JP3705171B2 - レーザ溶接された鋼構造部材及びその鋼構造部材に用いる鋼材 - Google Patents
レーザ溶接された鋼構造部材及びその鋼構造部材に用いる鋼材 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ溶接された鋼構造部材及びその鋼構造部材に用いる鋼材に関し、詳しくは、疲労強度特性に優れたレーザ溶接部を有する鋼構造部材及びその鋼構造部材に用いる鋼材に関する。
【0002】
【従来の技術】
橋梁、船舶、海洋構造物、建築物、タンクなど各種の鋼構造物、なかでもその溶接部は破壊の起点となることも多く、強度、靱性、疲労特性など各種の機械的性質に優れていることが要求され、上記鋼構造物に使用される鋼材には、一般に構造安全性や経済性の観点から優れた溶接施工性が要求される。
【0003】
前記鋼構造物に要求される機械的性質のうちでも特に疲労特性は、降伏応力以下の比較的小さな応力でも構造物全体の破壊に到る可能性があるため、安全確保の観点から重要な特性である。なお、鋼構造物における溶接部の疲労強度特性は母材のそれより劣ることが多いので極めて重要である。
【0004】
溶接金属と溶接熱影響部とからなる溶接部の特性は、溶接方法、つまりエネルギ供給源の影響を受ける。
【0005】
従来、溶接のエネルギ供給源としては、▲1▼電気的エネルギ、▲2▼化学的エネルギ、▲3▼機械的エネルギ、▲4▼超音波エネルギ及び、▲5▼光エネルギが知られており、それぞれのエネルギ源の代表的な溶接方法として、▲1▼アーク溶接や抵抗溶接、▲2▼ガス溶接やテルミット溶接、▲3▼摩擦溶接、▲4▼超音波溶接、▲5▼レーザ溶接などがある。
【0006】
上記溶接方法のなかでレーザ溶接はエネルギを極めて高い密度に収束できる。このため、その溶接入熱量は他の溶接方法に比べて著しく低く、溶接による変形を小さく抑えることが可能である。したがって、レーザ溶接は薄鋼板の接合に加えて、近年では造船、建設機械などの分野における厚鋼板の接合にもその用途を広げつつあり、又、「レーザ加工」は薄鋼板や厚鋼板の切断にも用いられつつある。なお、レーザ加工は非接触の切断方法であるので加工歪みが生じやすい場合にも適用できるし、レーザスポットの軌跡は任意に描くことが可能なため様々な形状にも対応することができる。
【0007】
レーザ溶接した場合の鋼構造物やその溶接継手に対しても、従来の他の溶接方法による場合と同様、高い疲労強度特性を確保することは極めて重要である。
【0008】
レーザ溶接した場合の溶接部疲労強度の向上に関する技術として、特開平11−58060号公報に「レーザ突き合わせ溶接用治具及びレーザ突き合わせ溶接による溶接部構造」が開示されている。しかし、前記公報で提案された技術はレーザ溶接施工技術に関連するもので、溶接部の疲労強度向上のためには特殊なレーザ突き合わせ溶接用治具を用いる必要があり、必ずしも一般的な技術とはいい難い。
【0009】
特公平5−14782号公報には、「疲労特性に優れたレーザ加工用鋼板」に関する技術が開示されている。しかし、この公報で提案された技術は、単に自由表面となっているレーザ切断部の疲労強度に優れるレーザ加工用鋼板に関するものである。このため、この技術をレーザ溶接に適用しても必ずしもレーザ溶接部の疲労強度を高めることはできない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みなされたもので、その目的は、疲労強度特性に優れたレーザ溶接部を有する鋼構造部材と、その鋼構造部材に用いる鋼材を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記(1)〜(3)に示すレーザ溶接された鋼構造部材、(4)及び(5)に示すその鋼構造部材に用いる鋼材にある。
【0012】
(1)母材表面から1mmの深さにある位置で、レーザ溶接後のボンド部からの距離が1.6mm以内の領域における溶接金属側ビッカース硬さの重み付き平均値が、前記1.6mm以内の領域における溶接熱影響部側ビッカース硬さの重み付き平均値の1.6倍以下であるレーザ溶接された鋼構造部材。
【0013】
ここで、上記ボンド部からの距離が1.6mm以内の領域におけるビッカース硬さの重み付き平均値とは、試験力9.807N以下で試験した際、ボンド部からの距離がD(mm)の位置でのビッカース硬さをHV1D として下記 (1)式で表される値を指す。
【0014】
重み付き平均値=0.4×HV10.4 +0.3×HV10.8 +0.2×HV11.2 +0.1×HV11.6 ・・・(1)。
【0015】
(2)鋼が質量%で、C:0.003〜0.07%、Si:0.1〜0.6%、Mn:0.3〜2.0%、Al:0.01〜0.1%を含有し、残部はFe及び不純物からなる上記(1)に記載のレーザ溶接された鋼構造部材。
【0016】
(3)鋼が質量%で、C:0.003〜0.07%、Si:0.1〜0.6%、Mn:0.3〜2.0%、Al:0.01〜0.1%を含有し、更に、
第1群:Cr:0.01〜0.15%、Ni:0.01〜0.15%、Cu:0.1〜0.35%のうちの1種以上、
第2群:V:0.01〜0.07%、Nb:0.01〜0.06%のうちの1種以上、
第3群:Ti:0.003〜0.015%、Ca:0.0005〜0.006%のうちの1種以上、
の1群以上をも含み、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のMoは0.08%以下である上記(1)に記載のレーザ溶接された鋼構造部材。
【0017】
(4)レーザ出力L(W(ワット))、熱効率η、溶接速度v(cm/秒)の条件でレーザ溶接され、母材表面から1mmの深さにある位置で、レーザ溶接後のボンド部からの距離が1.6mm以内の領域における溶接金属側ビッカース硬さの重み付き平均値が、前記1.6mm以内の領域における溶接熱影響部側ビッカース硬さの重み付き平均値の1.6倍以下である厚さh(cm)の鋼構造部材に用いる鋼材であって、質量%で、C:0.003〜0.07%、Si:0.1〜0.6%、Mn:0.3〜2.0%、Al:0.01〜0.1%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のMoは0.08%以下で、且つ下記 (2)で表される値が100以下である鋼材。
【0018】
{3.91×106×(Lη)−1.2×(vh)1.2}/(e−24(HP1−0.2)+1)・・・(2)、
ここで、HP1は元素記号をその合金元素の質量%での含有量として下記 (3)式で表される値である。
【0019】
HP1=C+(Si/50)+(Mn/20)+(Mo/30)・・・(3)。
【0020】
(5)レーザ出力L(W(ワット))、熱効率η、溶接速度v(cm/秒)の条件でレーザ溶接され、母材表面から1mmの深さにある位置で、レーザ溶接後のボンド部からの距離が1.6mm以内の領域における溶接金属側ビッカース硬さの重み付き平均値が、前記1.6mm以内の領域における溶接熱影響部側ビッカース硬さの重み付き平均値の1.6倍以下である厚さh(cm)の鋼構造部材に用いる鋼材であって、質量%で、C:0.003〜0.07%、Si:0.1〜0.6%、Mn:0.3〜2.0%、Al:0.01〜0.1%を含有し、更に、
第1群:Cr:0.01〜0.15%、Ni:0.01〜0.15%、Cu:0.1〜0.35%のうちの1種以上、
第2群:V:0.01〜0.07%、Nb:0.01〜0.06%のうちの1種以上、
第3群:Ti:0.003〜0.015%、Ca:0.0005〜0.006%のうちの1種以上、
の1群以上をも含み、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のMoは0.08%以下で、且つ下記 (4)で表される値が100以下である鋼材。
【0021】
{3.91×106×(Lη)−1.2×(vh)1.2}/(e−24(HP2−0.2)+1)・・・・・(4)、
ここで、HP2は元素記号をその合金元素の質量%での含有量として下記 (5)式で表される値である。
【0022】
HP2=C+(Si/50)+{(Mn+Cu+Cr)/20}+(Ni/60)+(V/20)+Ca+(Mo/30)・・・(5)。
【0023】
なお、熱効率ηとはレーザ照射されたエネルギがどの程度被処理材である鋼材中に投入されるかを示す指標であり、出力エネルギに対する比率をいう。
【0024】
本発明者らは、疲労特性に優れたレーザ溶接部を有する鋼構造部材を得るために、先ず、レーザ溶接した場合の疲労亀裂発生部位に関して調査した。
【0025】
その結果、レーザ溶接の場合にも従来の他の溶接方法の場合と同様に溶接止端(以下、単に「止端」という)で疲労亀裂が発生することが明らかになった。なお、溶接継手における疲労亀裂発生部位が止端となるのは、止端は形状変化部であるため歪みが集中するという形状要因と、母材の熱影響部と溶接金属との境界であるボンド部の一部であるため材料面で不均質になっているという材料面的要因とによるものである。
【0026】
次いで、本発明者らは、レーザ溶接した場合の溶接接合部硬さ分布と疲労特性との関係について検討を加えた。これは、レーザ溶接は従来の他の溶接方法に比べて溶接入熱が極めて少なく溶接直後の冷却速度が非常に速いので、レーザ溶接した場合、前記大きな冷却速度のために鋼の成分系によっては溶接金属の硬さが母材の硬さに比べてかなり高い値となり、溶接金属と溶接熱影響部との境界であるボンド部の近傍における硬さ分布が従来の他の溶接継手と大きく異なることがあるため、その影響を明らかにしようとするものである。
【0027】
すなわち、構造用鋼として適用可能な各種の鋼を実験室規模で数多く溶製して鋼板を得、実際にレーザ溶接を初めとする各種の溶接方法を施して溶接継手を作製し、この継手から機械加工によって試験部幅が40mm、試験部平行長さが250mm、掴み部幅が70mmで全長が700mmの軸力疲労試験片を採取し、軸力荷重制限下のサイン波形(sin波形)で荷重比Rが0.1の条件での疲労試験を行い、継手疲労強度を評価した。
【0028】
その結果、先ず下記の事項が明らかになった。
【0029】
(a)同じ素材鋼の場合、炭酸ガスアーク溶接など従来の溶接方法では、鋼板の引張強度レベルを変えると、鋼板自身の母材疲労強度は引張強度に応じて向上するが、溶接継手の疲労強度には鋼板の強度レベルによる相違は認められない。
【0030】
(b)レーザ溶接した場合の継手の疲労強度には明瞭な鋼材依存性が認められる。
【0031】
そこで次に、レーザ溶接の場合に溶接継手の疲労強度が鋼材に依存する現象に関し、溶接施工によって生じる継手部の材料的又は形状的不均質性に着目して詳細に検討した。その結果、次の新たな知見を得た。
【0032】
(c)溶接金属と溶接熱影響部との境界であるボンド部の近傍における硬さ分布が疲労亀裂発生部の応力分布に大きく影響し、上記ボンド部の近傍における硬さ分布は、母材となる鋼の化学組成の影響を受ける。
【0033】
(d)ボンド部近傍の形状及びこの部位の材料によって疲労亀裂の発生と疲労強度が決定される。
【0034】
そこで更に、レーザ溶接部の硬さ分布(すなわち強度分布)を反映させて、ボンド部からの距離に応じて応力−歪み関係を適切に入力、すなわち、予め鋼板の引張強度と硬さとの関係をマスターカーブとして準備しておき、硬さ値から引張強度を推定し、又、その引張強度値を基に一様伸び、降伏応力を設定して弾塑性有限要素解析することを行った。その結果下記の事項が判明した。
【0035】
(e)ボンド部近傍における硬さ変化が大きい場合、硬さ急変部での歪み集中が大きくなり疲労亀裂の発生が容易になる。したがって、硬さ分布が均一なほど、レーザ溶接構造部材の疲労強度が向上する。
【0036】
(f)疲労亀裂発生点での歪み分布は、形状的な因子を除くと、継手内の疲労亀裂発生点近傍における強度分布(硬さ分布)で決定される。
【0037】
(g)疲労亀裂発生寿命を決定する亀裂発生部の歪み集中は、各種加工、脱炭、酸化皮膜などの影響がない母材表面から1mmの深さにある位置での硬さ分布と相関を有する。すなわち、上記位置でのレーザ溶接後の溶接金属側1.6mm以内の領域におけるボンド部からの距離をパラメータとする硬さの重み付き平均値と、ボンド部から母材側、つまり溶接熱影響部側1.6mm以内の領域におけるボンド部からの距離をパラメータとする硬さの重み付き平均値との比率が亀裂発生部の歪み集中に大きく影響し、上記比率が1.6以下の場合にレーザ溶接構造部材は良好な疲労強度を有する。
【0038】
そこで更に、前記母材表面から1mmの深さにある位置で、レーザ溶接後のボンド部からの距離が1.6mm以内の領域における溶接金属側ビッカース硬さの重み付き平均値が、前記1.6mm以内の領域における溶接熱影響部側ビッカース硬さの重み付き平均値の1.6倍以下となる溶接構造部材を得るための、レーザ溶接条件および鋼材の組合せを特定すべく検討を行った。
【0039】
その結果、下記の事項が判明した。
【0040】
(h)HVmax を溶接部の最高ビッカース硬さ、HVBMを母材のビッカース硬さとして、「(HVmax −HVBM)/(mm単位での溶接熱影響部の幅)」の値が100以下となるようにレーザ溶接条件、鋼材成分を組合せることによって、母材表面から1mmの深さにある位置で、レーザ溶接後のボンド部からの距離が1.6mm以内の領域における溶接金属側ビッカース硬さの重み付き平均値が、前記1.6mm以内の領域における溶接熱影響部側ビッカース硬さの重み付き平均値の1.6倍以下を安定且つ確実に達成することができる。なお、以下の説明において、「溶接熱影響部の幅」を「HAZ幅」ということがある。
【0041】
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものである。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、化学成分の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
【0043】
本発明においては、母材表面から1mmの深さにある位置におけるレーザ溶接後のボンド部の近傍における硬さ分布を規定する。
【0044】
これは、鋼構造部材を構成する鋼材の極表層の硬さ値には、各種の加工、脱炭、酸化皮膜などが複雑に影響するが、母材表面から1mmの深さにある位置の硬さ値には、上記の各種加工、脱炭、酸化皮膜などが影響することがないためである。
【0045】
上記母材表面から1mmの深さにある位置で、レーザ溶接後のボンド部からの距離が1.6mm以内の領域における溶接金属側ビッカース硬さの重み付き平均値が、前記1.6mm以内の領域における溶接熱影響部側ビッカース硬さの重み付き平均値の1.6倍を超えると、歪み集中が生じて疲労亀裂が著しく発生しやすくなる。したがって、上記溶接金属側ビッカース硬さの重み付き平均値を溶接熱影響部側ビッカース硬さの重み付き平均値の1.6倍以下と規定した。ここで、上記ボンド部からの距離が1.6mm以内の領域におけるビッカース硬さの重み付き平均値が、試験力9.807N以下で試験した際、ボンド部からの距離がD(mm)の位置でのビッカース硬さをHV1D として下記 (1)式で表される値を指すことは既に述べたとおりであり、 (1)式における各係数は、疲労亀裂発生部における歪み集中係数に及ぼす影響度合いを考慮して決定したものである。
【0046】
重み付き平均値=0.4×HV10.4 +0.3×HV10.8 +0.2×HV11.2 +0.1×HV11.6 ・・・(1)。
【0047】
なお、本発明においては硬さの測定間隔を0.4mmとした。これは、弾塑性有限要素解析による硬さ分布、すなわち材料強度分布が疲労亀裂発生部の歪み集中に及ぼす影響を詳細に調査した結果、歪み集中を精度良く評価するためには測定間隔を0.4mmとすれば十分であると判明したことに基づくものである。硬さ測定を0.4mm未満の間隔で行ってもよいが、時間と労力が嵩む。
【0048】
ビッカース硬さ試験における試験力を9.807N以下としたのは、これより大きな試験力では、上記0.4mm間隔の硬さ測定を行う場合に、JIS Z 2244のビッカース硬さ試験−試験方法に規定されたくぼみの位置条件を満たさない場合が生ずるからである。なお、試験力は9.807N以下でありさえすればどんな値としてもよいが、例えば前記JIS Z 2244の表1に記載の0.09807〜9.807Nの試験力とすることが好ましい。
【0049】
次に、本発明のレーザ溶接された鋼構造部材の素材鋼は、その化学組成を以下のようにするのがよい。
【0050】
C:0.003〜0.07%
Cは、鋼構造物の強度確保のために0.003%以上の含有量とするのがよい。一方、その含有量が0.07%を超えると、小入熱を特徴とするレーザ溶接後の急速冷却によって溶接金属の硬さが極めて高くなり、その結果、通常のレーザ溶接条件の下では前記の硬さ規定を満たすことができない場合がある。したがって、Cの含有量は0.003〜0.07%とするのがよい。なお、C含有量の上限は0.05%とすることがより好ましい。
【0051】
Si:0.1〜0.6%
Siは、脱酸作用を有するので0.1%以上の含有量とするのがよい。一方、その含有量が0.6%を超えると、破壊靱性値が低下する場合がある。したがって、Siの含有量は0.1〜0.6%とするのがよい。なお、Si含有量は0.25〜0.5%とすることがより好ましい。
【0052】
Mn:0.3〜2.0%
Mnは、鋼構造物の強度確保のためと、レーザ溶接時の凝固割れの防止のために0.3%以上の含有量とするのがよい。一方、その含有量が2.0%を超えると、レーザ溶接施工が困難となる場合がある。したがって、Mnの含有量は0.3〜2.0%とするのがよい。なお、Mn含有量は0.5〜1.8%とすることがより好ましい。
【0053】
Al:0.01〜0.1%
Alは、脱酸作用を有するので0.01%以上の含有量とするのがよい。一方、その含有量が0.1%を超えると、破壊靱性値が低下したり鋼の清浄性が確保し難くなることがある。したがって、Alの含有量は0.01〜0.1%とするのがよい。なお、Al含有量の上限は0.05%とすることがより好ましい。本発明でいうAl含有量とは、sol.Al(酸可溶Al)量を指す。
【0054】
本発明のレーザ溶接された鋼構造部材の素材鋼には、上記の各成分元素に加えて更に、前記第1群〜第3群のうちの1群以上を含有させてもよい。これらの合金元素の作用効果と望ましい含有量は下記のとおりである。
【0055】
Cr:0.01〜0.15%、Ni:0.01〜0.15%、Cu:0.1〜0.35%
Cr、Ni及びCuには微量で低温での靱性を改善する作用があり、又、溶接熱影響部の靱性を改善する作用もある。そのため、低温での靱性や溶接接合部での靱性を確保する目的で含有させてもよいが、上記3元素のいずれについてもその含有量が0.01%未満では前記効果が得難い。一方、Crを0.15%を超えて、Niを0.15%を超えて、又、Cuを0.35%を超えて含有させても、前記効果が飽和するばかりか、却って靱性劣化を招く場合もある。したがって、上記のC〜Alに加えて更に、Cr、Ni、Cuのうちの1種以上を添加する場合には、Crの含有量を0.01〜0.15%、Niの含有量を0.01〜0.15%、Cuの含有量を0.1〜0.35%とするのがよい。
【0056】
V:0.01〜0.07%、Nb:0.01〜0.06%
V及びNbには靱性や強度を高める作用があるので、鋼材に靱性や強度を確保させたい場合にはこれらの元素を含有させてもよいが、いずれもその含有量が0.01%未満では前記効果が得難い。一方、Vを0.07%を超えて、又、Nbを0.06%を超えて含有させると、溶接熱影響部の靱性が劣化する場合がある。したがって、上記のC〜Alに加えて更に、V、Nbのうちの1種以上を添加する場合には、Vの含有量を0.01〜0.07%、Nbの含有量を0.01〜0.06%とするのがよい。
【0057】
Ti:0.003〜0.015%、Ca:0.0005〜0.006%
Ti及びCaには溶接熱影響部の組織を微細化する作用があるので、溶接熱影響部組織を微細化して機械的性質を高める等の目的で含有させてもよいが、Ti含有量が0.003%未満、Ca含有量が0.0005%未満では前記溶接熱影響部組織の微細化効果が得難い。一方、Tiを0.015%を超えて含有させると靱性が劣化するし、Caを0.006%を超えて含有させるとCaO介在物の含有量が多くなり過ぎて鋼の清浄度が著しく低下する。したがって、上記のC〜Alに加えて更に、Ti、Caのうちの1種以上を添加する場合には、Tiの含有量を0.003〜0.015%、Caの含有量を0.0005〜0.006%とするのがよい。
【0058】
なお、不純物元素としてのMoは、その含有量を以下のとおりにするのがよい。
【0059】
Mo:0.08%以下
Moは、COD(亀裂開口変位)特性など破壊靱性に悪影響を及ぼす島状マルテンサイト組織の生成を助長し、特にその含有量が0.08%を超えると島状マルテンサイト組織の割合が増加して溶接部の破壊靱性が著しく低下する場合がある。したがって、不純物としてのMoの含有量は0.08%以下とするのがよい。
【0060】
又、本発明の出力L(W(ワット))、熱効率η、溶接速度v(cm/秒)の条件でレーザ溶接され、母材表面から1mmの深さにある位置で、レーザ溶接後のボンド部からの距離が1.6mm以内の領域における溶接金属側ビッカース硬さの重み付き平均値が、前記1.6mm以内の領域における溶接熱影響部側ビッカース硬さの重み付き平均値の1.6倍以下である厚さh(cm)の鋼構造部材に用いる鋼材は、その化学組成を前記したC〜Moの範囲にするとともに、前記(2)又は(4)で表される値が100以下を満たすようにするのがよい。
【0061】
すなわち、上記厚さh(cm)の鋼構造部材に用いる鋼材が、質量%で、C:0.003〜0.07%、Si:0.1〜0.6%、Mn:0.3〜2.0%、Al:0.01〜0.1%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のMoは0.08%以下の場合、前記 (2)で表される値が100以下を満たすようにするのがよい。
【0062】
又、上記厚さh(cm)の鋼構造部材に用いる鋼材が、質量%で、C:0.003〜0.07%、Si:0.1〜0.6%、Mn:0.3〜2.0%、Al:0.01〜0.1%を含有し、更に、
第1群:Cr:0.01〜0.15%、Ni:0.01〜0.15%、Cu:0.1〜0.35%のうちの1種以上、
第2群:V:0.01〜0.07%、Nb:0.01〜0.06%のうちの1種以上、
第3群:Ti:0.003〜0.015%、Ca:0.0005〜0.006%のうちの1種以上、
の1群以上をも含み、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のMoは0.08%以下である場合、前記 (4)で表される値が100以下を満たすようにするのがよい。
【0063】
以下、前記(2)又は(4)で表される値が100以下を満たすようにするのがよい理由について説明する。
【0064】
図2は縦軸に溶接金属側ビッカース硬さの重み付き平均値と溶接熱影響部側ビッカース硬さの重み付き平均値との比(硬さ比)、横軸に「(HVmax −HVBM)/(mm単位でのHAZ幅)」の値の測定値をとって整理した図である。この図から、「(HVmax −HVBM)/(mm単位でのHAZ幅)」の値が100以下であれば、母材表面から1mmの深さにある位置で、レーザ溶接後のボンド部からの距離が1.6mm以内の領域における溶接金属側ビッカース硬さの重み付き平均値が、前記1.6mm以内の領域における溶接熱影響部側ビッカース硬さの重み付き平均値の1.6倍以下という条件が安定且つ確実に達成でき、したがって、疲労強度に優れた溶接構造部材の実現可能なことが明らかである。
【0065】
なお、上記「(HVmax −HVBM)/(mm単位でのHAZ幅)」の値(つまり、HVmax 、HVBM及びmm単位でのHAZ幅の具体的な値)の測定は、実際にレーザ溶接した小型サンプルを用いて測定しても良いが、多くの時間と労力とが必要になる。したがって、前記の値を実際のレーザ溶接を行うことなく見積もることが極めて重要になる。
【0066】
そこで、本発明者らが種々検討を行った結果、下記(A)〜(E)の手順に従って処理することで、レーザ溶接条件としてのレーザ出力L(W(ワット))、熱効率η及び溶接速度v(cm/秒)、並びに鋼構造部材の厚さh(cm)とその部材に用いる鋼材の化学組成がわかれば、実際にレーザ溶接を行わなくても「(HVmax −HVBM)/(mm単位でのHAZ幅)」の値の見積もりができることが明らかになった。
【0067】
(A) レーザ溶接条件として、レーザ出力L(W)、熱効率η、溶接速度v(cm/秒)及び被処理材である鋼材の厚さh(cm)を設定する。
【0068】
(B) 2次元熱流を仮定することにより、800〜500℃の温度域での冷却時間(秒)とHAZ幅(mm)を理論解から導出する。
【0069】
(C) 上記 (B)の800〜500℃の温度域での冷却時間(秒)と、被処理材である鋼材の化学組成(すなわち母材の化学組成)から、800〜500℃の温度域での冷却時間が1秒における(HVmax −HVBM)の値を推定する。
【0070】
(D) 800〜500℃の温度域での冷却時間が1秒における(HVmax −HVBM)の推定値を用いて、溶接条件から推定される冷却時間における(HVmax −HVBM)の値を導出する。
【0071】
(E) 2次元熱流を仮定して求めた上記 (B)のHAZ幅から、「(HVmax −HVBM)/(mm単位でのHAZ幅)」の値を算出する。
【0072】
以下、上記(A)〜(E)に関して詳しく説明する。
【0073】
手順 (A): ここでは、レーザ溶接条件として、レーザ出力L(W)、熱効率η、溶接速度v(cm/秒)及び被処理材である鋼材の厚さh(cm)を設定する。
【0074】
通常、レーザ溶接施工においては、被処理材である鋼材の厚さh(cm)を貫通させるようなレーザ出力と溶接速度の組合せを用いる。具体的な組合せについては、例えば、木谷の解説(圧力技術、第36巻第6号(1998年)、第460〜465ページ)に記されているものを用いることにすればよい。
【0075】
なお、既に述べたように熱効率ηとはレーザ照射されたエネルギがどの程度被処理材である鋼材中に投入されるかを示す指標で、出力エネルギに対する比率を指す。この熱効率は、一般にシールドガスの影響なども受け、溶接・接合便覧(編者:社団法人溶接学会、発行所:丸善株式会社、発行日:平成2年9月30日)には、熱効率ηが60%の場合があることも示されている。ここでは、後述する (B)の2次元熱流理論解析による800〜500℃の温度域での冷却時間(秒)と、熱電対を用いた800〜500℃の温度域での冷却時間の実測値とを比較し、両者の対応から、フォーカス量が2.5mm以上の場合には熱効率ηとして0.5を用いればよく、フォーカス量が2.5mm未満の場合には、熱効率ηとして0.25を用いればよいことがわかった。なお、「フォーカス量」とは、レーザ光を円錐状に集束する際の、集束した点と被処理材である鋼材表面との距離を指す。
【0076】
手順 (B): 溶接冶金学(著者:松田福久、発行所:日刊工業新聞社、発行日:昭和50年8月20日)において、レーザ溶接のようなエネルギビーム溶接を行った際の温度分布は、2次元熱流によって精度良く近似できることが明らかにされている。すなわち、2次元熱流の仮定をおくと、下記の (6)式から温度θ(℃)における冷却速度CR「θ」(℃/秒)が又、 (7)式から、温度θ1(℃)からθ2(℃)までの冷却時間CT「θ1〜θ2」(秒)が各々与えられる。
【0077】
上記『溶接冶金学』おいては、λを熱伝導度(cal/(cm・℃・秒)、cを比熱(cal/(g・℃)、ρを密度(g/cm3 )、vを溶接速度(cm/分)、hを被処理材である鋼材の厚さ(cm)、Lをレーザ出力(W)、ηを熱効率、Qを入熱でLηに相当するもの、θを冷却速度を求めている温度(℃)、θ1とθ2をそれぞれ冷却時間を求めようとしている高温側温度(℃)と低温側温度(℃)、又、θ0を初期温度(或いは環境温度、(℃))として、以下の式が示されている。
【0078】
CR「θ」=2πλcρ(vh/Q)2 (θ−θ0)3 ・・・(6)、
CT「θ1〜θ2」=(4πλcρ)−1(Q/vh)2 {(θ2−θ0)−2−(θ1−θ0)−2}・・・(7)。
【0079】
上記 (7)式から、任意の溶接条件での冷却時間CT(秒)が容易に計算できる。橋本らは、この理論式に基づいて論文(溶接学会誌、第33巻第10号(1964年)、第918〜927ページ)中で、電子ビーム溶接した際の溶接熱影響部における800〜500℃の温度域での冷却時間CT「800〜500」(秒)について、次の (8)式を提案している。
【0080】
CT「800〜500」=3.8×10−2×{(EI・η)/(vh)}2 ×{(500−θ0)−2− (800−θ0)−2}・・・(8)、
ここで、EIは電子ビームの出力(W)を指し、その他の記号は既に述べたものと同じである。
【0081】
本発明が対象とするレーザ溶接の熱伝導挙動は、上記電子ビーム溶接の熱伝導挙動と極めて類似している。したがって、レーザ溶接に対しては、上記 (8)式と同様の (9)式が適用できると考えてよい。
【0082】
CT「800〜500」=3.8×10−2×{(Lη)/(vh)}2 ×{(500−θ0)−2− (800−θ0)−2}・・・(9)。
【0083】
ここで、CT「800〜500」はレーザ溶接した際の溶接熱影響部における800〜500℃の温度域での冷却時間(秒)である。初期温度(或いは環境温度)のθ0を20℃とすれば、下記 (10)式が得られる。なお、既に述べたようにLはレーザ出力(W)を指す。
【0084】
CT「800〜500」=1.025×10−7×{(Lη)/(vh)}2 ・・・(10)。
【0085】
この(10)式から、フォーカス量が2.5mm以上の場合には熱効率ηとして0.5を用い、又、フォーカス量が2.5mm未満の場合には、熱効率ηとして0.25を用いることで、800〜500℃の温度域での冷却時間(秒)を推定することが可能である。
【0086】
一方、cm単位でのHAZ幅はある特定の最高到達温度(℃)に対し、その等温度線から求めることができ、mm単位でのHAZ幅は上記cm単位でのHAZ幅を10倍することで求められる。
【0087】
すなわち、2次元熱流を仮定した場合、ある特定の最高到達温度θmax (℃)に対し、その等温度線と溶融境界線との距離y「θmax」(cm)は、前記した溶接冶金学によれば下記(11)式で表される。
【0088】
(θmax−θ0)−1={4.13cρh・y「θmax」/(Q/v)}+(θm−θ0)−1・・・(11)、
ここで、θmaxは最高到達温度(℃)、θmは被処理材である鋼材の溶融点温度(℃)を指し、その他の記号は既に述べたものと同じである。
【0089】
上記(11)式をy「θmax」(cm)について解けば、(12)式が得られる。この(12)式から、ある設定された温度θmax(℃)に到達した位置の溶融境界線からの距離を求めることができる。
【0090】
yθ「max」= {(θmax−θ0)−1−(θm−θ0)−1}(Q/v)/(4.13cρh)・・・(12)。
【0091】
例えば、mm単位でのHAZ幅を見積もるのに際し、最高到達温度θmaxがそれぞれ1350℃と750℃で挟まれた領域を溶接熱影響部(すなわちHAZ)とし、溶融点温度θmを1530℃、θ0を20℃、cρを前記した溶接冶金学に記載の3.9cal/(cm3 ・℃)とすることで、先ず、cm単位でのHAZ幅を下記 (13)式を用いて算出することができる。そして、(13)式を用いて算出したcm単位でのHAZ幅を10倍することでcm単位でのHAZ幅を求めることができる。
【0092】
【0093】
以上説明した手順(A)及び(B)に基づいて、レーザ出力Lが5〜30kW、熱効率ηが0.5と0.6、溶接速度vが50〜250cm/分、すなわち0.83〜4.2cm/秒、被処理材である鋼材の厚さhが0.2〜1.7cmの場合について、800〜500℃の温度域での冷却時間(秒)とHAZ幅(mm)を計算した結果の一例を、表1〜5に示す。
【0094】
なお、計算で得られたHAZ幅が0.8mm以下の場合には、溶融部が鋼材の厚さ方向に貫通しないと判断し、表に解析結果を示さなかった。又、低いレーザ出力で貫通溶接できる場合、高出力のレーザを照射することは実際の施工では考えられない。そこで、レーザ出力が5kWを超える出力に対しては、その出力未満では溶接できない条件の解析結果のみを示した。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
【表4】
【0099】
【表5】
【0100】
上記の、手順(A)及び(B)に基づいて計算した結果の一例を示す表1〜5から、下記▲1▼〜▲4▼の事項が明らかである。
【0101】
▲1▼実用的な溶接条件下では、HAZ幅は高々1.8mm程度である。
【0102】
▲2▼実用的な溶接条件下では、800〜500℃の温度域での冷却時間はほぼ1〜2秒であり、0.2〜5秒の範囲をカバーすれば十分である。
【0103】
▲3▼レーザ出力の上昇に伴い、溶接可能な板厚(すなわち、被処理材である鋼材の厚さ)と溶接速度が大きくなる。
【0104】
▲4▼熱効率によって、HAZ幅、800〜500℃の温度域での冷却時間がともに変化する。
【0105】
手順 (C): 次に、800〜500℃の温度域での任意の冷却時間t(秒)における(HVmax −HVBM)の値(以下、単に(HVmax −HVBM)と表記する)を導出するために、冷却時間が1秒における(HVmax −HVBM)の値((HVmax「1」 −HVBM)と表記することがある)を推定する。
【0106】
本発明者らは、予備実験を行って、レーザ出力L(W(ワット))、被処理材である鋼材の厚さh(mm)、溶接速度v(cm/秒)の各種組合せの場合に、800〜500℃の温度域での冷却時間が1秒となる条件を見出し、これに基づいて各種鋼材に対しレーザ溶接を行い、(HVmax「1」 −HVBM)の値を実測した。
【0107】
その結果、800〜500℃の温度域での冷却時間が1秒における(HVmax −HVBM)の値、すなわち(HVmax「1」 −HVBM)は、被処理材である鋼材の化学組成によって一義的に決まることが判明した。更に、800〜500℃の温度域での冷却時間が1秒における(HVmax「1」 −HVBM)の値は、下記(14)式によって高い相関で近似できることも新たに判明した。
【0108】
(HVmax「1」 −HVBM)「800〜500」=300/(e−24(HP −0.2)+1)・・・(14)。
【0109】
ここで、HPは元素記号をその合金元素の質量%での含有量として、既に述べた(5)式(又は(3)式)に対応するものである。
【0110】
手順 (D): 次に、800〜500℃の温度域での任意の冷却時間t(秒)における(HVmax −HVBM)の値を導出する。
【0111】
既に手順 (B)の項で述べたように、実用的な溶接条件下では、800〜500℃の温度域での冷却時間はほぼ1〜2秒であり、0.2〜5秒の範囲をカバーすれば十分である。
【0112】
本発明者らが、レーザ出力L(W(ワット))、被処理材である鋼材の厚さh(mm)、溶接速度v(cm/秒)を種々変えて実験を行った結果、800〜500℃の温度域での冷却時間tが0.2〜5秒の範囲では、横軸に対数目盛での冷却時間をとり、縦軸に(HVmax −HVBM)の値をとった場合に、実験結果のプロットはいずれも右下がりの直線で精度良く近似でき、しかも、その直線は被処理材である鋼材の化学組成に依存せずほぼ−10の同じ傾きを有していることが明らかになった。
【0113】
以上の結果、(HVmax「1」 −HVBM)の値が得られれば、上述の冷却時間と硬さとの関係から、800〜500℃の温度域での任意の冷却時間t(秒)(但し、tは0.2〜5)において、(HVmax −HVBM)の値を精度良く見積もることができる。
【0114】
下記に、このようにして求めた冷却時間が0.2〜5秒の範囲における任意の冷却時間t(秒)での(HVmax −HVBM)の値を実験式として示す。
【0115】
(HVmax −HVBM)=(HVmax「1」 −HVBM)t−0.1 ・・・(15)。
【0116】
(14)式と(15)式を組合わせると、元素記号をその合金元素の質量%での含有量として、既に述べた(5)式(又は(3)式)に対応するHPと800〜500℃の温度域での冷却時間t(秒)を入力データとして、(HVmax −HVBM)を下記(16)式で表すことができる。
【0117】
(HVmax −HVBM)={300/(e−24(HP−0.2)+1)}t−0.1 ・・・(16)。
【0118】
手順 (E): 既に述べたように2次元熱流の仮定をおけば、(13)式に示すcm単位でのHAZ幅を精度良く見積もることができるので、(16)式と(13)式から、「(HVmax −HVBM)/(mm単位でのHAZ幅)」の値を、下記(17)式によって導出することができる。
【0119】
(HVmax −HVBM)/(mm単位でのHAZ幅)
={3.91×106×(Lη)−1.2×(vh)1.2}/(e−24(HP−0.2)+1)・・・(17)。
【0120】
図3に、(HVmax −HVBM)/(mm単位でのHAZ幅)の測定値と、(17)式によって求めた計算値との関係を示す。この図から、今回の条件範囲では両者は極めてよく一致することが明らかである。
【0121】
この結果、例えばレーザ溶接の条件が決まっている場合には、必要とされる継手疲労強度から鋼材の成分を決定することができるし、逆に、適用する鋼材を基に確保すべき疲労強度に対しレーザ溶接条件を選定することも可能である。
【0122】
次に、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
【0123】
【実施例】
表6〜8に示す化学組成を有する鋼を通常の方法によって試験炉溶製した。
【0124】
【表6】
【0125】
【表7】
【0126】
【表8】
【0127】
次いで、これらの鋼を通常の熱間鍛造によって厚さ80〜120mmの鋼片とした後、900〜1100℃に加熱してから熱間圧延し、板厚18〜12mmに仕上げた。
【0128】
熱間圧延して得た鋼板は元厚のまま、又は板厚16〜3mmに両面平面研削した後、室温で突き合わせレーザ溶接して継手を作製した。
【0129】
すなわち、上記した厚さ3〜18mmの鋼板にI型開先を加工し、ギャップを取らずに完全に押し当てた状態で、炭酸ガスレーザ(CO2 レーザ)又はイットリウム・アルミニウム・ガーネットレーザ(YAGレーザ)を片面から照射して継手を作製した。表9及び表10に、レーザ溶接条件の詳細を示す。これらの表における「フォーカス量」とは、既に述べたように、レーザ光を円錐状に集束する際の、集束した点と鋼板表面との距離を意味する。「フィラー添加有無」とは、溶接ビードの形成において、母材鋼板の共材である溶接材料をレーザ照射部に挿入したか否かを意味する。なお、表9、表10の各継手番号の溶接継手からは、後述する疲労試験片を各継手番号あたり少なくとも6体作製した。
【0130】
【表9】
【0131】
【表10】
【0132】
上記のようにして作製した突き合わせ溶接継手から、機械加工によって、試験片長手方向が溶接方向に対して直角方向となるように突合せ軸力疲労試験片を採取した。なお、上記軸力疲労試験片の寸法は、板厚が鋼板板厚のままの18〜3mmで、試験部の幅が40mm、掴み部の幅が70mm、長さが700mmである。
【0133】
疲労試験は、室温大気中で閉ループ型電気油圧式疲労試験機を用いて、すなわち、動的な荷重容量が±500kNの試験機に前記の軸力疲労試験片を油圧チャックによって装着し、荷重比Rが0.1のサイン波(sin波)となる片振り引張荷重の荷重制御下で実施した。この際、荷重範囲(つまり、最大荷重−最小荷重)ΔPを実験パラメータとして疲労破断寿命を測定した。なお、荷重範囲ΔPと余盛りを含まない公称断面積とから公称応力範囲Δσを求め、各継手番号毎に各疲労試験片の疲労破断寿命からSN曲線を作成した。
【0134】
前記試験において、繰返し速度は試験荷重や変位量に応じて3〜8Hzの条件で行い、試験片表面で発生した疲労亀裂が破面を形成しながら進展して試験機の荷重制御が困難になった時点を疲労破断寿命と定義した。
【0135】
又、繰返し数による疲労試験打切り条件は3×106 回を基準としたが、一部の供試体においては上記の繰返し数で打切ることなく試験を継続した。
【0136】
上記のようにして作成したSN曲線はほぼ直線状であり、明瞭な折曲がりが見られなかったので、繰返し数が2×106 回での時間強度をその継手の疲労強度Δσwとして評価した。
【0137】
各継手番号毎の疲労強度Δσwを表11〜13に示す。なお、いずれの供試体の場合にも、疲労亀裂の発生位置は溶接止端であった。
【0138】
【表11】
【0139】
【表12】
【0140】
【表13】
【0141】
表9、表10の各継手番号の溶接継手について、母材表面から1mmの深さにある位置において、レーザ溶接後のボンド部から溶接金属側に0.4mmピッチで1.6mmまで、又、レーザ溶接後のボンド部から溶接熱影響部側にも0.4mmピッチで1.6mmまで、試験力9.807Nでビッカース硬さHV1D (D=0.4、0.8、1.2及び1.6)の測定を行った。
【0142】
上記HV1D の測定結果、 (1)式で表される重み付き平均値及び、溶接金属側の重み付き平均値と溶接熱影響部側の重み付き平均値との比を、表11〜13に併せて示した。又、図1に、各継手番号毎の疲労強度Δσwに及ぼす溶接金属側の重み付き平均値と溶接熱影響部側の重み付き平均値との比の影響の一例を示す。なお、表11〜13及び図1においては、溶接金属側の重み付き平均値と溶接熱影響部側の重み付き平均値との比を「硬さ比」と表示した。更に、表11〜13においては、重み付き平均値を「AV」と表示した。
【0143】
表11〜13及び図1から、上記「硬さ比」と継手の疲労強度Δσwとの間には極めて強い相関があり、しかも「硬さ比」が1.6以下である継手番号1〜9、11〜14、18、20、22、24、27、28、30〜32、36、37及び40の場合は、Δσwで200MPaを超える大きな継手疲労強度が得られている。
【0144】
なお、表9及び表10の各継手番号の母材については、室温大気中での引張特性、靱性、清浄度及び溶接性についても調査した。
【0145】
引張試験片は、板厚が6mmを超える母材鋼板からはJIS Z 2201に記載の1A号試験片を、板厚が6mm以下の母材鋼板からは同じJIS Z 2201に記載の5号試験片を採取し、室温大気中での降伏強度を測定した。
【0146】
又、板厚が10〜18mmの母材の中心部から、JIS Z 2202に記載の幅が10mmのフルサイズシャルピーVノッチ試験片を、同様に板厚が5mmと7mmの母材の中心部及び板厚が3mmと4mmの母材の中心部から、それぞれ上記JIS Z 2202に記載の幅が5mm、幅が2.5mmのサブサイズシャルピーVノッチ試験片を採取し、衝撃試験を行って破面遷移温度を測定して靱性を調査した。
【0147】
更に、18〜3mmの板厚の母材に対し、板厚中心部からブロック状の試験片を採取し、非金属介在物の顕微鏡観察試験を行った。
【0148】
又、各母材を予熱することなく室温でレーザ溶接し、溶接割れが生じるか否かで溶接性を調査した。
【0149】
一方、表9及び表10の各継手番号の溶接継手について、溶接部最高硬さ、溶接継手部靱性、溶接溶融線(フュジョンライン)から母材側に1mm離れた位置(所謂「HAZ1mm」)でのフェライト結晶粒径の調査も行った。
【0150】
先ず、ブロック状の鋼板にショートビードを置き、試験力9.807Nでビッカース硬さHVを測定し、溶接部最高硬さを調査した。
【0151】
次に、溶接継手部靱性の評価は、溶接溶融線から母材側に1mm離れた位置である「HAZ1mm」がVノッチの底となるように試験片を加工した。試験片寸法に関しては、母材板厚に応じてそれぞれ前記母材の場合と同様のJIS Z 2202に記載の幅が10mmのフルサイズシャルピーVノッチ試験片、幅が5mm、幅が2.5mmのサブサイズシャルピーVノッチ試験片とし、上記衝撃試験を行い、破面遷移温度を測定して靱性を調査した。
【0152】
更に、鋼板からブロック状の試料を切り出し、樹脂に埋め込んで通常の方法で鏡面研磨した後、3%ナイタルで腐食して顕微鏡観察し、フェライト結晶粒径を測定した。
【0153】
表14、表15に上記の各試験結果をまとめて符号で示した。
【0154】
表14、表15における母材の「強度」欄の「◎」、「○」、「×」はそれぞれ、室温大気中での降伏強度が350MPa以上、294MPa以上で350MPa未満、294MPa未満であったことを示す。
【0155】
母材の「靱性」欄の「◎」、「○」、「×」はそれぞれ、50%破面遷移温度が−30℃未満、−30℃以上で0℃未満、0℃以上であったことを示す。
【0156】
母材の「清浄度」欄の「○」、「×」は、JIS G 0555に記載の「標準図による顕微鏡試験方法」に基づいて評価したもので、A系、B系、C系及びD系いずれの介在物も上記JIS G 0555の付属書AのASTM標準図における番号で1.5以下の場合を「○」、それ以外の場合を「×」とした。
【0157】
母材の「溶接性」欄の「○」、「×」はそれぞれ、溶接割れが生じなかったこと、溶接割れが生じたことを示す。
【0158】
一方、表14、表15における溶接継手の「最高硬さ」欄の「×」、「○」はそれぞれ、ビッカース硬さ(HV)で400以上の部分が存在したこと、HVで400未満であったことを示す。
【0159】
溶接継手の「靱性」欄の「○」、「×」はそれぞれ、50%破面遷移温度が0℃未満、0℃以上であったことを示す。
【0160】
溶接継手の「粒径」欄の「◎」、「○」はそれぞれ、フェライト平均結晶粒径が5μm以下、5μmを超えて25μm以下であったことを示す
【0161】
【表14】
【0162】
【表15】
【0163】
表14及び表15から、母材と溶接継手の特性は化学組成の影響を受けることがわかる。すなわち、前記した第1群の元素であるCr、Ni、Cuは母材靱性や溶接部靱性を改善している。しかし、過剰の含有の場合には却って靱性の低下が認められる。又、前記した第2群の元素であるV、Nbは靱性や強度を高めることができるが、過剰に含有させると溶接部靱性の低下することが認められる。更に、前記した第3群の元素であるTi、CaはHAZの金属組織を微細にすることができるが、Tiを過剰に含有させると靱性が低下し、Caを過剰に含有させると鋼の清浄度が低下することが認められる。
【0164】
【発明の効果】
本発明によれば、疲労強度特性に優れたレーザ溶接部を有する鋼構造部材と、その鋼構造部材に用いる鋼材が得られるので、構造物全体の軽量化など高機能化を推進することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で調査した継手の疲労強度Δσwに及ぼす溶接金属側の重み付き平均値と溶接熱影響部側の重み付き平均値との比の影響の一例を示す図である。
【図2】溶接金属側ビッカース硬さの重み付き平均値と溶接熱影響部側ビッカース硬さの重み付き平均値との比と、(HVmax−HVBM)/(mm単位でのHAZ幅)の値との相関関係を示す図である。
【図3】(HVmax −HVBM)/(mm単位でのHAZ幅)の実測値と、(17)式によって求めた計算値との関係を示す図である。
Claims (5)
- 母材表面から1mmの深さにある位置で、レーザ溶接後のボンド部からの距離が1.6mm以内の領域における溶接金属側ビッカース硬さの重み付き平均値が、前記1.6mm以内の領域における溶接熱影響部側ビッカース硬さの重み付き平均値の1.6倍以下であるレーザ溶接された鋼構造部材。
ここで、上記ボンド部からの距離が1.6mm以内の領域におけるビッカース硬さの重み付き平均値とは、試験力9.807N以下で試験した際、ボンド部からの距離がD(mm)の位置でのビッカース硬さをHV1D として下記 (1)式で表される値を指す。
重み付き平均値=0.4×HV10.4 +0.3×HV10.8 +0.2×HV11.2 +0.1×HV11.6 ・・・(1)。 - 鋼が質量%で、C:0.003〜0.07%、Si:0.1〜0.6%、Mn:0.3〜2.0%、Al:0.01〜0.1%を含有し、残部はFe及び不純物からなる請求項1に記載のレーザ溶接された鋼構造部材。
- 鋼が質量%で、C:0.003〜0.07%、Si:0.1〜0.6%、Mn:0.3〜2.0%、Al:0.01〜0.1%を含有し、更に、
第1群:Cr:0.01〜0.15%、Ni:0.01〜0.15%、Cu:0.1〜0.35%のうちの1種以上、
第2群:V:0.01〜0.07%、Nb:0.01〜0.06%のうちの1種以上、
第3群:Ti:0.003〜0.015%、Ca:0.0005〜0.006%のうちの1種以上、
の1群以上をも含み、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のMoは0.08%以下である請求項1に記載のレーザ溶接された鋼構造部材。 - レーザ出力L(W(ワット))、熱効率η、溶接速度v(cm/秒)の条件でレーザ溶接され、母材表面から1mmの深さにある位置で、レーザ溶接後のボンド部からの距離が1.6mm以内の領域における溶接金属側ビッカース硬さの重み付き平均値が、前記1.6mm以内の領域における溶接熱影響部側ビッカース硬さの重み付き平均値の1.6倍以下である厚さh(cm)の鋼構造部材に用いる鋼材であって、質量%で、C:0.003〜0.07%、Si:0.1〜0.6%、Mn:0.3〜2.0%、Al:0.01〜0.1%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のMoは0.08%以下で、且つ下記 (2)で表される値が100以下である鋼材。
{3.91×106×(Lη)−1.2×(vh)1.2}/(e−24(HP1−0.2)+1)・・・(2)、
ここで、HP1は元素記号をその合金元素の質量%での含有量として下記 (3)式で表される値である。
HP1=C+(Si/50)+(Mn/20)+(Mo/30)・・・(3)。 - レーザ出力L(W(ワット))、熱効率η、溶接速度v(cm/秒)の条件でレーザ溶接され、母材表面から1mmの深さにある位置で、レーザ溶接後のボンド部からの距離が1.6mm以内の領域における溶接金属側ビッカース硬さの重み付き平均値が、前記1.6mm以内の領域における溶接熱影響部側ビッカース硬さの重み付き平均値の1.6倍以下である厚さh(cm)の鋼構造部材に用いる鋼材であって、質量%で、C:0.003〜0.07%、Si:0.1〜0.6%、Mn:0.3〜2.0%、Al:0.01〜0.1%を含有し、更に、
第1群:Cr:0.01〜0.15%、Ni:0.01〜0.15%、Cu:0.1〜0.35%のうちの1種以上、
第2群:V:0.01〜0.07%、Nb:0.01〜0.06%のうちの1種以上、
第3群:Ti:0.003〜0.015%、Ca:0.0005〜0.006%のうちの1種以上、
の1群以上をも含み、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のMoは0.08%以下で、且つ下記 (4)で表される値が100以下である鋼材。
{3.91×106×(Lη)−1.2×(vh)1.2}/(e−24(HP2−0.2)+1)・・・(4)、
ここで、HP2は元素記号をその合金元素の質量%での含有量として下記 (5)式で表される値である。
HP2=C+(Si/50)+{(Mn+Cu+Cr)/20}+(Ni/60)+(V/20)+Ca+(Mo/30)・・・(5)。
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