JPH11128990A - 水質浄化装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 表面曝気に伴い発生する騒音を少なくするこ
とができ、さらに、水域の景観を損なうことのないよう
な水質浄化装置を提供する。 【解決手段】 水質浄化装置１を、自然水域２の少なく
とも水表面３近傍を曝気するための曝気手段７と、水表
面３上に配置されて曝気手段７を支持するための浮体５
とを備えた構成とするとともに、浮体５を曝気手段７を
取り囲むように構成した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、自然水域の水質を
浄化するための水質浄化装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】近年、湖沼、河川等の自然水域の富栄養
化が進むのに伴い、様々な問題が発生しており、これら
自然水域の水質を浄化するための手法についても、数多
くのものが提案されている。

【０００３】このような水質浄化の手法の一例として
は、表面曝気が知られている。この表面曝気は、水表面
を羽根等で叩くことによって、水中に酸素を強制的に溶
存させ、これにより水中酸素量の増大を図って、水中微
生物の働きを活性化させ、水質の自然浄化能力を向上さ
せるというものである。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
表面曝気による水質浄化の手法は、動力効率に優れてい
る反面、水面を羽根で叩く騒音が発生するという問題点
を有するものであった。また、上述の表面曝気において
は、水面を叩くための羽根や、羽根を駆動するための駆
動装置、あるいは、水面を羽根で叩くことにより発生す
る気泡が、自然水域における景観を損ねてしまうという
問題点があった。

【０００５】本発明は、上記問題点に鑑みてなされたも
のであり、表面曝気に伴い発生する騒音を少なくするこ
とができ、さらに、水域の景観を損なうことのないよう
な水質浄化装置を提供することをその目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明においては以下の手段を採用した。すなわ
ち、請求項１記載の水質浄化装置は、自然水域の水質を
浄化するための水質浄化装置であって、前記自然水域の
少なくとも水表面近傍を曝気するための曝気手段と、前
記水表面上に配置されて該曝気手段を支持するための浮
体とを備えてなり、前記浮体は、前記曝気手段を取り囲
むように設けられていることを特徴とする。

【０００７】上記のような構成とされるため、この水質
浄化装置においては、曝気手段から発生する騒音を浮体
により遮ることができる。

【０００８】請求項２記載の水質浄化装置は、請求項１
記載の水質浄化装置であって、前記浮体の周囲における
少なくとも前記水表面の近傍には、水生植物が活着可能
な繊維材が設けられていることを特徴とする。

【０００９】この水質浄化装置においては、繊維材に活
着する水生植物により、水中の富栄養化物質が除去され
る。また、繊維材や水生植物等により、浮体に付着する
藻類や汚れ等が外から見た際に目立つことがない。

【００１０】請求項３記載の水質浄化装置は、請求項１
または２記載の水質浄化装置であって、前記浮体の少な
くとも上部には、植物が活着可能な植生基盤材が設けら
れていることを特徴とする。

【００１１】この水質浄化装置においては、浮体上部に
活着する植物により曝気手段から発生する騒音が遮られ
る。また、これらの植物により、浮体そのものが外方か
ら見えることがない。

【００１２】請求項４記載の水質浄化装置は、請求項１
から３のいずれかに記載の水質浄化装置であって、前記
曝気手段に対して電気を供給するための太陽電池パネル
を備えて構成されていることを特徴とする。

【００１３】上記のような構成とされるため、この水質
浄化装置は、自家発電により水質浄化機能を発揮するこ
とが可能である。

【００１４】請求項５記載の水質浄化装置は、請求項４
記載の水質浄化装置であって、前記浮体上における前記
太陽電池パネルの少なくとも南側には、低〜中茎草また
は灌木が活着されていることを特徴とする。

【００１５】上記のような構成とされるため、この水質
浄化装置においては、太陽電池パネルにおける太陽光の
受光が遮られることがない。

【００１６】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態の一例
を、図１を参照して説明する。図１に示すように、水質
浄化装置１は、自然水域２における水表面３上に配置さ
れたものである。図中に示すように、水質浄化装置１
は、水表面３上に配置された浮体５と、浮体５によって
支持された曝気手段７と、太陽電池パネル８とから概略
構成されている。

【００１７】浮体５は、発泡スチロールをドーナツ状に
形成したものであり、その中央には開口部９が設けられ
ている。さらに浮体５の上部５ａと、水表面３の近傍に
位置する外縁部５ｂとは、ヤシ殻繊維マットからなる繊
維材１０で覆われた構成とされている。また、繊維材１
０は、植物が活着可能な植生基盤材としての機能を果た
すものであり、これにより浮体５の上部５ａには、低〜
中茎草１２や、樹木１３等が活着させられている。

【００１８】一方、曝気手段７は、浮体５の開口部９に
設置されたものであり、プロペラ１４およびモータ１５
により構成されている。モータ１５は、曝気手段７の上
方に設けられた太陽電池パネル８に接続されており、太
陽電池パネル８から電力が供給される構成とされてい
る。また、低〜中茎草１２は、この太陽電池パネル８の
南側に活着させられた構成とされている。さらに、浮体
５は、風や曝気手段７の反力による移動を防止するため
に、係留ワイヤー１８によりその位置が固定されてい
る。

【００１９】以上が、本実施の形態における水質浄化装
置１の主要な構成であるが、次に水質浄化装置１による
水質浄化機能について説明する。水質浄化装置１は、上
述のように水表面３上に配置されるために、太陽電池パ
ネル８により太陽光を受光して、モータ１５に電力を供
給し、これによりモータ１５を駆動させてプロペラ１４
を回転させることができる。したがって、プロペラ１４
が水表面３を叩くことにより、自然水域２内に酸素を溶
解させることができ、これにより、水中の微生物を働き
を活性化させて、水質を浄化させることができる。ま
た、浮体５の外縁部５ｂに配置された繊維材１０には、
水生植物が活着することにより、これら水生植物が水中
の窒素、リン分等の富栄養化物質を吸収し、これにより
水質の再汚染（富栄養化物質による藻類の繁茂→枯死→
腐敗→水質汚濁）を防止することができる。また、浮体
５が水中に日陰を形成し、さらに浮体５の外縁部５ｂに
水生植物等が繁茂することにより多くの魚類等の生息が
可能となる。さらに、浮体５の上部５ａに活着させられ
た植物の種や昆虫の落下より魚の餌を確保することがで
き、これらにより自然水域２の生態系の良好に維持する
ことができ、これにより自然水域２内の水質の自然浄化
作用に寄与できることとなる。

【００２０】上述の水質浄化装置１においては、曝気手
段７を囲むように浮体５が設けられるために、曝気手段
７から発生する騒音を浮体５によって遮ることができ、
これにより、表面曝気における騒音の問題を解決するこ
とが可能である。

【００２１】また、水質浄化装置１においては、浮体５
の周囲に位置する外縁部５ｂに繊維材１０が配置される
ために、外縁部５ｂに水生植物が活着することにより、
水質浄化機能が向上することとなる。また、このように
外縁部５ｂに繊維材１０が配置され、さらに、そこに水
生植物が活着するために、浮体５の周囲に付着する藻類
や汚れ等が外から見えることがなく、浮体５により水面
景観が損なわれることがない。

【００２２】さらに、水質浄化装置１においては、浮体
の上部５ａに配置された繊維材１０が、低〜中茎草１２
や、樹木１３等の植生を活着させるための植生基盤材と
しての役割を果たすことから、これら植生により、曝気
手段７から発生する騒音が遮られ、これにより表面曝気
による騒音に対してより良好に対処することができる。
また、これら植生により、浮体５そのものが外方から見
えることがなく、これにより、従来の水質浄化装置に比
較して、水面景観を損ねる心配が少なくなる。さらに、
これら植生により、水面景観そのものを向上させること
ができる。

【００２３】また、水質浄化装置１には、太陽電池パネ
ル８が備えられるために、自家発電により表面曝気を行
うことが可能であり、これにより、自然水域２上におい
ても無人で確実に運用を行うことが可能である。

【００２４】さらに、この水質浄化装置１においては、
太陽電池パネル８の南側に配置される植生が低〜中茎草
１２とされるために、これら植生が生育しても太陽電池
パネル８における太陽光の受光が遮られることがない。
これにより、定期的に植生を整備する等の必要がなく、
無人での運用を確実に行うことができる。

【００２５】なお、上記実施の形態において、本発明の
主旨を逸脱しない範囲内で、水質浄化装置１の各所の構
造や材料、あるいは、活着される植生等について他の構
成を採用するようにしてもよい。

【００２６】例えば、上記実施の形態における浮体５
を、中空のＦＲＰ材等によって構成するようにしてもよ
い。また、浮体５の上部５ａを繊維材１０の代わりに軽
量土壌等で被覆するようにしてもよい。さらに、太陽電
池パネル８の南側に配置される植物は、低〜中茎草１２
の代わりに灌木等であってもよい。

【００２７】また、水質浄化装置１において、プロペラ
１４が水表面３を叩くことにより自然水域２の曝気を行
う構成とされていたが、その代わりに、プロペラ１４に
よって、水表面３の水をはね上げるようにして自然水域
２の曝気を行うようにしてもよい。この場合、低〜中茎
草１２や樹木１３に水がかかるようにプロペラ１４の運
転を調整することによって、これら低〜中茎草１２、樹
木１３への水の供給が途絶えることがない。これによ
り、繊維材１０部分の水分保持能力を高めるために、繊
維材１０を厚く設ける必要がなく、この部分を薄くする
ことができる。

【００２８】さらに、水表面３の水をはね上げるように
自然水域２の曝気を行う場合、太陽電池パネル８に水が
かかるようにプロペラ１４の運転を調整するようにすれ
ば、高温に弱い太陽電池パネル８を水冷して発電効率を
向上させることもできる。

【００２９】

【発明の効果】以上説明したように、請求項１に係る水
質浄化装置においては、曝気手段を囲むように浮体が設
けられるために、曝気手段から発生する騒音を浮体によ
って遮ることができ、これにより、表面曝気の騒音が周
辺の環境等に悪影響を与える心配を少なくすることが可
能である。

【００３０】請求項２に係る水質浄化装置においては、
浮体の周囲に位置する外縁部に繊維材が配置されるため
に、この繊維材に水生植物が活着することにより、水質
浄化機能が向上されることとなる。また、これら繊維材
および水生植物により、浮体の周囲に付着する藻類や汚
れ等が外から見えることがなく、従来の水質浄化装置に
比較して水面景観を損なう心配を少なくすることができ
る。

【００３１】請求項３に係る水質浄化装置においては、
浮体の上部に配置された植生基盤材に、植生が活着され
ることにより、これら植生により、曝気手段から発生す
る騒音が遮られ、これにより、表面曝気による騒音問題
に対してより有効に対処することができる。また、これ
ら植生により、水面景観を向上させることが可能であ
る。

【００３２】請求項４に係る水質浄化装置によれば、太
陽電池パネルが備えられた構成とされるために、自家発
電により表面曝気を行うことが可能であり、これによ
り、自然水域上において無人で確実に運用を行うことが
できる。

【００３３】請求項５に係る水質浄化装置においては、
太陽電池パネルの南側に配置される植生が低〜中茎草ま
たは灌木とされるために、これら植生が生育しても太陽
電池パネルにおける太陽光の受光が遮られず、これによ
り、定期的に植生を整備する等の必要がないため、無人
での運用を確実に行うことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の一実施の形態を模式的に示す水質浄
化装置の立断面図である。

【符号の説明】

１ 水質浄化装置 ２ 自然水域 ３ 水表面 ５ 浮体 ５ａ 上部 ５ｂ 外縁部 ７ 曝気手段 ８ 太陽電池パネル １０ 繊維材 １２ 低〜中茎草

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 自然水域の水質を浄化するための水質浄
   化装置であって、 前記自然水域の少なくとも水表面近傍を曝気するための
   曝気手段と、前記水表面上に配置されて該曝気手段を支
   持するための浮体とを備えてなり、 前記浮体は、前記曝気手段を取り囲むように設けられて
   いることを特徴とする水質浄化装置。
2. 【請求項２】 請求項１記載の水質浄化装置であって、 前記浮体の周囲における少なくとも前記水表面の近傍に
   は、水生植物が活着可能な繊維材が設けられていること
   を特徴とする水質浄化装置。
3. 【請求項３】 請求項１または２記載の水質浄化装置で
   あって、前記浮体の少なくとも上部には、植物が活着可
   能な植生基盤材が設けられていることを特徴とする水質
   浄化装置。
4. 【請求項４】 請求項１から３のいずれかに記載の水質
   浄化装置であって、 前記曝気手段に対して電気を供給するための太陽電池パ
   ネルを備えて構成されていることを特徴とする水質浄化
   装置。
5. 【請求項５】 請求項４記載の水質浄化装置であって、 前記浮体上における前記太陽電池パネルの少なくとも南
   側には、低〜中茎草または灌木が活着されていることを
   特徴とする水質浄化装置。