絶乾)を400メッシュの
ステンレス製かごに詰め、前記水溶液3リットル(液比
15)に浸漬し、35℃で4時間処理した。ペクチン分
解酵素は1640U/gチップであった。処理後、チッ
プを袋かごから取り出し、脱水した後クラフト蒸解に供
した。尚、ペクチン分解酵素の調製は、エルビニア・カ
ロトボラ(Erwinia carotovora)AMS6082株をペクチン-
M9-カザミノ酸培地(ペクチン20g、Na2HPO4・
7H2O64g、KH2PO415g、NaCl2.5
g、NH4Cl5g、カザミノ酸5g、脱イオン水1リ
ットル)で30℃、24時間浸透培養し、その遠心上澄
みを粗酵素液とした。
【0025】(3)クラフト蒸解 水(1)或いはペクチン分解酵素水溶液(2)で前処理
した葉柄チップを、4リットル容積の間接加熱式オート
クレーブに入れた後、硫化度25%、有効アルカリ添加
率24%(対絶乾チップ、Na2O換算)、液比8とな
るように苛性ソーダと硫化ソーダから人工的に白液を作
成し、最高温度165℃、最高温度での保持時間70分
という条件でクラフト蒸解した。蒸解後のチップを取り
出し、高濃度離解機により解繊し、10カットのスクリ
ーンプレート(10インチ/1000のスリット)を有
する実験室用フラットスクリーンを用いて選別し、スリ
ットを通過したものを良質繊維とし、スリットに残留し
たものを未蒸解物として除去した。その後、良質パルプ
を遠心脱水し、酸素脱リグニンに供した。 (4)酸素脱リグニン 前記遠心脱水したクラフトパルプ75g(絶乾)をビニ
ール袋にとり、パルプ濃度が10%になるように水を加
えて調整後、温度100℃の水浴中で予備加熱した後、
カッパー価に比例した量のアルカリ(苛性ソーダ)(カ
ッパー価×0.15%)を添加し、十分てもみ攪拌後、
袋からパルプを取り出し100℃に保った2リットルの
攪拌羽付きオートクレーブの中へ入れ、オートクレーブ
内の空気を99.99容量%の酸素で置換し、次いで酸
素を5kg/cm2(ゲージ圧)になるまで圧入した。
温度100℃で60分間撹拌しながら反応させた後、パ
ルプを取り出し、遠心機で、脱水洗浄した。
した葉柄チップを、4リットル容積の間接加熱式オート
クレーブに入れた後、硫化度25%、有効アルカリ添加
率24%(対絶乾チップ、Na2O換算)、液比8とな
るように苛性ソーダと硫化ソーダから人工的に白液を作
成し、最高温度165℃、最高温度での保持時間70分
という条件でクラフト蒸解した。蒸解後のチップを取り
出し、高濃度離解機により解繊し、10カットのスクリ
ーンプレート(10インチ/1000のスリット)を有
する実験室用フラットスクリーンを用いて選別し、スリ
ットを通過したものを良質繊維とし、スリットに残留し
たものを未蒸解物として除去した。その後、良質パルプ
を遠心脱水し、酸素脱リグニンに供した。 (4)酸素脱リグニン 前記遠心脱水したクラフトパルプ75g(絶乾)をビニ
ール袋にとり、パルプ濃度が10%になるように水を加
えて調整後、温度100℃の水浴中で予備加熱した後、
カッパー価に比例した量のアルカリ(苛性ソーダ)(カ
ッパー価×0.15%)を添加し、十分てもみ攪拌後、
袋からパルプを取り出し100℃に保った2リットルの
攪拌羽付きオートクレーブの中へ入れ、オートクレーブ
内の空気を99.99容量%の酸素で置換し、次いで酸
素を5kg/cm2(ゲージ圧)になるまで圧入した。
温度100℃で60分間撹拌しながら反応させた後、パ
ルプを取り出し、遠心機で、脱水洗浄した。
【0026】(5)二酸化塩素と過酸化水素による二段
漂白 (イ)二酸化塩素段 酸素脱リグニン後のパルプ30g(絶乾重量)をサラン
袋に取り、絶乾パルプ重量当り所定量の二酸化塩素(a
sClO2)を添加し、イオン交換水を加えて10%の
パルプ濃度に調整し、十分てもみで攪拌した後、70℃
の温度で60分間反応させた。反応終了後、試料を取り
出し、遠心機で脱水洗浄した。なお、二酸化塩素の添加
率を表1に示した。 (ロ)過酸化水素段 二酸化塩素漂白後のパルプ30g(絶乾重量)をサラン
袋に取り、絶乾パルプ重量当り所定量の過酸化水素(a
sH2O2)を添加し、苛性ソーダを終期pHが9〜11
となるように添加し、更にイオン交換水を加えてパルプ
濃度を10%とし、十分てもみで撹拌した後、70℃の
温度で120分間反応させた。反応終了後、試料を取り
出し、遠心機で脱水洗浄した。尚、過酸化水素の添加率
を表1に示した。
漂白 (イ)二酸化塩素段 酸素脱リグニン後のパルプ30g(絶乾重量)をサラン
袋に取り、絶乾パルプ重量当り所定量の二酸化塩素(a
sClO2)を添加し、イオン交換水を加えて10%の
パルプ濃度に調整し、十分てもみで攪拌した後、70℃
の温度で60分間反応させた。反応終了後、試料を取り
出し、遠心機で脱水洗浄した。なお、二酸化塩素の添加
率を表1に示した。 (ロ)過酸化水素段 二酸化塩素漂白後のパルプ30g(絶乾重量)をサラン
袋に取り、絶乾パルプ重量当り所定量の過酸化水素(a
sH2O2)を添加し、苛性ソーダを終期pHが9〜11
となるように添加し、更にイオン交換水を加えてパルプ
濃度を10%とし、十分てもみで撹拌した後、70℃の
温度で120分間反応させた。反応終了後、試料を取り
出し、遠心機で脱水洗浄した。尚、過酸化水素の添加率
を表1に示した。
【0027】
【表1】
【0028】(6)漂白パルプの物理的及び光学的性質
の測定 漂白パルプの物理的及び光学的性質の測定については、
脱水洗浄した漂白パルプをPFIミルでろ水度をカナデ
ィアン・スタンダード・フリーネス360mlに叩解
し、TAPPI試験法T205os−71(JIS P
8209)に従って手抄きした坪量60g/m2のシ
ートを用いて次の試験法で測定した。 (イ)白色度 JIS P 8123 (ロ)カッパー価 JIS P 8211 (ハ)裂断長 JIS P 8113 (ニ)比破裂 JIS P 8112 (ホ)比引裂 JIS P 8116 (へ)PC価:PC価(Post Colour Number)は、漂白
パルプシートを105℃の乾燥器で乾燥する前と2時間
加熱乾燥した後のシートの白色度を測定し、(1)式よ
り求めた。 PC価={(1―乾燥後の白色度)2/(2×乾燥後の白色度)―(1―乾燥前 の白色度)2/(2×乾燥前白色度)}×100 ・・・(1)
の測定 漂白パルプの物理的及び光学的性質の測定については、
脱水洗浄した漂白パルプをPFIミルでろ水度をカナデ
ィアン・スタンダード・フリーネス360mlに叩解
し、TAPPI試験法T205os−71(JIS P
8209)に従って手抄きした坪量60g/m2のシ
ートを用いて次の試験法で測定した。 (イ)白色度 JIS P 8123 (ロ)カッパー価 JIS P 8211 (ハ)裂断長 JIS P 8113 (ニ)比破裂 JIS P 8112 (ホ)比引裂 JIS P 8116 (へ)PC価:PC価(Post Colour Number)は、漂白
パルプシートを105℃の乾燥器で乾燥する前と2時間
加熱乾燥した後のシートの白色度を測定し、(1)式よ
り求めた。 PC価={(1―乾燥後の白色度)2/(2×乾燥後の白色度)―(1―乾燥前 の白色度)2/(2×乾燥前白色度)}×100 ・・・(1)
【0029】実施例1 水による前処理−クラフト蒸解−酸素リグニン−D−P
漂白 オイルパーム葉柄を水による前処理を施した後、クラフ
ト法で蒸解し、酸素脱リグニンを行い、更に表1に示す
漂白薬品の添加率で、二酸化塩素と過酸化水素による漂
白を行った。
漂白 オイルパーム葉柄を水による前処理を施した後、クラフ
ト法で蒸解し、酸素脱リグニンを行い、更に表1に示す
漂白薬品の添加率で、二酸化塩素と過酸化水素による漂
白を行った。
【0030】実施例2 酵素水溶液による処理−クラフト蒸解−酸素脱リグニン
−D−P漂白 オイルパーム葉柄を、ペクチン分解酵素を含む水溶液に
よる前処理を施した後、クラフト法で蒸解し、酸素脱リ
グニンを行い、更に表1に示す漂白薬品の添加率で、二
酸化塩素と過酸化水素による漂白を行った。
−D−P漂白 オイルパーム葉柄を、ペクチン分解酵素を含む水溶液に
よる前処理を施した後、クラフト法で蒸解し、酸素脱リ
グニンを行い、更に表1に示す漂白薬品の添加率で、二
酸化塩素と過酸化水素による漂白を行った。
【0031】比較例1 クラフト蒸解−酸素脱リグニン−D−P漂白 オイルパーム葉柄を水或いはペクチン分解酵素を含む水
溶液による前処理なしで、クラフト法で蒸解した後、実
施例1と同様の手順で、酸素脱リグニンを行い、更にニ
酸化塩素と過酸化水素による漂白を行った。
溶液による前処理なしで、クラフト法で蒸解した後、実
施例1と同様の手順で、酸素脱リグニンを行い、更にニ
酸化塩素と過酸化水素による漂白を行った。
【0032】比較例2 クラフト蒸解−酸素脱リグニン−D−P漂白 オイルパーム葉柄を水或いはペクチン分解酵素を含む水
溶液による前処理なしで、クラフト法で蒸解した後、実
施例1と同様にして酸素脱リグニンを行い、更にニ酸化
塩素と過酸化水素による漂白を行った。但し、ニ酸化塩
素と過酸化水素添加量を増加した。
溶液による前処理なしで、クラフト法で蒸解した後、実
施例1と同様にして酸素脱リグニンを行い、更にニ酸化
塩素と過酸化水素による漂白を行った。但し、ニ酸化塩
素と過酸化水素添加量を増加した。
【0033】比較例3 クラフト蒸解−ペクチン分解酵素処理―酸素脱リグニン
−D−P漂白 オイルパーム葉柄を水或いはペクチン分解酵素を含む水
溶液による前処理なしで、クラフト法で蒸解した後、精
選、脱水したパルプ200g(絶乾)に実施例2で用い
たと同じペクチン分解酵素を328U/ml含む粗酵素
液を1リットルを添加し、CaCl2を1ミリモル/リ
ットルとなるように添加し、更にpHを8.5とし、こ
の水溶液1リットルとイオン交換水を添加してパルプ濃
度を10%に調整して、温度35℃で4時間時々手もみ
で撹拌しながら保持し、次いでパルプを洗浄して実施例
1と同様にして酸素脱リグニンを行い、更にニ酸化塩素
と過酸化水素による漂白を行った。
−D−P漂白 オイルパーム葉柄を水或いはペクチン分解酵素を含む水
溶液による前処理なしで、クラフト法で蒸解した後、精
選、脱水したパルプ200g(絶乾)に実施例2で用い
たと同じペクチン分解酵素を328U/ml含む粗酵素
液を1リットルを添加し、CaCl2を1ミリモル/リ
ットルとなるように添加し、更にpHを8.5とし、こ
の水溶液1リットルとイオン交換水を添加してパルプ濃
度を10%に調整して、温度35℃で4時間時々手もみ
で撹拌しながら保持し、次いでパルプを洗浄して実施例
1と同様にして酸素脱リグニンを行い、更にニ酸化塩素
と過酸化水素による漂白を行った。
【0034】実施例1、2及び比較例1〜3で得られた
結果を表2に示した。
結果を表2に示した。
【0035】
【表2】
【0036】表2から明らかなように、蒸解の前に水で
オイルパーム葉柄を浸漬処理することによって、蒸解に
おける脱リグニンが進行し、蒸解後のカッパー価は1
8、パルプの白色度は27%となり、蒸解性が顕著に改
善される(実施例1)。ペクチン分解酵素を含む水溶液
で蒸解の前にオイルパーム葉柄を浸漬処理すると蒸解性
は更に良くなり、同一の蒸解条件では、水で処理する場
合より更に低いカッパー価(14)と高い白色度(29
%)が得られた(実施例2)。オイルパーム葉柄を、水
或いはペクチン分解酵素を含有する水溶液による前処理
なしにクラフト蒸解すると、得られるパルプのカッパー
価は26、白色度は17%(比較例1、2)で、蒸解後
のクラフトパルプにペクチン分解酵素を含む水溶液で浸
漬処理するとカッパー価は23、白色度は20%(比較
例3)でパルプのカッパー価と白色度は3ポイント強程
差が生じるだけであり、何れの場合もカッパー価は高
く、白色度は低かった。
オイルパーム葉柄を浸漬処理することによって、蒸解に
おける脱リグニンが進行し、蒸解後のカッパー価は1
8、パルプの白色度は27%となり、蒸解性が顕著に改
善される(実施例1)。ペクチン分解酵素を含む水溶液
で蒸解の前にオイルパーム葉柄を浸漬処理すると蒸解性
は更に良くなり、同一の蒸解条件では、水で処理する場
合より更に低いカッパー価(14)と高い白色度(29
%)が得られた(実施例2)。オイルパーム葉柄を、水
或いはペクチン分解酵素を含有する水溶液による前処理
なしにクラフト蒸解すると、得られるパルプのカッパー
価は26、白色度は17%(比較例1、2)で、蒸解後
のクラフトパルプにペクチン分解酵素を含む水溶液で浸
漬処理するとカッパー価は23、白色度は20%(比較
例3)でパルプのカッパー価と白色度は3ポイント強程
差が生じるだけであり、何れの場合もカッパー価は高
く、白色度は低かった。
【0037】クラフト蒸解後に酸素脱リグニンを行い、
更にニ酸化塩素と過酸化水素により漂白すると本発明の
方法(実施例1、2)では、前処理のない場合(比較例
1)よりも、最終のパルプ白色度は2〜3ポイント高く
なり、退色性が改善されるが、前処理を行わない場合
は、同一の高い白色度(85%)を得るためには二酸化
塩素と過酸化水素漂白における薬品添加量をそれぞれ2
0%程多く添加する必要があり、そうすると強度、特に
引裂き強度と引張り強度の損失が大きく(13〜15
%)なる(実施例1、2と比較例2との比較)。又、ペ
クチン分解酵素を含む水溶液による処理を蒸解後のパル
プに行っても酸素脱リグニン前のカッパー価と白色度が
3ポイント強程変わるのみで、それに比例して漂白段で
の改善は見られるが、同一の白色度のパルプとするに
は、漂白薬品の添加量は10%ほど増加せざるを得ず、
それによって強度の損失が若干生じ、何れにしても顕著
な優れた効果は得られない(比較例3)。
更にニ酸化塩素と過酸化水素により漂白すると本発明の
方法(実施例1、2)では、前処理のない場合(比較例
1)よりも、最終のパルプ白色度は2〜3ポイント高く
なり、退色性が改善されるが、前処理を行わない場合
は、同一の高い白色度(85%)を得るためには二酸化
塩素と過酸化水素漂白における薬品添加量をそれぞれ2
0%程多く添加する必要があり、そうすると強度、特に
引裂き強度と引張り強度の損失が大きく(13〜15
%)なる(実施例1、2と比較例2との比較)。又、ペ
クチン分解酵素を含む水溶液による処理を蒸解後のパル
プに行っても酸素脱リグニン前のカッパー価と白色度が
3ポイント強程変わるのみで、それに比例して漂白段で
の改善は見られるが、同一の白色度のパルプとするに
は、漂白薬品の添加量は10%ほど増加せざるを得ず、
それによって強度の損失が若干生じ、何れにしても顕著
な優れた効果は得られない(比較例3)。
【0038】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、オイル
パーム葉柄をクラフト蒸解の前に、水で或いはペクチン
分解酵素を含む水溶液で処理することにより、クラフト
蒸解における脱リグニンが極めて容易になり低いカッパ
ー価と高い白色度のパルプが得られ、その後の酸素脱リ
グニン及び塩素と次亜塩素酸塩を用いない多段漂白シー
ケンスによって、従って漂白工程からAOXの排出を殆
ど伴わずに84〜85%の高白色度で強度が優れ、退色
性の低いパルプが製造でき、オイルパーム葉柄からクラ
フト蒸解により効果的に上質紙に好適なパルプを得るた
めの前処理方法を提供するという効果を奏する。
パーム葉柄をクラフト蒸解の前に、水で或いはペクチン
分解酵素を含む水溶液で処理することにより、クラフト
蒸解における脱リグニンが極めて容易になり低いカッパ
ー価と高い白色度のパルプが得られ、その後の酸素脱リ
グニン及び塩素と次亜塩素酸塩を用いない多段漂白シー
ケンスによって、従って漂白工程からAOXの排出を殆
ど伴わずに84〜85%の高白色度で強度が優れ、退色
性の低いパルプが製造でき、オイルパーム葉柄からクラ
フト蒸解により効果的に上質紙に好適なパルプを得るた
めの前処理方法を提供するという効果を奏する。
Claims (4)
- 【請求項1】 オイルパーム葉柄を、クラフト蒸解し、
得られるパルプを酸素脱リグニンした後、塩素と次亜塩
素酸塩を含まない漂白薬品からなる多段漂白により漂白
して高白色度のパルプを製造する際に、蒸解に先立ち、
前記オイルパーム葉柄部を水に浸漬することを特徴とす
るオイルパーム葉柄のパルプ化における前処理方法。 - 【請求項2】 前記オイルパーム葉柄をペクチン分解酵
素を含有する水溶液に浸漬することを特徴とする請求項
1記載のオイルパーム葉柄のパルプ化における前処理方
法。 - 【請求項3】 前記前処理が、液比6〜20、温度20
〜60℃、1〜10時間で浸漬することからなることを
特徴とする請求項1又は2記載のオイルパーム葉柄のパ
ルプ化における前処理方法。 - 【請求項4】 ペクチン分解酵素が、エルビニア(Erwi
nia)、シュードモナス(Pseudomonas)、バチルス(Bac
illus)、シトファーガ(Cytophaga)、クラドスポリウム
(Cladosporium)、ムコール(Mucor)及びアスペルギル
ス(Aspergillus)から選ばれたいずれか一つ又は複数
の微生物より得られることを特徴とする請求項2記載の
オイルパーム葉柄のパルプ化における前処理方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8548596A JPH09273092A (ja) | 1996-04-08 | 1996-04-08 | オイルパーム葉柄のパルプ化における前処理方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8548596A JPH09273092A (ja) | 1996-04-08 | 1996-04-08 | オイルパーム葉柄のパルプ化における前処理方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH09273092A true JPH09273092A (ja) | 1997-10-21 |
Family
ID=13860230
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP8548596A Pending JPH09273092A (ja) | 1996-04-08 | 1996-04-08 | オイルパーム葉柄のパルプ化における前処理方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH09273092A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2003293293A (ja) * | 2002-03-29 | 2003-10-15 | Nippon Paper Industries Co Ltd | グラビア印刷用塗工紙 |
JP2006112004A (ja) * | 2004-10-14 | 2006-04-27 | Kansai Paint Co Ltd | アブラヤシの有効利用方法 |
JP2010090487A (ja) * | 2008-10-03 | 2010-04-22 | Crown Package Co Ltd | 紙の製造方法、紙製容器の製造方法及び紙製容器 |
CN103103864A (zh) * | 2012-11-30 | 2013-05-15 | 中国林业科学研究院林产化学工业研究所 | 一种利用新鲜棕榈空果串制瓦楞原纸用化学机械浆的方法 |
WO2016159402A1 (ko) * | 2015-03-30 | 2016-10-06 | 주식회사 아시아모빌 | 오일 팜 트렁크를 활용한 제지용 조성물 및 그 제조방법 |
-
1996
- 1996-04-08 JP JP8548596A patent/JPH09273092A/ja active Pending
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2003293293A (ja) * | 2002-03-29 | 2003-10-15 | Nippon Paper Industries Co Ltd | グラビア印刷用塗工紙 |
JP4501329B2 (ja) * | 2002-03-29 | 2010-07-14 | 日本製紙株式会社 | グラビア印刷用塗工紙 |
JP2006112004A (ja) * | 2004-10-14 | 2006-04-27 | Kansai Paint Co Ltd | アブラヤシの有効利用方法 |
JP2010090487A (ja) * | 2008-10-03 | 2010-04-22 | Crown Package Co Ltd | 紙の製造方法、紙製容器の製造方法及び紙製容器 |
CN103103864A (zh) * | 2012-11-30 | 2013-05-15 | 中国林业科学研究院林产化学工业研究所 | 一种利用新鲜棕榈空果串制瓦楞原纸用化学机械浆的方法 |
WO2016159402A1 (ko) * | 2015-03-30 | 2016-10-06 | 주식회사 아시아모빌 | 오일 팜 트렁크를 활용한 제지용 조성물 및 그 제조방법 |
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