JPH11117005A - 金属粉末焼結体の製造方法 - Google Patents

金属粉末焼結体の製造方法

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JPH11117005A
JPH11117005A JP27740697A JP27740697A JPH11117005A JP H11117005 A JPH11117005 A JP H11117005A JP 27740697 A JP27740697 A JP 27740697A JP 27740697 A JP27740697 A JP 27740697A JP H11117005 A JPH11117005 A JP H11117005A
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JP
Japan
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degreasing
setter
sintering
porosity
degreased
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Withdrawn
Application number
JP27740697A
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English (en)
Inventor
Shoji Yamamoto
昇司 山本
Takuya Kodama
卓弥 児玉
Hiroshi Yamaguchi
博史 山口
Jun Inahashi
潤 稲橋
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Olympus Corp
Original Assignee
Olympus Optical Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 脱脂時に脱バインダー及びアウトガス抜きを
良好に行い、変形を防止する。 【解決手段】 金属粉末と有機バインダーとの混練物か
らなるコンパウンドを射出成形した成形体を、連続多孔
質のセラミックス材からなる脱脂治具上に設置した状態
で脱脂を行い、その後、独立多孔質または気孔率0%の
セラミックス材からなる焼結治具上に脱脂体を設置し直
し、この設置状態で焼結を行う。脱脂治具が連続多孔質
のため、脱バインダー及びアウトガス抜きを良好に行う
ことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属粉末と有機バ
インダーとの混練物からなるコンパウンドを射出成形
し、脱脂及び焼結を行って焼結体とする金属焼結体の製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】小物の金属部品の加工には、金属粉末射
出成形方法(Metal Injection Mol
ding、以後MIMという)が用いられている。この
MIMの工程は、金属粉末と有機バインダーとを混練し
粉砕し、若しくはペレット化してコンパウンドとし、こ
のコンパウンドを射出成形機に供給し、加熱シリンダー
内で加熱混練した後、射出成形して成形体(グリーン
体)とする。そして、このグリーン体を焼結用治具であ
るセッター上に設置し、グリーン体からバインダー成分
を除去する脱脂を行って脱脂体(ブラウン体)とし、そ
の後、ブラウン体が設置されているセッターをそのまま
焼結炉内に移して焼結することにより金属焼結体とする
ものである。
【0003】この様なMIMの従来の方法としては、特
開平2−57617号公報及び特開平4−210405
号公報に開示されている方法がある。特開平2−576
17号公報の方法は、焼結に用いるセッターとして、A
23 、BN、SiC等のセラミックスを95%以上
含み、且つ5%以下の気孔率の耐火物とし、このセッタ
ー上にグリーン体を設置して、脱脂及び焼結するもので
ある。
【0004】特開平4−210405号公報の方法は、
高熱伝導性のベース材と、ベース材上に積層されグリー
ン体と接触する酸化物材料との2層構造によってセッタ
ーを成形して焼結に用いるものである。ベース材として
は、黒鉛、窒化硼素、窒化アルミニウム、酸化ベリリウ
ム、炭化珪素等が使用され、グリーン体が接触する酸化
物材料は気孔がない表面平滑となっている。この酸化物
材料の上にグリーン体を設置し、脱脂及び焼結を行うも
のである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来の方法に
使用されているセッターは、成形体(グリーン体)と接
触する面がいずれも気孔がない、すなわち気孔率が0%
であるか、独立気孔の多孔質となっている。ところが、
このようなセッターを用いて脱脂すると、脱脂の際にグ
リーン体とセッターとの接触面からバインダーの滲み出
しが行われにくく、脱バインダー、すなわち脱脂を良好
に行うことができない。また、バインダーが分解したと
きに発生するアウトガスもセッターから抜けにくくな
り、このため、アウトガスによる割れ、膨れ等の変形が
生じる。
【0006】このような変形を発生させずに脱脂するに
は、脱脂の昇温勾配を緩やかにする必要があり、脱脂に
長時間を要している。特に大物、厚肉形状のグリーン体
では、脱バインダー時にアウトガスが多く発生するた
め、割れや膨れ等の変形防止のために脱脂時の昇温勾配
を非常に緩やかにする必要があり、脱脂時間がさらに長
時間となっている。又、グリーン体がセッターと接触す
る設置面近辺が脱脂されにくいため、設置面近傍にバイ
ンダーが残留し、焼結体の品質を損ねている。
【0007】このようなことから、多孔質のセッターを
使用して脱脂することにより、バインダーをセッターの
多孔に吸収させることがなされているが、脱脂の際にバ
インダーと共に金属粉末が流出してセッターと焼き付き
を生じ、品質が低下するばかりでなく、接触面の平滑度
も低下する新たな問題を生じている。
【0008】これに対し、グリーン体形状に合わせたガ
ス抜き貫通孔をセッターに形成してアウトガスの抜けを
行うことが考えられるが、製造される各部品の形状毎に
セッターを加工する必要があり、セッターの製造が面倒
であると共に、セッターコストが高騰する。しかも、こ
のように加工したセッターでは、部分的には脱バインダ
ー性が向上しても、成形体の設置面からの均等な脱バイ
ンダーが行われにくいため、局所的にバインダーが残留
して、焼結体の品質を損ねる問題が生じる。
【0009】本発明は、このような従来の問題点を考慮
してなされたものであり、脱脂時の脱バインダーおよび
アウトガスの抜けを良好に行って変形を防止することが
できると共に、脱脂の工程時間の短縮を可能とし、しか
も、設置面からの均等な脱バインダーを可能として局所
的なバインダーの残留を防止することができ、これらに
より良好な品質の金属粉末焼結体を製造することができ
る金属粉末焼結体の製造方法を提供することを目的とす
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項1の発明は、金属粉末と有機バインダーとの
混練物からなるコンパウンドを射出成形した成形体を、
連続多孔質のセラミックス材からなる脱脂治具上に設置
した状態で脱脂を行い、その後、独立多孔質または気孔
率0%のセラミックス材からなる焼結治具上に脱脂体を
設置し直し、この設置状態で焼結を行うことを特徴とす
る。
【0011】請求項2の発明は、金属粉末と有機バイン
ダーとの混練物からなるコンパウンドを射出成形した成
形体を、連続多孔質のセラミックス材からなる脱脂治具
上に設置し、成形体の重量に対する脱脂体の重量減少率
(X)が9.00(%)≦X≦9.30(%)の範囲に
なるまで脱脂を行い、その後、独立多孔質または気孔率
0%のセラミックス材からなる焼結治具上に脱脂体を設
置し直し、この設置状態で焼結を行うことを特徴とす
る。ここで、脱脂体の重量減少率(X)は、以下の式に
よって決定されるものである。 X=((成形体の重量−脱脂体の重量)/成形体の重
量)×100
【0012】請求項1の発明では、射出成形によって得
られたグリーン体を連続多孔質のセラミックス材からな
る脱脂治具上に設置した後、脱脂を行う。脱脂用治具
(以後、脱脂セッターという)は連続多孔質であるた
め、加熱脱脂の際に、グリーン体と脱脂セッターとの接
触面からも、バインダーが滲み出し易い。また、脱脂時
に発生するアウトガスが脱脂セッターの連続孔を通って
脱脂セッター下面から抜け出す。
【0013】このため、独立気孔および気孔率0%の脱
脂セッターを使用するのに比べて、バインダーの滲み出
しによる抜け及び脱脂時に発生するアウトガスの抜けが
良好となる。これにより、従来のように脱脂時の温度勾
配を急峻した場合におけるグリーン体内のアウトガスの
放出による割れや膨れ等の変形がなくなる。また、大型
や厚肉状の焼結体では、温度勾配を非常に緩やかにする
必要があったが、上述のように変形が防止できるため、
加熱の温度勾配を急峻とすることができ、脱脂時間を短
縮することができる。
【0014】また、連続多孔質の脱脂セッターでは、グ
リーン体とセッターとの接触面近傍での均等な脱脂が可
能となり、接触面近傍でのバインダーの局所的な残留が
なくなる。このため、局所的にバインダーが残留するこ
とに起因し、焼結時にその箇所にトケが発生し、外観を
損ね、機械強度を劣化させて品質が低下する不都合がな
くなる。
【0015】脱脂セッターを用いて行った脱脂が終了し
た後は、ブラウン体を独立多孔質または気孔率0%のセ
ラミックス材からなる焼結治具(以後、焼結セッターと
いう)上にブラウン体を設置し直し、設置し直した状態
で焼結を行う。この焼結において、前工程の脱脂で使用
した連続多孔質の脱脂セッターを使用することがない。
脱脂セッターをそのまま焼結に使用した場合、脱脂セッ
ターが連続多孔質であるため、表面粗さが大きく、焼結
収縮時に大きな摩擦抵抗を受けるため、焼結体の変形お
よび表面粗さが劣化し、品質上好ましくない。これに対
し、独立多孔質もしくは気孔率0%のセラミックス材か
らなる焼結セッター上にブラウン体を設置し直した後、
焼結を行う場合には、焼結セッターから大きな摩擦抵抗
を受けることがなく、寸法精度および表面状態が良好な
焼結体とすることができる。
【0016】請求項2の発明では、請求項1の発明と同
様に、射出成形で得たグリーン体を連続多孔質のセラミ
ックス材からなる脱脂セッター上に設置した状態で脱脂
を行う。この請求項2の発明では、ブラウン体の重量減
少率(X)が9.00(%)≦X≦9.30(%)の範
囲になるまで脱脂を行う。
【0017】ブラウン体の重量減少率(X)を9.30
%以下とした理由は、脱脂されたブラウン体は保形強度
が非常に弱いため、脱脂セッターから焼結セッターにブ
ラウン体を設置し直す際に破損、変形する恐れがあり、
これを防止するためである。すなわち、ブラウン体の重
量減少率が9.30%以下では、完全に脱脂し切ること
がなく、バインダーがブラウン体内に残留しており、こ
の残留バインダーがブラウン体の保形強度の確保を行
う。また、9.30%以下の重量減少率は、ブラウン体
をハンドリングした際に、ブラウン体の保形性を確保す
るのに最低必要な重量減少率である。重量減少率がこれ
以上大きくなると、ブラウン体の保形強度が急速に低下
して、ハンドリングした際の破損、変形が発生し易くな
る。重量減少率を9.30%以下のブラウン体であれ
ば、通常にハンドリングした際も破損、変形を起こすこ
とがなく、脱脂セッターから焼結セッターへの乗せ換え
時の不良を防止することができる。
【0018】重量減少率(X)を9.00%以上とした
理由は、これ以下の重量減少率ではブラウン体内に残留
しているバインダーが多くなり、真空下での焼結時にバ
インダー中のカーボンが還元し切れず、カーボンの拡散
過多によるトケが発生するためである。
【0019】請求項2の発明では、以上の制御によって
脱脂を行った後、ブラウン体を脱脂セッターから独立多
孔質もしくは気孔率0%のセラミックス材からなる焼結
セッターに設置し直し、この設置状態で焼結を行う。こ
の焼結では、請求項1の発明と同様に、品質の良好な焼
結体を得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)SUS316Lの金属粉末100重量
部に対して、有機バインダーとしてパラフィンワック
ス、アクリル、ポリスチレン、ステアリン酸を合計11
重量部混練してコンパウンドとし、このコンパウンドを
射出成形機のシリンダー温度を最高で160℃に設定し
て射出成形した。成形されたグリーン体は、幅30m
m、長さ30mm、厚さ8mmの直方体である。
【0021】このグリーン体1を図1に示すように、脱
脂セッター2上に設置し、この設置状態で脱脂炉内に搬
入して脱脂した。脱脂は、大気雰囲気での最高到達温度
350℃、全脱脂時間14時間で加熱することによって
行った、
【0022】脱脂セッター2は、アルミナ純度95%、
気孔率50%、平均気孔径5μmの連続多孔質の平板形
状のものを使用した。脱脂炉内での脱脂においては、ア
ウトガス3が発生し、発生したアウトガス3はグリーン
体1の表面および脱脂セッター2の連続孔4から抜けて
いく。脱脂後に、得られたブラウン体の重量測定を行
い、重量減少率を算出した。重量減少率は9.10%で
あった。
【0023】かかる脱脂の後、ブラウン体を脱脂セッタ
ー2から焼結セッター上に設置し直し、この設置状態で
焼結炉で焼結して金属粉末焼結体とした。焼結セッター
としてはアルミナ純度99.6%、気孔率10%の独立
多孔質の平板を用いた。また、焼結は、真空度5Tor
rのAr雰囲気内で最高温度1320℃まで加熱するこ
とによって行った。
【0024】この実施の形態で得られた焼結体の外観、
組織および総脱脂時間の結果を表1に示す。表1より本
実施の形態で得られた焼結体には、外観上トケ、割れ、
膨れの発生はなく、良好な金属表面の状態であった。ま
た焼結体の切断研磨を行い、エッジングを行った後、組
織観察を行ったところ、良好なSUS316Lの組織を
形成していた。従って、本実施の形態によれば、品質上
問題のない焼結体が得られた。
【0025】次に、比較例1−Aとして、連続多孔質の
脱脂セッター2を使用することなく、本実施の形態で使
用した焼結セッターを用い、同条件で脱脂し、この脱脂
後に焼結セッター上に設置したままで同条件で焼結し
た。
【0026】図2は、この比較例の脱脂時の状態を示
す。脱脂に使用した焼結セッター5は、独立孔6である
ため、脱脂時に成形体1から発生するアウトガス3はセ
ッター設置面から抜けることがなく、設置面以外の成形
体表面からのみ抜けていく。
【0027】得られた焼結体の外観、組織の結果を表1
に示す。表1より、比較例1−Aでは、焼結体の表面に
膨れ、割れが発生していた。また表面にトケが発生して
おり、組織観察を行ったところ、結晶粒が肥大化してい
るため、良品とすることができなかった。
【0028】比較例1−Bとして、連続多孔質の脱脂セ
ッター2を使用することなく、本実施の形態で使用した
焼結セッターを用い、最高到達脱脂温度は同条件で、脱
脂時間は変更させて脱脂し、この脱脂後に焼結セッター
上に設置したままで同条件で焼結した。脱脂は、ブラウ
ン体が割れ、膨れを起こさない温度勾配になるように2
時間ずつ脱脂時間を延ばした。その結果、ブラウン体は
割れ、膨れの発生がなかった。この比較例では、最終の
焼結体での割れ、膨れ、トケをなくすには、総脱脂時間
が20時間必要であった。
【0029】以上のように、比較例1−Aでは、気孔率
10%の独立多孔質からなるセッターを使用して脱脂し
たため、セッターとの設置面からの脱バインダーが妨げ
られ、設置面以外の部位から急激に脱バインダーが行わ
れる。このため、ブラウン体に割れ、膨れが発生し、焼
結体においてもそのまま割れ、膨れが残る結果となっ
た。また、セッター設置面からの脱バインダー性が良好
でないため、設置面近くでの残留バインダーが多くな
り、この残留バインダー中のカーボンが焼結時に還元し
切れずに拡散を促進させ、トケが発生した。
【0030】比較例1−Bでは、気孔率10%の独立多
孔質のセッターを使用し、かつ脱脂時の割れ、膨れを防
止するために、温度勾配を非常に緩やかにして徐々にバ
インダーをセッター設置面以外から抜いた。そのため、
総脱脂時間が20時間と非常に長時間必要とした。
【0031】これに対して本実施の形態では、グリーン
体を連続多孔質からなる脱脂セッター2に設置して脱脂
を行うため、セッター設置面からのバインダーの抜けが
非常に良好であり、割れ、膨れ等の変形を防止すること
ができている。また、割れ、膨れが発生しないため、比
較例1−Bのように温度勾配を緩やかにする必要がな
く、脱脂の際の加熱の温度勾配を急峻とすることができ
る。このため、脱脂時間を飛躍的に短縮することができ
る。また、ブラウン体中の多量のバインダーの残留及び
設置面近傍の局所的なバインダーの残留がなく、これに
より焼結時のトケを防止でき、焼結体の品質を向上する
ことができた。
【0032】また、焼結時に使用するセッターは脱脂時
と異なり気孔率が10%であるため、摩擦抵抗が小さ
く、焼結収縮時のセッターとの摩擦抵抗により発生する
変形を防止することができる。さらに、脱脂セッターか
ら焼結セッターに設置し直す際も、ブラウン体の重量減
少率が9.10%とトケが発生しない範囲内で、且つ若
干のバインダーを残しているため、移し替えに対して十
分な保形強度を有しており、移し替え時に発生の危険性
がある変形を防止することができた。以上により、本実
施の形態によれば、脱脂時間が短縮でき、且つ品質が良
好な焼結体を得ることができた。
【0033】(実施の形態2)この実施の形態では、実
施の形態1と同様の組成のコンパウンドを作製し、この
コンパウンドを射出成形機のシリンダー温度を最高で1
60℃に設定して射出成形した。
【0034】このグリーン体を脱脂セッター上に設置
し、この設置状態で脱脂炉内に搬入して脱脂し、ブラウ
ン体とした。脱脂は、大気雰囲気での最高到達温度35
0℃、全脱脂時間12時間で加熱することによって行っ
た。脱脂セッターは、アルミナ純度95%、気孔率60
%、平均気孔径15μmの連続多孔質の平板形状のもの
を使用した。得られたブラウン体の重量測定を行い、重
量減少率を算出した。重量減少率は9.20%であっ
た。
【0035】この脱脂の後、ブラウン体を脱脂セッター
から焼結セッター上に設置し直し、この設置状態で焼結
炉で焼結して金属粉末焼結体とした。焼結セッターとし
てはアルミナ純度99.6%、気孔率0%の平板を用い
た。焼結は、真空度5TorrのAr雰囲気内で最高温
度1320℃まで加熱することによって行った。
【0036】この実施の形態で得られた焼結体の外観、
組織および総脱脂時間の結果を表1に示す。表1より本
実施の形態で得られた焼結体には、外観上トケ、割れ、
膨れの発生はなく、良好な金属表面の状態であった。ま
た焼結体の切断研磨を行い、エッジングを行った後、組
織観察を行ったところ、良好なSUS316Lの組織を
形成していた。従って、本実施の形態によれば、品質上
問題のない焼結体が得られた。
【0037】次に、比較例2−Aとして、連続多孔質の
脱脂セッターを使用することなく、本実施の形態で使用
した焼結セッターを用い、同条件で脱脂し、この脱脂後
に焼結セッター上に設置したままで同条件で焼結した。
【0038】得られた焼結体の外観、組織の結果を表1
に示す。表1より、比較例2−Aでは、焼結体の表面に
膨れ、割れが発生していた。またセッターとの設置面に
トケが発生しており、組織観察を行ったところ、結晶粒
が肥大化しているため、良品とすることができなかっ
た。
【0039】比較例2−Bとして、連続多孔質の脱脂セ
ッターを使用することなく、本実施の形態で使用した焼
結セッターを用い、最高到達脱脂温度は同条件で、脱脂
時間は変更させて脱脂し、この脱脂後に焼結セッター上
に設置したままで同条件で焼結した。脱脂は、ブラウン
体が割れ、膨れを起こさない温度勾配になるように2時
間ずつ脱脂時間を延ばした。その結果、ブラウン体は割
れ、膨れの発生がなかった。この比較例では、最終の焼
結体での割れ、膨れ、トケをなくすには、総脱脂時間が
22時間必要であった。
【0040】この実施の形態では、実施の形態1と同様
に、脱脂時間が短縮でき、且つ品質が良好な焼結体を得
ることができた。本実施の形態においては、実施の形態
1よりも脱脂時間が短くなっている。これは、実施の形
態1の脱脂セッターの気孔率が50%であるのに対し
て、本実施の形態は60%であり、また平均気孔率も5
μmから15μmと大きくなっているため、より脱バイ
ンダー性が向上したためである。
【0041】(実施の形態3)この実施の形態で成形さ
れるグリーン体は、幅、長さ及び高さがいずれも12m
m)の立方体形状である。コンパウンドはSUS630
の金属粉100重量部に対し、有機バインダーとしてパ
ラフィンワックス、アクリル、ポリスチレンを合計10
重量部混練して作製した。このコンパウンドを射出成形
機のシリンダー温度を最高で160℃に設定して射出成
形した。
【0042】このグリーン体を脱脂セッター上に設置
し、この設置状態で脱脂炉内に搬入して脱脂し、ブラウ
ン体とした。脱脂は、大気雰囲気での最高到達温度35
0℃、全脱脂時間14時間で加熱することによって行っ
た。脱脂セッターは、アルミナ純度95%、気孔率60
%、平均気孔径30μmの連続多孔質の平板形状のもの
を使用した。得られたブラウン体の重量測定を行い、重
量減少率を算出した。重量減少率は9.25%であっ
た。
【0043】脱脂の後、ブラウン体を脱脂セッターから
焼結セッター上に設置し直し、この設置状態で焼結炉で
焼結して金属粉末焼結体とした。焼結セッターとしては
アルミナ純度99.6%、気孔率0%の平板を用いた。
焼結は、真空度5TorrのAr雰囲気内で最高温度1
320℃まで加熱することによって行った。
【0044】この実施の形態で得られた焼結体の外観、
組織および総脱脂時間の結果を表1に示す。表1より本
実施の形態で得られた焼結体には、外観上トケ、割れ、
膨れの発生はなく、良好な金属表面の状態であった。ま
た焼結体の切断研磨を行い、エッジングを行った後、組
織観察を行ったところ、良好なSUS630の組織を形
成していた。従って、本実施の形態によれば、品質上問
題のない焼結体が得られた。
【0045】次に、比較例3−Aとして、連続多孔質の
脱脂セッターを使用することなく、本実施の形態で使用
した焼結セッターを用い、同条件で脱脂し、この脱脂後
に焼結セッター上に設置したままで同条件で焼結した。
【0046】得られた焼結体の外観、組織の結果を表1
に示す。表1より、比較例3−Aでは、焼結体の表面に
膨れ、割れが発生していた。またセッターとの設置面に
トケが発生しており、組織観察を行ったところ、結晶粒
が肥大化しているため、良品とすることができなかっ
た。
【0047】比較例3−Bとして、連続多孔質の脱脂セ
ッターを使用することなく、本実施の形態で使用した焼
結セッターを用い、最高到達脱脂温度は同条件で、脱脂
時間は変更させて脱脂し、この脱脂後に焼結セッター上
に設置したままで同条件で焼結した。脱脂は、ブラウン
体が割れ、膨れを起こさない温度勾配になるように2時
間ずつ脱脂時間を延ばした。その結果、ブラウン体は割
れ、膨れの発生がなかった。この比較例では、最終の焼
結体での割れ、膨れ、トケをなくすには、総脱脂時間が
24時間必要であった。
【0048】この実施の形態では、実施の形態1及び2
と同様に、脱脂時間が短縮でき、且つ品質が良好な焼結
体を得ることができた。
【0049】
【表1】
【0050】以上の説明から、本発明は以下の発明を包
含している。
【0051】(1) 金属粉末と有機バインダーとの混
練物からなるコンパウンドを材料とし、射出成形によっ
て得られた成形体を連続多孔質のセラミックス材からな
る脱脂治具上に設置した後、脱脂を行い、その後、独立
多孔質もしくは気孔率0%のセラミックス材からなる焼
結治具上に脱脂体を設置し直した後、焼結を行って金属
焼結体とすることを特徴とする金属粉末射出成形法。
【0052】この方法では、脱バインダー及びアウトガ
ス抜きを確実に行うことができ、良好な金属焼結体とす
ることができる。
【0053】(2) 金属粉末と有機バインダーとの混
練物からなるコンパウンドを材料とし、射出成形によっ
て得られた成形体を連続多孔質のセラミックス材からな
る脱脂治具上に設置し、脱脂体の重量減少率(X)が
9.00(%)≦X≦9.30(%)の範囲になるまで
脱脂を行い、その後、独立多孔質もしくは気孔率0%の
セラミックス材からなる焼結治具上に脱脂体を設置し直
した後、焼結を行って金属焼結体とすることを特徴とす
る金属粉末射出成形法。
【0054】この方法では、脱脂体の保形強度を確保で
き、破損、変形を防止できる。
【0055】(3) 上記脱脂治具または焼結治具はセ
ラミックスであることを特徴とする上記(1)または
(2)項記載の金属粉末射出成形方法。
【0056】セラミックスのため、温度衝撃に強く、繰
り返し使用できる。
【0057】(4) 上記セラミックスはアルミナであ
ることを特徴とする上記(3)項記載の金属粉末射出成
形方法。
【0058】セラミックスをアルミナとすることによ
り、簡単に成形できる。
【0059】
【発明の効果】以上説明したように請求項1の発明によ
れば、射出成形された成形体を連続多孔質の脱脂治具上
に設置して脱脂するため、脱バインダー及びアウトガス
の抜けを良好に行うことができ、脱脂工程を短時間とす
ることができ、さらには設置面から均等に脱バインダー
するため、バインダが残留することがなくなる。また、
脱脂後には、独立多孔質または気孔率0%の焼結治具に
設置し直して焼結するため、焼結収縮時の抵抗となるこ
とがなく、高精度な焼結体を製造することができる。
【0060】請求項2の発明によれば、脱脂された脱脂
体の重量減少率を9.00〜9.30%に制御するた
め、脱脂体の保形強度を確保できる。このため、脱脂体
を設置し直す際に破損、変形することがなく、良好な焼
結体とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における脱脂時の断面図である。
【図2】従来方法における脱脂時の断面図である。
【符号の説明】
1 グリーン体 2 脱脂セッター 3 アウトガス 4 連続孔
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 稲橋 潤 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属粉末と有機バインダーとの混練物か
    らなるコンパウンドを射出成形した成形体を、連続多孔
    質のセラミックス材からなる脱脂治具上に設置した状態
    で脱脂を行い、その後、独立多孔質または気孔率0%の
    セラミックス材からなる焼結治具上に脱脂体を設置し直
    し、この設置状態で焼結を行うことを特徴とする金属粉
    末焼結体の製造方法。
  2. 【請求項2】 金属粉末と有機バインダーとの混練物か
    らなるコンパウンドを射出成形した成形体を、連続多孔
    質のセラミックス材からなる脱脂治具上に設置し、成形
    体の重量に対する脱脂体の重量減少率(X)が9.00
    (%)≦X≦9.30(%)の範囲になるまで脱脂を行
    い、その後、独立多孔質または気孔率0%のセラミック
    ス材からなる焼結治具上に脱脂体を設置し直し、この設
    置状態で焼結を行うことを特徴とする金属粉末焼結体の
    製造方法。
JP27740697A 1997-10-09 1997-10-09 金属粉末焼結体の製造方法 Withdrawn JPH11117005A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN104550970A (zh) * 2014-12-31 2015-04-29 苏州米莫金属科技有限公司 气液两相脱脂炉以及脱脂工艺
CN118388259A (zh) * 2024-04-23 2024-07-26 成都诚科晶陶新材料科技有限公司 一种陶瓷注射成型坯件的快速脱脂方法

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