JPH11130682A - 血液凝固第xiii因子の熱安定化法 - Google Patents

血液凝固第xiii因子の熱安定化法

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JPH11130682A
JPH11130682A JP9312814A JP31281497A JPH11130682A JP H11130682 A JPH11130682 A JP H11130682A JP 9312814 A JP9312814 A JP 9312814A JP 31281497 A JP31281497 A JP 31281497A JP H11130682 A JPH11130682 A JP H11130682A
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JP
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factor xiii
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serine
mol
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JP9312814A
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Hiroshi Kaneko
博 金子
Hitoshi Tanaka
仁 田中
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Nihon Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Nihon Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】血液凝固第XIII因子(以下、XIII因子とい
う。)含有溶液の加熱によるウイルス不活化処理でグリ
シンと蔗糖を用いる従来法においては得られた溶液に濁
りが生ずる。 【解決手段】本発明においては、XIII因子含有溶液にセ
リンと糖類、特に蔗糖を一定濃度で存在させることによ
り、XIII因子の活性残存率を従来法より低下させること
なく、濁りの発生を減少させることに成功した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、血液凝固第XIII
因子含有溶液の加熱によるウイルス不活化処理における
第XIII因子の熱安定化法に関する。
【0002】
【従来の技術】血液凝固第XIII因子(以下、単にXIII
因子という。)は、活性化されるとトランスグルタミナ
ーゼに転換され、基質蛋白質間にイソペプチド結合を作
ることにより基質を物理的、化学的に強固な形に変える
酵素前駆物質である。XIII因子は血中のみならず、種
々の組織や体液中に広く分布しており、単にフィブリン
だけでなく、組織蛋白質であるコラーゲン、細胞性フィ
ブロネクチン、血漿フィブロネクチン、α2−プラスミ
ン・インヒビターなどを基質として、これらの分子間に
堅固なイソペプチド結合を作ることが知られている。こ
のXIII因子は、血漿中では活性基をもつa鎖と担体蛋
白としてのb鎖の2種類の蛋白質がそれぞれ2本ずつ結
合したa22の形で存在するが、組織ではa鎖のみが2
本結びついたa2の形で分布している。1960年、Duc
kert らは出血に加えて創傷治癒遅延を示す男児の血液
を分析したところ、XIII因子が欠損していることをつ
きとめた。そしてそのXIII因子の欠損によりフィブリ
ンの安定化が障害されて出血と創傷治癒不全につながる
ものと考え、第XIII因子欠損症の存在を指摘した。
【0003】この第XIII因子欠損症の患者は常染色体
性遺伝形式をとり、男女両性に出現するが、臨床症状の
重篤度はさまざまである。ホモ接合体では生後数日以内
に臍帯出血として現れることが多い。また、成長するに
伴い打撲、切創などの外傷により容易に皮下出血が出現
し、血腫の形成や出血障害も観察される。このような出
血症状が外傷後しばらくして出現することも本症に特徴
的とされ、したがって傷の治りも遅延することが多い。
また外傷に伴う頭蓋内出血をみる頻度は比較的高く、し
ばしばこれが死因となる。XIII因子は血漿中に約1m
g/dlの濃度で存在する。先天性第XIII因子欠損症
の出血に対しては0.5〜2%のレベルで十分奏功する
ので従来から血漿輸注が試みられてきているが、創傷治
癒不全に対してはさらに高い値が必要とされる場合があ
る。そして、HBウイルス、HIVウイルスなどのウイ
ルス感染を予防するため60℃、10時間の液状加熱処
理をしたXIII因子濃縮製剤が既に市販されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしこの液状加熱処
理は、XIII因子の大幅な収率低下を伴う。そこでこれ
までこの加熱処理によるXIII因子の収率低下を防ぐた
め種々の提案がなされてきた。それらの方法の中には、
たとえばXIII因子含有溶液にグリシン、アラニン等の
アミノ酸、グルコース、マンニトールなどの糖類を10
〜20重量%添加する方法(特開昭53−59018
号)、グリシンと蔗糖を併用する方法(特開昭55−1
45615号)などが知られている。しかしグリシンと
蔗糖の存在下で加熱処理を行った場合、XIII因子の熱
分解はかなり防止しうるが、得られたXIII因子含有液
が濁るという現象が見られる。この濁りの本体が何であ
るかについてはまだ充分には解明されていないが、濁り
が生ずるということは、少なくともその中の何かの物質
が凝集していることを示すものであり、この濁りを除去
するための濾過、精製処理工程においてXIII因子の収
率の低下は免れない。
【0005】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者は、XII
I因子含有溶液の加熱処理工程に数多くの化合物の単独
および混合物を安定化剤として用いた実験を繰り返し、
そのウイルス不活化度、XIII因子の熱安定化度ならび
に得られた溶液の性状等について種々検討を重ねた結
果、従来安定化剤として用いられることのなかったセリ
ンを糖類等と共に溶液中に存在させると、ウイルスの不
活化度は勿論のこと、XIII因子の熱安定化度は従来法
に比して全く遜色なく、しかも得られたXIII因子含有
液の濁りが減少することを知見した。そしてこの新知見
に基づいて更に研究を重ねて本発明を完成した。すなわ
ち、本発明は、(1)血液凝固第XIII因子含有溶液の
加熱によるウイルス不活化処理に際し、溶液中にセリ
ン、ならびに単糖類、寡糖類および糖アルコールからな
る糖類の少なくとも1種を存在させることを特徴とする
第XIII因子の熱安定化法、(2)セリンを0.5〜3.
5モル/リットル、ならびに糖類の少なくとも1種を2
0〜60w/w%存在させる前記(1)記載の方法、
(3)さらにグリシンを0.3モル/リットル以上で且
つセリンとの合計が3.5モル/リットル以下となる範
囲で存在させる前記(2)記載の方法、(4)糖類が蔗
糖である前記(1)、(2)または(3)記載の方法、
および(5)セリンを0.7〜2.5モル/リットル、グ
リシンを0.3〜1.0モル/リットルおよび蔗糖を20
〜50w/w%存在させる前記(3)記載の方法、であ
る。
【0006】
【発明の実施の形態】ウイルス不活化のための加熱処理
の対象となるXIII因子含有溶液は、通常ヒトの血漿又
は胎盤由来のXIII因子含有液である。血漿由来の加熱
処理用溶液を調製するには、たとえば次の方法がある。
コーン低温エタノール分画の画分を採取し、0.02M
クエン酸緩衝液(pH7.5)を加え、ミキサーで画分
を十分に撹拌して溶解させる。この溶液を遠心分離器に
より20℃で15分間遠心分離し上清を得る。この上清
に、1Mクエン酸緩衝液(pH7.5)をゆっくりと加
え、撹拌後20℃で1時間放置する。この溶液を再び遠
心分離器にて10℃で15分間遠心分離して沈澱物を採
取する。この沈澱物を0.02Mクエン酸緩衝液(pH
7.5)に溶解し、さらに56℃、3分間加熱処理して
熱変性物を分離し上清を得る。このようにして得られた
溶液は本発明の処理対象のXIII因子含有溶液の1つで
ある。胎盤由来のXIII因子含有溶液はたとえば次の方
法により得ることができる。まず凍結したヒトの胎盤を
0.5%食塩溶液を用いて抽出し、組織を含まない上澄
みからアクリジン塩基を用いてXIII因子を析出させ
る。2.5%食塩水を用いてアクリジン付加物を溶解さ
せ、セチルピリジニウムクロリドによりXIII因子含有
溶液から酸性の付随蛋白と脂質を除く。再度アクリジン
塩基を用いてXIII因子を析出させ、2.5%食塩水で抽
出し、抽出液を硫安を用いる沈殿およびゲル濾過により
精製する。XIII因子活性フラクションを合し、濾過ま
たは中性塩沈澱法によりさらに濃縮してXIII因子濃縮
物とする。
【0007】XIII因子含有溶液の活性は、たとえば、
ダンシルカダベリン法(Tromb. Res., 36巻,123-131頁
(1984))、クロット溶解法(J. Biol.Chem.,236巻,26
25-2633(1961))などの方法により測定することができ
る。本発明においては、これらXIII因子含有溶液の加
熱によるウイルス不活化に際して、セリンおよび糖類を
存在させることによりXIII因子を加熱に対し安定化さ
せる。XIII因子含有溶液のセリンの濃度は好ましくは
0.5〜3.5モル/リットル、さらに好ましくは0.7
〜2.5モル/リットルである。セリンに加えさらにグ
リシンを好ましくは0.3モル/リットル以上で且つセ
リンとの合計が3.5モル/リットル以下となる量、さ
らに好ましくは0.3〜1.0モル/リットル存在させる
と、XIII因子の安定化および加熱処理液の濁りの抑制
のためにより効果的である。本発明に用いられる糖類に
は、単糖類、寡糖類および糖アルコールが含まれる。単
糖類としては、たとえばグルコース、フラクトースなど
が、寡糖類としては、蔗糖、麦芽糖、乳糖、トレハロー
スなどの二糖類が、糖アルコールとしては、マンニトー
ル、ソルビトールなどがあげられる。これらの中では蔗
糖が最も適している。これらの糖類の被処理液中の濃度
は20〜60w/w%が好ましく、20〜50w/w%
がさらに好ましい。溶液のpHは6.5〜8.0の範囲が
好ましい。本発明の最も好ましい形態としては、XIII
因子含有溶液中にセリンを0.7〜2.5モル/リット
ル、グリシンを0.5〜1.0モル/リットル、蔗糖を2
0〜50w/w%存在させることである。各成分をこの
範囲内で添加したものは、一般的に行われている熱によ
るウイルス不活化処理において、XIII因子の失活また
は変性が最小限に抑制され、且つ得られた加熱処理液の
濁りが最も少ないという結果が得られている。ウイルス
不活化のための加熱処理は50〜100℃、1〜48時
間、好ましくは55〜80℃、3〜24時間である。こ
のようにして得られたXIII因子含有溶液は、必要によ
りさらに慣用の生化学的方法により精製してもよく、さ
らに血清アルブミン、グルコース、塩化ナトリウム等を
安定化剤として加えて凍結乾燥してもよい。
【0008】
【実施例】以下実施例および実験例をあげて本発明をさ
らに詳しく説明するが、本発明はこれらによって制限を
受けるものではない。 実施例1 (1)加熱処理用XIII因子含有溶液の調製 コーン低温エタノール分画の画分Iを約1kg採取し、
5リットルの0.02Mクエン酸緩衝液(pH7.5)を
加え、ミキサーにて画分Iを十分に撹拌しながら溶解し
た。この溶液を遠心分離器にて3000×g、15分、
20℃で遠心分離し上清を得た。この上清に、2.5リ
ットルの1Mクエン酸緩衝液(pH7.5)をゆっくり
と添加撹拌し、1時間、20℃で放置した。この溶液を
遠心分離器にて3000×g、15分、10℃で遠心分
離し沈殿を得た。この沈澱を3リットルの0.02Mク
エン酸緩衝液(pH7.5)に溶解し、さらに56℃、
3分間の加熱処理を行い、熱変性物を分離して上清を得
た。この溶液をXIII因子含有加熱処理溶液とした。 (2)XIII因子含有溶液の加熱処理 前記(1)で調製したXIII因子含有溶液を、それぞれ
別表の終濃度となるように安定化剤を添加した。次に6
0℃、15時間の加熱処理を施した。加熱処理前後の活
性残存率および濁度を測定し、その結果を〔表1〕およ
び〔表2〕に掲げた。
【0009】(3)結果
【表1】
【0010】
【表2】 上記〔表1〕および〔表2〕から明らかなように、セリ
ンはグリシンとほぼ同程度のXIII因子の活性残存率を
示す一方、濁度においてはセリンはグリシンより優れた
効果を奏している。
【0011】
【発明の効果】本発明においては、XIII因子含有溶液
の加熱によるウイルス不活化に際し、溶液中にセリンお
よび糖類の一定量を存在させることにより、XIII因子
の失活または熱変性を抑制するとともに、液の濁りの発
生を減少させることができる。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】血液凝固第XIII因子含有溶液の加熱によ
    るウイルス不活化処理に際し、溶液中にセリン、ならび
    に単糖類、寡糖類および糖アルコールからなる糖類の少
    なくとも1種を存在させることを特徴とする第XIII因
    子の熱安定化法。
  2. 【請求項2】セリンを0.5〜3.5モル/リットル、な
    らびに糖類の少なくとも1種を20〜60w/w%存在
    させる請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】さらにグリシンを0.3モル/リットル以
    上で且つセリンとの合計が3.5モル/リットル以下と
    なる範囲で存在させる請求項2記載の方法。
  4. 【請求項4】糖類が蔗糖である請求項1、2または3記
    載の方法。
  5. 【請求項5】セリンを0.7〜2.5モル/リットル、グ
    リシンを0.3〜1.0モル/リットルおよび蔗糖を20
    〜50w/w%存在させる請求項3記載の方法。
JP9312814A 1997-10-28 1997-10-28 血液凝固第xiii因子の熱安定化法 Pending JPH11130682A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001327592A (ja) * 2000-05-22 2001-11-27 Aventis Behring Gmbh 抗癒着特性が改善された組織接着剤
WO2019182123A1 (ja) * 2018-03-23 2019-09-26 味の素株式会社 トランスグルタミナーゼを含有する液体製剤

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WO2019182123A1 (ja) * 2018-03-23 2019-09-26 味の素株式会社 トランスグルタミナーゼを含有する液体製剤
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