JPH1119808A - 切削用チップおよびこれを用いた切削工具 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 クランプ用のねじ部材をクランプ用孔部を通
しホルダのチップ座のねじ孔にねじ込むことでクランプ
する切削用チップで、チップ座から同ねじ部材を分離せ
ず適量螺退して使用済チップの交換や刃先の取替えをす
る。 【解決手段】 クランプ用孔部７に連なってその両側
に、クランプ用のねじ部材２１の頭部２３が同ねじ部２
１の軸線方向に通過可能のねじ部材通過用孔部８を設け
る。クランプ用孔部７とねじ部材通過用孔部８との間は
ねじ部材２１のねじ部が通過可能に形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、旋削や中ぐりなど
の切削に用いられるスローアウェイチップなどの切削用
チップ及びこれを用いた切削工具に関する。

【０００２】

【従来の技術】小径のワークの内径加工（中ぐり）や刃
物台から切刃コーナーまでの突出量が小さいような条件
下で使用されるなどのため、切削用チップ（以下、単に
チップともいう）をクランプオン式やレバーロック式で
クランプ（固定）できない場合には、チップをスクリュ
ーオン（ねじ止め）するクランプ方式が採用されること
が多い。

【０００３】図１６は、そのクランプ方式によりクラン
プされる切削用チップ１０１の一例を示している。図示
のものは旋削用のポジ（ポジティブ）タイプの菱形のス
ローアウェイチップあり、クランプ用のねじ部材２１が
挿入される貫通孔（円孔）１０５をすくい面１０３の中
央に備えている。その貫通孔１０５は、ねじ部材２１の
ねじ部２２が通過可能であると共にその頭部２３が通過
不能に形成されている。このような切削用チップ１０１
は、ホルダＨの先端の略菱形をなすチップ座Ｚ及び拘束
用壁面Ｋ，Ｋにセットされ、ねじ部材２１をチップ１０
１の貫通孔１０５に通し、これをチップ座Ｚの略中央に
設けられたねじ孔Ｎに締付けることで、そのクランプ
（固定）が行われる（図１７参照）。そして、このチッ
プ１０１の切刃コーナー１０６が摩耗して寿命が尽き、
新品のチップに交換するに際しては、ねじ部材２１を螺
退してホルダＨから取外さないとその作業ができない。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】すなわち、前記従来の
チップ１０１ではその交換に際して、ねじ部材２１をホ
ルダＨから分離しないかぎりその交換ができず、これに
起因してねじ部材２１を紛失しやすいといった問題があ
った。また、そのような紛失にいたらないとしても、こ
のようなねじ部材２１は一般に小径で短いものであるこ
とから取り扱いに難があり、一旦ホルダＨから分離した
後、ねじ込む際にはその作業が厄介であるといった問題
もあった。

【０００５】また、このような問題は、チップ１０１の
交換時だけでなく使用する切刃コーナー（ノーズ）１０
６を変更する場合にも略同様に発生していた。すなわ
ち、円形チップを除き、切刃コーナーを変更するために
は、通常はチップ１０１の交換と同様にねじ部材２１を
螺退して取り外さないとできない。理由は次のようであ
る。切刃コーナー１０６の変更は、ねじ部材２１が十分
に長い場合にはこれを十分螺退して緩め、その状態の下
で、チップ１０１のみを回転させて未使用の切刃コーナ
ーにセットして螺締することができる。ところが、ねじ
込みクランプ方式が用いられるチップは小さいものが多
く、したがって、クランプされるホルダＨにおけるねじ
孔も浅く、したがって短いねじ部材が使用されるのが普
通である。このようなことから、ねじ部材２１を螺退し
てチップ１０１のみをチップ座Ｚ上で拘束用壁面Ｋ，Ｋ
をかわすようにして回転させることは多くの場合できな
い。したがって、多くの場合には切刃コーナーを変更す
る場合にも、ねじ部材を取り外してから行わざるを得な
いのが実情であり、ねじ部材の紛失等の問題を発生させ
る原因となることがあった。

【０００６】本発明は、このような問題点を解消すべく
案出されたものであって、その目的とするところは、ク
ランプ用のねじ部材をホルダなどから分離することなく
適量螺退ないし弛緩するだけで、使用済のチップの交換
を可能とすること、さらには、クランプ用のねじ部材の
長さにかかわらず使用済のチップの交換及び切刃コーナ
ーの変更を可能とすることにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、請求項１に係る本発明は、クランプ用のねじ部材が
挿入される貫通孔を備えた切削用チップであって、その
貫通孔は、前記ねじ部材のねじ部が通過可能であると共
に該ねじ部材の頭部が通過不能であるクランプ用孔部
と、該クランプ用孔部に連なって、該クランプ用孔部内
の少なくとも一側に前記ねじ部材の頭部がそのねじ部の
軸線方向に通過可能のねじ部材通過用孔部を備えてお
り、しかも前記クランプ用孔部と該ねじ部材通過用孔部
との間は前記ねじ部材のねじ部が通過可能に形成されて
いることを特徴とする。

【０００８】この手段においては、チップを最初にクラ
ンプする時は、従来と同様にすることでよい。つまり、
ホルダのチップ座にこの切削用チップをセットし、クラ
ンプ用のねじ部材を切削用チップのクランプ用孔部を通
しホルダのチップ座のねじ孔にねじ込むことで切削用チ
ップがホルダにクランプされ、切削工具となすことがで
きる。そして、例えば切刃コーナーの寿命が尽きて、チ
ップを交換する際には、ねじ部材をホルダから分離する
ことなく、適量螺退して弛緩する。この状態のもとで、
チップをそのねじ部材通過用孔部にねじ部材が位置する
ように移動し、ねじ部材の軸線方向に引き上げる。こう
することで、ねじ部材を分離することなくチップは取り
外される。

【０００９】次いで、新品の同一チップを用意し、その
ねじ部材通過用孔部にねじ部材の頭部を挿入させてチッ
プをチップ座に配置する。そして、チップのクランプ用
孔部がねじ部材の頭部の下に位置するようにチップをチ
ップ座面上で適宜、移動（スライド）して位置決めし、
ねじ部材を締付ける。こうすることで、チップをチップ
座にクランプできる。また、切刃コーナーの変更もこれ
と同様にして行うことができる。

【００１０】前記手段において、ねじ部材通過用孔部の
数は、使用されるクランプ用のねじ部材の長さが十分あ
れば１か所でもよいが、複数でももちろんよい。またね
じ部材通過用孔部を設ける位置は、チップの形状（角形
チップや円形チップ）による刃先の形状や刃先コーナー
の数、或いはクランプされるホルダなどのチップ座及び
拘束用壁面の形状、配置などを考慮して適宜に設定すれ
ば良い。

【００１１】なお、前記手段においては、チップの交換
の際、或いは複数の刃先コーナーがある場合にはいずれ
の切刃コーナーの変更の際にも、チップがチップ座上
で、いずれかの拘束用壁面に沿って移動されたとき、ま
たは両拘束壁面から離れるようにして移動されたときに
おいて、ねじ部材通過用孔部がねじ部材の位置にくるよ
うにそのねじ部材通過用孔部を設けておくとよい。この
ように形成しておけば、チップがスライド可能な程度に
ねじ部材を僅かに螺退するだけでもチップをそのねじ部
材通過用孔部がねじ部材の位置にくるように移動でき、
したがってその脱着ができるためである。すなわち、こ
のようにしておけば、クランプ用のねじ部材の長さにか
かわらず、ねじ部材を僅かに螺退させるだけで使用済の
チップの交換及び切刃コーナーの変更ができ、その作業
が容易となるためである。この場合、請求項２記載の発
明のようにするのが、チップの構造上のバランスや強度
上、さらには取扱い易さの点からとくに好ましい。

【００１２】請求項２記載の本発明は、クランプ用のね
じ部材が挿入される貫通孔を備え、複数の切刃コーナー
を有する切削用チップであって、その貫通孔は、前記ね
じ部材のねじ部が通過可能であると共に該ねじ部材の頭
部が通過不能であるクランプ用孔部と、該クランプ用孔
部に連なって、前記ねじ部材の頭部がそのねじ部の軸線
方向に通過可能のねじ部材通過用孔部を複数備えてお
り、しかも前記クランプ用孔部と該複数の各ねじ部材通
過用孔部との間は前記ねじ部材のねじ部が通過可能に形
成され、さらに該複数の各ねじ部材通過用孔部は前記ク
ランプ用孔部の略中心と各切刃コーナーとを結ぶ線上に
中心が存在するように設けられていることにある。

【００１３】請求項２記載のチップにおいては、前記の
効果に加え、チップの交換の際、或いはいずれの切刃コ
ーナーの変更の際にも、チップをチップ座上で、両拘束
用壁面から均等に離れるように移動できるし、両拘束用
壁面に均等に近付くように移動できる。また、チップが
スライド可能な程度にねじ部材を僅かに螺退するだけで
もチップが移動でき、その下でチップの脱着ができるの
で、クランプ用のねじ部材の長さにかかわらず、ねじ部
材を取り外すことなくチップの交換、或いは切刃コーナ
ーの変更を行うことができるから、その作業を簡易迅速
にできる。すなわち、ねじ部材を弛緩した後、いずれか
のねじ部材通過用孔部をねじ部材の頭部の位置に合わ
せ、チップをねじ部材の軸線方向に引き上げることで、
ねじ部材を分離することなく、チップをチップ座から取
り外すことができる。そして、チップを装着する際に
も、チップを取り外したのと逆の取り扱いで簡易に行う
ことができる。

【００１４】つまり、切刃コーナーを変更する場合に
は、未使用の切刃コーナーで切削できるようにチップを
回し、その切刃コーナーと異なる切刃コーナー寄りにあ
るねじ部材通過用孔部にねじ部材の頭部を挿入させてチ
ップ座に配置する。そして、チップをチップ座面上で適
宜、移動（スライド）し、２つの拘束用壁面に当接して
位置決めし、クランプ用のねじ部材を締付ければよい。
なお、このものでは、チップを２つの拘束用壁面に当接
させてクランプできるから、チップの切刃の位置がずれ
ることもない。なお、請求項２記載の切削用チップにお
いても、これを最初にクランプする時は、従来と同様に
することでよい。つまり、ホルダのチップ座にこの切削
用チップをセットし、クランプ用のねじ部材を切削用チ
ップのクランプ用孔部を通しホルダのチップ座のねじ孔
にねじ込むことで切削用チップがホルダにクランプさ
れ、切削工具となすことができる。

【００１５】

【発明の実施の形態】本発明の実施の形態例を図１〜９
を参照しながら詳細に説明する。図中１は、本例の切削
用チップであって旋削用のポジタイプの菱形スローアウ
ェイチップであり、ホルダＨの先端の平坦なチップ座Ｚ
にクランプされている。なお、ホルダＨは、従来と同様
のものであり本例のチップ１をクランプできるようにチ
ップ座Ｚが平面視略菱形に凹設され、チップ１を装着し
た際にその２つのにげ面２を拘束する２つの拘束用壁面
Ｋを備えている。そして、チップ座Ｚ（面）の略中央に
は、クランプ用のねじ部材２１をねじ込むためのねじ孔
Ｎが設けられている。

【００１６】本例のチップ１は、図５〜７に示したよう
に、そのすくい面３の略中央にクランプ用のねじ部材２
１が挿入可能に、チップ１の厚さ方向に貫通孔５を備え
ている。この貫通孔５は、本例では菱形をなすすくい面
３の対角線に対称形をなし、２つの鋭角の切刃コーナー
６ａ，６ｂを結ぶ線上に対し、すくい面３側からみて所
定の幅Ｗで略平行をなすように形成された中央のクラン
プ用孔部７と、その両端部に連なって形成された円孔か
らなるねじ部材通過用孔部８を備えている。

【００１７】クランプ用孔部７の幅Ｗは、クランプに使
用されるねじ部材２１のねじ部（径）２２より若干大き
くしかもその頭部２３の外径より小さく設定されてい
る。そして、ねじ部材通過用孔部８をなす円孔の内径は
ねじ部材２１の頭部２３の外径より大きく設定されてい
る。しかして、本例の貫通孔５は、その全体としてみる
と２つの鋭角の切刃コーナー６ａ，６ｂを結ぶ線上に沿
って長い長孔をなしている。なお、本例では、平行なク
ランプ用孔部７のすくい面３側の開口縁がすくい面３と
平行でそれよりやや低位の棚面９，９とされ、ねじ部材
２１の頭部２３の下面２３ａの係止面とされている。そ
してこの係止面をなす両側の棚面９，９のなす幅は、図
７に示したようにねじ部材通過用孔部８の内径と同じと
なるように形成されており、ねじ部材２１の頭部２３
（下面２３ａ）が両ねじ部材通過用孔部８の間をこの棚
面９，９上をスライドできるようにされている。

【００１８】さて、次にこの様な本例チップ１の作用な
いし効果を説明する。まず、ホルダＨのチップ座Ｚにチ
ップ１を載置し、これをホルダＨの根元側（２つの拘束
用壁面Ｋ）に押し付けるようにし、ねじ部材２１のねじ
部２２をチップ座Ｚのねじ孔Ｎにねじ込む（図１〜４参
照）。こうすることで、ねじ部材２１の頭部２３の下面
２３ａは棚面９，９に係止され、チップ１はクランプさ
れ、切削工具を構成する。なお、本例ではねじ部材２１
は、その頭部２３が円柱状の平ねじを使用しており、棚
面９，９が低い分その頭部２３が沈み込むよう構成され
ている。

【００１９】このような切削工具として加工に用いら
れ、全切刃コーナー６ａ，６ｂが摩耗して寿命となり別
のチップ１と交換する際には、ねじ部材２１を適量（例
えばねじ１山分）螺退して弛緩する。本例では、この程
度だけねじ部材２１を螺退しただけでは、チップ１は拘
束用壁面Ｋの拘束から自由にならないが、本例では、チ
ップ１をチップ座Ｚ面上で使用済み切刃コーナー６ａの
方にスライドできる（図８，９参照）。したがって、こ
のようにスライドした後、一方（ホルダＨの根元側）の
ねじ部材通過用孔部８内にねじ部材２１の頭部２３が位
置するようにする。その下で、図９中２点鎖線で示した
ように、チップ１をチップ座Ｚからねじ部材２１の軸線
Ｊ方向に引き上げる。こうすることで、ねじ部材２１を
ホルダＨから取り外すことなくチップ１は分離される。

【００２０】次に、新品のチップ１を用意し、前記した
のと逆に適宜のねじ部材通過用孔部８にねじ部材２１の
頭部２３をいれる（図８参照）。そして、チップ１を取
り外したときと逆にチップ１を着座させ、ホルダＨの根
元側に押付けるようにし（図１参照）、ねじ部材２１を
締付ける。かくして、チップ１の交換ができるから、ね
じ部材２１の紛失といった問題を有効に防止できる。な
お、本例では、ねじ部材２１をわすがに螺退しただけ
で、チップ１を取り外すことができるから、短いねじ部
材を用いた場合でも、前記と同様にして切刃コーナーの
変更ができる。

【００２１】すなわち、１切刃コーナー６ａが摩耗して
別の切刃コーナー６ｂで切削するように切刃コーナーを
変える際には、前記と同様に、ねじ部材２１を適量（例
えばねじ１山分）螺退して弛緩する。そして、チップ１
をチップ座Ｚ面上で使用済み切刃コーナー６ａの方にス
ライドし（図８，９参照）、一方（ホルダＨの根元側）
のねじ部材通過用孔部８内にねじ部材２１の頭部２３が
位置するようにする。その下で前記したのと同様にして
チップ１を分離する。

【００２２】その後、未使用の切刃コーナー６ｂで切削
できるようにするため、この切刃コーナー６ａがホルダ
Ｈの先端側に位置するようにチップ１を１８０度回転さ
せ、使用済みの切刃コーナー６ａをホルダＨの根元側に
位置させ、ホルダＨの根元側のねじ部材通過用孔部８に
ねじ部材２１の頭部２３をいれ、チップ１の交換時と同
様にホルダＨの根元側に押付けるようにし、ねじ部材２
１を締付ける。かくして、チップ１の切刃コーナーの変
更ができる。なお、本例においてねじ部２２が十分長
く、十分螺退させることで、チップ１がチップ座Ｚの拘
束用壁面Ｋに邪魔されることなく回転できる場合には、
従来と同様にねじ部材２１およびチップ１を外すことな
く、チップ１を適宜回転させることでも切刃コーナーを
変更できるが、本発明ではこのようにねじ部２２を多く
螺退させることを要しないので、その分、作業が容易と
なる。

【００２３】さらに、本例では貫通孔５が全体としてみ
ると、切刃コーナー６ａ，６ｂを結ぶ線に沿って長い長
孔をなしている。したがって、チップ１をチップ座Ｚに
おける２つの拘束用壁面Ｋ側つまりホルダＨの根元側に
押え付けることができ、したがって、刃先位置のずれを
防止できるといった効果もある。なお、本例において切
刃コーナー６ａが１つである場合（ＣＢＮ焼結体がロー
付けされているような場合）には、チップ１の交換のみ
となるので、例えば中央のクランプ用孔部７の一側であ
って切刃コーナーと反対側（図１右側）にのみねじ部材
通過用孔部８があればよいことは明らかである。

【００２４】次に、別の形態例について図１０及び図１
１を参照しながら説明するが、このものは三角チップ３
１及び同チップクランプ用のホルダＨに本発明を適用し
た点のみが前形態と異なるだけで、前形態と基本的に共
通するものであるため相違点のみ説明し、同一の部位に
は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。すなわ
ち、このものは貫通孔５が、すくい面３の中央のクラン
プ用孔部７を中心として、これに連なるようにそれぞれ
の切刃コーナー６ａ，６ｂ，６ｃ寄り部位に等距離、等
角度間隔でねじ部材通過用孔部８を設けたものである。

【００２５】しかして、チップ３１の交換や各切刃コー
ナー６ａ，６ｂ，６ｃの変更においては、前形態と全く
同様にして行うことができる。なお、本例では、ねじ部
材通過用孔部８は、中央のクランプ用孔部７からみて３
方への放射状を成す所定の幅の平行孔部（空所）７ａの
先に設けられている。そして、ホルダＨへのクランプ時
には、クランプ用のねじ部材２１の頭部２３（図１０中
２点鎖線で図示）の下面２３ａがクランプ用孔部７の上
方開口の周縁の３か所（係止面）において係止するよう
に設定されている。ただし、本例でも、その係止面はす
くい面３より低位の棚面９とされているとともに、その
領域は、３箇所のねじ部材通過用孔部８に外接する範囲
とされている。また、クランプ用孔部７に連なって設け
られた各ねじ部材通過用孔部８の中心は、クランプ用孔
部７の中心と各切刃コーナー６ａ〜６ｃとを結ぶ線上に
配置されている。

【００２６】上記においては、ポジタイプのチップで具
体化した場合を説明したが、本発明はネガ（ネガティ
ブ）タイプのチップでもまったく同様に適用できる。図
１２，１３は、その１例を示すものである。同図のもの
は、正方形のネガタイプのチップ４１で具体化したもの
であり、貫通孔５はすくい面３の中央のクランプ用孔部
７を中心とし、それから対角線方向に延びる位置にねじ
部材通過用孔部８が形成されている。なお、このもので
は両面の切刃コーナー（８切刃コーナー）を用いるもの
であるために、いずれの面からクランプする場合でも同
じクランプ状態が得られるように、本例ではねじ部材の
頭部２３（図１３中２点鎖線で図示）の係止面をなす棚
面９が両面に設けられている。このものは、ネガタイプ
とした点以外は、作用効果も含め前形態と基本的に共通
するので同一の部位には同一の符号を付し、詳細な説明
を省略する。以下の説明においても同様とする。

【００２７】なお、上記した各チップにおいてはいずれ
もクランプ用孔部７をチップ（すくい面）の中央に設
け、その中央と切刃コーナーとを結ぶ線上にねじ部材通
過用孔部８を設けたため、チップの交換や切刃の変更に
おいては、ねじ部材を僅かに螺退させることでそれが可
能となり、したがって、短いねじ部のねじ部材を用いる
ことができるので、長いねじ部材を用いることのできな
い小型のチップにおいてとりわけ好適である。もっとも
図１４に示した正方形チップ４１などにおけるように、
貫通孔５をなすクランプ用孔部７とねじ部材通過用孔部
８，８の各中心を結ぶ線がその直線切刃と平行であるよ
うな場合にも、これと同じ効果があることは明らかであ
る。

【００２８】また、前記においてはいずれも角形のチッ
プによって説明したが、本発明は、図１５に示したよう
に、クランプ用孔部７が円の中央にある円形の切削用チ
ップ５１においても適用できる。すなわち、このもので
は同図に示したように、ねじ部材（頭部２３のみ２点鎖
線で図示）のねじ部が通過可能であると共にそのねじ部
材の頭部２３が通過不能であるクランプ用孔部７をすく
い面３の中央に設け、このクランプ用孔部７に連なって
ねじ部材の頭部２３がそのねじ部の軸線方向に通過可能
のねじ部材通過用孔部８を少くとも１つ設けて貫通孔５
を形成していればよい。このものでは、切刃部位６の変
更はもともとねじ部材を弛緩するだけでできるから、こ
うしておけば、ねじ部材を適量螺退するだけで、ねじ部
材を取り外すことなくチップを取替えることができる。

【００２９】このように本発明においては、チップの形
状（菱形、正方形、三角形、その他の多角形、円形な
ど）やスローアウェイ用或いは再研磨用などにかかわら
ず、チップをスクリューオン（ねじ止め）式でクランプ
される切削用チップ及びそれを用いた切削工具として広
く適用できる。また、上記においては、旋削用のチップ
及びこれをクランプしてなる切削工具で説明したが、中
ぐり（ボーリングバー）用やフライス用などの各種の切
削用チップ及び切削工具においても同様に適用できる。
また、切削用チップはすくい面に垂直に貫通孔を設けた
もので説明したが、これ以外であってもまったく同様に
適用できることは明らかである。本発明は、上記の形態
に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲
において、適宜変更して具体化できる。

【００３０】

【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
に係る請求項１記載の切削用チップによれば、所定のク
ランプ用のねじ部材を用いることで、それをホルダなど
から分離することなく弛緩ないし適量螺退するだけでチ
ップの交換ができる。また、請求項２記載の切削用チッ
プによれば、クランプ用のねじ部材の長さにかかわらず
クランプ用のねじ部材をホルダなどから分離することな
く弛緩ないし適量螺退するだけで、使用済のチップの交
換及び切刃コーナーの変更ができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る切削用チップをホルダにクランプ
してなる切削工具の要部平面図。

【図２】図１の側面図。

【図３】図１のＡ−Ａ線断面図。

【図４】図１のＢ−Ｂ線断面図。

【図５】図１のチップのみの平面図。

【図６】図５の中央横断面図。

【図７】図５の中央縦断面図。

【図８】ねじ部材を螺退し、チップを移動した平面図。

【図９】図８の中央横断面図。

【図１０】別形態の平面図。

【図１１】図１０のチップをホルダにクランプしてなる
切削工具の同チップの中央横断面図。

【図１２】切削用チップの別形態を説明する半断面側面
図。

【図１３】図１２の平面図。

【図１４】切削用チップの別形態を説明する平面図。

【図１５】切削用チップの別形態を説明する平面図。

【図１６】従来のスクリューオン方式を説明する分解斜
視図。

【図１７】従来のスクリューオン式で切削用チップをホ
ルダにクランプした状態の要部斜視図。

【符号の説明】

１，３１，４１，５１ 切削用チップ ５ 貫通孔 ６ａ〜６ｃ 切刃コーナー ７ クランプ用孔部 ８ ねじ部材通過用孔部 ２１ クランプ用のねじ部材 ２２ ねじ部 ２３ 頭部 Ｊ ねじ部の軸線 Ｈ ホルダ Ｚ チップ座 Ｎ ねじ孔 Ｋ 拘束用壁面

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 クランプ用のねじ部材が挿入される貫通
   孔を備えた切削用チップであって、その貫通孔は、前記
   ねじ部材のねじ部が通過可能であると共に該ねじ部材の
   頭部が通過不能であるクランプ用孔部と、該クランプ用
   孔部に連なって、該クランプ用孔部内の少なくとも一側
   に前記ねじ部材の頭部がそのねじ部の軸線方向に通過可
   能のねじ部材通過用孔部を備えており、しかも前記クラ
   ンプ用孔部と該ねじ部材通過用孔部との間は前記ねじ部
   材のねじ部が通過可能に形成されていることを特徴とす
   る切削用チップ。
2. 【請求項２】 クランプ用のねじ部材が挿入される貫通
   孔を備え、複数の切刃コーナーを有する切削用チップで
   あって、その貫通孔は、前記ねじ部材のねじ部が通過可
   能であると共に該ねじ部材の頭部が通過不能であるクラ
   ンプ用孔部と、該クランプ用孔部に連なって、前記ねじ
   部材の頭部がそのねじ部の軸線方向に通過可能のねじ部
   材通過用孔部を複数備えており、しかも前記クランプ用
   孔部と該複数の各ねじ部材通過用孔部との間は前記ねじ
   部材のねじ部が通過可能に形成され、さらに該複数の各
   ねじ部材通過用孔部は前記クランプ用孔部の略中心と各
   切刃コーナーとを結ぶ線上に中心が存在するように設け
   られていることを特徴とする切削用チップ。
3. 【請求項３】 クランプ用のねじ部材を切削用チップの
   クランプ用孔部を通しホルダのチップ座のねじ孔にねじ
   込むことで切削用チップをホルダにクランプしてなる切
   削工具において、その切削用チップに請求項１又は２記
   載の切削用チップを用いたことを特徴とする切削工具。