JPH11104842A - 回転揺動式プラズマ粉体肉盛装置 - Google Patents

回転揺動式プラズマ粉体肉盛装置

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JPH11104842A
JPH11104842A JP9267041A JP26704197A JPH11104842A JP H11104842 A JPH11104842 A JP H11104842A JP 9267041 A JP9267041 A JP 9267041A JP 26704197 A JP26704197 A JP 26704197A JP H11104842 A JPH11104842 A JP H11104842A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 プラズマトーチによる粉体肉盛溶接又は溶射
において、母材の希釈率の低減,肉盛厚の均一化,肉盛
成分分布の均質化。 【解決手段】 移行式又は非移行式のプラズマト−チの
先端チップ2のノズル2aを、内開口は電極中心軸Lo
に整合し外開口は偏心したものとし、先端チップ2とチ
ップカバ−12の間に粉体供給空間2p,2rを形成
し、先端チップ2とチップカバ−12の両者、又は先端
チップ2のみ、を回転駆動する。粉体供給空間2p,2
rに、肉盛用の粉体を担持したキャリアガスを吹込む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、肉盛溶接あるいは溶射
に用いるプラズマ加工装置に関し、特に、プラズマト−
チに対して揺動するプラズマフレ−ムに肉盛粉体を送給
して加工対象材に肉盛溶接あるいは溶射を行なう揺動式
プラズマ粉体肉盛装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えばプラズマト−チを用いる肉盛溶接
では、従来はプラズマト−チからフレ−ムが直進して加
工材に当り、肉盛溶融池中央部は下向に力を受けて凹型
となり、それに伴ない加工材(母材)も過度に加熱され
て溶融し肉盛材の希釈量が多くなる。これを回避するた
めにプラズマト−チをジグザグに揺動して母材の希釈量
を少く均一にすることが行なわれている。
【0003】この他に、特開昭62−57770号公報
には、肉盛時間に対応してプラズマガスの供給量(リッ
トル/分)を調整する、又は、ア−ク電流を調整して希
釈量を調整することが提示されている。
【0004】特開昭62−252676号公報に提示の
肉盛溶接方法は、薄板母材に対して、15KHzの高周
波低電流ア−ク電流を使用して、電流値に対して入熱が
大きいプラズマフレ−ムにて肉盛溶接を行なう。
【0005】特開昭63−43769号公報に提示の肉
盛溶接方法は、ト−チに電磁撹拌装置を取付けて肉盛溶
融池を電磁撹拌し、高硬度の粉体を肉盛ベ−ス粉体の溶
融池中に分散させる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】プラズマト−チをジグ
ザグに揺動することにより、ある程度は希釈量を少く均
一にすることができるが、揺動(オシレ−ト)速度が比
較的に低く、その高速化が難かしいため、飛躍的な改善
は望めない。前記特開昭62−57770号公報に提示
の方法では、ア−ク直下での単位面積,単位時間当りの
入熱量(ア−ク熱量/ア−ク移動速度)が大きいため、
母材が溶け易く、時間経過と共に母材温度が上昇する
と、希釈量が多くなってしまう。前記特開昭62−25
2676号公報に提示の方法では、15KHzのスイッ
チング電源回路が必要であり、電源回路がコスト高にな
るのに加えて、ア−ク中熱量を上げるので、母材への単
位面積,単位時間当りの入熱量が割合大きく、十分に希
釈量を下げることができない。前記特開昭63−437
69号公報に提示の方法は、大型で強力な電磁撹拌装置
を必要としコスト高となる。これをト−チに取付けるの
で、ト−チの操作性が悪い。また、肉盛材質により撹拌
効果に高低を生じ、汎用性が低い。
【0007】上述のように従来は、肉盛材による母材の
希釈量を少くし、肉盛材を薄く広く肉盛することは難か
しかった。プラズマト−チによる粉体肉盛の場合、ア−
クの熱集中性が高く高温であるためにア−ク直下の母材
が溶け易く、これを避けるためア−ク直下に肉盛材の厚
い溶融池を作り、ア−ク熱が直接母材に当たらないよう
にする。このため必然的に厚い肉盛層になってしまう。
ト−チをオシレ−トするが、ト−チ全体の揺動であるの
で、高速揺動を実現できない。また、高速だと溶接メタ
ルが不連続になり易い。
【0008】本発明は、肉盛材による母材の希釈量が低
い肉盛溶接を実現することを第1の目的とし、薄く広い
均質な肉盛溶接又は溶射を実現することを第2の目的と
し、高硬度の粉体をベ−ス肉盛中に均一に分散した肉盛
溶接又は溶射を実現することを第3の目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
(1)本発明の第1態様の回転揺動式プラズマ粉体肉盛
装置は、放電電極(1);該放電電極(1)のワ−ク指向線(L
o)に対して、内開口と外開口(12a)を結ぶノズル中心線
が斜交(θ)したノズルと、該内開口と外開口(12a)の間
においてノズル内空間に連通した粉体供給空間(2p,2r)
を有するノズル部材(2,12);前記放電電極(1)とノズル
部材(2,12)の内開口の間にプラズマ用ガスを供給するガ
ス流路;前記粉体供給空間(2p,2r)に粉体を給送する粉
体給送手段(11);および、前記ノズル部材(2,12)を、前
記ワ−ク指向線(Lo)を実質上中心にして回転駆動する駆
動手段(M,mr,32,33,37);を備える(図1)。
【0010】なお、理解を容易にするためにカッコ内に
は、図面に示し後述する実施例の対応要素の記号を、参
考までに付記した。
【0011】これによれば、駆動手段(M,mr,32,33,37)
がノズル部材(2,12)を回転駆動するのに伴い、ノズル中
心線がワ−ク指向線(Lo)に対して斜交(θ)するので、ノ
ズル中心線が円錐面を描くように回転して、ノズルから
出るプラズマフレ−ムも同じく円錐面を描くように回転
する。該円錐の下底側でプラズマフレ−ムが加工対象材
に当るので、時系列平均で見ると、加工対象材に対して
プラズマフレ−ムの作用領域が広い。したがってト−チ
の狙い位置が少々ずれても、意図した箇所にプラズマフ
レ−ムが作用する。例えば肉盛溶接においては、倣い精
度が低くてもよく、また、脚長の長い溶接や合わせ部ギ
ャップ大の溶接が可能となる。なお、ノズルの内開口は
ワーク指向線(Lo)に対して実質上整合するのが好ましい
が、ワーク指向線(Lo)に対して少々偏位してもよい。
【0012】ノズルの内開口と外開口(12a)の間におい
てノズル内空間に連通した粉体供給空間(2p,2r)に粉体
給送手段(11)が粉体を給送するので、ノズル内において
プラズマフレ−ム中に粉体が供給され、加工対象材に当
るプラズマフレ−ムの中の粉体の分布均一性が高く、粉
体肉盛の均質性が高く歩留りが良い。
【0013】プラズマフレ−ムが加工対象材に対して円
錐面を描くように高速回転し移動するので、加工対象材
上のア−クの照射位置での単位面積,単位時間当りの入
熱量(ア−ク熱量/ア−ク移動速度)が比較的に低く、
加工対象材(母材)の希釈量を少く抑えることができ、
また均一になる。従来の、プラズマト−チをジグザグに
オシレ−トする場合、例えばオシレ−ト幅5mm、オシ
レ−ト回数60回/分、でト−チ移動速度voが定速度
と仮定すると、母材に対するプラズマフレ−ムの相対速
度vo=5mm×2×60=600mm/分であるとこ
ろ、本発明では、例えば母材上でのプラズマフレ−ムの
回転直径5mm、回転数10回/秒とすると、母材に対
するプラズマフレ−ムの相対速度vo=5mm×π×1
0×60=9420mm/分となり、従来のト−チオシ
レ−トの場合の15.7倍の速度となるので、希釈量の
低減と肉盛の均一性が格段に向上する。例えば肉盛厚を
1mm以下とする薄い肉盛でも、母材を溶かすことなく
肉盛ができる。
【0014】更には、比重の異る高硬度,高融点の粉体
を肉盛ベ−ス粉体に混合した複合粉体を用いる場合、母
材上の溶融池で比重が高い粉体は浮上し比重が低い粉体
が沈下してベ−ス基体中に高硬度粉体が均一に分散でき
ないが、本発明によれば、プラズマフレ−ムが母材上の
粉体溶融池上を高速で旋回し溶融池を撹拌するので、溶
融池で高硬度の粉体が均一に分散し、母材上の肉盛の均
質性が向上する。
【0015】
【発明の実施の形態】
(2)ノズル部材(2,12)は、前記放電電極(1)のワ−ク
指向線(Lo)に対して、内開口と外開口(12a)を結ぶノズ
ル中心線が斜交(θ)した小径の第1ノズル(2a)を有する
第1ノズル部材(2)と、第1ノズル(2a)に整合して偏心
した大径の第2ノズル(12a)を有し、第1ノズル部材(2)
との間に前記粉体供給空間(2p,2r)を形成し、かつ第1
ノズル部材(2)に固着された第2ノズル部材(12)と、を
含む、上記(1)の回転揺動式プラズマ粉体肉盛装置
(図1)。
【0016】(3)第1ノズル部材(2)は円錐外形を、
第2ノズル部材(12)は円錐内形を有し、前記粉体供給空
間(2p,2r)は、第1ノズル部材(2)の円錐外面と第2ノズ
ル部材(12)の円錐内面の少くとも一方(2)に刻まれた複
数の螺旋溝(2r)である、上記(2)の回転揺動式プラズ
マ粉体肉盛装置(図1,図2の(b))。ノズル部材(2,12)の回
転により、複数の螺旋溝(2r)が回転して粉体をノズルに
向けて集束するように搬送する。これにより、プラズマ
フレ−ム中への粉体注入の効率がよく、プラズマフレ−
ムの中の粉体の分布均一性が高く、粉体肉盛の均質性が
高く歩留りが良い。比較的に微細な粉体、例えば直径5
0μm以下の微粉体、を使用する場合の粉体肉盛に効果
が高い。
【0017】(4)本発明の第2態様の回転揺動式プラ
ズマ粉体肉盛装置は、放電電極(1);該放電電極(1)のワ
−ク指向線(Lo)に対して、内開口と外開口(12a)を結ぶ
ノズル中心線が斜交(θ)した第1ノズル(2a)を有する第
1ノズル部材(2);前記外開口(2a)の前記ワ−ク指向線
を中心とする回転軌跡と同程度もしくはそれより大き
い、前記ワ−ク指向線(Lo)を中心とする大開口(12a)を
有し、第1ノズル部材(2)との間に、第1ノズル部材の
外開口(2a)と大開口(12a)に通じた粉体供給空間(2p)を
形成する第2ノズル部材(12);前記放電電極(1)と第1
ノズル部材(2)の内開口の間にプラズマ用ガスを供給す
るガス流路;前記粉体供給空間(2p)に粉体を給送する粉
体給送手段(11);および、第1ノズル部材(2)を、前記
ワ−ク指向線(Lo)を実質上中心にして回転駆動する駆動
手段(M,mr,32,33,37);を備える(図3)。
【0018】大要では、上述の第1態様の作用,効果と
同様な作用,効果が得られるが、この第2態様では、第
1ノズル部材(2)のみが回転し、第2ノズル部材(12)の
開口(12a)は、ワ−ク指向線(Lo)を中心とする大径の開
口である。したがって比較的に大径の粉体、例えば直径
50μm〜350μmの粉体、を比較的に大量に肉盛す
る用途に適している。
【0019】本発明の他の目的および特徴は、図面を参
照した以下の実施例の説明より明らかになろう。
【0020】
【実施例】
−第1実施例− 図1に、本発明の第1実施例を示す。この実施例は、ア
−ク移行式の肉盛溶接装置であり、z方向が上方向、y
方向が右方向、x方向(図1においては紙面の裏から表
へ向う方向)が肉盛溶接の進行方向である。
【0021】タングステン棒(溶接電極)1は直線状の
棒体であり、その先端が加工対象材(ワ−ク)である鋼
板Wkを狙う線すなわちワ−ク指向線Loは、タングス
テン棒1の中心線と合致する。移行式プラズマトーチT
の基体Bは、中空の略円筒状の部材の外周面にアームを
装着したものである。基体Bのアーム部分の内部にはシ
ールドガス,(冷却)水,パイロットガス(プラズマ用
ガス)の流路が形成されている。水路は水を外部より基
体Bの内部に送り込み、ト−チTの内部に絶縁水路20
aを介して循環させて再び外部に放出し(図1に実線矢
印で示す)、シールドガス流路は、シールドガスを外部
よりト−チTの内部に送り込む(図1に点線矢印で示
す)。また、パイロットガス流路は、パイロットガスを
外部よりト−チTの内部に送り込む(図1に2点鎖線矢
印で示す)。
【0022】以下、ト−チTのノズル2に向う方向を先
端方向とし、その反対方向を尾端方向とすれば、基体B
の尾端部には基体Bより直径の小さい略円筒形の電極台
8の先端部が挿入されており、基体Bの内周面に一体固
着されている。電極台8の先端部の周面には軸中心を同
一にしたリング状の溝が刻まれており、基体Bの内周面
の壁との間に水路を形成する。該水路は、基体Bのアー
ム部分の内部の水路と連通している。基体Bより突出し
た電極台8の円筒状の尾端部の内部には、先端部をスリ
ットの切込みにより周方向に4分割したチャック9が挿
入され、ねじ込まれている。チャック9はさらに、中心
線Loに沿って延びる先端が円錐形に突出したタングス
テン棒1を挾持する。
【0023】電極台8の後端部は案内リング10内に進
入してネジ結合しており、案内リング10はカバーCに
覆われている。カバーCの案内リング10を電極台8に
対してねじ込むことによりチャック9の尾端部が電極台
8の尾端部の内部の円錐内壁面(テーパ面)に押し付け
られて、タングステン棒1の軸心に向かう方向に曲がろ
うとしてタングステン棒1を強圧する。これによりタン
グステン棒1は電極台8に対して一体に固着されてい
る。すなわち、電極台8は基体Bに対して一体であるの
で、タングステン棒1は基体Bに対して一体である。
【0024】一方、基体Bの円柱形内空間には略円筒形
である支持部材Uaの尾端に固着された絶縁スペーサ7
があり、絶縁スペーサ7の尾端は電極台8の先端に固着
された状態で受けられる。支持部材Uaは基体Bの中間
部から先端にかけてモールド固定されている。基体Bお
よび支持部材Uaの先端面は面一であり、シールドガス
噴射口5aを有するねじリング5が固着されており、ね
じリング5の先端部の外周の雄ねじにシールドキャップ
6がねじ結合している。すなわち、基体B,支持部材U
a,ねじリング5およびにシールドキャップ6は皆一体
である。
【0025】支持部材Uaおよびねじリング5は、その
内空間にOリングおよびベアリングb1,b2を介して
中空筒状の回転水路金具20bを、軸心すなわち中心線
Loを中心とする回転が自在であるように支持する。基
体Bのシールドガス流路に送り込まれるシールドガス
は、ねじリング5の内壁と金具20bの外壁が形成する
空間に送り込まれてねじリング5のシールドガス噴射口
5aを通ってシールドキャップ6に出て、該キャップ6
に固着された整流リング13の整流孔を通ってシールド
キャップ6の先端開口から、先端チップ(第1ノズル部
材)2を覆うチップカバ−(第2ノズル部材)12の外
空間に出る。
【0026】金具20bは止めリングにより回転自在な
状態を保持しつつz方向位置を固定されており、その先
端部はシールドキャップ6の内空間に突出している。金
具20bの尾端は、支持部材Uaの内壁にリング状に設
けられた基体Bの水路に連通する溝に達して止まる。支
持部材Uaの尾端から前述の溝に達する内壁は、Oリン
グおよびベアリングb1を介して金具20bと同一固着
された直径の小さな中空筒状のノズル台3を、金具20
bと同様に中心線Loを基準とした回転が自在であるよ
うに支持する。金具20bの内壁とノズル台3の外壁
は、支持部材Uaの内壁にリング状に設けられた溝を介
して基体Bの水路に連通する水路を形成する。
【0027】回転水路金具20bの先端部には、円錐形
に突出したタングステン棒1の先端を囲むように中空の
略円錐形である金属製の先端チップ2が装着されてい
る。先端チップ2の、タングステン棒1の先端の円錐形
にならうように円錐形となった中央部にはノズル2aが
ある。ノズル2aの、タングステン棒1の先端と対向す
る内開口は先端チップ2の中心(中心線=ワ−ク指向線
Loの位置)にあるが、ノズル2aは中心線Loに対し
てθの角度をなし、ノズル2aの、ワ−クWkに対向す
る外開口は中心線すなわちワ−ク指向線Loより偏心し
ている。さらに、パイロットガスの溶融プ−ルへの作用
(当り角度)を変える為、内開口が、ワ−ク指向線Lo
の中心より外れ尚かつ外開口が偏心したものや、ノズル
2aの中心がワ−ク指向線Loと平行で偏心したものな
ど、目的,用途により使い分ける。先端チップ2は、O
リングを介してノズル台3の先端に固定され、該溝の外
周縁は金具20bの先端部にOリングを介してノズル台
3の先端に固定されている。つまり、金具20b,ノズ
ル台3および先端チップ2は一体に固着されており、支
持部材Uaを介して基体Bに、回動自在に支持されてい
る。
【0028】ノズル台3の尾端部には歯付プーリ37が
固着されている。歯付プ−リ37に結合したタイミング
ベルト33には歯付プ−リ32が結合している。歯付プ
−リ32は電気モ−タMの回転軸maに固着されてい
る。したがって電気モ−タMが回転すると、ノズル台3
が回転する。ノズル台3が回転すれば、金具20b,ノ
ズル台3およびチップ2がそれに伴い一体で中心線Lo
を中心として回転する。金具20bの内壁とノズル台3
の外壁が形成する水路は、先端チップ2に形成された溝
により閉じられる。基体Bの水路より流入した水(冷却
水)は該水路を通って基体Bの絶縁水路20aを通過
し、それに連通する電極台8と基体Bの内周面の壁との
間に形成された水路を通って基体Bの前述の水路とは異
る水路を通って外部の冷却水循環機構(図示せず)に放
出される。
【0029】また、ノズル台3の内壁にはリング状のセ
ンタリングストーン4が固着されている。タングステン
棒1はこのセンタリングストーン4の中心を回転自在に
貫通し、その軸心は先端チップ2およびノズル台3の中
心軸すなわち中心線Loと実質上一致している。センタ
リングストーン4には、ノズル2aの内開口に対向する
先端面からその裏側の後端面に通じる通気孔が開けられ
ている。基体Bのパイロットガス流路に送り込まれるパ
イロットガスは、ノズル台3の内壁とタングステン棒1
の間の空間に送り込まれ、センタリングストーン4の通
気孔を通って先端チップ2の内空間に出て、先端チップ
2のノズル2aから外空間に放出される。なお、センタ
リングストーン4はノズル台3に固着されているので、
ノズル台3が回転すれば、金具20b,ノズル台3およ
び先端チップ2と同様に一体で、中心線Loを中心とし
て回転する。しかし、それに対してタングステン棒1は
チャック9により電極台8を介して基体Bに対して固定
されている。すなわち回転しない。
【0030】ここまでに説明した中で、従来使用されて
いたプラズマト−チとの構造上の大きな違いは、先端チ
ップ2が金具20b,ノズル台3を介して、基体Bおよ
びタングステン棒1に回転自在に支持されている点であ
る。従来のプラズマトーチにおいて、先端チップ2は基
体Bに対して固定された状態にあった。その使用態様と
しては、まず先端チップ(ノズル部材)2とタングステ
ン棒1間に高周波電圧を印加してパイロットアークを発
生させる。次にタングステン棒1と被溶接材との間に主
電圧を印加してパイロットアークを被溶接材に移行さ
せ、主アークを発生させるのが一般的である。本実施例
のト−チTには、前述の機構に加えてさらに先端チップ
2を回転駆動する機構が備わる。これにより、主アーク
の発生方法については従来と同様であるが、発生した主
アークは、先端チップ2の回転によりノズル2aが描く
円錐面と同様な円錐面を描くように回転する。以下に図
を参照しながら説明する。
【0031】図2の(a)に、図1の2A−2A線断面
を示す。ト−チTの基体Bの外周には、略箱型である支
持部材30が垂直に固着されており、支持部材30の外
壁には電気モータMが、中心線Loと平行に支持されて
いる。モータMの回転軸maが中心線Loと平行に先端
方向に突出している。回転軸maには駆動プーリ32が
固着されている。プーリ32にはタイミングベルト33
が装着されており、タイミングベルト33はノズル台3
の尾端部に固着された歯付プーリ37に掛け渡されてい
る。支持部材30の内壁には、タイミングベルト33の
回転方向と垂直に案内溝30aがある。案内溝30aに
は、ベルト押えロ−ラとしてのベアリング34が装着さ
れたU字型のスライダ36が案内されており、ボルト3
5の締めつけにより案内溝30a内の位置を固定され
る。タイミングベルト33はベアリング34により外周
を内側に向けて押圧されており、ボルト35を緩めて案
内溝30aに沿ってスライダ36の位置を動かすことに
より、ベアリング34のタイミングベルト33の押圧の
度合を変えることができる。
【0032】例えば図1および図2の(a)に実線矢印
mrで示す方向にモータMの回転軸maが回転した場合
を考える。回転軸maとそれに固着されたプーリ32が
実線矢印mr方向に回転することにより、タイミングベ
ルト33を介してプーリ37とそれが固着されたノズル
台3が実線矢印mrで示す方向に回転する。すると、そ
れに一体である先端チップ2および回転水路金具20b
が同様に回転する。
【0033】図2の(b)に、先端チップ2を拡大して
示す。先端チップの下半分は裁頭円錐形であり、その外
面に多数の螺旋状の溝2rが刻まれ、それにより螺旋状
の歯又は突条2gが形成されている。これらは時計方向
廻りであって、チップ2の下端に近づくにつれて旋回半
径が小さくなっている。モ−タMによってプ−リ32が
矢印mr方向に回転駆動されるが、これによりチップ2
が図2の(b)に矢印で示す反時計方向に回転する。
【0034】先端チップ2には、チップカバ−12が固
着されている。チップカバ−12は、裁頭円錐筒状であ
り、円錐内面が先端チップ2の突条2gに接合してい
る。チップカバ−12の下端開口12aは、先端チップ
2のノズル2aの外開口より大きくノズル2aの中心線
を中心とする円形であり、したがって指向線Loに対し
て偏心している。先端チップ2とチップカバ−12との
間には、突条2gがある所では、溝2rの空間があり、
突条2gが無い部位では、面対向でリング状の空間2p
を形成している。
【0035】ねじリング5には、空間2pに連なる粉体
流路穴が開けられそこに粉体供給管14が挿入されてい
る。粉体供給管14には、粉体供給器11から、粉体流
が供給される。粉体供給器11は、粉体を収容するホッ
パの下開口より、図示しないモ−タにより回転駆動され
る粉体切り出し歯車により、連続定量切り出しされ、高
速キャリアガスにて粉体を吸い出して搬送チュ−ブに送
り出すものである。粉体を搬送するキャリアガスが、搬
送チュ−ブを通して、ねじリング5に接続した粉体供給
管14に送給され、空間2pおよび溝2rを通って、先
端チップ2のノズル2aの外開口と、チップカバ−12
の下開口12aの間に供給される。先端チップ2(およ
びそれに固着されたチップカバ−)のモ−タ駆動による
回転は、螺旋状の突条2gが溝2r内にキャリアガス
(およびそれに混合した粉体)を引き込む(吸い込む)
方向であるので、先端チップ2が、渦流の外でキャリア
ガスを吸い込んで渦流の中心に吐き出すようにキャリア
ガスの流動を促す。
【0036】このようにして先端チップ2のノズル2a
の外開口近くに搬送された粉体は、該外開口から吹き出
して鋼板Wkに至るプラズマア−クによって溶かされ
て、鋼板Wkの表面に溶着する。
【0037】上述の第1実施例によれば、先端チップ2
のガス噴出口2aが中心線Loを中心として回転するの
に伴い放射されるプラズマアークが、鋼板Wk上の指向
線Loとの交点を中心とした広幅の肉盛ビードを形成す
る。先端チップ2の回転速度は電気モータMの回転と同
様に一定であるので一点にアークが集中することなく、
また、アークの回転力により溶融プールを撹拌平滑にす
るので、x,y,z方向に厚み,希釈率および成分分布
のムラが少い肉盛溶接ビードが安定して得られる。 比
較的に小径(例えば50μm以下)の粉体を用いて、比
較的に薄く均質な粉体溶着肉盛を行なう用途に適する。
【0038】−第2実施例− 図3に第2実施例を示す。この第2実施例は大部分上述
の第1実施例と同様であるが、チップカバ−12がねじ
リング5に固着されており固定である。先端チップ2の
円錐外面は溝,突条のない平滑面であり、先端チップ2
の円錐外面とチップカバ−12の円錐内面との間の空間
2pに、粉体(およびそれを担持するキャリアガス)が
供給される。先端チップ2のノズル2aの外開口が指向
線Loから偏心しており、これによりプラズマフレ−ム
が円錐面を描くように回転し、これに対してチップカバ
−12が固定であるので、プラズマフレ−ムの射出を遮
らないように、チップカバ−12の下開口12aは、指
向線Loを中心とする開口ではあるが、大径の開口であ
り、先端チップ2のノズル2aの外開口の回転軌跡の外
側に開口縁がある。その他の構造は、上述の第1実施例
と同様である。
【0039】この第2実施例は、比較的に大径(50μ
m〜350μm)の粉体を比較的に大量(単位時間当り
の供給量)に供給して、比較的に厚い粉体溶着肉盛を行
なうのに適する。チップカバ−12が固定であって、先
端チップ2はその円錐外面が溝,突条のない平滑面であ
るので、第1実施例よりも構造が簡単で、ト−チの製造
コストが低く、しかも、ト−チ、特にその先端チップ周
りの保守が容易である。
【0040】なお、上述の第1実施例および第2実施例
のいずれも、移行式プラズマト−チを用いるものである
が、本発明で用いる先端チップ2とチップカバ−12と
の組合せでなるノズル部材と粉体供給器11との組合
せ、特にプラズマフレ−ムに粉体を供給するための上述
の構造を、非移行式プラズマト−チにも同様に用いて、
加工対象材に対して肉盛溶射を行なうことができる。ま
た、ノズル(2)とワ−ク(Wk)との間の回転揺動するア−
ク中へ外部より粉体供給パイプにより粉体を挿入し、溶
融肉盛することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例の縦断面図である。
【図2】 図1に示すト−チTの横断面図(図1の2A
−2A線断面図)である。
【図3】 本発明の第2実施例の縦断面図である。
【符号の説明】
1:タングステン棒 2:先端チップ 2a:ノズル 3:ノズル台 4:センタリングストーン 5:ねじリング 5a:シールドガス噴射口 6:シールドキャッ
プ 7:絶縁スペーサ 8:電極台 9:チャック 10:案内リング 11:粉体供給器 12:チップカバ− 12a:偏心開口(図1)/整合開口(図3) 13:整流リング 14:粉体供給管 20a:絶縁水路 20B:回転水路金
具 30a:案内溝 30,31:支持部
材 32,37:プーリー 33:タイミングベ
ルト 34:ベアリング 35:ボルト 36:スライダ B:基体 b2,b1:ベアリング C:カバー Lo:指向線 M:モータ ma:回転軸 T:プラズマトーチ Ua:支持部材 Vh:高周波電源 Vp:パイロット電源 Vs:主電源 Wy:水平金属平板(水平板) Wk:鋼板

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】放電電極;該放電電極のワ−ク指向線に対
    して、内開口と外開口を結ぶノズル中心線が斜交したノ
    ズルと、該内開口と外開口の間においてノズル内空間に
    連通した粉体供給空間を有するノズル部材;前記放電電
    極とノズル部材の内開口の間にプラズマ用ガスを供給す
    るガス流路; 前記粉体供給空間に粉体を給送する粉体
    給送手段;および、 前記ノズル部材を、前記ワ−ク指向線を実質上中心にし
    て回転駆動する駆動手段;を備える回転揺動式プラズマ
    粉体肉盛装置。
  2. 【請求項2】ノズル部材は、前記放電電極のワ−ク指向
    線に対して、内開口と外開口を結ぶノズル中心線が斜交
    した小径の第1ノズルを有する第1ノズル部材と、第1
    ノズルに整合して偏心した大径の第2ノズルを有し、第
    1ノズル部材との間に前記粉体供給空間を形成し、かつ
    第1ノズル部材に固着された第2ノズル部材と、を含
    む、請求項1記載の回転揺動式プラズマ粉体肉盛装置。
  3. 【請求項3】第1ノズル部材は円錐外形を、第2ノズル
    部材は円錐内形を有し、前記粉体供給空間は、第1ノズ
    ル部材の円錐外面と第2ノズル部材の円錐内面の少くと
    も一方に刻まれた複数の螺旋溝である、請求項2記載の
    回転揺動式プラズマ粉体肉盛装置。
  4. 【請求項4】放電電極;該放電電極のワ−ク指向線に対
    して、内開口と外開口を結ぶノズル中心線が斜交した第
    1ノズルを有する第1ノズル部材;前記外開口の前記ワ
    −ク指向線を中心とする回転軌跡と同程度もしくはそれ
    より大きい、前記ワ−ク指向線を中心とする大開口を有
    し、第1ノズル部材との間に、第1ノズル部材の外開口
    と第2ノズル部材の大開口が開いた粉体供給空間を形成
    する第2ノズル部材;前記放電電極と第1ノズル部材の
    内開口の間にプラズマ用ガスを供給するガス流路;前記
    粉体供給空間に粉体を給送する粉体給送手段;および、 第1ノズル部材を、前記ワ−ク指向線を実質上中心にし
    て回転駆動する駆動手段;を備える回転揺動式プラズマ
    粉体肉盛装置。
  5. 【請求項5】第2ノズル部材は固定され、第1ノズル部
    材が回転する、請求項4記載の回転揺動式プラズマ粉体
    肉盛装置。
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