JPH11139984A - 抗腫瘍剤、抗肥満剤、及び悪疫質の検出方法 - Google Patents

抗腫瘍剤、抗肥満剤、及び悪疫質の検出方法

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JPH11139984A
JPH11139984A JP9316129A JP31612997A JPH11139984A JP H11139984 A JPH11139984 A JP H11139984A JP 9316129 A JP9316129 A JP 9316129A JP 31612997 A JP31612997 A JP 31612997A JP H11139984 A JPH11139984 A JP H11139984A
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sdf
protein
fragment
stromal
derivative
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JP9316129A
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Kunitaka Hirose
国孝 広瀬
Mitsunori Hakozaki
充徳 箱崎
Keiko Ishioka
恵子 石岡
Yukako Ishida
裕香子 石田
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Kureha Corp
Original Assignee
Kureha Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 抗腫瘍剤、抗肥満剤、及び悪疫質の検出方法
を提供する。 【解決手段】 前記抗腫瘍作用増強剤又は抗肥満剤は、
有効成分として、ストローマ由来因子−1;前記ストロ
ーマ由来因子−1のアミノ酸配列において1若しくは数
個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ
酸配列を有し、かつ抗腫瘍活性を有するストローマ由来
因子−1誘導体;前記ストローマ由来因子−1の断片で
あって、かつ抗腫瘍活性を有する前記断片;又は前記ス
トローマ由来因子−1誘導体の断片であって、かつ抗腫
瘍活性を有する前記断片を有効成分として含有する。検
出方法は、前記ストローマ由来因子−1若しくはその誘
導体又はそれらの断片のタンパク質自体又はmRNAを
悪疫質マーカーとして利用する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗腫瘍剤、抗肥満
剤、及び悪疫質の検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ストローマ由来因子−1(Stroma
l Derived Factor−1;以下、SDF
−1と称する)は、ケモカインファミリーに属するタン
パク質である。ケモカインファミリーは約30のメンバ
ーからなり、炎症局所へ白血球を誘導する走化性因子と
考えられている。ケモカインは、構造的に4つのシステ
イン残基の位置が保存された分子量約10kdのサイト
カインファミリーに命名された名称であり、前記の4つ
のシステインの内、N末端側の2つのシステインの間に
アミノ酸が1つ入るCXCケモカインと、アミノ酸が入
らない(すなわち、システインが連続する)CCケモカ
インとの2つのサブファミリーからなる。SDF−1
は、CXCケモカインサブファミリーのメンバーであ
る。
【0003】マウスSDF−1遺伝子の塩基配列及び推
定されるアミノ酸配列がScience,261,60
0−603(1993)に開示されており、その後、こ
のタンパク質は、同様にマウスストローマ細胞から見出
されたプレB細胞増殖刺激因子(pre−B−cell
growth−stimulating facto
r;PBSF)[Proc Natl.Acad.Sc
i.USA,91,2305−2309(1994)]
と同一のタンパク質であることが明らかになった。マウ
スSDF−1は、ケモカインファミリーに属するタンパ
ク質の中で、炎症以外の生理機能(器官形成や造血)に
必須であることが最初に示されたタンパク質である[臨
床免疫,29,690−696(1997)]。
【0004】一方、ヒトSDF−1(α及びβの2種
類)遺伝子の塩基配列及び推定されるアミノ酸配列は、
特開平7−188294号公報に開示されている。この
特開平7−188294号公報の開示によれば、ヒトS
DF−1は、プロB細胞株が生産、分泌するものである
ので、造血幹細胞の生存、増殖、およびB細胞系やミエ
ロイド細胞系の増殖、分化に関連した生物活性を有して
いると予想され、従って、ヒトSDF−1は、造血系細
胞の発育不全、異常増殖、神経系機能の亢進や低下、免
疫機能の亢進や低下に関する疾患の予防または治療に用
いることができるとされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記公
報には、ヒトSDF−1α及びヒトSDF−1βを動物
細胞(COS細胞)で発現させ、その培養上清及び精製
品をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で解析した
ところ、その分子量に対応する生成物が検出されたとの
記載があるのみであり、ヒトSDF−1の活性について
は全く確認されておらず、従って、ヒトSDF−1が実
際に前記疾病の予防又は治療に有効であるか否かを判断
することのできるデータは一切記載されていない。そも
そも、マウスSDF−1においても、その活性は、前記
のとおり、炎症局所へ白血球を誘導する走化性促進作用
の他に、器官形成や造血などに必須のタンパク質である
ことが判明しているのみであり、ヒトSDF−1につい
ては、それらの活性でさえも全く検出されていない。
【0006】なお、前記公報の記載によれば、ヒトSD
F−1は、前記のとおり、造血幹細胞の生存、増殖、お
よびB細胞系やミエロイド細胞系の増殖、分化に関連し
た生物活性を有しているので、造血系細胞の発育不全、
異常増殖、神経系機能の亢進や低下、免疫機能の亢進や
低下に関する疾患に有効であるとされており、その疾患
の1つに癌が例示されている。しかしながら、前記生物
活性と抗癌活性とは無関係であり、ヒトSDF−1が、
仮に前記生物活性を有しているとしても、ヒトSDF−
1が抗癌剤として有効であるものと考える根拠は全くな
い。本発明者は、驚くべきことに、ザルコーマ細胞を移
植したマウスにおいて、ヒトSDF−1が抗腫瘍作用を
示すことを見出した。また、ザルコーマ細胞を移植し、
ヒトSDF−1を投与した前記マウスにおいて、血清中
のアルブミン量の低下を伴った悪疫質に由来すると思わ
れる著しい体重減少も観察された。本発明はこうした知
見に基づくものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、ストローマ由
来因子−1(SDF−1);前記ストローマ由来因子−
1のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が
欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、
かつ抗腫瘍活性を有するストローマ由来因子−1誘導体
(以下、SDF−1誘導体と称する);前記ストローマ
由来因子−1の断片であって、かつ抗腫瘍活性を有する
前記断片(以下、SDF−1断片と称する);又は前記
ストローマ由来因子−1誘導体の断片であって、かつ抗
腫瘍活性を有する前記断片(以下、SDF−1誘導体断
片と称する)を有効成分として含有することを特徴とす
る、抗腫瘍剤に関する。
【0008】また、本発明は、ストローマ由来因子−1
(SDF−1);前記ストローマ由来因子−1のアミノ
酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置
換、若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、かつ体重
減少活性を有するストローマ由来因子−1誘導体(SD
F−1誘導体);前記ストローマ由来因子−1の断片で
あって、かつ体重減少活性を有する前記断片(SDF−
1断片);又は前記ストローマ由来因子−1誘導体の断
片であって、かつ体重減少活性を有する前記断片(SD
F−1誘導体断片)を有効成分として含有することを特
徴とする、抗肥満剤に関する。
【0009】更に、本発明は、被検試料中の、ストロー
マ由来因子−1(SDF−1)若しくはそのmRNA;
前記ストローマ由来因子−1のアミノ酸配列において1
若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加さ
れたアミノ酸配列を有し、かつ抗腫瘍活性を有するスト
ローマ由来因子−1誘導体(SDF−1誘導体)若しく
はそのmRNA;前記ストローマ由来因子−1の断片で
あって、かつ抗腫瘍活性を有する前記断片(SDF−1
断片)若しくはそのmRNA;又は前記ストローマ由来
因子−1誘導体の断片であって、かつ抗腫瘍活性を有す
る前記断片(SDF−1誘導体断片)若しくはそのmR
NAを分析(例えば、検出又は測定)することを特徴と
する、悪疫質の検出方法にも関する。
【0010】本明細書において、「SDF−1」とは、
各種動物、特には哺乳動物(例えば、ヒト)のストロー
マ細胞から見出されたストローマ由来因子であって、同
様にストローマ細胞から見出されたプレB細胞増殖刺激
因子(PBSF)と同一のタンパク質を意味する。
【0011】本明細書において、「抗腫瘍活性」とは、
腫瘍細胞若しくは組織の発生、成熟、増殖、若しくは拡
散を予防若しくは抑制する作用、又は腫瘍細胞若しくは
組織を退縮化させる作用を意味し、前記腫瘍には、例え
ば、癌腫又は肉腫などが含まれる。或る化合物が前記抗
腫瘍活性を有するか否かは、例えば、以下に示す方法に
より決定することができる。固形癌を移植した実験動物
(例えば、マウス)を用いる場合には、前記担癌動物に
被検化合物を或る期間投与した後に、被検化合物投与群
と対照群(すなわち、被検化合物非投与群)とからそれ
ぞれ腫瘍を切除し、それらの腫瘍重量を計測して、投与
群から切除した腫瘍重量と対照群から切除した腫瘍重量
との間に有為な重量差が認められるか否かによって、抗
腫瘍活性を有するか否かを決定することができる。ま
た、前記の腫瘍重量の計測に代えて、あるいは、腫瘍重
量の計測と併せて、切除した腫瘍病巣の病理学的所見に
よってもたらされる癌細胞の質的変化を比較することに
より、及び/又は延命率を比較することによっても、抗
腫瘍活性を有するか否かを決定することができる。ある
いは、腹水癌を移植した実験動物を用いる場合には、前
記担癌動物に被検化合物を或る期間投与した後に、被検
化合物投与群と対照群(すなわち、被検化合物非投与
群)とからそれぞれ腹水を採取し、それらの腹水に含ま
れる癌細胞数を計測して、投与群の腹水中の癌細胞数と
対照群の腹水中の癌細胞数との間に有為な差が認められ
るか否かによって、抗腫瘍活性を有するか否かを決定す
ることができる。
【0012】本明細書において、「体重減少活性」と
は、タンパク質代謝及び/又は脂質代謝を亢進又は抑制
することによって、筋肉量及び/又は体脂肪量を減少さ
せる活性を意味する。前記体重減少活性の測定は、これ
に限定されるものではないが、例えば、体重計測又は剖
検などによって実施することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において有効成分として使用することのできる前
記SDF−1としては、各種動物、特には哺乳動物(例
えば、ヒト)のSDF−1、例えば、ヒトSDF−1α
(アミノ酸配列は特開平7−188294号公報に記
載)、ヒトSDF−1β(アミノ酸配列は特開平7−1
88294号公報に記載)、又はマウスSDF−1[ア
ミノ酸配列はScience,261,600−603
(1993)に記載]などを挙げることができる。
【0014】本発明において有効成分として使用するこ
とのできる「SDF−1誘導体」とは、前記SDF−1
のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠
失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、か
つ抗腫瘍活性又は体重減少活性の少なくともいずれか一
方の活性を有するタンパク質を意味する。従って、「S
DF−1誘導体」には、アレル変異体や人為的な改変体
が含まれる。
【0015】本発明において有効成分として使用するこ
とのできる「SDF−1断片」とは、前記SDF−1の
断片であって、かつ抗腫瘍活性又は体重減少活性の少な
くともいずれか一方の活性を有する前記断片を意味す
る。
【0016】本発明において有効成分として使用するこ
とのできる「SDF−1誘導体断片」とは、前記SDF
−1誘導体の断片であって、かつ抗腫瘍活性又は体重減
少活性の少なくともいずれか一方の活性を有する前記断
片を意味する。
【0017】本発明の有効成分として使用することので
きる前記タンパク質は、種々の公知の方法によって得る
ことができる。例えば、公知のSDF−1遺伝子を用い
て公知の遺伝子工学的手法により調製することもできる
し、あるいは、公知のタンパク質化学的手法により天然
由来の本発明のタンパク質を精製することもできる。
【0018】本発明者が見出したところによれば、前記
のSDF−1若しくはその誘導体(又はそれらの断片)
は、抗腫瘍活性を有するので、抗腫瘍剤の有効成分とし
てとして用いることができる。また、本発明者が見出し
たところによれば、前記のSDF−1若しくはその誘導
体(又はそれらの断片)は、悪疫質に由来すると思われ
る著しい体重減少作用を有するので、その適用量を適宜
調整することによって抗肥満剤の有効成分としてとして
用いることができる。
【0019】本発明の抗腫瘍剤又は抗肥満剤は、SDF
−1若しくはその誘導体、又はそれらの断片(すなわ
ち、SDF−1、SDF−1誘導体、SDF−1断片、
又はSDF−1誘導体断片)を有効成分として含有し、
所望により、製剤学的若しくは獣医学的に許容すること
のできる通常の担体を含有することができる。本発明の
抗腫瘍剤又は抗肥満剤の投与剤型としては、特に限定が
なく、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル
剤、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エキス剤、
若しくは丸剤等の経口剤、又は注射剤、外用液剤、軟膏
剤、坐剤、局所投与のクリーム、若しくは点眼薬などの
非経口剤を挙げることができる。
【0020】これらの経口剤は、例えば、ゼラチン、ア
ルギン酸ナトリウム、澱粉、コーンスターチ、白糖、乳
糖、ぶどう糖、マンニット、カルボキシメチルセルロー
ス、デキストリン、ポリビニルピロリドン、結晶セルロ
ース、大豆レシチン、ショ糖、脂肪酸エステル、タル
ク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコー
ル、ケイ酸マグネシウム、無水ケイ酸、又は合成ケイ酸
アルミニウムなどの賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性
剤、滑沢剤、流動性促進剤、希釈剤、保存剤、着色剤、
香料、矯味剤、安定化剤、保湿剤、防腐剤、又は酸化防
止剤等を用いて、常法に従って製造することができる。
【0021】非経口投与方法としては、注射(皮下、静
脈内等)、又は直腸投与等が例示される。これらのなか
で、注射剤が最も好適に用いられる。例えば、注射剤の
調製においては、有効成分としての、SDF−1若しく
はその誘導体、又はそれらの断片の他に、例えば、生理
食塩水若しくはリンゲル液等の水溶性溶剤、植物油若し
くは脂肪酸エステル等の非水溶性溶剤、ブドウ糖若しく
は塩化ナトリウム等の等張化剤、溶解補助剤、安定化
剤、防腐剤、懸濁化剤、又は乳化剤等を任意に用いるこ
とができる。
【0022】また、本発明の抗腫瘍剤又は抗肥満剤は、
徐放性ポリマーなどを用いた徐放性製剤の手法を用いて
投与してもよい。例えば、本発明の抗腫瘍剤又は抗肥満
剤をエチレンビニル酢酸ポリマーのペレットに取り込ま
せて、このペレットを治療すべき組織中に外科的に移植
することができる。
【0023】本発明の抗腫瘍剤は、任意の癌の治療又は
予防に有効であるが、特には固形癌、例えば、頭頚部
癌、皮膚癌、悪性黒色腫、又は脳腫瘍などに有効であ
る。
【0024】本発明の抗腫瘍剤は、有効成分としてのS
DF−1若しくはその誘導体、又はそれらの断片(好ま
しくはSDF−1)を、これに限定されるものではない
が、例えば、0.0001〜99重量%、好ましくは
0.01〜80重量%、より好ましくは0.01〜50
重量%の量で含有することができる。
【0025】本発明の抗肥満剤は、有効成分としてのS
DF−1若しくはその誘導体、又はそれらの断片(好ま
しくはSDF−1)を、これに限定されるものではない
が、例えば、0.0001〜99重量%、好ましくは
0.01〜80重量%、より好ましくは0.01〜50
重量%の量で含有することができる。
【0026】本発明の抗腫瘍剤又は抗肥満剤は、動物、
好ましくは哺乳動物(特にはヒト)に投与することがで
きる。本発明の抗腫瘍剤又は抗肥満剤を用いる場合の投
与量は、投与対象である動物の種類、年齢、性別、若し
くは体重、疾病の種類、又は投与方法などにより異な
り、特に制限はないが、SDF−1若しくはその誘導
体、又はそれらの断片(好ましくはSDF−1)量とし
て通常成人1人当り1μg/kg〜10000μg/k
g、好ましくは10μg/kg〜1000μg/kg、
より好ましくは100μg/kg〜1000μg/kg
程度を、1日1〜4回程度にわけて、経口的に又は非経
口的に投与する。更に、用途も医薬品に限定されるもの
ではなく、種々の用途、例えば、機能性食品や健康食品
として飲食物の形で与えることも可能である。
【0027】本発明者が見出したところによれば、前記
のSDF−1若しくはその誘導体(又はそれらの断片)
は、著しい体重減少作用を示し、その作用は悪疫質に由
来すると思われるので、前記のSDF−1若しくはその
誘導体(又はそれらの断片)を悪疫質の診断マーカーと
して利用することもできる。なお、悪疫質(cache
xia)とは、慢性疾患の経過中に見られる激しい痩せ
や貧血を伴う消耗した状態をいい、基礎にある疾患によ
って、ガン性悪液質、尿毒症性悪疫質又はマラリア性悪
疫質等がある。すなわち、本発明の体外検出方法を適用
することによって、被検対象者から採取した被検試料に
関して、その被検対象者が悪疫質(例えば、癌悪疫質若
しくは感染症性悪疫質など)の状態であるか否かを分析
することができる。
【0028】本発明方法において用いることのできる被
検試料としては、SDF−1タンパク質が含まれている
可能性があれば特に限定されるものではなく、生物学的
試料、例えば、動物、例えば哺乳類、特にヒト(特には
患者)から採取した細胞等の組織若しくはその抽出物、
又は血液(例えば、血清又は血漿)、尿、若しくは脳脊
髄液等の体液などを例示することができる。また、通常
の臨床検査等における被検試料であれば、特に限定され
ず、使用することが可能である。
【0029】被検試料中におけるSDF−1タンパク質
の分析工程では、まず最初に、前記の被検試料を、SD
F−1タンパク質と免疫学的に反応性のある免疫反応性
物質と接触させる。ヒトの被検試料を用いる場合には、
ヒトSDF−1タンパク質と免疫学的に反応性のある免
疫反応性物質と被検試料とを接触させるのが好ましい。
この際に、もし被検試料内にSDF−1タンパク質が存
在しなければ、前記免疫反応性物質との反応が生じない
が、もし被検試料内にSDF−1タンパク質が存在する
と、そのSDF−1タンパク質と前記の免疫反応性物質
とが結合して、SDF−1タンパク質と免疫反応性物質
との結合体が、SDF−1タンパク質の存在量に応じて
生成する。この結合体は、公知の方法によって簡単に検
出することができるので、結合体の存在や量から前記被
検試料中のSDF−1タンパク質の存在を検出したり、
その量を測定することができる。被検試料として組織切
片又は細胞を用い、蛍光抗体法又は酵素抗体法により、
組織又は細胞中のSDF−1タンパク質を測定すること
も可能である。
【0030】SDF−1タンパク質と免疫学的に反応す
ることのできる免疫反応性物質としては、例えば、抗S
DF−1タンパク質抗血清、抗SDF−1タンパク質ポ
リクローナル抗体、若しくは抗SDF−1タンパク質モ
ノクローナル抗体、又はこれらの抗体のフラグメント等
が挙げられる。これらは単独でも、また組み合わせて同
時に用いることもできる。前記抗体フラグメントには、
例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2 、又はFv
等が含まれる。
【0031】本発明のSDF−1タンパク質の免疫学的
分析方法では、被検試料と、SDF−1タンパク質と免
疫学的に反応することのできる免疫反応性物質とを接触
させ、SDF−1タンパク質−免疫反応性物質結合体を
生成させる。そして、免疫化学的測定法により、抗体に
結合したSDF−1タンパク質を検出し、その量を測定
することによって、被検試料中のSDF−1タンパク質
レベルを知ることができる。
【0032】免疫化学的測定法としては、原則的には、
すべての慣用のイムノアッセイ、例えば、EIA法、E
LISA法、又はRIA法等を用いることができる。こ
れらの免疫化学的測定法は、一般に次の方法に大別する
ことができる。 (1)競合法:未知量の抗原を含む被検試料と標識剤で
標識した抗原の一定量とを対応する抗体の一定量に対し
て競合反応させ、抗体と結合した標識抗原又は抗体と結
合しなかった標識抗原の活性を測定する。 (2)サンドイッチ法:未知量の抗原を含む被検試料
に、担体上に保持された過剰量の抗体を加えて反応させ
(第1反応)、次に標識剤で標識した過剰量の抗体の一
定量を加えて反応させる(第2反応)。担体上に保持さ
れた標識抗体又は担体上に保持されなかった標識抗体の
活性を測定する。第1反応及び第2反応は同時に行って
もよいし、時間をずらして行ってもよい。標識剤が放射
性同位元素である場合には、ウェルカウンター又は液体
シンチレーションカウンターで測定することができる。
標識剤が酵素である場合には、基質を加えて放置し、比
色法又は蛍光法で酵素活性を測定することができる。標
識剤が蛍光物質や発光物質であっても、それぞれ公知の
方法に従って測定することができる。
【0033】上記の方法以外に、最近では、電気泳動し
たタンパク質をニトロセルロース等のフィルターに移
し、抗体を用いて目的のタンパク質を検出する、ウェス
タンブロット法が行われるようになってきたが、本発明
におけるSDF−1タンパク質の検出にももちろん利用
することができる。これらの測定法において用いる抗体
は、公知の抗体標識法によって標識することができ、例
えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、又は発光性物
質等の適当なマーカーで標識しておくことができる。放
射性同位元素としては、例えば、 125I、 131I、
3H、14C、又は35Sなどを用いることができる。
【0034】酵素としては、安定で比活性の大きなもの
が好ましく、例えば、グリコシダーゼ(例えば、β−ガ
ラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、β−グルクロニ
ダーゼ、β−フルクトシダーゼ、α−ガラクトシダー
ゼ、α−グルコシダーゼ、若しくはα−マンノシダー
ゼ)、アミラーゼ(例えば、α−アミラーゼ、β−アミ
ラーゼ、イソアミラーゼ、グルコアミラーゼ、若しくは
タカアミラーゼ)、セルラーゼ、若しくはリゾチーム等
のカルボヒドラーゼ;ウレアーゼ、若しくはアスパラギ
ナーゼ等のアミダーゼ;コリンエステラーゼ(例、アセ
チルコリンエステラーゼ)、ホスファターゼ(例、アル
カリホスファターゼ)、スルファターゼ、若しくはリパ
ーゼ等のエステラーゼ;デオキシリボヌクレアーゼ、若
しくはリボヌクレアーゼ等のヌクレアーゼ;カタラー
ゼ、ペルオキシダーゼ、若しくはチトクロームオキシダ
ーゼ等の鉄・ポルフィリン酵素;チロシナーゼ、若しく
はアスコルビン酸オキシダーゼ等の銅酵素;又はアルコ
ール脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素、乳酸脱水素酵
素、若しくはイソクエン酸脱水素酵素等の脱水素酵素な
どを用いることができる。蛍光物質としてはフルオレス
カミン、又はフルオレッセンスイソチオシアネートなど
を、発光性物質としてはルミノール、ルミノール誘導
体、ルシフェリン、又はルシゲニンなどをそれぞれ挙げ
ることができる。
【0035】前記の各種標識からの信号の検出は、それ
自体公知の方法で実施することができる。また、抗体と
標識剤とを結合させる方法としては、任意の常法、例え
ば、クロラミンT法[Nature,194,495−
496,(1962)]、過ヨウ素酸法[Journa
l of Histochemistry and C
ytochemistry,22,1084−109
1,(1974)]、又はマレイミド法[Journa
l of Biochemistry,79,233−
236,(1976)]などを用いることができる。
【0036】上記測定方法のうち、例えば、EIA法は
次のように行うことができる。まず、担体(例えば、ア
セイプレート)上に固定された第1抗SDF−1タンパ
ク質抗体に被検試料を加え、SDF−1タンパク質と抗
SDF−1タンパク質抗体とを結合させて結合体を生成
させ、この結合体に酵素標識剤(例えば、ペルオキシダ
ーゼ)を結合させた第2抗SDF−1タンパク質抗体を
加え、前記結合体に第2抗体を更に結合させ、「第1抗
体−SDF−1タンパク質−第2抗体」結合体を生成さ
せる。得られた「第1抗体−SDF−1タンパク質−第
2抗体」結合体に、前記標識酵素(ペルオキシダーゼ)
の基質を加え、酵素反応による生成物の吸光度又は蛍光
強度を測定することにより前記の「第1抗体−SDF−
1タンパク質−第2抗体」結合体に付着する標識酵素の
酵素活性を測定する。上記の一連の操作を既知量のSD
F−1タンパク質を含む標準溶液に関して予め実施して
おき、SDF−1タンパク質と吸光度又は蛍光強度との
関係を標準曲線として作成しておく。そして、未知量の
SDF−1タンパク質を含む被検試料について得られた
吸光度又は蛍光強度を標準曲線にあてはめ、被検試料中
のSDF−1タンパク質の量を測定することができる。
【0037】また、以下に示す方法によってEIA法を
行うこともできる。すなわち、まず、担体(例えば、ア
セイプレート)と被検試料とを接触することにより、被
検試料内のSDF−1タンパク質を担体上に固定させ、
続いて抗SDF−1タンパク質抗体(1次抗体)を加
え、SDF−1タンパク質と1次抗体とを結合させて結
合体を生成させ、この結合体に酵素標識剤(例えばペル
オキシダーゼ)を結合させた抗1次抗体抗体(2次抗
体)を加え前記結合体に2次抗体を結合させ、「SDF
−1タンパク質−1次抗体−2次抗体」結合体を生成さ
せる。得られた「SDF−1タンパク質−1次抗体−2
次抗体」結合体に、前記標識酵素(ペルオキシダーゼ)
の基質を加え、酵素反応による生成物の吸光度、又は蛍
光強度を測定することにより、前記の「SDF−1タン
パク質−1次抗体−2次抗体」結合体に付着する標識酵
素の酵素活性を測定する。上記の一連の操作を既知量の
SDF−1タンパク質を含む標準溶液に関して予め実施
しておき、SDF−1タンパク質と吸光度又は蛍光強度
との関係を標準曲線として作成しておく。そして、未知
量のSDF−1タンパク質を含む被検試料について得ら
れた吸光度又は蛍光強度を標準曲線にあてはめ、被検試
料中のSDF−1タンパク質の量を測定することができ
る。
【0038】また、RIA法は、例えば、次のようにし
て行うことができる。まず、担体(例えば、試験管)に
固定された第1抗SDF−1タンパク質抗体に被検試料
を加え、SDF−1タンパク質と抗SDF−1タンパク
質抗体とを結合させて結合体を生成させ、この結合体に
放射性同位元素標識剤(例えば、 125I)で標識された
第2抗SDF−1タンパク質抗体を加え、前記結合体に
第2抗体を更に結合させ、「第1抗体−SDF−1タン
パク質−第2抗体」結合体を生成させる。得られた「第
1抗体−SDF−1タンパク質−第2抗体」結合体の放
射能活性(例えば、γ−放射能活性)を測定する。上記
の一連の操作を既知量のSDF−1タンパク質を含有す
る標準溶液に関して予め実施しておき、SDF−1タン
パク質と放射能活性との関係を標準曲線として作成して
おく。そして、未知量のSDF−1タンパク質を含む被
検試料について得られた放射能活性を標準曲線にあては
め、被検試料中のSDF−1タンパク質の量を測定する
ことができる。
【0039】また、以下に示す方法によってRIA法を
行うこともできる。すなわち、まず、担体(例えば、試
験管)と被検試料とを接触させて被検試料内のSDF−
1タンパク質を前記担体上に固定させ、続いて抗SDF
−1タンパク質抗体(1次抗体)を加えてSDF−1タ
ンパク質と1次抗体とを結合させて結合体を生成させ、
この結合体に放射性同位元素標識剤(例えば、 125I)
を結合させた抗1次抗体抗体(2次抗体)を加えて前記
結合体に2次抗体を結合させ、「SDF−1タンパク質
−1次抗体−2次抗体」結合体を生成させる。そして、
得られた「SDF−1タンパク質−1次抗体−2次抗
体」の放射能活性(例えば、γ−放射能活性)を測定す
る。上記の一連の操作を既知量のSDF−1タンパク質
を含む標準溶液に関して予め実施しておき、SDF−1
タンパク質と放射能活性との関係を標準曲線として作成
しておく。そして、未知量のSDF−1タンパク質を含
む被検試料について得られた放射能活性を標準曲線にあ
てはめ、被検試料中のSDF−1タンパク質の量を測定
することができる。
【0040】被検試料中におけるSDF−1タンパク質
のmRNAの分析では、被検試料と、SDF−1タンパ
ク質mRNAの塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリ
ヌクレオチドとを反応させ、生成するSDF−1タンパ
ク質mRNA−ポリヌクレオチド結合体の存在を検出、
又はその量を測定することにより、SDF−1タンパク
質のmRNAを分析することができる。上記ポリヌクレ
オチドは、選択された遺伝子(DNA)から転写された
mRNAの一部と相補的な又は実質的に相補的な配列を
含み、標的遺伝子から転写されたmRNAとの間で二重
鎖を形成する。その標的mRNAと安定な複合体を形成
するために十分な相補性を有するいずれのポリヌクレオ
チドも適当であると考えられる。本発明に用いることの
できるポリヌクレオチドは、実質的に標的mRNA内の
どの領域の範囲で相補的であってもよい。ポリヌクレオ
チド分子は、SDF−1タンパク質遺伝子に特異的なm
RNA発現の増減を検出するDNAプローブとして用い
ることができる。すなわち、標的であるSDF−1タン
パク質のmRNAに特異的に付着し、分子ハイブリッド
を形成することにより、細胞内のSDF−1タンパク質
の発現の程度を検出することができる。
【0041】本発明で用いることのできるポリヌクレオ
チドは、標的SDF−1タンパク質のmRNAの特異的
塩基配列と相補的な塩基配列を適宜選択し、例えば、公
知のDNA合成装置、PCR装置、又は遺伝子クローニ
ング等を用いて調製することができる。種々の長さのポ
リヌクレオチドを使用することができるが、好ましくは
10塩基以上、より好ましくは17塩基以上を有するも
のが好適である。
【0042】前記のポリヌクレオチドは、修飾されてい
ないポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド類似体であ
ることができる。適当な類似体として、例えば、エチル
−又はメチルホスホネート類似体、ホスホロチオエート
修飾されたポリデオキシヌクレオチド[Nucleic
Acids Res.,14,9081−9093,
(1986);J.Am.Chem.Soc.,10
6,6077−6079,(1984)]等が挙げられ
る。更に、近年のポリヌクレオチド類似体の製造におけ
る進歩により、例えば、2’−O−メチルリボヌクレオ
チド[Nucleic Acids Res.,15,
6131−6148,(1987)]又は複合RNA−
DNA類似体であるキメラポリヌクレオチド[FEBS
Lett.,215,327−330,(198
7)]等も使用することができる。
【0043】選択されたポリヌクレオチドは、電荷をも
つもの、又は電荷をもたないものを含め、いかなる種類
のものでもよい。in vitro又はin vivo
でこのような実験を行うために、ポリヌクレオチドを公
知の標識剤、例えば、放射性同位元素又は蛍光物質等で
常法によって標識することができる。放射性同位元素と
しては、例えば、 125I、 131I、 3H、14C、32P、
又は35S等がある。なかでも、放射性同位元素としてラ
ンダムプライマー法[Anal.Biochem.,1
32,6−13,(1983)]を用いて32Pで標識す
るのが好適である。また、より容易で危険性の少ない取
扱が可能なものとして誘導体形成した蛍光色素が挙げら
れる。蛍光色素としては、ポリヌクレオチドと結合する
すべての色素を用いることができるが、例えば、フルオ
レセイン、ローダミン、テキサスレッド、4−フルオロ
−7−ニトロベンゾフラザン(NBD)、クマリン、フ
ルオレサミン、スクシニルフルオレセイン、又はダンシ
ル等が好適に用いられる。
【0044】例えば、SDF−1タンパク質のcDNA
を用いたノーザンブロット解析によるSDF−1タンパ
ク質mRNA量の測定は、以下のように行うことができ
る。すなわち、任意の体細胞又は組織からmRNAを抽
出、単離し、単離したmRNAをアガロースゲルで電気
泳動し、ニトロセルロース又はナイロンメンブランに転
写した後、標識SDF−1タンパク質cDNAプローブ
と反応させることにより、SDF−1タンパク質mRN
A量を測定する。使用するSDF−1タンパク質cDN
Aプローブは、SDF−1タンパク質mRNAに相補的
なDNAであり、17塩基以上の長さをもつことが望ま
しい。
【0045】本発明は悪疫質分析試薬にも関し、その分
析試薬は、主要成分として、SDF−1タンパク質と免
疫学的に反応することのできる免疫反応性物質を含む。
SDF−1タンパク質と免疫学的に反応することのでき
る免疫反応性物質としては、例えば、抗SDF−1タン
パク質抗血清、抗SDF−1タンパク質ポリクローナル
抗体、若しくは抗SDF−1タンパク質モノクローナル
抗体、又はこれらの抗体のフラグメント等が挙げられ
る。また、本発明の悪疫質分析試薬は、主要成分とし
て、前記免疫反応性物質の代わりに、SDF−1タンパ
ク質mRNAの塩基配列に相補的な塩基配列を含むポリ
ヌクレオチドを含む構成とすることもできる。
【0046】本発明の悪疫質分析試薬を用いることによ
り、これまで述べてきた方法に従って、被検試料中にお
けるSDF−1タンパク質それ自体、又はSDF−1タ
ンパク質のmRNAを分析し、その結果から、被検対象
の悪疫質を判定することができる。
【0047】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明
するが、これらは本発明の範囲を限定するものではな
い。
【実施例1】本実施例では、以下に示す手順で、ヒトS
DF−1βcDNAを単離し、そのcDNAを用いてグ
ルタチオン−S−トランスフェラーゼ(以下、GSTと
称することがある)/SDF−1β融合タンパク質を調
製した。
【0048】(1)ヒトSDF−1βcDNAの単離 PCR法に用いる2種類のプライマーとして、ヒトSD
F−1βcDNA[Entrez,NCBI,登録番号
(accession No.)U16752]の第1
35番目〜第155番目の塩基配列を含み、しかも、
5’末端側に制限酵素BamHI認識部位を導入するよ
うにデザインしたフォワードプライマー: 5’−CACGGATCCT TAGCGACGGG
AAGCCCGTCAGC−3’ と、前記ヒトSDF−1βcDNAの第368番目〜第
390番目の塩基配列に相補的な配列を含み、しかも、
3’末端側に制限酵素SalI認識部位を導入するよう
にデザインしたバックプライマー: 5’−GTGGTCGACG TAAGGGTTCC
TCAGGCGTCTGA−3’ とを化学合成した。
【0049】10μMフォワードプライマー10μl、
10μMバックプライマー10μl、dNTP混合物
(各ヌクレオチドの濃度=2.5mM)8μl、0.5
ユニット/μlTaqポリメラーゼ(Ex Taqポリ
メラーゼ;宝酒造,京都,日本)1μl、Taqスター
ト抗体(Clontech Lab.Inc.,パロア
ルト,カリフォルニア州,米国)1μl、10×PCR
緩衝液[Ex Taqバッファー;宝酒造,京都,日
本;(組成)10mMトリス−HCl(pH8.3),
50mM−KCl]10μl、及び蒸留水59μlと、
鋳型DNAとしてヒト脾臓cDNAライブラリー(Cl
ontech Lab.Inc.,パロアルト,カリフ
ォルニア州,米国)1μlとを混合し、以下の条件でP
CR法を実施した。すなわち、変性工程を94℃で1分
間行ない、アニーリング工程を55℃で45秒間行な
い、DNA合成工程を72℃で2分間行なうことからな
るサイクルを、40サイクル実施した。
【0050】得られた反応液から10μlを取り出し、
アガロースゲル(1%)電気泳動を行なったところ、
0.25kbの単一のDNAバンドを認めた。残りの反
応液を低融点アガロースゲルで再泳動し、0.25kb
のDNAバンドを低融点アガロースゲルから回収し、得
られたDNA断片を常法によりpCRTM2.1ベクター
(Invitrogen Corp.,サンディエゴ,
米国)にクローニングした。クローニングした前記DN
A断片の全塩基配列を決定し、前記DNA断片がヒトS
DF−1βcDNAであることを確認した。
【0051】ヒトSDF−1βcDNAを含む前記プラ
スミドから、制限酵素BamHI及びSalIを用いて
ヒトSDF−1βcDNA断片を切り出し、このDNA
断片を大腸菌発現ベクターpGEX−5X−1[Inf
ect Immun.,58,3909−3913(1
990)](Pharmacia Biotech,ウ
プサラ,スウェーデン)のBamHI−SalIサイト
にクローニングした。得られたプラスミドをpG/SD
F−1βと命名した。前記の大腸菌発現ベクターpGE
X−5X−1は、tacプロモーターの制御下にあるグ
ルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST;分子量
=約29kd)遺伝子を含み、更に、前記GST遺伝子
の下流側にマルチクローニングサイト(BamHIサイ
ト及びSalIサイトを含む)を有する。従って、プラ
スミドpG/SDF−1βで形質転換した大腸菌では、
ヒトSDF−1β(分子量=約8kd)がGST/SD
F−1β融合タンパク質(分子量=約37kd)として
発現される。
【0052】(2)GST/SDF−1β融合タンパク
質の調製 以下に示す手順に従って、GST/SDF−1β融合タ
ンパク質を調製した。すなわち、前記(1)で得られた
プラスミドpG/SDF−1β(1μg)を常法により
大腸菌JM109株コンピテント細胞(宝酒造,京都,
日本)に導入した。
【0053】SDF−1β産生大腸菌を確認するため
に、100μg/mlアンピシリン含有2×YT培地
(トリプトン16g,酵母抽出物10g,及び塩化ナト
リウム5gを蒸留水1リットルに溶解して調製;pH
7.2)1mlに大腸菌を殖菌し、37℃で一晩培養し
た。この培養液100μlをアンピシリン含有2×YT
培地1mlに加え、37℃で振盪培養した。波長600
nmにおける光学密度(OD600 )が0.5を越えたと
ころで、イソプロピル−β−D−チオ−ガラクトピラノ
シド(IPTG)を最終濃度が1mMになるように加
え、更に、37℃で2時間振盪した。培養液を1000
0×gで遠心して大腸菌を回収し、常法に従ってSDS
ポリアクリルアミドゲル電気泳動(以下、SDS−PA
GEと称する)にかけ、GST/SDF−1β融合タン
パク質の発現を確認した。
【0054】GST/SDF−1β融合タンパク質が発
現していた大腸菌を大量培養するために、前記大腸菌を
アンピシリン含有2×YT培地1mlに殖菌し、37℃
で一晩振盪培養した後に、この培養液100mlをアン
ピシリン含有2×YT培地1リットルに加え、37℃で
振盪培養した。OD600 が0.5を越えたところで、I
PTGを最終濃度が1mMになるように加え、更に、3
7℃で2時間振盪した。培養液を3000×gで遠心
(4℃)して大腸菌を集菌した後に、リン酸緩衝溶液
[組成:140mM−NaCl,2.7mM−KCl,
10mM−Na2 HPO4 ,1.8mM−KH2
4 ,pH7.2;以下、PBS(phosphate
−bufferred saline)と称する]30
ml、25mg/mlリゾチーム1ml、1Mフェニル
メタンスルホニルフルオライド(PMSF)60μl、
及び10%トライトンX(3ml)を加え、超音波によ
り氷上で菌体を破砕した。
【0055】破砕液を遠心(14000×g,4℃,1
0分間)し、得られた上清をフィルター(ポアサイズ=
0.2μm)で濾過した。得られた濾液にグルタチオン
セファロース4B(Pharmacia Biotec
h,ウプサラ,スウェーデン)1mlを加え、1時間攪
拌することにより吸着させた。懸濁液を遠心(1000
×g,4℃,5分間)してグルタチオンセファロース4
Bを回収した後に、回収したグルタチオンセファロース
4BをPBS10mlで洗浄し、カラムに充填した。P
BS50mlで洗浄した後に、10mMグルタチオン溶
液10mlで溶出させた。溶出された各画分のGST活
性を、GST検出キット(Pharmacia Bio
tech,ウプサラ,スウェーデン)を用いて測定し、
GST活性の高い画分をプールした。この画分をSDS
−PAGEにかけたところ、分子量約37kdの単一バ
ンドが検出され、GST/SDF−1β融合タンパク質
がこの画分に含まれていることを確認した。この画分を
50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で透析し、GST
/SDF−1β融合タンパク質約700μg(最終濃度
=50μg/ml)を得た。
【0056】
【実施例2】本実施例では、前記実施例1で調製したG
ST/SDF−1β融合タンパク質の抗腫瘍効果及び体
重減少効果を、ザルコーマ細胞を移植したマウスを用い
て確認した。ICRマウス20匹の腹腔内にザルコーマ
180細胞1×106 個(1個体当たり)を移植し、各
群10匹ずつからなる2群に分けた。一方の群(GST
/SDF−1β融合タンパク質投与群)においては、前
記実施例1で調製したGST/SDF−1β融合タンパ
ク質7μg(1.9nmol)をマウス腹腔内に8回隔
日投与した。もう一方の群(コントロール群)において
は、GST5.5μg(1.9nmol)をマウス腹腔
内に8回隔日投与した。
【0057】8回の投与が終了したところで、GST/
SDF−1β融合タンパク質投与群では6匹が生存し、
コントロール群では4匹が生存していた。GST/SD
F−1β融合タンパク質投与群では、コントロール群に
比較して、肉眼的に腫瘍(腹囲)の縮小が認められた。
また、GST/SDF−1β融合タンパク質投与群で
は、剖検の結果、顕著な体脂肪量の減少と筋肉量の減少
とが見られた。腹水量については、GST/SDF−1
β融合タンパク質投与群で4.92±2.25mlであ
り、コントロール群で18.13±1.32mlであ
り、GST/SDF−1β融合タンパク質投与群では明
らかな腹水産生量の減少が認められた(p<0.00
5)。GST/SDF−1β融合タンパク質投与群及び
コントロール群から、前記の剖検時に採取した各血液試
料について、血清アルブミン分画比(%)を測定したと
ころ、GST/SDF−1β融合タンパク質投与群では
46〜56であったのに対し、コントロール群では60
〜63であった。すなわち、GST/SDF−1β融合
タンパク質投与群においては、コントロール群と比べ
て、血清中のアルブミンが低値を示し、悪疫質の発現が
確認された。
【0058】
【発明の効果】本発明の抗腫瘍剤によれば、SDF−1
若しくはその誘導体、又はそれらの断片を有効成分とし
て含有するので、癌患者に対して有効な予防又は治療を
行なうことができる。また、本発明の抗肥満剤は、体重
を減少させるのに有効である。更に、本発明の検出方法
においては、SDF−1若しくはその誘導体、又はそれ
らの断片を診断マーカーとして、悪疫質を分析すること
ができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石田 裕香子 東京都狛江市西野川4丁目6番1号 京王 柴崎コーポラス508号

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ストローマ由来因子−1;前記ストロー
    マ由来因子−1のアミノ酸配列において1若しくは数個
    のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸
    配列を有し、かつ抗腫瘍活性を有するストローマ由来因
    子−1誘導体;前記ストローマ由来因子−1の断片であ
    って、かつ抗腫瘍活性を有する前記断片;又は前記スト
    ローマ由来因子−1誘導体の断片であって、かつ抗腫瘍
    活性を有する前記断片を有効成分として含有することを
    特徴とする、抗腫瘍剤。
  2. 【請求項2】 ストローマ由来因子−1;前記ストロー
    マ由来因子−1のアミノ酸配列において1若しくは数個
    のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加されたアミノ酸
    配列を有し、かつ体重減少活性を有するストローマ由来
    因子−1誘導体;前記ストローマ由来因子−1の断片で
    あって、かつ体重減少活性を有する前記断片;又は前記
    ストローマ由来因子−1誘導体の断片であって、かつ体
    重減少活性を有する前記断片を有効成分として含有する
    ことを特徴とする、抗肥満剤。
  3. 【請求項3】 被検試料中の、ストローマ由来因子−1
    若しくはそのmRNA;前記ストローマ由来因子−1の
    アミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠
    失、置換、若しくは付加されたアミノ酸配列を有し、か
    つ抗腫瘍活性を有するストローマ由来因子−1誘導体若
    しくはそのmRNA;前記ストローマ由来因子−1の断
    片であって、かつ抗腫瘍活性を有する前記断片若しくは
    そのmRNA;又は前記ストローマ由来因子−1誘導体
    の断片であって、かつ抗腫瘍活性を有する前記断片若し
    くはそのmRNAを分析することを特徴とする、悪疫質
    の検出方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2010115825A3 (en) * 2009-03-31 2010-12-02 Robert Zimmermann Modulation of adipose triglyceride lipase for prevention and treatment of cachexia, loss of weight and muscle atrophy and methods of screening therefor
JP2015229654A (ja) * 2014-06-05 2015-12-21 雪印メグミルク株式会社 ヒアルロン酸産生促進剤

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