JPH11127851A - 抗原特異的免疫抑制性細胞の誘導増殖方法およびこれに用いる培養器具 - Google Patents

抗原特異的免疫抑制性細胞の誘導増殖方法およびこれに用いる培養器具

Info

Publication number
JPH11127851A
JPH11127851A JP9301966A JP30196697A JPH11127851A JP H11127851 A JPH11127851 A JP H11127851A JP 9301966 A JP9301966 A JP 9301966A JP 30196697 A JP30196697 A JP 30196697A JP H11127851 A JPH11127851 A JP H11127851A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
antigen
antibody
cells
immobilized
culture device
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP9301966A
Other languages
English (en)
Inventor
Kenji Yamashita
憲司 山下
Takeshi Fukuchi
健 福地
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd filed Critical Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
Priority to JP9301966A priority Critical patent/JPH11127851A/ja
Publication of JPH11127851A publication Critical patent/JPH11127851A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】 効率よく免疫抑制性細胞を誘導増殖し、免疫
系の異常亢進を伴う疾患の効率的で副作用の少ない治療
システムを提供すること。 【解決手段】 1種以上の抗原存在下で培養したヒト細
胞を、1種以上の蛋白質を固定化した培養器具で、さら
に培養することによる該抗原に特異的免疫抑制性細胞の
誘導増殖方法およびこれに用いる培養器具。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、免疫抑制性細胞、
特に抗原特異的な免疫抑制性細胞の誘導増殖方法および
これに用いる培養器具に関する。さらに詳しくは、予め
抗原と培養したヒト細胞を、抗体を固定化した培養器具
でさらに培養することによる該抗原に特異的免疫抑制性
細胞の誘導増殖方法およびこれに用いる培養器具に関す
る。
【0002】
【従来の技術】自己免疫疾患および移植時の拒絶反応は
宿主の細胞が自己の細胞や移植された臓器を異物として
認識し、破壊することにより引き起こされる疾患であ
り、その破壊に関与する自己細胞あるいは移植臓器特異
的傷害性細胞を抑制する免疫抑制性細胞の量的あるいは
質的な異常がその原因であるとする例がいくつか知られ
ている(マッキントッシュ(Macintosh)およ
びドラクマン(Drachman)、サイエンス(Sc
ience)232巻、401頁(1986年)参
照)。バラショフ(Balashov)らの報告(バラ
ショフら、ジャーナル・オブ・クリニカル・インベステ
ィゲーション(Journal of Clinica
l Investigation)95巻、2711頁
(1995年)参照)では、MS(多発性硬化症)患者
においては自己混合リンパ球反応による免疫抑制性T細
胞の誘導効率に著しい低下がみられ、それが同疾患発症
の原因としている。したがってそのような患者の免疫抑
制性細胞、それも特に自己の細胞あるいは移植された臓
器を特異的に認識し、攻撃するT細胞を特異的に抑制す
る細胞(以下、抗原特異的免疫抑制性細胞と呼ぶ)を回
復させることはその治療法としてきわめて有効であると
考えられる。これまで、抗原特異的免疫抑制性T細胞の
誘導例としてはフレズノ(Fresno)ら(フレズノ
ら、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディシ
ン(Journal of Experimental
Medicine)163巻、1246頁(1980
年)参照)らの正常マウスでのインビボ誘導例、また実
際、疾患モデル動物を用いた系での抑制性細胞による治
療例としてハリソン(Harrison)ら(ハリソン
ら、ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディシ
ン(Journal of Experimental
Medicine)184巻、2167頁(1996
年)参照)等マウスなどの動物を用いた系でいくつか報
告されている。また、ヒトでの抗原特異的免疫抑制細胞
誘導例として、ダムル(Damle)ら(ダムルら、ジ
ャーナル・オブ・イムノロジー(Journal of
Immunology)132巻、644頁(1984年)参
照)のPPD抗原特異的抑制細胞をインビトロで誘導し
ている例、あるいは、同じくダムルら(ダムルら、ジャ
ーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディシン(Jo
urnal of Experimental Med
icine)158巻、159頁(1983年)参照)
のアロ細胞特異的抑制性細胞をインビトロで誘導してい
る例がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】インビトロで抗原特異
的な免疫抑制性細胞を誘導することは自己免疫疾患治療
あるいは臓器移植の拒絶反応の抑制を行う時、その抑制
能、特異性を確認した上で治療に用いることができると
いう点で安全かつ効果的な方法であるといえる。ところ
が一般的にインビトロでの抗原特異的免疫抑制性細胞の
誘導は用いる抗原によってその効率にかなり差があり、
用いる抗原すべてについて効率的に誘導を行い、大量の
抑制性細胞を得ることは難しい。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決すべくPPDをモデル抗原として効率的に抗原特異
的免疫抑制性細胞を作製する方法を鋭意検討した結果、
患者の血液細胞を体外に取り出し、抗原特異的免疫抑制
性細胞を誘導、増殖させ、再び戻すことにより、強い抗
原特異的免疫抑制能を保ったまま、大量の抗原特異的免
疫抑制性細胞を作製することに成功し、本発明を完成す
るに至った。
【0005】即ち、本発明の第1は、1種以上の抗原存
在下で培養したヒト細胞を、1種以上の蛋白質を固定化
した培養器具で、さらに培養することによる該抗原に特
異的免疫抑制性細胞の誘導増殖方法に関する。また本発
明の第2は、1種以上の抗原存在下で培養したヒト細胞
を、1種以上の蛋白質を固定化した培養器具で、さらに
培養することによる該抗原に特異的免疫抑制性細胞の培
養器具に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳述する。
本発明に用いる「ヒト細胞」とは、ヒトの体を構成する細
胞およびこれに由来する細胞であり、たとえばヒト末梢
血細胞、ヒト腹腔細胞、ヒト胸腺細胞、ヒト骨髄細胞、
ヒト株化T細胞などがあげられる。細胞移入という方法
で実際に患者の治療を行う場合、免疫の拒絶反応あるい
は抑制効果を考えてもその患者自身の細胞を用いること
が最も望ましく、そのなかでもヒト末梢血細胞が採取の
容易さの点で好ましい。末梢血細胞は、ヒトからの採血
により得た静脈血を50mlのポリスチレンチューブに
入れたフィコール(フィコールパック(Ficoll−
Paque):ファルマシア社製)の上に重層し、1分
間1500回転で20分間遠心することにより、境界面
に形成されるリンパ球、単球画分を分離し、RPMI−
1640培地で3回洗浄することにより得られる(フィ
コール遠心分離法)。T細胞は、こうして得られたヒト
末梢血細胞を培養液中に播種して一晩培養したのち、浮
遊細胞を集めることにより得られる。
【0007】本発明に用いる「蛋白質」とは、細胞表面
抗原、細胞表面抗原やサイトカイン受容体に対する抗体
またはその誘導体、サイトカイン等があげられるが、効
率的な細胞増殖活性を誘導する点でヒト細胞の細胞表面
抗原に対する抗体、サイトカインが好ましい。これらの
蛋白質は、単独または二種以上を併用することができ
る。
【0008】「細胞表面抗原に対する抗体」とは、細胞と
細胞の接着を媒介する機能を有する蛋白質に対する抗体
あるいは接着時に二次的に相手細胞上の分子との結合に
関与する蛋白質に対する抗体、そして種々のサイトカイ
ンに対する受容体に対する抗体をいうが、たとえば免疫
グロブリン・スーパー・ファミリー、インテグリン・ス
ーパーファミリー、カドヘリンなどに対する抗体あるい
はIL−2受容体があげられる。好ましくは、免疫グロ
ブリン・スーパー・ファミリー、とくに好ましくは、ヒ
トT細胞のCD2抗原あるいはCD3抗原に対する親和
性を有する抗体およびその類似体である。
【0009】ここで「CD2抗原に対する抗体(抗CD
2抗体)」としては、CD2抗原の種々のエピトープに
対するモノクローナル抗体あるいはCD2抗原に対する
ポリクローナル抗体などがあげられるが、好ましくは抗
CD2抗体TS2/18、抗CD2抗体35.1があげ
られる。またこれらのF(ab)2断片も使用可能であ
る。
【0010】また「CD3抗原に対する抗体(抗CD3
抗体)」としては、同じくCD3抗原を認識するモノク
ローナル抗体あるいはポリクローナル抗体などがあげら
れるが、好ましくは抗CD3抗体OKT3があげられ
る。またこれらのF(ab)2断片も使用可能である。
「CD2抗原の異なるエピトープを認識する抗体」とは、
CD2表面抗原分子の異なる部分を認識し、結合する抗
体を意味する。この抗体は、二種以上を併用することが
できる。1種では、細胞増殖効率が不充分な場合もある
からである。
【0011】「サイトカイン」としては、IL−1,IL
−2,IL−3,IL−4,IL−5,IL−6,IL
−7、IL−8、IL−8レセプターファミリー、IL
−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−1
3、IL−13、IL−15、GM−CSF、G−CS
F、TGF−β、TNF−α、TNF−β、IFN−
α、IFN−β、IFN−γ、マクロファージ活性化因
子、マクロファージ遊走阻止因子等があげられるが、特
にIL−2が好ましい。これらのサイトカインは、単独
または二種以上を併用することができる。IL−2は末
梢血から分離したものでも、また遺伝子組み替えにより
調製したものでもよい。
【0012】本発明に用いる「抗原」とは、自己免疫疾
患の原因となる抗原、異種および同種の移植臓器由来の
抗原、結核菌抗原PPD抗原(Purified Protein Deriv
ative)、破傷風抗原TT(Tetanus Toxid)等の免疫抑
制性細胞の誘導のためのモデル抗原などがあげられる。
これらの抗原は、単独または二種以上を併用することが
できる。
【0013】「自己免疫疾患の原因となる抗原」として
は、インスリン依存型糖尿病、リウマチ、潰瘍性大腸
炎、橋本甲状腺炎、多発性硬化症などの原因抗原があげ
られる。「インスリン依存型糖尿病の原因抗原」として
は、インスリン、プロインスリン、GAD、IA−2、
カルボキシペプチダーゼH、ウィルスなどがあげられ
る。
【0014】「リウマチの原因抗原」としては、コラー
ゲン、ウィルスなどがあげられる。「異種および同種の
移植臓器由来の抗原」としては、該移植臓器の拒絶に関
与するところの抗原などがあげられる。本発明でいう
「免疫抑制性細胞」とは、免疫反応を抑制する能力を有す
る細胞をいう。この免疫応答抑制活性の測定は、たとえ
ば異なる2つあるいはそれ以上の数の個体から調製した
末梢血細胞を混合する反応系(MLR)、あるいはある
抗原に対する反応性を持つT細胞(メモリーT細胞)を
持つ個体の末梢血細胞とその抗原を混合する反応系など
を用いて行うことができる。例えばインビトロにおいて
同一人から新たに得たヒト末梢血細胞(以下、PBLと
呼ぶ)に、免疫抑制性を有すると思われる細胞を加え、
さらにPPD(ピュアリファイド・プロテイン・デリバ
チブ(Purified Protein Deriv
ative)日本ビーシージー社製)を加えて37℃、
5%CO2の条件下で数日間培養したのち、[3H]チミジ
ンを添加し、さらに5〜16時間培養したのち、細胞中
の放射活性をシンチレーションカウンターで測定するこ
とにより行うことができる。
【0015】本発明でいう「抗原特異的な免疫抑制性細
胞」とは上記の免疫抑制性細胞に含まれるもので、免疫
抑制性細胞の中でも特にある抗原に対して特異的に活性
化される細胞のみを選択して抑制する細胞を指し、例と
して本明細書の実施例中のPPDであらかじめ培養する
ことにより得られた細胞で、PPDで刺激することによ
る細胞の活性化の系に加え培養することによりこの活性
化を抑制する能力を持つ細胞をあげることができる。
【0016】本発明における抗原特異的免疫抑制性細胞
の誘導増殖方法を以下に説明する。1−10%のオート
ローガス血清を含む培地で調製したヒト細胞を培養プレ
ートに分注する。各ウェルに抗原を加え、3〜7日間培
養する。該細胞を血清を含まない培地で洗浄した後、1
−10%のオートローガス血清を含む培地に懸濁し、抗
原特異的免疫抑制性細胞を誘導する。
【0017】抗原の使用量は0.1〜10μg/mlが
好ましい。少なすぎる場合には充分量の抗原特異的免疫
抑制性細胞が誘導されない可能性があり、多すぎる場合
には用いる細胞量が律速となり上記の抗原使用量での誘
導以上の誘導は得られない可能性があるとともに細胞に
対する毒性を考慮する必要もあり好ましくない。ここで
用いることができる培地としては、たとえば動物培養用
培地、D−MEMやRPMI−1640があげられる。
また、培地に血清を含有させてもよい。好ましくは自己
血清を用いる。自己血清とは、培養に用いるヒト細胞と
同じ個体よりえられた血清をいう。自己血清を用いると
細胞増殖性がよく、非特異的免役反応も起こりにくく、
最ものぞましい。血清の添加量はとくに限定されない
が、0.5〜10v/v%が一般的である。
【0018】次に1種以上の抗原存在下で培養すること
により誘導した抗原特異的免疫抑制性細胞を、前記の細
胞表面抗原、細胞表面抗原やサイトカイン受容体に対す
る抗体またはその誘導体、サイトカイン等の蛋白質を固
定化した培養器具で培養することにより、免疫抑制性細
胞が増殖できる。固定化する蛋白質の量は、用いる蛋白
質によって異なり、とくに限定されないが、0.1〜1
0μg/mlが好ましい。少なすぎる場合には、免役抑
制活性の誘導が行われないおそれがあり、多すぎる場合
には、細胞に傷害を与える可能性がある。
【0019】蛋白質の固定化方法としては、一般的に疎
水結合、イオン結合、共有結合を利用した方法が用いら
れ、簡便な方法として蛋白質に親和性を有する部材に疎
水結合を利用して固定化する方法、またより強固に固定
化する方法として固定化する蛋白質と親和性を有する部
材を共有結合させる方法があげられる。用いることがで
きる培地としては、たとえば動物培養用培地、D−ME
MやRPMI−1640があげられる。また、培地に血
清を含有させてもよい。好ましくは自己血清を用いる。
自己血清とは、培養に用いるヒト細胞と同じ個体よりえ
られた血清をいう。自己血清を用いると細胞増殖性がよ
く、非特異的免役反応も起こりにくく、最ものぞまし
い。血清の添加量はとくに限定されないが、0.5〜1
0v/v%が一般的である。ヒト細胞をこのような培地
中で、通常37℃、5%CO2の条件下で好ましくは1
〜7日間、より好ましくは1〜7日間、特に好ましくは
1〜3日間培養することにより、免疫抑制性細胞が増殖
できる。
【0020】本発明で用いる培養器具は細胞毒性のない
滅菌可能で蛋白質に親和性を持つ部材であればよく、一
般的にはプラスチック系あるいはガラス系の部材が好ま
しい。プラスチック系部材とは熱硬化性樹脂と熱可塑性
樹脂を意味し、成型性が優れているという理由でポリマ
ーがより好ましく、蛋白に対する親和性が高く、無色透
明であるという理由でポリスチレンがとくに好ましい。
ガラス系部材とはケイ酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩などが
結晶することなく固化したもの(ガラス化という)を意
味し、ガラス化傾向が強いという理由でケイ酸塩ガラス
がより好ましく、成型性に富み、対衝撃性が高いという
理由でケイ酸塩ガラスを熱処理することによりつくる結
晶化ガラスが特に好ましい。また、培養器具に蛋白質に
対する親和性を付与するため、部材に蛋白質の吸着性を
高める処理を行ってもよい。通常細胞培養に用いられる
培養器具はコラーゲンなどの蛋白質で固定化されている
ので、蛋白質の吸着性を低下させており本発明に用いる
部材としては好ましくない。本発明に用いる細胞培養器
具において細胞が直接接着する部材面の形状的として
は、蛋白質の固定化を均一に行い、さらに細胞の接着を
均一に効率的に行う必要があるので、平板状あるいは球
状形が好ましい。さらに好ましくは培養器具は平板プレ
ート状閉鎖系容器または球状微粒子を充填した閉鎖系容
器である。平板状のものでは通常の培養フラスコ、培養
ディッシュ、培養プレートの形状をしたものまたは図1
−(a)〜(c)に示したような多段式のプレートが使
用可能である。図1に示された多段式プレートは本発明
の培養器具の実施の一形態である。図1(a)に示すよ
うに、矢印の方向からヒト細胞1を含む細胞懸濁液2が
添加される。図1(b)に示すように培養時は図1
(a)の器具を90゜回転させる。培養時には通気性フ
ィルターをへて5%CO2が送られ、誘導された免疫抑
制性細胞はやや強く振とうすることによってはがされ細
胞回収口から得られる。図1(c)は図1(b)を上か
ら見た図である。このような多段式プレートを用いる場
合、一度に多くの細胞を処理できるだけでなく、一度に
複数の異なる機能を有する細胞を誘導作製できる利点が
ある。たとえば固定化する抗体を変えることにより免疫
抑制性の細胞および免疫抑制機構を賦活する能力を有す
る細胞を同時に誘導することが可能である。部材が球状
形のものでは小型球形ビーズを図2に示したような容器
に入れ使用することが可能である。
【0021】図2に示された容器は本発明の実施の別の
形態である。図2中、5%CO2は通気性フィルター2
3をへて、ヒト細胞を含有する細胞懸濁液22に送られ
る。球状微粒子25は細胞懸濁液22中に存在しヒト細
胞が接着している。誘導された免疫抑制性細胞は球状微
粒子に接着したままコック26をあけて回収される。2
7は側壁を示す。そののち、生理食塩水などで洗浄する
ことにより、誘導された細胞が得られる。
【0022】本発明では主にELISA反応に用いる平
板状のプラスチックプレートを器具として用いるのがと
くに好ましい。本発明で誘導増殖された抗原特異的免役
抑制性細胞の投与経路は限定されないが、カテーテルな
どの医療器具を用い、全身または局所に投与されるのが
望ましい。
【0023】投与される細胞量としては、投与の目的、
すなわち疾病の種類および投与する患者の症状の程度に
よっても異なるが、成人一日あたり細胞数として106
〜5×108個、好ましくは106〜108個、特に好ま
しくは106個である。本発明の抗原特異的免疫抑制性
細胞の誘導増殖方法は、簡便にかつ効率的に抗原特異的
免疫抑制性細胞を誘導増殖する方法を提供するもので、
種々の自己免疫疾患や臓器移植の拒絶反応の抑制を目的
とした治療において、副作用が少なくかつ効率的な方法
を提供するものである。
【0024】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳しく説
明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定され
るものではない。 実施例1 抗原特異的免疫抑制性細胞の誘導 10%のオートローガス血清を含むRPMI−1640
(シグマ社製)で1×106/mlの濃度に調製した健
常成人ヒト末梢血細胞を12穴ウェル平底プレートに2
mlずつ分注した。各ウェルに結核菌抗原PPD(日本
ビーシージー社製)を終濃度1μg/mlになるように
加え、7日間培養した。培養7日後の細胞数は8×10
5/mlであった。同細胞を血清を含まないRPMI−
1640培地で3回洗浄した後に10%オートローガス
血清を含むRPMI−1640培地中に0.25×10
6/mlになるように懸濁し、細胞懸濁液を得た。 実施例2 抗体固定化プレートで処理したヒト末梢血細
胞の調製 あらかじめ抗CD3抗体OKT3(オース・ダイアグノ
スティック・システム・インク(Orth Diagn
ostic System Inc.)社製)と抗CD
2抗体TS2/18(ATCC HB195)または抗
CD2抗体35.1(ATCC HB222)を各10
μg/mlの濃度で48穴プレート(コースター(Co
star)社製)に各100μlずつ固定化(1晩4℃
で放置)したものをPBSで洗浄した後に、実施例1で
PPD処理した細胞懸濁液を各300μl添加し、5%
CO2インキュベーター中、37℃で7日間培養した。
このとき比較コントロールとして、なにも固定化してい
ないウェル(PPD処理のみ)およびIL−2(ベクト
ン・ディッキンソン社製)を200U/ml添加したも
のを用いた。7日間の培養後の細胞数は抗CD3抗体O
KT3と抗CD2抗体TS2/18、抗CD3抗体OK
T3と抗CD2抗体35.1、IL−2、なにも固定化
していないウェルで各々、1.4×106/ml、1.
0×106/ml、2.1×106/ml、0.4×10
6/mlで抗体処理あるいはIL−2処理により顕著な
増殖がみられた(図3)。培養後、各穴の細胞を回収
し、3回PBSで洗浄した後に該細胞を10%のオート
ローガス血清を含むRPMI−1640培地100μl
になるように懸濁し、細胞懸濁液を得た。 実施例3 免疫抑制能の評価 正常なヒトから採取した末梢血から、10%オートロー
ガス血清を含むRPMI−1640培地を用いて1×1
6/mlの正常ヒト末梢血細胞懸濁液を調製し、96
穴丸底プレート(コーニング社製)に100μlずつ分
注した。各ウェルにPPDを終濃度1.0μg/mlあ
るいは破傷風菌抗原TTを加え、同時に実施例1、2で
得られた細胞をウェルあたり1×105個添加し、5%
CO2インキュベーター中、37℃で5日間培養した。
その後、1μCiの[3H]チミジンを各ウェルに添加し、
15時間培養した後に細胞をセルハーベスター(ラボマ
ッシュ(LABO MASH)、ラボサイエンス(LA
BO SCIENCE)社製)を用いて集め、その細胞
中に取り込まれた[3H]の放射活性をシンチレーションカ
ウンターLSC−700(アロカ(Aloka)社製)
を用いて測定した。ポジティブコントロールとして、実
施例1の細胞を加えるかわりに、30μlの10%のオ
ートローガス血清を含むRPMI−1640培地を加え
たウェルを測定対象とした。
【0025】その結果、図4及び図5に示すように、P
PD−T細胞活性化の系に供せられたヒト細胞に対し
て、等量の実施例1で処理した細胞を加えることによ
り、約40%の抑制を示した(図4)。それに対して、
TT−T細胞活性化の系では等量の細胞数を加えてもま
ったく抑制が観察されず、逆に[3H]の取り込み増が観察
された(図5)。すなわち抗原、この場合はPPDに対
して特異的な抑制性細胞が誘導されたことを示してい
る。つぎに図6に示すように、実施例2で抗体処理した
細胞を等量(30μl/ウェル)添加したもの(抗CD
3抗体OKT3と抗CD2抗体TS2/18、抗CD3
抗体OKT3と抗CD2抗体35.1)でPPD−T細
胞活性化の系への影響を調べたところ共に95%以上の
抑制を示した。それに対してIL−2処理では約90
%、PPD処理のみでは約35%の抑制を示しただけであ
った。抗体等による増殖により抑制能の低下があるかど
うかを検討するために、単位細胞あたりの抑制能を算出
した。なお陽性対照としては、処理した細胞を加えずP
PDのみを加えた場合のT細胞の[3H]の取り込み量を用
いた。
【0026】その結果、図7に示すように、抗体処理、
特に抗CD3抗体OKT3と抗CD2抗体35.1の組
み合わせによる増殖後では単位細胞あたりの抑制能はコ
ントロールの無処理と比べ、まったく低下していなかっ
た。抗CD3抗体OKT3と抗CD2抗体TS2/18
との組み合わせでは25%の低下、IL−2処理では約
半分に低下していることが観察された。これらから抗C
D3抗体OKT3と抗CD2抗体35.1の組み合わせ
が抗原特異的抑制能を保ったまま細胞を増殖させるため
に最も適したものであることがわかった。
【0027】以上の結果は、抗原で処理することで誘導
した抗原特異的抑制性細胞を固定化した抗体で処理する
ことにより、その抑制能を失うことなく、増殖させるこ
とを可能にすることを示す例であり、実施例に含まれな
い抗CD3抗体OKT3単独の系、異なるエピトープを
認識する2種類の抗CD2抗体の組み合わせでT細胞を
増殖させる系でも同様の効果が期待できる。
【0028】
【発明の効果】本発明により、抗原存在下での培養で誘
導された抗原特異的免疫抑制性細胞を、抗体あるいはサ
イトカインを固定化した培養器具で効率的に増殖させる
ことで、免疫系の異常亢進を伴う疾患の効率的で副作用
の少ない治療システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の培養器具の一実施例の説明図であっ
て、(a)はヒト細胞添加時の断面説明図、(b)は培
養時(a)を90゜回転させた断面説明図、および
(c)は(b)の上面説明図である。
【図2】本発明の培養器具の他の実施例の断面説明図で
ある。
【図3】本発明の実施例1により得られた抗原特異的免
疫抑制性細胞を実施例2で示すところの抗体あるいはI
L−2固定化培養器具で処理した後の細胞数を表す。
【図4】実施例1で得られた細胞のPPD抗原特異的活
性化反応に対する抑制能力を示す図である。
【図5】実施例2で得られた細胞のTT抗原特異的活性
化反応に対する抑制能力を示す図である。
【図6】実施例2で得られた細胞を実施例3に記載した
条件、抗体あるいはIL−2を固定化した培養器具で培
養した後の培養液単位体積あたりに含まれる細胞による
PPD抗原特異的活性化反応の抑制能力を示す図であ
る。
【図7】実施例2で得られた細胞を実施例3に記載した
条件、抗体あるいはIL−2を固定化した培養器具で培
養した後の培養液の単位細胞あたりのPPD抗原特異的
活性化反応の抑制能力(PPD処理のみを100とす
る)を示す図である。
【符号の説明】
1 ヒト細胞 2、22 細胞懸濁液 3、23 通気性フィルター 4 細胞回収口 25 球形微粒子 26 コック 27 側壁
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI A61K 38/28 ABG C07K 16/24 39/00 16/28 C07K 16/24 G01N 33/564 B 16/28 A61K 37/02 ADP G01N 33/564 37/26 ABG

Claims (30)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1種以上の抗原存在下で培養したヒト細
    胞を、1種以上の蛋白質を固定化した培養器具で、さら
    に培養することによる該抗原に特異的免疫抑制性細胞の
    誘導増殖方法。
  2. 【請求項2】 固定化する蛋白質がヒト細胞の表面抗原
    に対する抗体である請求項1記載の誘導増殖方法。
  3. 【請求項3】 固定化する抗体が抗CD2抗体および抗
    CD3抗体である請求項1記載の誘導増殖方法。
  4. 【請求項4】 抗CD2抗体がCD2抗原の異なるエピ
    トープを認識する2種以上の抗体である請求項3記載の
    誘導増殖方法。
  5. 【請求項5】 固定化する抗体が抗CD3抗体OKT3
    である請求項3記載の誘導増殖方法。
  6. 【請求項6】 固定化する抗体が抗CD2抗体TS2/
    18と抗CD3抗体OKT3である請求項3記載の誘導
    増殖方法。
  7. 【請求項7】 固定化する抗体が抗CD2抗体35.1
    と抗CD3抗体OKT3である請求項3記載の誘導増殖
    方法。
  8. 【請求項8】 固定化する蛋白質が1種以上のサイトカ
    インである請求項1記載の誘導増殖方法。
  9. 【請求項9】 サイトカインがIL−2である第8項記
    載の誘導増殖方法。
  10. 【請求項10】 抗原が自己免疫疾患の原因となる抗原
    である請求項1記載の誘導増殖方法。
  11. 【請求項11】 自己免疫疾患がインスリン依存性糖尿
    病である請求項10記載の誘導増殖方法。
  12. 【請求項12】 抗原がインスリン、プロインスリン、
    又はGADである請求項10又は11記載の誘導増殖方
    法。
  13. 【請求項13】 自己免疫疾患がリウマチである請求項
    10記載の誘導増殖方法。
  14. 【請求項14】 抗原が異種および同種の移植臓器由来
    のものである請求項1記載の誘導増殖方法。
  15. 【請求項15】 抗原が異種および同種の移植臓器由来
    のもので、該移植臓器の拒絶に関与するところの抗原で
    ある請求項1記載の誘導増殖方法。
  16. 【請求項16】 1種以上の抗原存在下で培養したヒト
    細胞を、1種以上の蛋白質を固定化した培養器具で、さ
    らに培養することによる該抗原に特異的免疫抑制性細胞
    の培養器具。
  17. 【請求項17】 固定化する蛋白質がヒト細胞の表面抗
    原に対する抗体である請求項16記載の培養器具。
  18. 【請求項18】 固定化する抗体が抗CD2抗体および
    抗CD3抗体である請求項16記載の培養器具。
  19. 【請求項19】 抗CD2抗体がCD2抗原の異なるエ
    ピトープを認識する2種以上の抗体である請求項18記
    載の培養器具。
  20. 【請求項20】 固定化する抗体が抗CD3抗体OKT
    3である請求項18記載の培養器具。
  21. 【請求項21】 固定化する抗体が抗CD2抗体TS2
    /18と抗CD3抗体OKT3である請求項18記載の
    培養器具。
  22. 【請求項22】 固定化する抗体が抗CD2抗体35.
    1と抗CD3抗体OKT3である請求項18記載の培養
    器具。
  23. 【請求項23】 固定化する蛋白質が1種以上のサイト
    カインである請求項16記載の培養器具。
  24. 【請求項24】 サイトカインがIL−2である請求項
    23記載の培養器具。
  25. 【請求項25】 抗原が自己免疫疾患の原因となる抗原
    である請求項16記載の培養器具。
  26. 【請求項26】 自己免疫疾患がインスリン依存性糖尿
    病である請求項25記載の培養器具。
  27. 【請求項27】 抗原がインスリン、プロインスリン、
    又はGADである請求項25又は26記載の培養器具。
  28. 【請求項28】 自己免疫疾患がリウマチである請求項
    25項記載の培養器具。
  29. 【請求項29】 抗原が異種および同種の移植臓器由来
    のものである請求項16記載の培養器具。
  30. 【請求項30】 抗原が異種および同種の移植臓器由来
    のもので、該移植臓器の拒絶に関与するところの抗原で
    ある請求項16記載の培養器具。
JP9301966A 1997-11-04 1997-11-04 抗原特異的免疫抑制性細胞の誘導増殖方法およびこれに用いる培養器具 Pending JPH11127851A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9301966A JPH11127851A (ja) 1997-11-04 1997-11-04 抗原特異的免疫抑制性細胞の誘導増殖方法およびこれに用いる培養器具

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP9301966A JPH11127851A (ja) 1997-11-04 1997-11-04 抗原特異的免疫抑制性細胞の誘導増殖方法およびこれに用いる培養器具

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH11127851A true JPH11127851A (ja) 1999-05-18

Family

ID=17903279

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP9301966A Pending JPH11127851A (ja) 1997-11-04 1997-11-04 抗原特異的免疫抑制性細胞の誘導増殖方法およびこれに用いる培養器具

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH11127851A (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7115259B2 (en) 1997-11-05 2006-10-03 University Of Southern California Use of cytokines and mitogens to inhibit pathological immune responses
JP2015057072A (ja) * 2014-12-11 2015-03-26 テルモ株式会社 医療用細胞シートの製造方法
JP2015070852A (ja) * 2014-12-26 2015-04-16 テルモ株式会社 シート状細胞培養物の製造方法
JP2015171382A (ja) * 2015-06-25 2015-10-01 テルモ株式会社 シート状細胞培養物の製造方法
JP2019115366A (ja) * 2019-04-25 2019-07-18 テルモ株式会社 医療用細胞シートの製造方法
JP2021027839A (ja) * 2020-11-25 2021-02-25 テルモ株式会社 医療用細胞シートの製造方法

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7115259B2 (en) 1997-11-05 2006-10-03 University Of Southern California Use of cytokines and mitogens to inhibit pathological immune responses
JP2015057072A (ja) * 2014-12-11 2015-03-26 テルモ株式会社 医療用細胞シートの製造方法
JP2015070852A (ja) * 2014-12-26 2015-04-16 テルモ株式会社 シート状細胞培養物の製造方法
JP2015171382A (ja) * 2015-06-25 2015-10-01 テルモ株式会社 シート状細胞培養物の製造方法
JP2019115366A (ja) * 2019-04-25 2019-07-18 テルモ株式会社 医療用細胞シートの製造方法
JP2021027839A (ja) * 2020-11-25 2021-02-25 テルモ株式会社 医療用細胞シートの製造方法
JP2022082790A (ja) * 2020-11-25 2022-06-02 テルモ株式会社 医療用細胞シートの製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20210115401A1 (en) Methods and Materials for the Generation of Regulatory T Cells
US10806777B2 (en) Method for allogeneic cell therapy
EP0957160B1 (en) Method for inducing immunosuppressive cells and culturing device to be used therefor
JP2001520509A (ja) 自己免疫細胞療法:細胞組成物、方法およびヒト疾患の治療への応用
US20020182730A1 (en) Autologous immune cell therapy: cell compositions, methods and applications to treatment of human disease
TW200403340A (en) Compositions and methods for restoring immune repertoire in patients with immunological defects related to autoimmunity and organ or hematopoietic stem cell transplantation
US20010031253A1 (en) Autologous immune cell therapy: cell compositions, methods and applications to treatment of human disease
JP5464641B2 (ja) 制御性t細胞製造方法及び制御性t細胞増幅装置
JPH11127851A (ja) 抗原特異的免疫抑制性細胞の誘導増殖方法およびこれに用いる培養器具
JP4917201B2 (ja) 臍帯血移植後の腫瘍および各種感染症の予防・治療用製剤、臍帯血移植後の移植臍帯血幹細胞の生着促進用製剤、臍帯血移植後の腫瘍および各種感染症の予防・治療用製剤ならびに臍帯血移植後の移植臍帯血幹細胞の生着促進用製剤の製造方法。
US8323969B2 (en) Preparation of regulatory T cells using ICAM-1 co-stimulation
US20080267972A1 (en) Donor Lymphocyte Infusion of T Cells For the Treatment of Cancer
JP2639834B2 (ja) 免疫記憶細胞懸濁液およびその調製方法
JPH11253154A (ja) 抗原特異的免疫抑制性細胞の誘導方法およびこれに用いる培養器具
JPH0466210B2 (ja)
CN100379852C (zh) 用于在免疫缺陷患者体内恢复免疫响应的组合物和方法
JPH10295368A (ja) ガンマー・デルタt細胞の製造法及び免疫治療剤
JPWO2006101205A1 (ja) T細胞の活性化方法及び活性化t細胞製造用キット
JPH09275976A (ja) 活性化t細胞の調製方式
KR20050023347A (ko) 자가면역 및 기관 또는 조혈 줄기 세포 이식과 관련된면역학적 결함을 갖는 환자에서 면역 레퍼토리를 복구하는방법 및 이를 위한 조성물

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20051101

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20060425