JPH11181519A - 高靭性を有する高強度厚鋼板の製造方法 - Google Patents

高靭性を有する高強度厚鋼板の製造方法

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JPH11181519A
JPH11181519A JP36429797A JP36429797A JPH11181519A JP H11181519 A JPH11181519 A JP H11181519A JP 36429797 A JP36429797 A JP 36429797A JP 36429797 A JP36429797 A JP 36429797A JP H11181519 A JPH11181519 A JP H11181519A
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temperature
recrystallization
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toughness
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Shinichi Suzuki
伸一 鈴木
Sadahiro Yamamoto
定弘 山本
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NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 実際の厚板圧延において、オーステナイト再
結晶温度域での再結晶を繰り返し促進させ、またオース
テナイト未再結晶温度域での累積圧下率を大きく確保す
ることにより、鋼の強度および靭性に優れた厚鋼板を効
率よく製造する方法を課題とする。 【解決手段】 同一圧延ライン上に配置した2台の圧延
機を用いて厚鋼板をタンデム圧延するに際して、オース
テナイト再結晶域において2台の圧延機による圧延のパ
ス間時間を5秒以下とし、ついでオーステナイトの未再
結晶温度以下Ar3変態点以上の温度域において2台の
圧延機で70%以上の累積圧下率を加え、さらに圧延終
了後、Ar3変態点以上の温度から(Ar3変態点−1
00℃)以下350℃以上までの温度域を、20℃/秒
以上の冷却速度で制御冷却を行うことを特徴とする、高
靭性を有する高強度厚鋼板の製造方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、強度と靭性に優れ
た厚鋼板を得るための圧延方法及びその後の制御冷却方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】厚鋼板は、建築、造船、海洋構造物、ラ
インパイプ等の様々な用途に用いられている。近年、こ
れらに使用される厚鋼板に対する材質上の要求はますま
す高度化しており、一層の高強度化、高靭性化が望まれ
ている。このような要求に応えるために、従来から、制
御圧延と制御冷却を組み合わせた加工熱処理方法、いわ
ゆるTMCP法(Thermo−Mechanical
Control Process)が広く用いられて
きた。
【0003】TMCP法の中心となる考え方は、(1)
オーステナイトの高温再結晶域で1パス当たりの圧下率
を大きくとり、オーステナイトの再結晶を繰り返すこと
で、オーステナイトの細粒化を図ること、(2)オース
テナイトの低温未再結晶域の圧延において累積圧下率を
大きくして、オーステナイト粒の伸展度を増大させ、多
数の変形帯を導入することにより、その後のフェライト
変態に際してフェライトの核発生サイトを増加させてフ
ェライトの細粒化を図ること、(3)圧延後の制御冷却
におけるγ/α変換比の調整によるフェライトの細粒化
と微細ベイナイト組織を導入することである。
【0004】オーステナイトの高温域での再結晶の促進
は、その後の組織の微細化の基礎となる点で、また均一
な組織を得る点で、その果たす役割は大きい。再結晶
は、オーステナイト粒が細粒ほど容易に起こることか
ら、低加熱温度の採用が望ましい。しかし、実際の圧延
においては、高温域といえども、1パスで再結晶を起こ
させるような大きな圧下率、例えば1パス当たり約20
%の圧下率を付与するのは容易ではない。
【0005】また、1パスでは再結晶が起こらない程度
の圧下が重畳された結果、圧延歪みが累積されて再結晶
が起こることも知られている。しかしながら、リバース
ミルを前提とする実際の厚板圧延においては、圧延材に
短時間で連続的に圧下を加えるのは不可能である。従っ
て、不可避的な圧延パス間の待機時間中に、前のパスで
導入された圧延歪みが回復してしまい、歪みの累積によ
る再結晶の進展も十分には発揮できないことが多い。
【0006】一方、オーステナイトの低温未再結晶域に
おける累積圧下率は、上述の(2)の機構に基づいてフ
ェライトが細粒化し、材質を著しく向上させる効果を有
する。例えば、図1は、後述するC−Mn鋼である鋼A
を、1100℃に加熱後、850℃(未再結晶温度)以
下の温度域で圧下率を種々変化させた後、冷却速度25
℃/secで制御冷却した場合における鋼の強度および
靭性の変化を示したものである。オーステナイトの未再
結晶域での圧下率の増加とともに、強度および靭性はと
もに連続的に向上することが明らかである。
【0007】従って、制御圧延においては、オーステナ
イトの未再結晶温度域での累積圧下率を極力大きく確保
することが望ましい。しかし、一方では圧延終了温度は
Ar3変態点温度以上であることが望ましいことから、
累積圧下率に制限を設けざるを得ないのが実情である。
【0008】すなわち、実際の圧延においては、厚板圧
延機の圧延ロールによる抜熱及びロール冷却水やデスケ
ーリングの使用により、圧延される材料は圧延途中に大
きな温度降下を生じる。このため、材料の変形抵抗が増
大し、1パス当たりの圧下率を大きくとることができ
ず、圧延温度は重畳的に低下する。また、Ar3変態点
以下の圧下は、強度靭性を向上させるものの、圧延集合
組織の発達が著しくなり、鋼材の異方性を助長させる問
題があるため、Ar3変態点温度以下での過度の圧下は
好ましくない。
【0009】従って、鋼板の仕上板厚(製品板厚)と圧
延終了温度が決まると、圧延途中の温度降下挙動は一義
的であるため、制御圧延において最も重要な因子である
未再結晶域における累積圧下率が制限されることにな
る。その結果、例えば未再結晶域で70%以上の累積圧
下率を確保することは困難であり、図1に示されるよう
な強度と靭性の向上効果を十分に活用することができな
い。
【0010】オーステナイトの未再結晶域での累積圧下
率を増加させる方法としては、いくつかの方法がある。
第1の方法は、Nb、Ti等のマイクロアロイ元素の含
有により、未再結晶の始まる温度を上昇させ、未再結晶
域を拡大する方法である。この方法の場合、0.10%
以下のNb又はTiを含有させることにより、未再結晶
域が高温側に約50℃程度拡がる。しかし、Nb、Ti
の含有量をこれ以上増加してもその効果が飽和するこ
と、また、これらの元素の含有量の増加は、一般には溶
接性が著しく損なうため、マイクロアロイ元素の含有に
期待する方法には限界がある。
【0011】第2の方法は、熱間圧延ラインでの熱損失
を防ぐ方法である。これに関しては、例えば特公昭41
−9644号公報、特公昭53−142955号公報、
特公昭56−51518号公報に、鋼片搬送時の熱損失
を抑制する技術が開示されている。しかしながら、これ
らはいずれも圧延前工程と圧延工程との間における鋼片
搬送時の熱損失を防ぐ技術であり、圧延途中の鋼片の温
度降下を抑制して未再結晶域での累積圧下率を増加させ
るものではない。
【0012】また、特開平5−43934号公報および
特開平5−295432号公報には、保温システムの利
用により圧延途中の温度降下を防止して、未再結晶域で
の累積圧下率を確保する方法が開示されている。しかし
ながら、これらの方法では保温のために専用の設備を設
置する必要があり、費用対効果の面で必ずしも有利とは
いえない。
【0013】一方、第3の方法として、特開昭59−7
8703号公報には、2台の圧延機を同一圧延ライン上
に配置し、それをタンデムリバースミルとして用いるこ
とにより、厚鋼板の熱間圧延に際して、極めて低い加熱
温度を採用し、かつ、圧延仕上温度を高温とするタンデ
ム圧延方法が開示されている。この発明は、低温加熱し
たスラブを再結晶温度域で仕上げるためにタンデム圧延
を行うものであり、実質的に加熱温度の下限を900
℃、仕上温度の下限を800℃としている。しかしなが
ら、極低温加熱は、スラブの加熱効率、加熱温度の均一
性の点で課題が多々あるのみならず、当該発明では圧延
・冷却条件については言及していないため、この方法だ
けで、必ずしも鋼材の靭性が向上するとはいえないと考
えられる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述のよう
に理論的には十分に確立されているが、実際の厚板圧延
ではその効果を十分に発揮し得ない制御圧延法におい
て、オーステナイト再結晶温度域での再結晶を繰り返し
促進させ、またオーステナイト未再結晶温度域での累積
圧下率を大きく確保することにより、鋼の強度および靭
性に優れた厚鋼板を効率よく製造する方法を提供するこ
とを目的とするものである。
【0015】
【発明を解決するための手段】本発明者らは、鋼材の靭
性に及ぼす圧延・冷却条件の影響について鋭意検討を重
ねた結果、これまで詳細な検討が行われていなかったタ
ンデム圧延において、タンデム圧延のパス間時間の規
制、未再結晶温度域における十分な累積圧下率の付与、
圧延後の制御冷却の適用により、厚鋼板の大幅な特性向
上を図ることに成功した。
【0016】すなわち第1の発明は、同一圧延ライン上
に配置した2台の圧延機を用いて厚鋼板をタンデム圧延
するに際して、オーステナイト再結晶域において2台の
圧延機による圧延のパス間時間を5秒以下とし、ついで
オーステナイトの未再結晶温度以下Ar3変態点以上の
温度域において2台の圧延機で70%以上の累積圧下率
を加え、さらに圧延終了後、Ar3変態点以上の温度か
ら(Ar3変態点−100℃)以下350℃以上までの
温度域を、20℃/秒以上の冷却速度で制御冷却を行う
ことを特徴とする、高靭性を有する高強度厚鋼板の製造
方法である。
【0017】第2の発明は、同一圧延ライン上に配置し
た2台の圧延機を用いて厚鋼板をタンデム圧延するに際
して、オーステナイト再結晶域において2台の圧延機に
よる圧延のパス間時間を5秒以下とし、ついでオーステ
ナイトの未再結晶温度以下Ar3変態点以上の温度域に
おいて2台の圧延機で70%以上の累積圧下率を加え、
さらに圧延終了後、Ar3変態点以上の温度から350
℃以下までの温度域を、20℃/秒以上の冷却速度で制
御冷却を行い、その後Ac1変態点以下500℃以上の
温度域で焼戻すことを特徴とする、高靭性を有する高強
度厚鋼板の製造方法である。
【0018】
【発明の実施の形態】以下に本発明における各製造条件
の限定理由を説明する。まず、圧延ラインの構成は、同
一ライン上に2台の圧延機を配置する。2台の圧延機に
より2パスの圧延を連続して行うことにより、実質的に
1パス当たり大きな圧下率を鋼に付与することができる
ため、以下の2つの効果が得られるからである。すなわ
ち、第1はオーステナイトの再結晶を促進させる効果、
第2は未再結晶温度以下Ar3変態点以上の温度域にお
ける圧延能率を向上させ、この温度域で十分な累積圧下
率をとることができる効果である。また、同一ライン上
に3台以上の圧延機を配置しても、同様の効果が期待で
きる。
【0019】なお、同一圧延ライン上に複数の圧延機を
配置して鋼板を製造する方法として、ホットストリップ
ミルがよく知られている。しかし、ホットストリップミ
ルで多スタンドとしているのは、比較的薄物の鋼板の寸
法形状とその生産性を考慮しているからである。また、
圧延材の長さが極めて長いため、リバース圧延を行うこ
とは不可能であり、薄物の鋼板を圧延するために、粗圧
延以降素材の温度を低下させずに圧延することが必要で
あり、圧下率もスタンド(パス)当たり20〜50%と
厚板圧延では不可能な範囲を使用している。一方、材質
的には、構造材として用いられる場合であっても、製造
できる板厚の上限が限られ、また靭性が要求されること
は少ない。従って、本発明のように、圧下率を大きくと
れない厚板圧延にタンデムミルを導入するのとは、その
思想が根本的に異なる。
【0020】次に、オーステナイトの再結晶温度域にお
いて、2台の圧延機による圧延のパス間時間を5秒以下
とする。図2は、鋼Aを1100℃に加熱後、オーステ
ナイト再結晶温度域で2台の圧延機により圧延を行う過
程において、950℃にて圧下を加える際のパス間時間
を変化させた場合の加工後のオーステナイト粒径を示し
たものである。圧延パス間時間が5秒以下の場合には、
1台目の圧延機により付与された圧延歪みが十分に回復
しないうちに、2台目の圧延機により圧延歪みが与えら
れることにより圧延歪みが蓄積され、1パスで大きな圧
下率を付与されたのと同様の効果を得ることができる。
このため、その後速やかに再結晶が進行してオーステナ
イトの細粒化が起こる。しかし、圧延のパス間時間が5
秒を越える場合には、パス間で圧延歪みが回復するた
め、歪みの累積が十分ではなく、オーステナイトの再結
晶が十分に起こらない。また、温度、圧下率の条件によ
っては再結晶が部分的に起こるため、混粒となり、かえ
って靭性を劣化させることがある。
【0021】なお、2台の圧延機で圧下を受けた後、再
度タンデム圧延されるとき、すなわちリバース圧延され
るときは、パス間時間の制約はない。これは、リバース
圧延に入るまでのパス間時間が5秒以下の場合には、そ
の前に加えられたパスと同様に歪みが累積される効果が
得られ、いずれかの圧延パスにより再結晶を起こすから
である。また、圧延材料の長さが長くなり、パス間時間
が5秒以上かかる場合には、蓄えられた歪みにより、リ
バース圧延に入るまでの待機時間中に再結晶が起こり得
るからである。
【0022】オーステナイトの未再結晶温度以下Ar3
変態点以上の温度域において、2台の圧延機で70%以
上の累積圧下率を加える。この温度域では、圧下率の増
加に伴い、オーステナイト粒の伸展度および粒内の変形
帯の密度が上昇する。従って、γ/α変態時のフェライ
トの核生成サイトとなりうるオーステナイト粒界の面積
および単位体積当たりの変形帯の面積が増加して、変態
後の組織が微細化されるため、強度および靭性が向上す
る。このとき、累積圧下率が70%未満では、オーステ
ナイト粒の伸展度および粒内の変形帯の密度が十分に高
くないため、十分に細粒な変態後の組織が得られず、厚
鋼板に十分な靭性、例えばNiを含有する低温用鋼に匹
敵する靭性を得ることができない。よって、未再結晶温
度以下Ar3変態点以上の温度域における累積圧下率を
70%以上とする。
【0023】圧延終了後は、Ar3変態点以上の温度か
ら(Ar3変態点−100℃)以下350℃以上までの
温度域を、20℃/秒以上の冷却速度で制御冷却を行
う。冷却速度を20℃/秒以上とするのは、未再結晶温
度以下Ar3変態点以上の温度域での圧延により導入さ
れた核生成サイトから変態するフェライトの成長を抑制
し、空冷もしくは冷却速度20℃/秒未満の冷却により
得られた鋼板に比較して、強度のみならず靭性も大幅に
向上させることができるからである。
【0024】また、冷却開始温度がAr3変態点以下と
なると、組織はαとγの二相組織状態となり、γ中のC
濃度が高まり、これが高冷却速度により靭性には好まし
くないMA組織(マルテンサイトと残留オーステナイト
の混合組織)を多く含むベイナイトとなるため、冷却開
始温度はAr3変態点以上とする。
【0025】さらに、冷却停止温度は、比較的高温であ
るAr3変態点直下(変態点から100℃以内)の場合
は、制御冷却停止後に粒成長が起こり、結果として細粒
の組織が得られず、強度、靭性の向上が減少する。一
方、冷却停止温度が350℃以下の場合は、変態した後
の組織中のMA分率が増加し、靭性が悪化する。従っ
て、冷却停止温度を(Ar3変態点−100)℃以下3
50℃以上とすることにより、粒成長を抑制し、MAの
発生を抑えた高強度・高靭性の鋼板が得られるようにな
る。
【0026】なお、第2の発明では、圧延終了後、Ar
3変態点以上の温度から350℃以下までの温度域を、
20℃/秒以上の冷却速度で制御冷却を行い、その後A
c1変態点以下500℃以上の温度域で焼き戻しを行
う。これは、上述のように冷却停止温度が350℃以下
となると、変態後の組織はいわゆる焼きの入ったマルテ
ンサイトとベイナイトの混合組織が増加する。そのまま
では靭性に好ましくないこれらの組織を、その後焼戻し
を行うことで、靭性を回復しかつ高強度化を図ることが
できる。
【0027】なお、本発明においては、厚鋼板の化学成
分については特に限定されないが、重量%で、C:0.
02〜0.20%、Si:0.01〜1.0%、Mn:
0.5〜2.0%、Al:0.01〜0.08%を含有
し、さらに必要に応じて、Cu:0.05〜1.0%、
Ni:0.05〜1.0%、Cr:0.05〜1.0
%、Mo:0.05〜1.0%、Nb:0.005〜
0.10%、V:0.005〜0.10%、Ti:0.
005〜0.10%、の1種または2種以上を含有する
ことが望ましい。このような成分範囲の鋼が望ましいの
は以下の理由による。
【0028】C:0.02〜0.20% Cは鋼材の強度を確保するために必要な元素であるが、
0.02%未満では強度が不足し、0.20%を越えて
含有すると溶接性を損ねるので、その含有量は0.02
〜0.20%が好ましい。
【0029】Si:0.01〜1.0% Siは鋼材の強度を高めるとともに製鋼過程における脱
酸剤として必要であるが、0.01%未満ではその効果
が不十分であり、1.0%を越えて含有すると溶接部の
勒性を劣化させるので、その含有量は0.01〜1.0
%が好ましい。
【0030】Mn:0.5〜2.0% Mnは鋼材の強度を高めるために含有されるが、0.5
%未満では強度が不足し、2.0%を越えて含有すると
母材と溶接部の勒性の劣化および溶接製の劣化を招くの
で、その含有量は0.5〜2.0%が好ましい。
【0031】Al:0.01〜0.08 Alは主として脱酸剤として含有される。含有量が0.
01%未満ではその効果が安定せず、一方0.08%を
超えると鋼の清浄性を低下させるので、その含有量は
0.01〜0.08%が好ましい。
【0032】Cu:0.05〜1.0%、Ni:0.0
5〜1.0%、Cr:0.05〜1.0%、Mo:0.
05〜1.0% Cu、Ni、Cr、Moは強度の上昇に有効であるが、
それぞれ0.05%未満ではその効果が発揮されず、
1.0%を超えると溶接性の劣化を招くため、その含有
量は0.05〜1.0%が好ましい。
【0033】Nb:0.005〜0.10%、V :
0.005〜0.10%、Ti:0.005〜0.10
% Nb、Tiについては、上述したような未再結晶温度を
上昇させる効果があるが、その他にNb、V、Tiは炭
窒化物もしくは窒化物を形成することによるフェライト
粒の微細化および析出強化等により靭性及び強度の向上
に有効な元素である。その含有量が0.005%未満で
はその効果を有効に発揮することができず、0.1%を
超えると溶接部の勒性を劣化させるので、その含有量は
0.005〜0.10%が望ましい。
【0034】また、これらの元素の他に不純物元素とし
てP、S、O、Nが不可避的に鋼に含まれるが、これら
により本発明鋼の特性が損なわれるものではない。
【0035】
【実施例】以下に、本発明の実施例について説明する。
図3として示す表1に示した化学成分を有する鋼を11
00℃に加熱し、初期スラブ厚250mmから仕上板厚
20mmの鋼板に圧延した。ここで、鋼A、B、C、D
はNb、Tiを含有していないため、その未再結晶温度
は850℃である。また、鋼E、F、G、HはNb又は
Tiのいずれかを含有する鋼であり、その未再結晶温度
は900℃である。図4、図5として示す表2−1、2
−2に、各鋼板の製造条件および機械的性質を示す。
【0036】図1は、鋼Aを1100℃に加熱後、85
0℃以下(未再結晶温度)の温度域で圧下率を種々変化
させた鋼板(板番A−1〜A−5)の強度と靭性の変化
を示す。ここで、仕上温度:810〜800℃、仕上板
厚:20mm、制御冷却開始温度:805〜795℃、
冷却速度:25℃/sec、冷却停止温度:500℃の
一定の条件とした。既述したように、オーステナイトの
未再結晶域での累積圧下率の増加とともに、強度と靭性
はともに連続的に向上することが明らかである。
【0037】特に、タンデム圧延を用いて未再結晶温度
域での累積圧下率を70%以上確保した板番A−1、A
−2、A−3は、シャルピ衝撃試験における延性−脆性
破面遷移温度は−80℃以下となり、低温用鋼に匹敵す
る靭性を示す。一方、通常の1スタンドの圧延機で圧延
した板番A−4、A−5では、仕上温度をAr3変態点
以上としたため、未再結晶温度域での累積圧下率は60
%程度しか確保できない。このため、靭性は板番A−
1、A−2等に比して見劣りがする。
【0038】板番B−1、B−2、C−1、D−1、E
−1、E−2、E−5、F−1、H−1、H−3は、表
2−1に示すように、いずれも本発明の条件の範囲で製
造したものであり、一方、板番B−3、C−2、D−
2、E−3、E−4、G−1、H−2、H−4は比較鋼
である。ここで、板番H−4、B−3は、従来の1スタ
ンド圧延を用いたため、各々、未再結晶温度以下Ar3
変態点以上での累積圧下率を十分に確保できない例、未
再結晶温度以下での累積圧下率を確保したため仕上温度
がAr3変態点を下回った例である。
【0039】板番C−2は、タンデム圧延を行っている
がパス間時間が5秒を超えた例であり、板番D−2、E
−3、G−1又は板番E−4、H−2は、圧延条件は本
発明の範囲内であるが、冷却速度が20℃/sec未満
又は冷却停止温度が350℃を下回った例である。これ
らの比較鋼は、表2−2に示す鋼板の機械的性質から明
らかなように、本発明例に比較して、靭性又は強度が十
分とはいえない。なお、冷却停止温度が350℃を下回
った例である板番E−4、H−2を、冷却後に550℃
で焼戻しを行った板番E−5、H−3は、靭性が回復し
かつ良好な強度を得ることができる。
【0040】
【発明の効果】以上に示したように、厚鋼板の圧延ライ
ンにおいて、同一ライン上に配置した2台の圧延機を用
いてタンデム圧延を行うことにより、オーステナイトの
高温再結晶域では圧延のパス間時間を規制して、再結晶
を促進させ、オーステナイトの未再結晶域では十分に高
い累積圧下率を付与することができ、圧延後の制御冷却
の適用と相俟って、従来法に比較して非常に高い靭性を
有する高強度厚鋼板を効率よく製造することが可能であ
る。また、従来の方法では、圧延条件の不十分さを補う
意味で、靭性向上効果の大きいNiの含有を必要とする
場合があったが、本発明では、高価なNiの含有を必要
としないため、経済的な利点も大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼Aにおいて、850℃以下Ar3変態点以上
の温度域での累積圧下率が鋼板の強度および靭性に及ぼ
す影響を示す図である。
【図2】鋼Aにおいて、950℃にて圧下を加える際の
パス間時間を変化させた場合の加工後のオーステナイト
粒径を示した図である。
【図3】実施例に用いた供試鋼の化学成分を表1として
示す図である。
【図4】実施例に用いた圧延条件、冷却条件と鋼板の機
械的性質の関係を、表2−1として示す図である。
【図5】実施例に用いた圧延条件、冷却条件と鋼板の機
械的性質の関係を、表2−2として示す図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 同一圧延ライン上に配置した2台の圧延
    機を用いて厚鋼板をタンデム圧延するに際して、オース
    テナイト再結晶域において2台の圧延機による圧延のパ
    ス間時間を5秒以下とし、ついでオーステナイトの未再
    結晶温度以下Ar3変態点以上の温度域において2台の
    圧延機で70%以上の累積圧下率を加え、さらに圧延終
    了後、Ar3変態点以上の温度から(Ar3変態点−1
    00℃)以下350℃以上までの温度域を、20℃/秒
    以上の冷却速度で制御冷却を行うことを特徴とする、高
    靭性を有する高強度厚鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 同一圧延ライン上に配置した2台の圧延
    機を用いて厚鋼板をタンデム圧延するに際して、オース
    テナイト再結晶域において2台の圧延機による圧延のパ
    ス間時間を5秒以下とし、ついでオーステナイトの未再
    結晶温度以下Ar3変態点以上の温度域において2台の
    圧延機で70%以上の累積圧下率を加え、さらに圧延終
    了後、Ar3変態点以上の温度から350℃以下までの
    温度域を、20℃/秒以上の冷却速度で制御冷却を行
    い、その後Ac1変態点以下500℃以上の温度域で焼
    戻すことを特徴とする、高靭性を有する高強度厚鋼板の
    製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003293039A (ja) * 2002-04-01 2003-10-15 Nippon Steel Corp 粗大結晶粒の含有を抑制し、低温靱性に優れた高強度鋼板および鋼管の製造方法

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