JPH111843A - 三次元繊維組織の製造方法及び治具 - Google Patents

三次元繊維組織の製造方法及び治具

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JPH111843A
JPH111843A JP14950997A JP14950997A JPH111843A JP H111843 A JPH111843 A JP H111843A JP 14950997 A JP14950997 A JP 14950997A JP 14950997 A JP14950997 A JP 14950997A JP H111843 A JPH111843 A JP H111843A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 複数の糸層を積層して形成された積層糸群を
厚さ方向糸で結合することにより形成される三次元繊維
組織を、曲面部の曲率や屈曲部の位置に関係なく形成す
ることを可能にし、厚さ方向糸の挿入作業を簡単にす
る。 【解決手段】 治具1は一組の基板2,3を備え、基板
2,3間には複数本の支柱4がブラケットを介して内側
から取り外し可能に配設されている。支持バー7は一部
が支柱4に当接し、一部が基板2,3の外周に沿って配
置された支持プレート6の先端に当接する状態で配設さ
れている。支柱4の中間部には曲面形成用バー8が、係
合凹部4aと係合する状態で支持されている。支持バー
7には多数の規制ピン9aが所定ピッチで取り外し可能
に固定されている。基板2,3及び基板2,3の基端部
と対応する位置に配設された支柱4には基準ピン9bが
取り外し可能に固定されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は三次元繊維組織の製
造方法及び治具に係り、詳しくは複数の糸層を積層して
形成された少なくとも2軸配向となる積層糸群と、各糸
層と直交する方向に配列されて前記積層糸群を結合する
厚さ方向糸を含み、かつ曲面部を有する形状に形成され
た三次元繊維組織の製造方法及びその製造に適した治具
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】繊維強化複合材は軽量の構造材料として
広く使用されている。複合材用補強基材として三次元織
物(三次元繊維組織)がある。この三次元織物を骨格材
として、樹脂あるいは無機物をマトリックスとした複合
材はロケット、航空機、自動車、船舶及び建築物の構造
材として幅広い用途が期待されている。
【0003】三次元繊維組織の製造方法として、糸を折
り返しながら配列して形成した糸層を複数積層して積層
糸群を形成し、厚さ方向に配列される糸により各糸層を
結合する方法がある。例えば、特開昭61−20106
3号公報に開示された方法では、ベースプレート上に所
定間隔で多数の糸案内管を立設配置する。そして、その
糸案内管をガイドとして糸をベースプレートの縦方向に
折り返し状に配列して糸層を形成する作業と、横方向に
折り返し状に配列して糸層を形成する作業と、斜め方向
に折り返し状に配列して糸層を形成する作業とを順に行
って所定数の糸層からなる積層糸群を形成する。次に糸
案内管に引掛具を挿入して糸案内管を引き抜き、積層糸
群の下方に供給されるかしめ糸を引掛具によって積層糸
群の上方まで引き上げ、かしめ糸のループ部にかんぬき
糸を通す。その後、かしめ糸を下方に引き戻してかしめ
糸の弛みをとるとともに積層糸群を締めつける。この操
作を順に糸案内管の本数分だけ繰り返して積層糸群をか
しめ糸で結合する。
【0004】また、特開平6−184906号公報に
は、2枚以上のプレート部の端部同士が互いに角度をな
して隣接された繊維構造体(三次元繊維組織)を製造す
る際、糸の配列箇所全面にガイドピンを立設したベース
プレートを使用しない方法が開示されている。この方法
で例えば、断面L字状の三次元繊維組織を製造するとき
は、多数のガイドピンが所定ピッチで抜き取り可能に植
設されたL字状の枠体が使用される。糸をガイドピンに
掛止して折り返すように配列し、糸の配列方向が異なる
糸層を所定数積層形成して積層糸群を構成する。次に積
層糸群の表裏両面にガイドピンの間隔より若干狭い幅の
多数のプレス板を配置し、プレス装置で挟圧する。この
圧縮状態を維持したまま、プレス板を1ヶ所だけ表裏2
枚を一組として取り外し、ベラ針を使用して厚さ方向糸
をチェーンステッチ方式により積層糸群をかしめ縫いし
て結合する。ベラ針が取付けられた支持部材に穿孔針が
一体に固定され、ベラ針が挿入される位置に穿孔針によ
り孔が開けられる。
【0005】また、特開平8−218249号公報等に
は、糸の配列箇所全面にガイドピンを立設する代わり
に、厚さ方向糸の挿入区域と対応する領域を囲むように
ピンが所定ピッチで配置された枠体上に、前記ピン間に
折り返し状に配列した糸層を複数積層して積層糸群を形
成した後、積層糸群を枠体に保持した状態で、一列に配
置された複数の厚さ方向糸挿入針を使用して厚さ方向糸
を挿入する方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】三次元繊維組織を骨格
材とした複合材の強度は、三次元繊維組織の影響を大き
く受け、強度の大きな複合材を得るには、複合材の形状
に対応した形状の三次元繊維組織を骨格材として使用す
る必要がある。従って、三次元繊維組織として平板ある
いは平板を組み合わせた形状に限らず、曲面部を有する
形状の三次元繊維組織も必要となる。
【0007】特開昭61−201063号公報には、ベ
ースプレートの形状を変えることにより、図17に示す
ような、円筒状、円錐台筒状、ドーム状の三次元繊維組
織Wが得られることが開示されている。しかし、糸の配
列面全体に多数のピンあるいは糸案内管を立設した状態
で糸を配列した後、ピン等の立設位置に厚さ方向糸を挿
入する従来の製造方法では、高密度の三次元繊維組織を
得るためにはピンのピッチが数mm程度となる。そし
て、ベースプレートに立設されるピンの本数は数千〜数
万に及び、ベースプレートへのピンの立設や厚さ方向糸
の挿入に時間がかかり、三次元繊維組織の製造に時間が
かかる。
【0008】一方、特開平6−184906号公報に開
示された方法では、糸の配列面全部にピンを立設する手
間はない。しかし、厚さ方向糸により積層糸群を結合す
るために積層糸群の表裏全面を多数のプレス板で押圧し
て圧縮状態を維持したまま、プレス板を1ヶ所だけ取り
外して当該箇所で厚さ方向糸の挿入を行う必要があり作
業が面倒である。即ち、ガイドピンの間隔より幅の狭い
多数のプレス板で積層糸群を圧縮状態に維持しつつ1ヶ
所だけ表裏2枚を1組としてプレス板を取り外し可能と
するプレス装置の構造が複雑になる。また、積層糸群の
全面を同時に圧縮状態に維持するため、大きな圧縮力が
必要となり装置が大型化するという問題もある。また、
三次元繊維組織の形状が複数の平板が組み合わされた多
面体や、円筒のように曲率が一定の曲面部を有する形状
の場合はプレス板の種類は少なくてよいが、曲率が変化
する曲面部を有する形状の場合は多種類のプレス板を準
備する必要がある。さらに、三次元繊維組織が形成され
た後、枠体を三次元繊維組織から抜き取り可能とするた
め、回転体形状のうち円筒、円錐台等、枠体の抜き取り
方向に向かってその内径が一定又は単純増加する形状に
限定される。その結果、中間部の径が大きくなる形状
や、抜き取り側端部に内側に屈曲した鍔部が存在する形
状のものを製造することができない。
【0009】また、特開平8−218249号公報に開
示された方法では、厚さ方向糸の挿入が1列ずつ行われ
るため、1本ずつ行う特開平6−184906号公報に
開示された方法に比較して三次元繊維組織の生産性は向
上する。しかし、得られる三次元繊維組織の形状には、
特開平6−184906号公報に開示されたものと同様
な制約がある。
【0010】本発明は前記の問題点に鑑みてなされたも
のであって、その目的は複数の糸層を積層して形成され
た少なくとも2軸配向となる積層糸群と、各糸層と直交
する方向に配列されて各糸層を結合する厚さ方向糸とよ
り形成される三次元繊維組織を、曲面部の曲率や屈曲部
の位置に関係なく形成することができ、厚さ方向糸の挿
入作業も簡単になる三次元繊維組織の製造方法及びそれ
に適した治具を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するた
め請求項1に記載の発明では、複数の糸層を積層して形
成された少なくとも2軸配向となる積層糸群と、各糸層
と直交する方向に配列されて前記積層糸群を結合する厚
さ方向糸を含み、かつ曲面部を有する形状に形成された
三次元繊維組織の製造方法であって、前記三次元繊維組
織の形状に対応する状態で前記積層糸群を支持可能、か
つ積層糸群を支持した状態で部分的に分解可能な治具上
に、糸層を複数積層して少なくとも2軸配向となる積層
糸群を形成した後、前記積層糸群を前記治具に保持した
状態で、前記治具の一部を積層糸群の内側から部分的に
分解し、分解された部分と対応する積層糸群の領域に厚
さ方向糸を挿入して積層糸群を締め付けた後、分解した
部分を再び組付け、次に治具の別の箇所を分解して、そ
の部分と対応する積層糸群の領域に厚さ方向糸を挿入し
て積層糸群を締め付ける動作を繰り返すことにより前記
積層糸群の厚さ方向糸の挿入を必要とする領域全体に厚
さ方向糸を挿入して、前記積層糸群を結合して三次元繊
維組織を形成し、その後、前記治具を三次元繊維組織の
内側から分解して取り外すようにした。
【0012】請求項2に記載の発明では、請求項1に記
載の発明において、前記積層糸群は複数のクロスを前記
治具の外側に載置することにより形成される。請求項3
に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前
記治具は厚さ方向糸の挿入区域と対応する領域を囲むよ
うにピンが所定ピッチで配置された枠体を有し、前記積
層糸群は該ピン間に糸を折り返し状に配列して形成され
た複数の糸層により構成される。
【0013】請求項4に記載の発明では、三次元繊維組
織の形状に対応した外形形状を有するとともに、多数の
ピンが所定ピッチで取り付けられた枠体上に、前記ピン
間に糸を折り返し状に配列して糸層を複数積層して少な
くとも2軸配向となる積層糸群を形成した後、前記枠体
上に形成された積層糸群を各糸層と交差する方向に配列
された厚さ方向糸で結合する三次元繊維組織の製造方法
に使用される治具であって、三次元繊維組織の曲面部と
対応する位置に配置されるとともに多数のピンが少なく
ともそのコーナ部に所定ピッチで取り外し可能に固定さ
れた複数の第1の曲面部支持部材と、コーナ部以外の曲
面部と対応する位置に配置される第2の曲面部支持部材
と、前記各第1及び第2の曲面部支持部材を支持すると
ともに、多数のピンが少なくとも前記積層糸群の周縁部
と対応する位置に取り外し可能に固定された複数の基枠
と、前記基枠の一部を積層糸群の内側から分解・組付け
可能に固定するブラケットとを備えた。
【0014】請求項5に記載の発明では、請求項4に記
載の発明において、前記基枠は互いに平行に配置される
とともに湾曲部を有する一組の基板と、該両基板に対し
てブラケットを介して固定されるとともに、外側に係合
凹部が形成された複数の支持部材とを備え、前記第1の
曲面部支持部材は前記支持部材の両端部と対応する位置
に配置され、多数の規制ピンが取り外し可能に固定され
た支持バーであり、前記第2の曲面部支持部材は前記支
持部材に対して前記係合凹部と係合する状態で前記支持
バーと平行に支持される曲面形成用バーであり、前記両
基板には前記規制ピンの内側の所定位置に取り外し可能
に固定される基準ピンが装備されている。
【0015】請求項1に記載の発明では、三次元繊維組
織の形状を保持可能な治具上に、糸層が複数積層されて
少なくとも2軸配向となる積層糸群が形成される。次に
積層糸群を締め付ける厚さ方向糸が積層糸群に挿入され
る。その際、治具に支持された積層糸群の内側から治具
の一部が部分的に分解され、分解された部分と対応する
積層糸群の領域に厚さ方向糸が挿入される。当該領域に
挿入された厚さ方向糸により積層糸群が締め付けられた
後、分解された部分が再び組付けられる。この動作が繰
り返されて厚さ方向糸の挿入を必要とする領域全域に厚
さ方向糸が挿入されて三次元繊維組織が形成される。そ
の後、治具が三次元繊維組織の内側から分解されて取り
外され、三次元繊維組織の製造が完了する。
【0016】請求項2に記載の発明では、請求項1に記
載の発明において、前記積層糸群は複数のクロスを前記
治具の外側に載置することにより形成される。従って、
糸を配列して糸層を形成する場合に比較して積層糸群の
形成が簡単になる。
【0017】請求項3に記載の発明では、請求項1に記
載の発明において、前記積層糸群は前記治具を構成する
枠体に設けられたピンと係合して折り返し状に配列され
た糸により形成された複数の糸層により構成される。各
糸層が枠体上に糸を配列することにより形成されるた
め、曲率が一定でない曲面部を有する三次元繊維組織を
形成する場合、クロスを枠体上に配置する場合に比較し
て、所望の形状に対応した糸層の形成が容易となる。
【0018】請求項4に記載の発明の治具は、三次元繊
維組織を製造する際に、少なくとも2軸配向の積層糸群
の配列形成及び積層糸群への厚さ方向糸の挿入時に使用
される。積層糸群は基枠及び第1の曲面部支持部材に固
定された多数のピンと係合する状態で、折り返し状に配
列された複数の糸層により、第1及び第2の曲面部支持
部材に支持された状態で三次元繊維組織の形状に対応し
た形状に形成される。積層糸群への厚さ方向糸の挿入時
には、厚さ方向糸の挿入領域と対応する箇所の曲面支持
部材あるいは基枠の一部が分解される。従って、曲面支
持部材や基枠が厚さ方向糸の挿入に支障を来す虞はな
い。厚さ方向糸の挿入を必要とする全ての領域への厚さ
方向糸の挿入完了後、治具が三次元繊維組織の内側から
分解されて取り外される。
【0019】請求項5に記載の発明の治具を使用して三
次元繊維組織を製造する場合、互いに平行に配置された
一組の基板の所定位置に固定された基準ピンと、支持バ
ーに固定された規制ピンに係合する状態で糸が折り返し
状に配列されて糸層が順次積層される。そして、三次元
繊維組織の外形に対応した形状の積層糸群が、少なくと
も2軸配向となるように形成される。
【0020】積層糸群は基板、支持部材及び両曲面部支
持部材により三次元繊維組織の形状に対応した外形形状
に保持される。一組の基板の周縁に対応する部分に固定
された基準ピンと、コーナ部に配置された第1の曲面部
支持部材の規制ピンと係合した状態で糸が配列されるた
め、糸は三次元繊維組織の形状に対応した糸層を形成す
るのに適した所定位置に確実に配置される。厚さ方向糸
の挿入時、厚さ方向糸の挿入領域と対応する位置の支持
部材あるいは曲面部支持部材が一時的に取り外されるた
め、各支持部材が厚さ方向糸の挿入に支障を来す虞はな
い。第2の曲面部支持部材は支持部材にその係合凹部と
係合する状態で支持されているため、分解及び組付けが
容易となる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明を航空機のリーディ
ングエッジ(前縁)用の繊維強化複合材の骨格材として
使用される三次元繊維組織の製造に具体化した一実施の
形態を図1〜図15に従って説明する。
【0022】先ず三次元繊維組織の製造に使用する治具
の構成を説明する。この治具は三次元繊維組織の形状に
対応した積層糸群の配列と、配列された積層糸群への厚
さ方向糸の挿入時における積層糸群の保持とに使用され
る。
【0023】図1及び図2に示すように、治具1は、互
いに平行に配置された一組の基板2,3を備えている。
両基板2,3はリーディングエッジの断面形状に対応し
た外形、即ち放物線と直線で囲まれたほぼ三角形状の板
状に形成され、中央に孔2a,3aが形成されている。
両基板2,3間には支持部材としての支柱4が複数本
(この実施の形態では7本)配設されている。各支柱4
はブラケット5を介して基板2,3に対して内側から取
り外し可能に固定されている。ブラケット5はネジ5a
により基板2,3及び支柱4に固定されている。各支柱
4は外側に凸となるように湾曲して形成されている。各
支柱4には外側の所定位置に係合凹部4aが形成されて
いる。基板2,3及び支柱4により基枠が構成されてい
る。
【0024】図2に示すように、基板2,3にはその外
周縁に沿って段差部2c,3cが形成され、その段差部
2c,3cと係合する状態で複数の支持プレート6が基
板2,3の外周縁に沿って配設されている。支柱4の両
端部と対応する位置には第1の曲面部支持部材としての
支持バー7が基板2,3の外周に沿って延びるように配
置されている。支持バー7は一部が支柱4に当接し、一
部が支持プレート6の先端に当接する状態で配置され、
その両端部が図示しない粘着テープ等で支柱4に固定さ
れている。支柱4の中間部には第2の曲面部支持部材と
しての曲面形成用バー8が、係合凹部4aと係合する状
態で支持されている。曲面形成用バー8は支柱4と共同
して三次元繊維組織の形状を保持する役割を果たす。
【0025】支持バー7には多数の規制ピン9aが所定
ピッチで取り外し可能に固定されている。各規制ピン9
aは基板2,3に対してほぼ45°の角度をなすように
固定されている。基板2,3には規制ピン9aの内側に
対応する所定位置に、基準ピン9bが取り外し可能に固
定されている。また、基板2,3の基端部(湾曲部と対
向する部分)と対応する位置に設けられた支持プレート
6の端部にも基準ピン9bが所定ピッチで取り外し可能
に固定されている。さらに、基板2,3の基端部と対応
する位置に配設された支柱4にも基準ピン9bが所定ピ
ッチで取り外し可能に固定されている。
【0026】次に前記治具1上に形成された積層糸群F
に厚さ方向糸z(図7にのみ図示)を複数本ずつ同時に
挿入して三次元繊維組織を製造する三次元繊維組織製造
装置を説明する。
【0027】図4は積層糸群Fが形成された治具1が取
り付けられた状態の製造装置の一部破断概略側面図を示
し、図6は同じく一部破断概略平面図を示す。図4及び
図6に示すように、製造装置11のベースプレート12
上には一対のレール12aが左右方向(図4及び図6の
左右方向)に延びるように設けられ、レール12aに沿
って第1の支持テーブル13が摺動可能に支持されてい
る。支持テーブル13上にはレール13aがレール12
aと直交する状態に延設され、レール13aに沿って第
2の支持テーブル14が摺動可能に支持されている。第
1の支持テーブル13は、ベースプレート12上に支持
されたモータM1によって駆動されるボールネジ機構1
5により、レール12aに沿って往復動される。第2の
支持テーブル14は、第1の支持テーブル13上に支持
されたモータM2によって駆動されるボールネジ機構1
6により、レール13aに沿って往復動される。モータ
M1,M2にはサーボモータが使用されている。
【0028】第2の支持テーブル14上の前寄り(図4
の左寄り)には治具1を回動可能に支持する支持部17
が設けられている。支持部17はその上部に軸受18が
設けられ、治具1を支持する支持軸19の下端を軸受1
8を介して回動可能に支持する。第2の支持テーブル1
4上の後寄りには支柱20が立設され、支柱20の上部
には支持アーム21がその基端において支軸22を介し
て回動可能に支持されている。支持アーム21の先端に
は前記支持軸19の上端が連結される駆動軸23を備え
たモータM3が支持されている。モータM3にはサーボ
モータが使用されている。支持アーム21は駆動軸23
が軸受18と同軸上に位置する所定位置(図4に示す位
置)に配置された状態で、図示しない固定手段により固
定されるようになっている。
【0029】支持軸19には治具1を支持する支持ブラ
ケット24a,24bが取り外し可能に固定されてい
る。第1の支持ブラケット24aは基板2,3において
治具1を支持し、第2の支持ブラケット24bは支柱4
において治具1を支持する。そして、治具1は支持軸1
9に支持された状態でモータM3により支持軸19と一
体的に回動されるようになっている。
【0030】図6に示すように、ベースプレート12の
前寄りには上下方向に延びる支柱25が左右一対立設さ
れ、各支柱25にはその上下方向に沿って延びるように
レール26が一対ずつ固定されている。各支柱25には
支持部材27a,27bがそれぞれ摺動可能に支持さ
れ、各支持部材27a,27bは各支柱25の上部に設
けられたモータM4によって駆動されるボールネジ機構
28により、レール26に沿って昇降移動されるように
なっている。各支持部材27a,27bにはボールネジ
機構28のボールナット(図示せず)が装備されてい
る。モータM4にはサーボモータが使用され、両モータ
M4は同期して駆動され各支持部材27a,27bは一
体的に昇降移動される。
【0031】第1の支持部材27aには軸受29を介し
て回動軸30が水平状態で回動可能に支持されている。
第2の支持部材27bにはモータM5が支持され、モー
タM5の駆動軸M5aには回動軸31が一体回転可能に
連結されている。両回動軸30,31は同軸上に位置す
るように配設されている。両回動軸30,31には厚さ
方向糸挿入装置32を支持する支持テーブル33が支持
アーム34を介して支持されている。従って、厚さ方向
糸挿入装置32はベースプレート12に対して昇降移動
可能、かつ回動軸30,31を中心として相対回動可能
に配置されている。
【0032】厚さ方向糸挿入装置32は基本的には本願
出願人が先に提案(特開平8−218249号公報等)
した装置と同様に構成されている。図5及び図7に示す
ように、支持テーブル33には一対のブラケット35
(一方のみ図示)が立設され、両ブラケット35間には
一対のガイドロッド36が回動軸30,31と平行に架
設されている。ガイドロッド36には支持プレート37
が摺動可能に支持され、支持プレート37はブラケット
35に固定されたエアシリンダ38の作動により所定の
距離を往復移動可能となっている。
【0033】支持プレート37の前後両端には一対の支
持ブラケット39が立設され、支持ブラケット39に設
けられた上下一対のガイドロッド40に沿って移動体4
1が摺動可能に支持されている。移動体41には両支持
ブラケット39を貫通するボールネジ42と螺合するボ
ールナット43が固定されている。移動体41の前端に
は針支持体44が固定され、針支持体44の前部に厚さ
方向糸挿入針(以下、単に挿入針という)45が所定ピ
ッチで1列に固定されている。針支持体44は前側(支
持軸19と対向する側)の支持ブラケット39に形成さ
れた孔(図示せず)を貫通する状態で配設されている。
【0034】図7に示すように、支持ブラケット39に
は支持板46a及びブラケット46bを介して駆動モー
タ47が固定されている。駆動モータ47は正逆回転可
能に構成され、ベルト伝動機構48を介してボールネジ
42を回転する。そして、駆動モータ47の作動によ
り、針支持体44は挿入針45が治具1に保持された積
層糸群Fと係合不能な待機位置と、針孔(図示せず)が
積層糸群Fの反対側となる位置まで積層糸群Fを貫通す
る作用位置とに移動される。挿入針45が作用位置にお
いて回動軸30,31の中心軸線上に位置するように針
支持体44のストロークが設定されている。
【0035】支持ブラケット39には上下一対の支持ロ
ッド49が支持ブラケット39を貫通した状態で摺動可
能に支持され、両支持ロッド49は前端側が連結板50
を介して互いに連結されている。支持ブラケット39に
は、ブラケットを介してエアシリンダ51が前後方向に
延びるように水平に固定され、そのピストンロッド51
aに連結板50が連結されている。連結板50には穿孔
針支持体52が固定され、穿孔針支持体52には穿孔針
53が挿入針45と対応した所定ピッチで1列に固定さ
れている。穿孔針53の列はエアシリンダ38の作動時
における支持プレート37の移動距離と等しい間隔を保
って挿入針45の列と平行に配置されている。エアシリ
ンダ51の作動により穿孔針支持体52は穿孔針53が
治具1に保持された積層糸群Fと係合不能な待機位置
と、積層糸群Fを貫通する作用位置とに移動される。
【0036】図6及び図7に示すように、支持テーブル
33上にはエアシリンダ54が前後方向に延びるように
水平に配設され、そのピストンロッド54aの先端にブ
ラケット55を介してプレスプレート56が固定されて
いる。エアシリンダ54は支持プレート37と干渉しな
い位置に配置されている。プレスプレート56は挿入針
45列の配列方向に沿って延びる断面L字状の支持部
と、支持部と一体的に形成された櫛歯部とを備えてい
る。プレスプレート56は櫛歯部で各挿入針45あるい
は穿孔針53を挟んだ状態で積層糸群Fを押圧可能とな
っている。
【0037】プレスプレート56は治具1に保持された
積層糸群Fに対して挿入針45及び穿孔針53の待機位
置側に配設され、挿入針45列の挿入位置近傍において
挿入針45列の移動方向に沿って移動可能に配設されて
いる。エアシリンダ54の作動によりプレスプレート5
6は治具1に保持された積層糸群Fと係合して積層糸群
Fを挿入針45列の前進側へ押圧する作用位置と、積層
糸群Fと係合不能な待機位置とに移動される。
【0038】回動軸30には図示しない厚さ方向糸供給
部から繰り出される厚さ方向糸zを案内するガイド部5
7が設けられている。図8及び図9に示すように、ガイ
ド部57は回動軸30に対して一体回転可能に固定され
たほぼ半円形の一対の支持板58と、支持板58間に固
定された支持ロッド59と、支持ロッド59に所定ピッ
チで固定された多数の円弧状の分離板60とを備えてい
る。分離板60は支持プレート37が水平に配置された
状態において、下に凸となる状態に配設されている。ま
た、両支持板58には分離板60の取付け側と反対側に
支持バー61が固着され、支持バー61上に複数のガイ
ドローラ62が支持されている。ガイドローラ62は回
動軸30の中心に向かって延びるように固定された支軸
63に回動可能に支持されている。
【0039】図4〜図7に示すように、支持ブラケット
39には、針支持体44と反対側に延びるブラケット6
4が固定され、ブラケット64には糸ガイド65が設け
られている。糸ガイド65はボールネジ42と直交する
方向に延びるように設けられた4本の支持ロッド66
と、各支持ロッド66に回動可能に支持されたガイドロ
ーラ67とを備えている。また、支持テーブル33上に
はブラケット68が突設され、ブラケット68には糸ガ
イド69が設けられている。糸ガイド69は2本の支持
ロッド66と、各支持ロッド66に回動可能に支持され
たガイドローラ67とを備えている。そして、厚さ方向
糸供給部から繰り出された厚さ方向糸zが先ずガイド部
57に導かれた後、糸ガイド69及び糸ガイド65を経
て挿入針45に供給されるようになっている。
【0040】各モータM1〜M5、駆動モータ47及び
エアシリンダ38,51,54は図示しない制御装置に
より所定の順序で制御され、治具1に支持された積層糸
群Fの厚さ方向糸zの挿入位置に対して、挿入針45が
垂直に挿入されるように往復移動されるようになってい
る。
【0041】次に前記のように構成された装置の作用を
説明する。この実施の形態では積層糸群Fを構成する糸
の配列方向が基準方向に対してなす角度(配列角度)が
0°及び±60°に設定された面内3軸の構成となって
いる。糸の配列方向は、治具1の支柱4と平行に延びる
方向を基準としている。配列角度が0°となる第1の面
内配列糸yの糸層を形成する場合は、面内配列糸yの端
部を基板3に固定した状態で、図10に示すように、面
内配列糸yが基準ピン9bと係合する状態で折り返すよ
うにして支柱4とほぼ平行に延びるように配列される。
【0042】配列角度が+60°となる第2の面内配列
糸としてのバイアス糸Bの糸層を形成する場合は、糸B
の端部を基板3に固定した状態で、先ず、基板3及び支
持プレート6に固定された基準ピン9bと係合する状態
で折り返し、次に図11に示すように、支柱4及び基板
3に固定された基準ピン9bと係合する状態で折り返す
ようにして支柱4とほぼ60°の角度をなすように配列
される。この実施の形態の治具1では、支柱4に固定さ
れた基準ピン9bに対しては2本ずつ係合した状態で折
り返すように配列することにより、バイアス糸Bが支柱
4とほぼ60°の角度をなすように配列される。支柱4
に固定された基準ピン9bにおける折り返しが終了した
後は、基板2,3の基準ピン9bと係合する状態で支柱
4とほぼ60°の角度をなすように配列され、その後、
反対側の支柱4及び基板2に固定された基準ピン9bと
係合する状態で折り返すようにして支柱4とほぼ60°
の角度をなすように配列される。バイアス糸Bは支持バ
ー7と対応する位置で屈曲されて斜めに延びるように配
列されるが、支持バー7に固定された規制ピン9aと係
合することによりバイアス糸Bが所定の位置に整然と配
列される。
【0043】配列角度が−60°となるバイアス糸Bの
糸層を形成する場合は、バイアス糸Bの端部を基板2に
固定した状態で、先ず、基板2及び支持プレート6に固
定された基準ピン9bと係合する状態で折り返し、次に
支柱4及び基板2に固定された基準ピン9bと係合する
状態で折り返すようにして支柱4とほぼ−60°の角度
をなすように配列される。以下、前記配列角度が+60
°となるバイアス糸Bの配列と基本的に同様にして配列
される。
【0044】面内配列糸y及びバイアス糸Bの配列作業
は、手作業あるいは多軸ロボットのアームに糸供給部を
装備した装置による作業により行われる。治具1上に前
記各糸層が所定の順序で所定数積層され、図2及び図4
等に示すように、積層糸群Fが形成される。なお、積層
糸群Fの密度を高めるとともに厚さを調整するため、各
糸層の配列が完了するたび、あるいは適宜の糸層が形成
された時点毎に糸層を上からプレスプレート(図示せ
ず)で押圧して積層糸群Fを圧縮してもよい。なお、面
内配列糸y、バイアス糸B及び厚さ方向糸zを構成する
繊維の材質としては複合材の用途に応じてカーボン繊
維、ガラス繊維、ポリアラミド繊維等種々のものが使用
される。
【0045】次に治具1が積層糸群Fとともに前記製造
装置11の支持軸19に支持ブラケット24a,24b
を介して固定される。そして、図12(a)及び図13
(a)に示すように、治具1の下部側面が挿入針45と
対向する状態から製造装置11が駆動されて積層糸群F
に厚さ方向糸zが挿入される。厚さ方向糸zの挿入時、
先ず穿孔針53が積層糸群Fの厚さ方向糸挿入位置と対
向する位置に配置され、その状態でエアシリンダ54が
作動され、プレスプレート56が作用位置に配置され
る。そして、プレスプレート56により積層糸群Fは穿
孔針53列と対応する箇所が押圧状態に保持される。そ
の状態でエアシリンダ51が突出作動されて穿孔針53
が前進し、穿孔針53が積層糸群Fを貫通する作用位置
に配置された後、エアシリンダ51が没入作動されて穿
孔針53が後退する。積層糸群Fを構成する繊維がプレ
スプレート56の圧縮作用によりある程度密に配置され
た状態にあるため、穿孔針53の抜き跡に孔が形成され
る。
【0046】次にエアシリンダ38が突出作動されて支
持プレート37とともに穿孔針53列及び挿入針45列
が移動され、挿入針45列が孔と対向する位置に配置さ
れる。次に駆動モータ47が作動されてボールネジ42
が正転駆動され、挿入針45が前進して作用位置に配置
される。挿入針45は針孔が積層糸群Fの前方に出るま
で積層糸群Fに挿通される。挿入針45が前進端に達し
た後、駆動モータ47が逆転されて挿入針45がわずか
に後退させられる。その結果、積層糸群Fから針孔に連
なる厚さ方向糸zが抜け止め糸針(図示せず)の通過を
許容するループを形成した状態となる。
【0047】次に抜け止め糸針を使用して抜け止め糸が
前記ループに挿通される。その後、駆動モータ47が逆
転されて挿入針45が後退し、積層糸群Fから離脱して
待機位置に配置される。この状態で張力調整部(図示せ
ず)の作用により厚さ方向糸zが引き戻され、積層糸群
F内に挿入された厚さ方向糸zが抜け止め糸により抜け
止めされた状態で締付けられる。次にエアシリンダ38
が作動され、支持プレート37とともに穿孔針53列及
び挿入針45列が移動されて初期位置に戻される。ま
た、エアシリンダ54が作動されてプレスプレート56
が待機位置に配置される。以上により厚さ方向糸zの1
回の挿入サイクルが完了する。
【0048】次にモータM2が駆動されて第2の支持テ
ーブル14が厚さ方向糸zの挿入ピッチ分移動され、穿
孔針53が積層糸群Fへの次回の厚さ方向糸挿入位置と
対向する状態となる。以下、前記と同様にして順次厚さ
方向糸zの挿入サイクルが実行される。そして、図13
(b)に示すように、積層糸群Fの一方の側面側の直線
部への厚さ方向糸zの挿入が完了する位置まで第2の支
持テーブル14が移動された後、厚さ方向糸zの各回の
挿入サイクルが完了する毎にモータM3が駆動されて、
治具1が支持軸19を中心に所定角度回動される。ま
た、モータM1,M2が駆動されて、第2の支持テーブ
ル14がX方向(図13(b)の左右方向)及びY方向
(図13(b)の上下方向)に移動される。そして、図
14(a)、図14(b)、図15(a)及び図15
(b)に示すように、積層糸群Fの曲面部への厚さ方向
糸zの挿入が完了する位置まで順に厚さ方向糸zの挿入
が行われる。次に積層糸群Fの他方の側面側の直線部へ
の厚さ方向糸zの挿入が完了する位置まで、厚さ方向糸
zの各回の挿入サイクルが完了する毎にモータM2が駆
動されて第2の支持テーブル14が厚さ方向糸zの挿入
ピッチ分ずつ図15(b)の下方向へ移動される。
【0049】厚さ方向糸zの挿入時に、治具1を構成す
る支柱4、支持プレート6、支持バー7及び曲面形成用
バー8が挿入針45と干渉する場合は、当該領域の支柱
4、支持プレート6、支持バー7及び曲面形成用バー8
を一時的に取り外した状態で厚さ方向糸zの挿入を行
い、その後、再び元の位置に組付ける。
【0050】図12(a)に示すように、積層糸群Fの
側面の下部と対応する部分への厚さ方向糸zの挿入が完
了すると、モータM4が駆動されて支持テーブル33が
所定量上昇されるとともに、モータM5が駆動されて回
動軸30,31が所定量回動される。そして、挿入針4
5が図12(a)の位置より上側の厚さ方向糸挿入位置
において、積層糸群Fと直交する位置に配置される。な
お、第2の支持テーブル14も挿入針45と積層糸群F
との距離が所定値となるように位置調整される。そし
て、その状態で前記のように、積層糸群Fの側面への厚
さ方向糸zの挿入が行われる。以下、その高さでの積層
糸群Fの側面への厚さ方向糸zの挿入が完了する毎に、
モータM4,M5が駆動されて厚さ方向糸挿入装置32
が上昇移動されるとともに、第2の支持テーブル14の
位置調整が行われる。
【0051】そして、図12(b)に示すように、積層
糸群Fの側面の最上部への厚さ方向糸zの挿入が完了す
ると、厚さ方向糸挿入装置32が図12(c)に示すよ
うに、積層糸群Fの上側フランジ部への厚さ方向糸zの
挿入位置へ移動される。その状態で厚さ方向糸zの挿入
が行われ、積層糸群Fの上側フランジ部への厚さ方向糸
zの挿入が完了した後、モータM4,M5が逆転駆動さ
れて厚さ方向糸挿入装置32が積層糸群Fの下側フラン
ジ部への厚さ方向糸zの挿入位置へ移動される。下側フ
ランジ部への厚さ方向糸zの挿入が完了すると、積層糸
群Fの厚さ方向糸挿入区域全域への厚さ方向糸zの挿入
が終了して三次元繊維組織Wが完成する。そして、各規
制ピン9a及び基準ピン9bが治具1から取り外された
後、治具1が三次元繊維組織Wの内側から分解されて、
図3に示すような三次元繊維組織Wの製造が完了する。
【0052】なお、三次元繊維組織Wに内側に屈曲形成
されたフランジ部が設けられているため、抜け止め糸の
挿入は手作業の方が簡単となる。しかし、湾曲した針を
使用して、厚さ方向糸zのループに針を順に挿通させる
ことにより自動化も可能である。また、コーナ部近傍、
即ち図12(a)〜図12(c)に示す位置での厚さ方
向糸zの挿入時には、厚さ方向糸zと別の抜け止め糸を
厚さ方向糸zのループに挿通することが難しい。このよ
うな場合は、特開平8−218249号公報に開示され
ているのと同様に、コーナ部側に挿入される厚さ方向糸
zを抜け止め糸針で掛止して他の厚さ方向糸zのループ
に挿通して抜け止め糸としても使用することにより、抜
け止め糸の挿通が容易になる。この場合、抜け止め糸を
兼用する厚さ方向糸zは他の厚さ方向糸zと独立して繰
り出し、巻き戻しが可能なボビンから供給する必要があ
る。
【0053】この実施の形態では次の効果を有する。 (イ) 治具1に保持された積層糸群Fに厚さ方向糸z
を挿入する際、挿入領域と対応する箇所の支柱4、支持
プレート6等の部品が、積層糸群の内側から分解された
状態で厚さ方向糸が挿入される。そして、当該領域に挿
入された厚さ方向糸により積層糸群が締め付けられた
後、分解された支柱4、支持プレート6等が再び組み付
けられる。従って、複雑な曲面形状を保持するため、多
数の支柱4や支持プレート6等が存在しても、厚さ方向
糸zの挿入を支障無く行うことができる。また、分解さ
れた部品が再び組み付けられて治具1を構成するため、
三次元繊維組織Wの製造が完了するまで、治具1により
積層糸群Fを所定の形状に確実に保持できる。 (ロ) 三次元繊維組織Wの両側に形成されるフランジ
部を形成する積層糸群Fの配列時に、面内配列糸y及び
バイアス糸Bが支持プレート6に沿って配列されるた
め、面内配列糸y及びバイアス糸Bが裏側(内側)に盛
り上がる虞がない。その結果、フランジ部を所望の厚さ
でフラットに形成できる。
【0054】(ハ) 積層糸群Fが支柱4とほぼ平行に
配列される面内配列糸yと、面内配列糸yに対して±6
0°の角度をなすように配列されるバイアス糸Bにより
構成される。従って、支柱4及び曲面形成用バー8によ
り曲率が異なる曲面が連続する状態に形成された領域内
に規制ピン9aや基準ピン9bを配置しなくても各糸
y,Bが所定の位置に確実に配列され、治具1の組立及
び分解が容易となる。
【0055】(ニ) 三次元繊維組織Wのコーナ部(屈
曲部)と対応する位置に規制ピン9aが配置されている
ため、バイアス糸Bがコーナ部を跨いで斜めに配列され
る場合でも、バイアス糸Bをずれが発生せずに所定の位
置に確実に配列することができる。
【0056】(ホ) 基板2,3が単なる平板ではな
く、孔2a,3aが形成された枠状に形成されているた
め、治具1を製造装置11の支持軸19に固定する際
に、その取付けが容易になる。
【0057】(第2の実施の形態)次に第2の実施の形
態を図16に従って説明する。この実施の形態では、治
具1の構成が面内4軸の構成の積層糸群の配列及び保持
に適した構成となっている点が前記実施の形態と異なっ
ている。具体的には、治具1のほぼU字状に湾曲する箇
所と対応する位置に配置された支柱4及び支持プレート
6に規制ピン9aが取り外し可能に固定されている。
【0058】この治具1を使用する場合、積層糸群Fは
支柱4とほぼ平行に配列される面内配列糸yと、面内配
列糸yと直交するように配列される面内配列糸xと、両
面内配列糸x,yに対して±45°の角度で交差するよ
うに配列される面内配列糸としてのバイアス糸Bとで、
面内4軸の構成となる。
【0059】面内配列糸yは第1の実施の形態と同様に
配列され、バイアス糸Bは45°又は−45°の角度を
なすように配列される。面内配列糸xは支持プレート6
及び支柱4に固定された基準ピン9b及び規制ピン9a
と係合する状態で、支持バー7と平行に配列される。支
柱4は外側に凸となるように湾曲形成されているため、
規制ピン9aがない状態で面内配列糸xが配列された場
合は、面内配列糸xが支柱4に沿ってずれ、面内配列糸
xが所定ピッチで配列され難くなる。しかし、湾曲部に
規制ピン9aが配置されているため、面内配列糸xが規
制ピン9aと係合して支持バー7と平行に配列される。
U字状の先端と対応する位置だけでなく、それに隣接す
る支柱4又はすべての支柱4に規制ピン9aを設けても
よい。
【0060】治具1上に形成された積層糸群Fへの厚さ
方向糸zの挿入は前記実施の形態と同様にして行われ
る。但し、厚さ方向糸zの挿入時に、一時的に支柱4あ
るいは支持プレート6を分解するために当該支柱4ある
いは支持プレート6から取り外された規制ピン9aは、
元の位置に取り付ける必要はない。規制ピン9aを元の
位置に取り付けなくても、挿入された厚さ方向糸zによ
り、各糸x,y,Bの配列の乱れが阻止される。
【0061】この実施の形態の治具1を使用した場合
は、面内4軸構成の積層糸群Fの配列が良好に行われ
る。また、製造された三次元繊維組織は面内4軸構成の
ため、第1の実施の形態の三次元繊維組織より面内配列
糸yと直交する方向への引っ張り及び圧縮に対する強度
が向上する。
【0062】なお、実施の形態は前記に限定されるもの
ではなく、例えば、次のように具体化してもよい。 ○ 積層糸群Fを面内配列糸x,y及びバイアス糸Bの
配列のみで構成する代わりに、クロス(布)を積層して
構成する。クロスの場合は1枚で糸配列の2層分とな
る。例えば、平織りのクロスは面内配列糸xによる糸層
と、面内配列糸yによる糸層とが積層されたものとほぼ
同等の構成となる。また、平織りのクロスを重ねる場合
に、一方のクロスの糸が他方のクロスの糸と±45°の
角度で交差するように配置すれば、面内配列糸x,yの
糸層に対してバイアス糸Bの糸層を積層したものとほぼ
同等の構成となる。クロスは治具1の糸層形成部を覆う
ように配置されるとともに、クロスの周縁部の、製品と
ならない部分が治具1に止めピンや粘着テープあるいは
接着剤等により固定されて所定の形状に保持される。こ
の場合、治具1は規制ピン9aや基準ピン9bが不要に
なる。止めピンを使用した場合、その数は規制ピン9a
や基準ピン9bの数に比べて格段に少なくなり、治具1
の組付け時間が短縮される。また、糸層の形成時間も大
幅に短縮できる。しかし、得られた三次元繊維組織を強
化材(骨格材)とした複合材の物性は、面内配列糸x,
yやバイアス糸Bの配列により積層糸群Fを形成したも
のに比較して劣るが、剛性をさほど要求されない構造材
には有効となる。
【0063】○ 糸の配列とクロスの積層とを組み合わ
せて積層糸群を形成してもよい。この構成は、その肉厚
が部分的に変化する積層糸群を形成する際に有効であ
る。例えば、クロスを必要数積層した後、肉厚を厚くす
る部分と対応する箇所の基板2,3及び支持プレート6
あるいは支柱4に基準ピン9bを取り付け、当該箇所に
糸層を必要数配列する。
【0064】○ 積層糸群Fは少なくとも面内2軸配向
であればよく、バイアス糸Bをなくして面内配列糸x,
yによる面内2軸配向としたり、面内4軸配向の構成に
おいて積層糸群Fを構成するバイアス糸Bの傾斜角度を
45°以外にしてもよい。
【0065】○ リーディングエッジの形状に限らず、
図17の(a)に示すような円筒、(b)に示すような
円錐台筒あるいは(c)に示すようなドーム形状等の回
転体や、それらの底部あるいは両端部にフランジ部が形
成された形状等、他の曲面部を有する形状の三次元繊維
組織に適用してもよい。フランジ部のない(a)〜
(c)の形状のものは特開昭61−201063号公報
に開示された方法でも製作可能であるが、(b)及び
(c)の底部にフランジ部が形成された形状、あるいは
(a)及び(b)の両端部にフランジ部が形成された形
状の場合は製作不能となる。しかし、内側から分解・組
立可能な治具を使用することにより、それらの形状の三
次元繊維組織も第1の実施の形態と同様にして形成でき
る。もちろん、治具は三次元繊維組織の形状に対応した
形状のものが使用される。
【0066】○ 治具1を構成する支持プレート6を省
略して、面内配列糸x,y及びバイアス糸Bを基板2,
3、支柱4、支持バー7及び曲面形成用バー8で支持す
る構成としてもよい。また、曲面部に配置する支柱4及
び曲面形成用バー8の数を増やしてもよい。それらの数
を増やすと、積層糸群の曲面部の形状が滑らかになる。
【0067】○ 積層糸群Fに厚さ方向糸zが挿入され
て三次元繊維組織Wが治具1に支持された状態で形成さ
れた後、治具1を分解して三次元繊維組織Wを治具1か
ら取り外す際、三次元繊維組織Wの周縁に位置する基準
ピン9bを治具1から取り外す代わりに、それらの基準
ピン9bに巻き掛けられている糸を切断して三次元繊維
組織Wと基準ピン9bとの係合を解除してもよい。積層
糸群Fは厚さ方向糸zにより締め付け固定されているた
め、基準ピン9bと係合している糸を切断しても三次元
繊維組織Wの物性に悪影響はない。この場合、基準ピン
9bの着脱の手間がなくなる。
【0068】○ 積層糸群Fの厚さや繊維の種類によっ
ては穿孔針53による孔開けを行わずに、挿入針45を
積層糸群Fに直接挿入してもよい。前記実施の形態から
把握できる請求項記載以外の技術思想(発明)につい
て、以下にその効果とともに記載する。
【0069】(1) 前記積層糸群は厚さが異なる部分
を有し、複数のクロスを前記治具の外側に載置すること
により所定の厚さの積層糸群を形成した後、厚さのたり
ない領域を囲むようにクロスを貫通する状態でピンを治
具に取り付け、該ピン間に糸を折り返し状に配列して糸
層を形成することにより構成されている請求項1に記載
の三次元繊維組織の製造方法。この場合、厚さの異なる
部分を有する積層糸群の配列が簡単になる。
【0070】(2) 請求項2に記載の三次元繊維組織
の製造方法に使用される治具であっ三次元繊維組織の曲
面部と対応する位置に配置される複数の第1の曲面部支
持部材と、コーナ部以外の曲面部と対応する位置に配置
される第2の曲面部支持部材と、前記各第1及び第2の
曲面部支持部材を支持する複数の基枠と、前記基枠の一
部を積層糸群の内側から分解・組付け可能に固定するブ
ラケットとを備えた治具。この治具は積層糸群をクロス
のみで形成する場合に有効である。
【0071】(3) 前記第1及び第2の曲面支持部材
及び基枠を桟又は棒材を組み合わせて形成した請求項4
に記載の治具。この場合、板材を組み合わせて形成する
場合に比較して、分解・組付けが容易となる。
【0072】
【発明の効果】以上詳述したように請求項1〜請求項5
に記載の発明によれば、複数の糸層を積層して形成され
た少なくとも2軸配向となる積層糸群と、各糸層と直交
する方向に配列されて前記積層糸群を結合する厚さ方向
糸を含み、かつ曲面部を有する形状に形成される三次元
繊維組織を、曲面部の曲率や屈曲部の位置に関係なく形
成することができ、厚さ方向糸の挿入作業も簡単にな
る。
【0073】請求項2に記載の発明によれば、積層糸群
の形成時間を大幅に短縮できる。また、治具の構造や組
付けが簡単になる。請求項3に記載の発明によれば、曲
率が一定でない曲面部を有する三次元繊維組織を形成す
る場合、クロスを枠体上に配置する場合に比較して、所
望の形状に対応した糸層の形成が容易となる。
【0074】請求項4に記載の発明の治具は、請求項3
の三次元繊維組織の製造に好適である。請求項5に記載
の発明の治具は、リーディングエッジ用の複合材料を製
造するための三次元繊維組織の製造に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施の形態の治具の概略斜視図。
【図2】 同じく断面図。
【図3】 三次元繊維組織の概略斜視図。
【図4】 製造装置に治具を取り付けた状態の一部破断
一部省略側面図。
【図5】 厚さ方向糸挿入装置の一部破断一部省略側面
図。
【図6】 製造装置に治具を取り付けた状態の一部破断
一部省略平面図。
【図7】 厚さ方向糸挿入装置の一部破断部分平面図。
【図8】 糸ガイドの側面図。
【図9】 糸ガイドの平面図。
【図10】 面内配列糸の配列状態を示す概略斜視図。
【図11】 バイアス糸の配列状態を示す概略斜視図。
【図12】 厚さ方向糸の挿入作用を示す概略側断面
図。
【図13】 厚さ方向糸の挿入作用を示す概略平面図。
【図14】 厚さ方向糸の挿入作用を示す概略平面図。
【図15】 厚さ方向糸の挿入作用を示す概略平面図。
【図16】 第2の実施の形態の治具の概略斜視図。
【図17】 三次元繊維組織の概略斜視図。
【符号の説明】
1…治具、2,3…基枠を構成する基板、4…基枠を構
成する支持部材としての支柱、5…ブラケット、7…第
1の曲面支持部材としての支持バー、8…第2の曲面支
持部材としての曲面形成用バー、9a…規制ピン、9b
…基準ピン、B…面内配列糸としてのバイアス糸、x,
y…面内配列糸、z…厚さ方向糸、F…積層糸群、W…
三次元繊維組織。
フロントページの続き (72)発明者 竹内 純治 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 (72)発明者 鈴木 航也 愛知県刈谷市豊田町2丁目1番地 株式会 社豊田自動織機製作所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の糸層を積層して形成された少なく
    とも2軸配向となる積層糸群と、各糸層と直交する方向
    に配列されて前記積層糸群を結合する厚さ方向糸を含
    み、かつ曲面部を有する形状に形成された三次元繊維組
    織の製造方法であって、 前記三次元繊維組織の形状に対応する状態で前記積層糸
    群を支持可能、かつ積層糸群を支持した状態で部分的に
    分解可能な治具上に、糸層を複数積層して少なくとも2
    軸配向となる積層糸群を形成した後、前記積層糸群を前
    記治具に保持した状態で、前記治具の一部を積層糸群の
    内側から部分的に分解し、分解された部分と対応する積
    層糸群の領域に厚さ方向糸を挿入して積層糸群を締め付
    けた後、分解した部分を再び組付け、次に治具の別の箇
    所を分解して、その部分と対応する積層糸群の領域に厚
    さ方向糸を挿入して積層糸群を締め付ける動作を繰り返
    すことにより前記積層糸群の厚さ方向糸の挿入を必要と
    する領域全体に厚さ方向糸を挿入して、前記積層糸群を
    結合して三次元繊維組織を形成し、その後、前記治具を
    三次元繊維組織の内側から分解して取り外す三次元繊維
    組織の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記積層糸群は複数のクロスを前記治具
    の外側に載置することにより形成される請求項1に記載
    の三次元繊維組織の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記治具は厚さ方向糸の挿入区域と対応
    する領域を囲むようにピンが所定ピッチで配置された枠
    体を有し、前記積層糸群は該ピン間に糸を折り返し状に
    配列して形成された複数の糸層により構成される請求項
    1に記載の三次元繊維組織の製造方法。
  4. 【請求項4】 三次元繊維組織の形状に対応した外形形
    状を有するとともに、多数のピンが所定ピッチで取り付
    けられた枠体上に、前記ピン間に糸を折り返し状に配列
    して糸層を複数積層して少なくとも2軸配向となる積層
    糸群を形成した後、前記枠体上に形成された積層糸群を
    各糸層と交差する方向に配列された厚さ方向糸で結合す
    る三次元繊維組織の製造方法に使用される治具であっ
    て、 三次元繊維組織の曲面部と対応する位置に配置されると
    ともに多数のピンが少なくともそのコーナ部に所定ピッ
    チで取り外し可能に固定された複数の第1の曲面部支持
    部材と、 コーナ部以外の曲面部と対応する位置に配置される第2
    の曲面部支持部材と、 前記各第1及び第2の曲面部支持部材を支持するととも
    に、多数のピンが少なくとも前記積層糸群の周縁部と対
    応する位置に取り外し可能に固定された複数の基枠と、 前記基枠の一部を積層糸群の内側から分解・組付け可能
    に固定するブラケットとを備えた治具。
  5. 【請求項5】 前記基枠は互いに平行に配置されるとと
    もに湾曲部を有する一組の基板と、該両基板に対してブ
    ラケットを介して固定されるとともに、外側に係合凹部
    が形成された複数の支持部材とを備え、前記第1の曲面
    部支持部材は前記支持部材の両端部と対応する位置に配
    置され、多数の規制ピンが取り外し可能に固定された支
    持バーであり、前記第2の曲面部支持部材は前記支持部
    材に対して前記係合凹部と係合する状態で前記支持バー
    と平行に支持される曲面形成用バーであり、前記両基板
    には前記規制ピンの内側の所定位置に取り外し可能に固
    定される基準ピンが装備されている請求項4に記載の治
    具。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013525140A (ja) * 2010-04-16 2013-06-20 コンポジテンス ゲーエムベーハー ノンクリンプ織物の製造装置および製造方法

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