JPH11123570A - 溶接部の接合強度に優れたチタンクラッド鋼板の製造方法 - Google Patents

溶接部の接合強度に優れたチタンクラッド鋼板の製造方法

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JPH11123570A
JPH11123570A JP29788197A JP29788197A JPH11123570A JP H11123570 A JPH11123570 A JP H11123570A JP 29788197 A JP29788197 A JP 29788197A JP 29788197 A JP29788197 A JP 29788197A JP H11123570 A JPH11123570 A JP H11123570A
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steel sheet
clad steel
hot
rolling
welding
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JP29788197A
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English (en)
Inventor
Kunikazu Tomita
邦和 冨田
Hideki Matsuoka
秀樹 松岡
Naoyuki Asanuma
直行 浅沼
Toshio Takano
俊夫 高野
Tetsuo Sakiyama
哲雄 崎山
Shinichi Shiokawa
伸一 塩川
Nobuhito Shiotani
昇史 塩谷
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JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶接部においても合わせ材/母材界面の接合
強度が確保できる薄板チタンクラッド鋼板を製造する。 【解決手段】 溶接時の熱影響による金属間化合物生成
の影響が顕在化しないように熱延ままでの拡散層の厚み
を低減することにより、溶接部での接合強度を改善する
もので、C:0.02%以下、Mn:0.8%以下の
母材炭素鋼に、TiまたはTi合金からなる合わせ材を
中間媒接材を介することなく重ね、その周囲を1/10
3Torr以下の真空中で溶接してスラブとなす工程、前
記スラブを950℃以下の温度に加熱する工程、前記
加熱スラブを合計圧下率85%以上で熱間圧延する工
程、前記熱間圧延されたチタンクラッド鋼板を圧延終
了後から巻取りまでの平均冷却速度が6℃/秒以上とな
るように冷却する工程、及び前記冷却されたチタンク
ラッド鋼板を450℃以下で巻取る工程、を有すること
を特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はチタンクラッド鋼板
の製造方法、特に、溶接部での合わせ材/母材界面の接
合強度に優れた比較的板厚の薄いチタンクラッド鋼板
を、既存の薄板用熱間圧延ラインを用いて製造すること
ができるチタンクラッド鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】チタンはその優れた耐食性から防食材料
として最適なもののひとつに数えられるが、その反面高
価であり、このため近年ではコスト面で有利なチタンク
ラッド鋼板の需要が増大している。
【0003】クラッド鋼板の製造方法としては、溶鋼レ
ベルでクラッド材を作る鋳込み法と、爆着法及び圧延法
に代表される固相接合法が一般的であるが、チタンクラ
ッド鋼板の場合には、チタンと鋼の界面に脆いFe−T
i系金属間化合物や炭化物(TiC)等の脆弱層が生成
しやすく、このような脆弱層が生成すると容易に界面剥
離を生じることから鋳込み法を用いることができず、こ
のため固相接合法が広く採用されている。
【0004】この固相接合法のうち、爆着による方法は
金属間化合物や炭化物等の脆弱層を生じる恐れがなく、
接合強度に対する信頼性が高いため、現在広く採用され
ているが、生産性が低く、製造コストが高い上に、板厚
の薄いものが製造できないという欠点がある。一方、圧
延法、特に熱間圧延による拡散接合は、生産性が高く且
つ板厚が比較的自由にとれることなどから爆着法に比べ
て有利であり、このため圧延法の欠点である接合界面で
の脆弱層(金属間化合物等からなる脆弱層)の生成を抑
え、接合強度を確保するための技術が、主に厚板材に関
して種々提案されてきた。
【0005】さらに最近では、メガフロートや橋脚等の
海洋構造物或いは鋼管杭等の飛沫干満帯の防食にチタン
クラッド鋼板をライニングして用いることが提案され、
このようなライニング部材として用いられる板厚の比較
的薄い、いわゆる薄板サイズのチタンクラッド鋼板の製
造方法に関しても、以下のような提案がなされている。
【0006】すなわち、特開昭63−144881号公
報や特公平5−65272号公報には、中間媒接材に銅
を用いた薄板チタンクラッド鋼板に関して、熱間圧延中
にチタン−銅融液を絞り出し、金属新生面を得ることで
接合強度を高める技術が開示されている。また、特公平
7−57425号公報には、熱間圧延時のパス間時間を
30秒以内に制限することで、また特開平6−1550
50号公報には巻取温度を450〜750℃に制限する
ことで、それぞれ薄板チタンクラッド鋼板の接合強度が
向上することが述べられている。
【0007】さらに、特開平8−141754号公報及
び特開平8−276283号公報では、熱間圧延時の圧
延温度と圧下率を制限し、金属間化合物や炭化物を接合
強度に悪影響を及ぼさない大きさまで破砕するととも
に、圧延中に新生面を形成させ、この新生面への金属間
化合物や炭化物の生成を抑えることで接合強度を確保す
ることが提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の方法では熱間圧延ままの接合強度には問題のない薄板
チタンクラッド鋼板は得られるものの、製造された薄板
チタンクラッド鋼板を溶接に供した場合に、溶接部での
合わせ材/母材界面の接合強度が大幅に低下するという
問題を生じる。
【0009】薄板チタンクラッド鋼板は、上述したライ
ニング部材をはじめとする大半の用途においてTIG或
いはMAG等で溶接して用いられる。従来、特公平7−
236号公報、特公平7−68711号公報、特公平8
−302号公報、特開平7−34480号公報等には薄
板チタンクラッド鋼板の溶接施工方法に関する提案もな
されているが、薄板チタンクラッド鋼板の場合、溶接施
工方法を適正化するだけでは上述したような接合強度上
の問題を回避できない。
【0010】一般に溶接継手を含む部材の場合、応力が
集中して強度が問題となる部位はその継手部であるた
め、この継手部の溶接を健全に行うことが前提となる。
さらに、薄板チタンクラッド鋼板は、厚板サイズとは異
なり合わせ材の厚さが薄いため(例えば、合わせ材厚1
mm、母材厚4mm、全厚5mm)、合わせ材面を溶接
した場合には、熱影響部が合わせ材と母材の界面にも及
ぶ点を考慮する必要がある。
【0011】周知のように、チタンクラッド鋼板は高温
下で合わせ材/母材界面に脆弱なFe−Ti系金属間化
合物を生じ易く、従来の製造方法による薄板チタンクラ
ッド鋼板では、上記溶接時の熱影響によって合わせ材/
母材界面にこのFe−Ti系金属間化合物が生成する結
果、溶接部近傍では合わせ材/母材界面の接合強度が大
幅に低下する。このため溶接自体は健全に行われ、溶着
金属部が十分な強度を有する場合にも、合わせ材と母材
の間で容易に界面剥離を生じ、溶接部全体としては十分
な強度が得られない。
【0012】したがって本発明の目的は、このような問
題を解決し、溶接時に熱影響を受けた場合でも溶接部で
の合わせ材/母材界面の接合強度が低下することがな
く、従来に比べて溶接部の接合強度が改善された薄板チ
タンクラッド鋼板を製造することができるチタンクラッ
ド鋼板の製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、薄板チタ
ンクラッド鋼板の溶接部での合わせ材/母材界面の接合
強度の改善について鋭意検討を重ね、以下のような知見
を得た。 (1) 薄板チタンクラッド鋼板の接合強度は、従来は専ら
熱間圧延ままの値をもって評価されていたが、上述した
ように薄板チタンクラッド鋼板の大半は溶接して用いら
れるため、接合強度としては溶接部での値がより重要と
なる。
【0014】(2) チタンクラッド鋼板の製造において
は、TiとFeの相互の拡散により合わせ材/母材界面
に拡散層が形成され、両者の接合がなされる。このため
熱間圧延ままでの高い接合強度を得ようとする従来技術
にあっては、金属間化合物や炭化物の生成を抑制しつ
つ、熱間圧延ままで上記拡散層を如何に効果的に形成さ
せるかにポイントをおいた検討がなされてきた。
【0015】(3) しかし、溶接時の熱影響によるFe−
Ti系金属間化合物の生成は、拡散層のうち、TiとF
eの相互拡散がある程度進展している領域において、熱
影響によりさらに拡散が進展する結果生じる。このため
熱間圧延ままで拡散層をある程度の厚みにまで成長させ
る従来技術では、この相互拡散が進展した領域の厚さも
当然厚く、溶接時に生成するFe−Ti系金属間化合物
の厚さも厚くなり、その影響が合わせ材/母材界面の接
合強度の低下となって顕在化する。 (4) これに対し、拡散層の成長を抑制して熱間圧延まま
での厚みを小さくした場合には、相互拡散が進展してい
る領域の厚さも薄く、溶接時に生成するFe−Ti系金
属間化合物の厚さも薄いため、その影響が合わせ材/母
材界面の接合強度の低下等として顕在化することはな
い。
【0016】以上のような知見に基づき、本発明では、
熱間圧延ままの接合強度を過大に高めることなく必要な
値を確保するに止めることとし、溶接時の熱影響による
金属間化合物生成の影響が顕在化しないように熱間圧延
ままでの拡散層の厚みを従来よりも低減することで、溶
接部での合わせ材/母材界面の接合強度を改善するよう
にしたものである。なお、本発明では熱間圧延ままの接
合強度として、JISを参照して140N/mm2以上
を確保することとした。
【0017】すなわち、本発明の製造方法は、下記工程
(1)〜(5)を有することを特徴とする溶接部の接合強度に
優れたチタンクラッド鋼板の製造方法である。 (1) C含有量が0.02wt%以下、Mn含有量が0.
8wt%以下の母材炭素鋼に、TiまたはTi合金から
なる合わせ材を中間媒接材を介することなく重ね、その
周囲を1/103Torr以下の真空中で溶接してスラ
ブとなす工程 (2) 前記スラブを950℃以下の温度に加熱する工程 (3) 前記加熱されたスラブを合計圧下率85%以上で熱
間圧延する工程 (4) 前記熱間圧延されたチタンクラッド鋼板を、圧延終
了後から巻取りまでの平均冷却速度が6℃/秒以上とな
るように冷却する工程 (5) 前記冷却されたチタンクラッド鋼板を450℃以下
で巻取る工程 また本発明では、熱間圧延されたチタンクラッド鋼板の
圧延終了後から巻取りまでの平均冷却速度を15℃/秒
以上とすることが特に好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細をその限定理
由ともに説明する。本発明の製造方法は少なくとも上述
した(1)〜(5)の工程からなるもので、これらの工程に従
い、合わせ材と母材とをクラッドスラブに組み立て、こ
のスラブを所定の温度に加熱した後、熱間圧延を行い、
この熱間圧延されたクラッド鋼板を冷却し、引き続きコ
イルに巻き取ることにより所望のチタンクラッド鋼板を
得るものである。
【0019】熱間圧延を利用してチタンクラッド鋼板を
製造する場合、熱間圧延に先立ち母材と合わせ材を重ね
合わせてスラブとするが、その際には、スラブ加熱時や
熱間圧延時の合わせ材/母材界面の酸化を防止するた
め、スラブの周囲を溶接し、合わせ材/母材界面を密閉
する必要がある。また、溶接中における合わせ材/母材
界面の酸化を防止するため、スラブの溶接は1/103
Torr以下の真空中で行う必要がある。
【0020】なお、母材成分を本発明の範囲とし、本発
明範囲の製造条件に従う限りは、合わせ材/母材界面に
熱間圧延ままで金属間化合物や炭化物を生成することが
ないため、本発明では合わせ材/母材間での中間媒接材
は用いない。中間媒接材を用いることは無用なコスト上
昇を招くだけでなく、合わせ材/母材界面に異質な中間
媒接材が存在すること自体により接合強度が低下した
り、中間媒接材の種類によっては合わせ材または母材と
の間で低融点の金属間化合物や低融点相が生成し、薄板
チタンクラッド鋼板を溶接した際にこれらが溶融して合
わせ材/母材界面の接合強度を低下させたりする恐れが
あり、この点からも本発明では中間媒接材は使用しな
い。
【0021】先に述べたように、本発明では溶接時の熱
影響による金属間化合物生成の悪影響が顕在化しないよ
うにするため、熱間圧延ままでの拡散層の厚みを熱間圧
延ままでの所定の接合強度が確保できる限度で低減させ
るものである。このため本発明では、スラブ加熱時の拡
散層の生成を抑制するために、スラブ加熱温度を950
℃以下とする。また、スラブ加熱温度を950℃以下と
すれば、スラブ加熱時に合わせ材/母材界面に金属間化
合物を生成することもない。なお、スラブ加熱温度が8
00℃未満では、圧延温度が低くなり過ぎるため圧延荷
重が増大し、圧延機の負荷が過剰となるため、スラブ加
熱温度は800℃を下限とすることが好ましい。
【0022】スラブ加熱時及び熱間圧延中に生成、成長
した拡散層は熱間圧延時の圧下によってその厚さを減じ
ていくが、溶接による金属間化合物生成の悪影響が顕在
化しないように熱間圧延ままでの拡散層の厚みを低減さ
せ、溶接部における合わせ材/母材界面の接合強度の低
下を防ぐためには、スラブを合計圧下率85%以上で熱
間圧延する必要がある。なお、熱間圧延中の拡散層の生
成、成長はスラブ加熱時に比べると軽微であるため、熱
間圧延の際の各圧延パスの温度、圧下率は特段規定する
必要はなく、合計圧下率を85%以上とすれば拡散層の
厚みを所定の厚さまで減じることができる。
【0023】熱間圧延されたチタンクラッド鋼板は、ラ
ンナウトで冷却された後コイルに巻取られるが、本発明
ではこの際の巻取温度を適正化することが特に重要であ
る。巻取温度が高い場合には、熱間圧延中に厚さを減じ
た拡散層が巻取り後に再び厚さを増すことに加え、Ti
とFeの拡散も進展する結果、溶接時に金属間化合物の
生成サイトとなるTiとFeの相互拡散が進展した領域
の厚さも増大し、溶接時の金属間化合物生成の影響が合
わせ材/母材界面の接合強度の低下となって顕在化して
しまう。このため本発明では以下に述べるような検討を
行い、巻取温度の適正化を図った。
【0024】表1に記載の鋼番Aからなる母材の上に、
同じく表1に記載のチタンからなる合わせ材を中間媒接
材を介在させることなく直接重ね、合わせ材チタンの表
面に剥離材となるアルミナを塗布した後、さらに合わせ
材チタン、母材をこの順に重ね、これらの周囲を6×1
/104Torrの真空雰囲気中で溶接することで上下
対称のサンドイッチ式のクラッドスラブを組み立てた。
このクラッドスラブを900℃に加熱後、合計圧下率9
4%、仕上げ温度750℃で熱間圧延し、ランナウト冷
却の後、種々の巻取温度で巻取り、次いで合わせ材面を
上下に剥離することで、合わせ材厚1mm、母材厚4m
m、全厚5mmのチタンクラッド鋼板を2枚得た。な
お、仕上げ圧延後巻取りに至るまでのランナウト冷却で
は、通板速度とスプレー水量を調節することで、クラッ
ド鋼板の平均冷却速度を概略10℃/秒に揃えた。
【0025】これらのチタンクラッド鋼板の熱間圧延ま
までの接合強度をJISの剪断強さ試験に準じた方法で
測定した。さらに、溶接時の熱影響による接合強度の変
化を知るために、試験片を50℃/秒で1200℃まで
急速加熱して、1200℃に5秒間保持した後、直ちに
放冷し、この溶接再現熱サイクル付与後の接合強度を熱
間圧延ままと同様の方法で測定した。このようにして得
られたチタンクラッド鋼板の熱間圧延まま及び溶接再現
熱サイクル付与後の合わせ材/母材界面の接合強度(n
=3本の上下限値と平均値)を巻取温度との関係で整理
した結果を図1に示す。
【0026】図1によれば、熱間圧延ままの接合強度は
巻取温度が400℃を超えると上昇する傾向を示すが、
巻取温度が400℃以下であっても本発明の目標である
140N/mm2以上の接合強度は確保される。これに
対し、溶接時の熱影響が付加された場合に相当する溶接
再現熱サイクル付与後の接合強度は、巻取温度が450
℃以下では160N/mm2以上と十分な値を示すが、
巻取温度が450℃を超えると、上述したように巻取後
に拡散層やTiとFeの相互拡散が進展した領域の肥大
化を生じ、溶接(溶接再現熱サイクル付与)による金属
間化合物生成の悪影響が顕在化する結果、接合強度が1
20N/mm2以下に低下する。また、接合強度のバラ
ツキも増大し、下限値が40N/mm2程度に低下する
場合もある。
【0027】また、図1は溶接再現熱サイクルとして加
熱温度を1200℃とした場合の結果であるが、加熱温
度を1000℃、1100℃、1300℃とした場合に
もほぼ同様の結果が得られた。また、合わせ材と母材の
種類、クラッドスラブでの或いは熱間圧延後の合わせ材
と母材の板厚比、熱延板の全厚さ、熱延条件等を本発明
範囲内で種々変えて同様の試験を行った場合でも、図1
とほぼ同様の結果が得られた。
【0028】したがって、巻取温度をTiとFeの拡散
をほぼ無視できる450℃以下とすれば、巻取後に拡散
層の厚みやTiとFeの相互拡散が進展した領域の厚み
は増すことがなく、溶接時の熱影響による金属間化合物
生成の悪影響が顕在化することがないため、熱間圧延ま
まで140N/mm2以上の接合強度が確保されるとと
もに、溶接による接合強度の低下を防止できる。このた
め、本発明では巻取温度を450℃以下と規定する。な
お、巻取温度に下限はなく、常温で巻き取ってもよい。
【0029】熱間圧延終了後、巻取りに至るまでの冷却
中にも拡散層の成長やTiとFeの相互拡散は進展する
ため、本発明ではランナウト上での冷却速度の適正化も
重要である。以下、これについて説明する。図1と同
様、表1に記載のチタンを合わせ材に、鋼番Aを母材に
用い、両者を中間媒接材を介在させることなく直接重
ね、さらに、合わせ材チタンの上に剥離材となるアルミ
ナを介して鋼番Aと同一成分、同一板厚の鋼を犠牲材と
して重ね、これらの周囲を6×1/104Torrの真
空雰囲気中で溶接してセミサンドイッチ式のクラッドス
ラブを組み立てた。このクラッドスラブを930℃に加
熱後、合計圧下率95%、仕上げ温度780℃で熱間圧
延し、種々の冷却速度でランナウト冷却した後、400
℃で巻取り、次いで犠牲材を剥離することで、合わせ材
厚1mm、母材厚3mm、全厚4mmのチタンクラッド
鋼板を得た。なお、仕上げ圧延後、巻取りに至るまでの
ランナウト冷却では、冷却速度に合わせて通板速度とス
プレー水量を適宜調節した。
【0030】これらのチタンクラッド鋼板の合わせ材/
母材界面の接合強度を、上記図1に関する製造試験と同
様の要領で、熱間圧延まま及び溶接時の熱影響が付加さ
れた場合に相当する溶接再現熱サイクル付与後について
測定し(溶接再現熱サイクルの加熱温度1200℃、接
合強度は測定値のバラツキが小さかったためn=3本の
平均値)、この接合強度を平均冷却速度との関係で整理
した結果を図2に示す。
【0031】図2によれば、熱間圧延ままの接合強度は
ランナウトでの冷却速度にはあまり依存せず、平均冷却
速度の上昇に伴って接合強度が僅かに低下するだけで、
何れの平均冷却速度でも本発明の目標である140N/
mm2以上の接合強度は確保される。一方、溶接時の熱
影響が付加された場合に相当する溶接再現熱サイクル付
与後の接合強度については、平均冷却速度が6〜15℃
/秒の範囲にあれば熱間圧延ままとほぼ同等の値が得ら
れ、また、平均冷却速度が15℃/秒以上では熱間圧延
ままよりも40N/mm2程度高い値が得られるのに対
し、平均冷却速度が6℃/秒未満では、上述したように
冷却中に拡散層やTiとFeの相互拡散が進展した領域
の肥大化を生じ、溶接(溶接再現熱サイクル付与)によ
る金属間化合物生成の悪影響が顕在化する結果、接合強
度は熱間圧延ままに比べて大きく低下し、130N/m
2以下の値しか得られなくなる。
【0032】なお、平均冷却速度が15℃/秒以上の場
合に、溶接再現熱サイクル付与後の接合強度が熱間圧延
ままに比べて増加する理由は必ずしも明らかではない
が、拡散層やTiとFeの相互拡散領域の生成状況との
関係で、溶接再現熱サイクルの付与が金属間化合物の生
成よりもTiとFeの相互拡散の進展に働き、接合強度
を上昇させることが考えられる。
【0033】また、図2は溶接再現熱サイクルとして加
熱温度を1200℃とした場合の結果であるが、加熱温
度を1000℃、1100℃、1300℃とした場合に
もほぼ同様の結果が得られた。また、合わせ材と母材の
種類、クラッドスラブでの或いは熱間圧延後の合わせ材
と母材の板厚比、熱延板の全厚さ、熱延条件等を本発明
範囲内で種々変えて同様の試験を行った場合でも、図2
とほぼ同様の結果が得られた。
【0034】したがって、熱間圧延終了後、巻取りに至
るまでの平均冷却速度を6℃/秒以上とすれば、冷却中
に拡散層の厚みやTiとFeの相互拡散が進展した領域
の厚みは増すことがなく、溶接時の熱影響による金属間
化合物生成の悪影響が顕在化することがないため、熱間
圧延ままで140N/mm2以上の接合強度が確保され
るとともに、溶接による接合強度の低下を防止できる。
さらに、平均冷却速度を15℃/秒以上とした場合に
は、溶接後に熱間圧延ままよりも40N/mm2程度も
高い接合強度を得ることができる。このため、本発明で
は熱間圧延終了後、巻取りに至るまでの平均冷却速度を
6℃/秒以上、より好ましくは15℃/秒以上と規定す
る。なお、平均冷却速度が70℃/秒を超えると、冷却
熱歪により鋼板が形状不良を起こすおそれがあるため、
平均冷却速度の上限は70℃/秒とすることが好まし
い。
【0035】以上、本発明の製造条件を合わせ材が純T
iである場合を例に説明したが、本発明の製造条件は合
わせ材がTi合金であっても適用できる。但し、Ti合
金中の合金元素の添加量が過大になると合わせ材が硬質
・低延性化し、合わせ材/母材界面における応力集中に
起因して容易に界面剥離を生起するようになる。このた
め熱間圧延ままの接合強度として目標の140N/mm
2以上が確保できなくなるばかりでなく、曲げ性等の加
工性も劣化する。このような観点から、本発明では合わ
せ材にTi合金を用いる場合、Ti合金中の合金元素の
総量は10wt%以下とすることが好ましい。
【0036】母材の成分に関しても、焼入れ性を増大さ
せるC及びMnの含有量が多いと、巻取後の組織がアシ
キュラーフェライトやベイナイト等、低温変態相を含む
ものになったりするため、母材の硬質・低延性化を招
く。このように母材が硬質・低延性化すると、合わせ材
が硬質・低延性化した場合と同様、合わせ材/母材界面
での応力集中に起因して容易に界面剥離を生起するよう
になる。このため熱間圧延ままの接合強度として目標の
140N/mm2以上が確保できなくなるばかりでな
く、曲げ性等の加工性も劣化する。
【0037】このような観点から、本発明ではC含有量
を0.02wt%以下(但し、0wt%の場合を含
む)、Mn含有量を0.8wt%以下(但し、0wt%
の場合を含む)と規定する。また、C含有量が0.02
wt%以下であると、接合強度や加工性を劣化させるT
i炭化物(TiC)が合わせ材/母材界面に生成するこ
とがないため、先に述べたように中間媒接材を用いる必
要もなくなる。
【0038】なお、通常の低炭素鋼に含まれる成分のう
ち、焼入れ性を増大させるのは上記CとMnであるた
め、母材の他の成分は特段規定の必要はなく、通常の成
分範囲でよい。すなわち通常の成分範囲として、Si≦
0.5wt%(但し、0wt%の場合を含む)、P≦
0.03wt%(但し、0wt%の場合を含む)、S≦
0.03wt%(但し、0wt%の場合を含む)、So
l.Al:0.01〜0.08wt%、N≦0.01w
t%(但し、0wt%の場合を含む)程度を含むことが
でき、また、さらに必要に応じてTi、Nb、B等の添
加元素を含んでいてもよい。
【0039】
【実施例】
[実施例1]表1に記載の鋼番Bからなる母材の上に、
同じく表1に記載のチタンからなる合わせ材を中間媒接
材を介在させることなく直接重ね、合わせ材チタンの表
面に剥離材となるアルミナを塗布した後、さらに合わせ
材チタン、母材をこの順に重ね、これらの周囲を6×1
/104Torrの真空雰囲気中で溶接することで上下
対称のサンドイッチ式のクラッドスラブを組み立てた。
このクラッドスラブを920℃に加熱後、仕上げ温度8
00℃で熱間圧延し、ランナウト冷却、巻取りの後、合
わせ材面を上下に剥離することで、合わせ材厚1.3m
m、母材厚4.2mm、全厚5.5mmのチタンクラッ
ド鋼板を2枚得た。その際、熱間圧延での合計圧下率、
ランナウト上の平均冷却速度及び巻取温度を種々変えて
チタンクラッド鋼板を製造した。なお、ランナウト上の
冷却速度を変えるに当っては、通板速度とスプレー水量
を冷却速度に応じて適宜調節した。
【0040】製造されたチタンクラッド鋼板の熱間圧延
ままでの接合強度をJISの剪断強さ試験に準じた方法
で測定した。また、溶接時の熱影響による接合強度の変
化を知るために、試験片を50℃/秒で1200℃まで
急速加熱し、1200℃で5秒間保持した後、直ちに放
冷し、この溶接再現熱サイクル付与後の接合強度を熱間
圧延ままと同様の方法で測定した。
【0041】このようにして得られたチタンクラッド鋼
板の熱間圧延まま及び溶接再現熱サイクル付与後の接合
強度(n=3本の平均値)を、熱間圧延での合計圧下
率、仕上げ圧延後巻取りに至るまでの平均冷却速度、巻
取温度とともに表2に示す。表2によれば、本発明例
(実施例1〜10)はいずれも熱間圧延ままの接合強度
が160〜190N/mm2あり、本発明の目標である
140N/mm2以上の接合強度が確保されている。
【0042】また、本発明例では、溶接時の熱影響が付
加された場合に相当する溶接再現熱サイクル付与後の接
合強度についても熱間圧延ままとほぼ同等の値が得られ
ており、溶接による接合強度の低下はみられない。特
に、仕上げ圧延後巻取りに至るまでの平均冷却速度が1
5℃/秒以上である実施例5〜実施例7においては、溶
接再現熱サイクル付与後の接合強度が熱間圧延ままに比
べて40N/mm2程度も高く、溶接による接合強度の
上昇がみられる。
【0043】一方、母材の成分は本発明範囲にあるが、
製造条件が本発明範囲を外れた比較例(実施例11〜1
6)では、熱間圧延ままの接合強度は高いものの、溶接
再現熱サイクル付与後の接合強度については130N/
mm2以下の値しか得られず、溶接時の熱影響が付加さ
れた場合の接合強度の低下を回避できない。
【0044】[実施例2]表1に記載のチタンを合わせ
材に、鋼番C〜Iを母材に用い、両者を中間媒接材を介
在させることなく直接重ね、さらに合わせ材チタンの上
に剥離材となるアルミナを介して母材と同一成分、同一
板厚の鋼を犠牲材として重ね、これらを6×1/104
Torrの真空雰囲気中で溶接することでセミサンドイ
ッチ式のクラッドスラブを組み立てた。これらのクラッ
ドスラブを880℃に加熱後、仕上げ温度740℃で熱
間圧延し、ランナウト冷却、巻取りの後、犠牲材を剥離
することで、合わせ材厚1.5mm、母材厚4.5m
m、全厚6mmのチタンクラッド鋼板を得た。その際、
熱間圧延での合計圧下率、ランナウト上の平均冷却速度
及び巻取温度を種々変えてチタンクラッド鋼板を製造し
た。なお、ランナウト上の冷却速度を変えるにあたって
は、通板速度とスプレー水量を冷却速度に応じて適宜調
節した。
【0045】このようにして得られたチタンクラッド鋼
板の熱間圧延ままでの接合強度をJISの剪断強さ試験
に準じた方法で測定した。また、溶接時の熱影響による
接合強度の変化を知るために、試験片を50℃/秒で1
200℃まで急速加熱し、1200℃で5秒間保持した
後、直ちに放冷し、この溶接再現熱サイクル付与後の接
合強度を熱間圧延ままと同様の方法で測定した。
【0046】このようにして得られたチタンクラッド鋼
板の熱間圧延まま及び溶接再現熱サイクル付与後の接合
強度(n=3本の平均値)を、熱間圧延での合計圧下
率、仕上げ圧延後巻取りに至るまでの平均冷却速度及び
巻取温度とともに表3に示す。表3によれば、本発明例
(実施例17〜21)はいずれも熱間圧延ままの接合強
度が160〜190N/mm2あり、本発明の目標であ
る140N/mm2以上の接合強度が確保されている。
【0047】また、本発明例では、溶接時の熱影響が付
加された場合に相当する溶接再現熱サイクル付与後の接
合強度についても熱間圧延ままとほぼ同等の値が得られ
ており、溶接による接合強度の低下はみられない。特
に、仕上げ圧延後巻取りに至るまでの平均冷却速度が1
5℃/秒以上である実施例20,21においては、溶接
再現熱サイクル付与後の接合強度が熱間圧延ままに比べ
て40N/mm2程度も高く、溶接による接合強度の上
昇がみられる。
【0048】一方、製造条件は本発明範囲にあるが、母
材の成分が本発明範囲を外れた比較例(実施例22,2
3)では、熱間圧延ままの接合強度が90N/mm2
度と低く、目標値の140N/mm2を大きく下回ると
ともに、熱間圧延ままの接合強度が低いことに起因して
溶接再現熱サイクル付与後の接合強度も80N/mm2
程度と低く、十分な強度が確保されない。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【発明の効果】以上述べたように本発明の製造方法によ
れば、母材の成分と製造条件を適正化するだけで、特段
のコスト上昇を招くことなく熱間圧延ままで十分な接合
強度が確保され、且つ溶接後の接合強度にも優れたチタ
ンクラッド鋼板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】チタンクラッド鋼板の熱間圧延まま及び溶接再
現熱サイクル付与後の合わせ材/母材界面の接合強度
を、熱間圧延後の巻取温度との関係で整理して示したグ
ラフ
【図2】チタンクラッド鋼板の熱間圧延まま及び溶接再
現熱サイクル付与後の合わせ材/母材界面の接合強度
を、熱間圧延終了後巻取りまでの平均冷却速度との関係
で整理して示したグラフ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高野 俊夫 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 崎山 哲雄 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 塩川 伸一 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 塩谷 昇史 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記工程(1)〜(5)を有することを特徴と
    する溶接部の接合強度に優れたチタンクラッド鋼板の製
    造方法。 (1) C含有量が0.02wt%以下、Mn含有量が0.
    8wt%以下の母材炭素鋼に、TiまたはTi合金から
    なる合わせ材を中間媒接材を介することなく重ね、その
    周囲を1/103Torr以下の真空中で溶接してスラ
    ブとなす工程 (2) 前記スラブを950℃以下の温度に加熱する工程 (3) 前記加熱されたスラブを合計圧下率85%以上で熱
    間圧延する工程 (4) 前記熱間圧延されたチタンクラッド鋼板を、圧延終
    了後から巻取りまでの平均冷却速度が6℃/秒以上とな
    るように冷却する工程 (5) 前記冷却されたチタンクラッド鋼板を450℃以下
    で巻取る工程
  2. 【請求項2】 熱間圧延されたチタンクラッド鋼板の圧
    延終了後から巻取りまでの平均冷却速度が15℃/秒以
    上であることを特徴とする請求項1に記載の溶接部の接
    合強度に優れたチタンクラッド鋼板の製造方法。
JP29788197A 1997-10-15 1997-10-15 溶接部の接合強度に優れたチタンクラッド鋼板の製造方法 Pending JPH11123570A (ja)

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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2023510288A (ja) * 2020-01-13 2023-03-13 宝山鋼鉄股▲分▼有限公司 高耐食性ストリップ鋼およびその製造方法

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