JPH11104854A - 二相ステンレス鋼の接合方法 - Google Patents

二相ステンレス鋼の接合方法

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JPH11104854A
JPH11104854A JP28454597A JP28454597A JPH11104854A JP H11104854 A JPH11104854 A JP H11104854A JP 28454597 A JP28454597 A JP 28454597A JP 28454597 A JP28454597 A JP 28454597A JP H11104854 A JPH11104854 A JP H11104854A
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JP
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joining
stainless steel
duplex stainless
heating
width
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JP28454597A
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English (en)
Inventor
Takao Hiyamizu
孝夫 冷水
Koji Horio
浩次 堀尾
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Daido Steel Co Ltd
Original Assignee
Daido Steel Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 母材と同等の強度、靱性及び耐食性を有する
高品質な接合部材が高能率で得られ、しかもこのような
特性を有する接合部材を得るための条件設定が比較的容
易な二相ステンレス鋼の接合方法を提供すること。 【解決手段】 表面粗さRmaxを50μm以下とした
一対の二相ステンレス鋼部材の接合面同士を直接突き合
わせ、非酸化雰囲気下、3MPa以上5MPa以下の圧
力で加圧しつつ、1280℃以上前記各二相ステンレス
鋼の融点以下の温度に加熱し、60秒以上保持するよう
にした。また、その際、1280℃以上に加熱される領
域の幅を管状材料にあっては肉厚の2倍以下、中実材料
にあっては最大外径以下とし、さらに、800℃以上に
加熱される領域の幅を、管状材料にあっては接合界面か
らの距離が肉厚の5倍以下、中実材料にあっては接合界
面からの距離が最大外径の2.5倍以下となるようにし
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、二相ステンレス鋼
の接合方法に関し、さらに詳しくは、石油掘削用の油井
管、化学工業用の耐食用管、原油輸送用のラインパイ
プ、海水熱交換器等に用いられる二相ステンレス鋼管同
士、二相ステンレス鋼管と二相ステンレス鋼製フランジ
等の接合に適する二相ステンレス鋼の接合方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】フェライト・オーステナイト二相ステン
レス鋼(以下、単に二相ステンレス鋼という。)は、主
要成分であるCrを増やしてNiを減らし、またMo等
を添加して固溶化熱処理状態でオーステナイトとフェラ
イトとの混合組織とした鋼である。二相ステンレス鋼
は、強度と靱性が高く、しかも従来のオーステナイト系
ステンレス鋼に比べて耐応力腐食割れ性や耐粒界腐食性
などに優れており、油井環境や海水熱交換器等に広く用
いられている。
【0003】ところで、油田は、通常、地下数千メート
ルの位置にあるので、二相ステンレス鋼管を石油掘削用
の油井管として用いる場合には、地中への掘削が進むに
伴い、長さ10〜15メートルの鋼管を順次接続し、地
中に掘った縦穴の深部に向けて鋼管を降下させていく必
要がある。このような鋼管の接続手段としては、ねじ接
続法(メカニカルカップ法)、溶接法(オービタルウェ
ルディング法)、液相拡散接合法などがある。
【0004】ねじ接続法は、図10に示すように、既に
地中に埋設されている鋼管1の上側の管端部の外ねじ
と、内周にねじが刻設されている円筒状の継手7の下側
の内ねじとを螺合し、次いで接続すべき鋼管2の下側の
管端部の外ねじと継手7の上側の内ねじとを螺合するこ
とにより、鋼管1の管端面1aと鋼管2の管端面2aと
を密着させ、2本の鋼管1、2を接続する方法である。
【0005】溶接法は、図11に示すように、鋼管1の
上端部及び鋼管2の下端部に、それぞれ、開先1b及び
2bを設けて両者を突き合わせ、溶接トーチ9を管円周
に沿って回転させながら、開先1b及び2bに溶融金属
10を肉盛りすることにより、2本の鋼管1、2を接続
する方法である。
【0006】また、液相拡散接合法は、図示はしない
が、2本の鋼管の端面間に適当なインサート材を介挿
し、接合面を加圧しながら、インサート材の融点以上鋼
管の融点以下の温度に一定時間保持し、インサート材を
溶融させると共にその成分の一部を鋼管側に拡散させる
ことにより、インサート材の融点を接合温度以上に上昇
させると共に、2本の鋼管を接続する方法である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ねじ接
続法は、一継手当たりの接続時間が5〜10分であり、
作業能率が高いという利点がある反面、締結部から油や
ガスが漏れやすいという欠点がある。そのため、鋼管
1、2の外周及び継手7の内周に刻設されるねじには、
高精度が要求され、しかもねじの螺合作業には、高度の
熟練が要求される。また、接続部は、引張応力には強い
が、圧縮応力が作用すると継手7が半径方向に広がり、
油漏れ等を助長するという欠点がある。さらに、継手7
の外径が鋼管1、2の外径より大きくなっているので、
地中に掘削する穴の内径を鋼管1、2の外径より大きく
しなければならないという欠点がある。
【0008】また、溶接法は、溶接部から油やガスが漏
れることはなく、また、引張応力のみならず圧縮応力に
も強く、さらに溶接部の外径を鋼管1、2の外径とほぼ
同一に維持できるという利点がある。しかしながら、溶
接法は、溶接トーチ9の1回転当たりの肉盛り量を多く
することができないので、特に厚肉管の溶接の場合に
は、溶接工程のみで一継手当たり1〜2時間を要し、作
業能率が低く、しかも溶接作業に高度な熟練を要すると
いう欠点がある。
【0009】さらに、液相拡散接合法は、接合部から油
やガスが漏れることはなく、圧縮応力に強く、しかも接
合部の外径を鋼管外径とほぼ同一に維持できるという点
では、上述の溶接法と同様であるが、一継手当たりの接
合時間は、検査工程も含めて約30分程度で済み、高品
質の継手を高能率で製造することができるという利点が
ある。
【0010】しかしながら、液相拡散接合法は、使用す
るインサート材の組成によっては、界面に脆い金属間化
合物が生成して靱性が低下する場合がある。また、母材
と同等の強度、靱性及び耐食性を兼ね備えた高品質な接
合部材を得るには、インサート材の組成、厚さ、接合温
度、保持時間、接合面の表面粗さ等の複数の接合条件を
最適化する必要があるため、条件設定がやや煩雑である
という欠点がある。
【0011】本発明が解決しようとする課題は、母材と
同等の強度、靱性及び耐食性を有する高品質な接合部材
が高能率で得られ、しかもこのような特性を有する接合
部材を得るための条件設定が比較的容易な二相ステンレ
ス鋼の接合方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明に係る二相ステンレス鋼の接合方法は、フェ
ライト・オーステナイト二相ステンレス鋼同士の接合方
法であって、一方の二相ステンレス鋼部材の接合面と他
方の二相ステンレス鋼部材の接合面とを直接接触させた
状態で、非酸化雰囲気下、3MPa以上5MPa以下の
加圧力で加圧しつつ、1280℃以上前記各二相ステン
レス鋼の融点以下の温度に加熱し、60秒以上保持する
ようにしたことを要旨とするものである。
【0013】ここで、二相ステンレス鋼は、上述のよう
にフェライトとオーステナイトの混合組織を呈している
が、フェライトが本質的に超塑性現象を起こすために、
二相ステンレス鋼もまた、超塑性現象を示すという性質
がある。本発明は、二相ステンレス鋼が有するこのよう
な性質を利用して、短時間で強度の高い接合継手が得ら
れるようにした点に特徴を有するものである。
【0014】すなわち、液相拡散接合法は、接合界面に
存在する気孔を溶融したインサート材で充填することに
より、界面から気孔を排除すると共に元素の拡散を促進
させるものであるのに対し、本発明に係る接合方法は、
二相ステンレス鋼が呈する超塑性現象を利用して、接合
時に付加する比較的低い加圧力により界面近傍のみを優
先的に塑性変形させ、これにより接合界面に存在する気
孔を圧着させると共に元素の拡散を促進させることを特
徴とするものである。
【0015】従って、本発明に係る接合方法において
は、二相ステンレス鋼からなる一対の部材間にインサー
ト材を介挿する必要はなく、二相ステンレス鋼同士を直
接突き合わせて加圧・加熱するだけでよい。
【0016】本発明に用いる二相ステンレス鋼として
は、SUS329J1、SUS329J3L、SUS3
29J4Lなどが一例として挙げられるが、これらに限
定されるものではない。上述のように、超塑性現象は、
全ての二相ステンレス鋼について認められるからであ
る。また、接合すべき一対の部材は、双方が二相ステン
レス鋼であれば足り、必ずしも同一組成を有する二相ス
テンレス鋼同士である必要はない。さらに、その形状に
ついても特に限定はなく、管、フランジ、板、ブロック
等、あらゆる形状の部材について適用できる。
【0017】本発明に係る二相ステンレス鋼の接合は、
非酸化雰囲気中で行うことを要する。接合を酸化雰囲気
中で行うと、接合界面に酸化物が生成すると共に、この
酸化物が界面における元素の拡散を阻害し、接合強度の
低下をもたらすからである。具体的には、真空中又は
2、Ar等の不活性ガス雰囲気中で接合を行えばよ
い。なお、非酸化雰囲気の形成手段は、特に限定される
ものではなく、接合部材全体を雰囲気制御が可能な炉内
に挿入したり、あるいは加熱部分のみに不活性ガスから
なるシールドガスを吹き付け、加熱部分と大気とを遮断
するようにしても良い。
【0018】接合時の加圧力は、3MPa以上5MPa
以下であることを要する。加圧力が3MPa未満では、
接合界面における気孔の圧着が不十分となり、十分な接
合強度が得られないからであり、加圧力が5MPaを越
える場合には、母材となる二相ステンレス鋼の変形が生
じ、良好な接合体が得られないからである。
【0019】接合温度は、1280℃以上であって、接
合すべき各二相ステンレス鋼の融点以下であることを要
する。接合温度が1280℃未満では、厚肉管の接合
等、長大な部材を接合する場合には、接合面全面が接合
温度に到達せず、高い接合強度が得られない場合がある
からである。また、接合温度を二相ステンレス鋼の融点
以上とすると、二相ステンレス鋼が溶融し、初期の形状
を維持できないからである。上述の二相ステンレス鋼の
場合、その融点は、1400℃〜1450℃程度であ
る。
【0020】接合温度における保持時間は、60秒以上
であることを要する。保持時間が60秒未満では、接合
界面における気孔の圧着及び拡散が不十分となり、接合
界面に気孔が残留する場合があるからである。また、接
合部材の形状、昇温速度等によっては、保持時間が短す
ぎると、接合界面全面が均一に加熱されずに温度勾配が
生じ、均一な接合面がえられない場合があるからであ
る。
【0021】なお、保持時間は、界面における超塑性変
形と元素の拡散により気孔を消滅させるという点では、
長い方がよい。しかし、界面における気孔が消滅した後
の加熱は無意味であり、むしろ母材の強度、耐食性等を
劣化させる原因となるので、保持時間は必要最小限に留
めておく方がよい。
【0022】二相ステンレス鋼の接合面の表面粗さRm
axは、50μm以下であることが望ましい。接合面の
表面粗さRmaxが50μmを越えると、接合界面に大
きな気孔が多数形成されるので、これを接合界面近傍に
おける超塑性変形と元素の拡散のみにより短時間で消滅
させるのが困難となるからである。
【0023】接合面の加熱手段は、ヒータを加熱してそ
の輻射熱で接合面を加熱する方法、電子ビーム、レーザ
ービーム等を照射してその際に発生する発熱を利用する
方法、摩擦熱により加熱する方法等、各種の加熱手段を
用いることができ、接合部材の形状、大きさ、要求され
る特性等を考慮して、適宜最適な手段を選択すればよ
い。
【0024】しかしながら、鋼管等、長大な部材を接合
するための加熱手段としては、誘導コイルを用いた高周
波誘導加熱法が特に好ましい。高周波誘導加熱法によれ
ば、短時間で接合面付近のみを容易に局部加熱できるか
らである。但し、その周波数は、100kHz以下であ
ることを要する。高周波誘導加熱における表皮効果は、
周波数が高いほど著しくなるので、周波数が100kH
zを越えると表面のみが加熱され、接合面全面が均一に
加熱されないからである。
【0025】また、接合面の加熱手段は、高周波直接通
電加熱法でも良い。高周波直接通電加熱法によれば、局
部加熱が容易であると共に、鋼材に給電端子を接触させ
て直接高周波を流すので、投入エネルギーに対する接合
に用いられるエネルギーの割合、すなわちエネルギー効
率が高くなるからである。但し、その周波数は、100
kHz以下であることを要する。高周波直接通電加熱に
おいても同様に、周波数が100kHzを越えると、表
皮効果により表面のみが加熱され、接合面全面が均一に
加熱されないからである。
【0026】また、前記二相ステンレス鋼部材が管状材
料の場合には、接合時に1280℃以上に加熱される領
域(以下、単に「1280℃加熱領域」という)の幅が
前記管状材料の肉厚の2倍以下、前記二相ステンレス鋼
部材が中実材料の場合には、1280℃加熱領域の幅が
前記中実材料の最大外径以下となるように前記二相ステ
ンレス鋼部材を加熱することが望ましい。1280℃加
熱領域の幅が前記範囲を超えると、接合部材全体の強度
が該領域内部の母材の強度に支配され、強度が低下する
からである。
【0027】さらに、前記二相ステンレス鋼部材が管状
材料の場合には、接合時に800℃以上に加熱される領
域(以下、単に「800℃加熱領域」という)の幅が接
合面からの距離で前記管状材料の肉厚の2倍以下、前記
二相ステンレス鋼部材が中実材料の場合には、800℃
加熱領域の幅が接合面からの距離で前記中実材料の最大
外径の2.5倍以下となるように前記二相ステンレス鋼
部材を加熱することが望ましい。800℃加熱領域の幅
が上記範囲を超えると、該領域内で脆化や耐食性の低下
を生ずるからである。
【0028】上記構成を有する二相ステンレス鋼の接合
方法によれば、所定の表面粗さを有する二相ステンレス
鋼同士を直接突き合わせ、非酸化雰囲気下、所定温度、
所定圧力の条件下において所定時間保持することにより
接合が行われる。
【0029】この時、二相ステンレス鋼の接合界面に
は、接合面の凹凸に起因する気孔が多数存在するが、上
述の接合条件下においては、二相ステンレス鋼が超塑性
変形を起こすため、界面に存在する気孔が容易に圧着さ
れると共に、界面における元素の拡散が促進される。こ
れにより、比較的低圧力かつ短時間の接合条件下で母材
と同等の強度を有する接合継手を得ることが可能とな
る。
【0030】また、インサート材を用いることなく接合
が行なわれるので、接合界面の組成が母材と同等に維持
され、インサート材に含まれる元素に起因する接合界面
近傍の脆化や耐食性の低下のおそれがない。これによ
り、接合条件の設定が簡略化されると共に、母材と同等
の靱性及び耐食性を有する接合継手を容易に得ることが
可能となる。
【0031】さらに、接合部を加熱する手段として、高
周波誘導加熱法又は高周波直接通電加熱法を用いれば、
局部加熱が容易であるため、1280℃加熱領域の幅及
び800℃加熱領域の幅を最小限に押さえることができ
る。これにより、加熱に伴う界面近傍の母材の強度、靱
性及び耐食性の低下を抑制することが可能となる。
【0032】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の一実施の形態に
ついて詳細に説明する。図1は、本発明に係る二相ステ
ンレス鋼の接合方法を実施するための接合装置の概略構
成図を示したものである。この接合装置は、鋼管を接合
するための高周波誘導加熱装置であり、一対のクランプ
機構A1、A2と、加熱機構Bと、外部ガス噴出機構C
1、C2と、内部ガス噴出機構C3、C3と、冷却媒噴
出機構D1、D2と、温度センサE1、E2とを備えて
いる。
【0033】クランプ機構A1、A2は、鋼管1及び2
の管端面1a及び2aを直接突き合わせて形成される継
手部5を中心として、継手部5から一定距離だけ離れた
位置に上下対称に配置されている。継手部5に対して下
方に位置するクランプ機構A1は、下方に位置する鋼管
1の外周を把持すると共に、鋼管1を上方(矢印p1方
向)に押し上げる働きをするものである。また、継手部
5に対して上方に位置するクランプ機構A2は、上方に
位置する鋼管2の外周を把持すると共に、鋼管2を下方
(矢印p2方向)に押し下げる働きをするものである。
【0034】加熱機構Bは、具体的には、銅パイプから
なる高周波誘導加熱コイルで構成されており、継手部5
の外周面5aを囲むように配置されている。コイルは、
制御盤(図示せず)を介して高周波電源(図示せず)に
接続され、所定出力、所定周波数の高周波をコイルに印
加できるようになっている。また、高周波をコイルに印
加した際に発生するジュール熱による溶損からコイルを
保護するため、コイルの内部は、空洞となっており、冷
却水が循環できるようになっている。
【0035】また、加熱機構Bには、接合時における継
手部5の温度を計測するための放射温度計B1が取り付
けられている。放射温度計B1の出力端子は、制御盤
(図示せず)に接続されており、放射温度計B1によっ
て測定された温度データは、出力端子を介して制御盤に
送られるようになっている。
【0036】加熱機構Bの下側及び上側には、それぞ
れ、鋼管1及び2の外周面5aを囲むように外部ガス噴
出機構C1及びC2が設けられている。外部ガス噴出機
構C1及びC2は、接合時に継手部5を中心にして上下
方向に広がる加熱領域の外周面5aにAr、N2等の不
活性ガスを吹き当て、加熱領域の外周面5a側をガスシ
ールドするための機構である。
【0037】さらに、クランプ機構A1と外部ガス噴出
機構C1の間、及びクランプ機構A2と外部ガス噴出機
構C2の間には、それぞれ、温度センサE1及びE2が
鋼管1及び2の外周面5aと対面して設けられている。
温度センサE1及びE2は、接合時における鋼管1及び
2の温度を測定し、接合後に強制冷却を行うべき加熱領
域を判定するためのものである。
【0038】鋼管1及び2の内側には、鋼管2の上部よ
り、二重管6が挿入され、その二重管6には、一定の距
離をおいて一対の内部ガス噴出機構C3、C3が設けら
れ、さらに下部に設けられた内部ガス噴出機構C3の下
側及び上部に設けられた内部ガス噴出機構C3の上側
に、それぞれ、冷媒噴出機構D1及びD2が設けられて
いる。
【0039】一対の内部ガス噴出機構C3、C3は、接
合時に継手部5を中心にして上下方向に広がる加熱領域
の内周面5bにAr、N2 等の不活性ガスを吹き当て、
加熱領域の内周面5b側をガスシールドするための機構
である。また、冷媒噴出機構D1及びD2は、接合終了
後に、形成された接合部と、その上下方向に広がる加熱
領域に冷却水をスプレーしたり、冷却Arを吹き当てる
ことにより、接合部を中心とした加熱領域を内周面5b
側から強制冷却するためのものである。
【0040】二重管6は、不活性ガス管路(図示せず)
と冷媒管路(図示せず)とを備えている。不活性ガス管
路は、内部ガス噴出機構C3、C3に連通し、冷媒管路
は、冷媒噴出機構D1及びD2に連通しており、二重管
6に付設されたバルブ(図示せず)の切替操作により、
鋼管の内周面5bに不活性ガス又は冷媒を噴出できるよ
うになっている。また、二重管6は、不活性ガスや冷媒
の噴出位置を変えられるよう、上下動可能となるように
構成されている。
【0041】なお、上述の冷媒噴出機構D1及びD2
は、図1で示したように、鋼管の内部に設けることに限
定されるものではなく、鋼管の外周面5aを囲むように
設けてもよく、また、鋼管の内部と外部の双方に設けて
も良い。
【0042】次に、上記の接合装置を用いて二相ステン
レス鋼管を接合する方法について説明する。まず、クラ
ンプ機構A1及びA2で、鋼管1及び鋼管2をそれぞれ
把持する。次いで、クランプ機構A1及びA2を作動さ
せ、鋼管1及び鋼管2を、それぞれ、矢印p1方向及び
矢印p2方向に移動させ、両者を直接圧接することによ
り継手部5を形成し、そのままの状態で管軸方向の加圧
力を印加し続ける。
【0043】鋼管1、2のセットが終了後、外部ガス噴
出機構C1、C2、及び内部ガス噴出機構C3、C3か
らAr等の不活性ガスを噴出させ、継手部5の外周面5
a及び内周面5bのガスシールドを行うと同時に、加熱
機構Bを構成する誘導コイル内部に冷却水を流しつつ、
高周波を印加する。誘導コイルに高周波が印加される
と、表皮効果により交番電流が鋼管1及び2の表面に集
まり、表面が優先的に発熱すると共に、熱伝導により表
面から内面に向かって熱が伝わり、接合面全面が接合温
度に加熱される。
【0044】継手部5の温度は、放射温度計B1により
測定される。測定された温度データは、出力端子を介し
て制御盤(図示せず)に送られ、継手部5の温度が予め
設定された温度パターンとなるように、高周波電源(図
示せず)の出力が制御される。
【0045】継手部5の温度が、1280℃以上でかつ
鋼管1、2の融点未満の温度であって予め設定された接
合温度に達したところで、一定時間(例えば、60秒
間)保持し、接合界面近傍において超塑性変形を起こさ
せる。そして、界面における気孔の圧着と元素の拡散が
十分行われたところで、継手部5近傍の加熱領域を冷却
して、接合作業が終了する。
【0046】図2は、二相ステンレス鋼管の接合を行う
ための高周波直接通電加熱装置の概略構成図を示したも
のである。図2に示す高周波直接通電加熱装置は、図1
に示す高周波誘導加熱装置と同様に、図示しないクラン
プ機構、不活性ガス噴出機構、冷媒噴出機構等を備えて
いるが、高周波誘導コイルからなる加熱機構Bに代え
て、鋼管1及び2の外周面5aに、それぞれ給電端子1
1a及び11bを直接接触させた点が異なるものであ
る。
【0047】図2に示す高周波直接通電加熱装置による
鋼管の接合は、図示しないクランプ機構により鋼管1、
2を把持すると共に界面に圧力を加え、図示しない不活
性ガス噴出機構により接合界面近傍をシールドしなが
ら、給電端子11a及び11b間に高周波電流を流すこ
とにより行われる。
【0048】給電端子11a及び11b間に高周波電流
を流すと、接合界面の接触抵抗により界面が局部的に加
熱されると共に、表皮効果により交番電流が鋼管1、2
表面に集まり、表面が優先的に発熱する。発生した熱
は、熱伝導により鋼管1、2表面から内部に伝わり、接
合面全面が接合温度に加熱される。この状態で一定時間
保持し、接合界面で超塑性変形を起こさせると、界面に
存在する気孔の圧着と元素の拡散が促進されるので、短
時間で健全な接合継手を得ることができる。
【0049】なお、図2に示す高周波直接通電加熱装置
による接合においては、上述のように、初めから接合部
に圧力を加えて通電するかわりに、接合部を接触させる
前に両者の間に電圧を加えておき、徐々に近付けて軽く
接触させ、火花を飛ばして加熱した後に加圧しても良
い。
【0050】また、図1に示す接合装置は、鋼管1、2
と大気とを完全に遮断せず、ガス噴出機構C1、C2、
C3から鋼管外周面5a及び内周面5bに不活性ガスを
噴出させることにより、鋼管1、2を大気から遮断する
ように構成されているが、接合部材に対し、より高い品
質が要求される場合には、上述のガス噴出機構に代え
て、図3に示すような雰囲気形成装置を用い、鋼管1、
2と大気とを完全に遮断して接合するようにすれば良
い。
【0051】図3において、鋼管1、2は、図示しない
クランプ機構により管端面1a及び2aで相互に突き合
わされて継手部5を形成すると共に、鋼管1、2の外周
面5aには、図示しないシール部材を介して外筒12が
密着され、鋼管1、2の内周面5bには、図示しないシ
ール部材を介して内筒13が密着されている。また、外
筒12内には、継手部5に近接して誘導コイル14が設
けられている。
【0052】そして、図3に示す雰囲気形成装置を用い
て接合を行う場合には、まず、外筒12及び内筒13に
それぞれ設けられた排気管15及び16から、図示しな
い真空ポンプを用いて外筒12及び内筒13内を排気す
る。次いで、真空雰囲気下で接合を行う場合には、その
まま誘導コイル14に通電すれば良く、不活性ガス雰囲
気下で接合を行う場合には、排気管15及び16から不
活性ガスを導入した後、誘導コイル14に通電すればよ
い。
【0053】なお、図3に示す雰囲気形成装置を中実材
料の接合に適用する場合には、外筒12のみを用いれば
よい。また、図3において、加熱手段として誘導コイル
14を用いているが、誘導コイル14に代えて、鋼管
1、2表面に給電端子を接触さて高周波直接通電加熱法
により加熱してもよく、また、継手部5近傍に黒鉛、タ
ングステン等からなるヒータを設け、ヒータの輻射熱に
より加熱するように構成しても良い。
【0054】さらに、図1〜3においては、いずれも熱
源を鋼管外部に配置した構成としているが、誘導コイル
等の熱源を鋼管内部に配置するように構成しても同様の
効果が得られる。また、鋼管外部及び内部の双方に熱源
を配置すれば、さらに短時間で接合面の均熱が得られる
ので、より品質の高い接合継手を得ることが可能とな
る。
【0055】次に、1280℃加熱領域の幅を限定する
理由について説明する。二相ステンレス鋼に限らず、一
般に金属材料は、高温に加熱されると結晶粒が粗大化
し、加熱された領域が軟化する。従って、接合界面近傍
のみを局部加熱して接合した場合、1280℃加熱領域
内は、加熱による影響を受けた部分であるので、軟化に
より加熱前より強度が低下する。一方、1280℃加熱
領域以外の領域では、加熱による影響をあまり受けてい
ないので、加熱前の母材強度が維持される。
【0056】そのため、1280℃加熱領域の幅が広い
場合には、接合体に対し引張荷重を加えると、強度の低
い1280℃加熱領域内で集中的な塑性変形が生ずるの
で、接合体全体の強度は、加熱前の母材強度より低下す
る。
【0057】一方、1280℃加熱領域の幅が狭くなる
と、軟化した1280℃加熱領域が、その両側に存在す
る加熱の影響を受けていない強度の高い領域によって拘
束された状態となるため、接合体に対し引張荷重が加え
られても、1280℃加熱領域内での集中的な塑性変形
が妨げられることとなる。これにより、接合体の強度低
下が最小限に抑制されるものである。
【0058】従って、特に、強度が要求される用途に用
いられる接合部材については、1280℃加熱領域に幅
は、狭くするほど良く、少なくとも、管状材料の場合
は、管状材料の肉厚の2倍以下、中実材料の場合には、
中実材料の最大外径以下とすることが望ましい。
【0059】次に、800℃加熱領域の幅を限定する理
由について説明する。二相ステンレス鋼は、Cr含有量
が高く、高クロムフェライト相を含んでいるため、60
0℃から800℃の領域が徐冷されると、FeCrを主
体とする金属間化合物σ相が析出するおそれがある。σ
相が析出すると、その周辺のCr濃度が低下するので、
二相ステンレス鋼の耐食性を低下させる原因となる。
【0060】そのため、800℃加熱領域の幅が広い場
合には、部材全体に蓄えられる総熱量が多くなるため、
接合界面近傍の冷却速度が低下し、600℃から800
℃の温度領域を徐冷することになる。特に、管状材料に
あっては、800℃加熱領域の幅が広くなると、管内周
面の耐食性の低下が著しい。管外周面に比べて、管内周
面の方が冷却速度が遅いからである。
【0061】従って、特に、耐食性が要求される用途に
用いられる接合部材については、800℃加熱領域の幅
は、狭くするほど良く、少なくとも、接合部材が管状材
料の場合には、接合界面からの距離がその肉厚tの5倍
以下、接合部材が中実材料の場合には、接合界面からの
距離がその最大外径Dの2.5以下とすることが望まし
い。
【0062】なお、接合部材に高い靱性が要求される場
合や、油井管等、応力と厳しい腐食環境が共存する状態
で接合部材が使用される場合には、さらに、接合時に3
00℃以上に加熱された領域を接合直後に急冷するか、
あるいは、一旦放冷した後に固溶化温度以上に再加熱し
て急冷することが望ましい。
【0063】上述のように、σ相は、周辺のCr濃度を
低下させ、耐食性を低下させるものであるので、少なく
とも部材表面の耐食性を加熱前の母材と同等に維持でき
れば十分である場合には、800℃加熱領域の幅を上述
のように制御するのみで足りる。しかし、σ相は、主と
して粒界に析出し、著しい硬化と脆化をもたらす(シグ
マ脆性)ので、高い靱性が要求される用途にあっては、
急冷することにより、接合部材内部におけるσ相生成を
も確実に押さえる必要があるからである。
【0064】また、二相ステンレス鋼は、370℃から
530℃の領域を徐冷すると、高Cr相α’と低Crフ
ェライト相αの2相分離に起因する475℃脆性が生
じ、接合界面近傍の硬化と脆化をもたらす場合があるか
らである。
【0065】さらに、450℃〜850℃の領域を徐冷
すると、粒界にCrを主成分とするM236 が析出して
粒界周辺にCr欠乏層が生成する、いわゆる鋭敏化が生
じ、耐粒界腐食性や耐応力腐食割れ性が低下する場合が
あるからである。二相ステンレス鋼は、フェライト中の
Crの拡散速度が速いために、オーステナイト系ステン
レス鋼に比べてCr欠乏層は生成しにくいが、耐応力腐
食割れ性を加熱前の母材と同等に維持するには、上記の
温度範囲を急冷する必要がある。
【0066】図1に示す高周波誘導加熱装置を用いて接
合部材の急冷を行うには、まず、接合中又は放冷後の再
加熱中に、温度センサE1及びE2を用いて鋼管1及び
2の温度を測定し、各鋼管1及び2における300℃以
上の加熱領域を判定し、次いで、接合終了後又は再加熱
終了後、加熱領域に関する位置信号に基づいて二重管6
を上下動させ、冷媒噴出機構D1、D2の位置決めを行
い、接合部を中心にして上下に広がる加熱領域に、水等
の冷媒を噴射すれば良い。
【0067】急冷時の冷却速度は、5℃/sec以上で
あることを要し、好ましくは、10〜30℃/secで
ある。5℃/sec未満では、上述のシグマ脆性、47
5℃脆性及び鋭敏化の発生を十分に抑制できないからで
ある。
【0068】また、急冷を行う際、クランプ機構A1、
A2を作動させ、接合部に管軸方向の加圧力を印加した
状態にしておくことが望ましい。急冷を行うと、冷却初
期には、鋼管1、2の表面のみが冷却された状態となる
ため、鋼管1、2表面に引張応力が発生し、接合界面に
亀裂が発生する場合があるが、急冷時に加圧すると、加
圧による圧縮応力と急冷による引張応力が相殺され、接
合界面における亀裂の発生を防止できるからである。急
冷時に印加する加圧力としては、5〜10MPa程度が
望ましい。
【0069】(実施例1)接合材は、融点が1430℃
である二相ステンレス鋼SUS329J1(JIS43
03)からなる外径115mm、肉厚10mmの鋼管を
用い、鋼管の接合面は、Rmaxが10μmとなるよう
に仕上げた。このような2本の鋼管を直接管端面で突き
合わせて、図3に示す雰囲気形成装置を備えた抵抗加熱
炉内にセットし、界面に3MPaの圧力を付加した。
【0070】次いで、炉内を真空に排気後、炉内に不活
性ガスを導入することなく真空中において、接合温度1
280℃、保持時間60秒の条件下で、二相ステンレス
鋼管の接合を行った。なお、本実施例では、鋼管の外周
に設けたヒータの形状及び印加する電力を制御すること
により、1280℃加熱領域の幅が15mm(肉厚の
1.5倍)となるようにした。
【0071】(実施例2)接合温度を1300℃、保持
時間を180秒、加圧力を4MPaとし、接合時に炉内
にArを導入した以外は、実施例1と同様の手順により
二相ステンレス鋼管の接合を行った。
【0072】(実施例3)接合温度を1350℃、保持
時間を600秒、加圧力を5MPaとし、接合時に炉内
にHeを導入した以外は、実施例1と同様の手順により
二相ステンレス鋼管の接合を行った。
【0073】(比較例1)接合温度を1270℃、保持
時間を300秒、加圧力を4MPaとした以外は、実施
例1と同様の手順により二相ステンレス鋼管の接合を行
った。
【0074】(比較例2)接合温度を1300℃、保持
時間を120秒、加圧力を6MPaとし、接合時に炉内
にHeを導入した以外は、実施例1と同様の手順により
二相ステンレス鋼管の接合を行った。
【0075】実施例1〜3及び比較例1、2で得られた
接合後の鋼管から、図4に示すように、中央に接合部を
有する横幅30mm、全長300mmの短冊形の引張試
験片を切り出し、クロスヘッドスピード1mm/min
の条件で引張試験を行った。なお、引張試験片中央の両
側面部には、フライス加工により、横幅20mm、長さ
80mmのストレート部を設けたが、引張試験片の表面
及び裏面は、未加工のままとした。
【0076】また、接合後の鋼管から、図5に示すよう
に、中央に接合部を有する横幅t(鋼管の肉厚に相
当)、厚さ10mm、長さ250mmの曲げ試験片を切
り出し、JIS Z3122に準拠して、側曲げ試験を
行った。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】実施例1、2及び3で得られた接合後の鋼
管には、いずれも亀裂、変形は認められず、良好な接合
体が得られた。引張強度は、それぞれ、818MPa、
821MPa及び820MPaであり、いずれの試験片
とも母材から破断し、接合界面から破断するものはなか
った。また、側曲げ試験を行ったところ、いずれの試験
片とも、180゜折り曲げられ、折り曲げた部分が破断
することはなかった。
【0079】一方、接合温度を1270℃とした比較例
1では、接合後の鋼管に亀裂、変形は認められなかった
が、引張強度は、553MPaまで低下し、試験片は、
接合界面から破断した。また、側曲げ試験を行ったとこ
ろ、試験片は、完全に折り曲げる前に接合界面から破断
した。破断面を観察したところ、鋼管内周面側には、未
接合部が認められた。
【0080】また、接合時の加圧力を6MPaとした比
較例2では、接合後の鋼管は、接合界面近傍で大きく樽
型に変形していた。また、引張強度は、764MPaで
あり、試験片は、接合界面から破断した。さらに、側曲
げ試験を行ったところ、試験片は、完全に折り曲げる前
に接合界面から破断した。
【0081】以上の結果から、母材の変形を抑制しつつ
接合界面を十分に密着させ、しかも未接合部の生じない
良好な接合体を得るには、接合温度、保持時間及び加圧
力を最適な範囲に収める必要があることがわかった。ま
た、接合条件が適切であれば、二相ステンレス鋼を直接
突き合わせて加熱するのみでも、母材と同等の強度及び
靱性を有する二相ステンレス鋼接合体が得られることが
わかった。
【0082】(実施例4)接合材は、融点が1430℃
である二相ステンレス鋼SUS329J1(JIS43
03)からなる外径150mm、肉厚15mmの鋼管を
用い、鋼管の接合面は、Rmaxが50μmとなるよう
に仕上げた。このような2本の鋼管を直接管端面で突き
合わせ、実施例1で用いた抵抗加熱炉と同一の炉内にセ
ットした。
【0083】次いで、炉内を真空に排気後、炉内にAr
ガスを導入し、接合温度1280℃、保持時間60秒、
加圧力3MPaの条件下で、二相ステンレス鋼管の接合
を行った。なお、本実施例の場合は、1280℃加熱領
域の幅は、25mm(肉厚の1.7倍)となるようにし
た。
【0084】(実施例5)接合すべき2本の鋼管の内、
一方の鋼管の管端面の表面粗さRmaxを50μm、他
方の表面粗さRmaxを10μmとし、接合温度を13
00℃、保持時間を120秒、加圧力を4MPaとした
以外は、実施例4と同様の手順により二相ステンレス鋼
管の接合を行った。
【0085】(実施例6)接合すべき2本の鋼管双方の
管端面の表面粗さRmaxを10μmとし、接合温度を
1300℃、保持時間を180秒、加圧力を4MPaと
し、接合時に炉内にHe導入した以外は、実施例4と同
様の手順により、二相ステンレス鋼管の接合を行った。
【0086】(比較例3)接合すべき2本の鋼管双方の
管端面の表面粗さRmaxを100μmとし、接合温度
を1300℃、保持時間を600秒、加圧力を4MPa
とした以外は、実施例4と同様の手順により、二相ステ
ンレス鋼管の接合を行った。
【0087】(比較例4)接合すべき2本の鋼管の内、
一方の鋼管の管端面の表面粗さRmaxを70μm、他
方の表面粗さRmaxを10μmとし、接合温度を13
00℃、保持時間を600秒、加圧力を4MPa、接合
時に炉内にHeを導入した以外は、実施例4と同様の手
順により二相ステンレス鋼管の接合を行った。
【0088】実施例4〜6及び比較例3、4で得られた
接合後の鋼管から、実施例1と同様の手順により、試験
片を切り出し、引張試験及び側曲げ試験を行った。結果
を表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】接合面の表面粗さRmaxを50μm以下
とした実施例4、5及び6では、接合後の鋼管には、い
ずれも亀裂、変形は認められず、良好な接合体が得られ
た。引張強度は、それぞれ、818MPa、821MP
a及び825MPaであり、僅かではあるが、表面粗さ
Rmaxが小さくなるにつれ引張強度が高くなる傾向が
認められた。また、いずれの試験片とも母材から破断し
ており、接合界面から破断するものはなかった。さら
に、側曲げ試験を行ったところ、いずれの試験片とも、
180゜折り曲げられ、折り曲げた部分が破断すること
はなかった。
【0091】これに対し、接合面の表面粗さRmaxを
双方とも100μmとした比較例3では、保持時間を6
00秒まで延長したにもかかわらず、試験片の引張強度
は695MPaまで低下し、試験片は接合界面から破断
した。また、側曲げ試験を行ったところ、試験片は、完
全に折り曲げる前に接合界面から破断した。破断面を観
察したところ、表面粗さが粗いことに起因する未接合部
が、破断面全面に渡って点在していた。
【0092】また、接合すべき2本の鋼管の内、一方の
表面粗さを70μm、他方を10μmとした比較例4で
は、同様に保持時間を600秒まで延長したにもかかわ
らず、試験片の引張強度は738MPaにとどまり、試
験片は、接合界面から破断した。また、側曲げ試験を行
ったところ、試験片は、完全に折り曲げる前に接合界面
から破断した。破断面を観察したところ、比較例3より
は少ないが、やはり、未接合部が破断面全面に渡って点
在していた。
【0093】以上の結果から、接合部材の変形を抑制可
能な比較的低圧力、短時間の接合条件下において、未接
合部の発生を防止し、高い接合強度を得るためには、接
合面の表面粗さを50μm以下とすることが望ましいこ
とがわかった。
【0094】(実施例7)接合材は、融点が1430℃
である二相ステンレス鋼SUS329J1(JIS43
03)からなる外径200mm、肉厚20mmの鋼管を
用い、鋼管の接合面は、Rmaxが50μmとなるよう
に仕上げた。このような2本の鋼管を管端面で突き合わ
せて、図3に示す雰囲気形成装置を備えた高周波誘導加
熱装置にセットし、界面に3MPaの加圧力を付加し
た。
【0095】次いで、装置内を真空に排気後、装置内に
Heガスを導入し、誘導コイルに100kHzの高周波
を印加して、接合温度1280℃、保持時間60秒の条
件下で、二相ステンレス鋼管の接合を行った。なお、本
実施例では、鋼管の外周に設けた誘導コイルの形状及び
印加する電力を制御することにより、1280℃加熱領
域の幅が30mm(肉厚の1.5倍)となるようにし
た。
【0096】(実施例8)鋼管の接合面の表面粗さRm
axを10μm、誘導コイルに印加する周波数を3kH
z、接合温度を1300℃、保持時間を120秒、加圧
力を4MPa、接合時に装置内にArを導入した以外
は、実施例7と同様の手順により、二相ステンレス鋼管
の接合を行った。
【0097】(実施例9)接合装置として高周波直接通
電加熱装置を用いた以外は、実施例7と同様の手順によ
り、二相ステンレス鋼管の接合を行った。なお、128
0℃加熱領域の幅は、給電端子の間隔及び印加する電力
を制御することにより、30mm(肉厚の1.5倍)と
なるようにした。
【0098】(比較例5)鋼管の接合面の表面粗さRm
axを10μm、誘導コイルに印加する周波数を200
kHz、接合温度を1300℃、保持時間を600秒、
接合面に付加する加圧力を4MPa、接合時に装置内に
Arを導入した以外は、実施例7と同様の手順により、
二相ステンレス鋼管の接合を行った。
【0099】(比較例6)接合装置として高周波直接通
電加熱装置を用い、給電端子に印加する周波数を200
kHz、鋼管の接合面の表面粗さRmaxを30μm、
接合温度を1300℃、保持時間を300秒、接合面に
付加する加圧力を4MPaとした以外は、実施例7と同
様の手順により、二相ステンレス鋼管の接合を行った。
【0100】実施例7〜9及び比較例5、6で得られた
接合後の鋼管から、実施例1と同様の手順により、試験
片を切り出し、引張試験及び側曲げ試験を行った。結果
を表3に示す。
【0101】
【表3】
【0102】高周波誘導加熱法又は高周波直接通電加熱
法を用い、周波数が100kHz以下の条件で接合し
た、実施例7、8及び9では、接合界面に亀裂、変形は
認められず、良好な接合体が得られた。接合体の引張強
度は、それぞれ、821MPa、821MPa及び81
8MPaであり、いずれも母材から破断した。また、側
曲げ試験を行ったところ、いずれも180゜折り曲げら
れ、折り曲げた部分が破断することはなかった。
【0103】一方、高周波誘導加熱法又は高周波直接通
電加熱法を用い、周波数が200kHzの条件で接合し
た比較例5及び6では、保持時間をそれぞれ600秒及
び300秒まで延長したにもかかわらず、引張強度は、
それぞれ、785MPa及び757MPaであり、試験
片は、いずれも接合界面から破断した。また、側曲げ試
験を行ったところ、試験片は、いずれも完全に折り曲げ
ることができず、接合界面から破断した。破断面を観察
したところ、いずれも、鋼管内周面側に未接合部が認め
られた。
【0104】以上の結果から、高周波誘導加熱法又は高
周波直接通電加熱法により接合を行う場合において、未
接合部の発生を抑制し、接合面全面を均一に接合するに
は、印加する周波数を100kHz以下とする必要があ
ることがわかった。また、加熱方法による差異はなく、
接合条件が適切であれば、いずれの方法によっても良好
な接合体が得られることがわかった。
【0105】(実施例10)接合材は、融点が1430
℃である二相ステンレス鋼SUS329J1(JIS4
303)からなる外径200mm、肉厚20mmの鋼管
を用い、鋼管の接合面は、Rmaxが50μmとなるよ
うに仕上げた。このような2本の鋼管を管端面で突き合
わせて、図3に示す雰囲気形成装置を備えた高周波誘導
加熱装置にセットし、界面に3MPaの加圧力を付加し
た。
【0106】次いで、装置内を真空に排気した後、装置
内に不活性ガスを導入することなく真空中において、誘
導コイルに100kHzの高周波を印加して、接合温度
1280℃、保持時間60秒の条件下で、二相ステンレ
ス鋼管の接合を行った。なお、本実施例の場合、128
0℃加熱領域の幅は、40mm(肉厚の2.0倍)とな
るようにした。
【0107】(実施例11)接合面の表面粗さRmax
を10μm、誘導コイルに印加する高周波の周波数を3
kHz、接合温度を1300℃、保持時間を120秒、
接合面に付加する加圧力を4MPaとし、接合時に装置
内にArガスを導入し、1280℃加熱領域の幅を30
mm(肉厚の1.5倍)となるようにした以外は、実施
例10と同様の手順により、二相ステンレス鋼管の接合
を行った。
【0108】(実施例12)接合装置として、高周波直
接通電加熱装置を用い、給電端子に印加する周波数を1
00kHz、接合時に装置内にHeガスを導入した以外
は、実施例10と同様の手順により、二相ステンレス鋼
管の接合を行った。
【0109】(実施例13)接合面の表面粗さRmax
を10μm、誘導コイルに印加する高周波の周波数を3
kHz、接合温度を1300℃、保持時間を300秒、
接合面に付加する加圧力を4MPaとし、接合時に装置
内にArガスを導入し、1280℃加熱領域の幅を50
mm(肉厚の2.5倍)となるようにした以外は、実施
例10と同様の手順により、二相ステンレス鋼管の接合
を行った。
【0110】(実施例14)接合装置として、高周波直
接通電加熱装置を用い、給電端子に印加する周波数を5
0kHz、接合面の表面粗さRmaxを30μm、接合
温度を1300℃、保持時間を300秒、界面に付加す
る加圧力を4MPaとし、接合時に装置内にHeガスを
導入し、1280℃加熱領域の幅を60mm(肉厚の
3.0倍)となるようにした以外は、実施例10と同様
の手順により、二相ステンレス鋼管の接合を行った。
【0111】実施例10〜14で得られた接合後の鋼管
から、実施例1と同様の手順により、試験片を切り出
し、引張試験及び側曲げ試験を行った。結果を表4に示
す。
【0112】
【表4】
【0113】1280℃加熱領域の幅を肉厚の2倍以下
となるようにした実施例10、11及び12では、いず
れも接合界面に亀裂、変形は認められず、良好な接合体
が得られた。引張強度は、それぞれ、819MPa、8
20MPa及び818MPaであった。また、試験片
は、いずれも1280℃加熱領域内の母材から破断した
が、該領域内での集中的な塑性変形はわずかであった。
さらに、側曲げ試験を行ったところ、いずれも180゜
折り曲げられ、折り曲げた部分が破断することはなかっ
た。
【0114】一方、1280℃加熱領域の幅を肉厚の
2.5倍となるようした実施例13及び肉厚の3.0倍
となるようにした実施例14では、同様に、得られた接
合体には亀裂、変形は認められず、良好な接合体が得ら
れた。また、側曲げ試験を行ったところ、いずれも18
0゜ 折り曲げられ、折り曲げた部分が破断することはな
かった。
【0115】しかしながら、引張試験を行ったところ、
引張強度は、実施例13で778MPa、実施例14で
787MPaとなり、実施例10〜12と比べて、若干
低い値となった。また、試験片は、いずれも1280℃
加熱領域内の母材部分から破断し、該領域内では、集中
的な塑性変形が生じていた。
【0116】以上の結果から、管状材料の場合、128
0℃加熱領域の幅を肉厚の2倍以下となるように制御す
ると、集中的な塑性変形に起因する接合界面近傍の強度
低下を抑制できることがわかった。また、加熱方法によ
る差異はなく、接合条件が適切であれば、いずれの方法
によっても良好な接合体が得られることがわかった。
【0117】(実施例15)接合材は、融点が1430
℃である二相ステンレス鋼SUS329J1(JIS4
303)からなる外径50mmの中実丸棒を用い、丸棒
の接合面は、Rmaxが50μmとなるように仕上げ
た。このような2本の丸棒を端面で突き合わせて、図3
に示す雰囲気形成装置を備えた高周波誘導加熱装置にセ
ットし、界面に3MPaの加圧力を付加した。
【0118】次いで、装置内を真空に排気した後、装置
内に不活性ガスを導入することなく真空中において、誘
導コイルに100kHzの高周波を印加し、接合温度1
280℃、保持時間60秒の条件下で、二相ステンレス
鋼丸棒の接合を行った。なお、本実施例の場合、128
0℃加熱領域の幅は、50mm(最大外径の1.0倍)
となるようにした。
【0119】(実施例16)接合面の表面粗さRmax
を10μm、誘導コイルに印加する高周波の周波数を3
kHz、接合温度を1300℃、保持時間を180秒、
接合面に付加する加圧力を5MPaとし、接合時に装置
内にてArガスを導入し、1280℃加熱領域の幅を3
0mm(最大外径の0.6倍)となるようにした以外
は、実施例15と同様の手順により、二相ステンレス鋼
丸棒の接合を行った。
【0120】(実施例17)接合装置として、高周波直
接通電加熱装置を用い、給電端子に印加する周波数を1
00kHz、接合時に装置内にHeガスを導入した以外
は、実施例15と同様の手順により、二相ステンレス鋼
管の接合を行った。
【0121】(実施例18)接合面の表面粗さRmax
を10μm、誘導コイルに印加する高周波の周波数を3
kHz、接合温度を1300℃、保持時間を450秒、
接合面に付加する加圧力を4MPaとし、1280℃加
熱領域の幅を60mm(最大外径の1.2倍)となるよ
うにした以外は、実施例15と同様の手順により、二相
ステンレス鋼丸棒の接合を行った。
【0122】(実施例19)接合装置として、高周波直
接通電加熱装置を用い、給電端子に印加する周波数を1
0kHz、接合面の表面粗さRmaxを30μm、接合
温度を1300℃、保持時間を300秒、界面に付加す
る加圧力を4MPaとし、接合時に装置内にHeガスを
導入し、1280℃加熱領域の幅を70mm(肉厚の
1.4倍)となるようにした以外は、実施例15と同様
の手順により、二相ステンレス鋼丸棒の接合を行った。
【0123】実施例15〜19で得られた接合後の丸棒
から、図6に示すように、中央に接合部を有する全長1
50mmのJIS Z2201 4号試験片を切り出
し、クロスヘッドスピード1mm/minの条件下で引
張試験を行った。また、図7に示すように、中央に接合
部を有する幅20mm、厚さ10mm、長さ250mm
の側曲げ試験片を切り出し、側曲げ試験を行った。結果
を表5に示す。
【0124】
【表5】
【0125】1280℃加熱領域の幅を最大外径以下と
した実施例15、16及び17では、いずれも接合界面
に亀裂、変形は認められず、良好な接合体が得られた。
引張強度は、それぞれ、821MPa、828MPa及
び817MPaであった。また、試験片は、いずれも1
280℃加熱領域内の母材から破断したが、該領域内で
の集中的な塑性変形はわずかであった。さらに、側曲げ
試験を行ったところ、いずれも180゜折り曲げられ、
折り曲げた部分が破断することはなかった。
【0126】一方、1280℃加熱領域の幅を最大外径
の1.2倍となるようした実施例18及び最大外径の
1.4倍とした実施例19では、同様に、接合界面に亀
裂、変形は認められず、良好な接合体が得られた。ま
た、側曲げ試験を行ったところ、いずれも180゜ 折り
曲げられ、折り曲げた部分が破断することはなかった。
【0127】しかしながら、引張試験を行ったところ、
引張強度は、実施例18で756MPa、実施例19で
774MPaとなり、実施例15〜17と比べて、若干
低い値となった。また、試験片は、いずれも1280℃
加熱領域内の母材部分から破断し、該領域内では、集中
的な塑性変形が生じていた。
【0128】以上の結果から、中実材料の場合、128
0℃加熱領域の幅を最大外径以下となるように制御する
と、集中的な塑性変形に起因する接合界面近傍の強度低
下を抑制できることがわかった。また、加熱方法による
差異はなく、接合条件が適切であれば、いずれの方法に
よっても良好な接合体が得られることがわかった。
【0129】(実施例20)接合材は、融点が1430
℃である二相ステンレス鋼SUS329J1(JIS4
303)を用い、その形状は、外径150mm、肉厚1
5mmの鋼管とし、鋼管の接合面は、Rmaxが50μ
mとなるように仕上げた。このような2本の鋼管を管端
面で突き合わせて、図3に示す雰囲気形成装置を備えた
高周波誘導加熱装置にセットし、界面に3MPaの加圧
力を付加した。
【0130】次いで、装置内を真空に排気した後、装置
内に不活性ガスを導入することなく真空中において、誘
導コイルに100kHzの高周波を印加し、接合温度1
280℃、保持時間60秒の条件で、二相ステンレス鋼
管の接合を行った。なお、本実施例の場合、1280℃
加熱領域の幅は、30mm(肉厚の2.0倍)、800
℃加熱領域の幅は、接合界面からの距離で75mm(肉
厚の5.0倍)となるようにした。
【0131】(実施例21)接合面の表面粗さRmax
を10μm、誘導コイルに印加する高周波の周波数を3
kHz、接合温度を1300℃、保持時間を120秒、
接合面に付加する加圧力を4MPaとし、装置内にAr
ガスを導入し、1280℃加熱領域の幅を25mm(肉
厚の1.7倍)、800℃加熱領域の幅を接合界面から
の距離で50mm(肉厚の3.3倍)となるようにした
以外は、実施例20と同様の手順により、二相ステンレ
ス鋼管の接合を行った。
【0132】(実施例22)接合装置として、高周波直
接通電加熱装置を用い、給電端子に印加する周波数を1
00kHz、接合時に装置内にArガスを導入した以外
は、実施例20と同様の手順により、二相ステンレス鋼
管の接合を行った。
【0133】(実施例23)接合面の表面粗さRmax
を10μm、誘導コイルに印加する高周波の周波数を3
kHz、接合温度を1300℃、保持時間を600秒、
接合面に付加する加圧力を4MPaとし、1280℃加
熱領域の幅を20mm(肉厚の1.3倍)、800℃加
熱領域の幅を接合界面からの距離で100mm(肉厚の
6.7倍)となるようにした以外は、実施例20と同様
の手順により、二相ステンレス鋼管の接合を行った。
【0134】(実施例24)接合装置として、高周波直
接通電加熱装置を用い、給電端子に印加する周波数を2
0kHz、接合面の表面粗さRmaxを30μm、接合
温度を1300℃、保持時間を300秒、界面に付加す
る加圧力を4MPaとし、接合時に装置内にHeガスを
導入し、1280℃加熱領域の幅を20mm(肉厚の
1.3倍)、800℃加熱領域の幅を接合界面からの距
離で90mm(肉厚の6.0倍)となるようにした以外
は、実施例20と同様の手順により、二相ステンレス鋼
管の接合を行った。
【0135】実施例20〜24で得られた接合後の鋼管
から、実施例1と同様の手順により、試験片を切り出
し、引張試験及び側曲げ試験を行った。また、得られた
接合体から、図8に示すように、中心に接合面を有する
板幅50mm、板厚5mm、長さ500mmの試験片を
切り出し、これをNaCl濃度15wt%の水溶液中に
浸漬し、H2S分圧1psi、CO2分圧5bar、試験
温度200℃の条件で腐食試験を行った。
【0136】腐食試験の評価は、走査型電子顕微鏡を用
い、倍率を1000倍として任意に選択した10視野に
ついて観察し、孔食が全く認められなかった場合を
「A」、孔食が観察された視野数が1視野以上3視野以
下である場合を「B」、それ以上の孔食が観察された場
合を「C」で表した。結果を表6に示す。
【0137】
【表6】
【0138】800℃加熱領域の幅を接合界面からの距
離で肉厚の5.0倍以下となるようにした実施例20、
21及び22では、いずれも接合界面に亀裂、変形は認
められず、良好な接合体が得られた。引張強度は、それ
ぞれ、821MPa、824MPa及び820MPaで
あり、いずれも母材から破断した。また、側曲げ試験を
行ったところ、いずれも180゜ 折り曲げられ、折り曲
げた部分が破断することはなかった。さらに、腐食試験
については、いずれも「A」評価であり、高い耐食性を
示した。
【0139】一方、800℃加熱領域の幅を接合界面か
らの距離で肉厚の6.7倍とした実施例23及び肉厚の
6.0倍とした実施例24については、同様に、接合界
面に亀裂、変形は認められず、良好な接合体が得られ
た。また、側曲げ試験を行ったところ、同様に、いずれ
も180゜ 折り曲げられ、折り曲げた部分が破断するこ
とはなかった。
【0140】しかしながら、引張試験を行ったところ、
実施例24では818MPaであり、実施例20〜22
と同等の値を示したが、実施例23では777MPaで
あり、若干低い値を示した。また、腐食試験について
は、いずれも「B」評価であり、実施例20〜22に比
べて耐食性が低下した。
【0141】以上の結果から、管状材料の場合、800
℃加熱領域の幅を接合界面からの距離で肉厚の5倍以下
となるように制御すれば、母材と同等の強度、靱性及び
耐食性を有する接合体が得られることがわかった。ま
た、加熱方法による差異はなく、接合条件が適切であれ
ば、いずれの方法によっても良好な接合体が得られるこ
とがわかった。
【0142】(実施例25)接合材は、融点が1430
℃である二相ステンレス鋼SUS329J1(JIS4
303)からなる外径75mmの中実丸棒を用い、丸棒
の接合面は、Rmaxが50μmとなるように仕上げ
た。このような2本の丸棒を端面で突き合わせて、図3
に示す雰囲気形成装置を備えた高周波誘導加熱装置にセ
ットし、界面に3MPaの加圧力を付加した。
【0143】次いで、装置内を真空に排気した後、装置
内に不活性ガスを導入することなく真空中において、誘
導コイルに100kHzの高周波を印加し、接合温度1
280℃、保持時間60秒の条件下で、二相ステンレス
鋼丸棒の接合を行った。なお、本実施例の場合、128
0℃加熱領域の幅は、70mm(最大外径の1.0
倍)、800℃加熱領域の幅は、接合界面からの距離が
187mm(最大外径の2.5倍)となるようにした。
【0144】(実施例26)接合面の表面粗さRmax
を10μm、誘導コイルに印加する高周波の周波数を3
kHz、接合温度を1300℃、保持時間を180秒、
接合面に付加する加圧力を4MPaとし、接合時に装置
内にArガスを導入し、1280℃加熱領域の幅を40
mm(最大外径の0.53倍)、800℃加熱領域の幅
を接合界面からの距離が50mm(最大外径の0.67
倍)となるようにした以外は、実施例25と同様の手順
により、二相ステンレス鋼丸棒の接合を行った。
【0145】(実施例27)接合装置として、高周波直
接通電加熱装置を用い、給電端子に印加する周波数を1
00kHz、接合時に装置内にArガスを導入した以外
は、実施例25と同様の手順により、二相ステンレス鋼
丸棒の接合を行った。
【0146】(実施例28)接合面の表面粗さRmax
を10μm、誘導コイルに印加する高周波の周波数を5
kHz、接合温度を1300℃、保持時間を600秒、
接合面に付加する加圧力を4MPaとし、1280℃加
熱領域の幅を30mm(最大外径の0.4倍)、800
℃加熱領域の幅を接合界面からの距離が200mm(最
大外径の2.67倍)となるようにした以外は、実施例
25と同様の手順により、二相ステンレス鋼丸棒の接合
を行った。
【0147】(実施例29)接合装置として、高周波直
接通電加熱装置を用い、給電端子に印加する周波数を2
0kHz、接合面の表面粗さRmaxを30μm、接合
温度を1300℃、保持時間を300秒、界面に付加す
る加圧力を4MPaとし、接合時に装置内にHeガスを
導入し、1280℃加熱領域の幅を50mm(最大外径
の0.67倍)、800℃加熱領域の幅を接合界面から
の距離が200mm(最大外径の2.67倍)となるよ
うにした以外は、実施例25と同様の手順により、二相
ステンレス鋼丸棒の接合を行った。
【0148】実施例25〜29で得られた接合後の丸棒
から、実施例15と同様の手順により、試験片を切り出
し、引張試験及び側曲げ試験を行った。また、接合後の
丸棒から、図9に示すように、中心に接合部を有する板
幅50mm、板厚5mm、長さ500mmの試験片を切
り出し、実施例20と同様の手順により、腐食試験を行
った。結果を表7に示す。
【0149】
【表7】
【0150】800℃加熱領域の幅を接合界面からの距
離で最大外径の2.5倍以下となるようにした実施例2
5、26及び27では、いずれも接合界面に亀裂、変形
は認められず、良好な接合体が得られた。引張強度は、
それぞれ、821MPa、818MPa及び817MP
aであり、いずれも母材から破断した。また、側曲げ試
験を行ったところ、いずれも180゜ 折り曲げられ、折
り曲げた部分が破断することはなかった。さらに、腐食
試験については、いずれも「A」評価であり、高い耐食
性を示した。
【0151】一方、800℃加熱領域の幅を接合界面か
らの距離で最大外径の2.67倍とした実施例28及び
29については、同様に、接合界面に亀裂、変形は認め
られず、良好な接合体が得られた。引張強度は、それぞ
れ、809MPa及び810MPaであり、いずれも母
材から破断した。また、側曲げ試験を行ったところ、同
様に、いずれも180゜ 折り曲げられ、折り曲げた部分
が破断することはなかった。しかしながら、腐食試験に
ついては、いずれも「B」評価であり、実施例25〜2
7と比べて耐食性が低下した。
【0152】以上の結果から、中実材料の場合、800
℃加熱領域の幅を接合界面からの距離で最大外径の2.
5倍以下となるように制御すれば、母材と同等の強度、
靱性及び耐食性を有する接合体が得られることがわかっ
た。また、加熱方法による差異はなく、接合条件が適切
であれば、いずれの方法によっても良好な接合体が得ら
れることがわかった。
【0153】以上のように、二相ステンレス鋼同士を接
合する場合において、インサート材を介挿することなく
直接突き合わせて接合する本発明の方法であっても、接
合温度、保持時間、加圧力等の接合条件を最適化すれ
ば、母材と同等の強度と靱性を有する接合体が得られる
ことがわかった。また、1280℃加熱領域及び800
℃加熱領域の幅を所定の値以下となるように制御すれ
ば、加熱領域における集中的な塑性変形に起因する接合
界面近傍の強度低下及びσ相生成に起因する耐孔食性の
低下を抑制できることがわかった。
【0154】なお、本発明は、上記実施例に何ら限定さ
れるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種
々の改変が可能である。例えば、上記実施例では、鋼管
あるいは丸棒同志の接合について実施しているが、鋼管
とフランジや、外管と内管からなる金属二重管の接合、
板材の突き合わせ継手、重ね継手、T継手等の接合等、
あらゆる形状を有する部材同士の接合に適用できる。
【0155】また、上記実施例では、接合材として、二
相ステンレス鋼の一種であるSUS329J1を用いて
いるが、SUS329J3L、SUS329J4L等、
他の組成を有する二相ステンレス鋼や、これらの標準型
鋼種に種々の添加物を加えたステンレス合金にも適用可
能である。
【0156】さらに、上記実施例では、接合後に放冷を
行っているが、接合後に接合部を急冷すれば、接合体の
耐粒界腐食性、耐応力腐食割れ性を母材と同等に維持す
ることも可能である。また、接合後に接合部表面にショ
ットブラスト処理を施せば、接合部表面の切欠を除去で
きるとともに、表面に圧縮応力を発生させることができ
るので、接合部の引張強度及び疲労強度を向上させるこ
とが可能となる。
【0157】
【発明の効果】本発明に係る二相ステンレス鋼の接合方
法は、所定の表面粗さを有する二相ステンレス鋼同士を
直接突き合わせ、所定の温度、加圧力、保持時間及び接
合雰囲気下において接合することにより、二相ステンレ
ス鋼に超塑性変形を起こさせ、これにより接合界面に存
在する気孔を圧着させると共に、界面における元素の拡
散を促進させるようにしたので、比較的低圧力かつ短時
間の接合条件下で強度の高い接合継手が得られるという
効果がある。
【0158】また、インサート材を用いることなく接合
が行なわれるため、接合界面の組成が母材と同等に維持
され、インサート材に含まれる元素に起因する接合界面
近傍の脆化や耐食性の低下のおそれがないので、接合条
件の設定が簡略化されると共に、母材と同等の靱性及び
耐食性を有する接合継手を容易に得ることができるとい
う効果がある。
【0159】さらに、接合部を加熱する手段として、高
周波誘導加熱法又は高周波直接通電加熱法等の局部加熱
が容易な加熱手段を用い、1280℃加熱領域の幅及び
800℃加熱領域の幅を必要最小限に押さえるようにし
たので、加熱に伴う界面近傍の母材の強度、靱性及び耐
食性の低下を抑制することができるという効果がある。
【0160】以上のように、本発明は、母材と同等の強
度、靱性及び耐食性を有する接合体を高能率で得ること
ができるものであり、これを例えば油井管の接合に応用
した場合には、油漏れ、ガス漏れ等の不具合が発生しな
いばかりでなく、耐孔食性、耐応力腐食割れ性等に優れ
た接合継手が得られ、さらに、石油掘削のための作業時
間が大幅に短縮されることになるので、産業上その効果
の極めて大きい発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る二相ステンレス鋼の接合方法を実
施するための高周波誘導加熱装置の概略構成図である。
【図2】本発明に係る二相ステンレス鋼の接合方法を実
施するための高周波直接通電加熱装置の概略構成図であ
る。
【図3】本発明に係る二相ステンレス鋼の接合方法を実
施する際に用いられる雰囲気形成装置の概略構成図であ
る。
【図4】接合後の鋼管から切り出した引張試験片の形状
を示す図である。
【図5】接合後の鋼管から切り出した側曲げ試験片の形
状を示す図である。
【図6】接合後の丸棒から切り出した引張試験片の形状
を示す図である。
【図7】接合後の丸棒から切り出した側曲げ試験片の形
状を示す図である。
【図8】接合後の鋼管から切り出した腐食試験片の形状
を示す図である。
【図9】接合後の丸棒から切り出した腐食試験片の形状
を示す図である。
【図10】従来のねじ接続法(メカニカルカップ法)を
示す概略図である。
【図11】従来の鋼管の溶接法(オービタルウェルディ
ング法)を示す概略図である。
【符号の説明】
1、2 鋼管 1a、1b 鋼管の管端面 B 加熱機構(高周波誘導コイル) 11a、11b 給電端子

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フェライト・オーステナイト二相ステン
    レス鋼同士の接合方法であって、一方の二相ステンレス
    鋼部材の接合面と他方の二相ステンレス鋼部材の接合面
    とを直接接触させた状態で、非酸化雰囲気下、3MPa
    以上5MPa以下の加圧力で加圧しつつ、1280℃以
    上前記各二相ステンレス鋼の融点以下の温度に加熱し、
    60秒以上保持するようにしたことを特徴とする二相ス
    テンレス鋼の接合方法。
  2. 【請求項2】 前記接合面の表面粗さRmaxが、50
    μm以下であることを特徴とする請求項1に記載される
    二相ステンレス鋼の接合方法。
  3. 【請求項3】 前記二相ステンレス鋼部材の接合を、周
    波数が100kHz以下の条件で高周波誘導加熱法によ
    り行うことを特徴とする請求項1又は2に記載される二
    相ステンレス鋼の接合方法。
  4. 【請求項4】 前記二相ステンレス鋼部材の接合を、周
    波数が100kHz以下の条件で高周波直接通電加熱法
    により行うことを特徴とする請求項1又は2に記載され
    る二相ステンレス鋼の接合方法。
  5. 【請求項5】 前記二相ステンレス鋼部材が管状材料の
    場合には、接合時に1280℃以上に加熱される領域の
    幅が前記管状材料の肉厚の2倍以下、前記二相ステンレ
    ス鋼部材が中実材料の場合には、接合時に1280℃以
    上に加熱される領域の幅が前記中実材料の最大外径以下
    となるように前記二相ステンレス鋼部材を加熱するよう
    にしたことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載
    される二相ステンレス鋼の接合方法。
  6. 【請求項6】 前記二相ステンレス鋼部材が管状材料の
    場合には、接合時に800℃以上に加熱される領域の幅
    が接合面からの距離で前記管状材料の肉厚の2倍以下、
    前記二相ステンレス鋼部材が中実材料の場合には、接合
    時に800℃以上に加熱される領域の幅が接合面からの
    距離で前記中実材料の最大外径の2.5倍以下となるよ
    うに前記二相ステンレス鋼部材を加熱するようにしたこ
    とを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載され
    る二相ステンレス鋼の接合方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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